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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1241030
審判番号 不服2010-8300  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-19 
確定日 2011-08-04 
事件の表示 特願2003-153057「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月16日出願公開、特開2004-350973〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年5月29日の出願であって、平成22年1月13日付け(発送:1月19日)で拒絶査定され、これに対し、同年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。


2.平成22年4月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年4月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成22年4月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】 始動信号の入力に基づいて、乱数を抽出する抽選手段と、
上記抽選手段によって抽出された乱数を格納する抽選結果格納手段と、
上記抽選結果格納手段に格納された乱数を取り出して、該乱数と、現在の抽選確率とに基づいて、該乱数が当り遊技に該当する値であるかを判断すると共に、該判断された当り遊技が通常の抽選確率の遊技を提供する通常当り遊技であるか、或いは該通常当り遊技より抽選確率が高い高確率の抽選確率の遊技を提供する高確率当り遊技であるかを判断する当り遊技判断手段と、
図柄を変動表示した後に、予め決定された図柄で停止表示する変動表示手段と、
上記当り遊技判断手段による判断結果に従って通常当り遊技、又は高確率当り遊技と、通常の抽選確率の遊技、又は高確率の抽選確率の遊技とを提供する遊技提供手段と、
上記当り遊技判断手段により上記乱数が当り遊技に該当する値であると判断された場合に上記変動表示手段に停止表示させる図柄として、通常当り遊技が提供されることを示す通常当り図柄、または高確率当り遊技が提供されることを示す高確率当り図柄を決定する大当り図柄決定手段と、
上記大当り図柄決定手段により決定される図柄に関する乱数を記憶する図柄情報記憶手段と、
上記抽選結果格納手段に格納された乱数が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くかを、上記図柄情報記憶手段に記憶された前回の大当りの図柄に関する乱数のみに基づいて判断する当り遊技予告手段と、
上記当り遊技予告手段が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くと判断した場合に、当り予告報知を行う予告報知手段と
を備える遊技機。
【請求項2】 上記予告報知手段を、上記当り遊技予告手段が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くと判断することが出来なかった場合に、外れ予告報知を行うとしたことを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】 上記予告報知手段を、上記当り遊技予告手段が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くと判断することが出来なかった場合に、外れ予告報知を行うと共に、上記当り遊技予告手段が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くと判断した場合に、当り予告報知を行うとしたことを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項4】 上記予告報知手段による当り予告報知、又は外れ予告報知の実行は、上記抽選結果格納手段に上記抽選手段によって抽出された乱数が格納されたときであることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の遊技機。
【請求項5】 上記当り遊技判断手段が当り遊技であると判断することになる乱数は、通常当り遊技より、高確率当り遊技の方が多く用いられることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の遊技機。
【請求項6】 上記予告報知手段による当り予告報知、又は外れ予告報知は、該当り遊技予告手段が判断に用いた乱数の値別に予告報知の有無が決定されることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の遊技機。
【請求項7】 上記予告報知手段による当り予告報知、又は外れ予告報知は、音響報知、音声報知、発光報知、色彩変更報知、図柄変更報知、キャラクタ変更報知、具象部材の移動報知、触覚報知、臭覚報知、又は画像報知により行われることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の遊技機。」
に補正された。

本件補正は、補正前の請求項1における「図柄に関する情報」を、「図柄に関する乱数」とし、また、「図柄に関する情報に基づいて判断する」を、「図柄に関する乱数のみに基づいて判断する」としたものであって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反しない。
