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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F21V
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  F21V
管理番号 1240898
審判番号 無効2010-800161  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-09-13 
確定日 2011-07-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第4368987号発明「発光ダイオードによって励起される燐光体蛍光アッセンブリ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4368987号の請求項1ないし請求項3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許は,平成11年10月7日に出願され,平成21年9月4日に特許権の設定登録がなされたものである(特許第4368987号)。
これに対し,請求人青木眞理(以下,単に「請求人」という)は,平成22年9月13日に本件特許無効審判を請求した。その後,当審において,平成22年10月18日付けで,被請求人エイチ.イー.ウイリアムズ.インコーポレイティド(以下,単に「被請求人」という)に対して,審判請求書の副本を送達し,期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが,被請求人からは何らの応答もなかった。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下,「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という)は,特許時における明細書(以下,「本件明細書」という)の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
(1)ハウジングと;
(2)前記ハウジング内に伝送された電源と;
(3)前記ハウジング内にマウントされ,電磁スペクトルの紫外領域に対して感応する燐光体の励起のための波長を出力するに十分な,一連の発光ダイオードと;
(4)前記複数の発光ダイオードによって使用されるための既知の電圧に電力を変換するための変換手段と;
(5)内表面領域を有する発光性の透明表面と;
(6)前記透明な密閉体の内表面領域上に設置された紫外励起燐光体の皮膜であって,前記燐光体皮膜が前記ダイオードからの発光によって励起された場合,前記皮膜によってかつ前記透明な表面を介して裸眼に可視の光スペクトルが形成されるもの;を含む,照明アッセンブリ。
【請求項2】
前記各ダイオードは1個のピーク強度波長と約8.6の半値全幅分散を有する,請求項1に記載のアッセンブリ。
【請求項3】
前記各ダイオード出力は,蛍光水銀アークの2次紫外出力ピークの6nmよりも小さくない,請求項1に記載のアッセンブリ。」

第3 請求人の主張
1.請求の趣旨及び理由
請求人は,審判請求書において,「特許第4368987号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め,その理由として次のように主張している。
(1)無効理由1
請求項1及び3に係る特許発明は,甲第1号証,甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許受けることができないものであり,その特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(2)無効理由2
請求項1及び3に係る特許発明は,甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(3)無効理由3
請求項2に記載された発明特定事項のうち,「各ダイオードは・・・約8.6の半値全幅分散を有する」については,「半値全幅分散」の技術的意義,「約8.6」の単位が不明で,発明の詳細な説明には,「半値全幅分散」の定義,その分散値の調整方法,数値限定の技術的意義,効果について明確かつ十分に記載されていないから,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず,本件特許は,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。

2.証拠方法
請求人は上記主張を立証するため,次の証拠方法を提出している。
(1)甲第1号証;特開平11-87770号公報
(2)甲第2号証;特開平11-135274号公報
(3)甲第3号証;特開平7-282609号公報
(4)甲第4号証;特開平10-190053号公報
(5)甲第5号証:特開平10-84134号公報

