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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1240505
審判番号 不服2009-12961  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-16 
確定日 2011-07-21 
事件の表示 特願2004- 49946「光ディスク装置、光ヘッド及び光ディスク装置の検出信号処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月10日出願公開、特開2005- 38572〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成16年2月25日(優先権主張 平成15年6月26日)に出願したものであって、平成20年8月26日付けの拒絶理由通知に対して同年10月30日付けで手続補正がなされたが、平成21年4月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされた。
その後、平成22年11月30日付けで前置報告書(特許法第164条第3項)に基づく審尋がなされ、回答書が提出されたものである。


第2 平成21年7月16日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年7月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正
平成21年7月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、

本件補正前に、
「【請求項1】
光ディスクに対し光ヘッドからレーザー光を照射し情報の記録、再生のいずれか一方または両方を行う光ディスク装置であって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、該レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、上記光ディスクからの反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換し出力する第3の回路とを有する光ヘッドと、
上記光ヘッドからの上記デジタル信号をシリアルインターフェースを介して受け取り、
装置制御用の制御信号を形成する制御部と、
を備えた構成を特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスクに対し光ヘッドからレーザー光を照射し情報の記録、再生のいずれか一方または両方を行う光ディスク装置であって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、該レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、上記光ディスクからの反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路と、上記デジタル信号を時分割し外部に出力するシリアルインターフェース部とを有する光ヘッドと、
上記光ヘッドからの上記デジタル信号をシリアルインターフェースを介して受け取り、
装置制御用の制御信号を形成する制御部と、
を備えた構成を特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
光ディスクに対し光ヘッドからレーザー光を照射し情報の記録、再生のいずれか一方または両方を行う光ディスク装置であって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、該レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、上記光ディスクからの反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路と、上記アナログ電気信号に基づき、上記光学系の状態、再生信号及びサーボ信号を検出する第4の回路と、上記レーザーダイオードから発射されるレーザー光の強さを検出する第5の回路と、上記第4の回路と上記第5の回路の接続を切換える第6の回路とを有する光ヘッドと、
上記光ヘッドからの上記デジタル信号をシリアルインターフェースを介して受け取り、
装置制御用の制御信号を形成する制御部と、
を備えた構成を特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
上記第1の回路、上記第2の回路及び上記第3の回路は、1つの基板上または1つのIC内に構成される請求項1、2または3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
上記第1の回路、上記第2の回路、上記第3の回路及び上記第6の回路は、1つの基板上または1つのIC内に構成される請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスクに対しレーザー光を照射して情報の記録または再生を行う光ディスク装置の光ヘッドであって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、
上記レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、
上記光ディスクからの反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、
上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、
上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、
上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路と、
を備え、上記光ディスクにレーザー光を照射するとともに、上記反射レーザー光から検出されるデータをデジタル信号としてディスク装置本体側に伝送する構成としたことを特徴とする光ヘッド。
【請求項7】
光ディスクに対しレーザー光を照射して情報の記録または再生を行う光ディスク装置の光ヘッドであって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、
上記レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、
上記光ディスクからの反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、
上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、
上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、
上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路と、
上記デジタル信号を時分割し外部に出力するシリアルインターフェース部と、
を備え、上記光ディスクにレーザー光を照射するとともに、上記反射レーザー光から検出する複数のデータを、デジタル信号として時分割でディスク装置本体側に伝送する構成としたことを特徴とする光ヘッド。
【請求項8】
上記第1の回路、上記第2の回路及び上記第3の回路は、1つの基板上または1つのIC内に構成される請求項6または請求項7に記載の光ヘッド。
【請求項9】
光ディスクに対しレーザー光を照射して情報の記録または再生を行う光ディスク装置の検出信号処理方法であって、
上記光ディスクからの反射レーザー光を受光し光ヘッド内でアナログ電気信号に変換するステップと、
上記アナログ電気信号を光ヘッド内でサンプルホールドするステップと、
上記サンプルホールドされた信号を光ヘッド内でデジタル信号に変換するステップと、
上記デジタル信号を、シリアルインターフェースを介し時分割で装置本体側の制御部に伝送するステップと、
装置本体側において、該デジタル信号に基づき制御信号を形成するステップと、
を経て、上記光ヘッドからの検出信号を処理する検出信号処理方法。
【請求項10】
上記1つのICは、レーザーダイオード駆動回路である請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項11】
上記1つのICは、レーザーダイオード駆動回路である請求項5に記載の光ディスク装置。
【請求項12】
上記1つのICは、レーザーダイオード駆動回路である請求項8に記載の光ヘッド。」
とあったところを、