そこで、以下、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて検討する。

(2)先願に記載された事項
原査定の拒絶の理由において先願1として引用された、特願2002-97900号の願書に最初に添付された明細書又は図面(特開2003-290511号、以下「先願明細書等」という)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0006】
【課題を解決するための手段の具体例およびその効果】
(1) 表示状態が変化可能な可変表示手段(可変表示装置8)を備え、該可変表示手段による可変表示の実行条件(たとえば、始動入賞、所定図柄停止、2段階入賞等)が成立した後、可変表示の開始条件(たとえば、変動開始コマンド受信等)の成立にもとづいて表示結果を導出表示させるための可変表示を開始し、導出表示された表示結果があらかじめ定められた特定表示結果(たとえば、「777」等ゾロ目)となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態(大当り状態)に制御可能となる遊技機(パチンコ遊技機1)であって、前記表示結果を前記特定表示結果とするか否かの決定に用いられる数値を更新(たとえば、加減乗除更新、無作為更新等)する数値更新手段(たとえば、大当り判定用ランダムカウンタ)と、該数値更新手段から抽出された抽出値が前記可変表示の開始条件成立時にあらかじめ定められた判定値(たとえば、「7」)と所定の関係(たとえば、一致関係、2倍した数値と一致等)になっているか否かを前記可変表示の実行条件成立時に判定し、該所定の関係になっているときに前記表示結果として前記特定表示結果とすることを決定する特定表示結果決定手段(図13等参照)と、あらかじめ定められた確率向上条件(たとえば、高確率フラグオン・確変フラグオン等)が成立したときに、前記判定値の個数を増加することにより前記特定表示結果とする確率を向上させ確率状態を変動させる確率変動手段(図13のSC02とSC11等)と、前記可変表示の実行条件成立時に当該可変表示の実行条件成立にもとづく可変表示の開始条件成立時における確率状態(たとえば、大当り確率、確変状態等)を予測する確率状態予測手段(図13のSC01等参照)と、前記表示結果が前記特定表示結果となることを予告報知(図9等参照)するか否かを決定する予告報知決定手段(図13参照)とを備え、前記確率状態予測手段により判定された確率状態において用いられる前記判定値と前記抽出値が所定の関係になっているか否かの判定を行ない、当該判定の結果にもとづいて、前記予告報知を行なうか否かを前記可変表示の実行条件成立時に決定する。
【0007】上述の構成によれば、実行条件成立時にこの実行条件成立に起因する開始条件成立時の大当りとなる確率を判定し、その確率にもとづき大当りとなり得るか否かの判定が行なわれ、その判定結果にもとづいて予告演出を実行するか否かの決定を行なうことができる。これにより、所定の確率状態時のみ予告がなされる判定にもとづいた予告を、所定の確率状態が終了した後に実行してしまうことを防止することができるとともに、所定の確率状態時には予告演出が行なわれない、もしくは、所定の確率状態時における予告が行なわれる頻度が変わってしまう不都合を防止することができる。すなわち、常に実際の確率状態に応じた判定で予告を行なうことができるため、かかる不都合を防止することができる。
【0008】(2) 前記確率向上条件は、前記表示結果が前記特定表示結果のうちの特別表示結果(たとえば、「777」等ゾロ目)となったことにより成立し、前記可変表示の実行条件の成立時に前記表示結果が前記特別表示結果となるか否かを判定する特別表示結果判定手段(図13のSC01)を含み、前記確率状態予測手段は、前記特別表示結果判定手段の判定にもとづいて、前記確率状態を予測する。
【0009】上述の構成によれば、将来的な確率変動条件の成立を、あらかじめ確認できるので、より正確な確率状態を判定できる。」
(イ)「【0032】始動入賞口14に入った始動入賞玉は、始動口スイッチ17によって検出される。始動口スイッチ17で打玉が検出されると、可変表示装置8の特別図柄が可変開始する。たとえば、特別図柄の可変表示中に打玉が始動口スイッチ17で検出された場合には、その始動入賞が記憶され、特別図柄の変動が終了して再度、変動を開始可能な状態になってからその始動入賞記憶にもとづいて特別図柄が可変開始する。この始動入賞記憶の上限はたとえば「4」に定められており、現時点での始動入賞記憶数は特別図柄表示部9内に表示される始動入賞記憶表示により表示される。始動入賞記憶表示は、始動入賞が記憶される毎に、その点灯表示を1つ追加して点灯する。そして、特別図柄表示部9において特別図柄の可変表示が開始される毎に、点灯表示を1つ消灯させる。
