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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1240286
審判番号 不服2010-22139  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-01 
確定日 2011-07-14 
事件の表示 特願2005-131547「スイッチングユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月9日出願公開、特開2006-311711〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成17年4月28日にされた特許出願(2005年特許願第131547号。以下「本件出願」という。)につき、平成22年7月2日付けで拒絶査定(発送日:同月6日)がなされたところ、これに対し、同年10月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年10月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成22年10月1日付けの手続補正を却下する。

2 補正却下の決定の理由
(1)平成22年10月1日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容
本件補正は、本件出願の明細書の特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり補正することを含むものである。

ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成21年12月4日付け手続補正書によるもの)
「【請求項1】
電流のオン/オフを制御可能なスイッチングデバイスと、外部との接続を行うための接続端子とを備えるスイッチングユニットにおいて、
絶縁物を介して互いに密着された回路基板とバスバー回路とを有し、これらの双方に対して前記スイッチングデバイスが接続されてなる回路体を、ケーシングに収容して備え、
前記バスバー回路が肉厚のバスバーで構成されると共に、前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体で、かつ、前記バスバーよりも肉薄とされて前記バスバーから前記接続端子の終端までストレートに延設されており、
前記ケーシングには、前記バスバーが前記接続端子の延設方向と垂直な方向から嵌め入れられていることを特徴とするスイッチングユニット。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
電流のオン/オフを制御可能なスイッチングデバイスと、外部との接続を行うための接続端子とを備えるスイッチングユニットにおいて、
絶縁物を介して互いに密着された回路基板とバスバー回路とを有し、これらの双方に対して前記スイッチングデバイスが接続されてなる回路体を、ケーシングに収容して備え、
前記バスバー回路が肉厚のバスバーで構成されると共に、前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体で、かつ、前記バスバーよりも肉薄とされて前記バスバーから前記接続端子の終端までストレートに延設されており、
前記ケーシングには、前記肉厚のバスバーが前記接続端子の延設方向と垂直な方向から嵌め入れられているとともに、前記ケーシングはバスバー回路を構成するバスバー間に介在する仕切壁を有することを特徴とするスイッチングユニット。」
(なお、下線部は補正箇所を示す。)

(2) 本件補正の適否について
本件補正について、本件補正前の請求項1に係る発明の「前記バスバーが前記接続端子の延設方向と垂直な方向から嵌め入れられている」を、「前記肉厚のバスバーが前記接続端子の延設方向と垂直な方向から嵌め入れられている」と補正することは、本件補正前の請求項1に「前記バスバー回路が肉厚のバスバーで構成される」との記載があり、その記載に対応して補正したもので、明りょうでない記載の釈明にあたるものである。
また、本件補正前の請求項1に係る発明に「とともに、前記ケーシングはバスバー回路を構成するバスバー間に介在する仕切壁を有する」構成を付加する構成は、ケーシングの構成を減縮し特定する補正であるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そうすると、本件補正は減縮する補正を含む補正であり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前(以下、単に「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3) 独立特許要件について
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(ア)引用刊行物記載の発明
(3A)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された特開2004-39858号公報(以下、「引用刊行物A」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与したものである。以下、同様である。)

(3A-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、バスバーや半導体素子を含み、絶縁層を介して放熱部材上に配設される電力回路部の防水方法に関し、例えば共通の車載電源から複数の電子ユニットに配電を行うための電力回路部の防水方法及び電力回路部をもつパワーモジュールに関する。
・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このようなパワーモジュールにおいて、外部回路と接続される外部接続端子を形成する方法としては、例えば前記回路配設面上に配設される電力回路部に備えられたバスバーの端部を折り起こしてこれを外部側のコネクタと結合される外部接続端子とすることが行われている。しかしながら、この構造では、結合方向が回路配設面の法線方向に限られることになる。そこで、結合方向を回路配設面と平行な方向にする手段として、バスバーの端部を電力回路部からまっすぐに延ばすことが考えられるが、この場合には、外部接続端子が放熱部材の回路配設面上に近接して配置されるため、外部接続端子と放熱部材が離間していても大電流、大電圧の場合には短絡の虞があり、また振動等によっても一時的に接触したり等して両者の確実な絶縁を確保することができないという問題がある。また、外部接続端子が放熱部材の回路配設面に近接して配置された場合には、その外部接続端子をフードにより取り囲んでコネクタを形成することが困難になるという問題もある。」

