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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1241050
審判番号 不服2009-3440  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-16 
確定日 2011-08-12 
事件の表示 平成11年特許願第503168号「半導体蛍光光度計およびその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月17日国際公開、WO98/57153、平成14年 5月14日国内公表、特表2002-514308〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年6月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成9年6月11日、同年同月17日、平成10年5月28日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年1月28日付け拒絶理由通知に対し、出願人から何らの応答もなかったため、同年11月7日付けで拒絶査定され、これに対し、平成21年2月16日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正されたものである。

第2 平成21年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年2月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正は、補正の内容として、特許請求の範囲について、補正前の
「1.工業用水系システム、工業用非水系システム、もしくは工業用水系システムおよび工業用非水系システムの混合系からの試料中の非蛍光性化学処理剤もしくは他の添加剤の濃度をモニターするための方法であって、前記方法が、
I)半導体蛍光光度計であって、
a)ダイオードレーザおよび発光ダイオードからなる群から選択される励起光源を有する半導体励起光源、
b)電源、
c)試料の励起による散乱光を取り除くために、試料と検出器との間に構成され配置されたフィルター、
d)前記試料の励起による蛍光を受光し、検出器上で受光される蛍光量に比例する出力信号を発生させるフォトダイオード検出器、
e)増幅器もしくは積算器からなる群から選択される素子であって、前記フォトダイオード検出器の前記出力信号を処理することが可能であり、かつ前記出力信号を有用な信号に変換できる素子、および
f)必要な場合、検出器上に試料から励起された蛍光を映し出すために、前記試料と前記検出器の間に配置され構成されたレンズ
とを有し、
前記蛍光が、工業用水系システム、工業用非水系システム、工業用水系システムおよび工業用非水系システムの混合系、スラリー、もしくは粉末からの試料を選択することによりモニターされ、
前記試料が、
i)非蛍光性化学処理剤もしくは他の添加剤、および
ii)蛍光トレーサ分子
を含み、
光が蛍光を発する前記蛍光トレーサ分子を励起するように、前記試料へ前記励起光源からの光を向け、前記蛍光が前記フォトダイオード検出器により受光され、
前記試料中の蛍光を検出する半導体蛍光光度計を用いる工程、
II)前記試料中に存在する前記非蛍光性化学処理剤もしくは他の添加剤の濃度を測定するために、工程Iにおいて検出される蛍光を用いる工程
を含む方法。」を、
「【請求項1】
a)半導体蛍光光度計を設ける工程であって、前記半導体蛍光光度計は、 i)370nmから500nmの波長を有する光を発する発光ダイオード、または、フォトダイオードを有し、そして、635nmから1600nmの波長を有する光を発する半導体ダイオードレーザからなり、特定された方向に光を向けるために半導体励起光源と、
ii)シリコンフォトダイオードであって、試料の励起による蛍光を受光し、そして、検出器上で受光される蛍光量に比例する出力信号を発生させるところの検出器と、
iii)セルであって、入口が種選択膜によって覆われていないところの試料チャンバとからなっているところの工程と、
b)工業用水系を設ける工程であって、前記工業用水系には、化学処理剤または添加剤が添加されており、前記化学処理剤または添加剤中には、蛍光トレーサが、前記化学処理剤または添加剤に対して既知の比率で存在するところの工程と、
c)前記半導体蛍光光度計を用いて、前記工業用水系中における前記蛍光トレーサの蛍光を検出する工程と、
d)前記半導体蛍光光度計をプログラミングして、検出された前記蛍光に比例する出力信号を発生させる工程と、
e)前記半導体蛍光光度計によって検出された蛍光の濃度に基づいて、化学処理剤または添加剤の前記工業用水系への供給量を制御する工程とを含む、工業用水系における化学物質の濃度をモニターするための方法。」(下線は補正された箇所である。)と補正することを含むものである。

2.本件補正の適否についての判断
上記補正は、その補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「蛍光光度計」として、
(1)「半導体励起光源」として、「370nmから500nmの波長を有する光を発する発光ダイオード、または、フォトダイオードを有し、そして、635nmから1600nmの波長を有する光を発する半導体ダイオードレーザからなり、特定された方向に光を向ける」ためのものと限定し、
(2)「フォトダイオード検出器」として、「シリコンフォトダイオードであって、試料の励起による蛍光を受光し、そして、検出器上で受光される蛍光量に比例する出力信号を発生させるところの検出器」と限定し、
(3)「iii)セルであって、入口が種選択膜によって覆われていないところの試料チャンバ」を有するものとして限定しているものの、
(4)「b)電源」、「c)試料の励起による散乱光を取り除くために、試料と検出器との間に構成され配置されたフィルター」、及び、「f)必要な場合、検出器上に試料から励起された蛍光を映し出すために、前記試料と前記検出器の間に配置され構成されたレンズ」の構成を削除している。

