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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1241222
審判番号 不服2007-29234  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-29 
確定日 2011-08-03 
事件の表示 特願2001-579136「複数の別個のデータベースからサーチ結果を検索する方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 1日国際公開、WO01/82117、平成15年10月28日国内公表、特表2003-532195〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年4月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年4月27日、アメリカ合衆国、2001年4月27日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成19年7月27日付けで拒絶査定がなされ、同年10月29日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、当審において、平成22年1月8日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月12日付けで手続補正(以下、「本件第1補正」と呼ぶ。)がなされ、同年8月4日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、平成23年2月9日付けで手続補正(以下、「本件第2補正」と呼ぶ。)がなされたものである。


第2 本件第2補正(平成23年2月9日付けの手続補正)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件第2補正(平成22年2月9日付けの手続補正)を却下する。

[理由]

1.本件第2補正の補正内容
本件第2補正は、本件第2補正前の特許請求の範囲の請求項1を、本件第2補正後の請求項1に変更するものであり、本件第2補正前の請求項1、及び本件第2補正後の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである。

<本件第2補正前の請求項1>
「【請求項1】 コンピュータと、複数の許可された情報資源又はデータベースと、1又はそれ以上のユーザが複数の許可された情報資源又はデータベースに同時に、アクセスし、クエリし及び検索し、及び結果を表示するために要求される認証及びセッション管理をコンピュータに実行させる、1つ又はそれ以上の別個の許可ステップをトランスペアレントに且つ自動的に管理するコンピュータソフトウェアを有するサーチシステムであって、
前記システムは、
サーチ情報を受け取り、サーチ結果を表示するよう構成されたインタフェースと、
中央データベースに格納されたユーザ認証情報にアクセスする認証管理装置と、
対応するデータベースに同時にアクセスし、同時にサーチ要求をクエリし、前記複数のデータベースから前記サーチ情報に基づいてそれぞれ同時にサーチ結果を検索するように構成された複数の変換装置を有し、
前記複数の変換装置の各々は、その対応するデータベースと通信するために、ユーザ対話なしで1つ又はそれ以上の許可ステップを実行するように構成され、
前記複数の変換装置の各々は、前記複数のデータベースがアクセスされるときに、ユーザIDとパスワード及び、IP認証の両方を使用するように構成され、
前記複数の変換装置の各々が、前記各変換装置に対応するデータベースに特定の前記サーチ情報と文法およびプロトコル情報とを用いてサーチ要求を形式化し、
前記複数の変換装置が、前記各変換装置に対応するデータベースから前記サーチ結果を同時に検索するために前記それぞれのサーチ要求を用いる、サーチシステム。」

<本件第2補正後の請求項1>
「【請求項1】 コンピュータと、複数の許可された情報資源又はデータベースと、1又はそれ以上のユーザが複数の許可された情報資源又はデータベースに同時に、アクセスし、クエリし及び検索し、及び結果を表示するために要求される認証管理及びセッション管理をコンピュータに実行させる、1つ又はそれ以上の別個の許可ステップをトランスペアレントに且つ自動的に管理するコンピュータソフトウェアを有するサーチシステムであって、
前記システムは、
サーチ情報を受け取り、サーチ結果を表示するよう構成されたインタフェースと、
中央データベースに格納されたユーザ認証情報にアクセスする認証管理装置と、
対応するデータベースに同時にアクセスし、同時にサーチ要求をクエリし、前記複数のデータベースから前記サーチ情報に基づいてそれぞれ同時にサーチ結果を検索するように構成された複数の変換装置を有し、
前記複数の変換装置の各々は、その対応するデータベースと通信するために、ユーザ対話なしで認証管理及びセッション管理を含む許可ステップを実行するように構成され、
前記複数の変換装置の各々は、前記複数のデータベースがアクセスされるときに、ユーザIDとパスワード及び、IP認証の両方を使用するように認証管理のために構成され、
前記複数の変換装置の各々が、前記各変換装置に対応するデータベースに特定の前記サーチ情報と文法およびプロトコル情報とを用いてサーチ要求を形式化するようにセッション管理のために構成され、
前記複数の変換装置が、前記各変換装置に対応するデータベースから前記サーチ結果を同時に検索するために前記それぞれのサーチ要求を用いる、サーチシステム。」

