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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1240850
審判番号 不服2010-13281  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-17 
確定日 2011-07-28 
事件の表示 特願2004-24370号「空調室内機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年8月11日出願公開、特開2005-214562号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成16年1月30の出願であって、平成22年3月19日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年3月30日)、これに対し、平成22年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成22年6月17日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年6月17日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「ステッピングモータと前記ステッピングモータからの駆動力が伝達されて動作するパネル開閉機構と、前記パネル開閉機構によって移動させられるパネルと、前記パネルの移動状態を検知する検知部と、前記検知部における検知結果に基づいて、前記パネル開閉機構の動作不良を検知した場合には、前記パネル開閉機構に対して駆動力を伝達する前記ステッピングモータのパルス数が通常時よりも増加するように制御する制御部と、を備えている空調室内機。」とあったものを「ステッピングモータと前記ステッピングモータからの駆動力が伝達されて動作するパネル開閉機構と、前記パネル開閉機構によって移動させられるパネルと、前記パネルの移動状態を検知する検知部と、前記検知部における検知結果に基づいて、前記パネル開閉機構の動作不良を検知した場合には、前記パネル開閉機構に対して駆動力を伝達する前記ステッピングモータのパルス数が通常時よりも増加し、前記パネル開閉機構の動作不良を検知しなかった場合には、通常時のパルス数が用いられるように制御する制御部と、を備えている空調室内機。」と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、パネル開閉機構の動作不良を検知した場合の制御について、本件補正前の請求項1に「パネル開閉機構の動作不良を検知した場合には、前記パネル開閉機構に対して駆動力を伝達する前記ステッピングモータのパルス数が通常時よりも増加するように制御する」とあったものを「パネル開閉機構に対して駆動力を伝達する前記ステッピングモータのパルス数が通常時よりも増加し、前記パネル開閉機構の動作不良を検知しなかった場合には、通常時のパルス数が用いられるように制御する」と限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-101046号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【発明の属する技術分野】本発明は、内部にフイルタと熱交換器と送風フアンを備えた通風路を有する筐体の前面に前記通風路と連通する吸込部を設けた空気調和機に関するものであり、特に、意匠性や強度を損なうことなく、通風抵抗を軽減して性能向上が図れ、また、清掃が容易な空気調和機に関するものである。」(段落【0001】)
b)「本発明の第1の目的は、意匠性を損なうことなく、通風抵抗を軽減して性能向上が図れる空気調和機を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、強度を保持しつつ、通風抵抗を軽減して性能向上が図れる空気調和機を提供することにある。
また、本発明の第3の目的は、清掃性を良好にするとともに、通風抵抗を軽減して性能向上が図れる空気調和機を提供することにある。」(段落【0004】?【0006】)
c)「次に、前記ムービングパネル9のシャッタ機構31について、図7?図11により詳細に説明する。図8において、シャッタ機構31は室内ユニット1の右側上方の前部に配置される駆動機構部59と、室内ユニット1の左側上方の前部に配置される連結機構部60と、前記駆動機構部59と連結機構部60を連動する連結棒61とから構成され、該駆動機構部59と連結機構部60にムービングパネル9の両端部が取付けられる。シャッタ機構31は、図7で示すように、化粧カバー3の内側両壁面に形成される取付リブ62の間に連結棒61が軸支され、該連結棒61に連結して駆動機構部59と連結機構部60がそれぞれの取付リブ62に取付けられる。図9、図10において、駆動機構部59は、ムービングパネル9が取付けられるラック63と、ステッピングモータ64と、該ステッピングモータ64の駆動力をラック63に伝達する駆動機構ケース65aとから構成される。