「【請求項1】
光ディスクに対し光ヘッドからレーザー光を照射し情報の記録、再生のいずれか一方または両方を行う光ディスク装置であって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、該レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、上記光ディスクからのRF信号を含む反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、RF信号を含む上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、RF信号を含む上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換し出力する第3の回路とを有する光ヘッドと、
上記光ヘッドからの上記デジタル信号をシリアルインターフェースを介して受け取り、
装置制御用の制御信号を形成する制御部と、
を備えた構成を特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスクに対し光ヘッドからレーザー光を照射し情報の記録、再生のいずれか一方または両方を行う光ディスク装置であって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、該レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、上記光ディスクからのRF信号を含む反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、RF信号を含む上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、RF信号を含む上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路と、上記デジタル信号を時分割し外部に出力するシリアルインターフェース部とを有する光ヘッドと、
上記光ヘッドからの上記デジタル信号をシリアルインターフェースを介して受け取り、
装置制御用の制御信号を形成する制御部と、
を備えた構成を特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
光ディスクに対し光ヘッドからレーザー光を照射し情報の記録、再生のいずれか一方または両方を行う光ディスク装置であって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、該レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、上記光ディスクからのRF信号を含む反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、RF信号を含む上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、RF信号を含む上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路と、上記アナログ電気信号に基づき、上記光学系の状態、再生信号及びサーボ信号を検出する第4の回路と、上記レーザーダイオードから発射されるレーザー光の強さを検出する第5の回路と、上記第4の回路と上記第5の回路の接続を切換える第6の回路とを有する光ヘッドと、
上記光ヘッドからの上記デジタル信号をシリアルインターフェースを介して受け取り、
装置制御用の制御信号を形成する制御部と、
を備えた構成を特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
上記第1の回路、上記第2の回路及び上記第3の回路は、1つの基板上または1つのIC内に構成される請求項1、2または3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
上記第1の回路、上記第2の回路、上記第3の回路及び上記第6の回路は、1つの基板上または1つのIC内に構成される請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスクに対しレーザー光を照射して情報の記録または再生を行う光ディスク装置の光ヘッドであって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、
上記レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、
上記光ディスクからのRF信号を含む反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、
上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、
RF信号を含む上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、
RF信号を含む上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路と、
を備え、上記光ディスクにレーザー光を照射するとともに、上記反射レーザー光から検出されるデータをデジタル信号としてディスク装置本体側に伝送する構成としたことを特徴とする光ヘッド。
【請求項7】
光ディスクに対しレーザー光を照射して情報の記録または再生を行う光ディスク装置の光ヘッドであって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、
上記レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、
上記光ディスクからのRF信号を含む反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、
上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、
RF信号を含む上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、
RF信号を含む上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路と、
上記デジタル信号を時分割し外部に出力するシリアルインターフェース部と、
を備え、上記光ディスクにレーザー光を照射するとともに、上記反射レーザー光から検出する複数のデータを、デジタル信号として時分割でディスク装置本体側に伝送する構成としたことを特徴とする光ヘッド。
【請求項8】
上記第1の回路、上記第2の回路及び上記第3の回路は、1つの基板上または1つのIC内に構成される請求項6または請求項7に記載の光ヘッド。
【請求項9】
光ディスクに対しレーザー光を照射して情報の記録または再生を行う光ディスク装置の検出信号処理方法であって、
上記光ディスクからのRF信号を含む反射レーザー光を受光し光ヘッド内でアナログ電気信号に変換するステップと、
RF信号を含む上記アナログ電気信号を光ヘッド内でサンプルホールドするステップと、
RF信号を含む上記サンプルホールドされた信号を光ヘッド内でデジタル信号に変換するステップと、
上記デジタル信号を、シリアルインターフェースを介し時分割で装置本体側の制御部に伝送するステップと、
装置本体側において、該デジタル信号に基づき制御信号を形成するステップと、
を経て、上記光ヘッドからの検出信号を処理する検出信号処理方法。
【請求項10】
上記1つのICは、レーザーダイオード駆動回路である請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項11】
上記1つのICは、レーザーダイオード駆動回路である請求項5に記載の光ディスク装置。
【請求項12】
上記1つのICは、レーザーダイオード駆動回路である請求項8に記載の光ヘッド。」
とするものである。

