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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01D
管理番号 1240941
審判番号 不服2010-15212  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-07 
確定日 2011-07-25 
事件の表示 特願2005-309665「コンバインによる収穫方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月17日出願公開、特開2007-116914〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年10月25日の出願であって、平成22年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成22年12月1日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成23年1月31日付けで回答書が提出された。

2.平成22年7月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年7月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容、補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりに補正しようとする補正事項を含むものである。
「自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結し、前記刈取り前処理部の分草杆の下部に橇体を設けるとともに、作動油が供給されることによって前記刈取り前処理部を上昇操作し作動油が排出されることによって前記刈取り前処理部を下降操作する単動形の油圧シリンダを設けたコンバインによる収穫方法であって、
前記油圧シリンダを作動油の供給及び排出が停止された停止状態に操作することによって、前記油圧シリンダを、前記刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持し、且つ、前記刈取り前処理部が前記橇体の接地平面部によって接地して受けた地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容する下降ストッパー手段として機能させながら収穫走行するコンバインによる収穫方法。」

上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明における「刈取り前処理部」を「分草杆の下部に橇体」を設けたものに限定し、「地面からの接地反力」を「橇体の接地平面部によって」受けるものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。

(2)刊行物及びその記載内容
刊行物1:特開2005-34052号公報

本願出願前に頒布された上記刊行物1には、図面とともに、次のことが記載されている(下線は当審付与。)。
(1a)「【0001】 本発明は、引起こし装置、刈取り装置、刈取り穀稈搬送装置、を備えた刈取り部を、走行機体の前部に昇降可能に連結したコンバインの刈取り部昇降構造に関する。」、
(1b)「【0007】特に軟弱でない圃場での収穫行程では、操作レバーを下降操作するとともに、レバー復帰阻止手段を作動させて操作レバーが「下降」位置から「中立」位置に復帰移動しないようにする。この状態では刈取り部は自由昇降状態にあるので、刈取り部が圃場に接地追従することになり、走行機体が前後揺動(ピッチング)したり圃場が起伏していても、刈取り部は圃場面に沿って自由に昇降し、略一定した刈り高さでの収穫作業を行うことができる。」、
(1c)「【0009】なお、刈取り部の接地追従ができないくらい軟弱な圃場では、刈取り部を任意の刈取り高さ位置まで下降して固定して収穫作業を行うことになる。」、
(1d)「【0015】図1に、自脱型のコンバインの全体側面が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ型走行装置1で走行する走行機体2の前部に、刈取り部3が後部上方の支点Pを中心にして揺動昇降可能に連結される…」、
(1e)「【0017】図8および図9に示すように、前記刈取り部主フレーム12はパイプ材からなり、その基端部が走行機体2の前部に立設された支持台13に前記支点Pを中心に上下揺動自在…に支持されている。…」、
(1f)「【0021】図3に示すように、デバイダ支持杆23は、フレーム杆21に内嵌する径の丸パイプ材からなり、つぶし加工した前端扁平部23aにデバイダ24が高さ調節および角度調節可能に装着されている。また、デバイダ支持杆23の下部には鋼板製の接地体25の前端が溶接固定されるとともに、デバイダ支持杆23と接地体25の前後中間部位同士をつなぐ連結金具26が起立され、この連結金具26をフレーム杆21の前端に備えた連結金具27に接合してボルト締め連結することで、デバイダ支持杆23をフレーム杆21に所定姿勢で固定するよう構成されている。」、
(1g)「【0023】図13に、刈取り部昇降用の前記油圧シリンダ14における操作用油圧回路が示されている。油圧シリンダ14は単動型が使用されており、運転部4に配備された操作レバー30によって切換え操作される3位置切換え型の制御弁31にスローリターンバルブ32を介して接続されている。制御弁31は、油圧シリンダ14からの排油を阻止して刈取り部3を任意の高さ位置に固定できる「中立」位置、油圧シリンダ14に圧油を供給して刈取り部3を上昇駆動する「上昇」位置、および、油圧シリンダ14からの排油を許容して刈取り部3を自重下降させる「下降」位置に切換え可能となっている。
【0024】図11に示すように、操作レバー30は支点b周りに前後揺動可能に支点ブラケト33に支持されており、制御弁31の前記切換え位置に対応して、「中立」、「上昇」、および、「下降」の各操作位置に切換え操作可能に構成されるとともに、レバー支点bに装備したねじりバネ34によって「中立」に復帰付勢されている。・・・
【0025】また、操作レバー30の前記「下降」位置のさらに前方には前記制御弁31を引き続き「下降」状態に切換え維持する「接地刈取り」位置が設定されており、この操作位置で操作レバー30を係止保持するレバーロック機構37が配備されている。」、
(1h)「【0027】操作レバー30が「接地刈取り」位置に保持された状態は昇降自由状態にあるので、刈取り部3は機械的な下限まで自重下降可能であるが、上記したように、刈取り部3には接地体25が備えられているとともに、油圧シリンダ14には荷重軽減用の圧縮コイルバネ19が装備されているので、刈取り部3は自重およびバネ付勢力とバランスした接地圧で接地体25が接地するまで下降し、以後、圃場面の起伏に接地追従して刈取り部3は昇降する。これによって特別な昇降制御を行うことなく刈取り部3の対地高さが略一定に維持され、安定した刈り高さでの刈取り収穫を行うことができる。また、圃場の隆起部へのデバイダ24の突っ込み防止機能も発揮される。」。

