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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1241163
審判番号 不服2008-7184  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-24 
確定日 2011-08-02 
事件の表示 特願2004-514323「通信網に加入している端末に関係付けられた口座にクレジットを入金するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月24日国際公開,WO03/107647,平成17年10月6日国内公表,特表2005-530254〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成14年6月18日を国際出願日とする出願であって,平成18年10月19日付けの拒絶理由通知に対して,平成19年4月2日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが,同年12月19日付けで拒絶の査定がなされ,この拒絶の査定を不服として,平成20年3月24日に審判請求がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,平成19年4月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「通信網に加入しているユーザー端末に関係付けられた口座にクレジットを入金するための方法において,
(1)ユーザー端末と通信網エンティティの間で対話を行い,少なくとも,クレジットを前記ユーザー端末に関係付けられた前記口座へ入金するか否か,入金されるクレジットの額,及び入金元を提示する段階と,
(2)DIAMETERプロトコルに基づいて,前記通信網エンティティから前記入金元に,前記ユーザー端末に関係付けられた口座へ前記クレジットの額を入金することを要求する段階と,から成り,
前記(2)要求する段階は,当該要求を,口座へ或る額の入金を求める要求として識別するDIAMETER要求メッセージを生成する段階を含んでおり,
前記生成されたDIAMETER要求メッセージは,ユーザー端末対入金先関係口座を識別する属性値対を更に含むことを特徴とする方法。」

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-74001号公報(以下「引用例1」という。)には,振込処理方法に関して,以下(1a)-(1g)の記載がある。
(1a)「【0037】さらに,本実施形態例は,ATMなどの端末ではなく,インターネットバンキングシステムを利用しているので,パソコン,携帯情報端末,携帯電話などの端末を利用している。
【0038】図1は本発明の実施形態にかかる振込処理システムの構成を説明するための概念図である。」
(1b)「【0042】図2で示すように受取人端末と支払人端末はインターネット等ネットワーク(7)を介して本発明のシステムに接続されている。」
(1c)「【0043】図3は本発明の処理フロー例である。
【0044】受取人認証(8)では本発明を利用して他の口座から引き出す受取人を特定するものである。
【0045】受取人が誰かを特定することは本システムでは非常に重要な問題である。
【0046】通常インターネットバンキング等で利用されている認証システムは図8のようにユーザーIDとパスワードをインターネット端末に入力するものが多く,本システムも既存のシステムを利用したものなのでこれを利用するが,更に優れた認証方式があれば,そちらを利用した方がよい。
【0047】図5のように受取人口座に関連付けて公開鍵式暗号の暗号鍵を保存し,前記暗号鍵を基に認証局の証明を貰い,認証を行う方法も考えられる。」
(1d)「【0048】振込要求,支払人口座番号,必要であれば支払人端末コードを入力(9)は,先に認証を受け既に素性が知れている受取人が,振込要求手続きを入力するものである。」
(1e)「【0051】支払人への告知(10)は端末指定コードを利用して電子メールで振込要求の存在を支払人に告知し,支払人をインターネットバンキングへと向かわせるものである。例えば図13のような文面を利用することが考えられる。尚,端末のセキュリティレベルによっては,電子メールそのものに受取人の素性や振込要求を全て出力することも可能であり,さらに電子メールでHTMLが送信可能であれば,これを利用して振込要求に対する受諾をおこなう入力フォームをも支払人に出力可能である。」
(1f)「【0053】支払人への振込要求及び受取人情報を出力(12)は図10のような感じで支払人に出力されるものであって,振込要求受諾を入力(13)のための入力装置(図10では受諾ボタン)も一緒に出力されている。」
(1g)「【0054】振込要求にしたがって,振込処理が行われる(14)は,追加システム(2)が金融機関で利用されている一般的な振込処理システム(1)に対して振込処理の引数を与え,帰ってきた結果を図9にある逆振込サービス入金状況として出力するようにした。もちろん,金融機関で利用されている一般的な振込処理システム(1)は口座間の資金の移動を行っている。
【0055】図4,及び図5のテーブル例は,金融機関で利用されている一般的な振込処理システム(1)で利用されている口座データに,本発明で必要なデータを付け足した例である。」

