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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1240277
審判番号 不服2010-11005  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-24 
確定日 2011-07-14 
事件の表示 特願2007-304045「液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月11日出願公開、特開2009-126076〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成19年11月26日の出願であって、平成21年11月6日付けで手続補正がなされ、平成22年2月19日付けで拒絶査定がなされ、同年5月24日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成21年11月6日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項によって特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「液体を噴射するノズルが複数個配置されたノズルブロックと、
前記ノズルブロックに前記液体を供給する供給流路と、
ドライバからの駆動信号を前記ノズルブロックに供給する回路基板と、
をそれぞれ複数個含み、
前記ノズルブロックは、
前記ノズルに連通する圧力室と、
前記圧力室の内部の前記液体を加圧する圧電素子と、
を含み、
前記供給流路は前記圧力室に対して前記ノズルと反対側に配置され、供給流路形成部材に形成され、
前記回路基板は第1の部分、第2の部分、第3の部分、及び第4の部分を含み、
前記第1の部分は前記ドライバに電気的に接続され、
前記第2の部分は屈曲し、
前記第3の部分は前記供給流路形成部材を貫通し、
前記第4の部分は前記圧電素子に電気的に接続されることを特徴とする液体噴射ヘッド。」

3 刊行物の記載事項
(1)原査定における拒絶の理由で引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-202850号公報(以下「引用例1」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア 「【0013】加圧素子8はノズルプレート2に対向して各圧力発生室9内の基板7に形成されており、ここでは気泡発生用の発熱抵抗素子である。符号13はノズルプレート2および流路ユニットに接着してこれらを保持する筐体であり、その内部にインク室11に連通するインク経路14を有し、そのインク経路14の一端は先端を細くした針15となっている。
【0014】ノズルプレート2に形成された前述の開口部17は基板7の一部が露出するよう構成されており、その基板の露出部には各加圧素子8に直接に、または基板7上に形成した駆動用トランジスターを介して、接続する導体部18が等ピッチに列状に形成されている。尚、ここでは加圧素子8から導体部18に至る基板7上の電極パターンの詳細は省略するが、特開昭55-90376号公報他と同様、基板上に薄膜プロセスを用いて各加圧素子毎パターン配線したものである。
【0015】図中符号16a、16b、16c、16dは駆動信号伝送用フレキシブルケーブルであり、その先端には等ピッチに銅箔が露出しており、この銅箔は導体部18にはんだ、金/スズ、あるいは金/金接合等によって導接され、ケーブル16a、16b…は流路ユニット5a、5bや5b、5c等の間および筐体13に設けた穴または切り欠きを通して、その背後へ引き出されている。引き出されたケーブル16a、16b、…は筐体13の背後に取り付けられた回路基板19に接続されている。
【0016】尚、図では省略したが、導体部18とケーブル16との接続部、即ち開口17周囲および両サイドのケーブル16a、16d導接部にはインクとの接触を避けるため、また筐体13とノズルプレート2との接合をさらに補強するために、樹脂モールドが施される。
【0017】記録ヘッドはプリンター本体機構のキャリッジに搭載され、回路基板19に設けられたコネクター(図示なし)にはプリンター本体の波形発生回路からケーブルが接続されて、図1の矢印方向に移動を繰り返しつつメディア上に印刷を行う。針15に例えば4色Y、M、C、Bkのインクカートリッジを装着することにより各ノズル群毎に各色のインク滴を吐出しつつ印刷を実行できる。」

イ 「【0033】図10は本発明のさらに他の実施例であって、その吐出原理はすでに特開平5-50601号公報に説明されている。すなわち、ガラス基板77上の微小凹み81に形成された電極91と流路形成部材であるシリコン基板75との間に電界を加えることで薄い振動板78がたわみ変形するもので、伝送用のケーブル86はノズルプレート72の開口部87に露出したガラス基板上の導体部88およびコモン電極であるシリコン基板上の導体部92にノズルプレート側から導接され、導接されたケーブル86は流路ユニットの間を後方へ引き出されている。」

