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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1241028
審判番号 不服2010-6899  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-02 
確定日 2011-08-04 
事件の表示 特願2001- 9696「画像処理装置および画像処理装置の制御方法および記憶媒体およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 2日出願公開、特開2002-218258〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成13年1月18日に出願されたものであり、平成21年5月15日付けの拒絶理由通知に対して平成21年7月17日付けで手続補正書が提出されたが、平成21年12月22日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対して平成22年4月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されている。

第2 平成22年4月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成22年4月2日付けの補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
当該手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりのものである。

【請求項1】
カラー画像データ及び白黒画像データをそれぞれ入力可能な入力手段と、
前記入力手段により入力される画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された画像データを出力する出力手段と、
カラー画像データを白黒画像データに変換する変換手段と、
前記記憶手段に記憶された画像データが白黒画像データであるか、該画像データの少なくとも一部がカラー画像データであるかを示す情報を表示する表示手段と、
前記表示手段により表示された、少なくとも一部がカラー画像データであることを示す情報を見たユーザがカラー画像データを白黒画像データに変換して出力することを選べるよう、カラー画像データを白黒画像データに変換して出力するよう設定する設定手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の画像データのリストを表示するリスト表示手段と、
前記リストからユーザにより選択された画像データの少なくとも一部がカラー画像データであり、カラー画像データを白黒画像データに変換して出力することが前記設定手段により設定されていない場合に、前記リストからユーザにより選択された画像データの少なくとも一部のカラー画像データを前記変換手段により白黒画像データに変換することなく前記出力手段にて出力する第1の出力モードによる出力処理と、前記リストからユーザにより選択された画像データの少なくとも一部がカラー画像データであり、カラー画像データを白黒画像データに変換して出力することが前記設定手段により設定されている場合に、前記リストからユーザにより選択された画像データの少なくとも一部のカラー画像データを前記変換手段により白黒画像データに変換して前記出力手段にて出力する第2の出力モードによる出力処理を選択的に実行する制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
(以下、「本願補正後発明」とする。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号)の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.公知刊行物の記載

原査定の拒絶の理由で引用された刊行物2(特開平7-298067号公報)には、対応する図面と共に、以下の内容が記載されている。

(ア)「【請求項11】 モノクロ画像出力手段と、カラー画像出力手段と、出力しようとする一連の画像情報にカラー画像が含まれるか否かを判別する判別手段と、当該判別手段の判別結果を表示する表示手段と、画像データの出力先を使用者が選択指示する指示入力手段と、当該指示入力手段の指示に基づき、一連の画像情報を当該カラー画像出力手段及び当該モノクロ画像出力手段の一方に供給する供給手段とを有することを特徴とする画像処理装置。 」

(イ)「【0002】
【従来の技術】
通信回線を介して白黒画像を伝送するファクシミリ方式は周知であるが、この方式を拡張して、通信回線を介してカラー画像を受信できるようにしたカラー・ファクシミリ装置が提案されている。このカラー・ファクシミリ装置でも、従来の白黒ファクシミリ装置との接続性を確保できるように、G3規格又はG4規格の白黒画像伝送機能を具備するのが普通である。
【0003】
ファクシミリ装置は通常、受信画像を印刷出力するプリンタを具備する。カラー・ファクシミリ装置の場合には、カラー・プリンタを装備することになり、従来のカラー・ファクシミリ装置では、受信画像が白黒画像かカラー画像かに関わらず、装備されているカラー・プリンタで印刷出力するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般的にカラー・プリンタの印刷コストは非常に高くつくだけでなく、印刷出力に時間がかかる。従って、受信画像がすべて白黒であったり、白黒ページとカラー・ページが混在する場合であっても、従来のカラー・ファクシミリ装置では、印刷出力にコストだけでなく時間もかかってしまう。
【0005】
ファクシミリ装置以外にも、白黒画像とカラー画像の混在することのある画像情報を可視出力したいとき、同様の問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような不都合を解消する画像処理装置を提供することを目的とする。 」

