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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1240445
審判番号 不服2008-12086  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-12 
確定日 2011-07-25 
事件の表示 特願2003-559406「パウチ用舟形溶着部品」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月24日国際公開、WO03/59241、平成17年 5月19日国内公表、特表2005-514283〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年4月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年1月17日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成20年2月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年6月11日付けで特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正書が提出されたものである。

第2 平成20年6月11日付け手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成20年6月11日付けの特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
【理由】
1.本件補正
本件補正は、平成19年3月16日に補正された特許請求の範囲の請求項1に、
「中央部と、該中央部から互いに逆方向に延出するとともに鋭く尖った2つの延出部とを備え、製造中に物質をパウチに充填するための開口部が前記中央部に設けられている一方、前記パウチを実際に使用するための注入口及び排出口がそれぞれ前記延出部に設けられている前記パウチ用の舟形溶着部品において、
前記中央部は、可能な限り径が大きくて好ましくは円形の前記開口部によって実質的に占められており、
側方にある前記延出部の側縁は、接線状に前記開口部と接していることを特徴とする舟形溶着部品。」
とあるのを、
「中央部と、該中央部から互いに逆方向に延出するとともに鋭く尖った2つの延出部とを備え、製造中に物質をパウチに充填するために用いられかつ充填後に密閉される開口部が前記中央部に設けられている一方、前記パウチを実際に使用するために用いられ、前記開口部よりも小径の注入口及び排出口がそれぞれ前記延出部に設けられている前記パウチ用の舟形溶着部品であって、
前記中央部は、可能な限り径が大きくて好ましくは円形の前記開口部によって実質的に占められており、
側方にある前記延出部の側縁は、直線状のものでかつ接線状に前記開口部と接していることを特徴とする舟形溶着部品。」
とする補正を含むものである。
そして、この補正は、補正前に、「製造中に物質をパウチに充填するための開口部」とあるのを、「製造中に物質をパウチに充填するために用いられかつ充填後に密閉される開口部」と、開口部が、物質充填後に密閉されるものであると限定するとともに、「前記パウチを実際に使用するための注入口及び排出口」とあるのを、「前記パウチを実際に使用するために用いられ、前記開口部よりも小径の注入口及び排出口」と、注入口及び排出口の大きさを限定し、さらに、「側方にある前記延出部の側縁は、接線状に前記開口部と接している」とあるのを、「側方にある前記延出部の側縁は、直線状のものでかつ接線状に前記開口部と接している」と、側縁の形状を限定しているものである。そして、この補正が、産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。したがって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかについて、次に検討する。

2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記、「1.本件補正」を参照。)により特定されたとおりのものと認める。

3.引用文献
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である、特開昭59-209352号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

<引用文献>
(a)「本発明は液体バッグ、特に血液、輸液を収容するための医療用の液体バッグであって、熱可塑性物質からなり、少なくとも1個のチューブ状口部を有するものに関する。」(2ページ左下欄3行ないし6行)

(b)「バッグ10は通常、チューブ20、22を下にして垂下され、充填液が容易に流出するようするので、チューブ20、22の反対側に開口部28を設け、これを介してスタンド等のフックに掛けてバッグ10を保持させるようにしてもよい。」(8ページ左下欄13行ないし18行)

(c)「第5、6図に示す例においては、接着層53で囲まれたレンズ状の挿入部材50が設けられている。この構造のものは縁部において、内側シート32との溶接が容易となり、これにより、溶接縁部14、接着層53および挿入部材52との間の円滑な接着が図られる。この第5、6図の例においては、挿入部材52中に入口54および出口56が穿設されている。さらに充填用開口部58も以下の如く設けられている。
すなわち、入口、出口54、56にはそれぞれチューブ状接続部60、62(たとえば第4図と同様にして形成させることができる。)が設けられている。したがって、これらにも膜64、環状ビーズ66が設けられ、さらに充填用開口部58を設け、液体充填後、適当な栓体で封止するようにしてもよい。
この挿入部材52に第3図の如き漏斗状に開口するチューブ20、22を突設させてもよい。」(9ページ左上欄19行ないし右上欄16行)

(d)図面のFIG.5、6に、レンズ状の挿入部材52が、中央部と該中央部から互いに逆方向に延出するとともに鋭く尖った2つの延出部を備えたものであること、また、充填用開口部58が、レンズ状の挿入部材52の中央部に設けられている一方、入口54及び出口56が、それぞれ前記延出部に設けられることが記載されていると認められる。

以上の記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
「中央部と、該中央部から互いに逆方向に延出するとともに鋭く尖った2つの延出部とを備え、液体をバッグ10に充填するために用いられかつ充填後に栓体で封止される充填開口部58が前記中央部に設けられている一方、入口54及び出口56がそれぞれ前記延出部に設けられている、バッグ10に溶着により取り付けられる挿入部材52。」

