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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする G03B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする G03B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする G03B
管理番号 1240742
審判番号 不服2010-19623  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-31 
確定日 2011-08-22 
事件の表示 特願2005- 4137「撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月27日出願公開、特開2006-194984、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年(2005年)1月11日の出願(特願2005-4137号)であって、平成21年7月28日付けで拒絶理由が通知され、同年9月7日付けで手続補正がなされ、同年9月28日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年11月9日付けで手続補正がなされ、同年11月27日付けで拒絶理由が通知され、平成22年1月22日付けで手続補正がなされ、同年2月9日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成22年4月15日付けで手続補正がなされ、同年6月15日付けで同年4月15日付けの上記の手続補正に対する補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原審における補正の却下の決定の適否
1 審判請求の趣旨について
平成22年8月31日付けの審判請求書の【請求の理由】の「(2)拒絶査定の理由の要点」の末尾において、
「出願人は、かかる拒絶査定及び補正却下の決定に対して不服であり、以下にその理由を説明します」
と記載されており、請求人は、審判請求において、原審における、平成22年4月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)に対する補正の却下の決定について争っている。
そこで、以下において上記補正の却下の決定の適否について検討する。

2 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲は、平成21年1月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の、

「【請求項1】
本体が水中ハウジングに収納された状態で水中撮影が可能な撮影装置に於いて、
水中撮影モードを含む複数の撮影モードの1つを上記撮影装置の撮影モードとして設定するために手動操作される選択手段と、
当該撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されていることを検知する検知部材を有して、当該撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されているか否かを判定する判定手段と、
上記判定手段に応じて、上記選択手段によって選択可能な複数の撮影モードの設定を行う制御手段と、
を備え、
上記制御手段は、上記判定手段によって上記撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されていないと判定された場合には、上記選択可能な複数の撮影モードに水中撮影モードを含まないよう設定し、
上記判定手段によって上記撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されていると判定された場合には、上記選択可能な複数の撮影モードに水中撮影モードを含ませさらに上記選択手段によって当該水中撮影モードが他の撮影モードよりも優先されて最初に選択可能な状態になるように設定することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記水中撮影モードとして、少なくとも水中ワイドモードまたは水中マクロモードの1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。」が

「【請求項1】
本体が水中ハウジングに収納された状態で水中撮影が可能な撮影装置に於いて、
上記撮影装置の撮影モードとして複数の撮影モードの1つを設定するために手動操作される選択手段と、
当該撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されていることを検知する検知部材を有して、当該撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されているか否かを判定する判定手段と、
上記判定手段に応じて、上記選択手段によって選択可能な複数の撮影モードを設定する制御手段と、
を備え、
上記制御手段は、上記判定手段によって上記撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されていないと判定された場合には、上記選択可能な複数の撮影モードに水中撮影モードを含まないよう設定し、
上記判定手段によって上記撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されていると判定された場合には、上記選択可能な複数の撮影モードに水中撮影モードを含ませて、当該水中撮影モードを他の撮影モードよりも優先的に選択可能な状態に設定することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記水中撮影モードとして、少なくとも水中ワイドモードまたは水中マクロモードの1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。」に補正された。

上記の本件補正は、水中撮影モードの設定に関して、本件補正前の請求項1における「他の撮影モードよりも優先されて最初に選択可能な状態になるように設定する」を「他の撮影モードよりも優先的に選択可能な状態に設定する」とする補正(以下「優先に関する補正」という。)を含むものである。

ア 新規事項追加禁止違反についての検討
上記の優先に関する補正がなされた後の請求項1に係る発明における優先の態様には、「最初に選択可能な状態になる」という優先の態様以外の水中撮影モードの設定の優先の態様(例えば、水中撮影モード以外のモードが設定された場合には、使用禁止状態となり、特定の操作で使用禁止状態を解除しない限り当該モードでの撮影ができないという態様など)が含まれる。
しかしながら、本願の願書に最初に添付した明細書の発明の詳細な説明及び図面には、水中撮影モードの設定の優先の態様として、「最初に選択可能な状態になる」という優先の態様は記載されている(【0101】?【0122】、【図13】)といえるが、それ以外の水中撮影モードの設定の優先の態様(上記の態様の具体例に限らない)は、どこにも記載されていない。
したがって、水中撮影モードの設定の優先の態様として、「最初に選択可能な状態になる」という優先の態様以外の優先の態様を含ませる上記の優先に関する補正を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでないことは明らかであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

