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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1240946 |
審判番号 | 不服2008-16192 |
総通号数 | 141 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-26 |
確定日 | 2011-07-29 |
事件の表示 | 平成11年特許願第346777号「コア部材、コア組立体、充電ポート及び誘導型充電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月22日出願公開、特開2001-167955〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成11年12月6日の出願であって,平成20年3月4日付けで拒絶理由通知がされ,同年4月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年5月22日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年6月26日に審判の請求がされるとともに,同年7月25日に手続補正書が提出され,その後,当審において平成22年11月11日付けで審尋がなされ,平成23年1月4日に回答書が提出されたものである。 第2 平成20年7月25日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 本件補正を却下する。 〔理由〕 1 本件補正の目的 (1)本件補正の内容 本件補正は,特許請求の範囲を補正する補正内容を含むものであるところ,本件補正前の請求項1,6,10及び本件補正後の請求項1の記載は次のとおりである。 ア 本件補正前の請求項1,6,10 「【請求項1】 底板部と,中脚部と,2つの外脚部とを含むコア部材であって, 前記底板部は,幅方向の一辺と対向する他辺が,長さ方向の中間部から,長さ方向の両辺側に向かって,前記一辺のある方向とは逆方向に後退する傾斜辺となっており, 前記中脚部は,前記底板部の一面上に立設され,前記底板部の前記幅方向の中心よりは,前記一辺側に偏位して配置されており, 前記一辺は,前記中脚部によって2つの部分に分離された直線であって,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中脚部の外周面に連続しており, 前記他辺は,前記中脚部によって2つの部分に分離されており,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中脚部の外周面に連続しており, 前記外脚部は,底板部の一面上において,互いに独立し,長さ方向の両辺に沿って立設され,高さ方向で見た端面が前記中脚部の端面よりも高い コア部材。」 「【請求項6】 第1のコア部材と,第2のコア部材とを含むコア組立体であって, 前記第1のコア部材は,請求項1乃至3の何れかに記載されたものでなり, 前記第2のコア部材は,前記第1のコア部材と組み合わされている コア組立体。」 「【請求項10】 コア組立体と,巻線と,ケースとを含む充電ポートであって, 前記コア組立体は,請求項6乃至9の何れかに記載されたものでなり, 前記巻線は,前記コア組立体の前記中脚部に巻かれており, 前記ケースは,前記コア部材及び巻線を収納し,前記間隔に対応する開口部を有する 充電ポート。」 イ 本件補正後の請求項1 「【請求項1】 コア組立体と,巻線と,ケースとを含む充電ポートであって, 前記コア組立体は,第1のコア部材と,第2のコア部材とを含み, 前記第1のコア部材は,底板部と,中脚部と,2つの外脚部とを含み, 前記底板部は,幅方向の一辺と対向する他辺が,長さ方向の中間部から,長さ方向の両辺側に向かって,前記一辺のある方向とは逆方向に後退する傾斜辺となっており, 前記中脚部は,前記底板部の一面上に立設され,前記底板部の前記幅方向の中心よりは,前記一辺側に偏位して配置されており, 前記一辺は,前記中脚部によって2つの部分に分離された直線であって,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中脚部の外周面に連続しており, 前記他辺は,前記中脚部によって2つの部分に分離されており,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中脚部の外周面に連続しており, 前記外脚部は,底板部の一面上において,互いに独立し,長さ方向の両辺に沿って立設され,高さ方向で見た端面が前記中脚部の端面よりも高くなっており, 前記第2のコア部材は,前記第1のコア部材と組み合わされ,所定の間隔を隔てて前記中脚部の端面と対向しており, 前記巻線は,前記コア組立体の前記中脚部に巻かれており, 前記ケースは,前記コア部材及び巻線を収納し,前記間隔に対応する開口部を有する, 充電ポート。」 (2)補正目的の適否 請求項1についての本件補正は,補正前の請求項1を引用する請求項6を更に引用する請求項10において,補正前の第2のコア部材と中脚部との関係に関して,第2のコア部材は,「所定の間隔を隔てて前記中脚部の端面と対向しており」との構成を限定する補正内容からなるものである。 そして,この補正は,補正前の請求の範囲に記載した発明特定事項を更に限定するものと理解できるから,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮に該当し,補正目的に適合する。 (3)そこで,以下に,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定を満たすか)について,検討する。 2 独立特許要件について (1)本願補正発明 本願補正発明は,上記1(1)イの請求項1の記載のとおりである。 (2)引用例1の記載と引用発明 ア 引用例1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平11-206029号公報(以下「引用例1」という。)には,「非接触型充電装置」(発明の名称)に関して,図1?3,6とともに,次の記載がある(下線は当審で付加したもの。以下同様。)。 「【0011】チャージポート1aは,略直方体のハウジング10と,ハウジング10内の中央に配設される中央柱部22とハウジング10内の端に配設される端柱部24a,24bとを有し中央柱部22及び端柱部24a,24bの各先端部が架橋されて磁気回路を構成するコア20と,中央柱部22に巻装される二次コイル30とを備える。 【0012】ハウジング10は,コア20及び二次コイル30を収納する容器であり,その横幅は180mmとなっている。このハウジング10は,その側壁に磁気パドル1bを一方向から挿入可能にするパドル挿入口12を有する。コア20は,中央柱部22及び端柱部24a,24bを有する。これら中央柱部22及び端柱部24a,24bは,架橋部26a,26bにより各先端部が架橋されて磁気回路を構成している。これら中央柱部22,端柱部24a,24b及び架橋部26a,26bは,それぞれフェライトにより一体的に成形されている。 【0013】中央柱部22は中空円筒状の筒体であるが,磁気パドル1bがハウジング10内に挿着されていないときには,その中央部分は間隔22aとなっている。なお,中央柱部22の形状は,通過させる磁束の量,コア20の軽量化及び二次コイル30の形成の容易さなどを考慮して中空円筒状としたが,円柱状などの形状を採用してもよい。 【0014】端柱部24a,24bは,鉛直方向の投影面積が図1において2点鎖線で示される柱体である。この端柱部24a,24bの鉛直方向の投影面積は,図6に示されるように,主としてハウジング10に挿着された磁気パドル1bの半円状端面41の外方に形成される対称的な角縁領域50a,50b(網線で示した領域)に配設されており,その残部がこの角縁領域50a,50bの外側(横側)に配設されている。なお,端柱部24a,24bの形状は,通過させる磁束の量及びコアの軽量化などを考慮してこのような形状を採用したが,これに特に限定されるものではない。 【0015】架橋部26a,26bは,鉛直方向の投影面積が,中央柱部22の端柱部24a,24bに対して直面する面の端と,端柱部24a,24bの中央柱部22に対して直面する面の端とをそれぞれ結んでなるものであり,所定の厚みをもつ。なお,架橋部26a,26bの形状は,通過させる磁束の量,並びにコアの軽量化及び冷却の容易さなどを考慮してこのような形状としたが,これに特に限定されるものではない。」 「【0020】なお,ハウジング10は,磁気パドル1aをハウジング10内の所定位置へ案内する案内機構(図示せず)を有する。