• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1240495
審判番号 不服2008-27813  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-30 
確定日 2011-07-21 
事件の表示 特願2004-265945「セラミック電子部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月23日出願公開、特開2006- 80463〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年9月13日の出願であって、平成20年3月10日付けで手続補正がなされ、同年9月29日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成20年3月10日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「セラミック材料及び第1のバインダー化合物を含むセラミック材料層、並びに、該セラミック材料層を挟むように配置された電極ペースト層を有する内層部と、該内層部を挟むように配置されており、セラミック材料及び前記第1のバインダー化合物よりも分解温度が120℃以上低い第2のバインダー化合物を含む外層部と、を備える積層体を形成する工程と、
前記積層体を加熱して、当該積層体から前記第1及び第2のバインダー化合物を除去する工程と、
前記第1及び第2のバインダー化合物が除去された前記積層体を焼成する工程と、
を有することを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。」

3.引用刊行物に記載された発明
(3-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内で頒布された特開昭57-129885号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当合議体にて付加したものである。以下同じ。)

特許請求の範囲
「グリーンシート上に電極層,セラミツク層を交互に積層すると共に、さらにその上にグリーンシートを積層し、それぞれを加圧一体化するに当つて、グリーンシート,セラミツク層に含まれるバインダーの分解温度を異ならせると共に、グリーンシートにはセラミツク層より分解温度の低いバインダーを用いることを特徴とする積層セラミツク部品の製造方法。」

発明の詳細な説明
「本発明は積層セラミツクコンデンサなど積層セラミツク部品の製造方法の改良に関するものである。」(第1頁左下欄下から4行?下から2行)
「まず、チタン酸バリウム系のセラミツク粉末100部に藤倉化成株式会社製のアクリベース(1B-30)6部,DOP(デイオクチルスタレート)3部,トリクロールエチレン31部,エチルアルコール23部を混合して第1の泥しようを調整する。そして、この第1の泥しようからドクターブレード法によつて厚さが0.2mmのグリーンシートを形成し、名刺状に打抜く。次にチタン酸バリウム系のセラミツク粉末100部にPVB6部,DOP4部,トリクロールエチレン31部,エチルアルコール23部を混合してなる第2の泥しようをドクターブレード法によつて厚さが30μmのセラミツク層を形成し、名刺状に打抜く。その上に、パラジウム粉末,PVB,溶剤を含む混合部材をスクリーン印刷法によつて厚さが5μmの電極層を形成する。この電極層を形成したセラミツク層を、電極層が互い違い状になるように複数枚積層する。次にこの積層体を第1の泥しようからなるグリーンシートでサンドイツチし、200?300Kg/cm^(2)の圧力にてプレスし、所定の大きさに切断分離する。尚、厚みは1.5mm^(t)である。
次に、これら分離した積層体を加熱炉に入れ、炉温度を短時間に100℃まで上昇させる。その後、1時間当り5℃の割合で350℃まで上昇させる。この間に、グリーンシートに含まれるアクリベース(アクリル系バインダー)は熱分解され、微細な空孔部が形成される。そして、加熱温度が高くなるに従つて内部の電極層,セラミツク層におけるPVBも熱分解し始め、グリーンシートの微細な空孔部を介して分解ガスが放出されるようになる。加熱炉温度が350℃に到達後はその温度に60時間固定する。この段階で電極層,セラミツク層のPVBは盛んに熱分解されると共に、分解ガスはグリーンシートの微細な空孔部を介して外部に放出される。バインダーの分解完了後、炉温度を1400℃まで急速に上昇させて焼結処理する。次に、積層体を加熱炉より取り出し、電極層の露呈する端面に電極引出し層を形成して積層セラミツクコンデンサの製造を完了する。」(第2頁右上欄第20行?同頁右下欄第18行)

(3-2)上記記載からみて、引用刊行物には、以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。

「チタン酸バリウム系のセラミツク粉末、バインダーとしてのアクリベースを含む第1の泥しようから形成されたグリーンシート上にパラジウム粉末,バインダーとしてのPVB,溶剤を含む混合部材からなる電極層,チタン酸バリウム系のセラミツク粉末、バインダーとしてのPVBを含む第2の泥しようから形成されたセラミツク層を交互に積層すると共に、さらにその上に前記グリーンシートを積層した後、プレスし、所定の大きさに切断分離し、これら分離した積層体を加熱炉に入れ、炉温度を350℃まで上昇させ、この間に、グリーンシートに含まれるバインダーとしてのアクリベースを熱分解させ、加熱炉温度が350℃に到達後その温度に60時間固定し、電極層,セラミツク層のバインダーとしてのPVBを熱分解させ、これらバインダーの分解完了後、炉温度を1400℃まで上昇させて焼結処理する積層セラミツク部品の製造方法において、前記グリーンシート,前記セラミツク層に含まれるバインダーの分解温度を異ならせると共に、前記グリーンシートには前記セラミツク層より分解温度の低いバインダーを用いることを特徴とする積層セラミツク部品の製造方法。」

