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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1240992
審判番号 不服2008-26149  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-09 
確定日 2011-08-04 
事件の表示 特願2002-138062「紫外光吸収フィルター」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月14日出願公開,特開2003- 45900〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年5月14日(国内優先権主張平成13年5月25日)の出願であって,平成20年5月19日に手続補正がされ,同年9月5日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年10月9日に審判請求がされるとともに,手続補正がされたものである。その後,当審において,平成22年12月24日付けで,平成20年10月9日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶理由が通知され,平成23年2月4日に手続補正がされ,次いで,平成23年3月2日付けで,平成23年2月4日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶理由が通知され,これに対して,平成23年4月11日に手続補正がされたものである。

第2 平成23年3月2日付けで通知された拒絶理由について
平成23年3月2日付けで通知された拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)は,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第1項2号に掲げる場合に該当する最後の拒絶理由通知であって,その理由の概要は,平成20年5月19日にした手続補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものであり,さらに,平成20年5月19日付けの手続補正により補正された請求項1に記載された,「AlGdNから成る窒化物系III-V族化合物半導体を有することを特徴とする波長変換器。」については,前記平成20年5月19日付けの手続補正によって補正される前の明細書に一応の記載が見いだせるので,これについて,前記補正される前の明細書を参照して検討すると,明細書及び図面の記載が不備のため,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず,また,本願優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

第3 平成23年4月11日付けでされた手続補正の却下について

[補正却下の決定の結論]
平成23年4月11日付けでされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲の補正を含むものであって,そのうち補正後の請求項1については,本件補正前後で以下のとおりである。

〈補正前〉
「【請求項1】 AlGdNから成る窒化物系III-V族化合物半導体を有することを特徴とする波長変換器。」
〈補正後〉
「【請求項1】 AlGdNから成る窒化物系III-V族化合物半導体を有し,波長320nm付近の光を吸収することを特徴とする紫外光吸収フィルター。」

2.補正目的の適否
上記のとおり,本件補正は,補正前の「波長変換器」に係る発明を,補正後の「紫外光吸収フィルター」に係る発明とするものである。すなわち,本件補正によって,請求項1に係る発明が,異なる種類の装置に補正された。よって,本件補正は,特許法第17条の2第4項(平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2項に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また,補正前の請求項1の記載は,「波長変換器」に係る発明として明りょうであるから,本件補正は,特許法第17条の2第4項第4項に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しない。また,本件補正が,同法第17条の2第4項第1号及び第3号に掲げる請求項の削除及び誤記の訂正のいずれの事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

3.小括
以上のとおり,本件補正は,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4 平成20年5月19日付けでされた手続補正について
1.本願明細書
平成23年4月11日付けでされた手続補正は,上記のとおり却下され,また,平成20年10月9日付けの手続補正及び平成23年2月4日付けの手続補正は,それぞれ,平成22年12月24日付け及び平成23年3月2日付けでいずれも却下されているので,本願明細書及び図面は,平成20年5月19日付けの手続補正により補正された明細書及び図面である。

2.新規事項の追加について
(1)前記「第2 平成23年3月2日付けで通知された拒絶理由について」において述べたとおり,当審拒絶理由のうち,新規事項の追加については,平成20年5月19日にした手続補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものである。
すなわち,平成20年5月19日付けでした手続補正は,特許請求の範囲,明細書の段落【0001】,【0010】?【0012】,【0030】,【0031】,【0037】,【0053】,【0054】,【0059】及び【0067】,並びに図4を補正するとともに,明細書の段落【0005】?【0009】,【0013】?【0029】,【0038】?【0052】,【0055】?【0058】及び【0060】?【0066】,並びに図5?図12を削除するものであり,これらにより,段落【0010】及び【0059】に「紫外光を吸収して,320nm付近の光に変換する波長変換器」との事項を加入するものであるから,以下,これについて検討する。

(2)本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)には,「波長変換器」については,次の記載がある。
「 【0066】
また本発明によれば,Gdを含む窒化物系III-V族化合物半導体を波長変換器に用いることによって,特定の紫外線を吸収するフィルターを作製することが可能となる。」

しかしながら,上記箇所には,「紫外光を吸収して,320nm付近の光に変換する波長変換器」は記載されていない。

また,上記段落【0066】に記載された,「特定の紫外線を吸収するフィルター」に関して,当初明細書等には以下の記載がある。
・「 【0029】
また本発明は,前記窒化物系III-V族化合物半導体装置は,紫外光吸収フィルターであることを特徴とする。
【0030】
本発明に従えば,Gdを含む窒化物系III-V族化合物半導体では,半導体中のGdの内核電子による紫外線吸収が特定の波長において生じるので,特定の紫外線に対するフィルターとして働く。」
・「 【0053】
(実施例5)
本実施例では,Gdを含む窒化物系III-V族化合物半導体を用いた紫外光吸収フィルターについて説明する。図9は,Gdを添加したAlNのCLスペクトルを示す図である。図9を参照すると,波長が320nm付近にAlN中のGd^(3+)に起因すると考えられる発光が確認されている。
【0054】
このような発光特性を用いることによって,逆に320nm付近の紫外線を吸収することが可能になる。つまり,Gdを含むAlNを紫外光吸収フィルターとして用いることができる。吸収波長をより長波長側にシフトするには,たとえばAlNにGaを加えていけばよい。」

しかしながら,これらの箇所にも,「紫外光を吸収して,320nm付近の光に変換する」ことは記載されていない。すなわち,上記段落【0054】には,「320nm付近の紫外線を吸収すること」が記載されているが,この記載は,「紫外光吸収フィルター」に関するものであり,「320nm付近の光に変換する」ものに関する記載ではない。
また,上記段落【0053】には,「320nm付近の光」を発することの記載があるものの,これは「CLスペクトル」についての説明である。当初明細書等に,「 【0035】 図3は,前記GaGdNエピタキシャル層4のカソードルミネッセンス(CL;Cathode Luminescence)スペクトルを示す図である。・・・」と記載されているとおり,「CLスペクトル」は,「カソードルミネッセンス(CL;Cathode Luminescence)スペクトル」であり,電子線を照射したときに発せられる光のスペクトルであるから,紫外線などの光を照射したときに発せられる光のスペクトルではない。また,当初明細書等の全記載を見ても,「紫外光を吸収して,320nm付近の光に変換する波長変換器」が示唆されているとはいえない。
したがって,当初明細書等の記載からは,「紫外光を吸収して,320nm付近の光に変換する波長変換器」という技術事項を読み取ることはできない。

(3)以上のとおりであるから,平成20年5月19日にした手続補正後の明細書の段落【0010】,【0059】において,「紫外光を吸収して,320nm付近の光に変換する波長変換器」との事項を加入することは,本願の願書に最初に添付した明細書又は図面の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるということはできない。

よって,平成20年5月19日付けでした手続補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本願は,拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-06 
結審通知日 2011-06-07 
審決日 2011-06-23 
出願番号 特願2002-138062(P2002-138062)
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (H01L)
P 1 8・ 57- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 恩田 春香原 和秀  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 近藤 幸浩
松田 成正
発明の名称 紫外光吸収フィルター  
代理人 杉山 毅至  
代理人 西教 圭一郎  

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