• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010800011 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 1項2号公然実施  B62B
審判 一部無効 2項進歩性  B62B
管理番号 1241150
審判番号 無効2010-800002  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2011-08-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第3906218号発明「手押し台車のハンドル取付部構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3906218号の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成16年 9月 9日 本件特許出願(特願2004-262347号)
平成19年 1月19日 本件設定登録(特許第3906218号)
平成21年12月28日 特許無効審判請求(無効2010-800002号)
平成22年 4月 2日 被請求人 答弁書の提出
平成22年 5月12日 請求人 弁駁書の提出
平成22年 6月25日 請求人 口頭審理陳述要領書の提出
平成22年 6月25日 被請求人 口頭審理陳述要領書の提出
平成22年 7月 9日 口頭審理
平成22年 7月 9日 請求人 証拠申出書の提出
平成22年 7月 9日 被請求人 物件提出
平成22年 8月 9日 被請求人 上申書の提出
平成22年 8月10日 請求人 上申書の提出
平成22年 9月 7日 請求人 弁駁書(2)の提出
平成22年10月14日 被請求人 答弁書(2)の提出
平成22年10月15日 請求人 上申書(2)の提出

第2 本件特許発明
本件特許第3906218号の請求項1?7に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうちの無効審判が請求されている請求項1?4に係る発明は、次のとおりである。
「【請求項1】
裏面に取り付けた車輪により走行可能に構成された荷台の上面にブラケットを取り付け、ハンドルの下端部を前記ブラケットに軸支して、前記ハンドルを前記荷台上に倒した収納位置と、前記荷台上に起立させた起立位置間で回動可能と成すと共に、前記起立位置においてハンドルを固定可能とした手押し台車において、
前記ブラケットは、前記荷台上に載置される底板と、該底板より垂直方向に立設されて平行を成す2枚の軸受板と、前記軸受板間を垂直方向に連結する係止板とを備え,
前記ブラケットは、所定形状に裁断されて矩形状に形成された前記底板に対応する底板部と、該底板部の対向する二辺にそれぞれ連続して形成された前記2枚の軸受板に対応する軸受板部と、該各軸受板部が前記軸受板となったときに該軸受板の高さ方向を成す一辺に形成された、前記係止板に対応する係止板部とを有する1枚の金属板を曲折することにより形成されており、
前記底板部と前記軸受板部との境界を同一方向に折り曲げて、前記底板と前記二枚の軸受板とが形成されると共に、前記各軸受板部と前記係止板部との境界部分を同一方向に折り曲げて前記二枚の係止板部を重合することにより、前記係止板が形成され、かつ、
前記軸受板間に前記ハンドルの下端部を軸支して該ハンドルを回動可能と成すと共に、
前記ブラケットの前記係止板を、前記ハンドルを前記収納位置から起立位置に向けて回動させたときに前記ハンドルの起立位置において該ハンドルの下端部に当接して前記ハンドルの回動を規制する位置に設け、かつ、
前記係止板の前記ハンドル下端部と当接する部分を、前記ハンドル下端部の外形形状に対応して湾曲させたことを特徴とする手押し台車のハンドル取付部構造。」(以下「本件特許発明1」という。)
「【請求項2】
前記ブラケットの前記係止板が、重合溶接された金属板によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の手押し台車におけるハンドル取付部構造。」(以下「本件特許発明2」という。)
「【請求項3】
前記ブラケットの前記底板が、重合された金属板によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の手押し台車におけるハンドル取付部構造。」(以下「本件特許発明3」という。)
「【請求項4】
前記ブラケットの前記底板に、補強用の凹凸形状を形成したことを特徴とする請求項1?3いずれか1項記載の手押し台車のハンドル取付部構造。」(以下「本件特許発明4」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、本件特許発明1?4の特許を無効にするとの審決を求め、その理由として下記甲第1?44号証を提出し、本件特許発明1?4は、本件特許出願前に公然実施をされた発明であるか又はこの公然実施をされた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1?4は、特許法第29条第1項第2号又は同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、したがって同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきであると主張している。
具体的な無効理由は以下のとおりである。

審判請求書において請求人は、引用発明1(DSK-101)を挙げ、引用発明1の構成に関し、甲第2?4号証の11の図面を提出し、該図面に基づいて中国の安華物流系統有限公司によりDSK-101が製造されたことを立証し、
また、購入及び販売の事実に関し、甲第5?8号証を提出し、2004年8月23日?同年8月27日には、引用発明1が日本国内にて販売され公然実施されたとする事実を立証し、
引用発明1の外観形状に関し、甲第9号証を提出し、DSK-101の実物を請求人がその構造を確認するため購入したものによって、外観形状を立証するとしている。

