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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10K
管理番号 1240711
審判番号 不服2010-4690  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-03 
確定日 2011-07-27 
事件の表示 特願2009- 42930「デジタルデータを処理するための装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 5月28日出願公開、特開2009-116364〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年9月19日(パリ条約による優先権主張平成5年9月17日、大韓民国)に出願した特許出願(特願平6-248375号)の一部を平成17年10月13日に新たな特許出願(特願2005-299029号)とし、さらに、その一部を平成21年2月25日に新たな特許出願としたものであって、平成21年11月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月3日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、平成22年10月27日付けで当審により拒絶の理由が通知され、平成23年1月31日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願明細書の特許請求の範囲の記載
平成22年3月3日付けで補正された特許請求の範囲の請求項の記載のうち、請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
デジタルビデオデータおよびデジタルオーディオデータを含むデジタルデータを処理するための装置であって、
システムタイムクロック情報を生成するシステムタイムクロック部と、
前記デジタルビデオデータを記憶する第1データストレージと、前記デジタルビデオデータの出力タイミングを制御するために前記システムタイムクロック情報を前記システムタイムクロック部より受信するビデオ出力部とを備え、前記デジタルビデオデータを処理するビデオデータ処理部と、
前記デジタルオーディオデータのデータユニットを受信するオーディオデータ処理部を備え、
前記データユニットは少なくとも以下の(1)及び(2)の何れかと対応しており、
(1)第1タイプのデジタルオーディオデータ、
(2)前記第1タイプのデジタルオーディオデータとは異なる内容を少なくとも一つ含む第2タイプのデジタルオーディオデータ、
各タイプのデジタルオーディオデータは属性情報を含み、前記属性情報は、以下の(a)及び(b)を含み、
(a)前記デジタルオーディオデータのコーディングモードを示すための第1情報、
(b)前記データユニットが前記第1タイプのデジタルオーディオデータであるか、又は前記第2タイプのデジタルオーディオデータであるかを識別するための、前記第1情報とは異なる第2情報、
前記第1タイプおよび前記第2タイプのデジタルオーディオデータは互いに等しいコーディングモードを有し、
前記オーディオデータ処理部は、
前記デジタルオーディオデータに含まれた前記第2情報を抽出し、前記第2情報を使用して前記第1タイプのデジタルオーディオデータと第2タイプのデジタルオーディオデータとを分離し、前記第1タイプ及び前記第2タイプのデジタルオーディオデータの少なくとも一つを処理し、且つ
前記第1タイプ及び前記第2タイプのデジタルオーディオデータを記憶する第2データストレージと、前記第1タイプ又は前記第2タイプのデジタルオーディオデータの出力タイミングを制御するために前記システムタイムクロック情報を前記システムタイムクロック部より受信するオーディオ出力部と、を含み、
当該装置は、
前記ビデオデータ処理部および前記オーディオデータ処理部に連結され、前記デジタルビデオデータに相当するビデオ信号を出力し、且つ前記第1タイプ又は前記第2タイプのデジタルオーディオデータを指定する要求に応じて前記第1タイプ又は前記第2タイプのデジタルオーディオデータに相当するオーディオ信号を出力する制御回路を更に備えることを特徴とする装置。」

3.当審による拒絶理由通知
当審により平成22年10月27日付けで通知した拒絶の理由は、次のとおりである。

『 理 由
本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1に記載された「前記デジタルオーディオデータの各データユニットは属性情報を含み、前記属性情報は、」「(a)前記デジタルオーディオデータのコーディングモードを示すための第1情報」を含む点について、明細書には形式的に請求項1と同様の記載があるのみであって、発明を実施するための最良の形態の欄には記載されていないから、実質的には、明細書に記載されていないものである。
(2)・・・(以下、省略)・・・』