【0033】可変表示装置8における左中右の各特別図柄のスクロールは、たとえば、左図柄、中図柄、右図柄の順で終了して最終的な表示結果が導出表示される。その結果、同一種類の図柄のゾロ目(たとえば、111、222等)が停止表示されると大当りとなる。大当りが発生すれば、ソレノイド21の励磁により開閉板20が傾動して可変入賞球装置19の大入賞口が開口する。これにより、可変入賞球装置19が遊技者にとって有利な第1の状態となる。この第1の状態は、所定期間(たとえば30秒間)の経過または打玉の所定個数(たとえば10個)の入賞のうちいずれか早い方の条件が成立することにより終了し、遊技者にとって不利な第2の状態となる。大入賞口には、特定領域(Vポケット)に入った入賞玉を検出するVカウントスイッチ22と、特定領域以外の通常領域へ入賞した入賞玉を検出するカウントスイッチ23とが設けられている。第1の状態となっている可変入賞球装置19内に進入した打玉が特定領域(Vポケット)に入賞してVカウントスイッチ22により検出されれば、その回の第1の状態が終了するのを待って再度開閉板20が開成されて第1の状態となる。この第1の状態の繰返し継続制御は最大15回まで実行可能であり、繰返し継続制御が実行されている遊技状態を特定遊技状態(大当り状態)という。なお、繰返し継続制御において、可変入賞球装置19が第1の状態にされている状態がラウンドと呼ばれる。繰返し継続制御の実行上限回数が16回の場合には、第1ラウンドから第16ラウンドまでの16ラウンド分、可変入賞球装置19が第1の状態にされ得る。
【0034】可変表示装置8に表示された大当りの結果が予め定められた確変図柄のゾロ目により構成されるものである場合には、通常遊技状態に比べて大当りが発生する確率が向上された確率変動状態となる。以下、確変図柄による大当りを確変大当りという。また、確変図柄以外の大当り図柄を非確変図柄といい、非確変図柄のゾロ目による大当りを非確変大当りという。確変大当りが発生すると、所定の継続期間だけ、確率変動状態に制御される。また、この期間内に、再度確変大当りが発生した場合には、2回目の確変大当りに伴う特定遊技状態の終了後に、再び確率変動状態となる。
【0035】したがって、確変大当りが連続する回数を制限しない場合には、極めて長時間に亘って確率変動状態に繰り返し制御される場合があり、特別遊技状態により遊技者の射幸心を煽り過ぎてしまうことになる。
【0036】そこで、このパチンコ遊技機1では、確率変動状態の継続制御が無制限に行なわれることを制限するために、確率変動状態中に確変大当りが連続的に発生する回数について上限回数が設定されている。そして、この上限回数にもとづいて大当りの表示態様が非確変大当りとされた場合には、その時点で確率変動状態の継続制御が強制的に終了する。なお、確変図柄での大当りを禁止する制限が行なわれることは、リミッタの作動と呼ばれる。」
(ウ)「【0058】ランダム1は、始動記憶がある場合にその始動記憶にもとづく特別図柄の可変表示の結果を大当りとするか否かを始動入賞時に決定するために用いられる大当り決定用ランダムカウンタである。このランダムカウンタ1は、タイマ割込毎(具体的には2msec)に1ずつ加算され、0から加算更新されてその上限である300まで加算更新された後再度0から加算更新される。
【0059】ランダム2は、ランダム1で大当りと決定された場合の停止図柄(左,中,右が同一の停止図柄)を始動入賞時に決定するために用いられるランダムカウンタである。また、ランダム2での抽出値が奇数であるか偶数であるかにより、前述した確率変動状態へ移行されるか否かが決定される。」
(エ)「【0084】S03では、ゲートスイッチ12、始動口スイッチ17、Vカウントスイッチ22、カウントスイッチ23等の状態を入力し、各入賞口や可変入賞球装置に対する入賞があったか否か等を判定するスイッチ処理がなされる。始動口スイッチ17により始動入賞が検出された場合には、このスイッチ処理において、始動記憶処理が実行される。具体的には、始動口スイッチ17により始動入賞が検出されると、そのタイミングで大当り判定用のランダム1カウンタのカウント値が抽出され、始動記憶用の特別図柄判定用バンクにその抽出値が記憶される。これにより始動記憶がなされる。始動記憶用の特別図柄判定用バンクは、バンク0?バンク3の4箇所から構成されており、この4箇所のバンクによって最大4個の始動記憶が可能となる。よって、始動入賞が検出された際にすべてのバンクに記憶がある場合には、その始動入賞が無効とされる。」
(オ)「【0092】図11は、図10のS07により示された特別図柄プロセス処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。この特別図柄プロセス処理は、SA01の入賞確認処理が実行された後に特別図柄用プロセスフラグの値に応じて、10種類の処理(SA02?SA11)の内、いずれかが実行されるように制御される。SA01?SA11において、以下のような処理が実行される。
【0093】SA01において、入賞確認処理が行なわれる。始動入賞口14(この実施の形態では可変入賞球装置15の入賞口)に打玉が入賞して始動口スイッチ17がオンした場合に、各種の乱数判定処理が行なわれ、抽出した乱数を各乱数記憶領域に記憶する処理が行なわれる。この処理については、図12等を用いて後述する。
【0094】SA02において、特別図柄変動待ち処理が行なわれる。始動入賞があるか否か(始動記憶があるか否か)を判定し、始動入賞がない場合には特別図柄表示部9における表示状態を客待ちのための待機状態にするための指令情報を設定し、始動入賞がある場合には特別図柄プロセスフラグを更新して特別図柄判定処理に移行可能とする処理である。
【0095】SA03において、特別図柄判定処理が行なわれる。特別図柄の可変表示が開始できる状態になると、始動入賞記憶数を確認する。始動入賞記憶数が0でなければ、ランダム1カウンタを利用し抽出した大当り判定用乱数の値に応じて、大当りとするかはずれとするかを決定する。
【0096】SA04において、停止図柄設定処理が行なわれる。ランダム4カウンタを利用し抽出したはずれ図柄決定用乱数の値に応じて、左中右図柄の停止図柄を決定する。
