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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1241019
審判番号 不服2010-3270  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-16 
確定日 2011-08-04 
事件の表示 特願2001- 77551「自動面付方法および自動面付装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月27日出願公開、特開2002-281276〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年3月19日の出願であって、平成21年11月13日付けで拒絶査定がなされたが、これに対し、平成22年2月16日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年2月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?4は、
「【請求項1】印刷機仕様に影響されない単位で複数の頁データのレイアウトを行ない1つのファイルとして製版面付データを生成するとともに、刷版イメージデータを構成する複数の製版面付データに対して各々別々のファイル名を付け、そのファイル名に刷版イメージデータを生成するときのレイアウトに関するデータを関連付けて保存する製版面付過程と、前記関連付けて保存されたデータを参照し、前記製版面付データをレイアウトして刷版イメージデータを生成する刷版面付過程と、を有することを特徴とする自動面付方法。
【請求項2】請求項1記載の自動面付方法において、前記製版面付過程および/または前記刷版面付過程を、製版に係わる情報を共有する複数の兼用過程として併行して実施することを特徴とする自動面付方法。
【請求項3】請求項2記載の自動面付方法において、前記製版に係わる情報には、頁データと、製造仕様と、印刷機仕様が含まれていることを特徴とする自動面付方法。
【請求項4】印刷機仕様に影響されない単位で複数の頁データのレイアウトを行ない、1つのファイルとして製版面付データを生成するとともに、刷版イメージデータを構成する複数の製版面付データに対して各々別々のファイル名を付け、そのファイル名に刷版イメージデータを生成するときのレイアウトに関するデータを関連付けて保存する製版面付手段と、前記関連付けて保存されたデータを参照し、前記製版面付データをレイアウトして刷版イメージデータを生成する刷版面付手段と、を具備することを特徴とする自動面付装置。」
と補正された。

上記補正は、請求項1及び4に記載した発明を特定するために必要な事項について限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1?4に記載された発明のうち、請求項4に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶理由に引用された特開平11-133583号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタル面付処理装置に関し、より特定的には、製版処理工程からのデジタルデータ出力を用いて、刷版・印刷処理工程でデジタル的な面付処理を行うデジタル面付処理装置に関する。」

(2)
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、製版工程と刷版・印刷工程の短縮・合理化を図るために上記CTPを用いた場合、フィルムのような中間媒体が存在せず、面付処理が製版工程に取り込まれる。このため、上記CTPを用いたシステムにおいては、刷版・印刷工程のみで可能だった一定の修正作業が製版工程まで巻き込んでしまう等のことから、現実には以下に示す課題が生じている。
【0008】(1)製版工程でのデジタル演算処理の段階で、刷版・印刷工程で用いる印刷機を特定しなければならない。演算データから直接刷版を作成するので、この演算データは、すでに印刷機に合致したものでなければならないからである。このため、製版会社は、今まで印刷機を特定する必要なく、フィルムを最終出力物として出力していただけで済んだのだが、CTPに対応するためには演算処理を行う前に印刷機を特定しなければならない、という新たな問題が発生する。
(2)確実な校正方法を提供する必要がある。フィルムを中間媒体とした場合における校正(フィルムを使用したケミカル校正や、刷版作成後に行われる校正機による校正)のように、デジタルデータ上でのデジタル的な校正の方法を確立する必要がある。
(3)刷版・印刷工程の修正が発生した場合には、再度製版工程に戻って演算からやり直しを行う必要がある。面付処理を製版工程に取り込んだため、フィルムを用いた場合のように、刷版・印刷工程での面付処理におけるようなフィルム単位での修正ができないためである。
(4)印刷時におけるページ単位の移動や色合わせができない。製版工程での演算後のデジタルデータは、ページ単位ではなく面付された形で作成されるためである。
・・・(中略)・・・
【0012】それ故、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服すべく、フィルム出力の代わりに演算後のファイル出力を用いて、製版工程に負担をかけることなく、刷版・印刷工程においてデジタル的な面付処理を可能としたデジタル面付処理装置を提供することである。」