この案内機構により磁気パドル1bがチャージポート1a内の所定位置に容易に挿着される。一方,コア20,二次コイル30及びチャージポート1aに挿着された磁気パドル1bは,充電に伴って発熱する。ハウジング10は,こうした発熱を冷却する通風機構(図示せず)を有する。 【0021】この非接触型充電装置では,端柱部24a,24bの鉛直方向の投影面積が,先の非接触型充電装置100のコア120の端柱部124a,124bのもの(2点鎖線で示す)より大きくなっている。しかしながら,端柱部24a,24bの横端間の幅(160mm)は,非接触型充電装置100のコア120の端柱部124a,124bのもの(180mm)よりも小さくなっている。その結果,ハウジング10の横幅(180mm)は,非接触型充電装置100のもの(200mm)より小さくなっており,非接触型充電装置の体格がより小さくなっている。」 「【0024】 【効果】以上のように,本発明の非接触型充電装置では,コアの端柱部の鉛直方向の投影面積が,主としてチャージポートに挿着された磁気パドルの半円状端面の外方に形成される対称的な角縁領域に配設されている。コアの端柱部は,従来の非接触型充電装置のものに対し,この角縁領域を有効に利用することによって,所要の体積を有しつつ,この角縁領域の外側(横側)に配設される残部の体積を小さくすることができる。それゆえ,この角縁領域の外側に配設される端柱部部分のの横幅を小さくすることができる。従って,従来の非接触型充電装置よりもハウジングの横幅を小さくでき,装置の体格をより小さくすることができる。 【0025】本発明の非接触型充電装置を用いれば,自動車のボンネット内などの格納庫に収納するときにおいて,その収納スペースを多くとる必要がなくなる。それゆえ,他の各種の部品を収納できるスペースが多くとれるようになり,これらの収納部品を格納庫内に広いスペースで余裕をもたせて設置できるようになる。その結果,これら収納部品の故障が防止される。また,これらの収納部品が点検されたり修繕されたりするときには,その作業が容易に進められるようになる。」 イ 引用発明 上記アの記載と引用例1の図1?3,6を対応付けると,引用例1には,コア20と,二次コイル30と,ハウジング10とを含むチャージポート1aが記載されている。 そして,引用例1には,架橋部26a,26bの辺の名称は記載されていないが,本願明細書の記載に対応付けて,幅方向の一辺及び一辺と対向する他辺と呼ぶことにすると,引用例1には,次の構造を有するチャージポートの発明(以下「引用発明」という。)が開示されていることが理解できる。 「コア20と,二次コイル30と,ハウジング10とを含むチャージポート1aであって, 前記コアは,架橋部26a,26bと,中央柱部22と,2つの端柱部24a,24bとを含み, 前記架橋部は,幅方向の一辺と対向する他辺が,長さ方向の中間部から,長さ方向の両辺側に向かって,前記一辺のある方向とは逆方向に後退する傾斜辺となっており, 前記中央柱部は,前記架橋部の一面上に立設され,前記架橋部の前記幅方向の中心よりは,前記一辺側に偏位して配置されており, 前記一辺は,前記中央柱部によって2つの部分に分離され,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中央柱部の外周面に連続しており, 前記端柱部は,架橋部の一面上において,長さ方向の両辺に沿って立設され, 前記二次コイルは,前記コアの前記中央柱部に巻かれており, 前記ハウジングは,前記コア及び二次コイルを収納し,中央柱部の間隔22aに対応するパドル挿入口12を有する, チャージポート。」 (3)本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点 ア 本願補正発明と引用発明を対比する。 (ア)引用発明の「二次コイル30」,「ハウジング10」,「チャージポート1a」,「架橋部26a,26b」,「中央柱部22」,「端柱部24a,24b」,「中央柱部の間隔22aに対応するパドル挿入口12」は,それぞれ,本願補正発明の「巻線」,「ケース」,「充電ポート」,「底板部」,「中脚部」,「外脚部」,「間隔に対応する開口部」に相当する。 (イ)引用発明の「コア20」と,本願補正発明の「コア組立体」及び「コア部材」とは,「コア」である点で共通する。 