ウ 図1ないし図4から、次のことが見て取れる。
(ア)インクジェット式記録ヘッドは、ノズルプレート2、流路ユニット5、筐体13を順に積層接着し、その背後に回路基板19が取り付けされたものであること。
(イ)流路ユニット5内にはインク導入口12、インク室11、インク供給口10、圧力発生室9が形成されていること。
(ウ)インクは、インク経路14、インク導入口12、インク室11、インク供給口10を経由して圧力発生室9に供給されること。
(エ)駆動信号は、回路基板19、駆動信号伝送用フレキシブルケーブル16a,b,c,d及び導体部18を介して加圧素子8に伝送されること。
(オ)フレキシブルケーブル16a,b,c,dは、一端が流路ユニット5内の圧力発生室9に形成された加圧素子8に接続する導体部18と接続され、他端は、筐体13に形成された穴を貫通して筐体13の背後へと引き出され、筐体13の背後に取り付けられている回路基板19の背面へと曲げられて接続していること。

エ 上記アないしウの記載から、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。

「ノズルプレート2、流路ユニット5、筐体13の順に積層接着され、その背後に回路基板19が取り付けされ、針15に例えば4色Y、M、C、Bkのインクカートリッジを装着することにより各ノズル群毎に各色のインク滴を吐出しつつ印刷を実行できる、インクジェット式記録ヘッドであって、
流路ユニット5内にはインク導入口12、インク室11、インク供給口10、圧力発生室9が形成されており、
各圧力発生室9内の基板7にはノズルプレート2に対向して加圧素子8が形成されており、
筐体13は内部にインク経路14を有し、そのインク経路14の一端は先端を細くした針15となっており、
回路基板19にはコネクターが設けられており、
コネクターにはプリンター本体の波形発生回路からのケーブルが接続されており、
インクは、インク経路14、インク導入口12、インク室11、インク供給口10を経由して圧力発生室9に供給され、
駆動信号は、回路基板19、駆動信号伝送用フレキシブルケーブル16a,b,c,d及び導体部18を介して加圧素子8に伝送され、
フレキシブルケーブル16a,b,c,dは、一端が導体部18を介して流路ユニット5内の圧力発生室9に形成された加圧素子8と接続され、他端は、筐体13に形成された穴を貫通して筐体13の背後へと引き出され、筐体13の背後に取り付けられた回路基板19の背面へと曲げられて接続している、インクジェット式記録ヘッド。」(以下「引用発明1」という。)

(2)原査定における拒絶の理由で引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-210955号公報(以下「引用例2」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】上部基板及び下部基板の間に圧電素子からなる駆動壁とチャンネル部とを交互に並設し、各駆動壁に設けた駆動電極に電圧を印加する配線を上記上部基板又は下部基板に引き出すと共に、チャンネル部内にインクを供給するためのインク室及びインク流路を構成するインクマニホールド部材を該チャンネル部の一方開口端側に取り付けてなり、各駆動電極に電圧を印加することにより駆動壁をせん断変形させてチャンネル部内のインクを、チャンネル部の他方開口端側に取り付けたノズルプレートのノズル孔から吐出させるようにしたインクジェットヘッドであって、上記インクマニホールド部材に電極が配設され、該電極の一端はインクマニホールド部材の背面に延設されており、他端は上記駆動電極に電圧を印加する配線と電気的に接続され、それら電極及び配線を経由して各駆動電極への給電を可能としたことを特徴とするインクジェットヘッド。」

