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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1240698
審判番号 不服2009-14331  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-07 
確定日 2011-07-27 
事件の表示 特願2005-322627「平板表示素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-146200〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願 :平成17年11月 7日
(優先日 平成16年11月15日 大韓民国)
拒絶理由 :平成20年 6月12日(起案日)
意見及び手続補正:平成20年 9月17日
拒絶理由 :平成20年10月31日(起案日)
意見及び手続補正:平成21年 2月10日
補正の却下の決定:平成21年 3月30日(起案日)
拒絶査定 :平成21年 3月30日(起案日)
審判請求 :平成21年 8月 7日
手続補正 :平成21年 8月 7日
審尋 :平成22年 7月22日(起案日)
回答書 :平成22年11月25日

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成21年8月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであって,その目的は,請求項1の発明特定事項である静電気放電保護装置について「前記静電気放電保護装置は2個の尖点が触れ合うように形成する」という限定を付して減縮するものであるから,請求項1についてする補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか,すなわち,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,以下に検討する。

2 本件補正後発明
本件補正後発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。



基板上部に一方向に形成されて,所定の間隔を置いて設置された複数本のデータラインと,前記データラインに等しい方向に形成されて,所定の間隔を置いて設置された複数本の電源供給ライン及び前記データラインと電源供給ラインに直交する方向に所定の間隔を置いて設置された複数本のスキャンラインと,前記基板上に形成されて,半導体層,ゲート絶縁膜,ゲート電極及びソース/ドレイン電極を含む少なくとも2個以上の薄膜トランジスタ及び少なくとも一つ以上のキャパシター及び前記薄膜トランジスタのソース/ドレイン電極のうちいずれか一つの電極に接続される第1電極,少なくとも発光層を含む有機膜及び第2電極を含み,
前記スキャンラインのうちの少なくとも一つのスキャンラインの一側終端に,2個の尖点が向い合っているように形成されている静電気放電防止装置が具備されており,
前記静電気放電防止装置は2個の尖点が触れ合っていることを特徴とする平板表示素子。