(3)
「【0030】・・・(中略)・・・図2は、演算後ファイルのデータ構造の一例を示す。図2においては、印刷物が16ページ折りとなる場合に対応した演算後ファイル群を示しており、演算後ファイル群に含まれるRIPファイルが面付された結果が1面のラスタデータとなることを示している。
【0031】図2において、本発明の一実施形態に係るデジタル面付処理装置に用いる演算後ファイル201は、2種類のデータによって構成される。1つはRIP処理を行ったデータ(以下、RIPファイルと称する)202であり、もう1つは当該データに関する配置情報203である。RIPファイル202とは、絵柄,線画,文字列が配置され製版指示が行われた1ページ分のページデータを演算して、ラスタ形式で出力したデジタルデータのファイルである。なお、この演算処理では、後段の刷版・印刷工程においてドットゲイン調整を可能とするために、網掛処理(階調を大小の網点に変換する処理)を行っていないラスタ形式で出力している。このRIPファイル202は、図2に示すように、各ページごとに作成され1つの演算後ファイル201内に1つ以上含まれている。また、RIPファイル202の数は、製版工程を受け持つ会社等が使用する機器や仕事内容により、任意に決定することができる。配置情報203とは、演算後ファイル201に含まれるRIPファイル202の刷版上の配置に関するデータである。図2においては、4ページ、すなわち4つのRIPファイル202を1つの演算後ファイル201としている場合を例として挙げており、このとき配置情報203は、4ページ分のRIPファイル202の配置に関するデータを有している。この配置情報203には、ページサイズ,ページ原点と仕上がり原点とのオフセット,RIPファイルの向き,RIPの解像度等のデータが含まれる。
【0032】この演算後ファイル201の具体的な構成の一例を図3に示す。図3(a)は、演算後ファイル201の構成を示す図であり、図3(b)は、演算後ファイル201内の配置情報203の構成を示す図である。なお、本実施例では、RIPファイル202と配置情報203がそれぞれ独立したものとして説明しているが、例えば、RIPファイル202のヘッダ部分に配置情報203がそれぞれ書き込まれるようにしてもよい。
【0033】次に、図4を参照して、上記演算後ファイル201を用いてデジタル的に面付処理を行う本発明に係るデジタル面付処理装置について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係るデジタル面付処理装置の構成を示すブロック図である。図4において、本発明の一実施形態に係るデジタル面付処理装置1は、圧縮解凍部11と、面付部12と、殖版部13と、印刷情報付加部14と、コントロール部15と、カラーマッチング部16と、網点生成部17および18とを備えている。
【0034】デジタル面付処理装置1は、端末21と接続されており、デジタル面付処理装置1で行う処理の内容を端末21に表示する。また、デジタル面付処理装置1は、端末21からの指示を受けて適宜処理の内容を変更する。また、デジタル面付処理装置1は、コントロール部15を介して印刷機31と接続されている。これにより、端末21は、印刷機31の情報を知ることができ、あるいは印刷機31の情報を端末21から入力することもできる。さらに、デジタル面付処理装置1は、外部の記憶装置41と接続されており、必要に応じてファイルまたはデータを記録したり読み出したりすることもできる。これ以外に、デジタル面付処理装置1は、ネットワーク回線51と接続しており、ファイルやデータの記録,読み出しを行うことも可能である。
【0035】圧縮解凍部11は、受け取った演算後ファイル201が圧縮されている場合に、当該演算後ファイル201を解凍して元のサイズのファイルに戻す。この圧縮は、製版工程において演算後ファイル201が余りにも膨大である場合に行われることがあり、圧縮解凍部11は、これに対応したものである。面付部12は、演算後ファイル201内の配置情報203に基づき、RIPファイル202が左開きか右開きかを基に1枚の印刷物を折ったときに正しいノンブルで仕上がるような製本の規則(以下、単に製本規則と略す)に則った配置となるような面付データを作成する。ここで、面付データを作成する際に必要な印刷機31についての情報は、上述のようにコントロール部15を介して端末21に伝えられている。このため、面付部12は、端末21からの指示により配置情報203を適宜書き換えることで、常に適切な面付データを作成することができる。殖版部13は、複数の演算後ファイル201が有しているRIPファイル202を結合して、製本規則に則った1面のラスタデータとして、複数の演算後ファイル201の内容を1つの刷版上に配置する。この殖版部13で行う位置決めは、端末21の画面上で確認しながら行うことができる。」

(4)上記「RIP」に関して、段落【0003】には、「RIP」が「Raster Image Processing」の略である旨の記載がある。
また、段落【0032】において言及されている図3(a)には、「演算後ファイル構成」として、「ヘッダ」、「配置情報」、「RIPファイル1」、「RIPファイル2」、・・・「RIPファイルn」、「フッダ」からなるファイル構成が記載されている。