(3A-2)「【0017】
1)電力回路部形成工程
まず、この発明に用いられる所定の電力回路部1を形成する。
【0018】
すなわち、この電力回路部1は、略矩形状の平面領域内に複数枚のバスバー10aが同一平面内に所定のパターン、本実施形態では平面領域両側縁(図1では上下両側縁)にバスバー10a端部が突出されるようなパターンで配列されたバスバー構成板10と、このバスバー構成板10を構成するバスバー10aのうち入力端子用バスバー10aと出力端子用バスバー10aとの間に介在される半導体スイッチング素子である複数個のFET11と、上記バスバー構成板10の片面(図1では右側面)に接着され上記FET11のスイッチング動作を制御する制御回路を有する制御回路基板12とを含み、上記FET11はバスバー構成板10と制御回路基板12の双方に電気的に接続されている。また、この電力回路部1は、所望方向から外部端子が接続される複数本の外部接続端子13,14を有し、これらの外部接続端子13,14のうち少なくとも一の接続端子14は、上記バスバー構成板10の平面領域と略平行な方向(図1では上方)から外部端子が接続されるものとなされている。ここで、平面領域の平行な方向とは、バスバー10aが配列される平面領域と平行な方向をいい、電力回路部1を後述する放熱部材2の回路配設面2a上に配設した場合には、この回路配設面2aと平行な方向、すなわち回路配設面2aの法線方向と垂直な方向と一致するものである。
【0019】
なお、バスバー構成板10の形状やバスバー10aの配置パターンは適宜変更することができ、またFET11についてこれをその他の半導体スイッチング素子やスイッチング素子以外のその他の半導体素子に変更することもできる。さらに、制御回路基板12についてこれをFET11の上位に配置するように変更することもできる。
【0020】
上記外部接続端子13,14は、所定のバスバー10aを折り曲げて構成する。本実施形態では、外部接続端子13,14は、バスバー構成板10の平面領域の法線方向(図1では側方)に指向するI字状の第1外部接続端子13と、バスバー構成板10の平面領域の法線方向に対して垂直方向(図1では上方)に指向するL字状の第2外部接続端子14とを有する。なお、言うまでもないが、この第2外部接続端子14が本願請求項に言う外部接続端子に相当する。
【0021】
具体的には、上記バスバー10aのうち電力回路部1の下端縁(図2では右側端縁)に列設されたバスバー10aの端部を垂直に折り起こして第1外部接続端子13を形成する。一方、図1及び図4に示すように、電力回路部1の上端縁(図2では左側端縁)に列設されたバスバー10aの端部を折り起こし、その起立端部のさらに端部をバスバー構成板10に対して平行、すなわち平面領域の法線方向に垂直な方向(図1では上方)に折り戻してL字状の第2外部接続端子14を構成する。すなわち、この第2外部接続端子14は、上記平面領域から立ち上がる起立部14aと、この起立部14aの先端から回路配設面2aと略平行にその外側に(図1では上方)向かって延出する延出部14bとから構成され、上述のように、上方から外部端子が接続されるものとなされている。この第2外部接続端子14は、バスバー10a端部が一動作あるいは複数動作で折り曲げられて構成されている。
【0022】
これらの外部接続端子13,14は、例えば入力端子、出力端子または信号入力端子として機能するものであり、これらの端子13,14に外部端子が電気的に接続されるものとなされている。なお、第1及び第2外部接続端子13,14は、入出力端子、信号入力端子といった種類によって区別されるものではなく、先端部の指向方向によって区別されるものであり、従って第1及び第2外部接続端子13,14のそれぞれに上記のような各端子が含まれ得ることは言うまでもない。
【0023】
このように、第2外部接続端子14をL字状に形成し、すなわち第2外部接続端子14が平面領域から立ち上がる起立部14aとこの起立部14aの先端部から平面領域と略平行にその外側に向かって延出する延出部14bとを有するものとなされているので、後述のように電力回路部1を回路配設面2aに配設した場合に、放熱部材2から離間した状態で第2外部接続端子14の延出部14bを配置することができ、延出部14bの短絡を確実に防止することができる。すなわち、電力回路部1と同一平面内に外部接続端子を配置すれば、この外部接続端子が放熱部材2の回路配設面2a上に近接して配置されるため、外部接続端子と放熱部材2とが離間していても大電流、大電圧の場合には短絡の虞があるのに対して、本発明においては上記のように起立部14aにより第2外部接続端子14を設けるので、延出部14bと放熱部材2との間を十分に離間させることができ、延出部14bの短絡を確実に防止することができる。」

(3A-3)「【0024】
2)電力回路部の配設工程
この電力回路部1を、図1及び図2に示すように、放熱部材2の回路配設面2aに絶縁層20を介して配設する。すなわち、上記電力回路部1を、例えば熱伝導性の高い接着剤により接着し、あるいはバスバー10aの中に接地されるべきものが含まれる場合には、このバスバー10aを放熱部材2にネジ止めすることによって絶縁層20を介して放熱部材2の回路配設面2a上に配設する。
【0025】
上記電力回路部1が配設される放熱部材2は、例えば全体がアルミニウム系金属等の熱伝導性に優れた材料で形成され、上面が平坦に形成されて回路配設面2aとして構成されている。一方、この放熱部材2と電力回路部1との間に介在する絶縁層20は、放熱部材2の回路配設面2aの中央部における上記電力回路部1に対応する領域に設けられ、放熱部材2に熱的に接続されており、例えば絶縁性の高い接着剤(例えばエポキシ系樹脂からなる接着剤、シリコーン系接着剤等)を塗布して乾燥させることにより形成され、あるいは回路配設面2a上に絶縁シートを貼着することにより形成される。
【0026】
なお、この放熱部材2について回路配設面2aと反対側に複数の放熱フィンを列設し、放熱効率を向上させるように構成しても良い。」