4.対比
(4-1)刊行物発明の「チタン酸バリウム系のセラミツク粉末、バインダーとしてのPVBを含む第2の泥しようから形成されたセラミツク層」及び「パラジウム粉末,バインダーとしてのPVB,溶剤を含む混合部材からなる電極層」は、各々本願発明の「セラミック材料及び第1のバインダー化合物を含むセラミック材料層」及び「電極ペースト層」に相当する。そして、刊行物発明において、「パラジウム粉末,バインダーとしてのPVB,溶剤を含む混合部材からなる電極層」は「チタン酸バリウム系のセラミツク粉末、バインダーとしてのPVBを含む第2の泥しようから形成されたセラミツク層」を挟むように配置されていることは明らかであるから、刊行物発明の「パラジウム粉末,バインダーとしてのPVB,溶剤を含む混合部材からなる電極層,チタン酸バリウム系のセラミツク粉末、バインダーとしてのPVBを含む第2の泥しようから形成されたセラミツク層」を交互に積層したものは、本願発明の「内層部」に相当する。

(4-2)刊行物発明において、「チタン酸バリウム系のセラミツク粉末、バインダーとしてのアクリベースを含む第1の泥しようから形成されたグリーンシート」は、「パラジウム粉末,バインダーとしてのPVB,溶剤を含む混合部材からなる電極層,チタン酸バリウム系のセラミツク粉末、バインダーとしてのPVBを含む第2の泥しようから形成されたセラミツク層」を交互に積層したものを挟むように配置されていることは明らかであるから、刊行物発明の「グリーンシート」は、本願発明の「セラミック材料及び」「第2のバインダー化合物を含む外層部」に相当する。

(4-3)刊行物発明の「グリーンシート上に」「電極層,」「セラミツク層を交互に積層すると共に、さらにその上に前記グリーンシートを積層した後、プレス、所定の大きさに切断分離」することは、本願発明の「セラミック材料層、並びに、該セラミック材料層を挟むように配置された電極ペースト層を有する内層部と、該内層部を挟むように配置され」た「外層部と、を備える積層体を形成する工程」に相当する。

(4-4)刊行物発明の「分離した積層体を加熱炉に入れ、炉温度を350℃まで上昇させ、この間に、グリーンシートに含まれるバインダーとしてのアクリベースを熱分解させ、加熱炉温度が350℃に到達後その温度に60時間固定し、電極層,セラミツク層のバインダーとしてのPVBを熱分解させ」ること、及び「これらバインダーの分解完了後、炉温度を1400℃まで上昇させて焼結処理する」ことは、各々本願発明の「積層体を加熱して、当該積層体から」「第1及び第2のバインダー化合物を除去する工程」及び「第1及び第2のバインダー化合物が除去された」「積層体を焼成する工程」に相当する。

(4-5)刊行物発明の「積層セラミツク部品の製造方法」は、本願発明の「セラミック電子部品の製造方法」に相当する。

(4-6)そうすると、本願発明と刊行物発明とは、
「セラミック材料及び第1のバインダー化合物を含むセラミック材料層、並びに、該セラミック材料層を挟むように配置された電極ペースト層を有する内層部と、該内層部を挟むように配置されており、セラミック材料及び前記第1のバインダー化合物よりも分解温度が低い第2のバインダー化合物を含む外層部と、を備える積層体を形成する工程と、
前記積層体を加熱して、当該積層体から前記第1及び第2のバインダー化合物を除去する工程と、
前記第1及び第2のバインダー化合物が除去された前記積層体を焼成する工程と、
を有することを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)本願発明では、「第2のバインダー化合物」は、「第1のバインダー化合物よりも分解温度が120℃以上低い」のに対して、刊行物発明では、「グリーンシートには」「セラミツク層より分解温度の低いバインダーを用いる」ことは記載されているものの、どの程度分解温度が低いものを用いるのかが特定されていない点。

5.判断
以下、上記相違点について検討する。
本願明細書には、「【0034】・・・ここで、脱バインダー工程を好適に行う観点からは、第2のバインダーは、第1のバインダーと比較して、その分解温度が50℃低いと好ましく、70℃低いとより好ましく、120℃低いと更に好ましい。」とは記載されているものの、本願発明のように「第1のバインダー化合物よりも分解温度が120℃以上低い第2のバインダー化合物」とすることは記載されておらず、第2のバインダーの分解温度を120℃以上低くしたことによる格別の効果は不明と言わざるを得ない。
そうすると、本願発明において、「第2のバインダー化合物」が「第1のバインダー化合物よりも分解温度が120℃以上低い」ことは、より好ましい分解温度を規定したこと以上の技術的意義を認めることはできない。したがって、刊行物発明において、グリーンシートに用いられるバインダー材として、セラミック層に用いられるバインダー材よりも分解温度が120℃低いものを選択することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項である。
審判請求人は、審判請求の理由において、引用刊行物の実施例で用いられているバインダー化合物では、分解温度の差が「120℃」以上になる可能性は高くない旨主張しているが、刊行物発明のバインダー化合物は、実施例に用いた具体的な化合物に限定されないから、バインダー材の分解温度の差を「120℃」以上とすることの妨げにはならない。
よって、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものである。

以上検討したとおり、本願発明と刊行物発明との相違点は、当業者が容易に想到し得たものであり、本願発明は、刊行物発明(引用刊行物に記載された発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-17 
結審通知日 2011-05-24 
審決日 2011-06-07 
出願番号 特願2004-265945(P2004-265945)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 匡明近藤 聡  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 松田 成正
小野田 誠
発明の名称 セラミック電子部品の製造方法  
代理人 石坂 泰紀  
代理人 三上 敬史  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 黒木 義樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