イ 以上によれば,本願補正発明と引用発明とは, 「コアと,巻線と,ケースとを含む充電ポートであって, 前記コアは,底板部と,中脚部と,2つの外脚部とを含み, 前記底板部は,幅方向の一辺と対向する他辺が,長さ方向の中間部から,長さ方向の両辺側に向かって,前記一辺のある方向とは逆方向に後退する傾斜辺となっており, 前記中脚部は,前記底板部の一面上に立設され,前記底板部の前記幅方向の中心よりは,前記一辺側に偏位して配置されており, 前記一辺は,前記中脚部によって2つの部分に分離され,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中脚部の外周面に連続しており, 前記外脚部は,底板部の一面上において,長さ方向の両辺に沿って立設され, 前記巻線は,前記コアの前記中脚部に巻かれており, 前記ケースは,前記コア及び巻線を収納し,間隔に対応する開口部を有する, 充電ポート。」 である点で一致し,次の点で相違する。 《相違点1》 本願補正発明は,コアが「コア組立体」であり,「前記コア組立体は,第1のコア部材と,第2のコア部材とを含み」,第1のコア部材において「前記外脚部は,底板部の一面上において,互いに独立し,長さ方向の両辺に沿って立設され,高さ方向で見た端面が前記中脚部の端面よりも高くなっており」,「前記第2のコア部材は,前記第1のコア部材と組み合わされ,所定の間隔を隔てて前記中脚部の端面と対向して」いるのに対して,引用発明は,コアが一体なのか組立体なのか明確でない点。 《相違点2》 本願補正発明の第1のコア部材は,底板部の「前記一辺は,前記中脚部によって2つの部分に分離された直線であって,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中脚部の外周面に連続して」いるのに対して,引用発明のコアは,架橋部の一辺が直線でない点。 《相違点3》 本願補正発明の第1のコア部材は,底板部の「前記他辺は,前記中脚部によって2つの部分に分離されており,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中脚部の外周面に連続して」いるのに対して,引用発明のコアは,そのような構成を備えていない点。 (4)相違点についての検討 (4-1)相違点1について ア 2つのコア部材を組み立ててコアを構成することは常套手段であり,通常採用されている周知の構造であるから,引用発明において,コアを第1のコア部材と第2のコア部材から構成することに,格別の困難性は認められない。 イ そして,引用発明では,パドル挿入口12からの磁気パドルを受け入れるために中央柱部22に間隔22aが設けられているのであるから,上記周知の構造を採用し,コアを高さ方向に分割して,第1のコア部材と第2のコア部材から構成する際に,本願補正発明のように,第1のコア部材において「前記外脚部は,底板部の一面上において,互いに独立し,長さ方向の両辺に沿って立設され,高さ方向で見た端面が前記中脚部の端面よりも高くなっており」,「前記第2のコア部材は,前記第1のコア部材と組み合わされ,所定の間隔を隔てて前記中脚部の端面と対向して」いるように構成することは,当業者が当然に採用する構成にすぎないといえる。 ウ そうすると,引用発明において,本願補正発明のように,コアを「コア組立体」とし,「前記コア組立体は,第1のコア部材と,第2のコア部材とを含み」,第1のコア部材において「前記外脚部は,底板部の一面上において,互いに独立し,長さ方向の両辺に沿って立設され,高さ方向で見た端面が前記中脚部の端面よりも高くなっており」,「前記第2のコア部材は,前記第1のコア部材と組み合わされ,所定の間隔を隔てて前記中脚部の端面と対向して」いるように構成することは,当業者が適宜なし得たことである。 (4-2)相違点2について ア 引用例1には,「なお,端柱部24a,24bの形状は,通過させる磁束の量及びコアの軽量化などを考慮してこのような形状を採用したが,これに特に限定されるものではない。」(【0014】),「なお,架橋部26a,26bの形状は,通過させる磁束の量,並びにコアの軽量化及び冷却の容易さなどを考慮してこのような形状としたが,これに特に限定されるものではない。」(【0015】)と記載され,端柱部及び架橋部の形状は,実施例の形状に限定されず,通過させる磁束の量及びコアの軽量化などを考慮して適宜決定すればよいことが示唆されている。 