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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1240929
審判番号 不服2009-3581  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-18 
確定日 2011-07-26 
事件の表示 特願2003-529177「プローブカードを設計するための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月27日国際公開、WO03/25601、平成17年 2月10日国内公表、特表2005-504368〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成14年9月16日の国際出願(優先権主張 平成13年9月17日 米国(US))であり、平成16年3月10日に国内書面が提出されたものであって、平成20年5月26日付け拒絶理由通知に対して平成20年10月29日付けで手続補正書が提出されたが、平成20年11月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成21年2月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成21年3月23日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成22年5月28日付け審尋に対し、平成22年9月30日付けで回答書が提出されている。

第2 平成21年3月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成21年3月23日付けの補正を却下する。

[理由]

1.補正後の本願発明
当該手続補正(以下、「本件補正」という。)による補正後の特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりのものである。

【請求項1】
プローブカードを設計するための自動化システムであって、
ネットワークに結合され、ネットワークを介して見込み顧客からの設計要求を受信するように構成されたサーバと、
前記サーバで動作するアプリケーションであって、
ウェハ仕様およびプローブカード設計仕様を定義する情報の入力を可能にするため、見込み顧客が使用するグラフィカルインターフェースを前記ネットワークを介して提供する機能と、
前記情報を前記見込み顧客から前記ネットワークを介して受信する機能と、
前記情報から、少なくとも、前記ウェハ仕様に関連付けられたプローブカード設計案を記述するファイルを生成する機能と、
前記提案されたプローブカードの設計の承認可能性に関して、前記見込み顧客と前記ネットワークを介して通信する機能と、を提供するアプリケーションと、
を含み、
前記グラフィカルインターフェースは、前記見込み顧客が選択可能である、予め定義された複数のプローブカードテンプレートの集合に関する情報を含む、システム。
(以下、「本願補正後発明」とする。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「提案されるプローブカード設計を記述する前記情報から検証パッケージを生成する機能」を「前記情報から、少なくとも、前記ウェハ仕様に関連付けられたプローブカード設計案を記述するファイルを生成する機能」に訂正し、且つ、「グラフィカルインターフェース」について、「前記グラフィカルインターフェースは、前記見込み顧客が選択可能である、予め定義された複数のプローブカードテンプレートの集合に関する情報を含む」という記載を追加することによって、その内容を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第4号(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号)の明りょうでない記載の釈明、及び、特許法第17条の2第4項第2号(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号)の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.公知刊行物の記載

原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1(特開平7-152811号公報)には、対応する図面と共に、以下の内容が記載されている。
なお、下線は当審において付した。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はLSI設計支援システムに関し、特にゲートアレイなどLSIチップ外形、パッド座標などを始めに決めその後、チップ内部のレイアウトを行うことによって、個別の機能を実現する方式のLSIチップ(以下 内部回路が組み込まれる前の状態を「ASICチップ」と称す)を各種LSIパッケージに組み込む部分の設計、そのチップの回路レイアウト設計、チップ検査するための治具((以下プローブカードと称す)設計、そのチップを検査を行うためのテストパターン設計を行うLSI設計支援システムに関する。」

