ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F24F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F |
---|---|
管理番号 | 1240531 |
審判番号 | 不服2010-9840 |
総通号数 | 141 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-05-10 |
確定日 | 2011-07-21 |
事件の表示 | 特願2004- 45750号「空気調和方法及び空気調和装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 2日出願公開、特開2005-233562号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成16年2月23日の出願であって、平成22年2月3日に拒絶査定がなされ、これに対して平成22年5月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.平成22年5月10日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年5月10日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「室内循環空気を蒸発器で冷却して室内を除湿する空気調和方法であって、 前記蒸発器の風上側に凝縮器を配置し、室内温度27℃、相対湿度60%の標準試験条件において、前記凝縮器の凝縮温度を40℃以下、前記蒸発器の蒸発温度を前記蒸発器の入口空気温度との差が24℃以上となるように設定することにより、前記蒸発器の表面で空気中の水分を滴状に凝縮させることを特徴とする空気調和方法。」 また、特許請求の範囲の請求項5は、 「空気吸入口と空気排出口とが形成された本体と、 前記本体の内部に配置され、室内温度27℃、相対湿度60%の標準試験条件において凝縮温度が40℃以下に設定された第1の凝縮器と、 前記第1の凝縮器の風下側に配置され、前記標準試験条件において前記第1の凝縮器の出口空気温度との差が24℃以上である蒸発温度に設定された蒸発器と、前記第1の凝縮器及び前記蒸発器へ冷媒を循環流通させる圧縮機と、 前記空気流入口側から前記空気排出口側への空気の流れを形成する送風機とを備えた空気調和装置。」と補正された。 2.補正の目的 上記請求項1の補正は、「蒸発器の表面で空気中の水分を滴状に凝縮させて除湿する」とあったものを、「蒸発器の表面で空気中の水分を滴状に凝縮させる」として、「除湿する」を削除したものである。 また、上記請求項5の補正は、「蒸発器の風上側に予熱用の凝縮器が配置され、除湿又は冷房運転時、前記蒸発器の入口空気温度と前記蒸発器の蒸発温度との差が24℃以上に設定されている」を、「第1の凝縮器の風下側に配置され、前記標準試験条件において前記第1の凝縮器の出口空気温度との差が24℃以上である蒸発温度に設定された蒸発器」として、上記の温度差が24℃以上に設定されたのが「除湿又は冷房運転時」であることを削除したものであるから、上記の補正は、平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法(以下「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、特許法第17条の2第4項第1号、第3号、第4号に規定する、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。 したがって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 上記のように本件補正は、改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないが、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的としたものと仮定して、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうか)についても以下に検討する。 3.引用刊行物とその記載内容 刊行物:特開2002-130863号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物には、「除湿方法」に関して以下の記載がある。 ア.「【特許請求の範囲】 【請求項1】 風上側から蒸発器および凝縮器を順に配置し、空気流を前記蒸発器で露点温度にまで冷却して水分を除去した後、該空気流を前記凝縮器で所定温度に再熱する除湿方法であって、 前記空気流中の水分を前記蒸発器の表面で滴状凝縮させて、除湿することを特徴とする除湿方法。 【請求項2】 前記蒸発器の風上側に、前記凝縮器を分割して構成される予熱器を配置し、該予熱器により前記蒸発器を通る空気流の温度を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の除湿方法。」(下線部は当審にて付与。以下同様。) イ.「【0008】本発明は上述の問題に鑑みてなされ、装置の最低露点温度を0℃付近まで低下させて除湿量の増大を図ることができる除湿方法を提供することを課題とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】以上の課題は、風上側から蒸発器および凝縮器を順に配置し、空気流を前記蒸発器で露点温度にまで冷却して水分を除去した後、該空気流を前記凝縮器で所定温度に再熱する除湿方法であって、前記空気流中の水分を前記蒸発器の表面で滴状凝縮させて、除湿することを特徴とする除湿方法、によって解決される。 