上記記載及び図面の記載によれは、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「走行機体2の前部に刈取り部3を昇降自在に連結し、前記刈取り部3のデバイダ支持杆23の下部に接地体25を設けるとともに、圧油が供給されることによって前記刈取り部3を上昇操作し圧油が排出されることによって前記刈取り部3を下降操作する単動型の油圧シリンダ14を設けたコンバインによる収穫方法であって、
軟弱でない圃場では、前記油圧シリンダ14を接地刈取り位置に操作することによって、前記刈取り部3を昇降自由状態に支持し、且つ、前記刈取り部3が前記接地体25の接地平面部によって接地して受けた地面からの接地反力によって上昇することを許容しながら、収穫走行し、
軟弱な圃場では、刈取り部3を任意の刈取り高さ位置まで下降して固定し、収穫走行する
コンバインによる収穫方法。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

(3)対比・判断
そこで、本願補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、上記刊行物1記載の発明の「走行機体2」は本願補正発明の「自走機体」に相当し、以下、同様に、「刈取り部3」は「刈取り前処理部」に、「デバイダ支持杆23」は「分草杆」に、「接地体25」は「橇体」に、「圧油」は「作動油」に、「単動型」は「単動形」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、「自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結し、前記刈取り前処理部の分草杆の下部に橇体を設けるとともに、作動油が供給されることによって前記刈取り前処理部を上昇操作し作動油が排出されることによって前記刈取り前処理部を下降操作する単動形の油圧シリンダを設けたコンバインによる収穫方法」である点で一致し、次の点で、一応相違する。
(相違点)
本願補正発明では、油圧シリンダを作動油の供給及び排出が停止された停止状態に操作することによって、前記油圧シリンダを、刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持し、且つ、刈取り前処理部が橇体の接地平面部によって接地して受けた地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容する下降ストッパー手段として機能させながら収穫走行するのに対し、
刊行物1記載の発明では、軟弱でない圃場では、油圧シリンダを接地刈取り位置に操作することによって、前記油圧シリンダを、刈取り前処理部の昇降自由状態に支持し、且つ、前記刈取り前処理部が前記橇体によって接地して受けた地面からの接地反力によって上昇することを許容しながら、収穫走行し、
軟弱な圃場では、刈取り前処理部を任意の刈取り高さ位置まで下降して固定し、収穫走行する点。

上記相違点について検討する。
本願補正発明において、油圧シリンダを作動油の供給及び排出が停止された停止状態に操作するのは、圃場が軟弱の場合に、刈り取り部が泥土に沈み込みやすくなることを防止するためである。
一方、刊行物1記載の発明において、軟弱な圃場では「刈取り前処理部を任意の刈取り高さ位置まで下降して固定」するとは、操作弁31を中立位置にすることであり、本願補正発明における「油圧シリンダを作動油の供給及び排出が停止された停止状態に操作することによって、前記油圧シリンダを、刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する」ことにほかならない。
一方、本願明細書には「油圧シリンダを、刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持し、且つ、刈取り前処理部が前記橇体の接地平面部によって接地して受けた地面からの接地反力によって連結高さから上昇することを許容する下降ストッパー手段として機能させ」るための手段として、油圧シリンダを「単動形シリンダ」としたことが記載されている。
刊行物1記載の発明の油圧シリンダは、本願補正発明と同様に「単動形シリンダ」であり、請求人も平成21年12月21日付けの意見書添付の参考資料などから認めているように、ピストンに伸長側方向の力が作用したときに,圧力が下がることでピストンの移動が許容される、すなわち、橇体の接地平面部が接地反力によって上昇し、シリンダの伸長を許容する機能を有すると認められる。
すなわち、刊行物1記載の発明も、軟弱な圃場では、本願補正発明と同様に「刈取り前処理部が橇体の接地平面部によって接地して受けた地面からの接地反力によって連結高さから上昇することを許容する下降ストッパー手段として機能させながら収穫走行する」ものと認められ、上記相違点は実質的な差異ではない。