2.本件第2補正に対する判断

本件第2補正による補正事項のうちの「許可ステップ」を「認証管理及びセッション管理を含む許可ステップ」に変更する補正事項、「前記複数のデータベースがアクセスされるときに、ユーザIDとパスワード及び、IP認証の両方を使用するように構成され」を「前記複数のデータベースがアクセスされるときに、ユーザIDとパスワード及び、IP認証の両方を使用するように認証管理のために構成され」に変更する補正事項、及び「前記各変換装置に対応するデータベースに特定の前記サーチ情報と文法およびプロトコル情報とを用いてサーチ要求を形式化し」を「前記各変換装置に対応するデータベースに特定の前記サーチ情報と文法およびプロトコル情報とを用いてサーチ要求を形式化するようにセッション管理のために構成され」に変更する補正事項は、いずれも、本件第2補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件第2補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

2-1.引用例
平成22年8月4日付けの拒絶理由通知で引用した特開平11-154158号公報(以下、「引用例」と呼ぶ。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クライアントプログラムからある特定の検索メッセージプロトコルに従ったメッセージでデータベースにアクセスしたいが、データベースがその検索メッセージプロトコルに従ったメッセージによるアクセスに対応していない場合に、データベースに代わってメッセージを受け取り、データベース固有のアクセスインタフェースを使ってデータベースにアクセスし、取得した検索結果をクライアントに返す検索メッセージプロトコル変換ゲートウェイシステムに係わり、特にデータベースアクセス処理の中でデータベースのアクセスインタフェースに依存する処理をカプセル化して隠蔽し、それを呼び出す処理からはデータベースに依らず同じインタフェースでデータベースにアクセスできるデータベースアクセスドライバを使用するデータベースアクセス手段を備える検索メッセージプロトコル変換ゲートウェイシステムに関する。」

(2)「【0014】まず、第1の実施例について説明する。
【0015】図1は本実施例の構成を表すブロック図である。図において、1はクライアントプログラム、2はコンピュータネットワーク、3は検索メッセージプロトコル変換ゲートウェイシステム(図中はゲートウェイシステムと略する)、4はデータベースである。
【0016】検索メッセージプロトコル変換ゲートウェイシステム3は、メッセージデコード手段5と、要求解析手段6と、データベースアクセス手段7と、応答生成手段10と、メッセージエンコード手段11より構成される。このうち、データベースアクセス手段7はデータベースにアクセスする処理をデータベースアクセスドライバ8を使用して行う。そのとき、アクセスすべきデータベース4とデータベースアクセスドライバ8の関連づけをアクセスドライバ一覧ファイル9を読み込むことにより行う。
【0017】データベースアクセスドライバ8は、データベース4にアクセスするための関数群のダイナミックリンクライブラリである。データベースアクセスドライバ8は、同じアクセスインタフェースを持つデータベースの集合毎に実装する。データベース固有のアクセスインタフェースを使用しなければならない処理は全てデータベースアクセスドライバ8の中に実装する。
【0018】図3は、データベースアクセスドライバ8が含むべき関数群の例である。この例では、ユーザ認証、初期化、データベース情報取得、データベース検索、レコード取得、終了の6つの関数をサポートしている。データベースアクセスドライバ8については、呼び出し側が同じインタフェースでコールできるようにサポートすべき関数の種類、関数名、関数型、引数の数、引数の型を予め規定し、全てのデータベースアクセスドライバ8でその共通インタフェースを遵守しなければならない。
【0019】アクセスドライバ一覧ファイル9は、アクセスするデータベース名(検索要求で使用される名称)とデータベースアクセスドライバ8に関する情報を保持する。
【0020】図4は、アクセスドライバ一覧ファイル9の内容の例である。この例では、アクセスインタフェースが同じであるデータベース群の種別としてDatabase_Type_Aがあり、このアクセスインタフェースを持つデータベースとしてdb1が、またそれに対応したデータベースアクセスドライバ8としてtype-a.dllがあることを定義している。図4のアクセスドライバ一覧ファイル9を使うと、データベースアクセス手段7はデータベースdb1にアクセスするときに、データベースdb1が属するデータベース種別Database_Type_Aに対応したデータベースアクセスドライバtype-a.dllを使用する。
【0021】次に図1の構成のシステムにおいて、初期化処理を例にとって処理の流れを説明する。
【0022】初期化処理とは、データベースに対するセッションの確立やユーザ認証など、データベースに対して検索・レコード取得などの処理を開始する前に実施すべき処理群を指す。ここでは、初期化処理としてユーザ認証を行った上でのデータベースとのセッションの確立を考える。
【0023】図5は、初期化処理の全体の処理の流れを説明する図である。初期化処理は、クライアントプログラム1から検索メッセージプロトコル変換ゲートウェイシステム3のメッセージデコード手段5が初期化要求メッセージ31を受け取ることで開始される。クライアントプログラム1から受信した初期化要求メッセージ31は、検索メッセージプロトコルのルールに従ってコード化されているため、そのままでは解析できない。そこで、メッセージデコード手段5により、解析可能な初期化要求メッセージ32に変換する。ここでは例としてZ39.50ライクな初期化要求メッセージをもとにして説明する。
【0024】初期化要求メッセージ32の中には、要求名称(initRequest)やパラメタ(protocolVersion、idAuthenticationなど)が含まれている。これらを要求解析手段6により、メッセージから切り出す。得られる解析結果33としては、検索メッセージプロトコル変換ゲートウェイシステム3がこのメッセージに対して処理すべきサービスの名称(Init:初期化処理)やそれを実行するために使用する入力パラメタテーブルが含まれる。
【0025】次に要求解析手段6の解析結果33を使用してデータベースアクセス手段7がデータベースにアクセスして初期化要求メッセージに対応した処理を実行し、データベースアクセス結果34を取得する。データベースアクセス手段がデータベースにアクセスする処理については、図6を使って後ほど詳細に説明する。」