第4 当審の判断
第4-1 進歩性(無効理由2について)
1.刊行物記載事項
(1)甲第1号証
請求人が甲第1号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平11-87770号公報には,図面とともに次の事項が記載されている。
1a)「【請求項5】配線基板と,前記配線基板上に設けられた紫外線を放出する複数の半導体発光素子と,前記配線基板の周囲を覆うように設けられた透光性を有する外囲器と,を備え,さらに,前記外囲器の内壁面には蛍光体が設けられ,前記半導体発光素子が放出する前記紫外線を吸収して,前記紫外線よりも長い波長を有する2次光を放出するようにしたことを特徴とする照明装置。」
1b)「【0029】図1は,本発明の第1の実施の形態に係る照明装置を表す概略図である。すなわち,同図(a)は,その全体斜視図であり,同図(b)は,その横断面図,同図(c)は,その配線基板の概略平面図である。
【0030】本実施形態による照明装置100は,配線基板110が外囲器120Aおよび外囲器120Bの内部に収容された構成を有する。外囲器120Aおよび120Bは,それぞれ,例えば樹脂により形成することができる。外囲器120Aは,透光性を有するカバーであり,外囲器120Bは,天井などに取り付けるためのベースとしての役割を有する。
【0031】配線基板110の主面上には,白色の発光を放出する半導体発光装置130,130,・・・が配置されている。この半導体発光装置130は,後に詳述するように,紫外線を発光する発光ダイオード(LED)と蛍光体とを備える。このような半導体発光装置130は,例えば,赤色,緑色および青色のそれぞれの波長領域に強度ピークをを有するような,いわゆる「3波長型」の白色発光特性を有することが望ましい。
【0032】図2は,本発明において用いて好適な半導体発光装置の構成を表す概略断面図である。すなわち,半導体発光装置130は,少なくとも半導体発光素子132と,蛍光体136とを備える。半導体発光素子132は,例えばリード・フレームなどの実装部材134の上にマウントされている。そして,半導体発光素子132の光取り出し経路上に蛍光体136が配置されている。半導体発光素子132は,例えば,樹脂138などにより封止するようにしても良い。
【0033】半導体発光素子132は,紫外線を放出し,蛍光体136は,その紫外線を吸収して波長変換し,所定の波長を有する可視光あるいは赤外線を外部に放出する。」
1c)「【0035】また,これらの蛍光体は,330nm付近の波長帯において吸収ピークを有する場合が多い。従って,これらの蛍光物質により効率的に波長変換を行うためには,半導体発光素子132が330nm付近の波長帯の紫外線を放出するようにすることが望ましい。このような特性を有する半導体発光素子132としては,ホウ素(B)を含んだGaNを発光層として用いたものを挙げることができ,この好適な構成については後に詳述する。
【0036】一方,このような蛍光体136は,半導体発光素子132から離れてその放出光の経路上に配置しても良く,半導体発光素子132の表面上に堆積しても良く,半導体発光素子132の内部に配置あるいは含有させても良い。」

(2)甲第2号証
請求人が甲第2号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平11-135274号公報には,図面とともに次の事項が記載されている。
2a)「【0009】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)図1はLED照明装置の構成を示し,(a)は一部切欠した平面図,(b)は一部切欠した側面図,(c)は(b)のA-A断面図,(d)は(b)の矢印B方向から見た図である。複数のLED11を基板12の一面側にこの基板12の面に対して略垂直方向に発光指向性を示すようにして縦横に整列して配置している。なお,この場合,各LED11の個々の配置を発光強度分布を考慮して行えば,より配光面の光強度分布品質を高めることができる。
【0010】前記基板12の他面側に前記各LED11の点灯回路13を配置している。そして,各LED11及び点灯回路13を配置した基板12をカバーである断面小判形状の透明な耐熱性のアクリル管14内に挿入し,前記基板12及びアクリル管14の一端を口金15内に固定している。前記口金15の外面には4本の口金ピン16を突出させて設けている。前記各LED11としては白色光を発光するLEDを使用している。なお,LEDとして,赤色,青色,黄色,緑色の発光を行うLEDを使用してもよい。」
2b)「【0012】また,ここでは指向性,配光面強度を重視しカバーとして透明な耐熱性のアクリル管14を使用したが必ずしもこれに限定するものではなく,ポリカーボネイトなど他の透明な耐熱性の高いプラスチック材,あるいはガラスでもよい。また,透明材ではなく,出射光輝度の均一,指向性の緩和,演色性の向上のために白色又はその他の色でもよく,透明材に各色の塗料,フィルタの使用も可能である。さらに,LEDとして紫外線発光型LEDを用いた場合には,カバーに蛍光体を塗布又はカバーの部材に蛍光体を混含させることにより紫外線を可視光に変換する構造でもよい。
【0013】図2は照明用インバータ安定器を備えた照明器具にこのLED照明装置を取付けた状態での全体の回路構成を示すブロック図で,照明器具は,商用電源21に整流回路22を介して平滑回路23を接続し,この平滑回路23にインバータ回路24を接続して構成している。そして,前記インバータかいろ24の出力端子にLED照明装置25を接続している。
【0014】前記インバータ回路24は,図3に示すように,前記平滑回路23の出力端子間に第1のインダクタ素子31とNPN形スイッチングトランジスタ32との直列回路を接続している。前記第1のインダクタ素子31に共振用コンデンサ33を並列に接続してLC並列共振回路を構成している。前記トランジスタ32にダイオード34を図示極性にして並列に接続している。そして,前記第1のインダクタ素子31の一端(トランジスタ32との非接続端)を第2のインダクタ素子35を介して前記LED照明装置25の口金ピン16の1つ16aに接続し,前記第1のインダクタ素子31の他端(トランジスタ32との接続端)をコンデンサ36を介して前記LED照明装置25の口金ピン16の他の1つ16bに接続している。前記LED照明装置25の口金ピン16の残りの2つ16c,16dの間にはコンデンサ37を接続している。
【0015】前記LED照明装置25の回路は,図4に示すように,4つの口金ピン16a?16dのうち,16aと16cを共通に接続し,16bと16dを共通に接続し,口金ピン16a,16cの接続点をダイオードブリッジ全波整流回路41の一方の入力端子に接続し,口金ピン16b,16dの接続点を前記全波整流回路41の他方の入力端子に接続している。前記全波整流回路41を構成する各ダイオードとして,例えば,逆回復時間が数十ns?数μsの高速整流用ダイオードを使用している。これにより,インバータ安定器に対してダイオードの発熱が抑えられ,その結果,商用電源のみでなく,インバータ回路24の出力の高周波電源に対してもダイオードの発熱が抑えられ照明装置の短命化を防止できる。なお,全波整流回路41に代えて半波整流回路を使用してもよい。
【0016】前記全波整流回路41の出力端子間に第3のインダクタ素子42を介して平滑回路を構成する平滑コンデンサ43を接続している。そして,前記平滑コンデンサ43にn個のLED11を直列に接続した発光ダイオードアレイをm個並列に接続した発光ダイオードアレイ群をLEDユニット44として接続している。」
2c)「【0018】従って,前記平滑コンデンサ43として,出力がVmin.以上で,Vmax.以下の電圧値を常に維持できる容量に設定すれば,LEDユニット44は常に正常点灯領域で動作することになり,発光にちらつきのない連続点灯ができる。」