(3A-4)「【0027】
3)ケース製造工程
そして、上記放熱部材2の回路配設面2a上に配設された電力回路部1に防水を施すため、その回路配設面2a上の電力回路部1の所定範囲を覆う所定のケース3を製造する。
【0028】
このケース3は、絶縁材からなり、一方(図1では左側)に開口して放熱部材2と反対側(図1では右側)から前記電力回路部1の所定範囲を覆う箱型形状を有し、周側壁を構成するケース本体30と、このケース本体30の上端開口部(図では右端開口部)を閉塞するケース本体天蓋体31とを備える。
【0029】
このケース本体30は、上記放熱部材2の回路配設面2aに重ね合わす略矩形環状の重合面3aを有し、この重合面3aには、図1及び図5に示すように、第1外部接続端子13に対応して重合面3aの法線方向に貫通して設けられその対応する第1外部接続端子13が挿通される複数個の端子用貫通孔32と、第2外部接続端子14に対応して設けられ、重合面3aを横切るように形成されたバスバー収納溝部33と、第1及び第2外部接続端子14を除く電力回路部1を取り囲み得る囲繞溝34とを備える。
【0030】
バスバー収納溝部33は、後述するようにケース3からはみ出して配設される第2外部接続端子14に連設されるバスバー10aが収納されるものであり、ケース3と放熱部材2間のバスバー10aに起因する両部材2,3間の隙間を全てあるいは一部吸収するために設けられるものである。従って、このバスバー収納溝部33は、バスバー10aの厚み等を考慮して設けられる。
【0031】
囲繞溝34は、上述のように、電力回路部1の所定範囲、すなわち少なくともFET11を含み第1及び第2外部接続端子13,14よりも内側の電力回路部1領域を、取り囲み得るように重合面3aに沿って略矩形環状に形成され、その断面形状は特に限定するものではないが、本実施形態では断面略V字状に形成されている。また、囲繞溝34は、後述するように、この溝に沿って熱硬化性樹脂を含む接着剤が充填されるものであり、その深さは充填される接着剤を考慮して適宜設定される。
【0032】
一方、ケース本体30の上記重合面3aと反対側の面及び上端側面には、上記電力回路部1の第1及び第2外部接続端子13,14にそれぞれ対応して形成されるコネクタ形成用の第1及び第2フード4,5を備える。すなわち、図1に示すように、ケース本体30の下端部には側方に突出する筒状の第1フード4が設けられ、上記電力回路部1の第1外部接続端子13が端子用貫通孔32からこの第1フード4内に突出し得るように構成されている。一方、ケース本体30の上端部に上方に突出する第2フード5が設けられ、上記電力回路部1の第2外部接続端子14における延出部14b先端部がこの第2フード5内に収容し得るように構成されている。
【0033】
これらの第1フード4とこれに対応する1本ないし複数本の第1外部接続端子13とにより、また第2フード5とこれに対応する1本ないし複数本の第2外部接続端子14とにより、別のコネクタの結合可能な外部接続コネクタを構成している。これらの第1及び第2フード5の断面形状は、接続される別のコネクタの形状を考慮して適宜設定されるものである。
【0034】
図3及び図5に明示するように、ケース本体30には、上記第2フード5の底部に一端が放熱部材2側に開口した樹脂充填用の凹部6が設けられている。言い換えると、ケース本体30の周側壁における放熱部材2側の端部にケース本体30の重合面3aから第2フード5の底部に延びる一端開口型の凹部6が設けられている。この凹部6は、ケース3と放熱部材2の組付状態において、放熱部材2の回路配設面2aとの間に、後述する防水用樹脂を充填する容器を形成するものである。この凹部6は、またその底部に沿って第2外部接続端子14の起立部14aが収容されるものとなされており、特に本実施形態では、図5に示すように、この底部に放熱部材2側端縁から延びる起立部収納溝60が設けられ、第2外部接続端子14の起立部14aを収納するものとなされている。この起立部収納溝60の深さは、起立部14aの厚みを考慮して適宜設定される。このように、起立部収納溝60に起立部14aが収納されることにより、第2外部接続端子14の位置決め、特に第2フード5に対する位置決めが容易かつ確実になされるものとなされている。
【0035】
上記第2フード5には、後述するようにケース3を放熱部材2に組み付ける際に第2外部接続端子14の先端部を側方より挿通させ得る組付時挿通孔50が形成されている。すなわち、この第2フード5の放熱部材2側の周側壁には、上記凹部6の底面からの高さが少なくとも延出部14b長さに相当するように設定され、これにより凹部6から突出する第2外部接続端子14の対応部分を側方より挿通させ得る組付時挿通孔50が設けられている。
【0036】
ケース本体天蓋体31は、ケース本体30の開口部に対応して略矩形状に形成され、後述する組付工程において接着、溶着等によりケース本体30に取り付け得るものとなされている。
【0037】このように、第2フード5内に第2外部接続端子14を収納した状態に組み付けるに当たって、第2フード5に設けられた組付時挿通孔50及び一端が開口した凹部6を通して行われるので、ケース3を一軸方向(回路配設面2aの法線方向)に操作することによって放熱部材2に簡単に組み付けることができ、その組付作業性が向上する。」