ラック63は、両側に摺動溝66を備えた断面形状がH状のわずかにわん曲した棒形状であり、前面にムービングパネル9の取付部67、背面に板歯車68が形成される。ステッピングモータ64は、駆動機構ケース65aにネジで取付けられ、電装品ボックス25からの信号及び電源を供給する着脱可能に端子69が接続される。駆動機構ケース65aは、ケース内に、ステッピングモータ64の回転軸に直結する第1ギヤ70と、前記第1ギヤ70と噛み合い、連結棒61と直結する第2ギヤ71と、ラック63の板歯車68と噛み合う第3ギヤ72と、第2ギヤ71のトルクを第3ギヤ72に伝達するベルト73とから構成される。74は、摺動溝66を両側より支持して第3ギヤ72と板歯車68の噛み合いを良好にするとともに、ラック63を上下方向に案内するラック支持部である。また、75は、ラック63の移動軌道Z上の化粧カバー3に形成される案内レールであり、ラック支持部74とともにラック63を支持し、ラック63の移動軌道を案内する。なお、本実施例では、ラック63を安定して移動させるために案内レール75を備えたが、ラック支持部74を上下方向に大きくすることでも同様な効果が得られる。なお、ラック63の移動量を小さくしたり、あるいは特に精度を得る必要がなければ案内レール75を設けなくてもよい。また、本実施例では、ベルト73を設けることにより、ムービングパネル9と離れた位置、つまり熱交換器10aの上部に形成される空間56に配置される駆動機構ケース65と簡単な構造で連結できる。したがって、ムービングパネル9に駆動機構ケース65aを隣接して設ける必要がないから、駆動機構ケース65aを熱交換器10aの傾きを利用して後方に配置させて、ムービングパネル9の移動軌道Zを斜め上部後方に傾いて設けることができるので、ムービングパネル9の近傍に配置することによる装置の大型化を軽減することができる。
一方、連結機構部60は、図11に示すように、ムービングパネル9が取付けられるラック63と、連結棒61の駆動力をラック63に伝達する連結機構ケース65bとから構成される。連結機構ケース65bは、ケース内に、連結棒61と直結する第2ギヤ71と、ラック63の板歯車68と噛み合う第3ギヤ72と、第2ギヤ71のトルクを第3ギヤ72に伝達するベルト73とから構成される。
以上述べたシャッタ機構31を備えたムービングパネル9の動作を図10、図11で説明する。先ず、図11はムービングパネル9を閉鎖した状態を示している。この状態では、ラック63の板歯車68の上端が第3ギヤ72と噛み合い、ラック63の下端部が化粧カバー3の段差部47に当接して閉鎖状態が維持される。次に、図10、図11において、動作信号が端子69を介してステッピングモータ64に指示されると、ステッピングモータ64が動作して回転トルクが第1ギヤ70、第2ギヤ71、ベルト73を介して第3ギヤ72に伝達される。この際、駆動機構部59と連結機構部60の第2ギヤ71は連結棒61で連結されているので、駆動機構部59と連結機構部60の第3ギヤ72には同一の回転トルクが伝達される。2つの第3ギヤ72に伝達された回転トルクは板歯車68により上下方向のトルクに変換され、ラック63に取付けられるムービングパネル9を上方に移動させることができる。図10はムービングパネル9を上方に引き上げ、第1の吸込部7を開放した状態を示している。本実施例では、ムービングパネル9とラック63の移動軌道Zをムービングパネル9とラック63の側面形状とほぼ一致する円弧状とし、閉鎖状態でムービングパネル9の中央が最前部となるように設定している。このため、ムービングパネル9は円弧状の移動軌道Zに沿って図11で示す位置から図10で示す上方斜め後方に引き上げることができる。この開放状態では、ラック63の板歯車68の下端が第3ギヤ72に噛み合い、ムービングパネル9の上端が化粧カバー3の段差部47の後方で化粧カバー3の天井に接するように、ムービングパネル9が後方に大きく傾斜する熱交換器10aとフロントパネル4の大きな曲面35の間に収納される。なお、化粧パネル4に形成される案内板75は移動軌道Zに沿って円弧状に形成される。また、案内板75と同様な案内板を図11で示すラック63の両側に設けることで、ムービングパネル9の移動をより良好にすることができる。」(段落【0031】?【0033】)
d)「先ず、運転停止状態では、室内ユニット1は風向板6a、6b及びムービングパネル9が閉鎖状態と成っている。リモコンで運転スタートの指示操作がなされると(201)、リモコンは自動運転が選択されていれば自動運転モード信号を送信し、手動運転が選択されていれば予め設定された設定温度、冷房/暖房、等の信号を送信する(202)。マイコン251は受光部15を介して前記信号を受信すると、自動運転モードの信号を受信した場合は室温サーミスタ253を介して自動的に運転モードを設定し(203)、手動運転であれば予め手動で設定された運転モードを運転モードとして設定し(204)、表示部14に運転状態を表示するとともに予備運転を開始する(205)。この予備運転では主に暖房時のホットキープを行う。