(イ)「【0014】本実施例のLSI設計支援システムは、図1に示すように、処理装置1は、インターフェース部22を介しキーボード3、マウス2、磁気記憶装置5、によりデータの入力、処理の指示を行う。またインターフェース部22を介し記憶部23のチップ、LSIパッケージ、ワイヤー、エラー等のデータをディスプレイ4に出力し、また処理結果を磁気記憶装置5、プリンター6、プロッター7に出力する。チップデータ入力手段11は、インターフェース部22を介し、チップ外形、パッド座標、パッドの電気属性条件など、ASICチップに関するデータを記憶部23に登録する。LSIパッケージデータ入力手段12は、インターフェース部22を介し、LSIパッケージデータの内部リード形状や、その内部リードに接続されている外部ピン番号などのLSIパッケージに関するデータを記憶部23に登録する。外部ピン電気属性指定手段13は、記憶部23に登録されているLSIパッケージの外部ピンの+電源、GND、信号などの電気属性を指定する。ピンコネ手段14は、記憶部23に登録されているASICチップのパッドとLSIパッケージの内部リード上のボンディング点を指定し、ワイヤボンダのワイヤーの張る位置を指示することによりLSIパッケージの外部ピンとパッドとの電気的接続を指定する。組立チェック手段15は、記憶部23に登録されているワイヤーの位置及びASICチップに関するデータとLSIパッケージに関するデータから、ASICチップとLSIパッケージをワイヤボンディングで組み立てる際、ワイヤー同士がショートしないか、あるいはワイヤーと電気的に独立している他の内部リードとショートしないかなどをチェックする。電気属性チェック手段16は、ピンコネ手段14によって指定された、パッドとLSIパッケージの外部ピンで外部ピンの属性の指定があった場合接続されているパッドがその電気属性になれるかチェックする。テスターピン指定手段17は、ピンコネされているパッドに対して、そのパッドに接続されている外部ピンの属性に合ったLSIテスターの端子や、電源の接続を自動的に指定する。またマニュアルで操作者が指定することもできる。ボンダーデータ編集手段18は、実際に記憶部23に登録されているASICチップとLSIパッケージを組み立てるワイヤーボンダの機種を指示し、その機種に合ったデータフォーマットに記憶部23に登録されている全ワイヤーの両端座標つまりパッド座標と内部リード上のボンディング点座標のデータ及び組立の図面を自動的に編集してインターフェース部22を介しデータを出力する。レイアウトデータ編集手段19は、記憶部23に登録されているASICチップ上に回路を組み込むCADシステムを指定し、そのシステムに合ったフォーマットに記憶部23に登録されているLSIパッケージの外部に接続されているパッド番号と外部ピンの電気属性データ及び図面を自動的に編集してインターフェース部22を介しデータを出力する。テストパターンデータ編集手段20は、記憶部23に登録されているASICチップ上に回路を組み込んだチップの機能検査を行うなめのテストパターンを作成するシステムを指定し、そのシステムに合ったフォーマットで記憶部23に登録されている外部ピンに接続されているパッド番号、そのパッドに接続指定されているLSIテスターの端子番号データ及び図面を自動的に編集してインタフェース部22を介しデータを出力する。プローブカード設計データ編集手段21は、記憶部23に登録されている外部ピンに接続されているパッドのパッド座標、そのパッドに指定されたテスター電源、LSIテスター端子のデータより、プローブカードを製造するためのデータ及び図面を自動的に編集してインタフェース部22を介しデータを出力する。
【0015】図2は、本実施例のLSI設計支援システムにおいて出力されるデータを説明する図である。外部ピン番号50、内部リード上ボンディング点座標51、外部ピン属性52、パッド番号53、パッド座標54、パッド属性条件55、テスター電源56、テスター端子番号57は図1の記憶部23に登録されている。外部ピン番号50は、LSIパッケージの外部ピン番号を表す。内部リード上ボンディング点座標51は、左記の外部ピン番号に接続されている内部リード上にボンディングされているワイヤーのボンディング点座標を表す。外部ピン属性52は、左記の外部ピンの電気属性を表す。パッド番号53は左記の外部ピンにワイヤーを介し電気的に接続されているチップのパッド番号を表す。パッド属性条件55は、左記のパッドの電気属性条件を表す。テスター電源56は、左記のパッドに接続させる電源を表す。テスター端子番号57は、左記のパッドに接続するLSIテスター端子を表す。ボンダデータ60は、チップとLSIパッケージを実際に組み立てるワイヤーボンダー用のデータで、内部リード上ボンディング点座標51とパッド座標54から生成される。レイアウトデータ61は、ASICチップ上に回路を設計するCADシステムに与えるデータで、外部ピン番号50、外部ピン属性52、パッド番号53から生成される。プローブカードデータ62は、プローブカードの仕様データであり、パッド座標54、テスター電源56、テスター端子番号57より生成される。テストパターンデータ63は、チップの機能検査をプローブカードによって行う際、検査パターンをどのLSIテスターの端子から出力させるか指示するためのデータで、外部ピン番号50、パッド番号53、テスター端子番号57によって生成される。」

