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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1240811
審判番号 不服2009-9341  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-30 
確定日 2011-07-28 
事件の表示 特願2004- 5954「弾性表面波デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-203889〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年1月13日の出願であって、平成20年6月24日付けで拒絶理由通知がなされ、同年8月27日付けで手続補正がなされ、同年11月4日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、平成21年1月13日付けで手続補正がなされたが、同年3月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成21年1月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「圧電基板上に複数の櫛歯型電極が形成された弾性表面波素子と、
該弾性表面波素子がフリップチップ実装されたパッケージとを有し、
該パッケージは、複数の前記櫛歯型電極それぞれにそれぞれ電気的に接続される複数の信号配線用パッドを接続する信号配線と、複数の前記櫛歯型電極それぞれにそれぞれ電気的に接続される複数のグランドパッドを接続するグランド配線とを有し、
全ての前記信号配線と前記グランド配線とは同じ厚さであり、且つ前記櫛歯型電極の厚さより厚いことを特徴とする弾性表面波デバイス。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第03/069778号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

A.「技術分野
本発明は通信機器などに用いられる弾性表面波装置に関するものである。」(第1頁第5行?第1頁第6行)

B.「 (実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における素子の平面図である。
図1において、LiTaO_(3)などからなる圧電基板11上に縦結合型ダブルモード弾性表面波フィルタ(以下DMSと記載)などからなる第1の素子12および第2の素子13が形成されている。第1の素子12は、第1の櫛形電極14a、第2の櫛形電極14b、第3の櫛形電極14cからなる3組の櫛形電極群とその両側に2つの反射器電極15を備えている。同様に、第2の素子13は第1の櫛形電極14d、第2の櫛形電極14e、第3の櫛形電極14fからなる3組の櫛形電極群とその両側に2つの反射器電極15を備えている。
第1の素子12の中央の櫛形電極14aの一方は圧電基板11の外周部に設けられた第1の入力端子電極16に接続している。また、電極14aの他方は入力端子電極16と反対側に設けられた第1の接続電極17aに接続している。
また両側の櫛形電極14bと櫛形電極14cの各々の櫛形電極の一方は入力端子電極16と同じ方向に設けられた第1のグランド電極18aと第2のグランド電極18bのそれぞれ接続している。グランド電極18a、グランド電極18bと対向する側に設けられた第1の出力端子電極19aと第2の出力端子電極19bには、櫛形電極14bと櫛形電極14cの各々の櫛形電極の他方がそれぞれ接続している。
接続電極17a、グランド電極18aおよびグランド電極18bは枠状の第1の補助電極20により電気的に接続されており、第1の補助電極20が第1の弾性表面波素子12を取り囲むように構成されている。補助電極20は場所により幅の異なる一組の電極から構成され、その各々の電極は電気的に短絡している。
同様に、第2の素子13の櫛形電極14dの一方は第1の素子12側に設けられた第2の接続電極17bに接続し、電極14dの他方は接続電極17bと反対側に設けられた第3の出力端子電極21に接続している。
また櫛形電極14eおよび櫛形電極14fの各々の櫛形電極の一方はそれぞれ第1の素子12側に設けられた第2の入力端子電極22aおよび第3の入力端子電極22bに接続している。櫛形電極14eおよび櫛形電極14fの各々の櫛形電極の他方はそれぞれ第3のグランド電極23aおよび第4のグランド電極23bに接続している。
接続電極17bおよびグランド電極23aおよびグランド電極23bは一組の第2の補助電極24により電気的に接続されており、補助電極24は第2の素子13を取り囲むように構成されている。
このようにして本実施の形態においては、同一圧電基板11上に互いに電気的に開放された2つの素子12および素子13を形成し、2組の補助電極20および補助電極24で囲んで第3の素子25を設けている。また、補助電極20および補助電極24は同一圧電基板11上では電気的に開放されている。
入力端子電極16、グランド電極18a、出力端子電極19a、出力端子電極19b、出力端子電極21、入力端子電極22aおよび入力端子電極22bには第3の素子25を外部に電気的に接続するためのAuなどからなるバンプ26を設けてある。
図2は図1に示した素子を実装するためのパッケージの斜視図である。
