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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1240404 |
審判番号 | 不服2009-1927 |
総通号数 | 141 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-23 |
確定日 | 2011-07-20 |
事件の表示 | 特願2003-584951「設定保存機能を有するブラウザ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月23日国際公開、WO03/88083、平成17年 7月28日国内公表、特表2005-522783〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2003年4月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年4月5日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成20年6月24日付けで拒絶理由が通知され,同年9月30日に手続補正書及び意見書が提出されたが,同年10月22日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成21年1月23日に審判請求がされるとともに,同日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2 平成21年1月23日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 補正却下の決定の結論 本件補正を却下する。 理由 1 補正の内容 本件補正により,特許請求の範囲は,次のとおり補正された。なお,下線は,補正された部分を示すものとして,手続補正書に付されたものを援用したものである。 ≪本件補正前≫ 「【請求項1】 ブラウザを供することのできるテレビジョン信号受信器の動作方法であって、 テレビジョン信号を調節し、かつテレビジョンスクリーン上での前記の調節されたテレビジョン信号の表示を可能にする第1モードで動作する段階と、 前記テレビジョンスクリーン上で前記ブラウザの表示を可能にし、 前記ブラウザにおいてURLを指定する観察者に応答してウェブページにアクセスし、 前記URLに対する観察者が調整可能な設定を、メモリから取出し、 前記の取出しされた観察者が調整可能な設定を、前記テレビジョンスクリーン上の前記ウェブページに適用し、 前記ウェブページを終了する信号に応答して前記メモリ内に現在の観察者が調整可能な設定を自動的に保存し、かつ 次回前記ウェブページがアクセスされる際には前記のテレビジョンスクリーン上のウェブページに対して前記観察者が調整可能な設定の現在の状態を自動的に適用する、 第2モードで動作する段階、 を含む方法。 【請求項2】 前記観察者が調整可能な設定は、テキスト及びグラフィックス設定のうちの少なくとも1つを有する請求項1記載の方法。 【請求項3】 ウェブページを表示することのできるテレビジョン信号受信器の動作方法であって、 テレビジョン信号を調節し、かつテレビジョンスクリーン上での前記の調節されたテレビジョン信号の表示を可能にする第1モードで動作する段階と、 前記テレビジョンスクリーン上で前記ブラウザの表示を可能にし、 前記ウェブページが前記テレビジョンスクリーン上に表示された状態で前記ウェブページのユーザが好むフォーマットを表すユーザ入力を受け、 前記ウェブページを終了する信号に応答して前記ウェブページのURLに関連する前記ユーザが好むフォーマット設定を自動的に保存し、かつ 次回前記ウェブページがアクセスされる際には前記のテレビジョンスクリーン上のウェブページに対して前記観察者が調整可能な設定の現在の状態を自動的に適用する、 第2モードで動作する段階、 を含む方法。 【請求項4】 テレビジョン信号受信器のコンピュータ可読媒体上に具現化されるコンピュータプログラムであって、当該プログラムの実行時に、 テレビジョン信号を調節し、かつテレビジョンスクリーン上での前記の調節されたテレビジョン信号の表示を可能にする第1モードで動作する段階と、 前記テレビジョンスクリーン上でウェブページの表示を可能にし、 前記の表示されたウェブページについてのユーザが調節可能なフォーマットを取得し、かつ前記の表示されたウェブページの信号に応答して前記の表示されたウェブページのURLに関連する現在のユーザが調節可能なフォーマットを自動的に保存し、 前記URLについての次の要求を取得し、かつ該次の要求に応答して前記現在のユーザが調節可能なフォーマットを自動的に取得し、かつ 前記次の要求に応答して前記現在のユーザが調節可能なフォーマットによって前記ウェブページを自動的に表示する、 第2モードで動作する段階、 の実行が可能な、プログラム。」 ≪本件補正後≫ 「【請求項1】 ブラウザを供することのできるテレビジョン信号受信器の動作方法であって、 テレビジョン信号を調節し、かつテレビジョンスクリーン上での前記の調節されたテレビジョン信号の表示を可能にする第1モードで動作する段階と、 前記テレビジョンスクリーン上で前記ブラウザの表示を可能にし、 前記ブラウザにおいてURLを指定する観察者に応答してウェブページにアクセスし、 前記URLに対する観察者が調整可能な設定を、メモリから取出し、 前記の取出しされた観察者が調整可能な設定を、前記テレビジョンスクリーン上の前記ウェブページに適用し、 前記テレビジョンスクリーン上に表示するための第1複数の構成要素であって、該構成要素の発光状態は、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するテキストサイズを示唆する構成要素を有する第1アイコンを前記ウェブページに供し、 前記テレビジョンスクリーン上に表示するための第2複数の構成要素であって、該構成要素の発光状態は、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するグラフィックサイズを示唆する構成要素を有する第2アイコンを前記ウェブページに供し、 ユーザが、前記第1及び第2アイコンを用いることによって、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するテキストサイズ及びグラフィックサイズを調節することを可能にし、 前記ウェブページを終了する信号に応答して前記メモリ内に現在の観察者が調整可能な設定を自動的に保存し、かつ 次回前記ウェブページがアクセスされる際には前記のテレビジョンスクリーン上のウェブページに対して前記観察者が調整可能な設定の現在の状態を自動的に適用する、 第2モードで動作する段階、 を含む方法。 【請求項2】 ウェブページを表示することのできるテレビジョン信号受信器の動作方法であって、 テレビジョン信号を調節し、かつテレビジョンスクリーン上での前記の調節されたテレビジョン信号の表示を可能にする第1モードで動作する段階と、 前記テレビジョンスクリーン上で前記ブラウザの表示を可能にし、 前記テレビジョンスクリーン上に表示するための第1複数の構成要素であって、該構成要素の発光状態は、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するテキストサイズを示唆する構成要素を有する第1アイコンを前記ウェブページに供し、 前記テレビジョンスクリーン上に表示するための第2複数の構成要素であって、該構成要素の発光状態は、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するグラフィックサイズを示唆する構成要素を有する第2アイコンを前記ウェブページに供し、 ユーザが、前記第1及び第2アイコンを用いることによって、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するテキストサイズ及びグラフィックサイズを調節することを可能にし、 前記ウェブページを終了する信号に応答して前記ウェブページのURLに関連する前記ウェブページに係る現在のテキスト及びグラフィックサイズを自動的に保存し、かつ 次回前記ウェブページがアクセスされる際には前記のテレビジョンスクリーン上のウェブページに対して前記ウェブページに係る現在のテキスト及びグラフィックサイズを自動的に適用する、 第2モードで動作する段階、 を含む方法。 【請求項3】 テレビジョン信号受信器のコンピュータ可読媒体上に具現化されるコンピュータプログラムであって、当該プログラムの実行時に、 テレビジョン信号を調節し、かつテレビジョンスクリーン上での前記の調節されたテレビジョン信号の表示を可能にする第1モードで動作する段階と、 前記テレビジョンスクリーン上でウェブページの表示を可能にし、 前記テレビジョンスクリーン上に表示するための第1複数の構成要素であって、該構成要素の発光状態は、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するテキストサイズを示唆する構成要素を有する第1アイコンを前記ウェブページに供し、 前記テレビジョンスクリーン上に表示するための第2複数の構成要素であって、該構成要素の発光状態は、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するグラフィックサイズを示唆する構成要素を有する第2アイコンを前記ウェブページに供し、 