4.請求人の主張
これに対する平成23年1月31日付けの意見書による請求人の主張は、次のとおりである。
『(1)事件の経過
・・・(中略)・・・

(2)拒絶理由通知書における項目(1)について
・・・(中略)・・・

これに対し、本願出願人は本願明細書の段落0050、0051の記載、および図4の記載に基づき、以下のように反論いたします。すなわち、本願の図4は本願発明の一実施形態におけるサブヘッダーの構造を示しており、明細書の記載においてはこれを「コーディング情報」との名で記載しています。特許請求の範囲における「属性情報」は明細書においては「コーディング情報」に相当するものでございます。また「第1情報」につきましては、MPEGオーディオデータのコーディングモードを示すための情報が、図4において「コーディングナンバー」の「7F」として明記されています。したがいまして、「属性情報」および「第1情報」につき明細書および図面に明確な記載があり、「実質的には、明細書に記載されていない」とした上記拒絶理由は解消されたものと考えます。

(3)・・・(以下、省略)・・・』

5.当審の判断
請求人が意見書により記載の根拠として主張する「本願明細書の段落0050、0051の記載、および図4の記載」は、次のとおりである。

(1)「【0050】
本発明によるサブヘッダー(Sub-header)の構造は図4のようになされるが、オーディオパケット(Packet)内のサブヘッダー情報から演奏者の音声、すなわち演奏音と伴奏音を含んだオーディオデータAaと伴奏音のみを含んだオーディオデータAbを区分するため、コーディング情報(CodingInformation)に区分値を入力してエンコーディングする。
【0051】
ここで、コーディング情報とは、データのエンコーディング時に区分信号として各セクターのサブヘッダー内に含ませるが、MPEGビデオの場合は0FHと、MPEGオーディオの場合には7FHと規定されている。ここに新しいコーディング情報を追加(例3F)して、演奏音と伴奏音のあるオーディオデータセクターAaと伴奏音のみのあるオーディオデータセクターAbとの区分信号として利用する。」

(2)「【図4】




しかしながら、これらの記載を精査しても、上記拒絶の理由(1)で指摘した請求項1の「前記デジタルオーディオデータの各データユニットは属性情報を含み、前記属性情報は、」「(a)前記デジタルオーディオデータのコーディングモードを示すための第1情報」を含む点については記載されていない。すなわち、“デジタルオーディオデータのコーディングモードを示すための情報”については、明細書には記載されていない。
デジタルオーディオデータのコーディングモードは、例えば、WMA、AC-3、ATRAC、mp3、AACなど様々なものがあるが、本願明細書の記載では、デジタルオーディオデータのコーディングモードとして、単に、MPEGオーディオが想定されているというにすぎない。【0051】に記載の「0FH」や「7FH」は、MPEGビデオとMPEGオーディオに対して規定されたビデオとオーディオを区別するための情報であって、(上記したWMA、AC-3、ATRAC、mp3、AACなどの)デジタルオーディオデータのコーディングモードを示すための情報とはいえない。
請求人は、意見書により、コーディングナンバー「7F」が、MPEGオーディオデータのコーディングモードを示すための情報である旨、主張しているが、これは単にMPEGオーディオのコーディングナンバーを規定したものにすぎず、デジタルオーディオデータのコーディングモードが何であるか(WMA、AC-3、ATRAC、mp3、あるいは、AACなど)を示すための情報ではない。そもそも、明細書には、コーディングナンバーの情報を、MPEGビデオとMPEGオーディオを区別するために用いること、新しいコーディング情報3Fを追加して演奏音と伴奏音のあるオーディオデータセクターAaと伴奏音のみのあるオーディオデータセクターAbとの区分信号として利用すること、は記載されているが、デジタルオーディオデータのコーディングモードを認識して、それに基づいて何らかの動作を行うことを全く前提としていないことからも、請求人の主張は失当である。
したがって、請求項1の「デジタルオーディオデータのコーディングモードを示すための第1情報」は、実質的には明細書に記載されていないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではなく、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-25 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-16 
出願番号 特願2009-42930(P2009-42930)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G10K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨澤 直樹  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 千葉 輝久
古川 哲也
発明の名称 デジタルデータを処理するための装置および方法  
代理人 野田 雅一  
代理人 池田 成人  
代理人 山田 行一  

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