上記(4)について検討するに、
「b)電源」は、半導体蛍光光度計が電源を必須とする構成であることは技術常識といえるから、この記載を削除することのみにより、発明の内容が変更されるものとはいえない。
次に、「f)必要な場合、検出器上に試料から励起された蛍光を映し出すために、前記試料と前記検出器の間に配置され構成されたレンズ」については、条件として「必要な場合」とあるため、当該レンズに係る記載を削除することにより、必要でない場合に限定したものといえる。
しかしながら、「c)試料の励起による散乱光を取り除くために、試料と検出器との間に構成され配置されたフィルター」、及び、「f)必要な場合、検出器上に試料から励起された蛍光を映し出すために、前記試料と前記検出器の間に配置され構成されたレンズ」は、「試料の励起による散乱光を取り除くため」に設置するものであることから、こうした機能を有するフィルタを含まない半導体蛍光光度計を含む内容に実質的に拡張するものである。
よって、前記「フィルター」の記載を削除することは、「半導体蛍光光度計」の構成を限定しているとはいえないため、特許請求の範囲の減縮には該当せず、また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、或いは、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない。

次に、補正後の請求項1を補正前の請求項3、5及び請求項1、3、5を引用する各請求項と対比しても、同様に、「c)試料の励起による散乱光を取り除くために、試料と検出器との間に構成され配置されたフィルター」を削除することとなり、上記で検討したとおり、「半導体蛍光光度計」の構成を限定しているとはいえないため、特許請求の範囲の減縮には該当せず、また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、或いは、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない。

したがって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成18年法改正前」とする。)の特許法17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成21年2月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1乃至7に係る発明は、平成11年12月17日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「1.工業用水系システム、工業用非水系システム、もしくは工業用水系システムおよび工業用非水系システムの混合系からの試料中の非蛍光性化学処理剤もしくは他の添加剤の濃度をモニターするための方法であって、前記方法が、
I)半導体蛍光光度計であって、
a)ダイオードレーザおよび発光ダイオードからなる群から選択される励起光源を有する半導体励起光源、
b)電源、
c)試料の励起による散乱光を取り除くために、試料と検出器との間に構成され配置されたフィルター、
d)前記試料の励起による蛍光を受光し、検出器上で受光される蛍光量に比例する出力信号を発生させるフォトダイオード検出器、
e)増幅器もしくは積算器からなる群から選択される素子であって、前記フォトダイオード検出器の前記出力信号を処理することが可能であり、かつ前記出力信号を有用な信号に変換できる素子、および
f)必要な場合、検出器上に試料から励起された蛍光を映し出すために、前記試料と前記検出器の間に配置され構成されたレンズ
とを有し、
前記蛍光が、工業用水系システム、工業用非水系システム、工業用水系システムおよび工業用非水系システムの混合系、スラリー、もしくは粉末からの試料を選択することによりモニターされ、
前記試料が、
i)非蛍光性化学処理剤もしくは他の添加剤、および
ii)蛍光トレーサ分子
を含み、
光が蛍光を発する前記蛍光トレーサ分子を励起するように、前記試料へ前記励起光源からの光を向け、前記蛍光が前記フォトダイオード検出器により受光され、
前記試料中の蛍光を検出する半導体蛍光光度計を用いる工程、
II)前記試料中に存在する前記非蛍光性化学処理剤もしくは他の添加剤の濃度を測定するために、工程Iにおいて検出される蛍光を用いる工程
を含む方法。」