1 本件特許発明1についての無効理由
引用発明1は本件特許発明1の構成要件を全て含んだ構成からなっており、本件特許発明1は、本件特許出願前に公然実施をされた発明であるか又はこの公然実施をされた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第2号又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

2 本件特許発明2についての無効理由
引用発明1は本件特許発明2の構成要件を全て含んだ構成からなっており、本件特許発明2は、本件特許出願前に公然実施をされた発明であるか又はこの公然実施をされた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明2は、特許法第29条第1項第2号又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

3 本件特許発明3についての無効理由
本件特許発明3の特徴とする構成要件は引用発明1には開示されていないが、差異点は当業者において慣用される周知技術であり、本件特許発明3は、本件特許出願前に公然実施をされた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

4 本件特許発明4についての無効理由
本件特許発明4の特徴とする構成要件は引用発明1には開示されていないが、差異点は当業者において慣用される周知技術であり、本件特許発明4は、本件特許出願前に公然実施をされた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

<証拠方法>
甲第1号証:特許第3906218号公報(本件特許明細書公報)
甲第2号証:2004年6月7日付け出図の構造図
甲第3号証の1:2004年6月7日付け出図のハンドル折りたたみ金具の図
甲第3号証の2:2004年6月7日付け出図のハンドル折りたたみアッシーの図
甲第4号証の1?11:2004年6月7日付け出図の部品図
甲第5号証の1:株式会社アサヒのDSK-101の購入の証明書
甲第5号証の2:請求明細書(控)の写し
甲第5号証の3:調査協力の同意書
甲第6号証の1:株式会社神戸車輌製作所のDSK-101の購入の証明書
甲第6号証の2:請求明細書(控)の写し
甲第6号証の3:調査協力の同意書
甲第7号証の1:株式会社丸〆のDSK-101の購入の証明書
甲第7号証の2:請求明細書(控)の写し
甲第7号証の3:調査協力の同意書
甲第8号証:大丸工業株式会社のDSK-101の購入の証明書
甲第9号証:武蔵厨房工業から購入したDSK-101の証明書
甲第10号証:安華物流系統有限公司の証明書
甲第11号証:試験測定成績表及び試験台帳
甲第12号証:安華物流系統有限公司への注文書
甲第13号証:武蔵厨房工業株式会社の陳述書
甲第14号証:株式会社丸〆に対する請求明細書(控)の写し
甲第15号証:株式会社丸〆に対する売掛金元帳
甲第16号証:株式会社神戸車輌製作所に対する売掛金元帳
甲第17号証:株式会社アサヒに対する売掛金元帳
甲第18号証:大丸工業株式会社に対する売掛金元帳
甲第19号証の1:アクスルカタログ2004年秋・冬号該当頁
甲第19号証の2:アクスルカタログ2004年秋・冬号第1頁
甲第20号証:アクスルカタログ2010年春・夏号該当頁
甲第21号証:DSK-101(武蔵厨房工業株式会社から譲受したもの)の写真
甲第22号証:DSK-101(請求人会社に保管されていたもの)
甲第23号証:実開平6-71365号公報
甲第24号証:特開2002-252053号公報
甲第25号証:特開2000-88486号公報
甲第26号証:実開昭54-15872号公報
甲第27号証:特開2002-246762号公報
甲第28号証:アクスル株式会社DCMセンターに対する売掛金元帳
甲第29号証:株式会社丸〆の陳述書
甲第30号証:株式会社丸〆の証明書
甲第31号証:アクスル株式会社担当部署である統括部長の証明書
甲第32号証の1:社内・下請契約者の出図書(出図先 安華物流系統有限公司 出図年月日2004年7月6日)
甲第32号証の2:DSK-101構造図、図番MH210040、設変番号2
甲第32号証の3:DSK-101ハンドル、図番410162、設変番号1
甲第32号証の4:DSK-101ハンドル板、図番MH410163、設変番号1
甲第32号証の5:DSK-101ハンドル折りたたみ金具、MH410164、設変番号1
甲第32号証の6:DSK-101ハンドルASSY、図番MH420005、設変番号1
甲第32号証の7:DSK-101ハンドル折畳ASSY、図番MH420006、設変番号1
甲第33号証:DSK-101構造図、図番MH210040、設変番号3
甲第34号証の1:DSK-101ハンドル、図番MH410162、設変番号2
甲第34号証の2:DSK-101ハンドルASSY、図番MH420005、設変番号2
甲第34号証の3:DSK-101ハンドル取付板、図番MH410182、設変番号1
甲第35号証の1:DSK-101ハンドル折りたたみ金具、図番MH410164、設変番号2
甲第35号証の2:社内・下請契約者の出図書(出図先 安華物流系統有限公司 出図年月日2005年9月2日)
甲第36号証:DSK-101構造図、図番MH210040、設変番号4
甲第37号証:DSK-101構造図、図番MH210040、設変番号5
甲第38号証:DSK-101構造図、図番MH210040、設変番号6
甲第39号証:ラベルの履歴を示す図
甲第40号証:安華物流系統有限公司の組織図
甲第41号証:株式会社丸〆の証明書
甲第42号証:武蔵厨房工業株式会社の証明書
甲第43号証:株式会社ナンシンの売掛金元帳写し
甲第44号証:DSK-102の他社(台車屋さん)のHPの広告例
なお、参考資料1として株式会社丸〆の誤記した陳述書