(ウ)「【0007】
【課題を解決するための手段】
本出願に係る発明では、出力しようとする一連の画像情報にカラー画像が含まれるか否かを判別し、その判別結果に応じて、カラー画像が含まれる場合には、当該一連の画像情報をカラー画像出力手段に供給し、カラー画像が含まれない場合に、当該一連の画像情報をモノクロ画像出力手段に供給する。そして、各出力手段への供給状況を表示手段に表示する。
【0008】
本出願に係る発明ではまた、カラー画像を含むか否かをページ単位で判別し、カラー画像が含まれる場合その一連の画像情報をカラー画像出力手段に供給し、カラー画像が含まれない場合その一連の画像情報をモノクロ画像出力手段に供給する。そして、各ページについて両出力手段への供給状況を表示手段に表示する。
【0009】
本出願に係る発明ではまた、印刷しようとする一連の画像情報にカラー画像が含まれるか否かを判別し、その判別結果を表示すると共に、ユーザに出力先の選択を求める。ユーザの選択に従い、一連の画像情報をカラー画像出力手段又はモノクロ画像出力手段に供給する。
【0010】
本出願に係る発明ではまた、カラー画像を含むか否かをページ単位で判別し、その判別結果を表示すると共に、ユーザにページ毎の出力先の選択を求める。ユーザの選択に従い、各ページの画像情報をカラー画像出力手段又はモノクロ画像出力手段に供給する。 」

(エ)「【0028】
第4の処理方法では、印刷実行に先立ち、カラー/白黒判別回路14が、印刷しようとするページ毎にカラー画像が含まれるか否かを判別し、カラー画像が含まれるページ(カラー・ページ)については、表示装置24の液晶表示パネルに図5に示すようなメッセージを表示する。図4と同様に、メッセージの表示に合わせて、出力先を選択するためのタッチ・スイッチ24a,24bも表示する。ユーザは、タッチ・スイッチ24a,24bの一方を操作して、出力に使用するプリンタを選択する。「カラー」と表示されるタッチ・スイッチ24aが選択された場合、印刷すべきページの画像データはプリンタ・インターフェース32を介してカラー・プリンタ34に供給され、「白黒」と表示されるタッチ・スイッチ24bが選択された場合、印刷すべきページの画像データは自黒プリンタ28に印加される。図4に示すメッセージ及びタッチ・スイッチ24a,24bの画像は、主制御回路10の制御下でキャラクタ・ジェネレータ21が発生する。
【0029】
このようにして、第4の処理方法では、例えばカラー画像が少ししか含まれないページや、早く出力結果が欲しいページなど、カラー画像が含まれるページであっても、ユーザの希望によって選択的に白黒印刷することができるので、印刷時間及び印刷コストを節減できる。これも、使い勝手の向上に役立つ。」

(オ)「【0031】
以上では、カラー・ファクシミリ装置を例に説明してきたが、上記実施例で説明した技術が、白黒画像とカラー画像が混在することのある画像を印刷出力する装置一般に適用できることはいうまでもない。」

これら(ア)?(オ)の記載及び図面の内容を総合すると、刊行物2には、次の(カ)なる発明が記載されていると認められる。
(以下、これを「引用発明」と記す。)

[引用発明]
(カ)カラー画像が少ししか含まれないページや、早く出力結果が欲しいページなど、カラー画像が含まれるページであっても、ユーザの希望によって選択的に白黒印刷することを可能とし、印刷時間及び印刷コストを節減するためのものであって、
通信制御部、イメージスキャナ、プリンタ、メモリ等を備え、白黒ページとカラー・ぺージが混在する画像や、全てが白黒画像である白黒ページを受信する手段と、
印刷実行に先立ち、印刷しようとする画像データについて、カラー/白黒判別回路が、印刷しようとするページ毎にカラー画像が含まれるか否かを判別し、表示装置の液晶表示パネルに該ページが白黒画像であるか、該ページにカラー画像が混在しているかを示す情報を表示する表示手段と、
タッチ・スイッチとして表示手段に表示される「カラー」あるいは「白黒」の表示から、ユーザが何れかを選択する選択手段と、
印刷しようとするページがカラー画像が含まれるページである場合に、該ページの画像のデータを白黒プリンタに出力することが前記選択手段により選択されていない場合に、印刷しようとするページのデータをカラープリンタに出力する処理と、印刷しようとするページがカラー画像が含まれるページであり、カラー画像が含まれる画像のデータを白黒プリンタに出力することが前記選択手段により選択されている場合に、カラー画像が混在する該ページの画像のデータを白黒プリンタに出力する処理を選択的に実行する制御手段とを有する画像処理装置。