上記本件補正は、補正前の請求項1、2、3、6、7、9に、「反射レーザー光」、「上記アナログ電気信号」、「上記サンプルホールドされた信号」とあったところを、それぞれ、「RF信号を含む反射レーザー光」、「RF信号を含む上記アナログ電気信号」、「RF信号を含む上記サンプルホールドされた信号」と、各信号について「RF信号を含む」と限定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。

よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項6に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

本願補正発明は、次に記載するとおりのものである。

「【請求項6】
光ディスクに対しレーザー光を照射して情報の記録または再生を行う光ディスク装置の光ヘッドであって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、
上記レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、
上記光ディスクからのRF信号を含む反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、
上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、
RF信号を含む上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、
RF信号を含む上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路と、
を備え、上記光ディスクにレーザー光を照射するとともに、上記反射レーザー光から検出されるデータをデジタル信号としてディスク装置本体側に伝送する構成としたことを特徴とする光ヘッド。」


2.引用例及びその記載

(1)引用例

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日の前に頒布された刊行物である特開2001-291261号公報(平成13年10月19日公開、以下、「引用例」という)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。


(a)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ディスク等の書込み装置に用いて好適な方形波信号修正装置、発光制御装置、制御系および電流供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】光ディスク書込み装置においては、ディスクに対向するピックアップと、このピックアップに対して各種の制御を行うための制御装置を搭載したメインシートとが設けられる。ここで、ピックアップの位置は書込み動作に伴って移動するため、メインシートとピックアップとはフレキシブル基板によって接続される。フレキシブル基板は、例えば複数の平板状導体線を2枚のフィルムで挟んで成るものであり、単位長あたりの分布容量が大きい。また、メインシートからの制御信号をピックアップ側で確実に受け取る必要があるので、それぞれの側にしっかりとしたドライバ回路とレシーバ回路とを設けている。
【0003】光ディスクに対する書込みには一般的にレーザダイオードが用いられる。そして、光ディスクに書込まれた情報を読み出し、書込み状況をモニタし、そしてピックアップのサーボ制御を行うために、光ディスクから反射されたレーザを受光する複数のホトダイオードが設けられている。本明細書では、これらホトダイオードを第1受光素子として「再生ホトダイオード」と呼ぶ。また、再生ホトダイオードとは別にレーザダイオードから放射されたレーザを直接受光するホトダイオードも設けられている。本明細書では、これを第2受光素子として「フロントモニタダイオード」と呼ぶ。
【0004】<レーザパワーの制御について>光ディスク書込み装置においては、レーザダイオードの発光量を適切な値に保つため、フロントモニタダイオードまたは再生ホトダイオードの受光量(出力電流)に応じてレーザダイオード駆動電流が制御される。この制御系としては、APC,OPC,ROPCと呼ばれる3種類のものがあるため、各々について説明しておく。
【0005】(1)APC
APCは、フロントモニタダイオードの出力電流を目標値と比較し、両者の偏差に基づいてレーザダイオード駆動電流を増減する制御系である。
(2)OPC
上記APCにおいては、予め「目標値」が必要である。CD-R等の光ディスクには、予めOPC用のテストエリアが用意されている。このテストエリアを用いて、光ディスクに対して実際の書込みを行う前に、レーザダイオード駆動電流をライトレベル付近で階段波状に変化させ記録した後、再度このエリアをリードし最適なホトダイオードの出力電流を検出する。この検出した出力電流に基づいて、上記目標値を決定する系をOPCと呼ぶ。
【0006】(3)ROPC上記OPCは光ディスク挿入時に実行されるが、実際に書込み動作が開始された後は環境温度の変化等によってレーザダイオードの発光特性が変動する。そこで、書込み中においても、ピット形成タイミングで再生ホトダイオードの出力電流を逐次検出する。この検出結果に基づいて上記目標値を修正する系をROPCと呼ぶ。」