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たないとの審決を求め、その理由として、下記乙第1?38号証を提出し、審判請求人の提出した各号証によっては、本件特許出願前に本件特許発明1?4の構成を備えた運搬車の存在、販売あるいは公知であるとの事実は証明されるに至っておらず、また、本件特許発明1?4は特許法第29条第1項第2号又は同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって無効とすべきとする請求人の主張は、成り立たない旨主張している。

<証拠方法>
乙第1号証:陳述書(株式会社アサヒ取締役副社長野沢謙一)
乙第2号証:陳述書(株式会社丸〆代表取締役渡邊敏充)
乙第3号証:陳述書(大丸工業株式会社代表取締役白部誠)
乙第4号証:見解書(弁理士西良久)
乙第5号証の1:佐々木メモ(株式会社カナツー元社員佐々木誠)
乙第5号証の2:同上議事録(株式会社カナツー元社員佐々木誠)
乙第5号証の3-1及び3-2:email及び添付ファイル(株式会社カナツー代表者小倉寿之)
乙第6号証の1及び2:株式会社ナンシンのホームページ
乙第7号証:通信販売マテハンブック(株式会社ナンシン)
乙第8号証の1及び2:市販品の運搬車DSK-101の領収書
乙第9号証:元払貼付票(名鉄運輸株式会社)
乙第10?12号証:市販品の運搬車DSK-101の底板裏面写真及び底板表面写真
乙第13号証:商品カタログVol.3(株式会社ナンシン)
乙第14号証:商品カタログVol.4(株式会社ナンシン)
乙第15号証:商品カタログVol.4-2(株式会社ナンシン)
乙第16号証:商品カタログVol.4-3(株式会社ナンシン)
乙第17号証:商品カタログVol.4-4(株式会社ナンシン)
乙第18号証:商品カタログVol.4-4(株式会社ナンシン)
乙第19号証の1?7:桐生車輌株式会社宛「請求明細書」
乙第20号証:桐生車輌株式会社宛「請求明細書」
乙第21号証:2003年度蘇州工業園区民営経済表彰(http://fjt.sipac.gov.cn/gate/big5/www.sipac.gov.cn/2003myjjgrc/2003grc.htm)
乙第22号証:Fujisan.co.jpのホームページ(http://www.fujisan.co.jp/product/1281680806)
乙第23号証:「精確客戸**倉庫」のホームページ(http://equipment.exactdw.com/hangye/big5/guizhousheng.html)
乙第24号証:「信*黄*」のホームページ(http://www.86xc.com/1509578.html)
乙第25号証:「ナックグローバルネットウィキ」(http://wiki.nacglobal.net/wiki/index.php?title=・・・(以下省略))
乙第26号証:「公司年**告*」(和訳「企業年度決算報告書(私営企業)(2004年度)」抄訳
乙第27号証:「*州工**区安*物流系統有限公司」(和訳「蘇州工業園区安華物流系統株式会社」)
乙第28号証の1?5:陳述書(桐生車輌株式会社代表取締役桐生信也)
乙第29号証の1?2:乙第28号証の添付写真の手押台車寸法測定図
乙第30号証:陳述書(株式会社丸〆代表取締役渡邊敏充)
乙第31号証の1?4:株式会社丸〆の武蔵厨房工業株式会社宛納品書
乙第32号証の1?9:陳述書(上海希世五金機械有限公司総経理何志*)など
乙第33号証の1?4:被請求人の製造に係る手押台車の写真
乙第34号証:陳述書(武蔵厨房工業株式会社代表取締役石川喜一)
乙第35号証:底板裏面写真
乙第36号証:陳述書(株式会社丸〆代表取締役渡邊敏充)
乙第37号証:組織変更と人事異動に関するお知らせ(アクスル株式会社)
乙第38号証:株式会社エビスホームページ(http://www.daisya.net/inndex.html)
なお、乙第23、24、26、27、32号証において、日本の漢字で表示不可能な漢字については「*」で代用している。また、乙第29号証の1?2は、平成22年7月9日の口頭審理の際に、被請求人が物件提出したものと同じ内容のものである。