【0097】SA05において、変動パターン設定処理が行なわれる。予告演出フラグがセットされているか否か等に応じて、ルックアップする可変表示パターン決定用テーブルの決定がなされ、変動パターン決定用乱数の値に応じて可変表示パターンを決定する。
【0098】SA06において、全図柄変動開始処理が行なわれる。特別図柄表示部9において全図柄が変動開始されるように制御する。このとき、表示制御基板80に対し表示制御コマンドとして、変動パターンコマンドと、左中右予定停止図柄(最終停止図柄)をそれぞれ指令する左,中,右の3つの停止図柄コマンドとが送信される。
【0099】SA07において、全図柄停止待ち処理が行なわれる。所定時間が経過すると、特別図柄表示部9において表示される全図柄が停止されるように制御する。また、全図柄停止のタイミングまで、所定のタイミングで左中図柄が停止されるように制御する。
【0100】SA08において、大当り表示処理が行なわれる。ランダム1にもとづく抽出値が大当り状態を発生させる値であった場合には、ランダム2により抽出された値に対応した表示制御コマンドが表示制御基板80に送信されるように制御するとともに内部状態(プロセスフラグ)をステップSA09に移行するように更新する。そうでない場合には、内部状態をステップSA02に移行するように更新する。また、表示制御基板80の表示制御用マイクロコンピュータは表示制御コマンドのデータにしたがって、特別図柄表示部9に大当り表示を行なう。大当り表示は遊技者に大当りの発生を報知するためになされる処理である。」
(カ)「【0104】前述したように、始動入賞口14に打玉が入賞すると、遊技制御基板31は、特別図柄プロセス処理において、その始動入賞に対する特別図柄の変動開始時の確率状態を判定し、その確率状態にもとづき大当りとするかはずれとするかの決定、リーチ成立の決定、停止図柄の決定等を行ない、その決定に応じた判定結果毎に設定されている振分け確率にしたがい予告演出フラグのセットがなされ、変動パターンコマンドが決定される。表示制御基板80側の表示制御用マイクロコンピュータは、遊技制御基板31からの変動パターンコマンドに応じて図柄変動を行なう。
【0105】図12は、図11の特別図柄プロセス処理で説明した2ms毎に行なわれるSA01の入賞確認処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【0106】まず、SB01では、始動入賞があったか否かの判別がなされる。始動入賞がなかった場合は入賞確認処理を終了し、始動入賞があった場合はSB02に移行し、始動記憶数が「4」であるか否かの判別がなされる。始動入賞記憶数が「4」であった場合は入賞確認処理を終了し、始動入賞記憶数が「4」でなかった場合にはSB03に移行し始動記憶数に「1」加算する処理が行なわれる。
【0107】次に、SB04では、前述したランダム1,2,3,4のカウンタ値を抽出する処理が行なわれる。SB05では、乱数判定処理が行なわれる。ここでは、後述するように各種ランダムカウンタ値にもとづきコマンドの設定がなされる。SB06では、SB04で抽出したカウンタ値をそれぞれ対応した乱数記憶領域に記憶する処理が行なわれる。
【0108】図13は、図10の入賞確認処理で説明したSB05の乱数判定処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【0109】まず、SC01では、確率状態が高確率状態であるときにセットされる高確率フラグが「オン」になっているか否かの判別がなされる。かかる高確率フラグは、後述するSC09・SC18で「オン」になされ、SC07・SC16で「オフ」になされる。高確率フラグが「オン」であったときはSC11に移行し、「オン」でなかったときはSC02に進み、ランダム1カウンタを利用して抽出したカウント値が大当りとなる「7」であったか否かの判別がなされる。カウント値が「7」であった場合にはSC06に移行しランダム2カウンタを利用し抽出したカウント値が確率変動大当りとなる「奇数」であったか否かの判別がなされ、「奇数」であった場合はSC09において高確率フラグを「オン」にする処理がなされた後、SC10において低確率時テーブルをルックアップし確変大当り事前判定時の振分け率(RS1-4)にしたがい連続予告数に対応する予告演出フラグのセットがなされ乱数判定処理を終了する。また、「奇数」でなかった場合はSC07において高確率フラグを「オフ」にする処理がなされた後、SC08において低確率時テーブルをルックアップし非確変大当り事前判定時の振分け率(RS1-3)にしたがい連続予告数に対応する予告演出フラグのセットがなされ乱数判定処理を終了する。
【0110】また、SC02で大当りではないと判別された場合にはSC03へ移行し、ランダム3カウンタを利用して抽出したカウント値がリーチ状態になりうるカウント値「11」であったか否かの判別がなされる。「11」であった場合にはSC04において低確率時テーブルをルックアップしリーチ事前判定時の振分け率(RS1-2)にしたがい、「11」でなかった場合は低確率時テーブルをルックアップしはずれ事前判定時の振分け率(RS1-1)にしたがい、それぞれ連続予告数に対応する予告演出フラグのセットがなされ乱数判定処理を終了する。