(3A-5)「【0038】
4)組付工程
上記ケース3製造工程により製造されたケース3を、放熱部材2に組み付ける。
【0039】
すなわち、まず上記ケース3のうちのケース本体30における上記囲繞溝34に、接着剤を充填する。具体的には、図5に示すように、上記囲繞溝34に熱硬化性樹脂(例えばシリコーン系樹脂)を含む接着剤を充填する。
【0040】
次に、この囲繞溝34に接着剤が充填されたケース本体30に、上記電力回路部1が配設された放熱部材2を組み付け、このケース本体30と放熱部材2との間にシール部材7を形成して両部材2,30をシールする。具体的には、まず、上記のように接着剤をケース本体30の囲繞溝34に隈無く充填した後、ケース本体30の凹部6及び組付時挿通孔50に第2外部接続端子14を挿通させてこの第2外部接続端子14を第2フード5及び凹部6内に収容しつつ、ケース本体30の重合面3aに放熱部材2の回路配設面2aを重ね合わせる。そして、上記組み付けたケース本体30と放熱部材2を加熱すると、熱硬化性樹脂を含む接着剤が硬化され、シール部材7が形成される。すなわち、接着剤によりシール部材7を形成するシール形成工程を経て、上記ケース本体30と放熱部材2との間をシールする。
【0041】
この接着剤が熱硬化されて形成されたシール部材7は、上記電力回路部1の所定範囲、本実施形態では第1及び第2外部接続端子14よりも内側の電力回路部1部分を取り囲む略矩形環状の形状を呈し、上記放熱部材2とケース本体30との間にこれら両部材2,30に接着された状態で介在している。
【0042】
このシール形成工程後に、上記ケース本体30の放熱部材2と反対側の開口を上方に向け、この開口から適当なポッティング剤を充填することによりケース本体30内部を封止する。
【0043】
そして、このポッティング工程後に、ケース本体天蓋体31を上記ケース本体30の放熱部材2と反対側の開口を閉塞した状態で接着、溶着等によりケース本体30に取り付ける。
【0044】
而して、ケース本体30にケース本体天蓋体31が取り付けられたケース3は、上記シール部材7を介在させた状態で放熱部材2に組み付けられている。
【0045】
このように、第1及び第2外部接続端子13,14よりも内側の電力回路部1部分を取り囲む形状のシール部材7を介してケース3を放熱部材2に組み付けるので、これらの外部接続端子13,14よりも内側の電力回路部分、すなわち外部接続端子13,14を除く電力回路部1は、ケース3及び放熱部材2により確実に防水される。従って、外部接続端子13,14を除く電力回路部1について簡単な方法で有効な防水を図ることができ、しかも電力回路部1からの発熱は放熱部材2により十分に放熱されるので、電力回路部1の性能を高水準のまま維持することもでき、また電力回路部1が容器内に収納されるのではなく、上記のように放熱部材2の回路配設面2a上に設けられた電力回路部1をケース3により被覆するので、アッパーケースとロアケースとを要する従来の電気接続箱に比べてコンパクトに形成することができる。」

(3A-6)図1には、放熱部材2上の絶縁層20を介してバスバー構成板10を構成するバスバー10aが配置することが描かれ、さらに放熱部材2の端部表面に凹凸部を形成することが描かれている。

上記摘記事項(3A-1)?(3A-6)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、
「半導体スイッチング素子である複数個のFET11と、バスバー構成板10を構成するバスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14と、上記FET11のスイッチング動作を制御する制御回路基板12とを含む電力回路部1をもつパワーモジュールにおいて、
バスバー構成板10と制御回路基板12とは接着され、
FET11は、バスバー構成板10と制御回路基板12の双方に電気的に接続され、
電力回路部1のバスバー構成板10を構成するバスバー10aが、絶縁層20を介して放熱部材2に配設され、
電力回路部1が配設された放熱部材2は、ケース本体30に組み付けられ、
ケース本体天蓋31は、ケース本体30に取り付けられ、
外部接続端子13、14は、バスバー10aの端部を垂直に折り起こして形成されるとともに、バスバー10aの端部を折り起こし、その起立端部のさらに端部をバスバー構成板10に対して平行に折り戻してL字状に形成されたパワーモジュール。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3B)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の前に頒布された、特開2001-314019号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

(3B-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、絶縁基板内にバスバーを積層した積層式のバスバーを用いた電気接続箱に関するものである。」

(3B-2)「【0005】また、図3に示されている積層式の場合には、バスバー103を構成する導電性の薄板の板厚tがすべて同一(例えば、0.64mm)であるため、電流値が大きい例えば(FAN RLY)ファンリレーや(HTR RLY)ヒーターリレーに接続される部分では温度上昇が部分的に大きくなり、特にこのようなファンリレーやヒータリレー部分が積層の内部にある場合には熱が内部にこもり易く絶縁基板105の変形や溶損を招くおそれがあるという問題がある。」

(3B-3)「【0010】図1には、この発明に係る電気接続箱1の要部拡大断面が示されており、図2にはこの電気接続箱1の内部回路の一例が示されている。
【0011】図1に示すように、この電気接続箱1では、バスバー3、5、7、9と絶縁部11が絶縁基板13内で交互に積層され分岐回路が形成されており、表面に最も近い第一層目のバスバー3(ここでは、上から第一層目)の板厚T1(例えば、0.8mm)が、他のバスバー5、7、9の板厚T2(例えば、0.6mm)に比べて厚くなっている。なお、バスバー3から上方に向かって、接続用端子としてのタブ15が立ち上げられている。このタブ15には、リレー等の端子との接続用の雌-雌中継端子が接続されている。
【0012】そして、前記第一層目のバスバー3を例えば電源や図2に示されているHTRRLYやFAN RLYのような電流値が大きなものに使用するようにすると、第一層目のバスバー3の板厚を厚くしているため大電流が流れても発熱を抑えることができると共に、第一層目のバスバー3は外気17にもっとも近いため効率よく放熱して、下段の各絶縁部11の温度上昇を均一にすることができる。また、第一層目のバスバー3が立ち上げになるので第二層目以降の配索が容易になる。」