2.引用例
(1)原査定の拒絶理由通知で引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平5-203561号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1-ア)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、工業用流体の流れの分析に際して使用される光学プローブからのパルス光信号を測定する光学測光装置に関する。
【0002】【従来の技術】流体の流れを含み、その流れの様々な面を監視することが要求される工業プロセスは非常に多く存在している。そのようなプロセスには、流れに至る1つ以上の供給源の化学的組成を変更するように設計されているプロセスがある。たとえば、化学合成プロセスは化学反応物の供給流れを化学生成物に変換する。もう1つの例としては、給水系統から油又は他の汚染物質を除去するように設計されたプロセスがある。別の種類のプロセスは流体の流れを使用して、所望の物理的環境を発生させる。この種のプロセスの例は、内燃機関の温度を低下させるように設計された水冷システムであろう。数多くの異なる種類の流体プロセスがあるが、それらは全てその流体の流れの化学的組成によって何らかの方法で制御される。このため、流体の流れの化学的組成を実時間で監視し、その情報を利用して、プロセスが完了する前にプロセスのパラメータを最適化できるようにすることは重要である。
【0003】また、種々の液体に処理剤を添加することを含むプロセスも非常に多い。そのようなプロセスの多くについて、その最適の性能を獲得するために薬剤の適正な供給レベルを保つことをは重要であるといえる。たとえば、冷却水システムや熱水システムにおいて使用する処理剤のレベルが正しくないと、システムの熱交換面で重大な腐食及び/又は堆積物形成が急速に起こってしまう。濃度レベルを評価する一般的な方法の1つは、高分子着きあか抑制剤、リン酸塩又は有機リン酸塩などの処理剤中の活性成分を測定することを中心としている。この方法は、背景干渉があることと、現在入手できる機器が大型で、多くの労力を要することによって、必ずしも適切な方法とはいえないであろう。処理剤の最適供給速度を確定する公知の方法の1つは、この明細書にも参考として取り入れてある米国特許第4,783,314号に記載されている。
【0004】工業用流体流れの中の化学物質の濃度を確定するための分析方法は非常に多くある。方法の多くは、その性質上、光学的である。すなわち、化学物質がその濃度に比例して光を吸収、発光又は反射する固有の能力に基づいているのである。また、流体の流れに薬剤を添加する前に薬剤に光学トレーサを添加しておけば、固有の光学的特性をもたない化学添加剤でも光学的方法により間接的に測定できる。化学製品に蛍光染料を添加することに基づいてそのような間接測定を行う公知の方法も先に挙げた米国特許第4,783,314号に記載されている。」