上記各記載事項及び図面の記載によれば,甲第2号証には,次の発明(以下,「甲2発明」という)が記載されているといえる。
「商用電源21に整流回路22,平滑回路23及びインバータ回路24を介して接続されるLED照明装置であって,紫外線発光型の複数のLED11がLEDユニット44として配置された基板12がカバーとしての透明なアクリル管14内に挿入され,基板12とアクリル管14の一端が口金15内に固定され,口金15の外面にはインバータ回路24に接続するための口金ピン16が突出して設けられており,LEDユニット44への出力電圧が所定範囲内となるように容量が設定された平滑コンデンサ43を備え,カバーとしての透明なアクリル管14に蛍光体が塗布されて紫外線が可視光に変換されるようにしたLED照明装置。」

(3)甲第3号証
請求人が甲第3号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平7-282609号公報には,図面とともに次の事項が記載されている。
3a)「【請求項1】赤外線から紫外線までの間の特定波長のレーザ光を出力する半導体レーザ素子と,この半導体レーザ素子からのレーザ光を拡散するレンズと,この拡散レンズからの拡散レーザ光を可視光に変換する蛍光体を備えていることを特徴とする照明用光源装置。」
3b)「【0019】<蛍光体利用タイプ>図1(a)において,複数個の半導体レーザ素子1をヒートシンク(吸熱体)2に埋設あるいは取付け,各半導体レーザ素子1の前方に拡散レンズ3を配設し,アルゴンガス等を封入した真空ガラス管5の内壁面に蛍光体4を設ける。半導体レーザ素子1から出力されるレーザビーム光L0は拡散レンズ3で拡散し,この拡散光L1により蛍光体4の蛍光物質が励起され,可視光Lが得られる。
【0020】半導体レーザ素子1の構造は,後に詳述するが,概略して活性層(発光層)100,クラッド層101・102,基板103からなり(図5参照),発振波長が赤外領域から紫外線領域までの範囲の中から,蛍光体4による可視光変換に最適な波長の結晶構造を選択する。
【0021】半導体レーザ素子1の結晶構造には,表1に示すものが実用化されているが,室温で安定して連続発振し,比較的大出力の得られる0.7μm帯・0.8μm帯のAl_(x) Ga_(1-x) As,1μm帯のIn_(1-x) Ga_(x) As_(y) P_(1-y) ,0.6μm帯の(Al_(x )Ga_(1-x) )In0.5 P0.5 などを使用するのが好ましい。」
3c)「【0029】以上のような半導体レーザ素子1は,図3に示すように,ACまたはバッテリーDCの電源6と点灯回路7が接続される。点灯回路7には,電流制限抵抗R1,必要に応じて光度調整用抵抗R2を設ける。電源6がAC電源の場合には,整流ダイオードDを設けて半波整流し,あるいはトランスTで必要な電圧に降圧後,全波整流器D’で全波整流する。また,半導体レーザ素子1は複数個配設されるが,直列接続であると,一個が不点灯になると全てが不点灯になるので,並列に接続し,あるいは並列と直列を組み合わせて接続する。」
3d)「【0032】照明用光源装置自体の形態としては,電球型や蛍光灯型などとすることができる。図4(a)に示すのは,電球型であり,ソケット部10にヒートシンク2を取付け,このヒートシンク2に半導体レーザ素子1を複数個取付ける。ここで,半導体レーザ素子1は通常0.4mm角程度の大きさであり,普通の電球の大きさであれば,12個ほど装着することが可能である。」
3e)表1には,半導体レーザ素子1の結晶構造の具体例とその発振波長が記載されており,具体例の中に「発振波長〔μm〕」が「0.35?0.4(紫外?紫)」のものが示されている。
3f)図1(a)において,真空ガラス管5は,符号10で示される部材と一体的に設けられていることが看取できる。