(3)「【0029】図6は、初期化処理におけるデータベースをアクセスする処理の流れを詳細に説明する図である。図5の処理の流れにおいて、要求解析手段6から解析結果33を受け取ったデータベースアクセス手段7は、その中からサービス名を取得し、それをもとにクライアントプログラム1からの処理要求が初期化処理要求であったことを判別する(41)。Z39.50の初期化要求メッセージにはアクセス対象データベース名称が指定されない。今回は、検索メッセージプロトコル変換ゲートウェイシステム3のアクセス対象データベースがデータベースdb1だけであると仮定する(41)。こうした前提条件のもと、データベースアクセス処理を開始する。
【0030】データベースアクセス手段7は、対象データベース名称db1をもとにアクセスドライバ一覧ファイル22を読み込んで対応するデータベースアクセスドライバ8の名称を取得する(42)。アクセスドライバ一覧ファイル22より、データベースdb1はデータベース種別Database_Type_Aに含まれ、それに対応するデータベースアクセスドライバ8は、type-a.dllであることが分かる。
【0031】そこで、データベースアクセス手段7は、データベースアクセスドライバ8(ファイル名:type-a.dll)を動的にロードする(43)。これでデータベースdb1に対するデータベースアクセスドライバ8を使用できるようになる。
【0032】次にデータベースアクセスドライバ8に含まれる初期化関数Initializeをコールする(44)。初期化関数Initializeの関数インタフェースは、図3で例としてあげたインタフェースを使用する。その際に初期化関数Initializeの入力パラメタであるデータベース名称としてはdb1を、ユーザ名称とパスワードは初期化要求メッセージから取得したパラメタuserIdとpasswordをそれぞれ指定する。
【0033】データベースアクセスドライバ8のInitialize関数では、まずデータベースdb1に対してセッションを確立し、ユーザ認証を実行する(45)。そしてデータベースdb1から受け取ったステータス情報から、セッションを確立できたかどうか、当該ユーザがデータベースdb1に対するアクセス権限を持っているかどうかの判定を行う(46)。セッションが正常に確立され、かつ当該ユーザがデータベースdb1にアクセスする権限を持っている場合には、Initialize関数の出力パラメタstatusに“Accept”を代入する(47)。セッションが確立できなかったか、または当該ユーザがデータベースdb1にアクセスする権限を持っていなければ、Initialize関数の出力パラメタstatusに“Reject”を代入する(48)。ちなみにもう一つの出力パラメタsession_idには、データベースdb1がセッション識別子をセッション確立時に割り振りデータベースアクセスドライバ8に通知する場合には、データベースdb1から渡されたセッション識別子をそのまま代入する。データベースdb1がセッション識別子を割り振らない場合には、データベースアクセスドライバ8が以降データベースとのセッションを使用してアクセスするのに必要となる情報を管理しそれを識別するために独自にセッション識別子を割り振り出力パラメタsession_idに代入する。以上でInitialize関数の処理が終了する。」