予備運転時では、ムービングパネル9を閉めた状態のため、熱交換器10を密閉された空間内に置くことができるので、熱交換器の暖まる、または冷たくするスピードを短縮することができるので、暖房時は立上り時間を短縮でき、冷房時は、熱交換器10が充分に冷されないために生じする嫌な臭いを吹き出さないようにすることができる。次に、マイコン251は予備運転を開始して運転準備が完了すると、ステッピングモータ24とステッピングモータ64に動作信号を発信する。ステッピングモータ24は運転モードに対応して風向板6a、6bを予め設定された所定の角度まで開放する。ステッピングモータ64はラック63を上方に移動させて図10に示す所定の位置までムービングパネル9を室内ユニット内に収納する(206)。このステップ206では、風向板6a、6bとムービングパネル9が同時に動作し、その動作完了はスイッチ252で検知される。次に、マイコン251は、フアンモータ18(207)、圧縮機(208)を運転させ、通常運転を開始させる(209)。マイコン251は、リモコンによる運転停止指示、あるいはタイマー等の設定された運転モードにより運転停止を判断する(210)と、圧縮機とフアンモータ18を停止(211)し、ステッピングモータ24とステッピングモータ64に動作信号を発信して、風向板6a、6bとムービングパネル9を同時にもとの閉鎖状態まで動作させ(212)、運転表示ランプを消灯して運転停止状態とする(213)。なお、マイコン251は、ステッピングモータ64の動作時、つまりムービングパネル9が移動中であることを示すために表示部14を動作スピードに対応して点滅表示させてもよい。」(段落【0041】)
e)「次に、図21?図23はムービングパネル9の動作制御に関する他の実施例であり、図21、図22は縦断面図、図23は動作フローチャートである。図21において、前記実施例では、ムービングパネル9の開閉をスイッチ252で感知するように説明したが、この実施例では、図17で示す振動防止手段300、301と同様な位置にON、OFFのスイッチ400、401を設けるようにする。このようにすることにより、マイコン251は上部のスイッチ400がOFFで、下部のスイッチ401がONの状態から、ムービングパネル9が上方に移動して下部のスイッチ401がOFFとなり上部のスイッチ400がONとなればムービングパネル9の移動を止めるようにする。閉鎖時はこの逆の動作で行えばよい。したがって、本実施例によれば、ムービングパネル9の位置を簡単に認識して動作を制御することができる。
また、図22に示すように、下部のスイッチ401のみ設けるようにしてもよい。この場合は、マイコン251は下部のスイッチ401がONの状態をホームポジションとして、該ホームポジションからスイッチ401がOFFの状態になって、ステッピングモータ64が何回転したかを検知してムービングパネル9の移動量を特定するようにする。また、閉鎖時は下部のスイッチ401がOFFの状態からONの状態になることで、マイコン251はムービングパネル9がホームポジションに戻ったと認識し、ステッピングモータ64を停止するようにする。また、この実施例では、運転スタート時、あるいは運転再開時に、常にムービングパネル9はホームポジションにあるかを認識し、ホームポジションになければホームポジションのムービングパネル9を戻して以後の動作を行うようにする。例えば、運転中に停電があった場合等のように、何らかの障害でムービングパネル9が途中で停止してしまった場合、マイコン251はムービングパネル9をホームポジションに戻すように動作する。この動作フローを図23で説明する。マイコン251は運転スタートの指令を受けると、マイコン251はスイッチ401がON状態か否かをチエック(410)し、ON状態であればムービングパネル9がホームポジションにあると認識し以後の運転動作(411)、例えば図16に示すフローに進む。またスイッチ401がOFF状態であれば、ステッピングモータ64に動作信号を発信しムービングパネル9を下方に移動させる(412)。そして、マイコン251はムービングパネル9がホームポジションにあることをスイッチ401で確認(413)できれば、以後の運転動作(411)に進む。一方、ホームポジションに戻ることが確認できない場合(413)、例えば、ステッピングモータ64に異常なトルクを検知した場合、あるいは一定時間たってもスイッチ401がON状態とならない場合は、マイコン251は異常が発生したと認識し、表示部14を点滅(414)して、以後の運転動作を停止する(415)。このようにすれば、ムービングパネル9の移動に伴う事故を軽減することができる。」(段落【0050】?【0051】)

上記a?eの記載事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「ステッピングモータ64と、
ステッピングモータ64の駆動力が伝達される駆動機構ケース65aを含むシャッタ機構31と、
シャッタ機構31を備えたムービングパネル9と、
ムービングパネル9の位置を認識して動作を制御するためのON、OFFスイッチ400、401と、