【0111】次に、SC01において高確率フラグが「オン」であったときにはSC11に進み、ランダム1カウンタを利用して抽出値が「7,17,41,57,107」のいずれかであったか否かの判別がなされ、いずれかであった場合にはSC15へ移行し、ランダム2カウンタを利用し抽出したカウント値が確率変動大当りとなる「奇数」であったか否かの判別がなされ、「奇数」であった場合はSC18において高確率フラグを「オン」にする処理がなされた後、SC19において高確率時テーブルをルックアップし確変大当り事前判定時の振分け率(RS2-4)にしたがい連続予告数に対応する予告演出フラグのセットがなされ乱数判定処理を終了する。また、「奇数」でなかった場合はSC16において高確率フラグを「オフ」にする処理がなされた後、SC17において高確率時テーブルをルックアップし非確変大当り事前判定時の振分け率(RS2-3)にしたがい連続予告数に対応する予告演出フラグのセットがなされ乱数判定処理を終了する。
【0112】また、SC11でランダム1カウンタを利用して抽出値が「7,17,41,57,107」のいずれでもないと判別された場合にはSC12へ移行し、ランダム3カウンタを利用して抽出したカウント値がリーチ状態になりうるカウント値「11」であったか否かの判別がなされる。「11」であった場合にはSC11において高確率時テーブルをルックアップしリーチ事前判定時の振分け率(RS2-2)にしたがい、「11」でなかった場合は高確率時テーブルをルックアップしはずれ事前判定時の振分け率(RS2-1)にしたがい、それぞれ連続予告数に対応する予告演出フラグのセットがなされ乱数判定処理を終了する。
【0113】このように、乱数判定処理において、始動入賞毎にその始動入賞に対する特別図柄の変動開始時の大当りになる確率状態を判定するために、大当りにより確率状態が変更になる可能性があると判定されたときに、SC07・SC09・SC16・SC18において改めて高確率フラグをオン・オフにする処理を行なっている。
【0114】たとえば、低確率状態において確変図柄大当りになり、確率状態が高確率状態に変更されるときは、SC01において低確率状態であるため「NO」と判別されSC02に進み、SC02において大当りとなるため「YES」と判別されSC06に進み、SC06において確変図柄大当りとなるため「YES」と判別されSC09に進み、SC09において高確率フラグを「オン」とする処理がなされる。よって、見た目上、遊技状態が低確率状態であっても、この始動入賞以降の始動入賞については、SC01において「YES」と判定されるため、高確率状態での大当り判定・リーチ判定等の各種判定がなされ、予告演出の決定に用いられるテーブルの選択においても高確率時テーブルをルックアップすることとなる。
【0115】逆に、高確率状態において非確変図柄大当りになり、確率状態が低確率状態に変更されるときは、SC01において高確率状態であるため「YES」と判別されSC11に進み、SC11において大当りとなるため「YES」と判別されSC15に進み、SC15において非確変図柄大当りとなるため「NO」と判別されSC16に進み、SC16において高確率フラグを「オフ」とする処理がなされる。よって、見た目上、遊技状態が高確率状態であっても、この始動入賞以降の始動入賞については、SC01において「NO」と判定されるため、低確率状態での大当り判定・リーチ判定等の各種判定がなされ、予告演出の決定に用いられるテーブルの選択においても高確率時テーブルをルックアップすることとなる。」
(キ)「【0162】図33は、図11の入賞確認処理で説明したSB05の本実施形態における乱数判定処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【0163】まず、SM01では、ランダム1カウンタを利用して抽出したカウント値が大当りとなる「7」であったか否かの判別がなされる。カウント値が「7」であった場合にはSM02に移行しランダム2カウンタを利用し抽出したカウント値が確率変動大当りとなる「奇数」であったか否かの判別がなされ、SM03・SM04に移行し、「奇数」であった場合は確変大当り事前判定コマンドを送信設定し、「奇数」でなかった場合は非確変大当り事前判定コマンドを送信設定し乱数判定処理を終了する。
【0164】また、SM01で大当りではないと判別された場合にはSM05へ移行し、現在の遊技状態が確率変動中であるフラグがオンであるか否かの判別がなされる。確率変動中であった場合にはSM06へ移行し、ランダム1カウンタを利用して抽出値が「7,17,41,57,107」のいずれかであったか否かの判別がなされ、いずれかであった場合にはSM02へ移行し前述した処理がなされる。いずれでもなかった場合にはSM07へ移行し、ランダム3カウンタを利用して抽出したカウント値がリーチ状態になりうるカウント値「11」であったか否かの判別がなされる。「11」であった場合にはSM08においてリーチ事前判定コマンドを送信設定し、「11」でなかった場合にはSM09においてはずれ事前判定コマンドを送信設定し乱数判定処理を終了する。」
(ク)「【0198】(11) 前述した実施形態においては、はずれ事前判定とリーチ事前判定と非確変・確変大当り事前判定に対する予告演出を選択するための選択テーブルとして同一の選択テーブルを用いた。これに限らず、はずれ事前判定とリーチ事前判定と非確変・確変大当り事前判定のそれぞれについて選択テーブルを設定してもよい。これにより、予告態様をそれぞれの判定結果に対応して細かく設定することができ、予告によりリーチを予告しているのか大当りを予告しているのか遊技者にとってわかりやすくすることができる。たとえば、リーチ事前判定コマンドに対応する予告態様として「3回変動後にスーパーリーチになるかも!」等や、非確変・確変大当り事前判定コマンドに対応する予告態様として「確変かな?それとも普通かな?」等、それぞれの事前判定コマンドに対応した予告をすることが可能となる。」

以上、(ア)ないし(ク)の記載、および図面(特に、図5,図8,図11?図13,図33等参照)を総合すると、先願明細書等には、以下の構成を備える遊技機の発明が開示されていると認めることができる。