よって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明と認められるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、請求人は、回答書において、刊行物1記載の発明について、「刈取り部〔3〕の接地追従ができないくらい軟弱な圃場、すなわち、地面からの接地反力を受けないことが明らかな圃場で刈取り部〔3〕を任意の刈取り高さ位置まで下降して収穫作業を行うものに過ぎず、地面からの接地反力を受ける状況で油圧シリンダ〔14〕を下降ストッパー手段として機能させながら収穫走行するものでない」旨、主張している。
しかしながら、圃場の状態は、必ずしも平坦ではなく、軟弱な圃場であるからといって、橇体の接地平面部が地面からの接地反力を全く受けないとはいえない。
そもそも、本願補正発明は、「刈取り前処理部が橇体の接地平面部によって接地して受けた地面からの接地反力によって連結高さから上昇することを許容する」というものであり、通常は、刊行物1記載の発明と同様に、刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上させて収穫走行するものであり、橇体の接地平面部が地面からの接地反力を受けた場合に、刈取り前処理部が上昇することを許容するとしているにすぎず、「収穫方法」として差異があるとはいえない。

(4)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成22年7月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年12月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結するとともに、作動油が供給されることによって前記刈取り前処理部を上昇操作し作動油が排出されることによって前記刈取り前処理部を下降操作する単動形の油圧シリンダを設けたコンバインによる収穫方法であって、
前記油圧シリンダを作動油の供給及び排出が停止された停止状態に操作することによって、前記油圧シリンダを、前記刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持し、且つ、前記刈取り前処理部が地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容する下降ストッパー手段として機能させながら収穫走行するコンバインによる収穫方法。」

(2)刊行物及びその記載内容
刊行物2:特開2005-34051号公報

これに対して、原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記刊行物2には、図面とともに、次のことが記載されている。
(2a)「【0001】本発明は、引起こし装置、刈取り装置、刈取り穀稈搬送装置を備えた刈取り部を、走行機体の前部に昇降可能に連結した自脱型のコンバインの刈取り部支持構造に関する。」、
(2b)「【0019】図1に、自脱型のコンバインの全体側面が示されている。このコンバインは、…走行機体2の前部に、刈取り部3が後部上方の支点Pを中心にして揺動昇降可能に連結される…」、
(2c)「【0021】図8および図9に示すように、前記刈取り部主フレーム12はパイプ材からなり、その基端部が走行機体2の前部に立設された支持台13に前記支点Pを中心に上下揺動自在…に支持されている。前記支持台13には油圧シリンダ14によって横向き支点a回りに揺動操作されるアーチ形の支持アーム15が装着されており、この支持アーム15の遊端部に前記刈取り部主フレーム12が受け止め支持されている。」、
(2d)「【0026】図3に示すように、デバイダ支持杆23は、フレーム杆21に内嵌する径の丸パイプ材からなり、つぶし加工した前端扁平部23aにデバイダ24が高さ調節および角度調節可能に装着されている。また、デバイダ支持杆23の下部には鋼板製の接地体25の前端が溶接固定されるとともに、デバイダ支持杆23と接地体25の前後中間部位同士をつなぐ連結金具26が起立され、この連結金具26をフレーム杆21の前端に備えた連結金具27に接合してボルト締め連結することで、デバイダ支持杆23をフレーム杆21に所定姿勢で固定するよう構成されている。」、
(2e)「【0028】図13に、刈取り部昇降用の前記油圧シリンダ14における操作用油圧回路が示されている。油圧シリンダ14は単動型が使用されており、運転部4に配備された操作レバー30によって切換え操作される3位置切換え型の制御弁31にスローリターンバルブ32を介して接続されている。制御弁31は、油圧シリンダ14からの排油を阻止して刈取り部3を任意の高さ位置に固定できる「中立」位置、油圧シリンダ14に圧油を供給して刈取り部3を上昇駆動する「上昇」位置、および、油圧シリンダ14からの排油を許容して刈取り部3を自重下降させる「下降」位置に切換え可能となっている。
【0029】図11に示すように、操作レバー30は支点b周りに前後揺動可能に支点ブラケト33に支持されており、制御弁31の前記切換え位置に対応して、「中立」、「上昇」、および、「下降」の各操作位置に切換え操作可能に構成されるとともに、レバー支点bに装備したねじりバネ34によって「中立」に復帰付勢されている。このねじりバネ34は、その前後の遊端34a,34bで、支点ブラケト33に設けた固定ピン35と、操作レバー30に設けた作動ピン36を前後から挟持して操作レバー30を「中立」に保持しており、操作レバー30を「中立」から「上昇」あるいは「下降」に操作することで、ねじりバネ34の前後の遊端34a,34bの一方が固定ピン35で支持された固定端として機能するとともに、他方が作動ピン36で押圧移動される可動端として機能し、単一のバネで前後いずれの方向へも中立復帰付勢力をもたらすものである。
【0030】また、操作レバー30の前記「下降」位置のさらに前方には前記制御弁31を引き続き「下降」状態に切換え維持する「接地刈取り」位置が設定されており、この操作位置で操作レバー30を係止保持するレバーロック機構37が配備されている。」、
(2f)「【0032】操作レバー30が「接地刈取り」位置に保持された状態は昇降自由状態にあるので、刈取り部3は機械的な下限まで自重下降可能であるが、上記したように、刈取り部3には接地体25が備えられているとともに、油圧シリンダ14には荷重軽減用の圧縮コイルバネ19が装備されているので、刈取り部3は自重およびバネ付勢力とバランスした接地圧で接地体25が接地するまで下降し、以後、圃場面の起伏に接地追従して刈取り部3は昇降する。これによって特別な昇降制御を行うことなく刈取り部3の対地高さが略一定に維持され、安定した刈り高さでの刈取り収穫を行うことができる。また、圃場の隆起部へのデバイダ24の突っ込み防止機能も発揮される。」。