3 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である特開2001-92371号公報(以下「引用例1」という。)には,各図とともに以下の事項が記載されている。
記載事項ア
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は電気光学装置の製造方法に係り,特に,製造工程中における静電気に起因する障害を防止する技術に関する。」
記載事項イ
「【0018】【発明の実施の形態】次に,添付図面を参照して本発明に係る電気光学装置の実施形態について詳細に説明する。以下に示す実施形態は,いずれもパッシブマトリクス型の液晶パネルを有する液晶装置に関するものであるが,本発明はその他の種々の形式の液晶装置にも適用可能であり,また,プラズマディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイ装置などの種々の電気光学装置にも適用可能なものである。
【0019】図1は本実施形態の液晶装置における母基板上の電極パターンを示す模式的な平面図である。また,図2は,複数のパネル予定領域を含む母基板100の全体の平面構造の例を示す平面図である。母基板100は通常,縦横に3以上のパネル予定領域30Aを配列させたものであるが,図2においては図示の便宜上,4つのパネル予定領域30Aを含む母基板として描いてある。また,母基板としては,単一のパネル予定領域のみを有し,当該パネル予定領域の外側に若干の周囲領域を備えたものであっても構わない。
【0020】各パネル予定領域30Aにおいては,ストライプ状に並列形成された複数の電極部31と,これらの電極部31のそれぞれから引き出された複数の配線部32とを有する導体パターン30が形成されている。導体パターン30において,配線部32の先端部は接続端子32aとなっており,パネル予定領域30Aの端部に設定された図示一点鎖線で示す外部接続部33内に所定の配列態様で形成されている。外部接続部33内に配列された複数の接続端子32aには,公知の異方性導電フィルム(ACF)を介して,駆動ドライバICなどの集積回路チップが実装される。また,外部接続部33内には上記配線部32には導電接続されていない外部端子34も形成されている。この外部端子34は,上記の集積回路チップと,パネル端部に接続されるフレキシブル配線基板などの配線部材とを導通させるためのものである。
【0021】上述のように,本実施形態の導体パターン30は,電極部31,配線部32及び外部接続部33から概略構成されている。ここで,電極部31には,配線部32や外部接続部33とは反対側の端部31aからパネル予定領域30Aの外部まで伸びる延長パターン部31bが形成されている。この延長パターン部31bはパネル予定領域30Aの外側において除電パターン40の除電分岐部41と対向するように形成されている。除電パターン40は従来例と同様に母基板100の表面上に導体パターン30と同時に同材質にて形成される。
【0022】上記導体パターン30及び除電パターン40は,例えばITO(インジウムスズ酸化物)などの透明導電体や,アルミニウムなどの金属薄膜などによって構成される。なお,本実施形態ではパッシブマトリクス型の液晶装置を構成する液晶パネル用の母基板であるので,ストライプ状の電極部31が形成されているが,本実施形態とは異なる導体パターンを有する場合もあり,例えば,液晶パネルの形式によってマトリクス状に配列された画素電極と,該画素電極に接続された走査線やデータ線などの配線と,画素電極と配線とに導電接続されたアクティブ素子(TFTやTFDなど)とからなる導体パターンが構成されていてもよい。」
記載事項ウ
「【0023】本実施形態では,各パネル予定領域30Aにおいて形成された導体パターン30における配線部32及び外部接続部33とは反対側の電極部31の端部31aに対して対向する除電パターン40を有し,この除電パターン40は,図2に示すように,複数のパネル予定領域30A中の導体パターン30に対向する部分が相互に一体に連結されるようにして構成されている。この除電パターン40には,通常,製造工程中において接地電位などの一定電位が供給される。
【0024】本実施形態においては,何らかの理由によって導体パターン30の各電極部31が帯電した場合,他の部位(例えば電極部31間や配線部32間,或いは,接続端子32a間など)において放電が生ずる前に,各電極部31の端部31aから伸びる延長パターン部31bの先端と除電用の導体パターン除電パターン40の除電分岐部41との対向部分において放電が発生し,静電気が除電用の導体パターン40に逃げるように設計されている。したがって,電極部31や配線部32が帯電しても電極部31間,配線部32間,或いは接続端子32a間に放電が発生し,電極,配線,端子等の損傷が防止される。この場合,延長パターン部31bと除電分岐部41との間隔は,上記目的を達成できるようにするために,電極部31間の間隔や狭ピッチに形成された配線部32間或いは接続端子32a間の間隔よりも狭く形成されることが望ましい。
【0025】また,本実施形態では,延長パターン部31bは電極部31よりも細幅に形成されている。これは,同様の細幅に形成された除電分岐部41と対向させることによって,当該対向部分の狭い領域に電荷を集中させ,放電しやすいようにするためである。」
記載事項エ
「【0028】図4は,上記実施形態或いは変形例における導電パターン30と導電パターン40の対向部分の細部構造を示す拡大部分平面図である。図4(a)には上記実施形態における導体パターン30と除電用の導体パターン40の対向部分の平面パターンとして好適な構造を示す。このパターンにおいては,電極部31はそのままパネル予定領域30Aの外側に延長し,その先端部31cは先細形状となっている。一方,除電用の導体パターン40の除電分岐部41の先端部41aもまた先細形状となっており,上記の先端部31cと対向している。このように形成することによって,先端部31cと先端部41aとの間で放電が発生しやすくなるため,電極部31や配線部32などの損傷を防止することができる。」
記載事項オ
「【0030】上記実施形態では,導体パターンにおいて配線部が引き出される側の端部とは反対側の端部を除電用の導体パターンに対して導電接続させたり,対向配置させたりしているが,導体パターンの構成上可能でさえあれば,上記のような反対側,すなわち図1における上側外縁部の代わりに,配線部が引き出される側とは異なる外縁部である,例えば,図1における右側外縁部や左側外縁部において除電用の導体パターンに対して導電接続させたり,対向配置させたりしても構わない。このような構造は画素毎に画素電極が配列され,各画素電極間に走査線やデータ線等の配線が形成されている場合には十分可能である。ただし,上述のようにパッシブマトリクス型のパネルにおいては,配線部32が引き出されている電極部31の一端部とは反対側の電極部31の端部31aを除電用の導体パターン40に導電接続させたり,対向配置させたりすることが簡易なパターン構成を維持できる点で好ましい。
【0031】尚,本発明の電気光学装置の製造方法は,上述の図示例にのみ限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えばアクティブマトリクス型の液晶装置においても,電極や配線の保護はもちろんのこと,アクティブ素子の静電破壊を防止するために保護用の除電用の導体パターンを設ける場合があり,このような場合においても,COG構造を採用した場合には,上記実施形態と同様にCOG実装を行うための外部接続部の反対側から配線を引き出して除電用の導体パターンに導電接続させたり,除電用の導体パターンに対して所定の間隙を持って対向させたりすることによって,有効な静電対策を講じることが可能になる。」
記載事項カ
「【0032】【発明の効果】以上,説明したように本発明によれば,導体パターンにおける,配線部が引き出された電極部の一端部以外の外縁部に対して,導電接続されるか,或いは,所定間隔を以って対向するように構成された除電用の導体パターンを形成することにより,配線部や実装部のパターン構造に支障を与えることなく除電用の導体パターンを形成できるので,導体パターンの設計の自由度を高めることができる。特に,集積回路チップなどを実装するためのCOG構造を有する電気光学装置である場合には,チップ実装部に除電用の導体パターンを設けることができないが,本発明によれば支障なく除電用の導体パターンを形成し,十分な静電気対策をとることが可能になる。」