(ウ)「【0018】次に主に図1を、補助的に図2、図3、図4を用いて動作を説明する。操作者は、インタフェース部22を介し、記憶部23内のデータや、エラーなどをディスプレイ4を介しグラフィカルに参照でき、以下の動作を対話的に行っていく。チップデータ入力手段11により記憶部23に設計対象のASICチップのパッド座標54、パッド属性条件55などを入力し、そのASICチップを組み込みたいLSIパッケージの形状データなどをLSIパッケージデータ入力手段12によって記憶部23に登録する。登録されたLSIパッケージの外部ピン34に対して外部ピン電気属性指定手段13によりGNDにしたい外部ピン34などを指定する。またピンコネ手段14により記憶部23に登録したパッド30とLSIパッケージの内部リード上ボンディング点35を指定しパッドとLSIパッケージの外部ピン34との電気的に接続している。組立チェック手段15は、記憶部23に登録さているパッド30と内部リード上ボンディング点35を結ぶワイヤー32が他の内部リード33とショートしていないか、あるいは製造誤差より離れているかなど、実際にワイヤーボンダによって組立可能か常にチェックを行いエラーがあった場合は、すぐに操作者にインターフェース部22を介し知らせる。また電気属性チェック手段16によって記憶部23に登録されているパッド30とLSIパッケージの外部ピン34との電気的接続のパッド30が接続されているLSIパッケージの外部ピン34の電気属性になれるパッド30か、つまりGNDの電気属性を持つ外部ピン34と接続されているパッド30がGNDになれる電気属性条件をもっているかチェックし、エラーがある場合は、インタフェース部22を介し操作者に知らせる。この組立チェック手段15と電気属性チェック手段16でチェックしながら、ピンコネ手段14を繰り返し用い、図2の様に組立可能かつパッド30が接続する外部ピン34の電気属性になれるパッド30とLSIパッケージの外部ピン34との接続関係を決める。また決まった接続関係は記憶部23に登録される。 ここまでで完成しているデータからボンダデータ編集手段18に、このチップ31とLSIパッケージとを組み立てる具体的なワイヤボンダの機種を指示し、その機種にあったフォーマットのワイヤボンダ用データを自動的に編集し、インタフェース部22を介し出力する。このデータによってワイヤボンダーは、ワイヤー32を張る座標値を知ることができる。」

(エ)「【0021】ここまで記憶部23に完成しているデータ、外部ピン34に接続されているパッド30のパッド座標54と、そのパッド30に接続されているテスター電源56、テスター端子番号57をプローブカード設計データ編集手段21を用い、設計データと図面を自動的に編集し、インタフェース部22を介し出力する。このデータにより各パッド座標にプローブカードの針を立てその針を各電源もしくは、LSIテスター端子に接続するプローブカードの製造が行える。」

これら(ア)?(エ)の記載及び図面の内容を総合すると、引用刊行物1には、次の(オ)なる発明が記載されていると認められる。
以下、これを「引用発明」と記す。

[引用発明]
(オ)プローブカード設計を行うLSI設計支援システムであって、
処理装置は、キーボード、マウス、磁気記憶装置、によりデータの入力、処理の指示を行い、記憶部のチップ、LSIパッケージ、ワイヤー、エラー等のデータをディスプレイに出力し、処理結果を磁気記憶装置、プリンター、プロッターに出力すると共に、プローブカード設計データ編集手段を備え、
プローブカードデータは、プローブカードの仕様データであり、パッド座標、テスター電源、テスター端子番号より生成され、
操作者は、インターフェース部を介し、記憶部内のデータをディスプレイを介しグラフィカルに参照でき、
プローブカードを製造するためのデータ及び図面を自動的に編集してインターフェース部を介してデータを出力する、LSI設計支援システム。

3.対比

本願補正後発明と当該引用発明(オ)とを対比する。

引用発明における「プローブカード設計を行うLSI設計支援システム」は、プローブカードの設計データと図面を自動的に編集・出力するものであるから本願補正後発明の「プローブカードを設計するための自動化システム」に相当する。