図2において、パッケージ31は例えばBaO-Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系のセラミックからなり、中央に凹部を有している。凹部底面に第3の素子25をフェイスダウン実装した際に素子25の出力端子電極19a、出力端子電極19bおよび入力端子電極22a、入力端子電極22bに対向する位置に導体パターン32を備えている。導体パターン32は連続した平面状で、例えばAgなどの金属からなり、パッケージ31の凹部中央に配置されている。導体パターン32は、点対称の形状を有し、中央部分が大きく、凹部内壁面(端面)に接する部分が小さくなっている。また、中央部分の寸法は基板11の長辺方向の寸法より長さが短く、端辺方向はほぼ同じ寸法を有している。
また、入力端子電極16に対向する位置に導体パターン33aを備え、グランド電極18aに対向する位置に導体パターン33bを備え、出力端子電極21に対向する位置に導体パターン34aを備え、第4のグランド電極23bに対向する位置に導体パターン34bを備えた構成を有している。
すなわち、導体パターン32は素子12、13の入、出力端子のみと電気的に接続されており、パッケージ裏側に設けた外部端子35(図示せず)とは電気的に開放されている。
また、導体パターン33aおよび導体パターン34aは素子25の信号が入、出力端子(以下ホット端子と言う)に接続しており、導体パターン33bおよび34bはパッケージ31のグランド端子(図示せず)に接続している。この様に素子25の入、出力端子を、それぞれパッケージ31に設けた外部端子35と接続する構成とすることにより素子25の電気的な特性をパッケージ31の外部端子35から取り出すことができる。
なお、図1に示した構成では素子25のグランド電極18a、グランド電極18b、グランド電極23a、グランド電極23bとホット端子である入力端子電極16、出力端子電極19a、出力端子電極19b、出力端子電極21、第入力端子電極22a、入力端子電極22bの位置関係を逆にしても同様の機能の弾性表面波素子を得ることができる。
ここで導体パターン32は出力端子電極19a、出力端子電極19b、および入力端子電極22a、入力端子電極22bを電気的に接続できる形状で、中央部分が大きく、外部が小さくなっている。この形状により、素子12と素子13を接続した場合の不要波の伝播を抑制し、相互干渉を小さくすることができる。ただし、出力端子電極19a、出力端子電極19b、および入力端子電極22a、入力端子電極22b間を相互に低インピーダンスで電気的に接続するためにできるだけ幅の広い導体パターンを用いるのが望ましい。また電気的なバランスを良くするために、導体パターン32は点対称や線対称といった対称な形状をしていることが望ましい。また、導体パターン32の寸法を基板11の長さより小さくすることにより素子12と素子13を接続した場合の不要波の伝播を抑制し、相互干渉を小さくすることができる。また、導体パターン32をパッケージ31の凹部の2方向の内壁(端面)に接するように連続して設けることにより、導体パターン32の金属層を容易に、効率よく形成する事ができる。また、導体パターン32をパッケージ31の中央部に設け、素子12と素子13を電気的に接続することにより、電気的なバランスをよくし、損失を少なくする事ができる。
また、導体パターン33a、33b、34a、34bについてもインピーダンスを低減させるためにできるだけ幅の広い導体パターンを用いるのが望ましい。また電気的なバランスを良くするためにはパッケージ31に対し、対称な形状で対称な位置に配置されていることが望ましい。
図3は図1に示した第3の弾性表面波素子25をパッケージ31に実装し3-3´線で切断した装置の断面図である。
図3は、素子25の櫛形電極などの機能面を下にしてパッケージ31の凹部に搭載した状態を示している。搭載に際しては先ず、素子25をパッケージ31の凹部に載置する。次に、入力端子電極16、グランド電極18a、出力端子電極19a、出力端子電極19b、出力端子電極21、入力端子電極22a、入力端子電極22b、グランド電極23bに設けたバンプ26を、パッケージ31に設けた導体パターン32、導体パターン33a、33b、34a、34bと対向するように位置を調整し、超音波などを印加しながら押圧加熱して素子25をパッケージ31に実装する。
ここで第1の素子12の第3の櫛形電極14cは、出力端子電極19bおよびバンプ26を介して導体パターン32に電気的に接続され、さらにバンプ26および入力端子電極22bを介して第2の素子13の第6の櫛形電極14fに電気的に接続されている。すなわち、圧電基板11上では電気的に開放されていた櫛形電極14cと櫛形電極14f、櫛形電極14bと櫛形電極14eがパッケージ31に設けた導体パターン32を介して電気的に接続された構成になっている。
パッケージ31には外部端子35が設けられており、外部端子35はパッケージ31の内部に設けたAgなどの金属を埋め込んだスルーホールなどからなる接続電極36により導体パターン33b、34aと電気的に接続されている。これにより素子25のホット端子をパッケージ31の外部端子35と接続し電気特性を外部に取り出すことができる。
また、接続電極36はパッケージ31底面の途中までをパッケージ31に内蔵し、途中からパッケージ31の外部へ端子を引出し、外部端子35と接続してもよい。また、パッケージ31の内部にAgなどの金属からなる金属層(図示せず)を形成し、この金属層を例えばシールド用の電極としこの金属層を介して第3の接続電極36と外部端子35を接続する構成にしてもよい。
本実施の形態においては、パッケージ31の側壁部上面にはAgなどからなる接着部材37が設けられており、パッケージ31の凹部上面にAlなどの金属などからなる蓋体(図示せず)を位置を合わせて載置し、押圧加熱することにより封止している。