イ 「【0002】
【従来の技術】従来、チャンネル部を区画する駆動壁に電界を印加することにより該駆動壁をせん断変形させてチャンネル部内のインクを吐出させるようにしたシェアモード型のインクジェットヘッドが知られている。
【0003】かかるインクジェットヘッドは、図12に示すように、圧電素子を含む基板100に円盤状のブレードを用いて複数列の溝の加工を基板途中から行い、その後、該溝側に上部基板101を固着することにより圧電素子からなる駆動壁102とチャンネル部103とを交互に形成すると共に、上記駆動壁102に駆動電極104をめっき処理等により形成し、該駆動電極104に電圧を印加することにより駆動壁102をせん断変形させてチャンネル部103内のインクをノズルプレート105のノズル孔106から吐出させるようになっている。
【0004】上記従来のインクジェットヘッドでは、チャンネル部103は円盤状のブレードにより基板途中から溝加工されるため、該チャンネル部103には徐々に浅くなる円弧部103aが形成されている。駆動電極104はこの円弧部103aを利用してプリント基板107とボンディングワイヤ108によって電気的に接続されることで電圧が印加されるようになっているため、インクジェットヘッドの長さ(チャンネル部103に沿う方向の長さ)が実際に駆動される駆動壁102の長さ102aよりも長くなり、それだけ基板からの取り数(1枚のウェハーから取れるヘッド数)が少なくなる。例えば、駆動壁102の長さが3mmの場合であっても、円弧部103aの長さが4mm、平坦な部分が3mmとすると、ヘッドの長さは10mmとなり、ウェハーの長さが50mmのものであっても、外周の耳を取り除いて1枚のウェハーから製造できるのはたった4ヘッドということになり、極めて生産性が悪いという問題がある。
【0005】このため、本発明者は、上記円弧部103aをなくし、図3の如く、各駆動電極に電圧を印加するための配線を、駆動壁を上下から挟むように対向している上部基板又は下部基板から引き出すようにすることで、1枚のウェハーからの取り数が多く、極めて生産性を向上させたインクジェットヘッドを既に提案している(特願2000-299982号等)。
【0006】このようなインクジェットヘッドは、チャンネル部15はその入口から出口に亘る長さ方向で大きさと形状が変わらないストレートタイプとなるため、チャンネル部15内にインクを供給するためのインク室及びインク流路を構成するインクマニホールド部材(図3においては図示せず)は、該チャンネル部15の一方開口端側(図3における奥側)に取り付けられる一方、インクの吐出は、該インクマニホールド部材と反対側のチャンネル部15の他方開口端側(図3における手前側)から行うようになっており、インクの流入と吐出とが反対面となる。そして各駆動壁14の駆動電極16への電圧印加は、上部基板13又は下部基板11から引き出された電極から行うこととなる。
【0007】しかし、インクジェットヘッド同士を上下に多段に重ね合わせて多ノズル化(スタック構造化)を図る場合、各電極17cはこの重合面に位置し、電圧印加を行うことが困難であるため、インクジェットヘッドを多段に重ね合わせた場合でも各電極17cに電圧を印加することのできる構造が望まれている。
【0008】また、ノズル数(=電極数)が多い場合、通常、プリンター本体との間に駆動ICを介在させることが行われる。駆動ICはプリンター本体からの信号をシリアルデータとして受け取り、適切なタイミング信号により多数の電極に駆動波形を出力するというシリアルパラレル変換機能を少なくとも有している。この機能によりプリンター本体(プリンター制御基板)との間の接続線の本数は、ノズル数よりも大幅に少なくできる。従って、インクジェットヘッド自体がこの駆動ICを有するようにすれば、インクジェットヘッドとプリンター本体との間の接続線の本数を大幅に少なくでき、接続構造の簡素化を図ることができる。このため、駆動ICを実装しつつ、多段状に重ね合わせることが可能なインクジェットヘッドの構造が望まれている。」

ウ 「【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の課題は、各駆動壁に設けた駆動電極に電圧を印加する配線が上部基板又は下部基板に引き出されるようにしたインクジェットヘッドのスタック構造化を容易に図り得るようにすることにある。
【0010】また、本発明の他の課題は、各駆動壁に設けた駆動電極に電圧を印加する配線が上部基板又は下部基板に引き出されるようにしたインクジェットヘッドとプリンター本体との間の接続構造を簡素化させ、且つスタック構造化を容易に図り得るようにすることにある。」

エ 「【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題は、以下の発明よって解決される。
【0012】請求項1記載の発明は、上部基板及び下部基板の間に圧電素子からなる駆動壁とチャンネル部とを交互に並設し、各駆動壁に設けた駆動電極に電圧を印加する配線を上記上部基板又は下部基板に引き出すと共に、チャンネル部内にインクを供給するためのインク室及びインク流路を構成するインクマニホールド部材を該チャンネル部の一方開口端側に取り付けてなり、各駆動電極に電圧を印加することにより駆動壁をせん断変形させてチャンネル部内のインクを、チャンネル部の他方開口端側に取り付けたノズルプレートのノズル孔から吐出させるようにしたインクジェットヘッドであって、上記インクマニホールド部材に電極が配設され、該電極の一端はインクマニホールド部材の背面に延設されており、上記駆動電極に電圧を印加する配線が上記インクマニホールド部材の電極と電気的に接続され、それら電極及び配線を経由して各駆動電極への給電を可能としたことを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0013】これにより、インクジェットヘッドを上下に多段状に重ね合わせても、インクマニホールド部材の背面に配設されている電極から各駆動電極に電圧を印加することができるようになるため、スタック構造化を容易に図り得るものとなる。」

