• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1241010
審判番号 不服2009-17552  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-17 
確定日 2011-08-04 
事件の表示 特願2000-178754「無線ネットワーク管理方法、無線伝送制御方法および無線伝送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月26日出願公開、特開2001-358727〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年6月14日の出願であって、平成21年6月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年9月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成21年9月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成21年9月17日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項4に記載された
「複数の制御局となる伝送装置を用いてネットワークを構成し、情報を伝送する無線伝送制御方法において、
所定のフレーム周期の中に管理情報を交換する管理情報伝送領域を設け、上記管理情報伝送領域において、伝送時において、自局の周辺に存在する他の通信局からの接続リンク情報を獲得し、上記接続リンク情報に含まれている、自局の周辺に存在する他の通信局の遠方に存在する第3の通信局の存在を把握して、自局の周辺に存在する他の通信局を介して第3の通信局宛の中継伝送が可能であるか否かを判断する
無線伝送制御方法。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を
「複数の制御局となる伝送装置を用いてネットワークを構成し、情報を伝送する無線伝送制御方法において、
所定のフレーム周期の中にネットワークを構成する通信局が管理情報を交換する管理情報伝送領域を設け、上記管理情報伝送領域において、伝送時において、自局の周辺に存在する他の通信局からの接続リンク情報を獲得し、上記接続リンク情報に含まれている、自局の周辺に存在する他の通信局の遠方に存在する第3の通信局の存在を把握して、自局の周辺に存在する双方向の接続リンクのある他の通信局を介して第3の通信局宛の中継伝送が可能であるか否かを判断する
無線伝送制御方法。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。)

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項4に記載された「管理情報を交換する」のは「ネットワークを構成する通信局」であることを限定するとともに、「自局の周辺に存在する他の通信局を介して第3の通信局宛の中継伝送が可能であるか否かを判断する」際の「自局の周辺に存在する他の通信局」が「自局の周辺に存在する双方向の接続リンクのある他の通信局」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

[引用発明]
原査定の拒絶理由に引用された特開平9-139747号公報(以下、「引用例」という。)には、「通信制御装置及び通信制御方法」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の携帯情報機器間でグループを形成し、相互に通信を行なう通信制御装置及びその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の情報携帯機器に搭載されている赤外線通信機能を利用した場合、その都度機器の識別子を選定せず、近距離の端末に対して返信するといった手法を取っていたため簡単に対向端末への情報転送が可能であったが、受信側では送信情報は誰からといった情報は分かるが、送信者はその情報を誰宛といった手続きを踏まないため、実際に誰に送信されているかわからないといった問題があった。
【0003】そこで、従来、大規模な有線ネットワークなどで用いられているような、各機器を特定するための一意な識別子を持つ必要がある。この識別子を宛先アドレスとして使用することで指定した端末への情報の送信が可能となる。しかし、無線通信を行なう近距離の端末間では通信可能な範囲内に存在する端末数は、大規模な有線ネットワークに比べて極めて少なく、大規模な有線ネットワークのような大きなアドレス空間は、取り扱いの複雑さや通信効率の低下につながるといった問題があった。」(3頁4欄?4頁5欄)

