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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1240674
審判番号 不服2008-6529  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-17 
確定日 2011-07-27 
事件の表示 特願2002-558418「ローラーカバー用ゴム混合物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月25日国際公開、WO02/57350、平成16年 8月26日国内公表、特表2004-526009〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年1月4日(優先権主張 2001年1月17日 ドイツ連邦共和国(DE))を国際出願日とする出願であって、平成16年12月16日に手続補正書が提出され、平成18年11月15日付けで拒絶理由が通知され、平成19年5月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年3月17日に拒絶査定不服審判が請求され、同年4月16日付けで手続補正書が提出され、同年6月4日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年7月9日付けで前置報告がなされ、当審において平成22年7月26日付けで審尋がなされたが、回答書の提出はなかったものである。


第2.平成20年4月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成20年4月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正の内容
平成20年4月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成19年5月17日付けの手続補正書により補正された明細書における特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】
a)1種またはそれ以上のカルボキシル化ニトリルゴム、
b)1種またはそれ以上のアクリル酸金属塩、
c)適当な場合には担体に適用されている、1種またはそれ以上の液状アク
リレート、
d)1種またはそれ以上のシラン0.01?10phr、
e)1種またはそれ以上のフィラー、および
f)適当な場合には、他の添加剤
を含んでなるゴム混合物。」
との記載を
「【請求項1】
a)1種またはそれ以上のカルボキシル化ニトリルゴム、
b)1種またはそれ以上のアクリル酸金属塩、
c)適当な場合には担体に適用されている、1種またはそれ以上の液状アク
リレート、
d)1種またはそれ以上のビニルシラン0.01?10phr、
e)1種またはそれ以上のフィラー、および
f)適当な場合には、他の添加剤
を含んでなるゴム混合物。」
とする補正事項(以下、「補正事項a」という。)からなるものである。


(2)補正の目的の適否
補正事項aは、補正前の「d)成分」である「1種またはそれ以上のシラン」を「1種またはそれ以上のビニルシラン」とするものであるから、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものである。
そうすると、補正事項aは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。


(3)独立特許要件について
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とする補正であるから、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する補正であるか否か(いわゆる独立特許要件)について、次に検討する。


(3)-1.本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、平成20年4月16日付けの手続補正書により補正された明細書(以下、「本願補正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、上記の(1)に記載したとおりのものである。


(3)-2.引用刊行物記載の事項
<引用刊行物一覧>
刊行物A:特開平1-311158号公報
(平成18年11月15日付け拒絶理由通知書における引用文献2)
刊行物B:山下晋三/小松公栄 監修,「ゴム・エラストマー活用ノート」
,(1985年12月10日 初版発行),株式会社工業調査会 発行
,第72?73頁
刊行物C:本山時彦 編集,「便覧 ゴム・プラスチック配合薬品」,(昭
和49年10月15日 発行),ラバーダイジェスト社 発行,
第420?421頁

[刊行物A]
A1.「1.(a) 重合体鎖中の共役ジエン単位の含有量が30重量%以下
であるエチレン性不飽和ニトリル-共役ジエン系高飽和ゴム
100重量部:に対して
(b) メタクリル酸の亜鉛塩 10?100重量部
(c) 無水珪酸 5?50重量部;および
(d) 有機過酸化物 0.2?10重量部
を配合して成ることを特徴とする加硫性ゴム組成物。
2.該高飽和ゴムがエチレン性不飽和ニトリル-共役ジエン共重合体の水素化物である請求項1記載の加硫性ゴム組成物。」(特許請求の範囲)

A2.「(産業上の利用分野)
本発明は加硫性ゴム組成物に関し、さらに詳しくは強度特性、耐摩耗性に優れ、改良された耐圧縮永久歪み性を有する、加硫性ゴム組成物に関する。」(第1頁左下欄下から3行?右下欄2行)

A3.「本発明で使用されるエチレン性不飽和ニトリル-共役ジエン系高飽和ゴムはアクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル10?60重量%と1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエンなどの共役ジエン40?90重量%との共重合体、上記の2種の単量体と共重合可能な単量体例えばビニル芳香族化合物、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シアノアルキル(メタ)アクリレートなどの単量体との多元共重合体であって、具体的にはアクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリレート共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリレート-メタクリル酸共重合ゴム等を挙げることができる。これらのゴムの共役ジエン単位は、部分水素化などの手段により、30重量%以下としたものである。」(第2頁右上欄6行?左下欄5行)