(3C)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の前に頒布された、特開平3-11574号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

(3C-1)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、ワイヤーハーネスの相互接続などに用いられる電気接続箱において、その内部回路を構成するブスバーと分岐用圧接端子の接続構造の改良に関する。」(1頁右下欄15?19行)

(3C-2)「第1図および第2図において、Aは電気接続箱であって、合成樹脂製の上部ケース1及び下部ケース2の内部に回路を構成する複数のブスバー3,3′が収容されている。」(3頁右上欄1?4行)

(3C-3)第1図には下部ケース2の上面にブスバー3,3´を収容する溝を形成することが描かれている。

(イ)本願補正発明と引用発明との対比・判断
(イ-1)本願補正発明と引用発明とを対比する。
(i)引用発明の(a)「半導体スイッチング素子である複数個のFET11」及び(b)「バスバー構成板10を構成するバスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14」が、それぞれ本願補正発明の(a’)「電流のオン/オフを制御可能なスイッチングデバイス」及び(b’)「外部との接続を行うための接続端子」に相当する。
また、引用発明の「パワーモジュール」は、半導体スイッチング素子である複数個のFET11と、バスバー構成板10を構成するバスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14と、上記FET11のスイッチング動作を制御する制御回路基板12とを含む電力回路部1を有することから、本願補正発明の「スイッチングユニット」に相当する。

(ii)引用発明の「バスバー構成板10と制御回路基板12とは接着され」ていることから、引用発明の「接着」された「バスバー構成板10と制御回路基板12」と本願補正発明の「絶縁物を介して互いに密着された回路基板とバスバー回路」とは、「互いに密着された回路基板とバスバー回路」である点で共通する。
また、引用発明の「FET11」は、バスバー構成板10と制御回路基板12の双方に電気的に接続されていることから、引用発明の「半導体スイッチング素子である複数個のFET11と、バスバー構成板10を構成するバスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14と、上記FET11のスイッチング動作を制御する制御回路基板12とを含む電力回路部1」が、本願補正発明の「これらの双方に対して前記スイッチングデバイスが接続されてなる回路体」に相当する。
さらに、引用発明の電力回路部1のバスバー構成板10を構成するバスバー10aが、絶縁層20を介して放熱部材2に配設されるとともに、放熱部材2が、ケース本体30に組み付けられ、ケース本体天蓋31が、ケース本体30に取り付けられて、電力回路部1が、放熱部材2、ケース本体30、ケース本体天蓋31内に収容されていることから、引用発明の「放熱部材2、ケース本体30、ケース本体天蓋31」が本願補正発明の「ケーシング」に相当する。
そうすると、引用発明の「バスバー構成板10と制御回路基板12とは接着され、FET11は、バスバー構成板10と制御回路基板12の双方に電気的に接続され、電力回路部1のバスバー構成板10を構成するバスバー10aが、絶縁層20を介して放熱部材2に配設され、電力回路部1が配設された放熱部材2は、ケース本体30に組み付けられ、ケース本体天蓋31は、ケース本体30に取り付けられ」ることと、本願補正発明の「絶縁物を介して互いに密着された回路基板とバスバー回路とを有し、これらの双方に対して前記スイッチングデバイスが接続されてなる回路体を、ケーシングに収容して備え」ることとは、「互いに密着された回路基板とバスバー回路とを有し、これらの双方に対して前記スイッチングデバイスが接続されてなる回路体を、ケーシングに収容して備え」る点で共通する。

(iv)引用発明の「外部接続端子13、14」は、バスバー10aの端部を垂直に折り起こして形成されるとともに、バスバー10aの端部を折り起こし、その起立端部のさらに端部をバスバー構成板10に対して平行に折り戻してL字状に形成されていることから、引用発明の「外部接続端子13、14は、バスバー10aの端部を垂直に折り起こして形成されるとともに、バスバー10aの端部を折り起こし、その起立端部のさらに端部をバスバー構成板10に対して平行に折り戻してL字状に形成され」ていることと、本願補正発明の「前記バスバー回路が肉厚のバスバーで構成されると共に、前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体で、かつ、前記バスバーよりも肉薄とされて前記バスバーから前記接続端子の終端までストレートに延設されて」いることとは、「前記バスバー回路がバスバーで構成されると共に、前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体で、前記バスバーから前記接続端子の終端まで延設されて」いる点で共通する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「電流のオン/オフを制御可能なスイッチングデバイスと、外部との接続を行うための接続端子とを備えるスイッチングユニットにおいて、
互いに密着された回路基板とバスバー回路とを有し、これらの双方に対して前記スイッチングデバイスが接続されてなる回路体を、ケーシングに収容して備え、
前記バスバー回路がバスバーで構成されると共に、前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体で、前記バスバーから前記接続端子の終端まで延設されているスイッチングユニット。」
である点で一致し、次の相違点(あ)?相違点(う)で相違する。

・相違点(あ)
本願補正発明では、互いに密着された回路基板とバスバー回路が、「絶縁物を介して互いに密着され」ているのに対して、引用発明では、バスバー構成板10と制御回路基板12と接着するものが絶縁物であるかどうか不明である点。