オ 「【0052】また、インクマニホールド部材20に駆動IC30を設ける場合は、該インクマニホールド部材20の背面20bに延設された駆動ICとの接続用電極24bとヘッドチップ10の各駆動電極16に電圧を印加するための配線(電極17c)とが、駆動IC30が実装された第3の部材を用いて電気的に接続されるようにすることも好ましい。
【0053】この具体的構成を図8及び図9に示す。
【0054】この態様において、ヘッドチップ10は、図1及び図2に示す態様と上下を逆にしてインクマニホールド部材20に取り付けられており、プリンター本体側と駆動IC30との接続用電極24bが、インクマニホールド部材20の下面20cから背面20bにかけて配設されている。また、図1及び図2に示す態様と上下を逆にする代わりに、電極17cを下部基板11側から引き出すようにしてヘッドチップ10を構成するようにしてもよい。
【0055】この駆動ICとの接続用電極24bとヘッドチップ10の電極17cとの電気的接続を受け持つ第3の部材として、ここでは片面FPC40を用いている。この片面FPC40の一面には駆動IC30が実装されており、該駆動IC30と同一面には、該駆動IC30とヘッドチップ10の各電極17cとをそれぞれ電気的に接続するための配線41a及び駆動IC30とインクマニホールド部材20に配設された各接続用電極24bとをそれぞれ電気的に接続するための配線41bがそれぞれ形成されている。
【0056】この駆動IC30が実装された片面FPC40を、ヘッドチップ10とインクマニホールド部材20とを接合した後に、駆動IC30の取付け面側をヘッドチップ10及びインクマニホールド部材20側に向けて、片面FPC40に形成されている各配線41aとヘッドチップ10の各電極17cとの電気的接続及び同じく各配線41bとインクマニホールド部材20の各接続用電極24bとの電気的接続を行う。これらの電気的接続には、半田や異方性導電フィルムを用いた加熱圧着を採用することができる。
【0057】この態様によれば、駆動IC30をインクジェットヘッド1に実装することによる上記利点に加え、ヘッドチップ10の電極17cとインクマニホールド部材20の接続用電極24bとが同一面であるため、組立工程が簡易化される利点がある。特に、片面FPC40は電気的接続を行う面と片面FPC40に実装されている駆動IC30とが同一面となり、また、薄く曲げ易いため、より組立工程が簡易化されると共に、安価であるため低コスト化を図ることができる。
【0058】なお、インクマニホールド部材20の下面20cには、片面FPC40に実装されている駆動IC30を収容するための凹部26が形成されており、ヘッドチップ10及びインクマニホールド部材20に片面FPC40を電気的に接続した際の駆動IC30を収容し、該駆動IC30による片面FPC40のインクマニホールド部材20からの浮き上がりを防止するようにしている。
【0059】また、インクマニホールド部材20の上面20aには、スタック構造化を図る際に、該上面20a側に重ね合わされる他のインクジェットヘッド1の片面FPC40を収容するためのザグリ部(掘り込み部)27が形成されている。これにより、図10の如く片面FPC40を用いて駆動IC30を設けたインクジェットヘッド1同士を多段に重ね合わせた場合に、ヘッド間を密に重合させることができる。
【0060】この場合、駆動IC30は上下のインクマニホールド部材20間に埋め込まれた状態となり放熱が困難になる。このため、インクマニホールド部材20に形成した凹部26をインクマニホールド部材20の側面20d(片側又は両側)に延長させると共に、駆動IC30に放熱用金属31を取り付け、図9及び図11に示すように、この放熱用金属31を凹部26に沿って側面20dに延出させ、駆動IC30の熱を放熱用金属31を介してインクマニホールド部材20の側面20dから外部に向けて放熱させるようにするとよい。また、図示しないが、凹部26をインクマニホールド部材20の背面20b側に延出させ、同様にして背面20bから外部に向けて放熱させるようにしてもよい。」