(1-イ)「【0009】【実施例】本発明の光学測光装置10は周知のように光ファイバプローブ12に結合しており、プローブ12は周知のようにフローパイプ14の中へ突出する状態で取り付けられている。図をわかりやすくするために、プローブ自体や様々な継手、シールなどの従来通りの特徴については図示していない。コンピュータモジュール18の一部を成すマイクロプロセッサ16は、瞬時光パルスを発生する公知の手段である第1の光源モジュール、すなわち、励起光源モジュール20に接続している。光源モジュール20の出力はフィルタ手段22を通過して、光ファイバケーブル24に光学的に結合する。ケーブル24の他端はプローブ12に光学的に結合している。ここでは、光ファイバケーブル24をフィルタ手段22に結合する第1の分岐部分26と、フィルタ手段30に光学的に結合する第2の分岐部分28とを有する二又ケーブルとして示してあるが、それ以外の構造のケーブルも使用できるであろう。フローパイプ14の内部にある物質によって波長及び/又は強さを変調された光はプローブ12で受け取られ、光ファイバケーブル24を通ってフィルタ手段30、さらには光検出器32に達する。マイクロプロセッサ16は第2の光源モジュール、すなわち、基準光源モジュール34にも接続している。この第2の光源モジュール34の出力はフィルタ手段36と、フィルタ手段30とを経て光検出器32に結合する。2つの光源モジュール20及び34のパルス出力は時間的に変化する電子信号に変換され、コンピュータモジュール18の一部を成すデュアルチャネル積分器38はそれら2つの信号を光検出器32からの時間的に変化する信号と共に受信する。
【0010】この光学測光装置は数多くの種類のパルス光源や光検出器と組み合わせた構成にすることができる。それらの構成要素は特定の型の測光分析への適性を考慮して当業者により選択される。使用できる光源はキセノンフラッシュランプ、パルスレーザー、パルスダイオードレーザー及びパルス発光ダイオード、並びに電子チョッパ、機械的チョッパ又はシャッタによりパルス光に変形される連続光源などであるが、それらの光源には限定されない。適切な光検出器は、光源から発射される光の波長に応答し且つ光源パルスの周期より短い応答時間を有するものである。そのような光検出器としては、電子なだれフォトダイオード、PINフォトダイオード、真空光電管及び光電子増倍管があるが、それらには限定されない。
【0011】多くの面から見て、多くの型の測光測定についてはキセノンフラッシュランプが理想の光源である。加圧キセノンガスを通る電子放電により、深紫外線から近赤外線に至る広い帯域にわたる放射を短いパルスの形態で発生させる。放電アークは小さく、光ファイバへの効率の良い結合に適合する。出力エネルギーはきわめて高く(フラッシュごとに0.15ジュールまで)、蛍光発光の励起にはすぐれている。フラッシュ持続時間は大変短く、通常、約4マイクロ秒である。フラッシュ速度が5Hzであるとき、ランプはその時間の0.002%しか「オン」していないので、熱の発生はごくわずかである。このことは、周囲温度が高い場合に使用するための計器に関して重要である。キセノンランプは109 回を越えるフラッシュを定格としている。5Hzで動作される場合、その有効寿命は約6年ということになる。
【0012】図1のブロック線図に戻ると、光学測光装置10は1つの分析プローブ12がフローパイプ14に挿入された構成である。動作中、マイクロプロセッサ16は分析光を発生する励起光源モジュール20をトリガして、短い光パルスを発射させる。その光パルスはフィルタ手段22によりフィルタリングされて、関心波長を有するようになり、光ファイバケーブル24によりフローパイプへ搬送される。流体系の中の物質と相互作用した後、残留光はプローブ12により回収されて、光ファイバケーブル24により光検出器32へ伝送される。2つの分析信号を同時に発生させることになるが、そのうち第1の信号は、第1の光源モジュール20の出力の一部を受け取る位置に配置されている光検出器PD_(A) により発生される。これは、フラッシュの間に光源モジュール20により発射される光の強さに比例する時間的に変化する信号である。第2の信号は光検出器32により発生され、これは、フローパイプ14から分析プローブ12を経て戻る光の強さに比例する信号である。
【0013】図2は、それら2つの分析信号を同時に処理するデュアルチャネル積分器回路38を詳細に示す。光検出器PD_(A)の信号は40に入力し、加算入力増幅器42を通過して、比較器44の入力端子に至る。光源信号の立ち上がり端が46のプリセット基準電圧を越えると、比較器44は状態を変え、積分タイマー48をトリガし、積分タイマー48は光源信号積分器50と、プローブ信号積分器52とをイネーブルする。積分器52は入力増幅器54を介してプローブ光検出器信号を受信する。あらかじめ設定された時間にわたって信号を積分した後、信号をサンプル及びホールド回路56及び58に短時間記憶し、12ビットアナログ/デジタル変換器60及び62によりディジタル化する。次に、分析データと、積分光源強さL_(A) と、積分プローブ強さP_(A) とをコンピュータバス64へ多重化し、後の処理に備えてメモリ66に記憶する。
【0014】分析信号を回収した直後、マイクロプロセッサ16は基準光源モジュール34をトリガすることにより基準光パルスを発生させ始める。この基準パルスはフィルタ手段36により減衰され、短い光ファイバケーブル68を経て光検出器32に直接供給される。光検出器32からの信号と、光検出器PD_(R) からの信号という2つの時間内に変化する基準信号は同時に発生する。2つの信号は先に説明したように積分され、メモリに記憶される。光検出器PD_(R) の信号は70から積分器回路に入力する。その積分値L_(R) は基準光源モジュール34の強さに比例する。光検出器32からの基準信号は入力増幅器54を介して入力する。その積分値P_(R)も同様に基準光源モジュール34の出力に比例する。
【0015】式1に従って分析値P_(A) 及びL_(A) を基準値P_(R) 及びL_(R) と組み合わせると、光源の強さと光検出器の感度には無関係の分析応答Rが得られる。
【0016】〔数1〕R=P_(A) L_(R) /P_(R) L_(A) (1)
【0017】光検出器PD_(A) 及び PD_(R) が光に対して同一の感度を有し且つ同一の温度係数を有しているならば、式1は有効である。Rを応答パラメータとして使用すると、測光装置は広範囲にわたり変化する温度条件の下で長期間にわたって校正を維持することができる。
【0018】この測光装置を複数の光ファイバプローブからの信号を処理するように構成することができる。それは、別のパルス光源モジュール(図示せず)を追加することにより簡単に実施可能である。マイクロプロセッサ16は一度に唯一つの光源を動作させて、複数のプローブの1つの検出器により読み取ることができる。追加の光源フォトダイオードは、図3に示すように、加算入力増幅器46に入力端子40′,40″を追加することにより、デュアルチャネル積分器により簡単に処理される。」