1.始動口スイッチ17により始動入賞が検出されると、そのタイミングで大当り決定用のランダム1カウンタのカウント値、大当りと決定された場合の停止図柄を決定するためのランダム2カウンタのカウント値等が抽出され、それらの抽出値はそれぞれに対応した乱数記憶領域に記憶される。
2.乱数記憶領域に記憶されたランダム1カウンタで抽出されたカウント値が大当りとなる「7」であるか、または、現在の遊技状態が確率変動中(高確率状態)であってかつ当該カウント値が「7」、「17」、「41」、「57」、「107」の何れかであった場合に、ランダム2カウンタで抽出されたカウント値が奇数であった場合は、確変大当りと判定して高確率フラグをオンにし、又、ランダム2カウンタで抽出されたカウント値が偶数であった場合は、非確変大当りと判定し、高確率フラグをオフにする。
3.始動入賞記憶にもとづいて、可変表示装置の特別図柄が変動開始し、現在の遊技状態および記憶されたランダム1カウンタのカウント値に基づいて、非確変大当たりと判定された場合は、可変表示装置を同一種類のゾロ目(たとえば、111,222等)で停止表示して大当りにし、大当り遊技を行なった後通常の遊技状態とし、また、確変大当りと判定された場合は、可変表示装置を予め定められた確変図柄のゾロ目(たとえば、777)で停止表示して確変大当りにし、確変大当り遊技を行なった後所定の継続期間確率変動遊技状態とする。
4.乱数記憶領域に記憶されたランダム1カウンタで抽出されたカウント値が、大当り(非確変・確変大当り)と判断されるか否かは、高確率フラグがオンであってかつ当該カウント値が「7」、「17」、「41」、「57」、「107」の何れかであるか、または高確率フラグがオフであってかつ当該カウント値が「7」であるかで区別される。
5.大当たりと判断された場合は、「確変かな?それとも普通かな?」等、それぞれ事前判定に対応した予告をすることができる。

(以下、この発明を「先願発明」という。)

(3)対比
先願発明と本件補正発明とを対比する。
先願発明に記載された「ランダム1カウンタのカウント値」、および「ランダム2カウンタのカウント値」は、それぞれ先願発明における、当り遊技に該当するかを判断するための「乱数」、および「大当たり図柄決定手段により決定される図柄に関する乱数」に相当するから、先願発明の上記1.の事項中の「始動口スイッチ17により始動入賞が検出されると、そのタイミングで大当り決定用のランダム1カウンタのカウント値が抽出され、抽出値は対応した乱数記憶領域に記憶される」ことは、本件補正発明の「始動信号の入力に基づいて、乱数を抽出する抽選手段と、上記抽選手段によって抽出された乱数を格納する抽選結果格納手段」を備えていることに相当し、そして、同1.の事項中の「大当りと決定された場合の停止図柄を決定するためのランダム2カウンタのカウント値が抽出され、抽出値は対応した乱数記憶領域に記憶される」ことは、本件補正発明の「大当り図柄決定手段により決定される図柄に関する乱数を記憶する図柄情報記憶手段」を備えていることに相当する。
先願発明の上記2.および3.の事項は、本件補正発明の「上記抽選結果格納手段に格納された乱数を取り出して、該乱数と、現在の抽選確率とに基づいて、該乱数が当り遊技に該当する値であるかを判断すると共に、該判断された当り遊技が通常の抽選確率の遊技を提供する通常当り遊技であるか、或いは該通常当り遊技より抽選確率が高い高確率の抽選確率の遊技を提供する高確率当り遊技であるかを判断する当り遊技判断手段と、図柄を変動表示した後に、予め決定された図柄で停止表示する変動表示手段と、上記当り遊技判断手段による判断結果に従って通常当り遊技、又は高確率当り遊技と、通常の抽選確率の遊技、又は高確率の抽選確率の遊技とを提供する遊技提供手段と、上記当り遊技判断手段により上記乱数が当り遊技に該当する値であると判断された場合に上記変動表示手段に停止表示させる図柄として、通常当り遊技が提供されることを示す通常当り図柄、または高確率当り遊技が提供されることを示す高確率当り図柄を決定する大当り図柄決定手段」に相当する。
先願発明の「乱数記憶領域に記憶されたランダム1カウンタで抽出されたカウント値が、大当り(非確変・確変大当り)と判断されるか否か」は、本件補正発明でいう「抽選結果格納手段に格納された乱数が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くか」と同じ意味であり、また、先願発明の「高確率フラグ」と本件補正発明の「図柄情報記憶手段に記憶された前回の大当りの図柄に関する乱数」とは、「記憶された情報」である点で共通しているから、上記4.の事項中、「乱数記憶領域に記憶されたランダム1カウンタで抽出されたカウント値が、大当り(非確変・確変大当り)と判断されるか否かは、高確率フラグがオンであってかつ当該カウント値が「7」、「17」、「41」、「57」、「107」の何れかであるか、または高確率フラグがオフであってかつ当該カウント値が「7」であるかで区別され」ることは、本件補正発明において「抽選結果格納手段に格納された乱数が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くかを、記憶された情報に基づいて判断する当り遊技予告手段」を備えている点で共通しているといえる。