(5)
「【0039】上記構成からなるデジタル面付処理装置1における処理の流れを、以下に説明する。図5は、製版工程およびデジタル面付処理装置1を含んだ刷版・印刷工程における処理の流れの一例を示す図である。
【0040】図5を参照して、製版工程では、デザイン工程から出力されるDTP処理されたデジタル版下データを受けて、絵柄,線画,文字列の配置を行った後、ページ単位で製版に必要な処理を行う(ステップS401)。製版に必要な処理が終わると、次に各ページが製本規則に則った配置となるよう面付指示を行い、各ページを任意のグループ(同一折りあるいは同一面のグループ)に分ける(ステップS402)。このグループ分けに基づいて、RIP処理を行い(ステップS403)、当該グループ内の各ページごとのRIPファイル202および当該グループ単位での配置情報203からなる演算後ファイル201を作成する(ステップS404)。なお、上述したとおり、各ページごとのRIPファイル202は、網点処理前のページデータである。以上の製版工程での処理が終わると、演算後ファイル202は、記録媒体等の保存メディアまたはネットワークによる通信によって刷版・印刷工程へ送られる。この際、必要があれば演算後ファイル201の圧縮処理を行う。
【0041】製版工程から演算後ファイル201を受けた刷版・印刷工程は、まず当該演算後ファイル201の面付単位(上記ステップS402において面付指示した単位)が、印刷に用いる印刷機の1面の出力単位と合っているかを判断する(ステップS405)。なお、送られてきた演算後ファイル201が圧縮されている場合には、上記ステップS405の判断以前に解凍処理を行わなければならないのは無論のことである。この判断については、前述のとおり、印刷機31と接続されたコントロール部15が行う。ここで、演算後ファイル201の面付単位と印刷機31の1面の出力単位とが一致している場合には、そのまま次の処理に移る。しかし、例えば、演算後ファイル201は1面が4ページで面付されているのに印刷機31は1面が8ページの面付で印刷を行うものであるときには、当該演算後ファイル201と別の演算後ファイル201とを同一面に面付処理し、1面が8ページで面付されるように処理を行い、1面のラスタデータを作成する(ステップS406)。
【0042】このステップS406について、図7を参照してさらに詳細に説明する。図7は、1面が4ページで面付されている演算後ファイル201Aおよび201Bを面付処理することにより、1面が8ページで面付された1面のラスタデータ204A(片面のみ)を作成するプロセスを示したものである。
【0043】まず、デジタル面付処理装置1は、演算後ファイル201Aが有する配置情報203Aに基づいて、4つのRIPファイル202Aを配置する(図7(a))。続いて、演算後ファイル201Bが有する配置情報203Bに基づいて、4つのRIPファイル202Bを配置する(図7(b))。しかる後、殖版部13は、演算後ファイル201A,201Bの名称、あるいは拡張子、またはヘッダに記憶されている情報を元に、演算後ファイル201A,201Bが一連の続きページデータを有していることを認識する。そして、殖版部13は、製本規則に則った1面が8ページで面付されるような構成の1面のラスタデータを作成するため、配置情報203A,203Bに格納されているページ原点と仕上がり原点のオフセットを書き換える。この結果、2つの演算後ファイル201A,201Bは、1面が8ページで面付された1面のラスタデータ204Aとして構成されることとなる(図7(c))。このステップS406により、デジタル面付処理装置1は、複数の演算後ファイル201を1面のラスタデータ204Aに統合することができる。」

(6)上記段落【0042】?【0043】で言及されている図7(a)?(c)には、配置情報203として、「P.1[表、P10(x1,Y1)、RIPの向き(上)]」などと記載されているように、表裏を含む情報である刷版上での配置に関する情報が含まれていることが開示されている。

