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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1240801
審判番号 不服2008-22590  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-03 
確定日 2011-07-28 
事件の表示 特願2005-153372「化粧品及び皮膚科学におけるLIFの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 8日出願公開、特開2005-336188〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年5月26日(パリ条約による優先権主張 2004年5月26日 (FR)フランス共和国)の出願であって、平成20年5月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年9月3日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年3月5日付けの手続補正書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

(本願発明)
「LIF、LIF類似体、LIF模倣剤、及び内因性LIFの発現を刺激可能な生成物、及びそれらの混合物から選択される化合物の有効量の、特に火傷の処置において、皮膚の瘢痕形成及び/又は皮膚の再生を促進させるための組成物の調製における使用。」

3.刊行物に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2001-122797号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(a)「【請求項1】白血病阻害因子を有効成分とする皮膚外用剤。
【請求項2】皮膚外用剤が褥瘡治療剤である、請求項1又は2記載の皮膚外用剤。
【請求項3】皮膚外用剤が創傷治療剤である、請求項1又は2記載の皮膚外用剤。」(段落【特許請求の範囲】)

(b)「ALS患者は、筋萎縮や麻痺による不十分な栄養摂取や、全身のるい痩に加え、末期には完全な運動麻痺に陥り、本来なら褥瘡が生じやすい条件が揃っている。それにもかかわらず、死に至るまで、褥瘡ができにくい、という奇妙な現象が認められた。
そこで、ALS患者の皮膚の状態について、詳細に解析したところ、驚くべきことに、ALS患者の皮膚表面に、白血病阻害因子(Leukemia inhibiting factor :以下、LIFともいう)が、旺盛に発現していることと表皮が増生していること、さらには、in vitroで、LIFによる表皮の増殖促進とケラチノサイトに対する増殖促進効果が認められることを突き止め、かかるLIFを有効成分とする皮膚外用剤を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出して、本発明を完成した。」(段落【0007】?【0008】)

(c)「本発明皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、例えば、液剤,軟膏剤,クリーム剤,貼付剤等の剤型を採り得る。
かかる剤型に応じて、本発明皮膚外用剤には、通常公知の基剤成分等、例えば、油分,界面活性剤,高級アルコール,防腐剤,保湿剤,増粘剤,キレート剤,色素,香料等を配合することができる。」(段落【0048】)

(d)「第1図に示すように、LIFの処方により、用量依存的なケラチノサイトの増殖が認められた。細胞増殖は、3ng/ml という低用量においてさえも、顕著に認められた。」(段落【0056】)

(2)上記記載事項(b)によれば、刊行物1に記載の白血病阻害因子はLIFともいう、とされており、一方、本願明細書の「本発明の技術分野は、LIF(白血病阻害因子)、LIF類似体、又はLIF模倣剤の、化粧品及び皮膚科学における使用にある。」(本願明細書段落【0001】)によれば、本願発明のLIFは白血病阻害因子と同義であるとされていると解されるから、刊行物1に記載の白血病阻害因子は,本願発明にいうLIFに該当することは明らかである。してみると、上記記載事項(a)?(d)からみて、刊行物1には、「LIFを有効成分とする創傷治療剤の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
まず、引用発明のLIFが、本願発明の「LIF、LIF類似体、LIF模倣剤、及び内因性LIFの発現を刺激可能な生成物、及びそれらの混合物から選択される化合物」とLIFにおいて重複することは明らかである。また、通常、治療剤において、有効成分を有効量含むことは当然のことであるから、引用発明の創傷治療剤におけるLIFは有効量含まれるものといえる。また、LIFを有効成分とする創傷治療剤の発明と、LIFの、創傷治療剤の調製における使用の発明とは、表現上異なるのみで、実質的には同義の発明であると解される。さらに、上記記載事項(c)によれば、引用発明の創傷治療剤は、剤型に応じて、種々の成分を配合することができるものであるから、組成物であることも明らかである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「LIFの有効量の、組成物の調製における使用。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
1)本願発明は、組成物の用途が、「特に火傷の処置において、皮膚の瘢痕形成及び/又は皮膚の再生を促進させるため」であるのに対し、引用発明は、創傷治療である点(以下「相違点」という。)。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
「火傷」とは、「火・熱湯などに皮膚が触れて傷つくこと。また、そのきず。」(新村出編、広辞苑第五版、岩波書店より)を意味することからみて、創傷の一種であるということができる。また、「瘢痕」とは、「皮膚面の腫物や傷などが治癒した後に残るあと。」(新村出編、広辞苑第五版、岩波書店より)を意味することからみて、皮膚の瘢痕形成を促進させることとは、とりもなおさず、皮膚面の腫物や傷などの治癒を促進することであるということができる。また、皮膚の再生は、皮膚が傷ついたときにおこる現象であることは論を待たない。
そうすると、刊行物1の記載に接した当業者ならば、引用発明の組成物について、創傷治療に用いることに代えて、特に火傷の処置において、皮膚の瘢痕形成及び/又は皮膚の再生を促進させるために用い、本願発明を構成することに、格別の創意を要したものとはいえない。
また、本願発明の効果は、LIFの有効量を使用することにより、特に火傷の処置において、皮膚の瘢痕形成及び/又は皮膚の再生を促進させるための組成物を提供し得た点にあると解するほかはないから、刊行物1の記載から当業者が予測し得た範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-18 
結審通知日 2011-02-08 
審決日 2011-02-21 
出願番号 特願2005-153372(P2005-153372)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 貴子  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 伊藤 幸司
内藤 伸一
発明の名称 化粧品及び皮膚科学におけるLIFの使用  
代理人 園田 吉隆  
代理人 小林 義教  

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