第5 当審の判断

1 引用発明1及びその構成

(1) 引用発明1について
審判請求書において請求人は、引用発明1の構成に関し、2004年6月7日付け出図の製品図として甲第2?3号証の2を、同日付け出図の金型製作用図として甲第4号証の1?11を、それぞれ提出している。
また、請求人は平成22年6月25日付け口頭審理陳述要領書第4ページ第9?14行において、「(1)甲第2号証のDSK-101の図面(図番MH210040 設変番号-1、S4531-1)は、設計変更前の図面であり、甲第5号証の1、甲第6号証の1、甲第7号証の1、甲第8号証の各証明書に添付した図番MH210040 設変番号-2、S4531-1(文書番号)の図面が、甲第2号証の図面から設計変更されて日本国内で販売された運搬車DSK-101の正しい図面であり、甲第2号証に係る審判請求時の主張を訂正する。」と記載している。
更に、請求人は平成22年9月7日付け弁駁書(2)の第5ページ第15行?第6ページ第18行において、安華物流系統有限公司への金型発注時は甲第2号証?甲第4号証の11の金型製作用図に基づいて見積金額の積算が行われ、その後、安華物流系統有限公司宛の出図年月日2004年7月6日付けの出図書に記載の図面に基づいて初期型のDSK-101が製造された旨を主張し、この出図書に添付されたDSK-101関連の図面として、甲第32号証の2?7を提出している。
ここで、甲第32号証の2の「DSK-101構造図」の図面に記されたものは、甲第5号証の1、甲第6号証の1、甲第7号証の1、甲第8号証の各証明書に添付された図番MH210040 設変番号-2、S4531-1(文書番号)の「DSK-101構造図」の図面に記載されたものと実質的に同じ内容であり、同じく甲第32号証の5の「DSK-101ハンドル折りたたみ金具」の図面に記載されたものは、上記各証明書に添付された図番MH410164 設変番号-1、S4537(文書番号)の「DSK-101ハンドル折りたたみ金具」の図面に記載されたものと実質的に同じ内容である。
以上のことから、株式会社ナンシンは「甲第3号証の1?甲第4号証の11」の金型製作用図及び「甲第32号証の2?7」の図面に基づいて、中国の安華物流系統有限公司に対して、DSK-101を注文したものと認められる。

なお、被請求人は平成22年10月14日付け答弁書(2)において、請求人が特許を無効にする根拠を、甲第2?4号証の11等の図面に記載の台車の販売から、甲第32号証の2?7の図面に記載の台車の販売に変更していること等を挙げ、これらは主要事実の変更であるから請求の理由の要旨を変更するものである旨を主張している。
しかし、甲第2?4号証の11の図面及び甲第32号証の2?7の図面は、いずれも間接事実(主要事実を間接的に推認させる事実)であって、請求人が甲第32号証等を追加することは、間接事実を立証するための証拠を追加したにすぎないから、特許を無効にする根拠となる事実(主要事実)を実質的に変更する補正には当たらない。
したがって、被請求人の上記主張は採用しない。

(2)引用発明1の構成(「甲第3号証の1?甲第4号証の11」の金型製作図及び「甲第32号証の2?7」の図面の記載事項)
株式会社ナンシンが中国の安華物流系統有限公司に対して、DSK-101の運搬車を注文した際に用いた上記「甲第3号証の1?甲第4号証の11」の金型製作用図及び「甲第32号証の2?7」の図面には、以下の構成からなる台車が記載されているものと認められる。

「裏面に取り付けた車輪(21、22)により走行可能に構成された天板(1)の上面にハンドル折畳金具(7)を取り付け、ハンドル(4)の下端部を前記ハンドル折畳金具(7)に軸支して、前記ハンドル(4)を前記天板(1)上に倒した収納位置と、前記天板(1)上に起立させた起立位置間で回動可能と成すと共に、前記起立位置においてハンドル(4)を固定可能とした手押し台車において、
前記ハンドル折畳金具(7)は、前記天板(1)上に載置される底板と、該底板より垂直方向に立設されて平行を成す2枚の軸受板と、前記軸受板間を垂直方向に連結する係止板とを備え、
前記ハンドル折畳金具(7)は、所定形状に裁断されて矩形状に形成された前記底板に対応する底板部と、該底板部の対向する二辺にそれぞれ連続して形成された前記2枚の軸受板に対応する軸受板部と、該各軸受板部が前記軸受板となったときに該軸受板の高さ方向を成す一辺に形成された、前記係止板に対応する係止板部とを有する、
前記軸受板間に前記ハンドル(4)の下端部を軸支して該ハンドル(4)を回動可能と成すと共に、
前記ハンドル折畳金具(7)の前記係止板を、前記ハンドル(4)を前記収納位置から起立位置に向けて回動させたときに前記ハンドル(4)の起立位置において該ハンドル(4)の下端部に当接して前記ハンドル(4)の回動を規制する位置に設け、かつ、
前記係止板の前記ハンドル(4)下端部と当接する部分を、前記ハンドル(4)下端部の外形形状に対応して湾曲させた手押し台車のハンドル取付部構造。」(上記構成を、以下「引用発明1」という。なお、符号は甲第32号証の2のDSK-101構造図に記載の各部品に付された記号を用いている。)