(b)「【0017】
【発明の実施の形態】1.第1実施形態
1.1.実施形態の構成
1.1.1.全体構成
次に、本発明の第1実施形態の光ディスク書込み装置の構成を図1を参照し説明する。光ディスク書込み装置は、メインシート100と、ピックアップ200と、両者を接続するフレキシブル基板150とから構成されている。ピックアップ200の内部において202は再生光処理回路であり、4分割受光部およびその上下に配置される2受光部の計6個の再生ホトダイオード302a?302fの各出力電流に基づいて再生RF信号を出力するとともに、後段側で各種サーボ信号を演算生成するためにこれら再生ホトダイオードの各出力電流値A?Fをフレキシブル基板150を介してメインシート100内のサーボアナログチップ102に供給する。サーボアナログチップ102では、再生RF信号を波形成形して再生EFM信号とするとともに、各再生ホトダイオードの出力信号を用いてトラッキングエラー信号、フォーカシングエラー信号およびウォブル信号等の各種制御信号を生成する。
【0018】104はデコーダであり、再生EFM信号をデコードし、その結果をパラレルなデジタル信号として外部に出力する。106はサーボDSPであり、トラッキングエラー信号およびフォーカシングエラー信号に基づいて、トラッキングサーボ信号およびフォーカシングサーボ信号を生成する。これらの信号はアクチュエータ170に供給されて、ピックアップ200の位置が制御される。」

(c)「【0021】118はシリアルインタフェースであり、フレキシブル基板150を介して、ピックアップ200内のシリアルインタフェース228との間で各種の制御信号をやりとりする。すなわち、シリアルインタフェース118,228は、相手方に伝送すべき情報を、バランス型の差動電流信号であるシリアル信号に変換して伝送する。」

(d)「【0023】次に、ピックアップ200の内部において224はライトストラテジ回路であり、ここでは記録用EFM信号の受信波形に基づき、これを実際に媒体に記録する際のレーザダイオード300の駆動波形として記録に適するように種々の波形変形を行うための制御パルス(図3参照)を生成する。また、レーザダイオード300に対するAPC,OPC,およびROPC制御を行うためには、各々に対して適切なタイミングで再生ホトダイオード302a?302fまたはフロントモニタダイオード301の出力電流をサンプリングする必要がある。ライトストラテジ回路224はこれらのサンプリングパルスも生成する。
【0024】ところで、従来の光ディスク書込み装置においては、ライトストラテジ回路224はメインシート100側に設けられていたが、本実施形態においてはピックアップ200内に設けられている。これは、光ディスクに対する書込み速度を速くしたとき記録波形の高周波成分が増加し、これをフレキシブル基板150を介して伝送すると信号の劣化が著しくなるからである。」

(e)「【0026】206はOPCサンプルホールド回路であり、OPCが実行される際に、対応するサンプリングパルスに同期して再生ホトダイオード302a?302fの出力電流値のうち所定のもの(OPCの手法により異なる)をサンプルホールドする。なお、この出力電流値は再生光処理回路202から出力されている。204はROPCサンプルホールド回路であり、書込み処理の実行中に、対応するサンプリングパルスに同期して該再生ホトダイオードの出力電流値をサンプリングする。
【0027】210はI/V変換回路であり、フロントモニタダイオード301の出力電流を、該電流に比例する電圧信号(出力電流値を示す)に変換する。208はサンプル・ピーク・ボトムホールド回路であり、対応するサンプリングパルスに同期してフロントモニタダイオード301の出力電流値をサンプルホールドするとともに、該出力電流値のピーク値およびボトム値をホールドする。
【0028】226はADコンバータであり、各ホールド回路204,206,208の出力電圧をデジタル信号に変換する。230はレーザDSPであり、これらホールド値を必要に応じてメモリ231に記憶させるとともに、図3(b)の記録波形の各レベルに対応するレーザダイオードの発光量(フロントモニタダイオード301の出力電流)の目標値を算出し、これに基づいて定電流IIW,IIE,IIRの指令値を出力する。
【0029】232は電流DAコンバータであり、レーザDSP230の指令値に基づいて電流源・電流消費回路122から供給された定電流を分流し、定電流IIW,IIE,IIR,IIBを出力する。222はレーザドライバであり、ライトストラテジ回路224から供給された各制御パルスによってこれら定電流をスイッチングするとともに重畳し、その結果をレーザダイオード駆動電流として出力する。234は雑音重畳回路であり、この駆動電流に雑音を付加する。」