ロ.「【0017】図2は通信端末C1からC5とC8とCnの7台の端末が存在する。概図は端末Cnと端末C4が直接通信可能な範囲を線で囲むことにより示している。すなわち、CnはC1、C2、C3、C4と通信可能で、C5、C8とは通信不可能なことを示している。各端末がどの端末と通信可能であるかを表したテーブルを図3に示す。
【0018】図4に端末C1が送信する端末識別情報を示す。端末C1?C6は図4のような端末識別情報を定期的にブロードキャストしている。端末Cnの端末識別情報受信部18は、これらのうち端末C1?C4までの端末識別情報を受信することができる。端末Cnが端末識別情報を受信すると、受信した端末識別子を他端末識別子記憶部116の端末識別子と比較し、受信した端末識別子がまだ登録されていない場合には、受信した端末識別子とその周辺端末情報を他端末識別記憶部116に登録する。すでに登録されている場合には、受信した端末識別子の更新時間を現時刻間にセットし、前の周辺端末情報と異なる場合、周辺端末情報を変更する。このようにして、受信した端末識別情報から図5のようなテーブルを他端末識別子記憶部116に作成する。」(5頁7欄)

ハ.「【0094】実施例10
実施例9と同様の手順で、自端末と双方向通信可能な他端末がどの端末と通信可能かを端末情報記憶部819で管理する方法について述べる。
【0095】端末識別情報送信部813が、端末識別子をのせて端末識別情報を送信する際、端末情報記憶部819に登録されている端末識別子を、自端末と通信可能な周辺端末情報として付与し送信する。
【0096】この端末識別情報を受信した情報受信部8は、端末識別情報受信部817に端末識別情報を渡す。端末識別情報受信部817は、端末識別情報の周辺端末情報を端末情報制御部820に渡し、実施例9と同様、受取確認送信部8に受取確認の送信を要求する。この時、受取確認に自端末の周辺端末情報を付与してもいいし、しなくてもよい。周辺端末情報を受けとった端末情報制御部820は、端末情報記憶部819に、端末識別情報の送信者の端末識別子とともに周辺端末情報を登録する。
【0097】このような手順を各端末が行なうことによって、各端末が独立して周囲のリンク状況を知ることができるとともに、自端末と通信可能な端末がどのような端末と通信可能かを知ることができる。そして、このようにして得られた端末Cnの端末情報記憶部819の例は実施例1で示した図5と同様のものとなる。」(10頁17?18欄)

二.「【0102】実施例12
実施例12を図面を使って以下に説明する。図16は本実施例に関わる通信装置の一構成図で、いわゆるアプリケーションを実行するユーザ情報処理部901と通信制御を行なう通信制御部902により構成される。
【0103】情報送信部910は、通信端末識別情報送信部912やユーザ情報処理部901の要求により情報をネットワークへ送信する。通信端末識別情報送信部912は自己の端末識別子と、通信端末識別情報記憶部に登録されている端末の端末識別子と、その端末との通信状況を付与して通信端末識別情報として送信する。この通信状況には双方向通信可能と受信のみ可能の2つの状況がある。
【0104】情報受信部911では、他端末によって送信された通信端末識別情報や、ユーザ情報処理部によって送信された情報を受信し、通信端末識別情報を通信端末識別情報受信部913に渡す。
【0105】通信端末識別情報送信部913は、受信した通信端末識別情報を双方向確認部914に渡す。双方向確認部914では、受信した通信端末識別情報に自端末の端末識別子が含まれているかどうかを確認し、この確認結果を通信端末識別情報制御部915に通知する。
【0106】次に、実施例12の装置において双方向確認部914及び通信端末識別情報制御部915の行なう処理を図15を用いて実施例1と同様の図2に示される状況を例に取って説明する。今、端末Cnは、C1、C2、C3、C4と通信可能で、C5、C8とは通信不可能である。
【0107】1.端末Cnは自己の端末識別子と通信端末識別情報記憶部に登録されている端末の端末識別子を周囲通信情報として付与した図17のような通信端末識別情報を定期的にブロードキャストする。
【0108】2.端末Cnからの通信端末識別情報を送信した端末C1?4は、受信した情報が通信端末識別情報であると判断するとこれを通信端末識別情報受信部913から双方向確認部914に渡す。(S1)
3.端末C1?4の双方向確認部914は、通信端末識別情報に自端末の端末識別子があるかどうかを調べる。(S2)