図1(a)に符号10で示される部材は,図4(a)について「ソケット部10」として説明された部材(記載事項3d参照)と同等なものであることが明らかである。
以上を総合すると,甲第3号証には,次の発明(以下,「甲3発明」という)が記載されているといえる。
「赤外線から紫外線までの間の特定波長のレーザ光を出力する半導体レーザ素子1,半導体レーザ素子1からのレーザ光を拡散するレンズ3,拡散レンズ3からの拡散レーザ光を可視光に変換する蛍光体4を備えた照明用光源装置であって,半導体レーザ素子1はソケット部10に取り付けたヒートシンク2に複数個設けられ,蛍光体4はソケット部10に一体的に取り付けられた真空ガラス管5の内壁面に設けられ,半導体レーザ素子1にはAC電源6と点灯回路7が接続され,点灯回路7においてトランスで必要な電圧に降圧された後,全波整流されるようにした照明用光源装置。」

(4)甲第4号証
請求人が甲第4号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平10-190053号公報には,次の事項が記載されている。
4a)「【0064】特に,約365nmから400nm以下の紫外域に発光させる場合は,n型窒化ガリウムと,p型窒化ガリウムとの間に,ダブルへテロ構造とさせn型不純物濃度が5×10^(17)/cm^(3)未満の窒化インジウム・ガリウム(InαGa_(1)-αN)であって,膜厚が100オングストローム以上1000オングストローム以下,Inの値αは0より多く0.1以下とすることで高効率に発光することができる。なお,n型不純物とはSi,S,Ge,Seから選択される少なくとも一種である。膜厚として100オングストローム以上,1000オングストローム以下が好ましく,更に好ましくは,200オングストローム以上,800オングストローム以下,最も好ましくは250オングストローム以上,700オングストローム以下である。
【0065】同様に,n型窒化ガリウムと,p型窒化ガリウムとの間に,ダブルへテロ構造とさせn型不純物濃度が5×10^(17)/cm^(3)以上の窒化インジウム・ガリウム(InδGa_(1)-δN)であって,膜厚が100オングストローム以上,Inの値δは0より多く0.1以下とすることで約365nmから400nm以下の紫外域において高効率に発光することができる。なお,n型不純物とはSi,S,Ge,Seから選択される少なくとも一種である。膜厚として100オングストローム以上が好ましく,更に好ましくは,200オングストローム以上である。」

(5)甲第5号証
請求人が甲第5号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平10-84134号公報には,次の事項が記載されている。
5a)「【0028】活性層と第1のクラッド層の好ましい組み合わせは,第1のn型クラッド層をIn_(y) Ga_(1-y) N,活性層をIn_(x) Ga_(1-x) N,第1のp型クラッド層をIn_(z)Ga_(1-z) Nで形成するものである。但し,この組み合わせにおいて,バンドギャップエネルギーの関係からy<x,z<xを満たしていることはいうまでもない。活性層は,n型またはノンドープの方がバンド間発光による半値幅の狭い発光が得られるので好ましい。」