カ 「【0061】
【発明の効果】本発明は以上のように構成してなるから、各駆動壁に設けた駆動電極に電圧を印加する配線が上部基板又は下部基板に引き出されるようにしたインクジェットヘッドとプリンター本体との間の接続をインクジェットヘッドの背面側において行うことができるため、スタック構造化を容易に図ることができるようになる。
【0062】また、インクジェットヘッドに駆動ICを容易に実装可能であるため、プリンター本体との間の接続構造を簡素化させることができ、加えて、インクジェットヘッドとプリンター本体との間の接続をインクジェットヘッドの背面側において行うことができるため、スタック構造化を容易に図ることができる。」

キ 上記アないしカの記載から、引用例2には次の発明が記載されているものと認められる。

「圧電素子からなる駆動壁102とチャンネル部103とを交互に形成すると共に、上記駆動壁102に駆動電極104を形成し、該駆動電極104に電圧を印加することにより駆動壁102をせん断変形させてチャンネル部103内のインクをノズルプレート105のノズル孔106から吐出させるようになっている従来のインクジェットヘッドでは、インクジェットヘッドのチャンネル部103に沿う方向の長さが実際に駆動される駆動壁102の長さ102aよりも長くなり、それだけ1枚のウェハーから取れるヘッド数が少なくなるため、各駆動電極に電圧を印加するための配線を、駆動壁を上下から挟むように対向している上部基板又は下部基板から引き出すようにすることで、1枚のウェハーからの取り数が多く、極めて生産性を向上させ、チャンネル部15内にインクを供給するためのインク室及びインク流路を構成するインクマニホールド部材は、該チャンネル部15の一方開口端側に取り付けられる一方、インクの吐出は、該インクマニホールド部材と反対側のチャンネル部15の他方開口端側から行うようになっており、インクの流入と吐出とが反対面となって、各駆動壁14の駆動電極16への電圧印加は、下部基板11から引き出された電極から行うこととなるインクジェットヘッドにおいて、インクジェットヘッド同士を上下に多段に重ね合わせて多ノズル化すなわちスタック構造化を図る場合、各電極17cはこの重合面に位置し、電圧印加を行うことが困難であるため、インクジェットヘッドを多段に重ね合わせた場合でも各電極17cに電圧を印加することのでき、かつ、プリンター本体のプリンター制御基板との間の接続線の本数をノズル数よりも大幅に少なくできるようにプリンター本体との間に介在させる駆動ICをインクジェットヘッド自体が有するようにした構造のインクジェットヘッドであって、
上記インクマニホールド部材に電極が配設され、該電極の一端はインクマニホールド部材の背面に延設されており、上記駆動電極に電圧を印加する配線が上記インクマニホールド部材の電極と電気的に接続され、それら電極及び配線を経由して各駆動電極への給電を可能とし、かつ、インクマニホールド部材20の背面20bに延設された駆動ICとの接続用電極24bとヘッドチップ10の各駆動電極16に電圧を印加するための配線の電極17cとが、駆動IC30が実装された第3の部材を用いて電気的に接続されるようにし、
駆動IC30は、プリンター本体からの信号をシリアルデータとして受け取り、適切なタイミング信号により多数の電極に駆動波形を出力するというシリアルパラレル変換機能を少なくとも有しており、
第3の部材として、一面には駆動IC30が実装されており、該駆動IC30と同一面には、該駆動IC30とヘッドチップ10の各電極17cとをそれぞれ電気的に接続するための配線41a及び駆動IC30とインクマニホールド部材20に配設された各接続用電極24bとをそれぞれ電気的に接続するための配線41bがそれぞれ形成されている片面FPC40を用いるとともに、インクマニホールド部材20の上面20aには、スタック構造化を図る際に、該上面20a側に重ね合わされる他のインクジェットヘッド1の片面FPC40を収容するための掘り込み部であるザグリ部27を形成することにより、片面FPC40を用いて駆動IC30を設けたインクジェットヘッド1同士を多段に重ね合わせた場合に、ヘッド間を密に重合させることにより、片面FPC40は電気的接続を行う面と片面FPC40に実装されている駆動IC30とが同一面となり、また、薄く曲げ易いため、より組立工程が簡易化されると共に、安価であるため低コスト化を図った態様のものであり、
この態様によれば、ヘッドチップ10の電極17cとインクマニホールド部材20の接続用電極24bとが同一面であるため、組立工程が簡易化される利点がある反面、駆動IC30は上下のインクマニホールド部材20間に埋め込まれた状態となり放熱が困難になるインクジェットヘッド。」(以下「引用発明2」という。)