運転スタート時に、一定時間たってもスイッチ401がON状態とならずに、ムービングパネル9がホームポジションに戻ることを確認できない場合は、異常が発生したと認識し、ステッピングモータ64の以後の運転動作を停止させ、ムービングパネル9がホームポジションに戻ることを確認できる場合には、以降の運転動作に進み、ステッピングモータ64によりムービングパネル9を所定の位置まで室内ユニット内に収納させるマイコン251と を備えている空気調和機。」

(2)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-309120号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【作用】このように構成されたモータアクチュエータ制御装置にあっては、制御手段は、モータへの駆動信号をデューティ比制御する場合において、モータが所定時間以内に目標位置に到達しないとき、または位置検出手段から同一の回転位置信号が継続して出力されたときは、たとえば経年変化やラム圧の影響、高風速による影響などによってドアの負荷トルクが増大したものと判断して、駆動信号のデューティ率を増加させるので、このデューティ率の増加に応じてモータの出力トルクが大きくなり、たとえドアの負荷トルクが増大したとしてもこれに対抗してドアを確実に動かすことができる。」(段落【0011】)

上記aの記載事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「モータが所定時間以内に目標位置に到達しないとき、たとえば経年変化やラム圧の影響、高風速による影響などによってドアの負荷トルクが増大したものと判断して、駆動信号のデューティ率を増加させるモータアクチュエータ制御装置。」

3.対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「ステッピングモータ64」は、その構成及び機能からみて本件補正発明の「ステッピングモータ」に相当し、以下同様に、
「ステッピングモータ64の駆動力が伝達される駆動機構ケース65aを含むシャッタ機構31」は「ステッピングモータからの駆動力が伝達されて動作するパネル開閉機構」に、
「シャッタ機構31を備えたムービングパネル9」は「パネル開閉機構によって移動させられるパネル」に、
「ムービングパネル9の位置を認識して動作を制御するためのON、OFFスイッチ400、401」は「パネルの移動状態を検知する検知部」に、
「ムービングパネル9がホームポジションに戻ることを確認できる場合には、以降の運転動作に進み、ステッピングモータ64によりムービングパネル9を所定の位置まで室内ユニット内に収納させるマイコン251」は、マイコン251が、通常どおり、ステッピングモータ64に駆動指令を出力して、ムービングパネル9の位置制御を行うことであるから、「パネル開閉機構の動作不良を検知しなかった場合には、通常時のパルス数が用いられるように制御する制御部」に、
「空気調和機」は「空調室内機」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「運転スタート時に、一定時間たってもスイッチ401がON状態とならずに、ムービングパネル9がホームポジションに戻ることを確認できない場合は、異常が発生したと認識し、ステッピングモータ64の以後の運転動作を停止させ」ることと本件補正発明の「パネル開閉機構の動作不良を検知した場合には、前記パネル開閉機構に対して駆動力を伝達する前記ステッピングモータのパルス数が通常時よりも増加」させることとは、運転動作の停止処理や、ステッピングモータのパルス数の増加処理といった異常処理を行う点で共通するから、両者は、「パネル開閉機構の動作不良を検知した場合には、異常処理を行う」ことで共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「ステッピングモータと前記ステッピングモータからの駆動力が伝達されて動作するパネル開閉機構と、前記パネル開閉機構によって移動させられるパネルと、前記パネルの移動状態を検知する検知部と、前記検知部における検知結果に基づいて、前記パネル開閉機構の動作不良を検知した場合には、異常処理を行い、前記パネル開閉機構の動作不良を検知しなかった場合には、通常時のパルス数が用いられるように制御する制御部と、を備えている空調室内機。」

[相違点]
パネル開閉機構の動作不良を検知した場合に行われる異常処理が、本件補正発明では、パネル開閉機構に対して駆動力を伝達するステッピングモータのパルス数を通常時よりも増加させることであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、以後の運転動作を停止させることである点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
まず、刊行物2に記載された発明と本件補正発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明の「モータが所定時間以内に目標位置に到達しないとき」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「動作不良を検知した場合」に相当する。