自端末の端末識別子が含まれていない場合、通信端末識別情報の送信者からの情報を受信できているので、通信端末識別情報の送信者と自端末間で受信のみが可能であることを通信端末識別情報制御部915に通知する。(S3)
自端末の端末識別子が含まれている場合、通信端末識別情報の送信者ではすでに自端末からの情報の受信が確認されているので、通信端末識別情報の送信者と自端末間で双方向通信可能であることを通信端末識別情報制御部915に通知する。(S4)
通信端末識別情報の送信者の端末識別子と、自端末間の通信状況の他に、通信端末識別情報の送信者の周囲通信状況を通知するため、周囲通信情報を通信端末識別情報制御部915に渡してもよい。
【0109】4.通信端末識別情報制御部915が端末識別子とその端末との通信状況を受け取ると、通信端末識別情報記憶部916にその端末の識別子があるかどうかを調べる。(S5)
ない場合には、新規の端末として、その端末識別子を通信端末情報記憶部916に登録する。(S6)
ある場合には、通知された通信状況と、通信端末識別記憶部916に登録されているその端末の通信状況を比較する。(S7)
そして、異なれば通知された通信状況を登録する。(S8)
同じであれば、更新時間を更新してもよい。
【0110】さらに、周囲通信情報を渡された場合、これも通信端末識別記憶部916に周辺端末情報として登録してもよい。また、通信端末識別制御部915は通信端末識別記憶部916を定期的にチェックし、一定期間以上更新されない端末識別子は、その端末と自端末間のリンクが切断されたと判断し、その端末識別子を削除することもある。
【0111】5.そして、この通信端末識別記憶部916をユーザ情報処理部901に見せることによって、ユーザは現在の周囲のリンク情報を知ることができる。このようにして得られた端末Cnの通信端末識別情報記憶部916の例を図18に示したように、このような手順を各端末が行なうことによって、各端末が独立して周囲の通信状況を知ることができる。」(10頁18欄?11頁20欄)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野の技術常識を考慮すると、引用例に記載の「通信制御方法」は、上記ロ.及び図2に記載されるように複数の「通信端末」が互いに通信を行って「ネットワーク」を構成する場合の方法であって、
上記イ.【0001】には、「本発明は、複数の携帯情報機器間でグループを形成し、相互に通信を行なう通信制御装置及びその方法に関する。」と記載され、同【0002】には、「近年の情報携帯機器に搭載されている赤外線通信機能を利用した場合」、さらに、同【0003】には、「無線通信を行なう近距離の端末間では通信可能な範囲内に存在する端末数は・・・」と記載されていることから、引用例の「通信端末」は「無線通信端末」であり、同「通信制御方法」は「無線通信制御方法」である。
上記ロ.【0017】には、「図2は通信端末C1からC5とC8とCnの7台の端末が存在する。概図は端末Cnと端末C4が直接通信可能な範囲を線で囲むことにより示している。すなわち、CnはC1、C2、C3、C4と通信可能で、C5、C8とは通信不可能なことを示している。」と記載されていることから、端末C1?C4、C5、C8、Cnにより「ネットワークが構成」され、情報が伝送されるものであり、端末C1?C4、C5、C8は端末Cnの「周囲に存在する他の端末」である。
上記二.【0107】には、「端末Cnは自己の端末識別子と通信端末識別情報記憶部に登録されている端末の端末識別子を周囲通信情報として付与した図17のような通信端末識別情報を定期的にブロードキャストする。」と記載されていることから、引用例の「端末」は「通信端末識別情報を定期的にブロードキャストする」ものである。
さらに、上記二.の図17には、通信端末識別情報が「受信可能端末リスト」と「双方向可能端末リスト」を有することが記載され、同【0108】には、「端末Cnからの通信端末識別情報を送信した端末C1?4は、受信した情報が通信端末識別情報であると判断するとこれを通信端末識別情報受信部913から双方向確認部914に渡す。」、「端末C1?4の双方向確認部914は、通信端末識別情報に自端末の端末識別子があるかどうかを調べる。」、「自端末の端末識別子が含まれていない場合、通信端末識別情報の送信者からの情報を受信できているので、通信端末識別情報の送信者と自端末間で受信のみが可能であることを通信端末識別情報制御部915に通知する。」、「端末の端末識別子が含まれている場合、通信端末識別情報の送信者ではすでに自端末からの情報の受信が確認されているので、通信端末識別情報の送信者と自端末間で双方向通信可能であることを通信端末識別情報制御部915に通知する。」と記載され、同【0111】には、「この通信端末識別記憶部916をユーザ情報処理部901に見せることによって、ユーザは現在の周囲のリンク情報を知ることができる。このようにして得られた端末Cnの通信端末識別情報記憶部916の例を図18に示したように、このような手順を各端末が行なうことによって、各端末が独立して周囲の通信状況を知ることができる。」と記載されていることから、引用例の「通信端末識別情報」は自端末と「受信のみが可能である」端末の情報、自端末と「双方向通信が可能である」端末の情報を有し、引用例の「端末」は「他の端末から通信端末識別情報を受信し、自端末が受信のみ可能な端末の情報、自端末と双方向通信可能な端末の情報を獲得する」ものである。