引用発明の「処理装置」は、「キーボード、マウス、磁気記憶装置、によりデータの入力、処理の指示を行い、記憶部のチップ、LSIパッケージ、ワイヤー、エラー等のデータをディスプレイに出力し、処理結果を磁気記憶装置、プリンター、プロッターに出力すると共に、プローブカード設計データ編集手段を備え」るものであって、操作者が指示したデータを入力して、当該データを受信するものであることから、本願補正後発明の「設計者の設計要求を受信するように構成された」ものであると言える。
また、当該「処理装置」は、「プローブカード設計データ編集手段」を備え、プローブカード設計データの入出力を行うものであることから、本願補正後発明に言う「アプリケーション」に対応する機能を備えるものであると言える。

引用発明の「プローブカードデータは、プローブカードの仕様データであり、パッド座標、テスター電源、テスター端子番号より生成され」について、「プローブカードの仕様データ」が本願補正後発明の「プローブカード設計仕様を定義する情報」に相当することは明らかである。
そして、引用発明の「操作者は、インターフェース部を介し、記憶部内のデータをディスプレイを介しグラフィカルに参照でき」について、引用発明の「処理装置」が「グラフィカルインターフェース」を備え、当該「グラフィカルインターフェース」を操作者に対して提供するものであることから、本願補正後発明と引用発明とは「操作者が使用するグラフィカルインターフェースを提供する機能」を備えている点で共通している。

また、先に述べたように、引用発明の「処理装置」は、「キーボード、マウス、磁気記憶装置、によりデータの入力、処理の指示を行」うもの、即ち、操作者が指示したデータをキーボードやマウスから信号として受信するものであるので、本願補正後発明と「前記情報を前記操作者から受信する機能」を備えるものである点で共通している。

更に、引用発明の「プローブカードを製造するためのデータ及び図面を自動的に編集してインターフェース部を介してデータを出力する」について、当該「プローブカードを製造するためのデータと図面」は、プローブカード仕様を元に編集されるものであって、当該「プローブカードを製造するためのデータ」が「処理装置」内ではデータファイルとして処理されていることが自明であるので、引用発明は、本願補正後発明の「前記情報から、少なくとも、プローブカード設計案を記述するファイルを生成する機能」を備えていると言える。

したがって、引用発明における構成要素を本願補正後発明において用いられている用語に置き換えれば、本願補正後発明と引用発明は以下の点で一致、あるいは相違する。

[一致点]
(カ)プローブカードを設計するための自動化システムであって、
操作者からの設計要求を受信するように構成された処理装置と、
前記処理装置で動作するアプリケーションであって、
プローブカード設計仕様を定義する情報の入力を可能にするため、操作者が使用するグラフィカルインターフェースを提供する機能と、
前記情報を前記操作者から受信する機能と、
前記情報から、少なくとも、プローブカード設計案を記述するファイルを生成する機能と、を提供するアプリケーションと、を含む、システム。

[相違点]
(キ)本願補正後発明がプローブカードの設計動作を「ネットワークに結合され」たサーバを用いて行い、当該「サーバ」が「見込み顧客」との間で、「グラフィカルインターフェース」の提供、「ウェハ仕様およびプローブカード設計仕様を定義する情報」の受信、「提案されたプローブカードの設計の承認可能性」の通信を行っているのに対し、引用発明は「処理装置」が「操作者」との間で各種データのやりとりを行っている点。

(ク)プローブカードを設計するために入力する情報について、本願補正後発明は、「ウェハ仕様およびプローブカード設計仕様を定義する情報」を入力して、「前記ウェハ仕様に関連付けられたプローブカード設計案を記述するファイルを生成する」ものであるのに対し、引用発明は「プローブカードの仕様データ」を入力して、「プローブカードを製造するためのデータと図面」を出力するものであって、「ウェハ仕様」に関する情報について言及がない点。

(ケ)操作者が使用するグラフィカルインターフェースについて、本願補正後発明は、「前記見込み顧客が選択可能である、予め定義された複数のプローブカードテンプレートの集合に関する情報を含む」のに対し、引用発明はそのような構成に言及がない点。