・相違点(い)
前記バスバー回路がバスバーで構成されると共に、前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体で、前記バスバーから前記接続端子の終端まで延設されていることが、本願補正発明では、「前記バスバー回路が肉厚のバスバーで構成されると共に、前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体で、かつ、前記バスバーよりも肉薄とされて前記バスバーから前記接続端子の終端までストレートに延設されて」いるのに対して、引用発明では、外部接続端子13、14は、バスバー10aの端部を垂直に折り起こして形成されるとともに、バスバー10aの端部を折り起こし、その起立端部のさらに端部をバスバー構成板10に対して平行に折り戻してL字状に形成されている点。

・相違点(う)
本願補正発明では、「前記ケーシングには、前記肉厚のバスバーが前記接続端子の延設方向と垂直な方向から嵌め入れられているとともに、前記ケーシングはバスバー回路を構成するバスバー間に介在する仕切壁を有する」のに対して、引用発明では、電力回路部1のバスバー構成板10を構成するバスバー10aが、絶縁層20を介して放熱部材2に配設されている点。

(イ-2)当審の判断
そこで、上記相違点(あ)?相違点(う)について判断する。
・相違点(あ)について
引用発明のFET11がバスバー構成板10と制御回路基板12の双方に電気的に接続されることから、制御回路基板には他の電気部品と電気的に接続するための回路パターンが設けられていることは明らかである。そうすると、バスバー構成板10と制御回路基板12とを接着する際の接着物が導電性を有すると他の電気部品と接続するための回路パターンや他のパターンに接続する電気部品と接触する恐れがあることから、例えば、特開2003-324823号公報の段落【0012】に、「・・・制御回路基板はシート状であって、入力側バスバーと、出力側バスバーの上流側バスバー部分とは、この制御回路基板に絶縁状態で接着されている・・・この際、制御回路は、例えば絶縁性の接着剤等によって入力側バスバーと、出力側バスバーの上流側バスバー部分と絶縁されているので、短絡のおそれはない。」と記載され、さらに、特開2003-164040号の段落【0032】に、「・・・制御回路基板20の裏面またはバスバー構成板の上面に絶縁性接着剤を塗布し、この接着剤によって制御回路基板20と各バスバーとの間に絶縁層を形成する。・・・」と記載されているように、バスバー構成板10と制御回路基板12を接着する際には、絶縁物を用いることは周知である。
よって、引用発明において、バスバー構成板10と制御回路基板12と接着する際に、周知例のごとく、絶縁物を用いて接着することは当業者が容易になし得るものである。