イ そして,引用発明において,端柱部24a,24bの最薄部(B-B’断面である図3及び図8を参照)の厚さでパドル挿入口12方向に端柱部と架橋部を延伸しても,パドル挿入の障害にならず,しかもコアの幅方向の寸法は変わらず,端柱部と架橋部の断面積が増加し,通過させる磁束の量を大きくできることは,当業者であれば容易に推測可能なことである。 ウ また,架橋部の一辺を直線とすることは,従来から採用されていた形状にすぎない。 エ そうすると,引用発明において,通過させる磁束の量などを考慮して架橋部の一辺を直線とし,本願補正発明のように,底板部の「前記一辺は,前記中脚部によって2つの部分に分離された直線であって,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中脚部の外周面に連続して」いるように構成することは,当業者が適宜なし得たことである。 (4-3)相違点3について ア 引用例1には,「なお,端柱部24a,24bの形状は,通過させる磁束の量及びコアの軽量化などを考慮してこのような形状を採用したが,これに特に限定されるものではない。」(【0014】),「なお,架橋部26a,26bの形状は,通過させる磁束の量,並びにコアの軽量化及び冷却の容易さなどを考慮してこのような形状としたが,これに特に限定されるものではない。」(【0015】)と記載され,端柱部及び架橋部の形状は,実施例の形状に限定されず,通過させる磁束の量及びコアの軽量化などを考慮して適宜決定すればよいことが示唆されている。 イ そして,相違点3における,底板部の「前記他辺は,前記中脚部によって2つの部分に分離されており,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中脚部の外周面に連続して」いるコア構造は,拒絶査定時に提示した以下の周知例1?3にも示されるように周知技術であり,磁気回路として不要な部分を削除して,底板部の一つの辺が中脚部で2つの部分に分離され,各々の端部が中脚部の外周面に連続した形状とし,コアの軽量化を図ることは,当業者が従来から必要に応じて適宜行っていることであると認められる。これは,特に,周知例1,2が,コアの小型化,軽量化を目的として外脚部と底板部の形状を工夫していることからも明らかである。 周知例1:実願昭56-89428号(実開昭57-201824号)のマイクロフィルム(「接続部9,10の幅方向の端面には凹部Rを形成する。」(4ページ20行?5ページ1行),「基準面VIの反対側の幅方向B_(2)においては,外側脚7,8および接続部9,10の幅を同一B_(2)とし,この幅B_(2)は前述の一方側の外側脚の幅B_(1)よりも小さくし,かつB_(2)を中心脚6の半径a_(1)とほゞ等しくする。」(5ページ4?8行),「磁芯全体に磁束が効率的に配分されて材料の無駄がなくなり,磁芯全体が小型かつ軽量になると共に,磁芯全体の単位重量当たりの電力が大きくなる。」(9ページ3?6行),第2?8図参照。) 周知例2:実願平4-65081号(実開平6-23222号)のCD-ROM(「【0007】2つのヨーク部は,それぞれが互いに間隔を隔てて中脚部の一面上から立ち上がるから,2つのヨーク部間に前述した間隔に対応した空間が生じる。この空間には中脚部の一面が表われており,中脚部の体積を縮小することなく,ヨーク部の体積,換言すればコアの体積を最小にする。【0008】ヨーク部は,連続部分が中脚部の幅及び厚みによって定まる面積の半分以上の連接面積を有しているから,中脚部と各ヨーク部との間の連接部分において,両者間を流れる磁束に対し,必要な面積が確保される。このため,ヨーク部と中脚部との連接部分において,磁気抵抗が増大することがなく,必要な磁気特性が得られる。【0009】従って,本考案によれば,小型化,軽量化を図ると共に,小型軽量化による犠牲を受けることなく,理想的な磁気的特性を確保することが可能になる。」,図1?4,7参照。) 周知例3:実願平4-33856号(実開平5-87918号)のCD-ROM(「【0010】【実施例】図1は,本考案に係るフェライト磁心の一実施例を示す平面図である。このフェライト磁心は,底板部12の両端にそれぞれ外足部14,16を,また中央に中足部18を配置した一体構造をなしている。底板部12は,長方形の側面中央に切欠き部19を形成して窄まった平面形状をなし,底板部両端の二側面は中央に向かって段差を有せず連続している。両外足部14,16は,その平面形状が長方形状であり,その外側三面と前記底板部12の両端の一端面及び二側面が一面をなしている。