これら記載事項及び各図を考慮して引用例1に記載された発明を分説して記載すると,下記のとおりとなる(以下,この発明を「引用発明」といい,また,分説された構成を「構成要件A」などという。)。



A 電気光学装置であって,
B 実施形態はパッシブマトリクス型の液晶パネルを有する液晶装置に関するものであるが,その他の種々の形式の液晶装置にも適用可能であり,また,プラズマディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイ装置などの種々の電気光学装置にも適用可能なものであり,
C 実施形態の液晶装置における母基板上の電極パターンは,
D 各パネル予定領域(30A)には,ストライプ状に並列形成された複数の電極部(31)と,これらの電極部(31)のそれぞれから引き出された複数の配線部(32)とを有する導体パターン(30)が形成され,
E 除電パターン(40)は母基板(100)の表面上に導体パターン(30)と同時に同材質にて形成され,
F 除電パターン(40)には,製造工程中において接地電位などの一定電位が供給され,
G 導体パターン(30)と除電用の導体パターン(40)の対向部分の平面パターンは,電極部(31)はそのままパネル予定領域(30A)の外側に延長し,その先端部(31c)は先細形状となっており,除電用の導体パターン(40)の除電分岐部(41)の先端部(41a)もまた先細形状となっており,上記の先端部(31c)と対向し,
H 先端部(31c)と先端部(41a)との間で放電が発生しやすくなるため,電極部(31)や配線部(32)などの損傷を防止し,十分な静電気対策をとることが可能になる,
I 電気光学装置。

4 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である特開2004-134453号公報(以下「引用例2」という。)には,各図とともに以下の事項が記載されている。
記載事項A
「【0010】【発明の実施の形態】以下,本発明に係る静電気保護パターンを有する回路基板の実施の形態について,図を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施形態の静電気保護パターンを有する回路基板の概略平面図である。
【0011】この第1実施形態の静電気保護パターンを有する回路基板は,図1に示すように,基板1上における電子部品(図示略)が配置された内部回路2の周囲であって基板1の縁部近傍の周囲に,外部からの静電気から内部回路2の電子部品を保護するために,この静電気を放電させるための静電気保護パターン3Aが形成されたもので,このパターン3の複数箇所に幅方向両側から角度をもって点接触するまで細くなるように狭まる静電気放電部分3aが形成されている。
そして,このパターン3の静電気放電部分3aから,外部からの静電気が放電されることによって,外部からの静電気から基板1上の内部回路の電子部品が保護されるようにしている。
【0012】即ち,この静電気は,形状の鋭角な部位ほど電荷が集中するため,放電しやすいという性質があるので,静電気保護パターン3Aの鋭角な部分である静電気放電部分3aから静電気が放電されるのである。
また,静電気保護パターン3Aの一部に静電気が外部から入ると,他の部分の静電気保護パターン3aが電位が低いので,その向きに静電気が流れ,途中の鋭角な部分の静電気放電部分3aから静電気が放電されることとなる。
【0013】したがって,この第1実施形態の静電気保護パターンを有する回路基板によれば,外部からの静電気を角度をもって点接触するまで細くなるように狭まるように形成された静電気放電部分3aから殆ど放電することができて,この静電気から基板1上の内部回路2に接続された電子部品への影響を少なくすることができ,しかも低い電位の静電気でも放電することができる。
特に,この静電気保護パターン3aは,角度をもって点接触するまで細くなるように狭まるように形成されているので,より一層放電を効率よく行うことができる。」