a.上記摘記事項(1-ア)の記載事項「工業用流体の流れの分析に際して使用される光学プローブからのパルス光信号を測定する光学測光装置に関する。」、「種々の液体に処理剤を添加することを含むプロセスも非常に多い。そのようなプロセスの多くについて、その最適の性能を獲得するために薬剤の適正な供給レベルを保つことをは重要であるといえる。たとえば、冷却水システムや熱水システムにおいて使用する処理剤のレベルが正しくないと、システムの熱交換面で重大な腐食及び/又は堆積物形成が急速に起こってしまう。濃度レベルを評価する一般的な方法の1つは、高分子着きあか抑制剤、リン酸塩又は有機リン酸塩などの処理剤中の活性成分を測定することを中心としている。」、及び「工業用流体流れの中の化学物質の濃度を確定するための分析方法は非常に多くある。方法の多くは、その性質上、光学的である。すなわち、化学物質がその濃度に比例して光を吸収、発光又は反射する固有の能力に基づいているのである。また、流体の流れに薬剤を添加する前に薬剤に光学トレーサを添加しておけば、固有の光学的特性をもたない化学添加剤でも光学的方法により間接的に測定できる。化学製品に蛍光染料を添加することに基づいてそのような間接測定を行う公知の方法も先に挙げた米国特許第4,783,314号に記載されている。」、及び、
前記記載事項において公知技術として引用されている米国特許第4783314号の「1. In an industrial or municipal water system involving equipment through which is a moving body of water containing impurities and containing a quantified dosage of a water treating component having the role of being consumed while removing or neutralizing impurities in the body of water, a method of monitoring the system to determine if the level of treating component subscribes to an acceptable parts-component: liquid volume proportion under operating conditions comprising the steps of:
(A) adding to the body of water a water soluble fluorescent tracer in an amount proportioned to the amount of treating component in the system, the fluorescent tracer being inert to water, inert to the equipment and inert to the treating component;
(B) withdrawing from the system a sample of the body of water containing both the component and tracer and subjecting the withdrawn sample to an analysis which consists essentially of the step of comparing the tracer concentration thereof to a standard on an emissivity basis to determine the concentration of tracer in the sample; and, if the operating concentration is outside an acceptable operating range,
(C) changing the volume of water or the dosage of treating component until an acceptable operating range of concentration for the treating component is attained.」(特許請求の範囲第1項)、(訳文)「1.不純物と、水中において不純物を除去または中和するように消費されるための定量の水処理剤を含んだ水が流れる設備を有する工業水システム又は都市水道水システムにおいて、処理剤のレベルが、条件を満たした稼働状態における液体体積の割合であるか否かを決定するための前記システムをモニターする方法であって、次のステップを有するものである。
(A)システムの処理剤の量に比例する量の水溶性蛍光トレーサを水中に加えるステップであって、前記蛍光トレーサは、水、設備及び処理剤に対して不活性なものであるもの。
(B)前記システムから処理剤及びトレーサーを含む水のサンプルを取り出し、取り出されたサンプルを、その中のトレーサ濃度と、サンプル中のトレーサ濃度の決定の基礎となる放出率の標準値とを比較するステップで基本的に構成された分析にかけるステップであり、もし、作用している濃度が、許容されるレンジを超えている場合には、
(C)処理剤の濃度の許容されるレンジに達するまで、水量か処理剤の量を変えるステップ。」(訳文は、当審による。)の記載を上記の各記載に係る技術常識として参酌すると、
(a)光学測光装置を用いて工業用流体システムからの流体中の非蛍光性化学処理剤の濃度をモニターすること、
(b)非蛍光性化学処理剤に蛍光トレーサを添加すること、及び、
(c)蛍光トレーサからの光を光学測光装置を用いて非蛍光性化学処理剤の濃度を間接的に測定することが読み取れる。

これらの記載事項によると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「工業用流体システムからの流体中の非蛍光性化学処理剤の濃度をモニターするための方法であって、前記方法が、
光学測光装置であって、
パルスダイオードレーザー及びパルス発光ダイオードから特定の型の測光分析への適性を考慮して選択される光源、
ファイバープローブ12に光学的に結合した光ファイバケーブル24と光検出器との間に配置されたフィルタ手段30、
ファイバープローブ12からの光を検出する、光ファイバケーブル24によりPINフォトダイオードである光検出器、
光検出器からの信号が入力される加算入力増幅器42、プローブ信号積分器52を有する分析計器
とを有し、
前記蛍光が工業用流体システムからの流体中の非蛍光性化学処理剤の濃度をモニターされ、
非蛍光性化学処理剤が、蛍光トレーサを添加され、
ファイバープローブ12に光学的に結合した光ファイバケーブル24により、フローパイプ14に取り付けられたフローパイプに光源の光を向け、フローパイプからの光が光検出器で検出される、光学測光装置を用いる工程、
蛍光トレーサからの光を光学測光装置を用いて非蛍光性化学処理剤の濃度を間接的に測定する工程
を含む方法」