【0010】従来の除湿方法では、凝縮液(空気中の水分)が蒸発器の表面(凝縮面)を膜状に覆う膜状凝縮となり、凝縮面の伝熱はこの液膜を通して行われるため、この液膜が大きな伝熱抵抗となる。これに対して本発明は、空気中の水分を、凝縮液が凝縮面を滴状に覆う滴状凝縮の形態で凝縮させることにより、膜状凝縮に比べて空気流が凝縮面と直接接触する部分の面積を増大させ、熱貫流率(熱伝達率)を高める。 【0011】したがって、本発明によれば、熱貫流率の向上により水分の凝縮が促進され、空気流から奪う潜熱量が増大し、結果的に露点温度の低下がもたらされる。これにより、露点温度を0℃付近まで低下させることができ、除湿量の大幅な向上を図ることが可能となる。」 ウ.「【0012】空気中の水分を蒸発器の表面で滴状に凝縮させるには、蒸発器の風上側に凝縮器を分割して構成される予熱器を配置し、この予熱器によって蒸発器を通る空気の温度を上昇させる方法が好適である。これにより、凝縮器の凝縮負荷が低減されて凝縮温度が低下するとともに蒸発温度も低下する。したがって、空気流と蒸発器表面との間の温度差が大きくなって水分の滴状凝縮が促され、除湿量の向上が図られる。」 エ.「【0019】次に、本実施の形態の作用について説明する。図示しない送風機の駆動により室内の空気が予熱凝縮器11へ導かれ、ここで所定温度(本実施の形態では5℃)上昇された空気は蒸発器12で冷却され、水分が除去された後、後段の再熱凝縮器13によって所定温度に再熱され、室内へ放出される。 【0020】本実施の形態では、予熱凝縮器11の通過により、空気は所定温度高められた状態で蒸発器12の表面に接触するため、当該予熱凝縮器11がない場合に比べて大きな温度差で蒸発器12と接触することになる。また、凝縮器の分割配置により凝縮温度が低下し、露点温度(蒸発温度)が低下する。以上から、水分の滴状凝縮が促進され、空気から奪う潜熱量を増やして除湿量の向上が図られる。 【0021】露点温度の低下を図3に示す湿り空気線図上で説明すると、室内の空気が例えば標準点(温度27℃、相対湿度60%)にあるとすると、予熱凝縮器11により32℃にまで予熱された後、蒸発器12で冷却されることになるが、このとき操作線は、0℃以下(本例では-1℃)で飽和温度曲線と接し、この温度が露点温度(蒸発温度)となる。 【0022】この湿り空気線図からでは装置の顕熱比(SHF)を表すことはできない。しかし、後述するように、装置の蒸発温度(露点温度)、除湿量、圧縮機の能力表より計算にて、顕熱比を算出することは可能である。 【0023】表1に、標準点(27℃、相対湿度60%)を基準とした、予熱凝縮器11による空気の上昇温度と最低到達蒸発温度との関係を例示的に示す。空気を3℃以上上昇させるように予熱凝縮器の凝縮温度を設定すれば(例えば40℃)、-1℃の最低到達蒸発温度を得ることができる。」 以上の記載(ア.?エ.)及び図面を総合すると、刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「室内の空気が蒸発器12で冷却され、水分が除去された後、室内に放出される除湿方法であって、蒸発器12の風上側に予熱凝縮器11を配置し、室内の空気が標準点(温度27℃、相対湿度60%)にある場合、予熱凝縮器11の凝縮温度を40℃に設定し、室内の空気が予熱凝縮器11により32℃にまで予熱された後、蒸発器12で冷却されて露点温度(蒸発温度)を-1℃となるようにすることにより、空気流と蒸発器表面との間の温度差を大きくし、空気流中の水分を前記蒸発器の表面で滴状凝縮させる除湿方法。」 4.発明の対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「蒸発器12」は、本願補正発明の「蒸発器」に、以下同様に「除湿方法」は、「空気調和方法」に、「予熱凝縮器11」は、「凝縮器」に、「標準点(温度27℃、相対湿度60%)」は、「室内温度27℃、相対湿度60%の標準試験条件」に、「室内の空気」は、室内に放出されることから、「室内循環空気」に、「水分が除去され」は、「除湿」にそれぞれ相当する。 さらに、引用発明における「予熱凝縮器11の凝縮温度を40℃」に設定することは、本願補正発明における「凝縮器の凝縮温度を40℃以下」となるように設定することに含まれ、 引用発明における「室内の空気が予熱凝縮器11により32℃にまで予熱された後、蒸発器12で冷却されて露点温度(蒸発温度)を-1℃となるようにする」ことは、蒸発器12の蒸発温度を蒸発器12の入口空気温度との差を33℃(32℃-(-1℃))となるように設定することであるから、本願補正発明における「蒸発器の蒸発温度を前記蒸発器の入口空気温度との差が24℃以上となるように設定すること」に含まれる。 よって両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 「一致点」 「室内循環空気を蒸発器で冷却して室内を除湿する空気調和方法であって、 前記蒸発器の風上側に凝縮器を配置し、室内温度27℃、相対湿度60%の標準試験条件において、前記凝縮器の凝縮温度を40℃、前記蒸発器の蒸発温度を前記蒸発器の入口空気温度との差が33℃となるように設定することにより、前記蒸発器の表面で空気中の水分を滴状に凝縮させることを特徴とする空気調和方法。」 [相違点] 本願補正発明においては、凝縮器の凝縮温度を40℃以下、蒸発器の蒸発温度を蒸発器の入口空気温度との差が24℃以上となるように設定したのに対し、引用発明においては、予熱凝縮器11の凝縮温度を40℃、蒸発器12の蒸発温度を蒸発器12の入口空気温度との差が33℃となるように設定した点。 5.当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 引用発明において、空気流中の水分を前記蒸発器の表面で滴状凝縮させることができる数値範囲を適宜実験等により見出すことは、当業者の通常の創作能力の発揮であり、凝縮器の凝縮温度を40℃にかえて40℃以下なる数値範囲とし、蒸発器の蒸発温度を蒸発器の入口空気温度との差を33℃にかえて24℃以上という数値範囲を設定して上記相違点に係る本願補正発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願補正発明により得られる効果も、引用発明から、当業者であれば予測できた範囲内のものである。 よって、本願補正発明は、引用発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 6.結び 以上のとおり、仮に、本件補正が改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、本件補正は、改正前の同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上述のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願時における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「室内循環空気を蒸発器で冷却して室内を除湿する空気調和方法であって、 前記蒸発器の風上側に凝縮器を配置し、前記蒸発器の入口空気温度と前記蒸発器の蒸発温度との間の温度差を24℃以上とすることにより、前記蒸発器の表面で空気中の水分を滴状に凝縮させて除湿することを特徴とする空気調和方法。」 2.引用刊行物とその記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物とその記載内容は、上記「第2.3.」に記載のとおりのものである。 3.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「蒸発器12」は、本願発明の「蒸発器」に、以下同様に「除湿方法」は、「空気調和方法」に、「予熱凝縮器11」は、「凝縮器」に、「室内の空気」は、室内に放出されることから、「室内循環空気」に、「水分が除去され」は、「除湿」に、「滴状凝縮させ」は、「滴状に凝縮させ」にそれぞれ相当する。 さらに、引用発明における「室内の空気が予熱凝縮器11により32℃にまで予熱された後、蒸発器12で冷却されて露点温度(蒸発温度)を-1℃となるようにする」ことは、蒸発器12の入口空気温度と蒸発器12の蒸発温度との差を33℃(32℃-(-1℃))となるように設定することであるから、本願発明における「蒸発器の入口空気温度と蒸発器の蒸発温度との間の温度差を24℃以上とすること」に含まれる。 よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「室内循環空気を蒸発器で冷却して室内を除湿する空気調和方法であって、前記蒸発器の風上側に凝縮器を配置し、前記蒸発器の入口空気温度と前記蒸発器の蒸発温度との間の温度差を33℃とすることにより、前記蒸発器の表面で空気中の水分を滴状に凝縮させて除湿することを特徴とする空気調和方法。」 [相違点] 本願発明においては、「蒸発器の入口空気温度と蒸発器の蒸発温度との間の温度差を24℃以上」としたのに対し、引用発明においては、蒸発器12の蒸発温度を蒸発器12の入口空気温度との差が33℃となるように設定した点。 4.当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 引用発明において、空気流中の水分を前記蒸発器の表面で滴状凝縮させることができる数値範囲を適宜実験等により見出すことは、当業者の通常の創作能力の発揮であり、蒸発器の蒸発温度を蒸発器の入口空気温度との差を33℃にかえて24℃以上という数値範囲を設定して上記相違点に係る本願発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明により得られる効果も、引用発明から、当業者であれば予測できた範囲内のものである。 よって、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5.結び 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-05-19 |
結審通知日 | 2011-05-24 |
審決日 | 2011-06-06 |
出願番号 | 特願2004-45750(P2004-45750) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(F24F)
P 1 8・ 121- Z (F24F) P 1 8・ 575- Z (F24F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 健志 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
青木 良憲 松下 聡 |
発明の名称 | 空気調和方法及び空気調和装置 |
代理人 | 大森 純一 |
代理人 | 折居 章 |