そして、先願発明の5.の事項、「大当たりと判断された場合は、「確変かな?それとも普通かな?」等、それぞれ事前判定に対応した予告をすることができる」ことは、本件補正発明において「当り遊技予告手段が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くと判断した場合に、当り予告報知を行う予告報知手段とを備える」ことに相当する。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「始動信号の入力に基づいて、乱数を抽出する抽選手段と、
上記抽選手段によって抽出された乱数を格納する抽選結果格納手段と、
上記抽選結果格納手段に格納された乱数を取り出して、該乱数と、現在の抽選確率とに基づいて、該乱数が当り遊技に該当する値であるかを判断すると共に、該判断された当り遊技が通常の抽選確率の遊技を提供する通常当り遊技であるか、或いは該通常当り遊技より抽選確率が高い高確率の抽選確率の遊技を提供する高確率当り遊技であるかを判断する当り遊技判断手段と、
図柄を変動表示した後に、予め決定された図柄で停止表示する変動表示手段と、
上記当り遊技判断手段による判断結果に従って通常当り遊技、又は高確率当り遊技と、通常の抽選確率の遊技、又は高確率の抽選確率の遊技とを提供する遊技提供手段と、
上記当り遊技判断手段により上記乱数が当り遊技に該当する値であると判断された場合に上記変動表示手段に停止表示させる図柄として、通常当り遊技が提供されることを示す通常当り図柄、または高確率当り遊技が提供されることを示す高確率当り図柄を決定する大当り図柄決定手段と、
上記大当り図柄決定手段により決定される図柄に関する乱数を記憶する図柄情報記憶手段と、
上記抽選結果格納手段に格納された乱数が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くかを、記憶された情報に基づいて判断する当り遊技予告手段と、
上記当り遊技予告手段が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くと判断した場合に、当り予告報知を行う予告報知手段と
を備える遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違が認められる。

<相違点>
本件補正発明は、抽選結果格納手段に格納された乱数が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くかを、「図柄情報記憶手段に記憶された前回の大当りの図柄に関する乱数のみ」で判断するものであるのに対し、
先願発明は、乱数記憶領域に記憶されたランダム1カウンタで抽出されたカウント値が通常大当り、あるいは確変大当りになるかを、記憶されている「高確率フラグ」で判断するものである点

(4)相違点についての判断
本件補正発明における「上記抽選結果格納手段に格納された乱数が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くかを、上記図柄情報記憶手段に記憶された前回の大当りの図柄に関する乱数のみに基づいて判断する」の意味は、今回の抽選結果格納手段に格納された乱数が大当たりに結び付くかを、記憶しておいた前回の大当りの図柄に関する乱数のみに基づいて判断するものと理解できる。
具体的にいえば、上記要件は、記憶しておいた前回の大当りの図柄に関する乱数が偶数であれば、今回の抽選結果格納手段に格納された乱数が「7」である場合に大当りに結び付くと判断し、また、前記乱数が奇数であれば、今回の抽選結果格納手段に格納された乱数が「7」、「11」、「13」、「17」、「19」である場合に大当りに結び付くと判断するということを表したものといえる。
一方、先願発明は、ランダム1カウンタのカウント値(乱数)が大当りに結び付くか否かを、記憶されている高確率フラグの値(オンまたはオフ値、これは前回の大当りが確変大当りであったか非確変大当りであったかに対応する値である)で判断し、そして大当りに結び付くと判断した場合に、ランダム2カウンタのカウント値に基づいてその大当りが確変大当りになるか非確変大当りになるか判断し、その判断結果を高確率フラグの値(オンまたはオフ値、これは今回の大当りが確変大当りに結び付くか非確変大当りに結び付くかに対応する値である)として書き換えるものである。
具体的にいえば、先願発明は、高確率フラグの値がオフであれば、今回のランダム1カウンタのカウント値が「7」である場合に大当りに結び付くと判断し、かつその大当りが確変大当りになるか非確変大当りになるかをランダム2カウンタのカウント値で判断して、その判断結果で高確率フラグの値を書き換え、また、高確率フラグの値がオンであれば、今回のランダム1カウンタのカウント値が「7」、「17」、「41」、「57」、「107」である場合に大当りに結び付くと判断し、かつその大当りが確変大当りになるか非確変大当りになるかをランダム2カウンタのカウント値で判断して、その判断結果で高確率フラグの値を書き換えるものである。(図13参照のこと)
そして、先願発明において、大当りに結び付くか否か判断する時点での「高確率フラグ」の値は、前回の大当りのときのランダム2カウンタのカウント値(奇数であればオン、偶数であればオフ)に対応していることからみれば、結局のところ、先願発明と本件補正発明の相違は、前回の大当りの図柄に関する乱数から判断された確変または非確変状態であるという情報(オン又はオフ)を記憶し、その情報を取り出して当該情報を元に大当りの判断を行うか、あるいは、前回の大当りの図柄に関する乱数自体を記憶し、その乱数を取り出して当該乱数から判断された確変または非確変状態であるという情報を元に大当りの判断を行うかという手順の相違ということができる。