(3)対比

ア 本件特許発明1と引用発明1との対比
引用発明1の「天板(1)」は本件特許発明1の「荷台」に相当し、以下同様に「ハンドル(4)」は「ハンドル」に、「ハンドル折畳金具(7)」は「ブラケット」に、それぞれ相当するものと認められる。
これらの点を考慮して、本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、両者は、
「裏面に取り付けた車輪により走行可能に構成された荷台の上面にブラケットを取り付け、ハンドルの下端部を前記ブラケットに軸支して、前記ハンドルを前記荷台上に倒した収納位置と、前記荷台上に起立させた起立位置間で回動可能と成すと共に、前記起立位置においてハンドルを固定可能とした手押し台車において、
前記ブラケットは、前記荷台上に載置される底板と、該底板より垂直方向に立設されて平行を成す2枚の軸受板と、前記軸受板間を垂直方向に連結する係止板とを備え,
前記ブラケットは、所定形状に裁断されて矩形状に形成された前記底板に対応する底板部と、該底板部の対向する二辺にそれぞれ連続して形成された前記2枚の軸受板に対応する軸受板部と、該各軸受板部が前記軸受板となったときに該軸受板の高さ方向を成す一辺に形成された、前記係止板に対応する係止板部とを有する、
前記軸受板間に前記ハンドルの下端部を軸支して該ハンドルを回動可能と成すと共に、
前記ブラケットの前記係止板を、前記ハンドルを前記収納位置から起立位置に向けて回動させたときに前記ハンドルの起立位置において該ハンドルの下端部に当接して前記ハンドルの回動を規制する位置に設け、かつ、
前記係止板の前記ハンドル下端部と当接する部分を、前記ハンドル下端部の外形形状に対応して湾曲させたことを特徴とする手押し台車のハンドル取付部構造。」
である点で一致し、下記の点で相違している。

[相違点]
ブラケットに関し、本件特許発明1では、
「1枚の金属板を曲折することにより形成されており、
前記底板部と前記軸受板部との境界を同一方向に折り曲げて、前記底板と前記二枚の軸受板とが形成されると共に、前記各軸受板部と前記係止板部との境界部分を同一方向に折り曲げて前記二枚の係止板部を重合することにより、前記係止板が形成され」ているのに対して、引用発明1では上記のように形成されているか否か明らかでない点。

上記相違点について検討する。
例えば甲第32号証の5のDSK-101のハンドル折りたたみ金具の図面(図番MH410164)において、底面図では、外側の係止板と軸受板部との境界部分及び内側の係止板と軸受け板部との境界部分は、いずれも折り曲げられているから、「各軸受板部と係止板部との境界部分を同一方向に折り曲げて前記二枚の係止板部を重合」に相当する構造が記載されているといえる。
また、正面図又は側面図では、軸受板部と底板部との境界部分が折り曲げられているから、「底板部と軸受板部との境界を同一方向に折り曲げて、前記底板と前記二枚の軸受板とが形成」に相当する構造が記載されているといえる。
以上のことから、ハンドル折りたたみ金具は、「1枚の金属板を曲折することにより形成」されているともいえる。
したがって、甲第32号証の5のハンドル折りたたみ金具の図面には、上記相違点に係る構成が実質的に記載されているといえるから、引用発明1は本件特許発明1の全ての構成要件を備えていると認められる。

なお、被請求人は、甲第3号証の1の「ハンドル折りたたみ金具」の図面等の平面図及び底面図の記載を根拠に、内側係止板が軸受板とは別体として形成されていること、及び、軸受板と底板とが貼り合わせて形成されていることを主張し、更に、甲第3号証の2の「ハンドル折畳ASSY」の図面等の記載を根拠に、内側・外側の各係止板と軸受板とが別個に形成されていることを主張している。
しかし、上記の各図面に係止板、軸受板部及び底板が別部材であることを示す記載があるものではなく、また、軸受板と底板とが貼り合わせて形成されていることを示す記載があるものでもない。
また、甲第3号証の2の「ハンドル折畳ASSY」の図面は、ハンドル、ハンドル折畳金具、ブッシュナット、ボルト、ペダルバネ等を組み立てた状態を示す図面であって、ハンドル折畳金具の詳細を示すものではない。
したがって、上記各図面の記載からは、係止板、軸受板部及び底板が別部材であるとは認められず、また、軸受板と底板とが貼り合わせて形成されているものとも認められないから、被請求人の上記主張は採用できない。