ここで,図4及び図5のテーブルをみると,「端末コード」と「口座データ」とが関連付けられており,上記の「受取人端末」と「受取人口座」とは関係付けられているといえる。
また,図10の支払人への振込要求出力画面をみると,「振込要求金額」,「受取人氏名」,「受取人住所」,「受取人電子メールアドレス」,「受取人口座」も表示されている。
また,図11及び図12の振込要求手続き入力画面をみると,「振込要求金額」も入力される。
さらに,上記(1e)の「支払人への」「電子メールそのものに受取人の素性や振込要求を全て出力する」のに,振込処理のためのシステムが上記(1d)の「支払人口座番号」,「支払人端末コード」及び上記の「振込要求金額」を受取人に関する情報と関係付けて記憶することは自明のことである。
また,上記(1c)の「ユーザーIDとパスワード」は,認証情報といえる。

したがって,上記(1a)-(1g)の記載及び図面の記載から,引用例1には,
「受取人口座と関係付けられた携帯電話等の受取人端末と支払人端末とがネットワークを介して接続されている振込処理のためのシステムを利用した振込処理方法であって,
受取人端末が認証情報を振込処理のためのシステムに送ると,振込処理のためのシステムが認証情報を受けて受取人認証を行い,受取人認証後,受取人端末が振込要求金額,支払人口座番号,支払人端末コードを含む振込要求を振込処理のためのシステムに送信するステップと,
振込処理のためのシステムが振込要求金額,支払人口座番号,支払人端末コードを含む振込要求を受信して受取人に関する情報と関係付けて記憶し,振込要求金額,受取人の住所氏名,受取人電子メールアドレス,受取人口座を含む振込要求を支払人端末に送信するステップと,
支払人端末が振込要求の受諾を振込処理のためのシステムに送信し,振込処理のためのシステムが振込要求の受諾を受信して支払人口座から受取人口座へ資金移動する振込処理を行うステップと,からなる振込処理方法。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく引用された特開2002-164887号公報(以下「引用例2」という。)には,以下(2a)-(2l)の記載がある。
(2a)「【0014】【発明が解決しようとする課題】従来のMobile IPを使う端末に適用する認証課金システムは,パケット通信の認証課金を行うために設計されたシステムであり,例えば,移動端末上で発生した認証課金(例えば,買い物代金のクレジット支払いのための認証課金)に使うことはできなかった。」
(2b)「【0017】本発明は,上記事情を考慮してなされたもので,種々の目的でMobileIPプロトコルに従う移動端末装置が所定のAAAプロトコルに従うAAAサーバ装置による認証課金サービスを利用することができるようにした,移動端末装置,AAAサーバ装置,移動通信システム,認証課金サービス提供方法,認証課金サービス享受方法を提供することを目的とする。」
(2c)「【0035】図1に,本実施形態に係る通信システムのネットワーク構成例を示す。(途中省略)
【0038】移動端末1010は,サブネットワーク1001をホームネットワークとする,Mobile IPにおける移動端末機能(Mobile IP処理部)と,AAA(Authentication, Authorization and Accounting)(例えば,DIAMETER,あるいはRADIUS)を利用した課金サービス(他の端末のユーザへの代金の支払い手続きと,その支払代金の自身への通信料の請求分への付け替え手続きを行うサービス等)を受けるための機能(AAAM)(AAA処理部)を有する端末である。」
(2d)「【0090】次に,図16,図17を参照しながら,認証課金サービスや認証課金要求/応答の他の例(決済処理サービス)について説明する。図16は,図1から認証課金サービスに関係する部分を抜き出して記述したものである(図16では,移動端末1010からAAAFサーバ1022を経由せずにAHサーバ1012に要求がなされる場合を示している)。図17は,認証課金サービスの手順の他の例である。」
(2e)「【0092】まず,移動端末1010は,例えば上記のS206で得られた課金情報に基づいて,AAAHサーバ1012からAAAyサーバ1032に電子決済を行うため,AAAHサーバ1012に対して,支払い要求を(要求パケットによって)送付する(S207)。」
(2f)「【0094】次に,AAAHサーバ1012は,移動端末1010から支払い要求のパケットを受信した場合,該当するAAAyサーバ1032に対して,電子決済を行う。例えば,料金データベース記憶部1202に必要な情報を記録する。
【0095】そして,AAAHサーバ1012は,AAAyサーバ1032に対して,支払に関する情報のパケットを送信する(S208)。」
(2g)「【0097】次に,AAAyサーバ1032は,AAAHサーバ1012から支払に関する情報を受信した場合,端末1030に対し,支払いがあったことを通知するパケットを送信する(S209)。」
(2h)「【0099】これとともに,AAAyサーバ1032は,AAAHサーバ1012に支払い確認応答パケットを送る(S210)。」
(2i)「【0100】そして,AAAHサーバ1012は,AAAyサーバ1032から支払い確認応答パケットを受信した場合,これを,移動端末1010へ転送する(S211)。」
(2j)「【0102】なお,端末1030のユーザに料金を支払う方法としては,例えば,(1)AAAHサーバ1012の料金データベース記憶部1202で,移動端末1010のユーザに対して(+X)円の課金を記録した場合に,AAAyサーバ1032の料金データベース記憶部(図示せず)で,端末1030のユーザに対して(-X)円の課金を記録する方法(課金額が正の値になった場合には,通信料金として徴収を行うが,課金額が負の値になった場合には,支払を行う)(途中省略)など,種々の方法がある。」
(2k)「【0110】また,移動端末1010のホーム・ネットワークと端末1030の属するネットワークとが等しい場合に,AAAHサーバとAAAYサーバが同一のサーバになる場合がある(異なるサーバである場合もある)。」
(2l)「【0117】なお,以上では,本発明を電子決済に関する手続きに適用した場合を例にとって説明したが,もちろん,本発明は,種々の処理あるいは手続きに適用可能である。以下,その他の例を列挙する。(途中省略)
・第3者による,通話料金の代行支払(移動端末が,広告主に第1の要求を送り,移動端末が広告を見終わった時点で,広告主が応答を返し,広告を見た見返りに,移動端末がその次に通話する代金の一部または全部を該広告主が負担するサービスなど)。」