3.対比・判断
本願発明と引用例1発明とを対比する。

(1)引用例1発明の「工業用流体システムからの流体中の非蛍光性化学処理剤の濃度をモニターするための方法」は、機能・構成からみて、本願発明の「工業用水系システム、工業用非水系システムからの試料中の非蛍光性化学処理剤の濃度をモニターするための方法」に相当する。
(2)引用例1発明の「光学測光装置」は、PINフォトダイオードのような半導体型の光検出器により蛍光トレーサからの光を測定するものであるから、本願発明の「半導体蛍光光度計」に相当する。
(3)引用例1発明の「パルスダイオードレーザー及びパルス発光ダイオードから特定の型の測光分析への適性を考慮して選択される光源」は、機能・構成からみて、本願発明の「ダイオードレーザおよび発光ダイオードからなる群から選択される励起光源を有する半導体励起光源」に相当する。
(4)引用例1発明の「ファイバープローブ12に光学的に結合した光ファイバケーブル24と光検出器との間に配置されたフィルタ手段30」と、本願発明の「試料の励起による散乱光を取り除くために、試料と検出器との間に構成され配置されたフィルター」とは、「試料と検出器との間に構成され配置されたフィルター」という点で共通する。
(5)引用例1発明の「光検出器からの信号が入力される加算入力増幅器42、プローブ信号積分器52を有する分析計器」は、機能・構成からみて、本願発明の「増幅器もしくは積算器からなる群から選択される素子であって、前記フォトダイオード検出器の前記出力信号を処理することが可能であり、かつ前記出力信号を有用な信号に変換できる素子」に相当する。
(6)引用例1発明の「前記蛍光が工業用流体システムからの流体中の非蛍光性化学処理剤の濃度をモニターされ」ることは、機能・構成からみて、本願発明の「前記蛍光が、工業用水系システム、工業用非水系システムからの試料を選択することによりモニターされ」ることに相当する。
(7)引用例1発明の「非蛍光性化学処理剤が、蛍光トレーサを添加され」ることは、機能・構成からみて、本願発明の「前記試料が、非蛍光性化学処理剤もしくは他の添加剤、および、蛍光トレーサ分子を含」むことに相当する。
(8)引用例1発明の「ファイバープローブ12に光学的に結合した光ファイバケーブル24により、フローパイプ14に取り付けられたフローパイプに光源の光を向け、フローパイプからの光が光検出器で検出される」ことは、構成からみて、工業用流体システム内の処理剤に添加された蛍光トレーサを光源からの光で励起し、その光を光検出器が受光していることから、本願発明の「光が蛍光を発する前記蛍光トレーサ分子を励起するように、前記試料へ前記励起光源からの光を向け、前記蛍光が前記フォトダイオード検出器により受光され」ることに相当する。
(9)引用例1発明の「光学測光装置を用いる工程」は、光学測光装置により蛍光トレーサの蛍光を検出していることから、本願発明の「前記試料中の蛍光を検出する半導体蛍光光度計を用いる工程」に相当する。
(10)引用例1発明の「蛍光トレーサからの光を光学測光装置を用いて非蛍光性化学処理剤の濃度を間接的に測定する工程」は、機能・構成からみて、本願発明の「前記試料中に存在する前記非蛍光性化学処理剤の濃度を測定するために、工程Iにおいて検出される蛍光を用いる工程」に相当する。

以上、(1)?(10)の考察から、両者は、

(一致点)
「工業用水系システム、工業用非水系システムからの試料中の非蛍光性化学処理剤の濃度をモニターするための方法であって、前記方法が、
I)半導体蛍光光度計であって、
ダイオードレーザおよび発光ダイオードからなる群から選択される励起光源を有する半導体励起光源、
試料と検出器との間に構成され配置されたフィルター、
前記試料の励起による蛍光を受光し、検出器上で受光される蛍光量に比例する出力信号を発生させるフォトダイオード検出器、
増幅器もしくは積算器からなる群から選択される素子であって、前記フォトダイオード検出器の前記出力信号を処理することが可能であり、かつ前記出力信号を有用な信号に変換できる素子、および
必要な場合、検出器上に試料から励起された蛍光を映し出すために、前記試料と前記検出器の間に配置され構成されたレンズ
とを有し、
前記蛍光が、工業用水系システム、工業用非水系システムからの試料を選択することによりモニターされ、
前記試料が、
非蛍光性化学処理剤もしくは他の添加剤、および
蛍光トレーサ分子
を含み、
光が蛍光を発する前記蛍光トレーサ分子を励起するように、前記試料へ前記励起光源からの光を向け、前記蛍光が前記フォトダイオード検出器により受光され、
前記試料中の蛍光を検出する半導体蛍光光度計を用いる工程、
II)前記試料中に存在する前記非蛍光性化学処理剤の濃度を測定するために、工程Iにおいて検出される蛍光を用いる工程
を含む方法。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
半導体蛍光光度計が、本願発明では、「光源」を有するものであるのに対し、引用例1発明では「光源」が不明な点。