イ 本件特許発明2と引用発明1との対比
本件特許発明2は、本件特許発明1の構成要件に、更に構成要件として「前記ブラケットの前記係止板が、重合溶接された金属板によって構成されている」点を付加したものである。
甲第32号証の5のハンドル折りたたみ金具の図面の平面図及び底面図では、内側の係止板の「へり」と外側の係止板の「へり」は、両係止板を重ねた状態で溶接することが記載されているから、甲第32号証の5のハンドル折りたたみ金具の図面には、「ブラケットの係止板が、重合溶接された金属板によって構成」することが記載されているといえる。
したがって、引用発明1は本件特許発明2の全ての構成要件を備えていると認められる。

なお、平成22年7月9日付け第1回口頭審理調書に記載のように、当事者双方は「請求人が持参した運搬車DSK-101の構造は、本件発明の請求項1及び請求項2の構造と同じものである。」としているから、請求人が引用発明1の外観形状に関する証拠として提出した甲第9号証等に添付の写真画像の運搬車は、本件特許発明1?2の構成要件を備えていると認められる。

2 引用発明1に係る運搬車の公然実施について

(1) 安華物流系統有限公司に関連する事項について

ア 甲第32号証の1の出図書の第1?4ページの受領印の欄には「安華」、「2004.7.13」及び「文革」なる印影が認められ、該出図書の第2ページには図面番号「MH210040」に対して品名「DSK-101構造図」及び設変番号「2」の記載があり、これは甲第32号証の2の図面を指すものと解され、また第3ページには図面番号「MH410164」に対して品名「DSK-101ハンドル折りたたみ金具」及び設変番号「1」の記載があり、これは甲第32号証の5の図面を指すものと解される。

イ 甲第12号証の2004年7月12日付け輸入注文書には、5000台のDSK-101台車(図番:MH210040)に関して、「Leadtime:ETD上海港7月31日(1コンテナ) ETD上海港8月16日(2コンテナ) Payment: 30% cash with order,70% after arrival of goods」と記載されている。
この輸入注文書に記載の図番「MH210040」及び台車の番号「DSK-101」は、前記「ア」の出図書の図面番号「MH210040」及び品名「DSK-101」と一致している。

ウ 甲第10号証において、安華物流系統有限公司の担当者は、2004年7月23日に、株式会社ナンシンから台車DSK-101の5000台分の合計金額の30%を、2004年9月28日には、合計金額の残りの70%の入金があった旨を証明している。

以上「ア」?「ウ」に記載した事項から、安華物流系統有限公司は、株式会社ナンシンから引用発明1に係る台車を、型番「DSK-101」台車として合計5000台の注文を受け、製造し、日本に輸出し、該輸出された台車は、2004年9月28日よりも前に、全て日本国内の株式会社ナンシンに到着していたことが認められる。

なお、被請求人は、乙第21?23、26号証を基に、甲第10号証及び甲第12号証に関して、その記載内容、成立性等は疑わしい旨の主張をしている。しかし、2004年5月1日当時に「文革」なる人物が副総経理であったことが記載された安華物流系統有限公司の組織図を、安華物流系統有限公司の総経理である孫(「子」偏に「小」)延安が甲第40号証で証明しているから、甲第10、12号証の記載内容、成立性等は、被請求人の主張する証拠によって否定されるものではない。
また、被請求人は、乙第24?25号証を基に、甲第10号証の成立性が疑わしい旨の主張をしている。しかし、甲第10号証は台車の金額の入金に関する証明書であるから、たとえ中国語表記の「出口許可書」に対応する日本語表記は「輸出許可書」であり、かつ、2004年当時の安華物流系統有限公司が輸出許可書を有していなかったとしても、それによって甲第10号証の成立性が否定されるものではない。

(2) 株式会社丸〆に関連する事項について

ア DSK-101の販売について
甲第7号証の1の証明書及び甲第30号証の証明書において、株式会社丸〆代表取締役社長渡邊敏充は、平成16年8月23日に型番DSK-101の運搬車を、株式会社ナンシンより20台購入した事実を証明しており、請求人は、この事実を甲第7号証の2の請求明細書(控)、甲第14号証の請求明細書及び甲第15号証の売掛金元帳によって立証している。