また、上記ハ.【0094】には、「自端末と双方向通信可能な他端末がどの端末と通信可能かを端末情報記憶部819で管理する方法について述べる。」と記載され、同【0095】には、「端末識別情報送信部813が、端末識別子をのせて端末識別情報を送信する際、端末情報記憶部819に登録されている端末識別子を、自端末と通信可能な周辺端末情報として付与し送信する。」と記載され、同【0097】には、「このような手順を各端末が行なうことによって、各端末が独立して周囲のリンク状況を知ることができるとともに、自端末と通信可能な端末がどのような端末と通信可能かを知ることができる。そして、このようにして得られた端末Cnの端末情報記憶部819の例は実施例1で示した図5と同様のものとなる。」と記載され、上記二.【0108】には「通信端末識別情報の送信者の端末識別子と、自端末間の通信状況の他に、通信端末識別情報の送信者の周囲通信状況を通知するため、周囲通信情報を通信端末識別情報制御部915に渡してもよい。」と記載されていることから、引用例の「端末」は「通信端末識別情報」を受信することによって、「自端末と双方向通信可能な他の端末がどのような端末と通信可能かという情報を獲得」し、「自端末の周囲に存在する他の双方向通信可能な端末がどのような端末と通信可能かを知ることができる」ものである。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「複数の無線通信端末を用いてネットワークを構成し、無線通信端末が相互に通信し、情報を伝送する無線通信制御方法において、
ネットワークを構成する無線通信端末が通信端末識別情報を定期的にブロードキャストし、
自端末の周囲に存在する他の無線通信端末から通信端末識別情報を受信し、自端末が受信のみ可能な端末の情報、自端末と双方向通信可能な端末の情報、あるいは、自端末と通信可能な端末がどのような端末と通信可能かという情報を獲得し、
自端末の周囲に存在する双方向通信可能な他の端末がどのような端末と通信可能かを知ることができる、
無線通信制御方法。」

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「無線通信端末」はネットワークを構成し、相互に通信し、情報を伝送するものであるから、補正後の発明の「通信局」及び「通信局となる伝送装置」に相当し、引用発明の「通信制御」と補正後の発明の「伝送制御」とは実質的な差違はなく、引用発明の「周囲」という用語は、補正後の発明の「周囲」及び「周辺」に相当する。
さらに、引用発明の「通信端末識別情報」は通信可能な端末を識別して管理するための情報であるから、補正後の発明の「管理情報」に相当する。
そして、引用発明は各「無線通信端末」(「通信局」)が互いに「通信端末識別情報」(「管理情報」)を「定期的にブロードキャスト」し、補正後の発明は「ネットワークを構成する通信局」が「所定のフレーム周期の中」で「管理情報を交換する」ことから、両者とも「ネットワークを構成する通信局が周期的に管理情報を交換する」点で一致する。
また、引用発明の「双方向通信可能」と補正後の発明の「双方向の接続リンクのある」とは実質的な差違はなく、引用発明の「自端末が受信のみ可能な端末の情報」、「自端末と双方向通信可能な端末の情報」、「自端末と通信可能な端末がどのような端末と通信可能かという情報」は補正後の発明の「接続リンク情報」に相当するので、引用発明の「自端末の周囲に存在する他の無線通信端末から・・・、どのような端末と通信可能かを知ることができる」ことは、補正後の発明の「自局の周囲に存在する他の通信局からの接続リンク情報を獲得」することに相当する。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「複数の通信局となる伝送装置を用いてネットワークを構成し、情報を伝送する無線伝送制御方法において、
ネットワークを構成する通信局が周期的に管理情報を交換し、
前記管理情報から、伝送時において、自局の周囲に存在する他の通信局からの接続リンク情報を獲得する、
無線伝送制御方法。」