(7)以上を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「絵柄、線画、文字列が配置され製版指示が行われた1ページ分のページデータを演算して、ラスタ形式で出力したデジタルデータのファイルであるRIPファイル202を4つと、これらのRIPファイル202の刷版上の配置に関するデータである配置情報203とをヘッダとフッダの間に配置して1つの演算後ファイル201とするものであって、
製版工程では、ページ単位で製版に必要な処理を行い、その後に、各ページが製本規則に則った配置となるよう面付指示を行い、各ページを同一折りあるいは同一面のグループに分けてRIP処理を行い、当該グループ内の各ページごとのRIPファイル202および当該グループ単位での配置情報203からなる演算後ファイル201を作成し、
刷版・印刷工程では、殖版部13が、複数の演算後ファイル201が有しているRIPファイル202を結合して、配置情報203に基づいて製本規則に則った1面のラスタデータとして、複数の演算後ファイル201の内容を1つの刷版上に配置する、
デジタル面付処理装置。」

3.対比・判断
(1)本願補正発明と刊行物発明との対比
刊行物発明は、製版工程において、「各ページを同一折りあるいは同一面のグループに分けてRIP処理を行」うものであって、上記2.(2)に記されているように、「製版工程でのデジタル演算処理の段階で、刷版・印刷工程で用いる印刷機を特定しなければならない」という課題を解決するためのものであるから、製版工程において、上記「各ページを同一折りあるいは同一面のグループに分け」て行う個々の頁の「RIP処理」は、印刷機仕様に影響されない単位にグループ分けされていると解される。
そして、刊行物発明は、上記したように、印刷機仕様に影響されない単位にグループ分けされた上で、「製版工程では、ページ単位で製版に必要な処理を行い、その後に、各ページが製本規則に則った配置となるよう面付指示を行」うものであるから、刊行物発明は、印刷機仕様に影響されない単位にグループ分けした、複数のページのレイアウトを行う面付指示を行うものである。
また、刊行物発明における演算後ファイル201は、4つのRIPファイル202と配置情報203と、これらRIPファイル202と配置情報203の前後に配置されたヘッダとフッダとからなる1つの演算後ファイルであって、上記演算後ファイル201は、製版工程で作成されるものである。
なお、この点に関して補足すれば、演算後ファイル201は、もともと別のファイルである複数のRIPファイル202に由来するデータを有するものであるが、上記演算後ファイル201は、それら複数のRIPファイル202に由来する複数のデータを、配置情報203とともに“1つのファイル”として作成されるものであり、作成された後は、個々のRIPファイル202が単独で取り扱われることはなく、1つの演算後ファイル201として取り扱われるものである。
そうすると、刊行物発明の製版工程は、本願補正発明の製版面付過程に相当し、刊行物発明における、製版工程において作成される1つの演算後ファイル201は、本願補正発明の製版面付データに相当する。
以上のことから、本願補正発明と刊行物発明とは、「印刷機仕様に影響されない単位で複数の頁データのレイアウトを行ない1つのファイルとして製版面付データを生成する」製版面付過程を備える点で一致する。
なお、付言すれば、本願補正発明は、複数の頁のイメージデータを統合して1つのイメージデータとすることにまで、限定されていはいない。

刊行物発明は、「複数の演算後ファイル201が有しているRIPファイル202を結合して、製本規則に則った1面のラスタデータとして、複数の演算後ファイル201の内容を1つの刷版上に配置する」ものであるから、刊行物発明の「ラスタデータ」は、本願補正発明の「刷版イメージデータ」に相当する。
そして、刊行物発明は、ラスタデータ(刷版イメージデータ)を作成する際に、「複数の演算後ファイル201の内容を1つの刷版上に配置する」ものであって、それぞれの演算後ファイル201は、別々の内容を持つものであるから、それぞれの演算後ファイル201には、それぞれに対応する別々のファイル名が付けられていると解される。
そうすると、本願補正発明と刊行物発明とは、「刷版イメージデータを構成する複数の製版面付データに対して各々別々のファイル名を付けて保存する製版面付手段」を備え、「前記製版面付データをレイアウトして刷版イメージデータを生成する刷版面付手段」を備える点で共通する。

したがって、本願発明と刊行物発明とは、以下の点で一致し、相違する。
[一致点]
印刷機仕様に影響されない単位で複数の頁データのレイアウトを行ない、1つのファイルとして製版面付データを生成するとともに、刷版イメージデータを構成する複数の製版面付データに対して各々別々のファイル名を付けて保存する製版面付手段と、前記製版面付データをレイアウトして刷版イメージデータを生成する刷版面付手段と、を具備することを特徴とする自動面付装置。