2.対比・判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「商用電源21」,「複数のLED11」,「蛍光体」は,それぞれ本件特許発明1の「電源」,「一連の発光ダイオード」,「燐光体皮膜」に相当し,甲2発明の「透明なアクリル管14」は,本件特許発明1の「ハウジング」及び「透明な密閉体」に相当する。
甲2発明は,複数のLED11がLEDユニット44として配置された基板12がアクリル管14内に挿入されるものであるから,本件特許発明1における「ハウジング内にマウントされ」る「一連の発光ダイオードと」との要件を備える。
甲2発明は,複数のLED11が紫外線発光型であり,透明なアクリル管14に塗布された蛍光体によって紫外線が可視光に変換されるようにしたものであるから,本件特許発明1における「電磁スペクトルの紫外領域に対して感応する燐光体の励起のための波長を出力するに十分な,一連の発光ダイオード」及び「透明な密閉体の」「表面領域上に設置された紫外励起燐光体の皮膜であって,前記燐光体皮膜がダイオードからの発光によって励起された場合,前記皮膜によってかつ透明な表面を介して裸眼に可視の光スペクトルが形成される」との要件を備える。
甲2発明は,複数のLED11からなるLEDユニット44への出力電圧が所定範囲内となるようにした平滑コンデンサ43を備えるものであるから,本件特許発明1における「複数の発光ダイオードによって使用されるための既知の電圧に電力を変換するための変換手段」との要件を備える。
甲2発明は,透明なアクリル管14に蛍光体が塗布されるものであるから,本件特許発明1における「表面領域を有する発光性の透明表面」との要件を備える。
甲2発明の商用電源21がアクリル管14内に伝送されることは明らかである。
したがって,本件特許発明1と甲2発明は,本件特許発明1の表記にしたがえば,
「ハウジングと,前記ハウジング内に伝送された電源と,前記ハウジング内にマウントされ,電磁スペクトルの紫外領域に対して感応する燐光体の励起のための波長を出力するに十分な,一連の発光ダイオードと,表面領域を有する発光性の透明表面と,前記透明な密閉体の表面領域上に設置された紫外励起燐光体の皮膜であって,前記燐光体皮膜が前記ダイオードからの発光によって励起された場合,前記皮膜によってかつ前記透明な表面を介して裸眼に可視の光スペクトルが形成されるものを含む,照明アッセンブリ。」
である点で一致し,以下の点で一応相違する。
[相違点]
本件特許発明1では,燐光体皮膜が透明な密閉体の内表面に設けられるのに対して,甲2発明では,蛍光体が透明なアクリル管14の表面に設けられる(塗布される)ものであるが,アクリル管14の内表面に設けられることは明らかでない点。
上記相違点について検討する。甲2発明において,蛍光体を透明なアクリル管14の表面に塗布するにあたって,アクリル管14の内側に塗布する形態と外側に塗布する形態とが考えられるところ,そのいずれの形態とするかは,当業者が適宜選択し得る事項に過ぎない。
したがって,本件特許発明1は,甲2発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