そして、刊行物2に記載された発明の「駆動信号のデューティ率を増加させる」ことと、本件補正発明の「ステッピングモータのパルス数を通常時よりも増加させる」こととは、「モータの信号出力を増加させる」ことで共通し、同様に、
刊行物2に記載された発明の「モータアクチュエータ制御装置」と、本件補正発明の「ステッピングモータ」を制御する「制御部」とは、「モータを制御する制御装置」である点で共通する。
したがって、刊行物2に記載された発明は、
「動作不良を検知した場合にモータの信号出力を増加させる、モータを制御する制御装置。」と言い換えることができる。
そして、刊行物1及び2に記載された発明は、装置の動作不良を検知した場合のモータの動作制御という同一の技術課題に関するものある。
したがって、刊行物1に記載された発明の空気調和機において、動作不良検知時の動作として刊行物2に記載された発明に倣って、異常が発生したと認識したときに、ステッピングモータ64の駆動信号出力を増加させることは、当業者が容易になし得たものである。
そして、その際に、ステッピングモータの駆動により動作する装置の技術分野において、ステッピングモータの駆動パルス数を増加させること、すなわち、ステッピングモータの駆動出力を増加させることにより、ステッピングモータにより駆動される駆動機構の経年変化等の原因による誤差を吸収することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開平11-159936号公報の段落【0021】、【0037】や、特開平11-194826号公報の段落【0009】?【0010】、【0099】を参照。)ことから、刊行物1に記載された発明において、異常が発生したと認識したとき、ステッピングモータ64の駆動信号出力を増加させる手段として、パルス数を増加させる手段を採用する程度のことは、当業者が適宜なし得たものである。
また、本件補正発明の奏する効果は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件補正発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成22年6月17日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年7月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「ステッピングモータと前記ステッピングモータからの駆動力が伝達されて動作するパネル開閉機構と、前記パネル開閉機構によって移動させられるパネルと、前記パネルの移動状態を検知する検知部と、前記検知部における検知結果に基づいて、前記パネル開閉機構の動作不良を検知した場合には、前記パネル開閉機構に対して駆動力を伝達する前記ステッピングモータのパルス数が通常時よりも増加するように制御する制御部と、を備えている空調室内機。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1?2、刊行物1?2の記載事項及び刊行物1?2に記載された発明は、前記「第2.[理由]2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2.[理由]」において検討した本件補正発明において、パネル開閉機構の動作不良を検知した場合の制御について、「パネル開閉機構に対して駆動力を伝達する前記ステッピングモータのパルス数が通常時よりも増加し、前記パネル開閉機構の動作不良を検知しなかった場合には、通常時のパルス数が用いられるように制御する」とあったものを「パネル開閉機構の動作不良を検知した場合には、前記パネル開閉機構に対して駆動力を伝達する前記ステッピングモータのパルス数が通常時よりも増加するように制御する」とその限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.[理由]3.対比および4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-25 
結審通知日 2011-05-31 
審決日 2011-06-13 
出願番号 特願2004-24370(P2004-24370)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
P 1 8・ 575- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 健志  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 青木 良憲
長崎 洋一
発明の名称 空調室内機  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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