また、導体パターン32、33a、33b、34a、34bおよび接着部材37の材質としてはAg、W、Cu、Auなどを用いることができる。導体パターン32の膜厚またはパターン幅を大きくすることにより接続部分のインピーダンスを低減し、複数組の素子を電気的に接続した場合のアイソレーションを高めることができる。
なお、これら導体パターンおよび接着部材37の表面には酸化抑制や合金化抑制、接合性改善のために必要に応じてAuなどからなるメッキを施してもよい。また、さらに合金化を抑制するためにはAuなどからなるメッキを施す前に下地金属としてNiなどからなるメッキを施してもよい。また接着部材37の上に必要に応じてAg-Snロウなどを用いて蓋体を接着してもよい。導体パターン32はパッケージ32の凹部内底面に、一方の端面から他方の端面まで連続した形状にすることにより、容易にめっきを施す事ができる。
本発明の構成によれば、同一の圧電基板11上に2組の素子12、13を同時に設けても各々の素子が同一圧電基板11上では電気的には直接接続せず、導体パターン32を介してバンプで接続しているため、相互干渉の影響を抑制することができる。また同一圧電基板上に複数の素子を同時に形成することにより装置の形状を小型化することができるとともに、バンプにより素子をフェイスダウン実装することにより、簡単な構成で、電気的に安定した特性を得ることができる。
図5は本実施の形態1による弾性表面波装置と従来の弾性表面波装置のフィルタ特性を示す図である。
図5において、曲線41は本実施の形態1による弾性表面波装置のフィルタ特性を示し、曲線42は従来の弾性表面波装置のフィルタ特性を示している。
ここで従来の弾性表面波装置とは、図9に示したように同一圧電基板1上に2組の素子2、3が形成され、素子2の出力端子電極4が素子3の入力端子電極5と同一圧電基板1上で接続電極6により直接接続された構成を有している。
図5から判るように、本実施の形態による装置のフィルタ特性は従来の装置のフィルタ特性に比べ通過帯域外の周波数において優れた減衰特性を示している。すなわち、通過帯域より低周波数側では減衰量を最大で10dB改善することができ、通過帯域より高周波数側では減衰量を10?最大で30dB改善することができる。
このように同一圧電基板11上に2組の素子12、13を電気的に開放された状態で形成し、パッケージ31に設けた導体パターン32を介してバンプによりフェイスダウン実装し、電気的に接続して圧電基板11上で発生する2組の素子12、13の不要波の伝播を抑制することにより、相互作用を低減しアイソレーションを高めることができる。このため、フィルタ特性、特に帯域外減衰量を著しく改善することができる。
従来、弾性表面波素子の電極構成としてDMSを用いると通過帯域より高周波数側で帯域外減衰量を大きくできなかったが、本実施の形態の構成によれば特に高周波数側での帯域外減衰量を著しく改善することができる。
なお、素子に設ける櫛形電極の数はいくつであってもよいし、同一圧電基板上に設ける弾性表面波素子の数は2つ以上であればいくつでもよい。また、本実施の形態においては素子の電極構成としては縦モード結合のDMSを用いたが、これ以外にトランスバーサル型、ラダー型、共振子などその他の電極構成を用いてもよい。
また、バンプ26を設ける位置および個数は必要に応じて任意に変更可能である。
なお、素子25とパッケージ31に形成された導体パターンとを電気的に接続する手段としてはバンプ26を用いたが、バンプ以外に各種導電性接着剤や、バンプと導電性接着剤の両方を用いてもかまわない。
導電性接着剤を用いるとバンプを用いた接続に比べ電気的接続に際しての機械的ストレスを低減することができ、接続部分の信頼性を高めることができる。また、導電性接着剤とバンプの両方を用いると接続部分への機械的ストレスを低減するとともに、接続インピーダンスを低減することができ、帯域外減衰量を改善することができる。
また、素子の外周部を枠状で電気的に短絡した補助電極で囲むことにより圧電基板11上で発生した電荷を均一化し、電荷の偏りを無くすことができる。これにより例えば静電気放電などによる素子の破壊などを防止することができる。
なお、補助電極は全体に亘って同じ幅でも、場所により幅が異なってもよい。
また、本実施の形態においては、第1、第2の素子12、13を凹部を有するパッケージ31にフェイスダウン実装し、蓋体で封止した構成を示した。しかし、本実施の形態の実装例は、上記形態に限ることは無い。
たとえば、図4に示すように、凹部を有するパッケージ31に代えて、平らな基板100を用い、基板100に素子12、13からなる素子25をフェイスダウン実装した後、封止部材101で封止してもよい。基板100は、セラミック基板、樹脂基板、金属基板など任意に選択することができる。封止部材101も樹脂、金属、セラミックなどから任意に選択することができる。このような形態にすれば、実質上、素子形状と、パッケジ形状とが略等しいCSP(チップサイズパッケージ)とすることができる。
この様なCSP構造にすることにより、小型で、フィルタ特性、特に帯域外減衰特性に優れた装置を得ることができる。
以上のように本発明によれば、一つの圧電基板11上に2組の素子を電気的に開放された状態で形成し、パッケージに設けた導体パターンを介して電気的に接続することにより2組の弾性表面波素子の相互の影響を低減し、相互のアイソレーションを高めることができる。このため、フィルタ特性、特に帯域外減衰量を著しく改善することができるとともに、装置の外形寸法を小型化することができる。」(第3頁第4行?第10頁第22行)