・相違点(い)について
(い-1)バスバーにおいて、バスバーに流れる大きな電力量による発熱量を抑えるために、大きな電力量が流れるバスバーの板厚を小さな電力量が流れるバスバーの板厚より厚くすることは周知である。
例えば、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-3)に、「【0012】そして、前記第一層目のバスバー3を例えば電源や図2に示されているHTRRLYやFAN RLYのような電流値が大きなものに使用するようにすると、第一層目のバスバー3の板厚を厚くしているため大電流が流れても発熱を抑えることができる」(下線は当審で付与したものである。以下、同様である。)と記載されている。
また、実願昭61-189050号(実開昭63-93714号)のマイクロフィルムの3頁13行?5頁3行に、「本考案のブスバー配線板は、第1図および第2図に示すように、電流容量に対応して段階的に板厚t_(1),t_(2)の異なるブスバー7a、7bを絶縁基板3に配設してなることを特徴とする。
図において、ブスバー7aは大電流用、ブスバー7bは小電流用であり、板厚はt_(1)>t_(2)の関係にある。
・・・
〔作用〕
ブスバーの板厚を電流容量に応じて変えることで、従前のようにその横巾を拡げる必要がなくなるから、配設スペースにゆとりが生じ、高密度化を避けることができる。したがって、電流容量も大きくとれる割には、温度上昇も抑えることができる。・・・第1図のブスバー7a,7bは互に板厚の異なる材料を使用した例であるが、第3図に示すように、所定の厚さを有する材料7c_(1),7c_(2)を重ね合わせて1つのブスバー7cを形成してもよい。」と記載され、また、第2図、第3図には大電流用ブスバー7a、7cは電流用のブスバーのタブ端子6よりも板厚を厚くすることが記載されている。
そして、引用発明の電力回路部1は放熱部材2に接着されていることから、放熱部材と接着し、放熱部材をから熱を放出しなければならないほど、バスバー構成板10を構成するバスバー10aに大きな電力量が流れることは明らであり、さらに、引用発明のバスバー10aは、電力回路部1の半導体スイッチング素子である複数個のFET11と接続していることから、引用発明においても、大きな電力量が流れるバスバー構成板10を構成するバスバー10aの温度上昇を抑える課題が存在することは明らかであるから、大きな電力量が流れるバスバーの温度上昇を抑えるために、引用発明の大きな電力量が流れる電力回路部1のバスバー構成板10を構成するバスバー10aの板厚を、周知例のごとく、電力回路部1の半導体スイッチング素子である複数個のFET11と接続するバスバー構成板10を構成するバスバー10aの板厚を、他の小さな電力流を流れるバスバーより板厚を厚くすることにより、本願補正発明のごとく、前記バスバー回路が肉厚のバスバーで構成」することは、当業者が容易になし得たものである。
(い-2)また、引用発明の電力回路部1の半導体スイッチング素子である複数個のFET11と接続しているバスバー構成板10を構成するバスバー10aは、電力回路部1をもつパワーモジュールの内部に配置されているのに対して、バスバー構成板10を構成するバスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14は、パワーモジュールの外側に形成されて、他の機器と電気的接続するための端子であり、さらに、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-2)に、「・・・バスバー103を構成する導電性の薄板の板厚tがすべて同一(例えば、0.64mm)であるため、電流値が大きい例えば(FAN RLY)ファンリレーや(HTR RLY)ヒーターリレーに接続される部分では温度上昇が部分的に大きくなり、特にこのようなファンリレーやヒータリレー部分が積層の内部にある場合には熱が内部にこもり易」いと記載されていることから、引用発明の複数個のFET11と接続しているバスバー構成板10を構成するバスバー10aよりも温度上昇を考慮する必要がないことは明らかである。そして、上記周知例の実願昭61-189050号(実開昭63-93714号)のマイクロフィルムに、「大電流用ブスバー7a、7cは電流用のブスバーのタブ状端子6よりも板厚を厚くする」ことが記載されていることから、上記(い-1)で検討したように、引用発明の大きな電力量が流れる電力回路部1のバスバー構成板10を構成するバスバー10aの板厚を、電力回路部1の半導体スイッチング素子である複数個のFET11と接続するバスバー構成板10を構成するバスバー10aの板厚を他の小さな電力流を流れるバスバーより板厚を厚くした際に、パワーモジュールの外側に形成され、他の機器と電気的接続するための端子であるバスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14の板厚を、パワーモジュールの内部に形成され、電力回路部1の半導体スイッチング素子である複数個のFET11と接続しているバスバー構成板10を構成するバスバー10aの板厚より薄して、本願補正発明のごとく、「前記バスバー回路が肉厚のバスバーで構成されると共に」、「前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体で、かつ、前記バスバーよりも肉薄と」することは、当業者が当然なすべき設計的事項にすぎないものである。
(い-3)さらに、引用発明では、バスバー構成板10を構成するバスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14が、バスバー10aの端部を垂直に折り起こして形成されるとともに、バスバー10aの端部を折り起こし、その起立端部のさらに端部をバスバー構成板10に対して平行に折り戻してL字状に形成されているが、上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-1)に「【0005】このようなパワーモジュールにおいて、外部回路と接続される外部接続端子を形成する方法としては、・・・結合方向を回路配設面と平行な方向にする手段として、バスバーの端部を電力回路部からまっすぐに延ばす」ことが記載され、さらに、バスバーの外部接続端子を折り起こすことなく、内部のバスバーから接続端子の終端までストレートに延設して形成することは周知(例えば、上記周知例の特開2003-324823号公報の図1(b)、図3の入力側バスバ-11、実願平4-13543号(実開平5-78125号)のCD-ROMの図4のブスバーbのタブb_(1)、実願昭56-189801号(実開昭58-94283号)のマイクロフィルムの第1図のバスバー1のアースプレート2をそれぞれ参照)であることから、引用発明のバスバー構成板10を構成するバスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14を折り起こして形成する代わりに、周知例のごとく、バスバー構成板10を構成するバスバー10aから、バスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14の終端までストレートに延設して形成する構成を採用することは当業者が必要に応じて適宜なし得る選択事項にすぎないものである。