(f)「【0040】2.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態を図2を参照し説明する。なお、図において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図においてレーザDSP230、メモリ231および電流DAコンバータ232はピックアップ側ではなくメインシート100側に設けられている。
【0041】このため、各ホールド回路204,206,208の出力値はシリアルインタフェース228においてシリアル信号に変換され、フレキシブル基板150、シリアルインタフェース118を介してレーザDSP230に供給されることになる。また、電流DAコンバータ232によって生成された4系統の定電流IIW,IIE,IIR,IIBは、フレキシブル基板150を介してレーザドライバ222に供給される。
【0042】このように、本実施形態においては、レーザDSP230、メモリ231および電流DAコンバータ232をメインシート100側に実装したため、ピックアップ200における発熱量を一層削減することができる。」

(g)引用例の図2には、ピックアップの内部に、レーザダイオード、ライトストラテジ回路、レーザドライバ、再生ホトダイオード、再生光処理回路、S/H ROPC、ADCが設けられ、メインシートには、Laser DSPが設けられている点、及びピックアップとメインシートがフレキシブル基板を介して接続されている点が示されている。

上記引用例に記載された事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、結局、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

「光ディスクに対向するピックアップと、ピックアップに対して各種の制御を行うための制御装置を搭載したメインシートがフレキシブル基板によって接続された、記録及び再生を行う光ディスク書込み装置のピックアップであって、
光ディスクに対する書き込みを行うレーザダイオードと、
ライトストラテジ回路から供給された制御パルスによって、レーザダイオード駆動電流を出力するレーザドライバと、
光ディスクに書込まれた情報を読み出し、書込み状況をモニタするために、光ディスクから反射されたレーザを受光する再生ホトダイオードと、
ライトストラテジ回路で生成されるサンプリングパルスで、再生ホトダイオードの出力電流値をサンプリングする、ROPCサンプルホールド回路と、
ROPCサンプルホールド回路の出力電圧をデジタル信号に変換するADコンバータと、
を備え、
変換されたデジタル信号は、ピックアップ内のシリアルインタフェースを介して、メインシート側に供給される、
ピックアップ。」


3.対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「光ディスク書込み装置」は記録及び再生を行うものであり、また、光ディスクに対してレーザー光を照射して記録を行い、レーザ光の反射光をフォトダイオードによって検出して再生を行うことは、光ディスク装置において技術常識であるから、引用発明の「光ディスク書き込み装置」は、本願補正発明の「光ディスクに対しレーザー光を照射して情報の記録または再生を行う光ディスク装置」に相当する。

(2)引用発明の「ピックアップ」は、光ディスクに対するピックアップであるから、本願補正発明の「光ヘッド」に相当し、引用発明の「光ディスクに対する書き込みを行うレーザダイオード」は、本願補正発明の「レーザー光を発生するレーザーダイオード」に相当する。また、一般に、光ディスク装置において、光ピックアップは、レーザー光を集束して光ディスクの情報記録面に照射する光学系を有するから、引用発明の「ピックアップ」も本願補正発明の「上記レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系」を備えるものである。

(3)引用発明の「再生ホトダイオード」は、光ディスクからの反射レーザ光を受光し、アナログ電気信号に変換して出力するものであり、また、反射レーザ光はRF信号を含むものである。そして、一般に、再生のためのフォトダイオードへ、反射レーザ光を受光させる際に、上記(2)に記載した光学系を介することも慣用手段であるから、結局、引用発明の「光ディスクから反射されたレーザを受光する再生ホトダイオード」は、本願補正発明の「上記光ディスクからのRF信号を含む反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部」に相当する。

(4)引用発明の「ライトストラテジ回路から供給された制御パルスによって、レーザダイオード駆動電流を出力するレーザドライバ」は、本願補正発明の「上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路」に相当する。

(5)本願補正発明の「上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路」、「上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路」は、それぞれ、本願明細書に記載された実施例の、サンプルホールド回路257、AD変換回路259に対応するものである(段落【0009】参照)。
そして、サンプルホールド回路257は、OEIC23からの検出信号(アナログ信号)が入力され、AD変換回路259に出力するものであり(段落【0010】参照)、一方、OEIC23は、ランニングOPC(R-OPC)に用いるものでもあり(段落【0012】、図1の「OEIC(R-OPC)」23参照)、また、OEIC23からの検出信号(アナログ信号)は、マルチパルスを発生するTime Ganger252から出力されるタイミング信号で、サンプルホールドされるものであるから(段落【0008】、段落【0012】)、結局、本願補正発明も、ランニングOPC(R-OPC)のために、OEIC23からの検出信号(アナログ信号)を第2の回路(サンプルホールド回路)においてサンプルホールドし、その後、第3の回路(AD変換回路)においてデジタル信号に変換するものと解される。
したがって、引用発明の「再生ホトダイオードの出力電流をサンプリングする、ROPCサンプルホールド回路」、「ROPCサンプルホールド回路の出力電圧をデジタル信号に変換するADコンバータ」は、それぞれ、本願補正発明の、「上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路」、「上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路」に相当する。

