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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1241002
審判番号 不服2009-13870  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-04 
確定日 2011-08-04 
事件の表示 特願2000-263555「電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月15日出願公開、特開2002- 77329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年8月31日の出願であって、平成21年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年8月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成21年8月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成21年8月4日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項7に記載された
「ゲーム機能および電話機能を有する電子装置において、
実行中のゲームの中断を指示する中断キー、
前記中断キーの操作があったときに、当該操作があったことを示すデータを設定する第1設定手段、
前記中断キーの操作があったことを示すデータが設定されたときに前記ゲームを中断する中断手段、
電話の着信を検出する検出手段、および
前記着信の検出に応答して、前記中断キーの操作があったことを示すデータを設定する第2設定手段を備えることを特徴とする、電子装置。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を
「一時中断機能を含むゲーム機能、および電話機能を有する電子装置であって、
実行中のゲームの一時中断を指示する中断キー、
前記中断キーの操作があったときに、当該操作があったことを示すデータを設定する第1設定手段、
前記中断キーの操作があったことを示すデータが設定されたときに前記ゲームを一時中断する中断手段、
電話の着信を検出する検出手段、および
前記着信の検出に応答して、前記中断キーの操作があったことを示すデータを設定する第2設定手段を備えることを特徴とする、電子装置。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。)

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項7に記載された「ゲーム機能」が「一時中断機能を含む」ものであることを限定するとともに、「中断」が「一時中断」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

[引用発明]
原査定の拒絶理由に引用された特開平11-137851号公報(以下、「引用例」という。)には、「携帯用ゲームシステム」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】 表示部(16)と、底部にコネクタ(28)を少なくとも有する無線通話装置(10)と;前記コネクタ(28)と接続するコネクタ(46)を有し、前記無線通話装置(10)の底部側に着脱自在に嵌め込み可能となっているゲーム機本体(12)と;前記ゲーム機本体(12)に形成された挿入口(42)に挿入されるROMカセット(14)と;を備えて成り、前記無線通話装置(10)の表示部(16)を利用してゲームを行えるようにしたことを特徴とする携帯用ゲームシステム。
【請求項2】 表示部(16)と、底部にコネクタ(28)を少なくとも有する無線通話装置(10)と;前記コネクタ(28)と接続するコネクタ(46)を有し、前記無線通話装置(10)を立てた状態に支持するための載置台(70)と;前記載置台(70)と電気的に接続されるゲーム機本体(12)と;前記ゲーム機本体(12)の裏面に形成された挿入口(74)に挿入されるROMカセット(14)と;を備えて成り、前記無線通話装置(10)の表示部(16)を利用してゲームを行えるようにしたことを特徴とする携帯用ゲームシステム。
【請求項3】 ゲーム最中においても、前記無線通話装置(10)は着信可能であり、該着信した際にはゲームをホールドし、通話終了時にホールド解除となる機能を前記ゲーム機本体(12)が有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯用ゲームシステム。」(2頁1欄)

ロ.「【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明の第1の概念によれば、表示部(16)と、底部にコネクタ(28)を少なくとも有する無線通話装置(10)と; 前記コネクタ(28)と接続するコネクタ(46)を有し、前記無線通話装置(10)の底部側に着脱自在に嵌め込み可能となっているゲーム機本体(12)と; 前記ゲーム機本体(12)に形成された挿入口(42)に挿入されるROMカセット(14)と;を備えて成り、前記無線通話装置(10)の表示部(16)を利用してゲームを行えるようにした携帯用ゲームシステムが提供される。
【0008】本発明の第2の概念によれば、表示部(16)と、底部にコネクタ(28)を少なくとも有する無線通話装置(10)と; 前記コネクタ(28)と接続するコネクタ(46)を有し、前記無線通話装置(10)を立てた状態に支持するための載置台(70)と; 前記載置台(70)と電気的に接続されるゲーム機本体(12)と; 前記ゲーム機本体(12)の裏面に形成された挿入口(74)に挿入されるROMカセット(14)と;を備えて成り、前記無線通話装置(10)の表示部(16)を利用してゲームを行えるようにした携帯用ゲームシステムが提供される。
【0009】本発明においては、ゲーム最中においても、無線通話装置(10)は着信可能であり、該着信した際にはゲームをホールドし、通話終了時にホールド解除となる機能をゲーム機本体(12)は有している。」(2頁2欄-3頁3欄)

ハ.「【0027】ゲーム中においては、ST112で常時、携帯電話機10の着信(受信)状態を監視している。すなわち、携帯電話機10のアンテナ18を介して、携帯電話機10が受信した場合は、その旨の信号が携帯電話機10のCPU52からゲーム機本体12のCPUに入力され、ゲームは一旦ゲーム用RAM58にホールドされる(ST114)。この際、表示部16に表示されているゲーム途中の状態の表示を停止状態にしてもよく、また、表示画面をゲーム表示から通話表示に切換えるようにしてもよい。
【0028】ST116では、通話状態が継続しているか、若しくは終了しているかを常時監視している。通話状態が終了した場合は、ST118において前述したゲームのホールド状態を解除する。このホールド解除によりST120では、ゲームを再開する。」(4頁5欄)

ニ.「【0036】なお、本発明のゲームシステムにおいては、携帯電話機に携帯用CPUの他にゲーム用CPUとゲーム用RAMとを設け、電話回線を利用して通信によりゲームソフトを該ゲーム用RAMに取込んで、携帯電話機のナンバーキーを操作することによりゲームを行えるようにしてもよい。この場合、ROMカセットは必要なくなる。」(4頁6欄)