3.対比

本願補正後発明と当該引用発明(カ)とを対比する。

引用発明は、「通信制御部、イメージスキャナ、プリンタ、メモリ等を備え、白黒ページとカラー・ぺージが混在する画像や、全てが白黒画像である白黒ページ(カラー画像データ及び白黒画像データ)を受信する手段を有する画像処理装置(いわゆる複合機)であって、そのような画像処理装置(複合機)における「メモリ」は「入力される画像データを記憶する」ものであり、引用発明は、「入力手段により入力される画像データを記憶する記憶手段」を実質的に備えるものである。
また、刊行物2には、引用発明に相当する第4の処理方法以外に、第1から第3の処理方法が記載され(引用を省略)、この内、第1、第3の処理方法は、ファクシミリ受信中にカラー画像が含まれているか否かを判別することを要件としており、引用発明とした第4の処理方法においてはファクシミリ受信中にカラー画像が含まれているか否かを判別することが要件として記載されていないことから、引用発明における「印刷しようとするページ」はファクシミリ受信した画像のみならず、イメージスキャナにより読み取った画像をも印刷することを包含する。
したがって、引用発明における「印刷しようとするページ」とは、ファクシミリ受信し、保存されていないページに限定されるものではなく、引用発明における印刷対象はメモリ(記憶装置)に保存されているページをも当然包含する。

一方、本願補正後発明における「前記記憶手段に記憶された画像データが白黒画像データであるか、該画像データの少なくとも一部がカラー画像データであるかを示す情報を表示」とは、発明の詳細な実施例(例えば【0117】)を参酌するに、“ユーザが選択した画像データ”について、「該画像データの少なくとも一部がカラー画像データであるかを示す情報を表示する表示」するものであって、これは引用発明における「印刷しようとするページ」について表示することと等価である。

したがって、引用発明の目的は本願補正後発明の目的である「保存している文書をユーザが簡単な操作により自由に、カラーもしくは白黒でプリントすることができるフレキシブルなカラーデジタル複写機等の画像処理装置および画像処理装置の制御方法および記憶媒体を提供すること」(明細書の段落【0006】の記載)と変わるものではない。

そして、引用発明において、「タッチ・スイッチとして表示手段に表示される「カラー」あるいは「白黒」の表示から、ユーザが何れかを選択する選択手段」は本願補正後発明における「設定手段」に相当する。

また、引用発明において、「印刷しようとするページがカラー・ぺージが混在する画像である場合に、カラー画像データを白黒プリンタに出力することが前記選択手段により選択されていない場合に、印刷しようとするページを前記変換手段によりカラープリンタに出力する処理と、印刷しようとするページがカラー画像データであり、カラー画像データを白黒プリンタに出力することが前記選択手段により選択されている場合に、カラー・ぺージが混在する画像を白黒プリンタに出力する処理」を選択して処理することは、本願補正後発明における「第1の出力モード」「第2の出力モード」を選択的に実行することに相当する。(些細な相違については相違点(ケ)として後述する。)

そうすると、本願補正後発明と引用発明は以下の点で一致、あるいは相違する。

[一致点]

(キ)カラー画像データ及び白黒画像データをそれぞれ入力可能な入力手段と、
前記入力手段により入力される画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された画像データを出力する出力手段と、
(印刷しようとする、)記憶手段に記憶された画像データが白黒画像データであるか、該画像データの少なくとも一部がカラー画像データであるかを示す情報を表示する表示手段と、
前記表示手段により表示された、少なくとも一部がカラー画像データであることを示す情報を見たユーザがカラー画像データを白黒画像として印刷することを選べるよう設定する設定手段と、
カラー画像データを白黒画像として印刷することが前記設定手段により設定されていない場合に、画像データの少なくとも一部のカラー画像データをカラー画像として印刷するようにする第1の出力モードによる出力処理と、カラー画像データを白黒画像として印刷することが前記設定手段により設定されている場合に、画像データの少なくとも一部のカラー画像データを白黒画像として印刷するようにする第2の出力モードによる出力処理を選択的に実行する制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置。

[相違点]

(ク)本願補正後発明が「記憶手段に記憶された複数の画像データのリストを表示するリスト表示手段」を有しているのに対し、引用発明は、そのような表示手段について言及されていない点。