・相違点(う)について
(う-1)本件出願の明細書の段落【0027】に、「(8)上記実施形態ではケーシング20が樹脂製のものであったが、例えば金属製のものであってもよい。この場合、例えば、金属製ケーシングの表面に絶縁被膜を形成する等してケーシングとユニット本体との間の絶縁を図る構成とするのが望ましい。」と記載されていることから、本願補正発明のケーシングは樹脂製のものでも金属製のものでもよいことは明らかである。
ところで、バスバーを用いて電気接続する電子機器において、バスバーを配設場所に配置する際、配設場所に仕切壁を設け、仕切壁内の配設部の接地面に垂直な方向から嵌め入れることは、上記引用刊行物Cの摘記事項(3C-2)、(3C-3)に記載されているように周知(他に、上記周知例の実願昭61-189050号(実開昭63-93714号)のマイクロフィルムの第2図参照)である。そして、引用発明も上記周知例もともに、バスバーを用いて電気接続する電子機器で共通するものであり、さらに、電力回路部1の半導体スイッチング素子である複数個のFET11と接続するバスバー構成板10を構成するバスバー10aの板厚を、他の小さな電力流を流れるバスバーより板厚を厚くするとともに、バスバー構成板10を構成するバスバー10aから、バスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14の終端までストレートに延設して形成することは、上記「相違点(い)について」検討したとおりであるから、引用発明において、電力回路部1の半導体スイッチング素子である複数個のFET11と接続するバスバー構成板10を構成するバスバー10aの板厚を、他の小さな電力流を流れるバスバーより板厚を厚くするとともに、バスバー構成板10を構成するバスバー10aから、バスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14の終端までストレートに延設して形成して放熱部材2に配設する際、電力回路部1のバスバー構成板10構成するバスバー10aを、絶縁層20を介して放熱部材2に配設する代わりに、周知例のごとく、バスバーを配設する場所となる放熱部材2に、仕切壁を設け、仕切壁を設けた放熱部材2内の配設部の接地面に垂直な方向から、他の小さな電力流を流れるバスバーより板厚を厚くするとともに、外部接続端子13、14を終端までストレートに延設して形成されバスバーを嵌め入れることは当業者が容易になし得たものである。
(う-2)そして、バスバーを用いて電気的接続する電子機器において、下側ケーシングの外側にバスバーの接続端子が延設された際、下側のケーシングと係合する上側ケーシングに、延設されたバスバーの接続端子が延設できるように、上側ケーシングの側壁にバスバーの接続端子延設用の凹部を設けることが、例えば、上記「相違点(い)について」において提示した周知例の実願昭56-189801号(実開昭58-94283号)のマイクロフィルムの第1図(バスバー1より一体的に延設された板状のアースプレート2を通す上ケース4の窓部)、あるいは、実願平4-1933号(実開平5-61979号)のCD-ROMの図1(下ケース9と嵌合する部分の一部を切り欠いた窓部35)に記載されているように、技術常識であるから、引用発明において、上記(う-1)で検討したように、電力回路部1の半導体スイッチング素子である複数個のFET11と接続するバスバー構成板10を構成するバスバー10aの板厚を、他の小さな電力流を流れるバスバーより板厚を厚くするとともに、バスバー構成板10を構成するバスバー10aから、バスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14の終端までストレートに延設して放熱部材2に配設する際、バスバーを配設する場所となる放熱部材2に、仕切壁を設け、仕切壁を設けた放熱部材2内の配設部の接地面に垂直な方向から、他の小さな電力流を流れるバスバーより板厚を厚くするとともに、外部接続端子13、14を終端までストレートに延設して形成されバスバーを嵌め入れるように構成したとしても、放熱部材2を組み付けるケース本体30の側壁に、外部接続端子13、14の延設用の窓部を設ければ、外部接続端子13、14を終端までストレートに延設することができることから、引用発明において、電力回路部1の半導体スイッチング素子である複数個のFET11と接続するバスバー構成板10を構成するバスバー10aの板厚を、他の小さな電力流を流れるバスバーより板厚を厚くするとともに、バスバー構成板10を構成するバスバー10aから、バスバー10aの端部に形成された外部接続端子13、14の終端までストレートに延設して放熱部材2に配設する際、周知例のごとく、バスバーを配設する場所となる放熱部材2に、仕切壁を設け、仕切壁を設けた放熱部材2内の配設部の接地面に垂直な方向から、他の小さな電力流を流れるバスバーより板厚を厚くするとともに、外部接続端子13、14を終端までストレートに延設して形成されバスバーを嵌め入れることに何ら阻害要因が生じないことは明らかである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。

なお、請求人は、当審が通知した審尋の回答書において、補正案を提出しているが、上記「相違点(い)について」で検討したように、バスバーにおいて、バスバーに流れる大きな電力量による発熱量を抑えるために、大きな電力量が流れるバスバーの板厚を小さな電力量が流れるバスバーの板厚より厚くすることは周知である。そして、バスバーを流れる電力容量により決められるバスバーの板厚は、ある程度発熱してもよいが、バスバーを流れる電力容量によりパワーモジュールが燃焼しない程度の発熱に抑える厚さに定めることが技術常識であり、さらに、上記周知例のようにバスバーに流れる大きな電力量による発熱量を抑えるためには、バスバーを流れる電力容量により決められるバスバーの板厚よりも厚くすることが当然の設計的事項であるから、請求人の主張は採用できないものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)補正却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下しなければならないものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年10月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成21年12月4日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 2 (1)」の「ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1」に記載したように、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
電流のオン/オフを制御可能なスイッチングデバイスと、外部との接続を行うための接続端子とを備えるスイッチングユニットにおいて、
絶縁物を介して互いに密着された回路基板とバスバー回路とを有し、これらの双方に対して前記スイッチングデバイスが接続されてなる回路体を、ケーシングに収容して備え、
前記バスバー回路が肉厚のバスバーで構成されると共に、前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体で、かつ、前記バスバーよりも肉薄とされて前記バスバーから前記接続端子の終端までストレートに延設されており、
前記ケーシングには、前記バスバーが前記接続端子の延設方向と垂直な方向から嵌め入れられていることを特徴とするスイッチングユニット。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は上記「第2 2 (3)」の(ア)に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比・判断
上記「第2 2 (3)」の(イ)で検討した本願補正発明は、上記本願発明の「前記バスバーが前記接続端子の延設方向と垂直な方向から嵌め入れられている」を、「前記肉厚のバスバーが前記接続端子の延設方向と垂直な方向から嵌め入れられている」と補正して、「バスバー」が「肉厚のバスバー」であることを明瞭にするとともに、上記本願発明に「とともに、前記ケーシングはバスバー回路を構成するバスバー間に介在する仕切壁を有する」構成を付加する構成は、ケーシングの構成を減縮し特定する補正であるから、ケーシングの構成を減縮し特定することにより、特許請求の範囲を減縮するものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに減縮したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2 (3)」の(イ)において検討したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件出願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-18 
結審通知日 2011-05-19 
審決日 2011-06-01 
出願番号 特願2005-131547(P2005-131547)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02G)
P 1 8・ 575- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南 正樹  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 石川 太郎
信田 昌男
発明の名称 スイッチングユニット  
代理人 特許業務法人暁合同特許事務所  
代理人 特許業務法人暁合同特許事務所  
代理人 特許業務法人暁合同特許事務所  

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