4.対比
引用文献の上記「3.」(b)に、チューブ20、22を下にして垂下され、充填液が容易に流出するようにしていることが記載されているように、これらチューブ20、22に接続される入口54及び出口56が、バッグ10を実際に使用するために用いられるものであることは明らかである。
そして、引用発明の「充填開口部」、「入口」、「出口」、「バッグ」、「挿入部材」が、それぞれ本願補正発明の「開口部」、「注入口」、「排出口」、「パウチ」、「舟形溶着部品」に相当する。また、「液体」は、「物質」に包含されるものである。
すると、本願補正発明と引用発明との一致点と相違点は次のとおりである。
【一致点】
「中央部と、該中央部から互いに逆方向に延出するとともに鋭く尖った2つの延出部とを備え、物質をパウチに充填するために用いられかつ充填後に密封される開口部が前記中央部に設けられている一方、パウチを実際に使用するために用いられ、注入口及び排出口がそれぞれ前記延出部に設けられているパウチ用の舟形溶着部品。」
【相違点1】
本願補正発明の開口部が、「製造中」に物質をパウチに充填するために用いられかつ充填後に密閉されるものであるのに対し、引用発明の充填開口部が、どのような状況で、液体をバッグ10に充填するために用いられかつ充填後に密閉されるものであるのか明確でない点。
【相違点2】
本願補正発明の「注入口及び排出口」が、「開口部よりも小径」であり、また、「前記中央部は、可能な限り径が大きくて好ましくは円形の前記開口部によって実質的に占められ」ているのに対し、引用発明の「入口及び出口」と「充填開口部」との大きさの関係が明確でなく、また、「充填開口部」の大きさも、本願補正発明のような大きさではない点。
【相違点3】
本願補正発明が、「側方にある前記延出部の側縁は、直線状のものでかつ接線状に前記開口部と接している」のに対し、引用発明では、そのような構成となっていない点。

5.判断
上記相違点1ないし3について検討する。
(1)相違点1について
引用発明では、充填開口部からの液体の充填や密封が、どうような状況で行われるのか必ずしも明確ではないが、引用発明の充填開口部は、様々な状況において利用可能なものであることは明らかであるから、当然に、製造中においても利用できるものであり、さらに、そのような状況において充填開口部から液体の充填や密封をするようことに特段の困難性を伴うものでもないから、引用発明の充填開口部を、本願補正発明の上記相違点1のように利用することは、当業者であれば容易になし得たことである。

(2)相違点2について
パウチの技術分野において、パウチに様々な物質を充填させることは通常になされていることであり、その場合の開口部の大きさは、充填される物質の形態や、充填の仕方を考慮して、当業者であれば当然に考慮すべきものである。
また、パウチに、粉状の物質を投入するということは、通常になされていることであり、そのために、開口部を設けたり、また、開口部を大きくしたりすることもまた、通常になされていることである(特開平11-151286号公報(欄落【0020】)、実願平1-16729号(実開平2-109632号)のマイクロフィルム(6ページ11行ないし18行、7ページ9行ないし15行))。
してみれば、引用発明の入口及び出口、充填開口部の大きさを、上記のような粉状の物質の投入などを考慮して、入口や出口に比べて充填開口部を大きくし、本願補正発明の上記相違点2の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(3)相違点3について
上記(2)で、検討したとおり、引用発明の充填開口部を大きくすることは、当業者の適宜なし得ることである。そして、引用発明の充填開口部を大きくした際に、挿入部材の延出部の側縁と接するようにすることは、パウチの技術分野においては、通常に採用されている開口部の形状であり(特開平11-1248号公報(図3、6))、また、充填開口部を最大限に大きくする形状として当然に想到し得る形状であるから、当業者であれば容易に想到し得たものである。
また、側縁を直線状とすることも、挿入部材とバッグとの溶着性などを考慮して、当業者であれば容易になし得たことである。

また、本願補正発明の効果も当業者であれば容易に予想し得る程度のものにすぎない。

6.補正却下の決定のむすび
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年3月16日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その請求項1により特定される、以下のとおりのものである。
「中央部と、該中央部から互いに逆方向に延出するとともに鋭く尖った2つの延出部とを備え、製造中に物質をパウチに充填するための開口部が前記中央部に設けられている一方、前記パウチを実際に使用するための注入口及び排出口がそれぞれ前記延出部に設けられている前記パウチ用の舟形溶着部品において、
前記中央部は、可能な限り径が大きくて好ましくは円形の前記開口部によって実質的に占められており、
側方にある前記延出部の側縁は、接線状に前記開口部と接していることを特徴とする舟形溶着部品。」

第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献に記載された発明(以下、「引用発明」という。)は、上記「第2」、「【理由】」、「3.引用文献」に記載したとおりものである。

第5 対比・判断
本願発明は、上記「第2」、「【理由】」、「1.本件補正」に記載したように、本願補正発明から一部の特定事項を省いたものであり、その他の構成については、本願補正発明と差違がない。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに、他の構成要素を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2」、「4.対比」及び「5.判断」で検討したように、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-17 
結審通知日 2010-05-18 
審決日 2010-06-01 
出願番号 特願2003-559406(P2003-559406)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一渡邊 真  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 熊倉 強
村上 聡
発明の名称 パウチ用舟形溶着部品  
代理人 藤田 篤史  
代理人 今江 克実  
代理人 井関 勝守  
代理人 二宮 克也  
代理人 嶋田 高久  
代理人 竹内 祐二  
代理人 竹内 宏  
代理人 前田 弘  
代理人 原田 智雄  

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