イ 甲第9、13号証の添付の写真画像のDSK-101の運搬車について

(ア) 株式会社ナンシンから株式会社丸〆への販売について
甲第41号証において、株式会社丸〆代表取締役渡邊敏充は、DSK-101を株式会社ナンシンから1回目2004年8月23日に20台、2回目2007年12月19日に1台、3回目2008年2月21日に1台、4回目2008年3月12日に30台の、4回にわたり合計52台購入したことを証明しており、これは甲第43号証の売掛金元帳の内容とも一致している。

(イ) 株式会社丸〆から武蔵厨房工業株式会社への販売について
甲第9号証の証明書及び甲第13号証の陳述書において、武蔵厨房工業株式会社代表取締役石川喜一は、平成16年10月19日付けで株式会社ナンシン製の樹脂運搬車(型番「DSK-101」)を株式会社丸〆から購入したこと、株式会社丸〆から購入した樹脂運搬車を平成21年3月6日付けで株式会社ナンシンに譲渡したこと、及び、この譲渡した樹脂運搬車は甲第9号証及び甲第13号証添付の写真画像に示されたとおりのものであることを陳述している。
乙第34号証の陳述書において、武蔵厨房工業株式会社代表取締役石川喜一は、武蔵厨房株式会社ではナンシン製手押台車を株式会社丸〆から合計13台購入していること、及び、写真の手押台車が平成16年10月19日に株式会社丸〆より購入した手押し台車かどうかは、確認していない旨を記載している。
甲第42号証において、武蔵厨房工業株式会社常務取締役石川幸雄は、DSK-101の運搬車を株式会社丸〆から、平成16(2004)年10月19日に3台、平成17年(2005)年11月14日に3台、平成19(2007)年1月15日に4台、平成20(2008)年9月24日に3台の合計13台購入したとしており、更に、DSK-101の運搬車1台を株式会社ナンシンに譲渡し、株式会社ナンシンから新品のDSK-101の運搬車を譲り受け、3台は所在不明で、保有しているDSK-101の運搬車は10台であるとしている。

(ウ) DSK-101の運搬車について
平成22年10月15日付け上申書(2)において請求人は、甲第42号証に添付の写真画像を提出するとともに、武蔵厨房工業株式会社が保有する10台のDSK-101の運搬車について、7台は、最初期の量産品の構造の特徴と一致しているから平成16年8月23日に株式会社丸〆が株式会社ナンシンから購入したDSK-101の運搬車であることがわかること、及び、3台は、設計変更された構造の特徴と一致しているから2007年(平成19年)12月19日以降に株式会社丸〆が株式会社ナンシンから購入したDSK-101の運搬車であることがわかることを主張している。
また、同じく請求人は、甲第13号証の添付の写真のDSK-101の運搬車について、武蔵厨房工業株式会社の購入時期は、平成16年10月19日か、平成17年11月14日か、平成19年1月15日か特定することはできないが、平成16年8月23日に株式会社丸〆が株式会社ナンシンから購入した製品のうちの1台であるとしている。

上記「(ア)」?「(ウ)」の各記載事項及び甲第39、41?43号証の各記載との間で、互いに矛盾する点は発見されない。
したがって、甲第9、13号証の添付の写真画像のDSK-101の運搬車は、平成16年8月23日に株式会社丸〆が株式会社ナンシンから購入したものであると認められる。

(3) 株式会社アサヒに関連する事項について
甲第5号証の1の証明書において、株式会社アサヒの取締役副社長野沢謙一は、平成16年8月23日に型番DSK-101の運搬車を、株式会社ナンシンより10台購入した事実を証明しており、請求人は、この事実を甲第5号証の2の請求明細書(控)及び甲第17号証の売掛金元帳によって立証している。

(4) 株式会社神戸車輌製作所に関連する事項について
甲第6号証の1の証明書において、株式会社神戸車輌製作所代表取締役社長神戸芳昭は、平成16年8月23日に型番DSK-101の運搬車を、株式会社ナンシンより10台購入した事実を証明しており、請求人は、この事実を甲第6号証の2の請求明細書(控)及び甲第16号証の売掛金元帳によって立証している。

(5) 大丸工業株式会社に関連する事項について
甲第8号証の証明書において、大丸工業株式会社代表取締役白部誠は、平成16年8月27日に型番DSK-101の運搬車を、株式会社ナンシンより4台購入した事実を証明しており、請求人は、この事実を甲第18号証の売掛金元帳によって立証している。