(相違点2)
試料と検出器との間に構成され配置されたフィルターが、本願発明では、「試料の励起による散乱光を取り除くため」のものであるのに対し、引用例1発明のフィルタ手段30には、そのような機能が不明な点。

(相違点3)
半導体蛍光光度計が、本願発明では、「必要な場合、検出器上に試料から励起された蛍光を映し出すために、前記試料と前記検出器の間に配置され構成されたレンズ」を有するものであるのに対し、引用例1発明ではそのような「レンズ」が不明な点。

4.当審の判断
(1)上記(相違点1)について検討する。
引用例1発明の光学測光装置が有する光源等の構成は電源を要するものであることからみて、当然に電源を有するものであるといえる。よって、上記(相違点1)は実質的な相違点ではない。

(2)上記(相違点2)について検討する。
半導体蛍光光度計において、光検出器と試料との間に配置するフィルターとして、試料の励起による散乱光を取り除く機能を有するフィルターは、一例として特開平8-285775号に「【0033】励起光ガイド11は更に、本発明の第一実施例においては、光学フィルター15(これは、好ましくは干渉フィルターである)を含む。光学フィルター15により、蛍光変換体4に当たる励起光の波長(類)を選択又は制限することが可能である。放射光ガイド12は、第二光学フィルター16(これは、好ましくは干渉フィルターである)を含む。第二光学フィルター16は、光電子センサー13に当たる放射光の波長(類)を選択又は制限するために役立つ。蛍光として、放射光は通常、蛍光を生じさせる励起光とは異なる波長を有するので、望ましくない散乱光の強度は、第二光学フィルター16により更に減少され得、この事は、信号対ノイズ比に関して都合が良い効果を有する。」と記載されているように、本願の優先権主張の日前に周知のものである。

よって、引用例1発明のフィルター手段として、上記周知の散乱光を取り除く機能を有するものを採用し、本願発明のような構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(3)上記(相違点3)について検討する。
半導体蛍光光度計において、光検出器と試料との間にレンズを配置することは、一例として特開平8-285775号に「【0030】第一実施例における放射光ガイド12は、図1に示される如く、第二光学フィルター16(この機能は、後記本文中で説明されている)、及び光学的勾配指数要素(これは、特に好ましくは、グリンレンズである)からなる。二つの光ガイド11,12は、一緒に接合され、特に好ましくは、指数-適合性媒体20により一体に固着され、実質的に、放射光ガイド12及び励起光ガイド11が、光学軸O1,O2により決定された光の主な進行方向が互いに斜角であるように、互いに相対的に傾けられているような構造ユニットを形成する。前記手段は、蛍光変換体4の領域内で反射により生じた散乱光は、非常に減衰された形態においてのみ、光電子センサー13に到達するという利点を与える。信号対ノイズ比が散乱光により全く決定的に影響されるということは、蛍光測定において明らかである。二つの光ガイド11,12の互いの傾斜角配置に応じて、励起光は、放射光ガイド12の光学軸O2に対して、例えば、二つの光ガイド11,12が平行に配置されている場合よりも大きな角度で、蛍光変換体4に当たる。その結果として、蛍光変換体4の領域内で反射された光も、放射光ガイド12の光学軸O2に対して、一層傾けられる。しかしながら、グリンレンズにおける光の傾斜角が一定の限界を越える場合には、光はもはや、全くグリンレンズに入ることができない。前記理由のために、二つの光ガイド11,12の互いの傾斜角配置は、光電子センサー13に到達する散乱光の強度を減少させる。」と記載されているように、本願の優先権主張の日前に周知の技術である。