(4)「【0040】次に第2の実施例について説明する。
【0041】上記第1の実施例では、検索メッセージプロトコル変換ゲートウェイシステムのアクセス対象データベースがデータベースdb1だけであると仮定した。しかし、データベースアクセスドライバを1つだけと考えるのではなく、アクセスインタフェースの異なる複数のデータベースに対してそれぞれデータベースアクセスドライバを用意し、それらをデータベースアクセス手段で切り替えて使用する方式も考えられる。この方式によれば、異なるアクセスインタフェースを持つ複数のデータベースにアクセスする必要のある検索要求に対しても、データベースアクセスドライバを切り替えて使用することにより対応できる。この方式を採用した実施例を説明する。
【0042】図7は、本実施例の構成を示すブロック図である。図において、データベースアクセス手段7の中にデータベースアクセスドライバディスパッチャ12と検索結果マージ手段13を追加する。
【0043】データベースアクセスドライバディスパッチャ12は、複数のデータベース4を切り替えてアクセスする検索要求に従って、検索対象データベースに対応したデータベースアクセスドライバ8をアクセスドライバ一覧ファイル9から求めて、複数のデータベースアクセスドライバを適宜切り替えて使用し複数のデータベースにアクセスする。
【0044】検索結果マージ手段13は、複数のデータベース4にアクセスして取得した検索結果群を1つにまとめる。
【0045】図8は、複数のデータベースにアクセスする場合のアクセスドライバ一覧ファイルの例である。この例では、データベースの種別としてDatabase_Type_AとDatabase_Type_Bの2つがあり、Database_Type_Aについては、それに対応するデータベース4としてdb1とdb2が、データベースアクセスドライバ8としてtype-a.dllがあり、Database_Type_Bについては、それに対応するデータベース4としてdb3が、データベースアクセスドライバ8としてtype-b.dllがあることを定義している。
【0046】図9は、本実施例の検索メッセージプロトコル変換ゲートウェイシステム3において、複数のデータベースにアクセスする検索処理の流れについて、データベースアクセス手段7に関連した処理に絞って説明する図である。データベースアクセス手段7以外の処理については、今回変更はない。
【0047】要求解析処理6から受け取った検索要求メッセージの解析結果から、データベースアクセス手段7はクライアントプログラム1からの処理要求が検索要求であることを判別する(111)。以降、データベースにアクセスして検索結果を取得する処理はデータベースアクセスドライバディスパッチャ12により実行する。
【0048】データベースアクセスドライバディスパッチャ12は、検索要求メッセージに含まれていた入力パラメタdatabase_nameから検索対象データベース名称群を取得する。ここでは、{db1,db2,db3}の3つのデータベースが検索対象として指定されたとする。データベースアクセスドライバディスパッチャ12は、これら3つのデータベースに対して以下の様に同じ処理を繰り返す。
【0049】まず最初のデータベース名称db1に対して、対応したデータベースアクセスドライバ名称をアクセスドライバ一覧ファイル101より取得する(112)。アクセスドライバ一覧ファイル101によれば、データベースdb1はデータベース種別Database_Type_Aに属し、それに対応したデータベースアクセスドライバ8は、type-a.dllであることが分かる。次にデータベースアクセスドライバtype-a.dllをロードする(113)。そして、データベースアクセスドライバ8に含まれる検索関数Searchをコールする(114)。検索関数Searchの関数インタフェースは、図3で例としてあげたインタフェースを使用する。