なお、本願補正後発明における「記憶手段に記憶された複数の画像データのリストを表示するリスト表示手段」は単に「記憶手段に記憶された複数の画像データのリストを表示する」ものである。
本願補正後発明における「前記記憶手段に記憶された画像データが白黒画像データであるか、該画像データの少なくとも一部がカラー画像データであるかを示す情報を表示する表示」とは、印刷しようとして選択した画像データに対して「画像データの少なくとも一部がカラー画像データであるかを示す情報を表示」するものであって、「記憶手段に記憶された複数の画像データのリストを表示するリスト表示」において「画像データの少なくとも一部がカラー画像データであるかを示す情報を表示」するものではない。そのような実施例は発明の詳細な説明に記載されてはいない。

(ケ)第1の出力モード、第2の出力モードが、本願補正後発明において、「少なくとも一部のカラー画像データ」について、「白黒画像データに変換することなく出力手段にて出力する第1の出力モードによる出力処理」と、「変換手段により白黒画像データに変換して出力手段にて出力する第2の出力モードによる出力処理」の何れかに制御するものであるのに対し、引用発明では、「カラープリンタに出力」するか「白黒プリンタに出力」するかを制御している点。

4.相違点の判断

相違点(ク)について検討する。

複写機においても、ファクシミリ装置においても、印刷しようとする画像データが記憶装置に記憶され、記憶されているデータの一覧を表示させ、表示された中から所望のものを選択して印刷するような機能は極めて普通のものである。
複写機において、スキャナーで複数の文書を読み取っておき、必要なときに必要なものを印刷すること、また、ファクシミリ装置において、受信時に即時印刷することなく、受信データをメモリに保存しておき、その後必要なときに必要なものを印刷することは日常的に行われている。
したがって、引用発明のような画像処理装置について、複写機としてみても、ファクシミリ装置としてみても、そのように構成することは設計的事項にすぎないことである。

相違点(ケ)について検討する。

本願補正後発明が「少なくとも一部のカラー画像データ」について「カラー画像データ」として出力するか「白黒画像データ」として出力するかを選択することは、引用発明が「カラープリンタ」に出力するか「白黒プリント」に出力することと同様の目的に対する具現化手段である。
そして、本願発明において、変換せずに「カラー画像データ」を出力することは「カラー画像」として印刷することであるから、「カラー画像データ」を出力することは「カラープリンタ」で印刷することと等価である。
一方、「少なくとも一部のカラー画像データ」を白黒画像として印刷する選択をした場合、本願発明はカラー画像データを白黒データに変換した後の画像データをプリンタに出力しているのであって、引用発明はカラー画像データを白黒画像に変換することについて言及されていない。相違点(ケ)の実質的相違はこの点にある。

しかしながら、引用発明において、印刷を実行するプリンタが白黒プリンタであっても、プリンタに入力されるデータがカラー画像データであれば、入力されたカラー画像データは白黒画像データに変換されて印刷されるのであって、印刷しようとする画像データは変換されずに印刷されるものではない。
プリンタがカラープリンタであっても、白黒プリンタであっても、印刷しようとする画像データがカラー画像データであれば、必ず白黒画像データに変換される必要があり、引用発明において、白黒プリンタを選択したからといっても、白黒プリンタに入力されるデータがカラー画像データであれば、必ず白黒画像データに変換される必要がある。
すなわち、カラー画像データを白黒画像に印刷する場合には、カラー画像データから白黒画像データに変換は必須であり、この変換を、プリンタへの入力前に実行するか、プリンタへの入力後の何れかにおいて実行する必要がある。

一方、一般に、伝送されるデータに何らかの必須処理を行った上で所望の機能を実行するようなものにおいて、該必須処理を所望の機能を実行する装置への伝送データ入力前に実行するか、伝送されたデータの入力後に実行するかは二者択一の問題であり、何れにするかは、諸事情を考慮して決定すべき設計的事項にすぎない。
してみれば、カラー画像データを白黒印刷しようとする場合に、プリンタに白黒データに変換したデータを出力するか、未変換データを出力するかという選択をすることは、変換という必須処理をプリンタへの入力前に実行して出力するか、変換という必須処理をプリンタへの入力後に実行することとして変換せずに出力するかするかという選択をすることと等価であるから、カラー画像データを白黒印刷しようとする場合に、プリンタに白黒データに変換したデータを出力するか、未変換データを出力するかは設計的事項にすぎないことである。