しかし、前記手順の相違は、当業者が適宜なし得る設計変更の域を越えるものではないから、先願発明と本件補正発明とに実質的な相違があると認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、先願発明と実質的に同一ということができる。

なお請求人は、本件補正発明は、「前回の大当たりの図柄に関する乱数のみ」に基づいて判断するのに対して、先願発明では、「前回の大当たりの図柄に関する乱数(ランダム2カウンタのカウント値)」と「高確率フラグ」の両方に基づいて判断している点で相違する旨主張している。
しかしながら、先願発明ではランダム1カウンタのカウント値が大当り(通常当り、あるいは高確率当り)に結び付くかを、「高確率フラグ」の値(これは前回のランダム2カウンタのカウント値から決定されている)のみで判断するものであり、今回のランダム2カウンタのカウント値は、当該大当りを通常当りとするか高確率当りとするか振り分けるために用いられているのであって、大当りであるか否かの判断において今回のランダム2カウンタの値は用いられていない。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。

以上のとおり、本件補正発明は、先願発明と実質的に同一であり、そして、本件補正発明の発明者が上記先願1の発明者と同一であるとも、また,本願の出願時に、その出願人が上記先願1の出願人と同一であるとも認められないので、本件補正発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって、本件補正発明は、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)本件補正についてのまとめ
以上のとおり本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
平成22年4月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本出願に係る発明は、平成21年7月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲により特定されるとおりのものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 始動信号の入力に基づいて、乱数を抽出する抽選手段と、
上記抽選手段によって抽出された乱数を格納する抽選結果格納手段と、
上記抽選結果格納手段に格納された乱数を取り出して、該乱数と、現在の抽選確率とに基づいて、該乱数が当り遊技に該当する値であるかを判断すると共に、該判断された当り遊技が通常の抽選確率の遊技を提供する通常当り遊技であるか、或いは該通常当り遊技より抽選確率が高い高確率の抽選確率の遊技を提供する高確率当り遊技であるかを判断する当り遊技判断手段と、
図柄を変動表示した後に、予め決定された図柄で停止表示する変動表示手段と、
上記当り遊技判断手段による判断結果に従って通常当り遊技、又は高確率当り遊技と、通常の抽選確率の遊技、又は高確率の抽選確率の遊技とを提供する遊技提供手段と、
上記当り遊技判断手段により上記乱数が当り遊技に該当する値であると判断された場合に上記変動表示手段に停止表示させる図柄として、通常当り遊技が提供されることを示す通常当り図柄、または高確率当り遊技が提供されることを示す高確率当り図柄を決定する大当り図柄決定手段と、
上記大当り図柄決定手段により決定される図柄に関する情報を記憶する図柄情報記憶手段と、
上記抽選結果格納手段に格納された乱数が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くかを、上記図柄情報記憶手段に記憶された前回の大当りの図柄に関する情報に基づいて判断する当り遊技予告手段と、
上記当り遊技予告手段が通常当り遊技の提供、或いは高確率当り遊技の提供に結び付くと判断した場合に、当り予告報知を行う予告報知手段と
を備える遊技機。」

(1)対比・判断
本件発明(補正前の請求項1)は、前記2.で検討した本件補正発明(補正後の請求項1)における「図柄に関する乱数」および「前回の大当りの図柄に関する乱数のみ」を、「図柄に関する情報」および「前回の大当りの図柄に関する情報」としたもの、つまり「情報」について「乱数」であるという限定を省いたものである。
そうすると、本件発明の構成要件を全て含み、さらに特定の構成要件について限定したものに相当する本件補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、先願発明と同一であるから、本件発明も同様の理由により、先願発明と同一である。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明は、先願発明と同一の発明であり、しかも、本件発明の発明者が上記先願1の発明者と同一であるとも、また,本願の出願時に、その出願人が上記先願1の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-01 
結審通知日 2011-06-07 
審決日 2011-06-20 
出願番号 特願2003-153057(P2003-153057)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 康夫  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 秋山 斉昭
小原 博生
発明の名称 遊技機  
代理人 足立 勉  

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