(6) アクスル株式会社に関連する事項について
請求人は、型番DSK-101の運搬車を本件特許の出願前にアクスル株式会社に販売した事実を、甲第19号証の「アクスルカタログ」及び甲第28号証の売掛金元帳によって立証している。また、アクスル株式会社オフィス・ライフ・クリエーション2総括部長川村勝宏は甲第31号証の証明書において、型番DSK-101の運搬車を2004年8月31日に19台購入したことを証明している。

(7) まとめ
以上をまとめると、下記「ア」?「ウ」の事項が認められる。

ア 「第5 2(1)」に記載したように、安華物流系統有限公司で製造の引用発明1に係る運搬車が、株式会社ナンシンの型番「DSK-101」台車として、2004年(平成16年)9月28日よりも前に、株式会社ナンシンに到着していたことが認められること。

イ DSK-101の販売について「第5 2(2)ア」で記載した株式会社丸〆に関連する事項、並びに、「第5 2(3)?(6)」で記載した株式会社アサヒ、株式会社神戸車輌製作所、大丸工業株式会社及びアクスル株式会社に関連する事項から、株式会社ナンシンの型番「DSK-101」の運搬車が、本件特許出願日(平成16年9月9日)より前に、日本国内において販売されたものと認められること。

ウ 「第5 2(2)イ」で記載したように、甲第9、13号証の添付の写真画像のDSK-101の運搬車は、平成16年8月23日に株式会社丸〆が株式会社ナンシンから購入したものであると認められること。

上記「ア」?「ウ」から、安華物流系統有限公司で製造の引用発明1に係る運搬車は、本件特許出願日(平成16年9月9日)よりも前に、日本国内に輸入され、販売されたものと認められる。
したがって、引用発明1は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であると認められる。

3 本件特許発明1?4について

(1) 本件特許発明1?2について
「第5 2(7)」に記載したように、引用発明1は本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であると認められ、また、「第5 1(3)ア?イ」に記載したように、引用発明1は本件特許発明1?2の全ての構成要件を備えていることから、本件特許発明1?2は本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明である。

(2) 本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1の構成要件に、更に構成要件として「ブラケットの前記底板が、重合された金属板によって構成されている」点を付加したものである。
本件特許発明3と引用発明1とを対比すると、両者は以下の点で相違しているものと認められる。

相違点
本件特許発明3では、「ブラケットの底板が、重合された金属板によって構成されている」のに対して、引用発明1では、ハンドル折りたたみ金具(ブラケットに相当。)の底板は重合されていない点。

相違点についての検討
一般に、強度を向上させるために板材を重ね合わせることは、本件特許出願前に周知の技術である。例えば、請求人が提出した甲第25号証(特開2000-88486号公報)には、「・・・重ねあわされた2重構造となるため、ブラケット強度が向上する。」(段落【0061】)と記載されていることを参照。
すると、上記周知の技術を参照して、引用発明1において、ハンドル折りたたみ金具の強度を上げるために、底板部分を2重に重ね合わせることにより上記相違点に係る構成とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。

したがって、本件特許発明3は、引用発明1及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1の構成要件に、更に構成要件として「ブラケットの前記底板に、補強用の凹凸形状を形成した」点を付加したものである。
本件特許発明4と引用発明1とを対比すると、両者は以下の点で相違しているものと認められる。

相違点
本件特許発明4では、「ブラケットの底板に、補強用の凹凸形状を形成」しているのに対して、引用発明1では、ハンドル折りたたみ金具(ブラケットに相当。)の底板に補強用の凹凸形状は形成されていない点。

相違点についての検討
一般に、強度を向上させるために凹凸形状を形成することは、本件特許出願前に周知の技術である。例えば、請求人が提出した甲第27号証(特開2002-246762号公報)には、「・・・第1のリブを形成した。これにより、耳部の強度が向上する。」(段落【0011】)と記載されていることを参照。(「リブ」は「凹凸形状」に相当する。)
すると、上記周知の技術を参照して、引用発明1において、ハンドル折りたたみ金具の強度を上げるために、底板に凹凸形状を形成することにより上記相違点に係る構成とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。

したがって、本件特許発明4は、引用発明1及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本件特許発明1?2(本件請求項1?2に係る発明)は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、本件特許発明1?2についての特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するので、無効とすべきものである。
また、本件特許発明3?4(本件請求項3?4に係る発明)は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明3?4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するので、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-09 
結審通知日 2010-11-11 
審決日 2010-11-24 
出願番号 特願2004-262347(P2004-262347)
審決分類 P 1 123・ 121- Z (B62B)
P 1 123・ 112- Z (B62B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三澤 哲也  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 田口 傑
小関 峰夫
登録日 2007-01-19 
登録番号 特許第3906218号(P3906218)
発明の名称 手押し台車のハンドル取付部構造  
代理人 小倉 正明  
代理人 西 良久  
代理人 戸村 哲郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