上記引用例の記載及び図面を参照すると、上記「ゲームシステム」は「携帯電話機」と「ゲーム機本体」とを備えたものであり、さらに、上記ニ.には、「本発明のゲームシステムにおいては、携帯電話機に携帯用CPUの他にゲーム用CPUとゲーム用RAMとを設け、電話回線を利用して通信によりゲームソフトを該ゲーム用RAMに取込んで、携帯電話機のナンバーキーを操作することによりゲームを行えるようにしてもよい。」と記載されていることから、「ゲーム機能」と「電話機能」を備えるものである。
そして、上記イ.【請求項3】およびロ.【0009】には、「ゲーム最中においても、前記無線通話装置(10)は着信可能であり、該着信した際にはゲームをホールドし、通話終了時にホールド解除となる機能を前記ゲーム機本体(12)が有している。」と記載され、さらに、上記ハ.【0028】には、「通話状態が終了した場合は、ST118において前述したゲームのホールド状態を解除する。このホールド解除によりST120では、ゲームを再開する。」と記載されていることから、上記「ゲーム機本体」はゲームを一時的にホールドする機能を備えるものである。
さらに、上記ハ.【0027】には、「ゲーム中においては、ST112で常時、携帯電話機10の着信(受信)状態を監視している。すなわち、携帯電話機10のアンテナ18を介して、携帯電話機10が受信した場合は、その旨の信号が携帯電話機10のCPU52からゲーム機本体12のCPUに入力され、ゲームは一旦ゲーム用RAM58にホールドされる(ST114)。」と記載されていることから、上記「ゲームシステム」は、電話の着信を監視する手段を備え、電話の着信があると、その旨の信号をCPUに入力しゲームをホールドする手段を備えるものである。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「一時的にホールドする機能を含むゲーム機能、および電話機能を有するゲームシステムであって、
電話の着信を監視する手段、および
電話の着信があると、その旨の信号をゲーム機本体のCPUに入力し、ゲームを一時的にホールドする手段を備えるゲームシステム。」

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ゲームシステム」もCPU、メモリを有する電子回路で構成されるものであるから、補正後の発明の「電子装置」と実質的な差違はなく、引用発明の「ホールド」は補正後の発明の「中断」と実質的な差違はない。
さらに、引用発明の「電話の着信を監視する」ことは補正後の発明の「電話の着信を検出する」ことと実質的な差違はなく、引用発明の「電話の着信があると、その旨の信号をゲーム機本体のCPUに入力し、ゲームを一時的にホールドする手段」は、電話の着信を「検出」して、これに「応答」して、着信があった旨の信号をCPUに入力して、「ゲームを一時中断する」ための手段であり、補正後の発明の「前記着信の検出に応答して、前記中断キーの操作があったことを示すデータを設定する第2設定手段」も、本願明細書の記載も参酌すれば、「電話の着信の検出に応答して、ゲームを一時中断するための手段」である点において一致することから、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「一時中断機能を含むゲーム機能、および電話機能を有する電子装置であって、
電話の着信を検出する検出手段、および
前記着信の検出に応答して、ゲームを一時中断するための手段を備える電子装置。」

<相違点>
(1)補正後の発明は「実行中のゲームの一時中断を指示する中断キー」、「前記中断キーの操作があったときに、当該操作があったことを示すデータを設定する第1設定手段」および「前記中断キーの操作があったことを示すデータが設定された時に前記ゲームを一時中断する中断手段」を備えるのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点。
(2)補正後の発明は「前記中断キーの操作があったことを示すデータを設定する第2設定手段」を備えるのに対し、引用発明は当該構成が不明である点。

そこで、上記相違点(1)について検討すると、ゲーム装置が「ポーズボタン」のような実行中のゲームの一時中断を指示する中断キーを備え、中断キーを操作するとゲームを一時中断させることは、特開2000-197770号公報(【0026】、図1)、特開平11-194944号公報(【0105】、【0219】、図6)、特開平8-243253号公報(【0010】、図1)に記載されるように周知のことであり、当該ゲーム装置がCPU、メモリを備えた電子回路で構成されることも周知のことである。
そして、所定の処理の指示があったことをCPUに対しデータを設定することで報知することは慣用手段であるから、補正後の発明の「中断キーの操作があったときに、当該操作があったことを示すデータを設定する第1設定手段」は、周知の中断キーの構成に慣用手段を適用したものにすぎず、上記相違点(1)に係る構成は、周知慣用技術に基づいて当業者が容易になし得るものである。
次に、上記相違点(2)について検討すると、上記相違点(1)についての検討と同様に、引用発明の「ゲームを一時中断するための手段」において、所定の処理の指示があったことをCPUに対しデータを設定することで報知するという慣用手段を適用することにより、中断を示すデータを設定する手段を備えることは当業者が容易になし得ることである。
その際、中断を示すデータを「中断キーの操作があったことを示すデータ」とすることは、上記相違点(1)についての検討において記載した周知の中断キーの構成を採用することにより当業者が適宜なし得ることであり、補正後の発明の「前記中断キーの操作があったことを示すデータを設定する第2設定手段」を備えることは、周知慣用技術に基づいて当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、上記補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年8月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、第2.1.本願発明と補正後の発明の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から、当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-03 
結審通知日 2011-06-08 
審決日 2011-06-21 
出願番号 特願2000-263555(P2000-263555)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志松元 伸次  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 石井 研一
藤井 浩
発明の名称 電子装置  
代理人 山田 義人  

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