4.相違点の判断

相違点(キ)について検討する。

一般に、所定の設計サービスの提供を行うシステムの技術分野において、ネットワークに結合されたサーバを用いて、当該サーバが、購入注文を行う前段階のユーザ、いわゆる見込み顧客が有するコンピュータとの間で、設計に必要なグラフィカルインターフェースを提供し、当該ユーザが入力する設計に必要なデータ、当該データを用いて作成された設計データ及び当該設計データの承認に関するデータを送受信することは周知慣用された技術(原査定の拒絶理由に引用された刊行物2(特開平10-97558号公報)にもそのような技術が記載されている。)であって、当該技術は設計の対象となる物品やサービスの種別にかかわらず、汎用的に適用可能な技術であることは当業者に広く知られた知見である。
してみれば、引用発明のプローブカードの設計システムに上記周知慣用された技術を適用することに格別の困難は認められず、また、この適用を阻害する要因も存在しないことから、引用発明に上記周知慣用された技術を適用して、本願補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

相違点(ク)について検討する。

半導体関連装置の設計の技術分野において、当該半導体関連装置の仕様に関する情報に加えて、ウェハの寸法等のウェハの仕様に関する情報を入力して半導体関連装置を設計することは、通常行われている程度の事項にすぎず、引用発明において、「プローブカードの仕様データ」に加えて「ウェハ仕様」に関する情報も入力して、「プローブカードを製造するためのデータと図面」を「プローブカードの仕様データ」のみならず、当該「ウェハ仕様」に関連付けられたものとすることは、当業者が格別の創作力なくしてなし得る程度の事項にすぎない。

相違点(ケ)について検討する。

グラフィカルインターフェースを有する設計装置の技術分野において、複数のテンプレートを用いて設計データの入力を行うことは周知慣用された技術にすぎない。
平成22年5月28日付け審尋において、本願出願前周知の技術事項を示す文献として例示した刊行物である特開平2-284264号公報にも、そのような技術が記載されている。

してみれば、引用発明において、グラフィカルインターフェースが「複数のテンプレートの集合に関する情報を含む」ようにして、本願補正後発明の構成とすることは、当業者にとって想到困難な事項ではない。

そして、これら相違点(キ)、(ク)、(ケ)を総合的に判断してみても、本願補正後発明が格別顕著な構成であり、格別顕著な効果を奏するものであるということはできないから、本願補正後発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができたものではない。

5.補正却下の[理由]についてのむすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成21年3月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成20年10月29日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項24までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。

【請求項1】
プローブカードを設計するための自動化システムであって、
ネットワークに結合され、ネットワークを介して見込み顧客からの設計要求を受信するように構成されたサーバと、
前記サーバで動作するアプリケーションであって、
ウェハ仕様およびプローブカード設計仕様を定義する情報の入力を可能にするため、見込み顧客が使用するグラフィカルインターフェースを前記ネットワークを介して提供する機能と、
前記情報を前記見込み顧客から前記ネットワークを介して受信する機能と、
提案されるプローブカード設計を記述する前記情報から検証パッケージを生成する機能と、
前記提案されたプローブカードの設計の承認可能性に関して、前記見込み顧客と前記ネットワークを介して通信する機能と、を提供するアプリケーションと、を含むシステム

2.引用刊行物に記載の発明

原査定の拒絶理由に引用された刊行物1および、その記載事項は、前記「第2における[理由]の2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願請求項1に係る発明は、前記「第2における[理由]の1.」で検討した本願補正後発明における「前記情報から、少なくとも、前記ウェハ仕様に関連付けられたプローブカード設計案を記述するファイルを生成する機能」を「提案されるプローブカード設計を記述する前記情報から検証パッケージを生成する機能」と実質的には構成要件の変更を伴わないものに改めると共に、「グラフィカルインターフェース」に関し、「前記グラフィカルインターフェースは、前記見込み顧客が選択可能である、予め定義された複数のプローブカードテンプレートの集合に関する情報を含む」という限定事項を省いたものである。
そうすると、本願請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正後発明が、前記「第2における[理由]の4.」に記載したとおり、引用刊行物1に記載された発明及び周知慣用された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用刊行物1に記載された発明及び周知慣用された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知慣用された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 まとめ

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知慣用された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたことにより、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
したがって、原査定を取り消す。本願は特許すべきものであるとの審決を求める、という本願審判請求の趣旨は認められない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-28 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-16 
出願番号 特願2003-529177(P2003-529177)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 学  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 吉村 博之
溝本 安展
発明の名称 プローブカードを設計するための方法およびシステム  
代理人 田中 克郎  
代理人 稲葉 良幸  

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