また中足部18は,矩形の相対する二辺をそれぞれ直径とする二個の半円とを組み合わせた平面形状であり,且つその長軸方向が底板部幅方向に一致するように設けられ,該中足部18の短軸側面が底板部の狭窄した側面(切欠き面)に臨んでいる。」,図1?4参照。) ウ これら周知例1?3は,いずれもトランスに関するものであるが,コアに関する点で本願補正発明のコアと共通しており,更に本願補正発明の充電ポートも充電結合装置と組み合わせれば,実質的にトランスと原理は同じであるから,上記周知技術であるコア構造を引用発明のチャージポート1aのコアに適用することに,格別の阻害要因があるとはいえない。 そうすると,引用発明において,コアの更なる軽量化を目指して,上記周知技術のコア構造を採用することに格別の困難性は認められない。 エ なお,請求人は,回答書において,「(3)これに対して,引用文献1(引用例1)に記載された非接触型充電装置のコアは,上記意見書にて申し述べたように,2つの外脚部間がV字状に開いてはいるが,該V字の付け根部分において,放熱性に寄与しない『無駄な領域』を有している。本願や引用文献1のような充電装置は,ケースで覆われていることにより充電時の熱がこもりやすいため,該『無駄な領域』が,たとえわずかであっても,放熱性への影響は大きくなりやすい。したがって,本発明は,コアが放熱に最適な形状の底板部を有することによって,格別な作用効果を奏するものであると言える。」(3ページ23?4ページ2行)と主張しているが,わずかな「無駄な領域」の有無による放熱性への影響が大きいことや,本願補正発明が引用例1に記載のものに比して放熱効果が向上することについて何ら立証されておらず,「無駄な領域」の有無により多少の影響があるとしても,本願補正発明が相違点3の構成により格別な作用効果を奏するとはいえない。 オ 以上の点を考慮すると,引用発明において,本願補正発明のように,底板部の「前記他辺は,前記中脚部によって2つの部分に分離されており,この2つの部分は,互いに間隔を隔てて対向する各々の端部が前記中脚部の外周面に連続して」いる構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。 (5)独立特許要件についてのまとめ したがって,本願補正発明は,引用例1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (6)むすび 以上のとおり,請求項1についての補正を含む本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記のとおり,本件補正は却下されたので,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項6を更に引用する請求項10に係る発明(以下「本願発明」)という。)は,前記第2,1(1)アに摘記したとおりのものである。 2 引用例の記載と引用発明 引用例1の記載及び引用発明は,前記第2,2(2)で認定したとおりである。 3 対比・判断 前記第2,1(2)で検討したように,本願補正発明は,本件補正前に記載した発明特定事項を更に限定するものである。 そうすると,本願発明の構成要素をすべて含み,これを更に限定したものである本願補正発明が,前記第2,2(3)ないし(5)で検討したように,引用例1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,この限定をなくした本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 結言 以上のとおり,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-05-26 |
結審通知日 | 2011-06-01 |
審決日 | 2011-06-15 |
出願番号 | 特願平11-346777 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(H01F)
P 1 8・ 575- Z (H01F) P 1 8・ 121- Z (H01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 正文 |
特許庁審判長 |
齋藤 恭一 |
特許庁審判官 |
松田 成正 小野田 誠 |
発明の名称 | コア部材、コア組立体、充電ポート及び誘導型充電装置 |
代理人 | 阿部 美次郎 |