上記(2a)-(2l)の記載及び図面の記載から,引用例2には,
支払人(移動端末1010のユーザー)から受取人(端末1030のユーザー)への代金支払のためのサービスを提供するのに,サーバ装置AAAHが,DIAMETERプロトコルに従い支払人の移動端末1010と通信して代金支払のための処理を行うこと
が記載されていると認められる。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると,
引用発明の「ネットワーク」,「受取人端末」,「受取人口座」,「資金」は,本願発明の「通信網」,「ユーザー端末」,「口座」,「クレジット」に各々相当し,
引用発明の「受取人口座へ資金移動する」は,本願発明の「口座にクレジットを入金する」に相当し,
引用発明の「振込処理のためのシステム」は,受取人端末にネットワークを介して振込処理サービスを提供するのであるから,本願発明の「通信網エンティティ」に相当し,
引用発明の「振込要求金額」は,本願発明の「入金されるクレジットの額」に相当し,
引用発明の「支払人口座番号,支払人端末コード」は,本願発明の「入金元」に相当し,
引用発明の「振込処理のためのシステム」に送信される「振込要求」は,受取人口座への振込要求であり,「クレジットをユーザー端末に関係付けられた口座へ入金する」ことを提示するものといえるから,
引用発明の「受取人端末が認証情報を振込処理のためのシステムに送ると,振込処理のためのシステムが認証情報を受けて受取人認証を行い,受取人認証後,受取人端末が振込要求金額,支払人口座番号,支払人端末コードを含む振込要求を振込処理のためのシステムに送信するステップ」は,本願発明の「ユーザー端末と通信網エンティティの間で対話を行い,少なくとも,クレジットを前記ユーザー端末に関係付けられた前記口座へ入金するか否か,入金されるクレジットの額,及び入金元を提示する段階」と「ユーザー端末と通信網エンティティの間で対話を行い,少なくとも,クレジットをユーザー端末に関係付けられた口座へ入金することに関する情報,入金されるクレジットの額,及び入金元を提示する段階」として共通し,
引用発明の「振込処理のためのシステムが振込要求金額,支払人口座番号,支払人端末コードを伴った振込要求を受信して受取人に関する情報と関係付けて記憶し,振込要求金額,受取人の住所氏名,受取人口座を伴った振込要求を支払人端末に送信するステップ」は,本願発明の「DIAMETERプロトコルに基づいて,前記通信網エンティティから前記入金元に,前記ユーザー端末に関係付けられた口座へ前記クレジットの額を入金することを要求する段階」と「通信網エンティティから入金元に,ユーザー端末に関係付けられた口座へクレジットの額を入金することを要求する段階」として共通している。