A4.「本発明の加硫性ゴム組成物において前記の各成分とともにカーボンブラック等の補強剤、炭カル、タルクなどの充填剤、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、m-フェニレンビスマレイミドなどの架橋助剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤等の通常ゴム工業で使用される種々の薬剤が使用目的に応じて適宜混合される。」(第3頁左上欄11?18行)

A5.「(効果)
本発明によれば、優れた強度特性、耐摩耗性、耐圧縮永久歪み性を有する加硫性ゴム組成物が得られる。したがって、これらの特性を必要とする種々の用途例えば、ロール、ベルト、スノーチェーン、タイヤ、キャタピラーなどの用途において非常に有用である。」(第3頁左上欄19行?右上欄5行)

A6.「(実施例)
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお実施例及び比較例中の部及び%はとくに断りのないかぎり重量基準で表示してある。
実施例1
第1表記載の配合処方により、加硫性ゴム組成物を調整した。同表記載の加硫条件でプレス加硫し、2mm厚さの加硫シートを作成し、JIS K6301に準じて加硫物性を測定した。得られた結果を第1表に示した。・・・

」(第3頁右上欄6行?第4頁上欄)


[刊行物B]
B1.「カルボキシル化ニトリルゴム
・・・
2)特徴
(1) NBRと比較して,加硫速度が速い。
(2) 純ゴム配合で高い引張強度を示す。
(3) 耐熱性,耐摩耗性が良い。
・・・

」(第72?73頁)


[刊行物C]
C1.「d.カップリング剤(接着促進剤)(Coupling agents or adhesion promoters)
有機ポリマーと無機質や金属との界面に強い影響を与え,材質間に強固なブリッジを形成させる化合物をカップリング剤と呼ぶ。その分子中に二コ以上の違った反応基が導入されており,その一つが無機質と化学結合し,もう一つが有機ポリマーと化学結合するわけである。当初は強化プラスチック用として,マトリックスレジンとガラス繊維の接着力を高めるために開発されたが,ゴムと白色充てん剤の界面にも好結果をもたらし,カップリング剤で処理した充てん剤も市販されている。また,紙や木材とポリマーの接着性を高めるためにも,この種の化合物が用いられる。
現在,主として用いられているのはシラン系カップリング剤で,主な製品は次のとおり。
(1)・・・
(2) ビニルトリクロロシラン(Vinyltrichlorosilane):A-150(日本ユニカー,U.C.C.(米)),KA1003(信越化学),Finish GF 54(Wacker-Chemie(西独))・・・
ポリエステル,アクリル樹脂などとガラス繊維の接着性改良に有効。
(3) ビニルトリアセトキシシラン(Vinyltriacetoxysilane):トーレ・シリコーンSH6075シラン(トーレ・シリコーン,Dow Corning(米)),Finish GF 62(Wacker-Chemie(西独))・・・
ポリエステル積層用ガラス繊維の処理剤で,少量で効果を発揮し,積層品の曲げ強さ,圧縮強さがすぐれている。・・・
(4) ビニルトリエトキシシラン(Vinyltriethoxysilane):KBE1003(信越化学),Finish GF 56(Wacker-Chemie(西独))・・・
ポリエステル,アクリル樹脂の接着性改良に有用。
(5) ビニル・トリス(β-メトキシエトキシ)シラン(Vinyl-tris(β-methoxyethoxy)silane):A-172(日本ユニカー,U.C.C.(米)),KBC1003(信越化学),Finish GF 58(Wacker-Chemie(西独))・・・
ポリエステル,ジアリルフタレート樹脂,ポリプロピレン,過酸化物加硫EPラバーなどに用いられ,機械特性,電気特性,耐水性を向上させる。また,塩ビ樹脂や架橋ポリエチレンなどの充てん剤を処理すれば密着性を改良できる。」(第420頁下から6行?第421頁下から7行)


(3)-3.引用発明
刊行物Aには、摘示事項A6の実験番号1?5からみて、
「水素化NBR100重量部に対して、メタクリル酸亜鉛30?60重量部、無水珪酸5?20重量部及びパーオキサイド5重量部を配合して成る加硫性ゴム組成物」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。