【0050】コールされたSearch関数では、まず検索要求メッセージから切り出された検索条件をデータベースdb1に対して使用できるものに変換する(122)。変換された検索条件を用いてデータベースdb1で検索を実行する(123)。データベースdb1による検索が終了し、検索結果が得られると、それをデータベースアクセスドライバディスパッチャ12に渡して、関数の処理を終了する。
【0051】データベースdb1による検索が終了すると、次にデータベースアクセスドライバディスパッチャ12は、データベースdb2、db3に対しても同様にして検索を実行する。
【0052】データベースdb2について、対応したデータベースアクセスドライバ名称を取得すると(115)、それがデータベースdb1と同じtype-a.dllであることが分かる。このように、使用するデータベースアクセスドライバ8が既にロードされている場合、データベースアクセスドライバディスパッチャ12は、当該データベースアクセスドライバ8のロードを省略する。そして、Search関数をコールし(116)、データベースdb1の場合と同様に検索を実行する。
【0053】続いて、データベースdb3について、対応したデータベースアクセスドライバ名称を取得すると(117)、それがデータベースdb1、db2に対応したデータベースアクセスドライバ8とは異なるtype-b.dllであることが分かる。このようにまだロードしていないデータベースアクセスドライバ8を使用する必要が出てきた場合に、データベースアクセスドライバディスパッチャ12は新たにデータベースアクセスドライバのロードを実行する(118)。そして、データベースアクセスドライバtype-b.dllのSearch関数をコールする(119)。
【0054】データベースアクセスドライバtype-b.dllのSearch関数では、検索条件をデータベースdb3向けに変換し(124)、変換された検索条件でデータベースdb3を検索する(125)。そして検索結果をデータベースアクセスドライバディスパッチャ12に渡して関数処理を終了する。
【0055】データベースアクセスドライバディスパッチャ12は、以上のように指定されたデータベース群について、対応したデータベースアクセスドライバ8に次々に処理を渡しながら(ディスパッチ)、複数のデータベースにアクセスして検索結果を集める。
【0056】データベースアクセスドライバディスパッチャ12が集めた検索結果は、検索結果マージ手段13に渡される。検索結果マージ手段13は、データベースdb1、db2、db3の検索結果について、それぞれのヒット件数の和を算出し(120)、その上で検索結果を1つにマージする(121)。検索結果のマージの際に、それらをソートすることも考えられる。こうして、検索応答メッセージを生成するためのデータとして応答生成手段10に渡すべきヒット件数ならびに検索結果レコードが生成できる。
【0057】以上のようにして、データベースアクセス手段7において、データベースアクセスドライバディスパッチャ12により検索要求で指定されているデータベース4に対応した複数のデータベースアクセスドライバ8を切り替えて使用して複数のデータベース4にアクセスし、取得できた検索結果を検索結果マージ手段13によりマージすることにより、異なるアクセスインタフェースを持つ複数のデータベース4にアクセスする必要のある検索要求に対してデータベースアクセスドライバ8を使用したデータベース4のアクセスが可能となる。」