したがって,両者は,
「通信網に加入しているユーザー端末に関係付けられた口座にクレジットを入金するための方法において,
(1)ユーザー端末と通信網エンティティの間で対話を行い,少なくとも,クレジットを前記ユーザー端末に関係付けられた前記口座へ入金することに関する情報,入金されるクレジットの額,及び入金元を提示する段階と,
(2)前記通信網エンティティから前記入金元に,前記ユーザー端末に関係付けられた口座へ前記クレジットの額を入金することを要求する段階と,から成ることを特徴とする方法。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は,提示する段階で,クレジットをユーザー端末に関係付けられた口座へ入金するか否かを提示するのに対して,引用発明は,クレジットをユーザー端末に関係付けられた口座へ入金することを提示しており,本願発明のようなものではない点。
[相違点2]
本願発明は,通信網エンティティから入金元に,ユーザー端末に関係付けられた口座へクレジットの額を入金することを要求するのに,DIAMETERプロトコルに基づいて要求するものであって,要求する段階が,当該要求を,口座へ或る額の入金を求める要求として識別するDIAMETER要求メッセージを生成する段階を含んでおり,前記生成されたDIAMETER要求メッセージは,ユーザー端末対入金先関係口座を識別する属性値対を更に含むものであるのに対して,引用発明は,そのようなものではない点。

5 判断
[相違点1]について検討する。
ユーザーがサービス提供者にサービスを希望する手続きを行うのに際して,サービスを希望するか否かを提示することが例示するまでもなく周知の事項であるから,引用発明において,提示する段階で,クレジットをユーザー端末に関係付けられた口座へ入金するか否かを提示するようにして,本願発明のようにすることは,当業者が容易になし得たことである。
[相違点2]について検討する。
引用例2に,支払人から受取人への代金支払いのためのサービスを提供するのに,サーバ装置が,DIAMETERプロトコルに従い支払人の移動端末と通信して代金支払いのための処理を行うことが記載されているから,引用発明において,通信網エンティティから入金元に,ユーザー端末に関係付けられた口座へクレジットの額を入金することを要求するのに,DIAMETERプロトコルに基づいて要求するものとし,要求する段階が,当該要求を,口座へ或る額の入金を求める要求として識別するDIAMETER要求メッセージを生成する段階を含むようにすることは,当業者が容易になし得たことである。
その際に,DIAMETERプロトコルにおけるメッセージが属性値ペア(AVP)を含むことが例示するまでもなく周知の事項であり,引用発明の振込要求も受取人電子メールアドレスと受取人口座を含むものであるから,さらに,生成されたDIAMETER要求メッセージが,ユーザー端末対入金先関係口座を識別する属性値対を更に含むものとして,本願発明のようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の効果も,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項の効果から,当業者が容易に予測し得た程度のものである。

したがって,本願発明は,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-28 
結審通知日 2011-03-07 
審決日 2011-03-18 
出願番号 特願2004-514323(P2004-514323)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須田 勝巳  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 山本 穂積
小林 義晴
発明の名称 通信網に加入している端末に関係付けられた口座にクレジットを入金するための方法  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  
代理人 西島 孝喜  

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