イ 目的要件違反違反についての検討
また、上記の優先に関する補正は、優先の態様として「最初に選択可能な状態になる」という優先の態様に特定されていたものを、それ以外の優先の態様を含ませるように補正したものであるから、むしろ、実質的に技術的範囲を拡張させる補正となり、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正ということはできない。また、上記の優先に関する補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものでないことは明らかである。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

ウ まとめ
以上のとおり、いずれにしても、本件補正は却下されるべきものであるから、原審における補正の却下の決定は、取り消されることなく維持されるべきものであるといえる。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年4月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成22年1月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 原審における補正の却下の決定の適否」の「2 本件補正」の記載参照。)

2 原審の拒絶理由について
原審における平成22年2月9日付けで通知された拒絶理由(最後)は、本願発明1は、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-304908号公報(以下、「引用例1」という。)に記載された発明及び本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-351025号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものである。また、本願発明2は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-100297号公報(以下、「引用例3」という。)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものである。

3 当審の判断
(1)本願発明1について
本願発明1は「撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されていると判定された場合」において、「選択可能な複数の撮影モードに水中撮影モードを含ませ(すなわち、水中撮影モードもそれ以外の撮影モードも選択でき)」さらに「上記選択手段によって当該水中撮影モードが他の撮影モードよりも優先されて最初に選択可能な状態になるように設定する」という発明特定事項を有する。
そして、当該発明特定事項により、本願発明1は「水中ハウジングを外さなくても、そのまま水中撮影モードから他の撮影モード(陸上撮影)に変更して撮影ができる、すなわち、水中撮影から陸上撮影に切り替える場合であっても水中ハウジングを外す手間がかからず、これによって撮影者の負担が軽減される」とともに、「ハウジングを装着した場合に水中撮影のモードを優先的に選択可能状態にすることができるため、水中撮影を主目的とした撮影の場合、使い勝手がよい」という、本願発明1に特有の作用効果を奏するものである。
これに対して、引用例1、2には、撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されていると判定された場合に、撮影モードが水中撮影モードに移行することは記載されているものの、本願発明1のように「水中撮影モードもそれ以外の撮影モードも選択できる」こと、さらには、「水中撮影モードが他の撮影モードよりも優先されて最初に選択可能な状態になる」ことに関しては記載も示唆もない。さらに、そのような事項が、本願の出願当時、当業者にとって自明な事項であるとも認められない。したがって、本願発明1は引用例1,2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の全ての発明特定事項を備え、さらに、別の発明特定事項を備えたものであるから、本願発明1が引用例1,2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないとする以上、本願発明2も同様に引用例1,2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、引用例3にも、撮影装置の本体が上記水中ハウジングに収納されていると判定された場合に、水中撮影モードもそれ以外の撮影モードも選択できること、さらには、水中撮影モードが他の撮影モードよりも優先されて最初に選択可能な状態になることに関しては記載も示唆もない。
よって、本願発明2は、引用例1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

4 まとめ
以上のとおり、本願発明1は引用例1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、また、本願発明2は引用例1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、本願発明1及び2が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとする原査定は妥当なものではなく、取消を免れない。
また、他に本願発明1及び2を拒絶する理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-08-09 
出願番号 特願2005-4137(P2005-4137)
審決分類 P 1 8・ 57- WYB (G03B)
P 1 8・ 561- WYB (G03B)
P 1 8・ 121- WYB (G03B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 雅明  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 吉川 陽吾
森林 克郎
発明の名称 撮影装置  

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