そして、上記記載事項(4)の記載(第2の実施例についての記載)と引用例の図7?9を技術常識に照らし、同図7に示される全体を一つのシステムと見れば、引用例には、以下の発明(以下、「引用例記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。
「コンピュータと、複数の許可されたデータベースと、ユーザが複数の許可されたデータベースにアクセスし、クエリし及び検索し、及び結果をマージして表示するために要求されるセッション管理をコンピュータに実行させるコンピュータソフトウェアを有するサーチシステムであって、
前記システムは、
サーチ情報を受け取り、サーチ結果を表示するよう構成されたインタフェースと、
対応するデータベースにアクセスし、サーチ要求をクエリし、前記複数のデータベースから前記サーチ情報に基づいてそれぞれサーチ結果を検索するように構成された複数の変換装置を有し、
前記複数の変換装置の各々が、前記各変換装置に対応するデータベースに特定の前記サーチ情報と文法およびプロトコル情報とを用いてサーチ要求を形式化するようにセッション管理のために構成され、
前記複数の変換装置が、前記各変換装置に対応するデータベースから前記サーチ結果を検索するために前記それぞれのサーチ要求を用いる、サーチシステム。」

2-2.対比

本願補正発明と引用例記載発明とを対比すると、引用例記載発明において「結果をマージして表示」することは本願補正発明において「結果を同時に表示」することに相当するから、両者の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「コンピュータと、複数の許可された情報資源又はデータベースと、1又はそれ以上のユーザが複数の許可された情報資源又はデータベースにアクセスし、クエリし及び検索し、及び結果を同時に表示するために要求されるセッション管理をコンピュータに実行させるコンピュータソフトウェアを有するサーチシステムであって、
前記システムは、
サーチ情報を受け取り、サーチ結果を表示するよう構成されたインタフェースと、
対応するデータベースにアクセスし、サーチ要求をクエリし、前記複数のデータベースから前記サーチ情報に基づいてそれぞれサーチ結果を検索するように構成された複数の変換装置を有し、
前記複数の変換装置の各々が、前記各変換装置に対応するデータベースに特定の前記サーチ情報と文法およびプロトコル情報とを用いてサーチ要求を形式化するようにセッション管理のために構成され、
前記複数の変換装置が、前記各変換装置に対応するデータベースから前記サーチ結果を検索するために前記それぞれのサーチ要求を用いる、サーチシステム。」である点。

(相違点1)
本願補正発明は、(1)コンピュータソフトウェアが、セッション管理の他に認証管理をもコンピュータに実行させるものであり、1つ又はそれ以上の別個の許可ステップをトランスペアレントに且つ自動的に管理するものである、(2)中央データベースに格納されたユーザ認証情報にアクセスする認証管理装置を有する、(3)複数の変換装置の各々が、その対応するデータベースと通信するために、ユーザ対話なしで認証管理及びセッション管理を含む許可ステップを実行するように構成されている、(4)複数の変換装置の各々は、前記複数のデータベースがアクセスされるときに、ユーザIDとパスワード及び、IP認証の両方を使用するように認証管理のために構成されている、といった認証管理のための構成を有しているのに対し、引用例記載発明は、それらの認証管理のための構成を有していない点。

(相違点2)
本願補正発明の複数の変換装置は、対応するデータベースに同時にアクセスし、同時にサーチ要求をクエリし、前記複数のデータベースから前記サーチ情報に基づいてそれぞれ同時にサーチ結果を検索するように構成されたものであり、本願補正発明は、1又はそれ以上のユーザが、複数の許可された情報資源又はデータベースに同時に、アクセスし、クエリし及び検索するものであるのに対し、引用例記載発明の複数の変換装置は、対応するデータベースに同時にアクセスし、同時にサーチ要求をクエリし、前記複数のデータベースから前記サーチ情報に基づいてそれぞれ同時にサーチ結果を検索するように構成されたものではなく、引用例記載発明は、1又はそれ以上のユーザが、複数の許可された情報資源又はデータベースに同時に、アクセスし、クエリし及び検索するものではない点。