[相違点]
本願補正発明は、製版面付手段が、製版面付データに対して付されたファイル名に刷版イメージデータを生成するときのレイアウトに関するデータを関連付けて保存し、刷版面付手段が、前記関連付けて保存されたデータを参照して、刷版イメージデータを生成するのに対して、
刊行物発明は、そのようなものとはなっていない点。

(2)相違点についての判断
本願補正発明は、「刷版面付手段が、前記関連付けて保存されたデータを参照して、刷版イメージデータを生成する」ものであって、「刷版イメージデータを生成するときのレイアウト」に「関連付けて保存されたデータ」は、「製版面付データに対して付されたファイル名」に関連付けて保存されるものであるから、上記「関連付け」は、(複数の頁データから構成される)製版面付データに対してなされるものであって、個々の頁データに対して関連付けられるものではない。
これに対して、刊行物発明は、製版工程で作成される演算後ファイル201が、「RIPファイル202の刷版上の配置に関するデータである配置情報203」を備えるものであって、上記RIPファイル202は個々の頁に対応したものであるから、刊行物発明においては、個々の頁データが刷版イメージデータを生成するときのレイアウトに関連付けられていることになる。
しかし、刊行物発明において、刷版工程で面付処理される対象は、個々の頁データがグループ単位に面付された製版データであるから、結局のところ、レイアウトが個々の頁データに関連付けられているにしても、レイアウトが製版データに関連付けられていることと何ら変わりはないことになる。
すわなち、製版工程で個々の頁のレイアウトを決めれば、刷版工程での製版面付データのレイアウトを決めたことになる。
それゆえ、刊行物発明において、製版面付手段が、個々の頁データに対して、刷版イメージデータを生成するときのレイアウトに関するデータを関連付ける代わりに、製版面付データに対して関連付けるようにすること、すなわち、本願補正発明の製版面付データに相当する刊行物発明の演算後ファイル201のファイル名にレイアウトに関するデータを関連付けることに格別の困難性はない。

したがって、本願補正発明は、刊行物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.予備的判断
本件補正によって、本願補正発明は、製版面付過程が「刷版イメージデータを構成する複数の製版面付データに対して各々別々のファイル名を付け、そのファイル名に刷版イメージデータを生成するときのレイアウトに関するデータを関連付けて保存する」過程を含むことになった。
そうすると、製版面付過程において、既に、刷版イメージデータを生成するときのレイアウトが定まっていることになる。
すなわち、製版面付過程において、刷版面付過程において定まるものである、刷版イメージデータを生成するときのレイアウトが既に定まっていることになるが、刷版イメージデータを生成するときのレイアウトは、印刷機仕様が定まらないと定まらないものである。
この点に関して、本願明細書の段落【0026】及び図4を参照すれば、生成された製版面付データに付されたファイル名に関連付けられた「刷版イメージデータを生成するときのレイアウトに関するデータ」である「位置」は、印刷用紙を印刷する刷版イメージデータにおける位置であることが記載されている。
一方、本願補正発明が解決しようとする課題は、段落【0006】に記載されているように、「使用する印刷機の決定が遅れることがある。また、頁データの修正等の理由によってレイアウトするべきデータの一部が揃わないことがある。このような場合には(2)(審決注:原文では丸数字)の面付工程を開始することができない。」ことである。
そうすると、解決しようとする課題は、使用する印刷機の決定の遅れへの対処であるが、解決するための手段は、印刷機仕様が定まらないと処理を進めることができないものとなって、請求項1に記載された本願補正発明と、発明の詳細な説明に記載された事項とが矛盾するから、本願の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。また、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるともいえない。
したがって、本願の明細書及び図面は、特許法第36条第4項及び第6項第1号の規定を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成22年2月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。
「請求項1】印刷機仕様に影響されない単位で頁データのレイアウトを行ない製版面付データを生成する製版面付過程と、前記製版面付データをレイアウトして刷版イメージデータを生成する刷版面付過程と、を有することを特徴とする自動面付方法。」

1.引用刊行物
原審拒絶理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記第2 2.に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明の限定事項である構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2 3.に記載したとおり、刊行物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.まとめ
したがって、本願発明は、刊行物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-02 
結審通知日 2011-06-09 
審決日 2011-06-21 
出願番号 特願2001-77551(P2001-77551)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 536- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 達朗  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 板橋 通孝
溝本 安展
発明の名称 自動面付方法および自動面付装置  
代理人 金山 聡  

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