<相違点>
(1)補正後の発明は「所定のフレーム周期の中にネットワークを構成する通信局が管理情報を交換する管理情報伝送領域を設け」るのに対し、引用発明では「ネットワークを構成する通信局が周期的に管理情報を交換」するものの、「所定のフレーム周期の中」に「管理情報伝送領域」が設けられているかは不明である点。
(2)補正後の発明は「接続リンク情報に含まれている、自局の周辺に存在する他の通信局の遠方に存在する第3の通信局の存在を把握して、自局の周辺に存在する双方向の接続リンクのある他の通信局を介して第3の通信局宛の中継伝送が可能であるかを判断する」のに対し、引用発明では当該構成が不明である点。

そこで、上記相違点(1)について検討すると、複数の無線通信端末を有する無線ネットワークにおいて、無線通信端末が周期的に管理情報を交換するために所定のフレーム周期の中に管理情報を伝送するための領域を設けることは、特開平11-251992号公報(【請求項1】、図4)、特開平11-298480号公報(【請求項1】、図4 )、特開2000-92076号公報(【0027】?【0029】、図4)に記載されるように周知技術であり、引用発明において「通信端末識別情報」あるいは「端末識別情報」等の「管理情報」を各端末(通信局)が定期的にブロードキャストする際に、所定のフレーム周期の中に管理情報を伝送するための領域を設け、当該領域を使用するようにすることは、当業者が上記周知技術を利用して容易になし得ることである。
次に、上記相違点(2)について検討すると、上記引用例には、「自端末間の通信状況の他に、通信端末識別情報の送信者の周囲通信状況を通知」(【0108】)、「自端末と双方向通信可能な他端末がどの端末と通信可能か・・・管理する。」(【0094】)、「自端末と通信可能な端末がどのような端末と通信可能かを知ることができる。そして、このようにして得られた端末Cnの端末情報記憶部819の例は実施例1で示した図5と同様のものとなる。」(【0097】)と記載され、図5には、端末Cnが通信不可能とされる端末であって、端末Cnからみると端末C1、C2、C4の遠方にある端末C5、C8の情報が得られていることから、引用発明の「自端末の周囲に存在する・・・他の端末のリンク情報」からは、自端末(自局)の周囲(周辺)に存在する他の端末(通信局)の遠方に存在する第3の端末(通信局)の存在を把握できることは自明のことである。
そして、複数の無線通信端末を有する無線ネットワークにおいて、無線通信端末を介して中継伝送することは、上記特開平11-251992号公報(【0017】)、同特開平11-298480号公報(【0019】?【0020】)の他、特開平4-341031号公報(【0004】)、特開平8-97821号公報(【0011】、【0014】)、特開2000-115181号公報(【0018】)に記載されるように周知のことであり、上記引用例の記載(【0108】、【0094】、【0097】、図5)から、引用発明では、自端末の周囲に存在する双方向通信可能な他の端末のリンク情報から、当該他の端末とその先にある端末とのリンクの状況も知ることができるので、引用発明において、自端末(自局)の周囲(周辺)に存在する双方向通信可能な(双方向の接続リンクのある)他の端末(通信局)を介して遠方に存在する第3の端末(通信局)宛の中継伝送が可能であるか否かを判断するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、上記補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年9月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、「第2.1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から、当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-06 
結審通知日 2011-06-07 
審決日 2011-06-20 
出願番号 特願2000-178754(P2000-178754)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中木 努  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 新川 圭二
石井 研一
発明の名称 無線ネットワーク管理方法、無線伝送制御方法および無線伝送装置  
代理人 伊藤 仁恭  
代理人 角田 芳末  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