引用発明は、その前提として「カラープリンタ」と「白黒プリンタ」の双方を備えており、その前提においてプリンタを選択することをその発明の特徴としているが、そもそも1台のカラープリンタで「カラー画像」の印刷と「白黒画像」の印刷を行うように構成されているシステムは極めて普通のシステム構成であり、複合機としても、カラープリンタと白黒プリンタの双方を備えていないものが多数である。引用発明を、2種のプリンタを備えずに1台のプリンタ(カラープリンタである必要はある)を備えるシステムとして構築することに、格別の契機を必要としない。
そして、引用発明を、2種のプリンタを備えずに1台のプリンタ(カラープリンタである必要はある)を備えるシステムとして構築すれば、当然の結果として、プリンタを選択することに代えて、出力する画像データの変換を行うことになる。そうでなければプリンタは白黒画像として印刷することを認識することができない。

引用発明において「カラープリンタに出力」するか「白黒プリンタに出力」するかを選択することは、カラー印刷するか、白黒印刷するかを選択していることに他ならず、設定(選択)する第1の出力モード、第2の出力モードについて、引用発明において、「カラープリンタに出力」するか「白黒プリンタに出力」するかを制御することに代えて、本願補正後発明のごとく、「少なくとも一部のカラー画像データ」について、「白黒画像データに変換することなく出力手段にて出力する」か「変換手段により白黒画像データに変換して出力手段にて出力する」かの何れかに制御するものとすることは、当業者が容易に想到することである。

また、以上を総合しても、相違点(ク)?(ケ)は、格別想考困難なことではなく、本願補正後発明は、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと判断される。
よって、本願補正後発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができたものではない。

5.補正却下の[理由]についてのむすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成22年4月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成21年7月17日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項11までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。

【請求項1】
カラー画像データを入力可能な入力手段と、
前記入力手段により入力される画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された画像データを出力する出力手段と、
カラー画像データを白黒画像データに変換する変換手段と、
前記記憶手段に記憶された画像データが白黒画像データであるか、該画像データの少なくとも一部がカラー画像データであるかを示す情報を表示する表示手段と、
前記表示手段により表示された、少なくとも一部がカラー画像データであることを示す情報を見たユーザがカラー画像データを白黒画像データに変換して出力することを選べるよう、カラー画像データを白黒画像データに変換して出力するよう設定する設定手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の画像データのリストを表示するリスト表示手段と、
前記リストからユーザにより選択された画像データの少なくとも一部がカラー画像データであり、カラー画像データを白黒画像データに変換して出力することが前記設定手段により設定されていない場合に、前記リストからユーザにより選択された画像データを前記変換手段により白黒画像データに変換することなく前記出力手段にて出力する第1の出力モードによる出力処理と、前記リストからユーザにより選択された画像データの少なくとも一部がカラー画像データであり、カラー画像データを白黒画像データに変換して出力することが前記設定手段により設定されている場合に、前記リストからユーザにより選択された画像データを前記変換手段により白黒画像データに変換して前記出力手段にて出力する第2の出力モードによる出力処理を選択的に実行する制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置。

2.引用刊行物に記載の発明

原査定の拒絶理由に引用された刊行物2および、その記載事項は、前記「第2における[理由]の2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願請求項1に係る発明は、前記「第2における[理由]の1.」で検討した本願補正後発明から、平成22年4月2日付けの手続補正による限定事項を省いたものである。
そうすると、本願請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正後発明が、前記「第2における[理由]の4.」に記載したとおり、引用刊行物2に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用刊行物2に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物2に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 まとめ

以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明が、平成21年5月15日付け拒絶理由通知における引用刊行物2に記載された発明に基づいて拒絶すべきとした拒絶査定は正当なものである。
したがって、原査定を取り消す。本願は特許すべきものであるとの審決を求める、という本願審判請求の趣旨は認められない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-02 
結審通知日 2011-06-07 
審決日 2011-06-21 
出願番号 特願2001-9696(P2001-9696)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 好一  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 千葉 輝久
溝本 安展
発明の名称 画像処理装置および画像処理装置の制御方法および記憶媒体およびプログラム  
代理人 水垣 親房  

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