(6)(i)引用発明の「変換されたデジタル信号」は、光ディスクから反射されたレーザを受光する再生ホトダイオードから得られる出力電流値をサンプルホールドし、その出力電圧をADコンバータによってデジタル信号に変換したものであるから、本願補正発明の「上記反射レーザー光から検出されるデータをデジタル信号として」いることに相当する。
また、引用発明のピックアップは移動するものであってフレキシブル基板によってメインシートと接続されるものであるから(上記2.(1)(g)段落【0002】参照)、引用発明の「メインシート」は、移動するピックアップ側からみてディスク装置本体側にあるものと解され、引用発明の「変換されたデジタル信号はピックアップ内のシリアルインタフェースを介して、メインシート側に供給される」構成は、本願補正発明の「上記反射レーザー光から検出されるデータをデジタル信号としてディスク装置本体側に伝送する構成としたこと」に相当する。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「光ディスクに対しレーザー光を照射して情報の記録または再生を行う光ディスク装置の光ヘッドであって、
上記レーザー光を発生するレーザーダイオードと、
上記レーザー光を集束して上記光ディスクの情報記録面に照射する光学系と、
上記光ディスクからのRF信号を含む反射レーザー光を上記光学系を介して受光しアナログ電気信号に変換して出力する光検出部と、
上記レーザーダイオードを駆動する第1の回路と、
(RF信号を含む)上記アナログ電気信号をサンプルホールドする第2の回路と、
(RF信号を含む)上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換する第3の回路と、
を備え、上記光ディスクにレーザー光を照射するとともに、上記反射レーザー光から検出されるデータをデジタル信号としてディスク装置本体側に伝送する構成としたことを特徴とする光ヘッド。」


<相違点>

本願補正発明は、第2の回路について、「RF信号を含む」アナログ電気信号をサンプルホールドするとし、また、第3の回路について、「RF信号を含む」上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換するとしているのに対し、引用発明は、「RF信号を含む」点について特定がない点。


4.判断

<相違点>について
R-OPCを行うために、光ディスクからRF信号が含まれる反射光を検出し、その信号をサンプルホールドすることは周知技術であるから(例えば、特開2000-222730号公報(段落【0006】、段落【0012】ないし段落【0013】、図1、図2、図10、「サーボ/RF用フォトダイオード104」、「B値検出回路105」、「S/H52」、「ROPCループフィルタ回路108」)参照)、特開平11-312311号公報(段落【0035】、段落【0049】、図1(g)、図6、「反射光量検出用PD2」「サンプルホールド1」、「サンプリング手段4」)参照)、引用発明のROPCサンプルホールド回路に対応する、引用例に記載のS/H ROPC204に、RF信号が含まれる反射光を検出する再生ホトダイオードからの信号を再生処理回路を介して入力し、RF信号が含まれる信号をサンプルホールドするようにすることに格別の困難性を有しない。
よって、引用発明において「RF信号を含む」信号をROPCサンプルホールド回路に入力してサンプルホールドし、その出力をADコンバータにおいてデジタル変換するようにして、本願補正発明のように、「RF信号を含む」上記アナログ電気信号をサンプルホールドし、「RF信号を含む」上記サンプルホールドされた信号をデジタル信号に変換することは当業者が容易に想到し得る事項である。


5.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成21年7月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年10月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲、即ち、上記「第2 1.」に本件補正前の請求項6として記載したとおりのものである。

2.引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、反射レーザー光、アナログ電気信号、サンプルホールドされた信号について、「RFを含む」との限定を削除したものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2〔理由〕3. 4.」に示したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、各引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-17 
結審通知日 2011-05-24 
審決日 2011-06-07 
出願番号 特願2004-49946(P2004-49946)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 聡石丸 昌平  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 山田 洋一
早川 学
発明の名称 光ディスク装置、光ヘッド及び光ディスク装置の検出信号処理方法  
代理人 ポレール特許業務法人  

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