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「インク」、「吐出」、「ノズル」、「ノズルプレート2及び流路ユニット5」、「インク経路14」、「駆動信号」、「回路基板19」、「『ノズルプレート2に対向して加圧素子8が形成されて』いる『圧力発生室9』」、「『内部にインク経路14を有』する『筐体13』」及び「インクジェット式記録ヘッド」は、それぞれ、本願発明の「液体」、「噴射」、「ノズル」、「ノズルブロック」、「供給流路」、「駆動信号」、「回路基板」、「ノズルに連通する圧力室」、「供給流路形成部材」及び「液体噴射ヘッド」に相当する。

(2)引用発明1の「加圧素子8」と本願発明の「圧電素子」とは、「圧力室(圧力発生室9)」内の「液体(インク)」を加圧して、「ノズル」から「液体(インク滴)」を「噴射(吐出)」させる加圧手段である点で一致することが当業者に自明である。

(3)引用発明1において、「回路基板(回路基板19)」にはコネクターが設けられており、コネクターにはプリンター本体の波形発生回路からのケーブルが接続されており、駆動信号は、回路基板19、駆動信号伝送用フレキシブルケーブル16a,b,c,d及び導体部18を介して加圧素子8に伝送されようになっているところ、駆動信号を発生する装置はドライバであるから上記駆動信号はドライバからのものであるといえる。
したがって、引用発明1の「回路基板」は、ドライバからの駆動信号を流路ユニット5の加圧素子8に供給するものであり、ドライバに電気的に接続される部分と、加圧素子8に電気的に接続される部分とを含んでいるといえる。
よって、引用発明1の「回路基板」と本願発明の「圧電素子に電気的に接続される第4の部分を含む回路基板」とは、「ドライバからの駆動信号を前記ノズルブロックに供給する」点、「『ドライバに電気的に接続され』る『第1の部分』を含む」点及び「加圧手段に電気的に接続される部分を含む」点で一致する。

(4)引用発明1の「ノズルブロック(ノズルプレート2及び流路ユニット5)」はノズル群を備えているといえるから、本願発明の「ノズルブロック」と、「液体を噴射するノズルが複数個配置された」点で一致する。

(5)引用発明1において、インクジェット式記録ヘッドは、「ノズルブロック(ノズルプレート2、流路ユニット5)」、「供給流路形成部材(筐体13)」の順に積層接着され、その背後に回路基板19が取り付けされ、針15に例えば4色Y、M、C、Bkのインクカートリッジを装着することにより各「ノズル」群毎に各色のインク滴を吐出しつつ印刷を実行できるものであり、「ノズルブロック(流路ユニット5)」内にはインク導入口12、インク室11、インク供給口10、「圧力室(圧力発生室9)」が形成されており、「供給流路形成部材(筐体13)」は内部に「供給流路(インク経路14)」を有し、その「供給流路(インク経路14)」の一端は先端を細くした針15となっており、「液体(インク)」は、「供給流路(インク経路14)」、インク導入口12、インク室11、インク供給口10を経由して「圧力室(圧力発生室9)」に供給されるから、引用発明1の「供給流路(インク経路14)」と本願発明の「供給流路」とは「前記ノズルブロックに前記液体を供給する」点、「前記圧力室に対して前記ノズルと反対側に配置され」る点及び「供給流路形成部材に形成され」る点で一致する。

(6)上記(1)ないし(5)からみて、本願発明と引用発明1とは、
「液体を噴射するノズルが複数個配置されたノズルブロックと、
前記ノズルブロックに前記液体を供給する供給流路と、
ドライバからの駆動信号を前記ノズルブロックに供給する回路基板と、
をそれぞれ複数個含み、
前記ノズルブロックは、
前記ノズルに連通する圧力室と、
前記圧力室の内部の前記液体を加圧する加圧手段と、
を含み、
前記供給流路は前記圧力室に対して前記ノズルと反対側に配置され、供給流路形成部材に形成され、
前記回路基板は第1の部分及び前記加圧手段に電気的に接続される部分を含み、
前記第1の部分は前記ドライバに電気的に接続される液体噴射ヘッド。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記加圧手段が、本願発明では「圧電素子」であるのに対して、引用発明1では圧電素子ではない点。