(3)-4.対比・判断
引用発明における「メタクリル酸亜鉛」が、本願補正発明における「アクリル酸金属塩」に相当することは、本願補正明細書段落【0009】の「ニトリルゴムを含む混合物にアクリル酸金属塩を添加することは、既知である。適当なアクリル酸塩は、未置換または置換形態であり得る。置換アクリル酸塩の例は、メタクリル酸塩である。」なる記載からみて明らかである。
また、引用発明における「無水珪酸」が、本願補正発明における「フィラー」に相当することは明らかである。
さらに、本願補正明細書段落【0019】?【0020】の「本発明の混合物から架橋性混合物を製造するために、架橋剤を本発明のゴム混合物に添加する。適当な架橋剤は、パーオキシド系およびパーオキシド系と過酸化亜鉛との組合せである(担体上またはポリマーに結合、活性成分含有量30?50%)。好ましいパーオキシド系は、以下のものを包含する:ジアルキルパーオキシド、・・・、t-ブチルペルベンゾエート。」なる記載からみて、本願補正発明がパーオキサイドを含有する態様を包含することは明らかである。

以上の点を踏まえた上で、本願補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、次の一致点及び相違点ア?ウを有するものである。

[一致点]
「a)1種またはそれ以上のニトリルゴム、
b)1種またはそれ以上のアクリル酸金属塩、
e)1種またはそれ以上のフィラー、および
f)適当な場合には、他の添加剤
を含んでなるゴム混合物。」の点。

[相違点ア]
本願補正発明におけるニトリルゴムは「カルボキシル化ニトリルゴム」であるのに対して、引用発明のニトリルゴムはそのような規定が無い点。

[相違点イ]
本願補正発明は、「c)適当な場合には担体に適用されている、1種またはそれ以上の液状アクリレート」を含有するものであるのに対し、引用発明ではそのような規定が無い点。

[相違点ウ]
本願補正発明は、「d)1種またはそれ以上のビニルシラン0.01?10phr」を含有するものであるのに対し、引用発明ではそのような規定が無い点。

そこで、上記相違点ア?ウについて検討する。

[相違点ア]についての検討
摘示記載A3には引用発明の「ニトリルゴム」として、エチレン性不飽和ニトリル及び共役ジエンと、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体との多元共重合体、具体例として「アクリロニトリル-ブタジエン-アクリレート共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリレート-メタクリル酸共重合ゴム」が記載されており、これらはカルボキシル化ニトリルゴムに相当するものである。また、摘示記載B1に記載されているとおり、カルボキシル化ニトリルゴムがニトリルゴムに較べて加硫物の引張強さ、硬さ、耐摩耗性等において優れるものであることは当該技術分野において周知であるといえる。
そして、引用発明は、摘示記載A2及びA5のとおり、優れた強度特性、耐摩耗性、耐圧縮永久歪み性を有するものであって、これら特性を必要とするロール等の用途において非常に有用なものであることが記載されているから、引用発明におけるニトリルゴムとして加硫物の引張強さ、硬さ、耐摩耗性等においてより優れたものであることが周知である上記カルボキシル化ニトリルゴムを選択してみる程度は当業者であれば容易に想到し得ることと認められる。
したがって、相違点アは、刊行物Aに記載された発明に基いて当業者が容易になし得たことといえる。

[相違点イ]についての検討
摘示記載A4には、加硫性ゴム組成物に、さらにトリメチロールプロパントリアクリレートなどの架橋助剤を使用目的に応じて適宜混合し得ることが記載されており、引用発明には、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの架橋助剤を含有する態様も包含されているものと認められる。
したがって、相違点イは実質的な相違点ではないか、あるいは、当業者が適宜なし得たことといえる。

[相違点ウ]についての検討
カップリング剤がマトリックスポリマー成分と無機添加成分との親和性を改良し無機添加成分の分散性や得られる組成物の各種物性を向上させるものであることは広く知られており、摘示記載C1に記載されているとおり、カップリング剤が「ゴムと白色充てん剤の界面にも好結果をもたら」すものであること、カップリング剤として主に用いられているものがシラン系カップリング剤であること、該シラン系カップリング剤の主な製品としてビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル・トリス(β-メトキシエトキシ)シランなどが挙げられることはいずれも周知であるから、ゴムに白色充てん剤である無水珪酸を配合したものである引用発明においてシラン系カップリング剤を更に添加してみる程度は当業者であれば直ちに想起し得ることと認められ、該シラン系カップリング剤として典型的なものの一つであるビニルシラン系のものを選択し、その添加量を無水珪酸の配合量等に応じて適宜設定してみることに何ら困難性は認められない。
したがって、相違点ウは、刊行物Aに記載された発明に基いて当業者が適宜なし得たことといえる。