上記記載及び図面の記載によれば、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「走行機体1の前部に刈取り部3を昇降自在に連結し、前記刈取り部3のデバイダ支持杆23の下部に接地体25を設けるとともに、圧油が供給されることによって前記刈取り部3を上昇操作し圧油が排出されることによって前記刈取り部3を下降操作する単動型の油圧シリンダ14を設けたコンバインによる収穫方法であって、
軟前記油圧シリンダ14を接地刈取り位置に操作することによって、前記刈取り部3を昇降自由状態に支持し、刈取り部3が、圃場面の起伏に接地追従して昇降することを許容しながら、収穫走行するコンバインによる収穫方法。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)

(3)対比・判断
本願発明と上記刊行物2記載の発明とを対比すると、刊行物2記載の発明の「走行機体2」は本願発明の「自走機体」に相当し、以下、同様に、「刈取り部3」は「刈取り前処理部」に、「デバイダ支持杆23」は「分草杆」に、「接地体25」は「橇体」に、「圧油」は「作動油」に、「単動型」は「単動形」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結するとともに、作動油が供給されることによって前記刈取り前処理部を上昇操作し作動油が排出されることによって前記刈取り前処理部を下降操作する単動形の油圧シリンダを設けたコンバインによる収穫方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
本願発明が、「油圧シリンダを作動油の供給及び排出が停止された停止状態に操作することによって、前記油圧シリンダを、刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持し、且つ、前記刈取り前処理部が地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容する下降ストッパー手段として機能させながら収穫走行する」のに対し、
刊行物2記載の発明は、「油圧シリンダ14を接地刈取り位置に操作することによって、刈取り部3を昇降自由状態に支持し、且つ、前記刈取り部3が接地体25の接地平面部によって接地して受けた地面からの接地反力によって上昇することを許容しながら、収穫走行」する点。

上記相違点について検討する。
コンバインの収穫作業において、圃場の条件に応じて、刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した高さに支持すること、そのために、油圧シリンダの操作弁を、作動油の供給及び排出が停止された停止状態となる位置に設定することは、例えば、原査定の拒絶査定で提示した、実公昭61-12176号公報(1欄21行?2欄8行、5欄29?38行)及び実願昭62-93018号(実開昭63-201411号)のマイクロフィルム(明細書2頁4行?3頁4行)の他、上記刊行物1にも記載されているように周知である。
そうすると、刊行物2記載の発明において、圃場の条件に応じて、周知技術を適用し、油圧シリンダを作動油の供給及び排出が停止された停止状態に設定することは、当業者が容易に想到しうることである。
そして、刊行物2記載の発明の油圧シリンダは単動形であるから、刊行物2記載の発明に周知技術を適用し、油圧シリンダを作動油の供給及び排出が停止された停止状態となる位置に設定した場合、前記2.(3)で述べたように、刈取り前処理部が連結高さから上昇することを許容しつつ、下降ストッパー手段として機能するものと認められる。

本願発明の作用効果について検討すると、圃場が軟弱であっても、刈取り前処理部を泥土に沈み込みにくいように浮上支持させながら収穫走行することができる、との効果は周知技術から予測できることであり、作動油の供給及び排出が停止された停止状態であっても、刈取り前処理部が連結高さから上昇することをある程度許容できることで、刈り高さが低くなり過ぎることを回避するとの効果は、単動形の油圧シリンダを有する刊行物2記載の発明から予測できることである。
したがって、本願発明は、刊行物2記載の発明に上記周知技術を適用して当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物2記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-20 
結審通知日 2011-05-26 
審決日 2011-06-09 
出願番号 特願2005-309665(P2005-309665)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A01D)
P 1 8・ 575- Z (A01D)
P 1 8・ 121- Z (A01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 郁磨木村 隆一  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 鈴野 幹夫
仁科 雅弘
発明の名称 コンバインによる収穫方法  
代理人 北村 修一郎  

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