C.「 (実施の形態3)
以下に本発明の第3の実施の形態を図7を用いて説明する。
図7は本発明の実施の形態3における弾性表面波装置の電極パターンの構成を示す平面図である。図7において実施の形態1の図1で説明したものと同一の構成要素は同一番号を付与し、詳細な説明は省略する。
本実施の形態と実施の形態1とで相違する点は、同一圧電基板11上に設けた電極構成が同じ2組の素子12、13を用いるとともに、素子12、素子13を囲む補助電極として、電気的に独立し、第1のグランド電極18a、第2のグランド電極18b、第2の入力端子電極22a、第3の入力端子電極22bとそれぞれ接続した第5の補助電極61a、第6の補助電極61b、第7の補助電極62a、第8の補助電極62bを用いたことである。
すなわち、本実施の形態においては素子として同一の電極構成を有する第1の素子12、第2素子13を同一圧電基板11上に電気的に開放して設け、それぞれ素子12、素子13の外周部を互いに電気的に独立し場所により幅の異なる複数の補助電極で囲んだ構成を有している。相互の素子間は実施の形態1と同様にパッケージ31に設けた導体パターン32を介して互いに電気的に接続する構成として弾性表面波装置を製造した。
図7においては、電極構成が同じ第1の素子12と第2の素子13を用いるとともに、それぞれの素子12、13を囲む補助電極61a、61b、62a、62bは同じ形状のものを用いている。第1の素子12と第2の素子13が同一圧電基板11上で電気的に開放されているため、圧電基板11上で発生する2組の素子12、13の相互作用を低減しアイソレーションを高めることができる。このため、フィルタ特性、特に帯域外減衰量を著しく改善することができる。
また、4つの補助電極61a、61b、62a、62bに同じ形状のものを用いることにより2組の素子12、13により構成される第5の素子63全体の対称性を高めることができる。このため、機械的歪みや熱により圧電基板11上で発生した電荷を平均化し素子63全体として電荷の偏りを少なくし例えば静電気放電などによる弾性表面波素子の破壊などを低減することができる。
また、補助電極61a、61bを一組としてこの一組の補助電極により素子12を取り囲んでおり、同様に、補助電極62a、62bを一組としてこの一組の補助電極により素子13を取り囲んでいる。補助電極61a、61b、62a、62bは同一圧電基板11上では電気的に開放されており、バンプ26や導電性接着剤によりパッケージの導体パターン33a、33b、34a、34bと接続されている。なお、補助電極61a、61b、62a、62bの幅は同じであっても、場所により幅が異なってもよい。
図8は本実施の形態におけるパッケージの一例の斜視図である。図8において、パッケージ31に設けた導体パターン71は素子63の第5のグランド電極64a、第6のグランド電極64bとは電気的に接続せず、第1の出力端子電極19a、第2の出力端子電極19bと第2の入力端子電極22a、第3の入力端子電極22bとを電気的に接続している。
また、素子63のグランド電極64aに対向してパッケージ31上に第7のグランド電極72aを導体パターン33bに接続して設けるとともに、グランド電極64bに対向してパッケージ31上に第8のグランド電極72bを第2の導体パターン34bに接続して設けた構成にしている。
なお、本実施の形態においては第1の素子12、第2の素子13の電極構成として同じものを用いたが、必要に応じて電極構成の異なる弾性表面波素子を用いてもかまわない。また、用いる弾性表面波素子の電極構成は2種類だけでなく、同時に2種類以上の電極構成を複数個組み合わせてもよい。」(第12頁第18行?第14頁第15行)