5 対比
本件補正後発明と引用発明を比較すると以下のとおりとなる。
(1) 平板表示素子
構成要件Bからみて,引用発明の「電気光学装置」は本件補正後発明の「平板表示素子」に相当する。
(2) 静電気放電防止装置
構成要件Gからみて,引用発明の「対向部分」(先端部(31c)及び先端部(41a))と本件補正後発明の「静電気放電防止装置」は,「2個の尖点が向い合っているように形成されている静電気放電防止装置」の点で一致する。

そうしてみると,本件補正後発明と引用発明は,
「2個の尖点が向い合っているように形成されている静電気放電防止装置が具備された,
平板表示素子。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
本件補正後発明の静電気放電防止装置は「基板上部に一方向に形成されて,所定の間隔を置いて設置された複数本のデータラインと,前記データラインに等しい方向に形成されて,所定の間隔を置いて設置された複数本の電源供給ライン及び前記データラインと電源供給ラインに直交する方向に所定の間隔を置いて設置された複数本のスキャンラインと,前記基板上に形成されて,半導体層,ゲート絶縁膜,ゲート電極及びソース/ドレイン電極を含む少なくとも2個以上の薄膜トランジスタ及び少なくとも一つ以上のキャパシター及び前記薄膜トランジスタのソース/ドレイン電極のうちいずれか一つの電極に接続される第1電極,少なくとも発光層を含む有機膜及び第2電極」を含む平板表示素子の「 前記スキャンラインのうちの少なくとも一つのスキャンラインの一側終端に」具備されているものであるのに対し,引用発明の静電気放電防止装置は,これが明らかではない点。

(相違点2)
本件補正後発明の静電気放電防止装置の2個の尖点は「触れ合っている」のに対して,引用発明の対向部分の先端部同士は触れ合っていない点。

6 判断
(相違点1について)
引用発明は「電気光学装置」であり,「エレクトロルミネッセンスディスプレイ装置などの種々の電気光学装置にも適用可能なもの」であるところ,エレクトロルミネッセンスディスプレイ装置として「基板上部に一方向に形成されて,所定の間隔を置いて設置された複数本のデータラインと,前記データラインに等しい方向に形成されて,所定の間隔を置いて設置された複数本の電源供給ライン及び前記データラインと電源供給ラインに直交する方向に所定の間隔を置いて設置された複数本のスキャンラインと,前記基板上に形成されて,半導体層,ゲート絶縁膜,ゲート電極及びソース/ドレイン電極を含む少なくとも2個以上の薄膜トランジスタ及び少なくとも一つ以上のキャパシター及び前記薄膜トランジスタのソース/ドレイン電極のうちいずれか一つの電極に接続される第1電極,少なくとも発光層を含む有機膜及び第2電極」を含むものは技術常識である(必要ならば,特開2004-6332号公報,特開2003-173153号公報,特開2004-47411号公報を参照。)。また,構成要件Hの作用にかんがみると,引用発明の対向部分は,上記周知のエレクトロルミネッセンスディスプレイ装置に適用した場合,「前記スキャンラインのうちの少なくとも一つのスキャンラインの一側終端」を含めて,データライン,電源供給ライン及びスキャンラインの先端部に具備されるべきである。
そうしてみると,相違点1に係る構成は技術常識を参酌することにより当業者が引用発明から当然に導き出せる事項であり,あるいは,引用例1に記載された事項に従って引用発明を単に具体化することにより備えることとなる構成にすぎない。