最後に、本願補正発明の効果について検討すると、本願補正明細書の実施例において明らかにされている評価結果(段落【0036】?【0037】の表I?表IV)からは、本願補正発明に属するカルボキシル化ニトリルゴムを有する混合物の方が、それに属しない非カルボキシル化ニトリルゴムを有する混合物に比べて、引張強度等の機械的性質や硬度に優れることが把握されるものの、上記した摘示記載B1に記載されているとおり、そもそもカルボキシル化ニトリルゴムがニトリルゴムに較べて加硫物の引張強さ、硬さ、耐摩耗性等において優れるものであることは当該技術分野において周知であって、本願補正発明に関する評価結果は、刊行物A及び周知技術から予測される範囲を超えた格別顕著なものであるとはいえない。

よって、本願補正発明は、刊行物Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。


(3)-5.平成20年6月4日提出の審判請求書の手続補正書(方式)における審判請求人の主張について
審判請求人は、平成20年6月4日提出の審判請求書の手続補正書(方式)において、「本願発明のゴム混合物は、カルボキシル化ニトリルゴムと特定量のビニルシランを組み合わせて含有するものであり、架橋によりビニルシランのビニル基がカルボキシル化ニトリルゴムのポリマーネットワークと相互作用し、その結果、ローラーカバーに必要とされる機械的性質(圧縮永久歪等;段落[0003])が改善された架橋物を与えることができます。」なる主張をしている。
しかしながら、「架橋によりビニルシランのビニル基がカルボキシル化ニトリルゴムのポリマーネットワークと相互作用」することや、その結果として「ローラーカバーに必要とされる機械的性質(圧縮永久歪等;段落[0003])が改善され」ることについて本願補正明細書には何ら記載がなされておらず、また、この点につき本願補正明細書の実施例を検討してみても、全ての例においてゴム100重量部に対し2重量部のビニルシランが配合されているのみであって、ビニルシランを配合しない例やビニルシラン以外の種類のカップリング剤を使用した例は記載されておらず、上記審判請求人の主張するような傾向を把握することはできないから、上記審判請求人の主張は本願補正明細書の記載に基づかないものであるといえ、採用することができない。
また、審判請求人は上記手続補正書(方式)において「かかる本願発明の効果は、カルボキシル化ニトリルゴムと特定量のビニルシランを含有するゴム組成物ではない引用文献2に記載のゴム組成物では得られない格別なものです」、「なお、出願人は、現在、本願発明の効果が格別であることを裏付ける比較実験を行っております。実験が完了次第、その結果を提出いたします」なる主張をしているが、そのような比較実験の結果は2年8ヶ月が経過した現在においても提出されていない。


(3)-6.まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3.本件審判請求について
(1)本願発明
平成20年4月16日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1?8に係る発明は、平成19年5月17日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
a)1種またはそれ以上のカルボキシル化ニトリルゴム、
b)1種またはそれ以上のアクリル酸金属塩、
c)適当な場合には担体に適用されている、1種またはそれ以上の液状アク
リレート、
d)1種またはそれ以上のシラン0.01?10phr、
e)1種またはそれ以上のフィラー、および
f)適当な場合には、他の添加剤
を含んでなるゴム混合物。」


(2)原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由とされた、平成18年11月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由3は、以下のとおりである。
「3.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

理由3
・請求項1?7
・引用文献1?3
・・・
引用文献等一覧
1.(省略)
2.特開平01-311158号公報(特に、特許請求の範囲、第3頁左上欄第11行から第18行を参照。)
(以下省略)」


(3)原査定における拒絶の理由の妥当性
(3-1)引用刊行物記載の事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平01-311158号公報)は上記の刊行物Aと同じであって、その記載された事項及び引用文献2(以下、「刊行物A」ともいう。)に記載された発明は、上記第2.(3)-2.及び(3)-3.に記載したとおりである。


(3-2)対比・判断
本願発明は、上記第2.(3)-4.で検討した本願補正発明において、「d)成分」であるビニルシランを「シラン」へ上位概念化することにより拡張したものである。
そして、上記第2.(3)-4.に記載したとおり、本願補正発明は、刊行物Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その本願補正発明を拡張した本願発明もまた、刊行物Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると言える。


(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-24 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-15 
出願番号 特願2002-558418(P2002-558418)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 純大熊 幸治  
特許庁審判長 小林 均
特許庁審判官 藤本 保
小野寺 務
発明の名称 ローラーカバー用ゴム混合物  
代理人 森住 憲一  
代理人 柴田 康夫  
代理人 山田 卓二  
代理人 田中 光雄  

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