ユーザが、前記第1及び第2アイコンを用いることによって、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するテキストサイズ及びグラフィックサイズを調節することを可能にし、 前記の表示されたウェブページの信号に応答して前記の表示されたウェブページのURLに関連する前記ウェブページに係る現在のテキスト及びグラフィックサイズを自動的に保存し、 前記URLについての次の要求を取得し、かつ 前記次の要求に応答して前記前記ウェブページに係る現在のテキスト及びグラフィックサイズによって前記ウェブページを自動的に表示する、 第2モードで動作する段階、 の実行が可能な、プログラム。」 2 本件補正の補正目的の適否 (1)本件補正は,拒絶査定に対する審判請求時の補正であるから,本件補正による特許請求の範囲についてする補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項の規定により同項第1号から第4号に掲げる事項を目的とするものに限られる。 よって,本件補正による特許請求の範囲の補正が,改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるかを検討する。 (2)本件補正前後の特許請求の範囲の記載を比較するとともに,審判請求書における審判請求人の『(b)補正の根拠の明示 本書面と同時提出の手続補正書における請求項1についての補正事項「前記テレビジョンスクリーン上に表示するための第1複数の構成要素であって、該構成要素の発光状態は、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するテキストサイズを示唆する構成要素を有する第1アイコンを前記ウェブページに供し、前記テレビジョンスクリーン上に表示するための第2複数の構成要素であって、該構成要素の発光状態は、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するグラフィックサイズを示唆する構成要素を有する第2アイコンを前記ウェブページに供し、ユーザが、前記第1及び第2アイコンを用いることによって、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するテキストサイズ及びグラフィックサイズを調節することを可能にし、」は、当初明細書等の段落[0012]乃至[0019](特に[0016])の記載に基づいております。 請求項2を削除する補正を行いました。以降補正前請求項3と4をそれぞれ、請求項2と3と記載します。 請求項2及び3の補正も請求項1の補正と同様の補正であります。』との主張を参酌すると,本件補正は,補正前の請求項2を削除するとともに,補正前の請求項1,3,4を補正することにより,それぞれ新たな補正後の請求項1,2,3とするものであると認められる。 (3)そこで,本件補正前後の請求項1の記載を見るに,本件補正は,本件補正前の請求項1に対して「前記テレビジョンスクリーン上に表示するための第1複数の構成要素であって、該構成要素の発光状態は、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するテキストサイズを示唆する構成要素を有する第1アイコンを前記ウェブページに供し、 前記テレビジョンスクリーン上に表示するための第2複数の構成要素であって、該構成要素の発光状態は、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するグラフィックサイズを示唆する構成要素を有する第2アイコンを前記ウェブページに供し、 ユーザが、前記第1及び第2アイコンを用いることによって、前記の取出しされた観察者が調整可能な設定に関するテキストサイズ及びグラフィックサイズを調節することを可能にし、」との事項(以下「補正事項」という。)を追加して補正後の請求項1とする補正を含むものである。 ここで,前記補正事項の追加は,「観察者が調整可能な設定」を観察者に調整可能にさせるべく,インターフェイスを観察者に提示する構成を,新たに追加するものであると認められる。 しかしながら,「観察者が調整可能な設定」に関して,補正前の請求項1には,(イ)「前記URLに対する観察者が調整可能な設定を、メモリから取出し、」として,「観察者が調整可能な設定」をメモリから取出すこと,(ロ)「前記の取出しされた観察者が調整可能な設定を、前記テレビジョンスクリーン上の前記ウェブページに適用し、」及び「次回前記ウェブページがアクセスされる際には前記のテレビジョンスクリーン上のウェブページに対して前記観察者が調整可能な設定の現在の状態を自動的に適用する、」として,「観察者が調整可能な設定」をウェブページに適用すること,(ハ)「前記ウェブページを終了する信号に応答して前記メモリ内に現在の観察者が調整可能な設定を自動的に保存し」として,「観察者が調整可能な設定」をメモリに保存すること,がそれぞれ記載されているものの,「観察者が調整可能な設定」を観察者に調整可能にさせるべく,インターフェイスを観察者に提示することについては,なんら記載されていない。