ここで、
(ア)上記B及び図3に記載されたフェイスダウン実装の形態は、素子とパッケージが電極と導体パターン間をバンプを形成して接続されている形態であり、この形態は一般的にフリップチップ実装といわれるものである。
(イ)図7の記載では、第2の入力端子電極22aが2カ所あり、第3の入力端子電極22bも2カ所あるが、上記Cの「図7において実施の形態1の図1で説明したものと同一の構成要素は同一番号を付与し、詳細な説明は省略する。」という記載を考慮するとともに図1を参照すると、図7における2つの第2の入力端子電極22aのうちの、第7の補助電極62aに接続している広い方の電極は、グランド電極23aと記載すべきであり、図7における2つの第3の入力端子電極22bのうちの、第8の補助電極62bに接続している広い方の電極は、グランド電極23bと記載すべきであると解される。
(ウ)図7に記載された第1の出力端子電極19a,第2の出力端子電極19b,第2の入力端子電極22a,第3の入力端子電極22b,入力端子電極16,出力端子電極21は、複数の櫛形電極それぞれにそれぞれ電気的に接続される複数の信号配線用パッドであるといえることは明らかである。
(エ)上記Cより、図8に記載された導体パターン71,導体パターン33a,導体パターン34aは、上記(ウ)で述べた複数の信号配線用パッドを接続する信号配線であるといえることは明らかである。
(オ)上記(イ)での検討事項をふまえた上で、図7に記載された第1のグランド電極18a,第2のグランド電極18b,グランド電極23a,グランド電極23b,第5のグランド電極64a,第6のグランド電極64bは、複数の櫛形電極それぞれにそれぞれ電気的に接続される複数のグランドパッドであるといえることは明らかである。
(カ)上記Cより、図8に記載された導体パターン33b,導体パターン34b,第7のグランド電極72a,第8のグランド電極72bは、上記(オ)で述べた複数のグランドパッドを接続するグランド配線であるといえることは明らかである。
(キ)上記Cの「相互の素子間は実施の形態1と同様にパッケージ31に設けた導体パターン32を介して互いに電気的に接続する構成として弾性表面波装置を製造した。」という記載、及び、「図8において、パッケージ31に設けた導体パターン71は素子63の第5のグランド電極64a、第6のグランド電極64bとは電気的に接続せず、第1の出力端子電極19a、第2の出力端子電極19bと第2の入力端子電極22a、第3の入力端子電極22bとを電気的に接続している。」という記載より、導体パターン71は複数の素子間を電気的に接続するものであるから導体パターン32と同じ機能を有するものであると解される。そして、上記Bの「導体パターン32の膜厚またはパターン幅を大きくすることにより接続部分のインピーダンスを低減し、複数組の素子を電気的に接続した場合のアイソレーションを高めることができる。」という記載より、導体パターン32と同じ機能を有する導体パターン71の膜厚を大きくすることによっても、接続部分のインピーダンスを低減することができることは明らかである。