2-3.判断

ア.(相違点1)について
以下の事情を勘案すると、引用例記載発明に、(1)コンピュータソフトウェアが、セッション管理の他に認証管理をもコンピュータに実行させるものであり、1つ又はそれ以上の別個の許可ステップをトランスペアレントに且つ自動的に管理するものである、(2)中央データベースに格納されたユーザ認証情報にアクセスする認証管理装置を有する、(3)複数の変換装置の各々が、その対応するデータベースと通信するために、ユーザ対話なしで認証管理及びセッション管理を含む許可ステップを実行するように構成されている、(4)複数の変換装置の各々は、前記複数のデータベースがアクセスされるときに、ユーザIDとパスワード及び、IP認証の両方を使用するように認証管理のために構成されている、といった認証管理のための構成を付加することは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。
(ア)データベースへのアクセスに際して認証が必要な場合があり、検索に先立って認証のための処理を行わせる構成を設けることは、上記「2-1.」に摘記した引用例の記載事項(2)、(3)にも示されるように、周知であり、引用例記載発明においても、そのような認証のための処理を行わせる構成を設けることが有用な場合があることや、認証のための処理を行わせる構成はデータベースごとに設けられる必要があることは、当業者に自明であるから、引用例記載発明の変換装置の各々を、本願補正発明でいう「許可ステップ」に相当するものをも実行するように構成することは、当業者が容易に推考し得たことである。
(イ)引用例記載発明は、上記「2-1.」に摘記した引用例の記載事項(1)や引用例の図9等からも明らかなように、複数のデータベースに対する検索をトランスペアレントに且つ自動的に行わせることを目指したものであるから、上記(ア)に従って、引用例記載発明の変換装置の各々を、本願補正発明でいう「許可ステップ」に相当するものをも実行するように構成する際には、当業者は当然に、該「許可ステップ」に相当するものもトランスペアレントに且つ自動的に為されるようにすることを考慮し、複数の変換装置の各々を、その対応するデータベースと通信するために、ユーザ対話なしで認証管理及びセッション管理を含む許可ステップを実行するように構成することを考慮する。
(ウ)各種処理に必要な情報をどこに置いておくかは当業者が適宜決定すべき事項であり、上記(ア)に従って引用例記載発明の変換装置の各々を、本願補正発明でいう「許可ステップ」に相当するものをも実行するように構成する際、それに必要なユーザ認証情報を中央データベースに格納することとし、引用例記載発明に本願補正発明でいう「認証管理装置」に相当するものを設けることも、当業者が容易に推考し得たことである。
(エ)ユーザIDとパスワードによる認証とIP認証はいずれも周知であって(この点は、平成22年8月4日付けの拒絶理由通知の備考欄に同拒絶理由通知における引用文献2の記載事項を引用して示したとおりである。)、各データベースにそのいずれもが採用され得ることは当業者に自明であるから、上記(ア)に従って引用例記載発明の変換装置の各々を、本願補正発明でいう「許可ステップ」に相当するものをも実行するように構成する際、当該変換装置の各々をユーザIDとパスワード及び、IP認証の両方を使用するように認証管理のために構成することも、当業者が容易に推考し得たことである。
(オ)以上のことは、取りも直さず、引用例記載発明に、(1)コンピュータソフトウェアが、セッション管理の他に認証管理をもコンピュータに実行させるものであり、1つ又はそれ以上の別個の許可ステップをトランスペアレントに且つ自動的に管理するものである、(2)中央データベースに格納されたユーザ認証情報にアクセスする認証管理装置を有する、(3)複数の変換装置の各々が、その対応するデータベースと通信するために、ユーザ対話なしで認証管理及びセッション管理を含む許可ステップを実行するように構成されている、(4)複数の変換装置の各々は、前記複数のデータベースがアクセスされるときに、ユーザIDとパスワード及び、IP認証の両方を使用するように認証管理のために構成されている、といった認証管理のための構成を付加することが、当業者にとって容易であったことを意味する。

イ.(相違点2)について
複数の処理を同時に実行するための技術は本願の実施例でも採用されているマルチスレッド等として周知であること、引用例記載発明は、複数のデータベースからの検索結果が同時に表示されるものであるから、複数の変換装置を、対応するデータベースに同時にアクセスし、同時にサーチ要求をクエリし、前記複数のデータベースから前記サーチ情報に基づいてそれぞれ同時にサーチ結果を検索するように構成しても差し支えはなく、むしろそうすることが望ましい場合もあることは、当業者に自明であること、等の事情を勘案すると、引用例記載発明の複数の変換装置を、対応するデータベースに同時にアクセスし、同時にサーチ要求をクエリし、前記複数のデータベースから前記サーチ情報に基づいてそれぞれ同時にサーチ結果を検索するように構成し、引用例記載発明を、1又はそれ以上のユーザが、複数の許可された情報資源又はデータベースに同時に、アクセスし、クエリし及び検索するものとすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

ウ.本願補正発明の効果について
本願補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用例の記載事項や周知の事項から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

エ.まとめ
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2-4.むすび
よって、本件第2補正は、上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 上記本件第2補正についての補正却下の決定を踏まえた本願についての検討

1.本願発明
本件第2補正が上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、本件第1補正(平成22年7月12日付けの手続補正)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2」の「1.」の項に本件第2補正前の請求項1として転記したとおりのものである。

2.引用例
平成22年8月4日付けの拒絶理由通知で引用した引用例、及びその記載事項は、上記「第2」の「2.」の「2-1.」の項に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」の「2.」で検討した本願補正発明にあった限定事項の一部を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記「第2」の「2.」の項に記載したとおり、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-07 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-22 
出願番号 特願2001-579136(P2001-579136)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (G06F)
P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深津 始  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 長島 孝志
加内 慎也
発明の名称 複数の別個のデータベースからサーチ結果を検索する方法およびシステム  
代理人 坪倉 道明  
代理人 金山 賢教  
代理人 川口 義雄  
代理人 大崎 勝真  
代理人 小野 誠  
代理人 渡邉 千尋  

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