また,「観察者が調整可能な設定」を観察者に調整可能にさせるべく,インターフェイスを観察者に提示することが,前記(イ)?(ハ)の事項のいずれの下位概念であるとも認めることができない。 そうすると,前記補正事項の追加を含む本件補正は,新たな発明特定事項を導入することにより,補正前の特許請求の範囲を補正しようとするものであるから,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとは,認めることができない。 したがって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた事項を目的とするものに該当するとは認められない。 また,本件補正が,改正前の特許法第17条の2第4項第1号(請求項の削除),第3号(誤記の訂正)及び第4号(明りょうでない記載の釈明)に掲げる事項のいずれを目的とするものでないことも明らかである。 よって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。 (4)以上のことから,本件補正は,改正前の特許法17条の2第4項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 1 本願発明の内容 以上のとおり,本件補正(平成21年1月23日に提出された手続補正書による補正)は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本件補正前の請求項1(平成20年9月30日に提出された手続補正書により補正された請求項1)に記載されたとおりのものであり,以下に再掲する。 「【請求項1】 ブラウザを供することのできるテレビジョン信号受信器の動作方法であって、 テレビジョン信号を調節し、かつテレビジョンスクリーン上での前記の調節されたテレビジョン信号の表示を可能にする第1モードで動作する段階と、 前記テレビジョンスクリーン上で前記ブラウザの表示を可能にし、 前記ブラウザにおいてURLを指定する観察者に応答してウェブページにアクセスし、 前記URLに対する観察者が調整可能な設定を、メモリから取出し、 前記の取出しされた観察者が調整可能な設定を、前記テレビジョンスクリーン上の前記ウェブページに適用し、 前記ウェブページを終了する信号に応答して前記メモリ内に現在の観察者が調整可能な設定を自動的に保存し、かつ 次回前記ウェブページがアクセスされる際には前記のテレビジョンスクリーン上のウェブページに対して前記観察者が調整可能な設定の現在の状態を自動的に適用する、 第2モードで動作する段階、 を含む方法。」 2 引用刊行物について (1)原査定の拒絶理由に引用された,本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である特開2001-28788号公報(平成13年1月30日出願公開。以下「引用例」という。)には,図とともに,次の記載がある。なお,下線は,当審で付加したものである。 (ア)「【0037】WWWサーバ201および202には、様々なコンテンツが蓄積される。コンテンツは、テキストおよび/または画像データを含む。 【0038】テキストは、HTML(Hyper Text Markup Language)に代表される記述言語で作成される。コンテンツの作成者は、テキストの作成時、様々な文字コードを使う。」 (イ)「【0043】以上のように、移動体通信端末装置15および16は、少なくとも、音声通話機能と、ブラウジング機能および/またはメーリング機能をユーザに提供することができる。かかる機能を実現するために、移動体通信端末装置15および16は、図2のようなハードウェア構成を有する。」 (ウ)「【0068】また、WWWブラウザ217により、ブラウジング機能が提供される。WWWブラウザ217は、簡単に説明すると、入力制御部214およびアプリケーション制御部215を通じて、ユーザの好みのコンテンツの格納場所が通知されると、当該コンテンツの取得要求を作成して、通信制御部219に与える。」 (エ)「【0087】更新部2175は、表示モード切り替え部2172または表示モード判定部2174から次表示モードが通知されると、第2の記憶部2122および第3の記憶部2123内の表示対象の表示モード情報を当該次表示モードに更新する。さらに、更新部2175は、表示対象となるコンテンツの表示データDDを、通知された次表示モードに従って作成するように、表示データ作成部2176に要求する。」 (オ)「【0104】さて、図9において、送受信部2173は、取得要求REQを入力判定部2171等を通じて受け取ると、第3の記憶部2123を参照して、指定されたWWWサーバ201等から、ユーザにより指示されたコンテンツを取得する(ステップS90)。また、送受信部2173は、取得したコンテンツを第1の記憶部2121に格納し、さらに、第3の記憶部2123の管理情報MICON を更新する。 【0105】表示モード判定部2174は、送受信部2173から取得完了が通知されると、第3の記憶部2123を参照して、取得要求されたコンテンツの前回の表示モードが設定されているか否かを判定する(ステップS91)。 【0106】表示モード判定部2174は、前回の表示モードが設定されていると判断した場合には、当該表示モードを次表示モードとして、更新部2175に通知する(ステップS92)。 【0107】一方、表示モード判定部2174は、前回の表示モードが未設定であると判断した場合には、上述のようにデフォルトの表示モードまたはコンテンツそのものから自動判定した表示モードを、次表示モードとして、更新部2175に通知する(ステップS93)。 【0108】更新部2175は、通知された次表示モードを、今回取得要求されたコンテンツの表示モードとして、第2の記憶部2122に設定する。更新部2175はさらに、第3の記憶部2123に設定されている、今回取得要求されたコンテンツの表示モードを、通知された次表示モードに更新する(ステップS94)。さらに、更新部2175は、通知された次表示モードを、表示データ作成部2176に通知する。 【0109】表示データ作成部2176は、次表示モードが通知されると、第1の記憶部2121に格納されている、今回取得要求されたコンテンツを参照して、表示データDDを、通知された次表示モードで作成し(ステップS95)、作成された表示データDDを表示制御部2111を通じて表示装置211に送信する(ステップS96)。これによって、WWWブラウザ2171 は、表示装置211が表示中のコンテンツを更新する。 【0110】以上の図9の処理手順により、WWWブラウザ2171 は、第1の記憶部2121に格納されているコンテンツをWWWサーバ201等から再取得および再表示する際に、前回の表示モードで当該コンテンツを自動的に表示することが可能となる。これによって、ユーザが、キー221等を操作しなくても今回取得したコンテンツを正しい表示モードでブラウズできる可能性が高くなる。これによって、ユーザが入力装置22を操作する回数が減り、より簡単なユーザインターフェイスを提供することができる。」 (カ)「【0139】以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に技術的範囲に限定されず、以下のような概念も本発明に包含される。 【0140】まず、上記実施例では、移動体通信端末装置15または16が、WWWサーバ201等に蓄積されたコンテンツを表示する場合の例を説明した。しかし、移動体通信端末装置15または16は、メールサーバ203に保存されている電子メールを取得し表示してもよい。このとき、メーラ218は、上述のWWWブラウザ2171 ?2173 と同様に動作して、電子メールの文字コードまたは表示形式を自動的に判定する。 【0141】また、上記実施例では、表示モードとして、文字コードと表示形式の場合を例に取り上げて説明した。しかし、これに限らず、表示モードとして、フォントのサイズ、動画再生設定またはサウンド再生設定を適用してもよい。」 (2)記載事項(ア)?(カ)によれば,引用例には 「ブラウジング機能をユーザに提供することができる移動体通信端末装置15の動作方法であって, WWWブラウザ217は,入力制御部214およびアプリケーション制御部215を通じて,ユーザの好みのコンテンツの格納場所が通知されると,当該コンテンツの取得要求を作成し, ここで,前記コンテンツは,テキストおよび/または画像データを含むものであって,テキストは、HTML(Hyper Text Markup Language)に代表される記述言語で作成されるものであり, 送受信部2173は,取得要求REQを入力判定部2171等を通じて受け取ると,指定されたWWWサーバ201等から,ユーザにより指示されたコンテンツを取得し, 表示モード判定部2174は,送受信部2173から取得完了が通知されると,第3の記憶部2123を参照して,取得要求されたコンテンツの前回の表示モードが設定されているか否かを判定し,前回の表示モードが設定されていると判断した場合には,当該表示モードを次表示モードとして,更新部2175に通知し, 表示データ作成部2176は,次表示モードが通知されると,今回取得要求されたコンテンツを参照して,表示データDDを,通知された次表示モードで作成し,作成された表示データDDを表示制御部2111を通じて表示装置211に送信し,これにより,WWWブラウザ2171 は、表示装置211が表示中のコンテンツを更新し, 更新部2175は,表示モード切り替え部2172から次表示モードが通知されると,第3の記憶部2123内の表示対象の表示モード情報を当該次表示モードに更新し, ここで,前記表示モードは,表示形式,フォントのサイズに関するものであり, 以上の処理手順により,コンテンツをWWWサーバ201等から再取得する際に,前回の表示モードで当該コンテンツを自動的に表示することが可能となる方法。」