よって、上記A?Cの記載及び関連する図面を参照すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「圧電基板11上に複数の櫛形電極が形成された第5の素子63と、
該第5の素子63がフリップチップ実装されたパッケージ31とを有し、
該パッケージ31は、複数の前記櫛形電極それぞれにそれぞれ電気的に接続される複数の信号配線用パッドを接続する信号配線と、複数の前記櫛形電極それぞれにそれぞれ電気的に接続される複数のグランドパッドを接続するグランド配線とを有し、
導体パターン71,導体パターン33a,導体パターン34aからなる前記信号配線のうちの導体パターン71の膜厚を大きくした弾性表面波装置。」

4.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明における「圧電基板11」,「櫛形電極」,「第5の素子63」,「パッケージ31」,「弾性表面波装置」は、それぞれ、本願発明における「圧電基板」,「櫛歯型電極」,「弾性表面波素子」,「パッケージ」,「弾性表面波デバイス」に相当する。

よって、本願発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「圧電基板上に複数の櫛歯型電極が形成された弾性表面波素子と、
該弾性表面波素子がフリップチップ実装されたパッケージとを有し、
該パッケージは、複数の前記櫛歯型電極それぞれにそれぞれ電気的に接続される複数の信号配線用パッドを接続する信号配線と、複数の前記櫛歯型電極それぞれにそれぞれ電気的に接続される複数のグランドパッドを接続するグランド配線とを有する弾性表面波デバイス。」
である点。

(相違点)
本願発明は、「全ての信号配線とグランド配線とは同じ厚さであり、且つ櫛歯型電極の厚さより厚い」ものであるのに対し、引用例記載の発明は、「導体パターン71,導体パターン33a,導体パターン34aからなる信号配線のうちの導体パターン71の膜厚を大きくした」ものであるものの、「全ての信号配線とグランド配線とは同じ厚さであり、且つ櫛歯型電極の厚さより厚い」ものであるとはされていない点。

5.判断
そこで、上記相違点について検討する。

引用例記載の発明において、導体パターン71の膜厚を大きくすればするほど、上記導体パターン71のインピーダンスをより低減することができることは、当業者にとって明らかであるから、上記導体パターン71のインピーダンスを低減するために、結果的に上記導体パターン71の膜厚を櫛形電極の厚さより厚いものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、パッケージ31の凹部内底面上の導体パターン71,導体パターン33a,導体パターン34a,導体パターン33b,導体パターン34b,第7のグランド電極72a,第8のグランド電極72bは、一般的に同一工程で形成されるものと解されるから、それらの厚さを同じにすることは、当業者が適宜になし得ることである。
したがって、引用例記載の発明において、全ての信号配線(導体パターン71,導体パターン33a,導体パターン34a)とグランド配線(導体パターン33b,導体パターン34b,第7のグランド電極72a,第8のグランド電極72b)とを同じ厚さとし、且つ櫛歯型電極(櫛形電極)の厚さより厚くすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明から、当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-25 
結審通知日 2011-05-31 
審決日 2011-06-13 
出願番号 特願2004-5954(P2004-5954)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 和志  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 小曳 満昭
甲斐 哲雄
発明の名称 弾性表面波デバイス  
代理人 片山 修平  

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