よって、引用例1発明の光学測光装置に、上記周知技術のようなレンズを必要に応じて付加し、本願発明のような構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の奏する効果についても、引用例1及び上記周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1発明、及び、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.回答書について
なお、請求人は、当審における審尋に対する平成22年7月2日付け回答書において、
「キセノンフラッシュランプは、広範囲の波長で光を出力するものである一方、ダイオードレーザおよび発光ダイオードの何れも、非常に狭い波長範囲で光を出力するものである。従って、キセノンフラッシュランプの代わりにダイオードレーザや発光ダイオードを用いた場合、光度計が発する光の波長が著しく制限されることは、本発明がなされた時点における当業者にとって明らかであり、この場合に、当業者として考えることは、目標の分子が蛍光を発するところの特定の波長に応じて、複数の光度計を用いる必要があるということである。従って、このような置換えは、自明なことでは決してなかったであろうと思料する。一方、本願の請求項に記載された方法において、半導体励起光源を用いることによって、低電力要求性、極めて長い(20,000時間)操作寿命、低い熱散逸、比較的分離した発光波長、およびコンパクトな大きさ等に関する効果がもたらされる(本願明細書、第8頁、第5-7行参照)。更に、半導体ダイオードレーザまたは発光ダイオードを用いて、このような工業用水系システム等を測定することによって、従来の励起光源を用いた従来の蛍光光度計によってでは得られない幾つかの利点を提供することができる。例えば、広い用途でトレーサを実施することができ、装置コストを低減することができ、半導体蛍光光度計を小型化することができ、ポケットサイズであっても、(低電力消費を特徴とする)適切にバッテリー駆動するものを提供することができ、従って、モニターや診断を、種々の試料の地点で別個に行うことができる(本願明細書、第19頁、第16?27行参照)。
更に、本発明の小さいサイズの光源および検出器は、複数のチャンネルで、異なる複数の波長で、複数のトレーサを検知することを可能にする(本願明細書、第20頁、第12?13行参照)。異なる複数の波長で、複数の励起光源を用いることによって、当業者は、引用文献1の広範囲な波長プロファイルの代わりに、発光ダイオードやダイオードレーザを用いることによって生ずる不具合を解消することが可能になる。
」なる主張とともに補正案を提示している。

上記主張について検討するに、請求人は、引用例1において、実施例におけるキセノンフラッシュランプのみが記載されているものとした主張を行っている。
しかしながら、(1)上記で検討したとおり、引用例1には、パルスダイオードレーザー及びパルス発光ダイオード(以下、「LD及びLED」とする。)から特定の型の測光分析への適性を考慮して選択される光源についての記載がある。
(2)仮に引用例1に記載されたキセノンフラッシュランプの実施例を引用例1発明として、本願発明とを対比したとしても、引用例1に例示されているキセノンフラッシュランプの光源も、段落【0012】に、「動作中、マイクロプロセッサ16は分析光を発生する励起光源モジュール20をトリガして、短い光パルスを発射させる。その光パルスはフィルタ手段22によりフィルタリングされて、関心波長を有するようになり、光ファイバケーブル24によりフローパイプへ搬送される。」と記載されているように、フィルタ手段により関心波長を有するようにその波長帯域を狭くして用いていることから、キセノンフラッシュランプと、それよりも波長帯域の狭い特開平8-201283号、特開平8-285775号、特開平3-115842に記載されたような周知の蛍光分析機器用のLD及びLEDとを置換することは、当業者にとって容易になしうるものといえる。
(3)また、上記主張のようなLD及びLEDの光源としての低電力要求性等の効果も、特開平8-201283号に「【0062】発光ダイオード9は、高輝度のものが採用され、電気的に高周波点滅が可能であるが、光量が少ないために複数個を使用することになる。発光ダイオード9は寸法が小さいので、複数個であってもコンパクトにケーシング1内に組み込むことができ、同じく複数個であっても、消費電力も少なく、また、電源電圧は極めて低くて済む。また、発光ダイオード9は自己発熱も殆どないので、使用上の制約もない。」と記載されているように、LD及びLEDの有する周知の効果と比較して、格別なものとはいえない。
(4)そして、LD及びLEDの光源を複数用いることについての主張については、本願発明には特に限定されていない事項ではあり、出願当初の明細書において、「また、試料の流れにおいて複数の分析物に相当する数を測定するために重ねられた、複数の励起光源と複数の検出器とを有することも可能である。」や「本発明の小さいサイズの光源および検出器は、複数のチャンネルで、複数の検出物を検知するダイオードレーザ蛍光光度計装置10に適している。」に基づくものではあるものの、半導体蛍光光度計において、複数のLEDや検出器を採用することも、特開平8-201283号の段落【0101】?【0102】や特開平8-285775号の段落【0065】に記載されているように周知の構成にすぎない。
そして、補正案に関しては、
(5)ダイオードレーザ及び発光ダイオードの波長の限定についても、周知の範囲であり、他の構成との関係で格別のものともいえず、
(6)シリコンフォトダイオード検出器については、引用例1に記載されたPINフォトダイオードにシリコン型のものが当然含まれているといえ、
(7)蛍光トレーサの濃度に基づいて、化学処理剤の投入量を制御する工程を付加することも、米国特許第4783314号の特許請求の範囲に記載されたように周知の技術である。
したがって、上記補正案によってもその進歩性があるとはいえない。
よって、上記主張及び補正案は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-22 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-09 
出願番号 特願平11-503168
審決分類 P 1 8・ 571- Z (G01N)
P 1 8・ 574- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 573- Z (G01N)
P 1 8・ 572- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 居島 一仁
後藤 時男
発明の名称 半導体蛍光光度計およびその使用方法  
代理人 石川 泰男  

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