との発明(以下「引用発明」という。) が記載されていると認められる。 3 対比 (1)本願発明と,引用発明とを対比する。 ア 引用発明の移動体通信端末装置は,「ブラウジング機能をユーザに提供することができる」ものであるから,本願発明のテレビジョン信号受信器と,「ブラウザを供することのできる装置」である点において共通している。 イ 引用発明の移動体通信端末装置は,WWWブラウザにより,表示装置においてコンテンツを表示するものである。ここで,引用発明の「表示装置」は,本願発明の「テレビジョンスクリーン」と,「スクリーン」である点において共通しているから,引用発明は,本願発明と「スクリーン上で前記ブラウザの表示を可能に」するものである点において共通している。 ウ 引用発明にいう「コンテンツ」は,「テキストおよび/または画像データを含むものであって,テキストは、HTML(Hyper Text Markup Language)に代表される記述言語で作成されるものであ」るから,ウェブページであるといえる。そして,WWWサーバ等におけるウェブページの格納場所は,URLで示されるから,引用発明におけるWWWサーバ等からウェブページを取得するためのユーザによる指示は,WWWブラウザに対してURLを指定することによって行われているものと認められる。そうすると,引用発明にいう「ユーザの好みのコンテンツの格納場所が通知されると」,「指定されたWWWサーバ201等から,ユーザにより指示されたコンテンツを取得」する処理は,本願発明の「ブラウザにおいてURLを指定する観察者に応答してウェブページにアクセス」する処理に相当する。 エ 引用発明における,「表示モード」は,表示モード切り替え部によって切り替え可能な設定であるから,本願発明の「観察者が調整可能な設定」に相当する。そうすると,引用発明において「送受信部2173から取得完了が通知されると,第3の記憶部2123を参照して,取得要求されたコンテンツの前回の表示モードが設定されているか否かを判定し,前回の表示モードが設定されていると判断した場合には,当該表示モードを次表示モードとして,更新部2175に通知」する処理は,ウェブページを取得するために指定されたURLに対する前回の表示モードの設定を,第3の記憶部から取出す処理であるから,本願発明の「前記URLに対する観察者が調整可能な設定を,メモリから取出」す処理に相当する。 オ 引用発明における「次表示モードが通知されると,今回取得要求されたコンテンツを参照して,表示データDDを,通知された次表示モードで作成し,作成された表示データDDを表示制御部2111を通じて表示装置211に送信し,これにより,WWWブラウザ217は、表示装置211が表示中のコンテンツを更新」する処理は,第3の記憶部から取出された前回の表示モードの設定が通知されると,表示装置における表示データを,当該前回の表示モードの設定をコンテンツに適用することで作成された表示データに更新する処理であるから,本願発明の「前記の取出しされた観察者が調整可能な設定を,前記スクリーン上の前記ウェブページに適用」する処理に相当する。 カ 引用発明における「表示モード切り替え部2172から次表示モードが通知されると,第3の記憶部2123内の表示対象の表示モード情報を当該次表示モードに更新」する処理は,ユーザによる表示モードの切り替えがなされると,切り替えられた現在の表示モードの設定を,自動的に,第3の記憶部に保存させる処理であるから,後述する相違点はあるものの,本願発明の「前記メモリ内に現在の観察者が調整可能な設定を自動的に保存」する処理に相当する。 キ 引用発明は,「コンテンツをWWWサーバ201等から再取得する際に,前回の表示モードで当該コンテンツを自動的に表示することが可能」なものであるから,ウェブページを再取得する際に,前回の取得時の表示モードを,当該再取得したウェブページに自動的に適用させるものであり,本願発明と同様に「次回前記ウェブページがアクセスされる際には前記のスクリーン上のウェブページに対して前記観察者が調整可能な設定の現在の状態を自動的に適用する」ものであるといえる。 (2)一致点と相違点について そうすると,本願発明と引用発明の一致点と相違点は,次のとおりと認められる。 ア 一致点 「ブラウザを供することのできる装置の動作方法であって, スクリーン上で前記ブラウザの表示を可能にし, 前記ブラウザにおいてURLを指定する観察者に応答してウェブページにアクセスし, 前記URLに対する観察者が調整可能な設定を,メモリから取出し, 前記の取出しされた観察者が調整可能な設定を,前記スクリーン上の前記ウェブページに適用し, 前記メモリ内に現在の観察者が調整可能な設定を自動的に保存し,かつ 次回前記ウェブページがアクセスされる際には前記のスクリーン上のウェブページに対して前記観察者が調整可能な設定の現在の状態を自動的に適用する段階, を含む方法。」 イ 相違点 [相違点1] 本願発明では,ブラウザを供することのできる装置が,「テレビジョン信号受信器」であって,その表示のためのスクリーンが「テレビジョンスクリーン」であり,ブラウザの表示を行う第2モードに加えて,「テレビジョン信号を調節し,かつテレビジョンスクリーン上での前記の調節されたテレビジョン信号の表示を可能にする第1モード」を具備しているのに対し,引用発明では,そうではない点。 [相違点2] 本願発明では,現在の観察者が調整可能な設定のメモリ内への自動的保存が,「ウェブページを終了する信号に応答して」行われるのに対し,引用発明では,設定の切り替えに応答して行われている点。 4 判断 (1)相違点1について ブラウザの表示を行うモードと,テレビジョン信号を調節し,かつテレビジョンスクリーン上での前記の調節されたテレビジョン信号の表示を可能にするモードを有するテレビジョン信号受信器は,インターネットに関する技術分野では,ブラウザを供することのできる装置として周知の装置に過ぎない。例えば,原査定において周知例としてあげられた特開平11-306117号公報には,切替回路により(段落【0032】参照。),ブラウザを起動してインターネット接続を可能とする状態(段落【0035】参照。)と,TV信号処理回路から出力される映像信号(本願発明の「テレビジョン信号」に相当。)のディスプレイへの出力を可能とする状態(段落【0034】参照。)とに切り替え可能なテレビジョン受像機(本願発明の「テレビジョン信号受信器」に相当。)が記載されている。 そうすると,引用発明において,ブラウザを供することができる装置として,そのようなテレビジョン信号受信器を採用し,表示装置をテレビジョンスクリーンとするとともに,ブラウザ表示を行うモードのみならず,テレビジョン信号を調節し,かつテレビジョンスクリーン上での前記の調節されたテレビジョン信号の表示を可能にするモードを具備させるようにし,相違点1に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。 (2)相違点2について 設定の自動保存を行うにあたり,設定の切り替えが行われた後,どの時点で保存を行うようにするかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る程度の事項にすぎない。 そうすると,引用発明において,現在の観察者が調整可能な設定のメモリ内への自動的保存を,設定の切り替えに応答して行うことに代えて,ウェブページを終了する信号に応答して行うようにし,相違点2に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。 (3)結論 そうすると,相違点1,2に係る構成は,いずれも,当業者が容易に想到し得たものである。そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知の技術的事項に基づき,当業者が,予測できる範囲のものである。 よって,本願発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 5 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。 したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-09 |
結審通知日 | 2011-02-15 |
審決日 | 2011-02-28 |
出願番号 | 特願2003-584951(P2003-584951) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 茂和 |
特許庁審判長 |
井上 正 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 小林 義晴 |
発明の名称 | 設定保存機能を有するブラウザ |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠彦 |