(相違点2について)
引用例2には,「角度をもって点接触するまで細くなるように狭まるように形成されているので,より一層放電を効率よく行うことができる」(【0013】)静電気保護パターンが開示されている。
そして,引用発明の対向部分の平面パターンとして,構成要件Hと同様の作用を備える引用例2に記載された構成を採用することは,当業者が容易にできることである。

また,本件補正後発明の効果は,引用例1及び2に記載された発明並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

7 回答書について
請求人は回答書において「本願発明の静電気放電保護装置は,画素領域内に配置されたスキャンラインの端部をパターニングして形成されるものであり,当然に画素領域内に形成されるものです。
一方,引用文献1(特開2001-92371号)においては,図3及び図4を参照すると,“電極部31の先端部31c”及び“除電用の導体パターン40の除電分岐部41の先端部41a”は,パネル予定領域30Aの外側に設けられています(段落[0028])。
また,引用文献2(特開2004-134453号)においては,図1から明らかなように,静電保護パターン3Aは,基板1上において内部回路2とは離隔してその外側に設けられています。
従って,引用文献1及び2を組み合わせたとしても,画素領域内に配置されたスキャンラインの端部をパターニングして形成された本願発明の静電気放電保護装置に想到することができません。」と主張する。
しかしながら,特許請求の範囲を参照しても,スキャンラインの端部と画素領域との位置関係,あるいは,静電気放電保護装置と画素領域との位置関係に関する記載は存在しないから,請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではない。そもそも,本願の明細書の発明の詳細な説明の記載とともに図6を参照しても,静電気放電保護装置は画素領域の近傍にあるとしても画素領域外にあるから,請求人の主張は発明の詳細な説明の記載及び図面とも整合しないものである。
なお,図6には,画素領域内とまではいえなくも,少なくとも表示領域近傍に静電気放電保護装置が設けられたと解釈することが不可能ではない構成が開示されているが,静電気放電保護装置を表示領域近傍に設ける構成は,例えば,特開平8-234227号公報,特開2003-140170号公報(図4),特開平10-268339号公報(図5),特開平9-146107号公報(図1)に開示されており,周知である。

8 小括
以上のとおり,本件補正後発明は,引用例1及び2に記載された発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
平成21年8月7日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,下記のものである。



基板上部に一方向に形成されて,所定の間隔を置いて設置された複数本のデータラインと,前記データラインに等しい方向に形成されて,所定の間隔を置いて設置された複数本の電源供給ライン及び前記データラインと電源供給ラインに直交する方向に所定の間隔を置いて設置された複数本のスキャンラインと,前記基板上に形成されて,半導体層,ゲート絶縁膜,ゲート電極及びソース/ドレイン電極を含む少なくとも2個以上の薄膜トランジスタ及び少なくとも一つ以上のキャパシター及び前記薄膜トランジスタのソース/ドレイン電極のうちいずれか一つの電極に接続される第1電極,少なくとも発光層を含む有機膜及び第2電極を含み,
前記スキャンラインのうちの少なくとも一つのスキャンラインの一側終端に,2個の尖点が向い合っているように形成されている静電気放電防止装置が具備されていることを特徴とする平板表示素子。

2 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は「第2 補正の却下の決定」の「3 引用例1」に記載したとおりである。

3 対比及び判断
本願発明は,本件補正後発明の「前記静電気放電保護装置は2個の尖点が触れ合うように形成する」という発明特定事項,すなわち,相違点2の構成要件を除いたものである。

そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正後発明が「第2 補正の却下の決定」で述べた理由により当業者が容易に発明をすることができたものであり,しかも,本願発明が本件補正後発明から相違点2の構成要件を除いたものであって引用例2に記載された発明との組合せを考慮する必要がない点にかんがみると,本願発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 小括
以上のとおり,本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 総括
したがって,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-24 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-15 
出願番号 特願2005-322627(P2005-322627)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 吉喜  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 今関 雅子
樋口 信宏
発明の名称 平板表示素子及びその製造方法  
代理人 佐伯 義文  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  

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