相違点2:
前記回路基板が、本願発明では、さらに、屈曲する第2部分と、前記供給流路形成部材を貫通する第3部分と、第4の部分とを含んでいるのに対して、引用発明1では、そのような第2部分、第3部分及び第4の部分を含んでおらず、前記「供給流路形成部材(筐体13)」に形成された穴を貫通しているのは、駆動信号伝送用フレキシブルケーブル16a,b,c,dである点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
インクジェット式記録ヘッドの加圧手段として圧電素子を用いることは周知慣用である(以下「周知慣用技術」という。一例として、引用例2に記載された「圧電素子12」参照。)から、引用発明の「加圧手段」として「圧電素子」を採用することは、当業者が周知慣用技術に基づいて適宜なし得た設計上の事項である。

(2)相違点2について
ア 引用例2には、上記3(2)で述べたとおりの引用発明2が記載されている(上記3(2)キ参照。)。

イ 引用発明2において、駆動IC30は、駆動IC30とヘッドチップ10の各電極17cとをそれぞれ電気的に接続するための配線41aが形成されている、薄く曲げ易い、片面FPC40の前記配線41a及び駆動IC30とインクマニホールド部材20に配設された各接続用電極24bとをそれぞれ電気的に接続するための配線41bがそれぞれ形成されている面と同一面に、形成されており、引用発明2は、この態様によれば、プリンター本体のプリンター制御基板との間の接続線の本数をノズル数よりも大幅に少なくでき、かつ、ヘッドチップ10の電極17cとインクマニホールド部材20の接続用電極24bとが同一面であるため、組立工程が簡易化される利点がある反面、駆動IC30は上下のインクマニホールド部材20間に埋め込まれた状態となり放熱が困難になるものである。
これに対し、引用発明1では、ドライバはインクジェット式記録ヘッド自体が有しているかどうか不明であるが、回路基板19は、順に積層接着されたノズルプレート2、流路ユニット5、筐体13の背後に取り付けられるのだから、引用発明1において、引用発明2と同様に駆動ICとしてドライバを回路基板19に形成しても引用発明2のように放熱が困難になるものではなく、かつ、引用発明2と同様に回路基板を薄く曲げ易いFPCとすれば、駆動信号伝送用フレキシブルケーブル16a,b,c,dを介する必要もなく、駆動ICが発する駆動信号を、FPCとした回路基板により「加圧手段」に伝送することができ、そうすれば、引用発明2と同様に、回路基板が薄く曲げ易いため、より組立工程が簡易化されると共に、安価であるため低コスト化を図ることができることが当業者に自明である。
したがって、引用発明1において、「加圧手段」として「圧電素子」を採用し(上記(1)参照。)、前記筐体13の背後に取り付ける回路基板19をFPCとするとともに、該回路基板19にドライバを駆動ICとして形成し、プリンター本体からの信号をコネクターを介してシリアルデータとして受け取れるように、前記筐体13の背後において前記回路基板19の一端にコネクターを電気的に接続して設け、受け取ったシリアルデータを前記駆動ICでシリアルパラレル変換し、駆動信号伝送用フレキシブルケーブル16a,b,c,dを介さずに、該回路基板の他端を、筐体13に形成された穴を貫通して、流路ユニット5内の圧力発生室9に形成された上記「圧電素子」に電気的に接続するようになすことは、当業者が引用発明2及び周知慣用技術に基づいて容易に想到することができたことである。

ウ 引用発明1において上記イのようになすと、引用発明1において、前記回路基板が、屈曲する第2部分も、前記「供給流路形成部材(筐体13)」を貫通する第3部分も、圧電素子に電気的に接続される第4の部分も含むものとなるから、引用発明1において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用発明2及び周知慣用技術に基づいて容易になし得たことである。

(3)本願発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果、引用発明2の奏する効果及び周知慣用技術の奏する効果から、当業者が予測できた程度のことである。

(4)したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-11 
結審通知日 2011-05-17 
審決日 2011-05-30 
出願番号 特願2007-304045(P2007-304045)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島▲崎▼ 純一  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 鈴木 秀幹
笹野 秀生
発明の名称 液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 宮坂 一彦  
代理人 須澤 修  

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