次に,本件特許発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明の「AC電源6」,「トランス」,「蛍光体4」,「真空ガラス管5」は,それぞれ本件特許発明1の「電源」,「変換手段」,「燐光体皮膜」,「透明な密閉体」に相当し,甲3発明の「ソケット部10」及び「真空ガラス管5」は,本件特許発明1の「ハウジング」に相当する。
甲3発明の「半導体レーザ素子1」と本件特許発明1の「発光ダイオード」は,前者が出力する光がレーザ光であるのに対して,後者が出力する光はレーザ光でない点を除けば,両者は同等なものといえる。そこで,この相違については後で検討することとし,便宜上,甲3発明の「半導体レーザ素子1」は本件特許発明1の「発光ダイオード」に相当するものとする。
甲3発明は,半導体レーザ素子1がソケット部10に取り付けたヒートシンク2に複数個設けられるものであるから,本件特許発明1における「ハウジング内にマウントされ」た「一連の発光ダイオード」との要件を備える。
甲3発明は,赤外線から紫外線までの間の特定波長のレーザ光を出力する半導体レーザ素子1からのレーザ光を可視光に変換する蛍光体4が真空ガラス管5の内壁面に設けられるものであるところ,該特定波長として紫外領域の波長を選択した場合,甲3発明は,本件特許発明1における「電磁スペクトルの紫外領域に対して感応する燐光体の励起のための波長を出力するに十分な,一連の発光ダイオード」,「内表面領域を有する発光性の透明表面」及び「透明な密閉体の内表面領域上に設置された紫外励起燐光体の皮膜であって,前記燐光体皮膜がダイオードからの発光によって励起された場合,前記皮膜によってかつ透明な表面を介して裸眼に可視の光スペクトルが形成される」との要件を備えることになる。
甲3発明は,半導体レーザ素子1に接続される点灯回路7においてトランスで必要な電圧に降圧させるものであるから,本件特許発明1における「複数の発光ダイオードによって使用されるための既知の電圧に電力を変換するための変換手段」との要件を備える。
甲3発明のAC電源6がソケット部10内に伝送されることは明らかである。
そうしてみると,本件特許発明1と甲3発明は,前者が発光ダイオードを用いるのに対して,後者が半導体レーザ素子を用いる点で相違し,その余の点では相違するところがない。
そこで,上記相違点について検討する。半導体レーザ素子が出力する光(レーザ光)は,発光ダイオードが出力する光に比べて,ピーク波長に集約された波長分布を有する点で優れたものといえるが,反面,コスト高となるものであり,照明装置において,半導体レーザ素子を用いるか,発光ダイオードを用いるかは,当業者が必要に応じて選択し得る事項である。甲3発明においても,半導体レーザ素子に代えて発光ダイオードを用いることは,当業者が容易に想到し得たというべきである。
したがって,本件特許発明1は,甲3発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(2)本件特許発明3について
本件特許発明3は,本件特許発明1の下位概念にあたり,本件特許発明1が備える要件の他に「各ダイオード出力は,蛍光水銀アークの2次紫外出力ピークの6nmよりも小さくない」との要件を備える。
しかし,甲第1号証の記載事項1c,甲第3号証の記載事項3eからも理解されるように,紫外線の波長が6nmよりは大きい領域にあることは技術常識である(甲第3号証には,甲3発明の半導体レーザ素子1の構造として用い得る結晶構造として,発振波長が0.35?0.4μm,すなわち350?400nmのものが示されている)。
したがって,本件特許発明3は,甲2発明または甲3発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

3.小括
以上のとおり,本件特許発明1及び本件特許発明3は,甲第2号証または甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4-2 記載要件(無効理由3について)
請求人は,請求項2に記載された発明については,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張するが,特許法第36条の規定について本件特許に適用されるのは,同条第4項に第2号の規定が追加された平成14年法ではなく,同条第4項に第1号としての規定がない平成6年法である。したがって,請求人が主張する「特許法第36条第4項第1号に規定する要件」は,請求人の錯誤によるものであって,正しくは,平成6年法に係る「特許法第36条第4項に規定する要件」と解される。
本件特許発明2では,「各ダイオードは1個のピーク強度波長と約8.6の半値全幅分散を有する」ことが特定されているが,「約8.6の半値全幅分散」とは,技術的にどのような意味をもつのか明らかではなく,本件明細書の発明の詳細な説明に当業者が理解できる程度に記載されているともいえない。同発明の詳細な説明に「本発明に組み込まれることが望ましいLEDは,Nichia America Corporationによって製造され,電磁スペクトルの紫外領域において発光する。好ましいInGaN ダイオードは,371nmの波長に強度ピークを有し,更に現在および従来の蛍光照明において見られる水銀アークの2次紫外出力ピークの1個の6nm以内の出力と共に約8.6nmの半値全幅分散を有する。このタイプのダイオードの寿命は約100,000時間を越えるものと信じられており,ガラスまたはその他の滑らかな表面の燐光体皮膜上に十分な発光を形成することが可能である。」(段落【0011】)とある記載を参照しても,「半値全幅分散」についてはその技術的意味が明らかでない。
したがって,発明の詳細な説明は,当業者が本件特許発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
以上のとおり,本件特許発明1及び本件特許発明3は,いずれも,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり,その特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
また,発明の詳細な説明は,当業者が本件特許発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから,その特許は,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。
そして,審判に関する費用については,特許法第162条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-01 
結審通知日 2011-03-03 
審決日 2011-03-15 
出願番号 特願平11-286603
審決分類 P 1 113・ 536- Z (F21V)
P 1 113・ 121- Z (F21V)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和泉 等  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 栗山 卓也
小関 峰夫
登録日 2009-09-04 
登録番号 特許第4368987号(P4368987)
発明の名称 発光ダイオードによって励起される燐光体蛍光アッセンブリ  
代理人 小山 輝晃  
代理人 鶴田 準一  
代理人 河合 章  
代理人 南山 知広  
代理人 青木 篤  
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