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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1241266
審判番号 不服2009-10348  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-27 
確定日 2011-08-05 
事件の表示 特願2004-502171「複数の物理ネットワーク接続と、複数の帯域、モード、およびネットワークの間の接続ハンドオフとを用いることにより、装置に永続的に接続する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月13日国際公開、WO03/94017、平成17年 8月18日国内公表、特表2005-525013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯と本願発明
1.手続の経緯
本願は、2003年4月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年5月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年2月10日付けで手続補正がなされ、平成20年5月16日付けで拒絶理由が通知されたが、その指定期間内に応答がなされず、平成21年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月27日付けで審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年2月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
モバイル・ディバイスと行き先ディバイスとの間の通信の方法であって、
第1のプロトコルの下で動作する第1のネットワークとの接続を維持するステップと、
前記第1のネットワークを介して前記第1のプロトコルを使用してデータを前記行き先ディバイスに通信するステップで、該第1のネットワークは該データをネットワーク・オペレーション・センターにルーティングする該ステップと、
前記ネットワーク・オペレーション・センターを使用して、前記データを第2のプロトコルに変換するステップと、
第2のプロトコル下で動作している第2のネットワークを使用して、前記第2のプロトコルにおいて前記データを前記行き先ディバイスに送信するステップと、
を含む該方法。」

なお、「該データをネットワーク・オペレーション・センターにルーティングすると該ステップと」との記載は、日本語のつながりからして、「該データをネットワーク・オペレーション・センターにルーティングする該ステップと」との誤記であると認められるから、上記のように認定した。


第2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特表2002-507870号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0020】
図2?図8は、オペレータの装置の中に仮想移動局が確立されている第1の実施形態を示し、図9以降は仮想移動局がユーザの装置の中にある第2の実施形態を示している。
図2のブロック図は、GSMシステムの基本要素を示している。移動局MSは無線通信を使って基地局BTSと接続されている。基地局BTSは、さらに、いわゆるAbisインターフェースを通して、基地局コントローラBSCに接続され、BSCはいくつかの基地局を管理する。いくつかの基地局BSTおよびそれを制御している単独の基地局コントローラBSCによって形成されるエンティティは基地局システムBSSと呼ばれる。特に、基地局コントローラBSCは、ハンドオーバ以外に無線通信チャネルを管理する。他方、基地局コントローラBSCは、いわゆるAインターフェースを通して、移動サービス交換センター(MSC)と接続され、MSCは移動局との間の接続の確立を調整する。移動サービス交換センターMSCを通して、その移動通信ネットワークの下で動作していない加入者に対して接続をさらに確立することができる。」(第18頁第3行目-第17行目)

ロ.「【0026】
図4のブロック図は、IPアクセス・プロトコルを通じて移動通信ネットワークのサービスを使うための、本発明の一実施形態による装置を示している。インターワーキング・ユニット40(IWU)が移動通信システムの移動サービス交換センター31に対して接続されており、その移動サービス交換センターに向けてのインターフェースは基地局コントローラBSCの通常のインターフェース、すなわち、Aインターフェースに対応し、IPネットワークに対しては、それはIPネットワークとIP端末との間の通常のインターフェースに対応する。IWUは本発明による新しいネットワーク要素であり、それは移動通信システムとIPネットワークの機能を相互リンクするために必要な手段を含む。要素APはIPネットワークの接続ポイントを表す。」(第21頁第10行目-第20行目)

ハ.「【0047】
以前に延べたように、IWUはシステム・エンティティ間のゲートウェイとして働く。IWUの1つの実施形態が図12に示されており、それは無線インターネット・オフィス(WIO)の概念を示している。WIOによって、MS 63の加入者はカバレージ領域内にある時、セルラー・ネットワーク61のサービスを搬送するためのプライベート・イントラネットなどの通信ネットワーク62を利用することができる。WIOにおいては、IWUは、イントラネット移動クラスタGSM/IPゲートウェイ601、イントラネット・ロケーション・レジスタ(ILR)602、WIOゲートキーパ63およびWIOのAゲートウェイ604などのいくつかのネットワーク要素を含む。
【0048】
データおよび/または音声などの情報を移動局63から、それぞれBTSエミュレータBTSEを含む2つのルートによってIPのローカル・エリア・ネットワーク62に対して転送することができる。第1のモードにおいては、移動局63はパーソナル・ベース・ユニット64(PBU)を経由してローカル・エリア・ネットワーク62に接続されている。PBUそのものがBTSエミュレータBTSEを含む。
【0049】
第2のモードにおいては、移動局63は移動クラスタの一部分を形成する。この場合、情報はそのクラスタに対して専用のGSM BTS 65、およびIMC GSM/IPゲートウェイ601を経由して情報がローカル・エリア・ネットワークに対して送信される。BTSはその信号をA bisインターフェース上で送信し、IMCゲートウェイ601は、GSMからH.323へのプロトコル変換を実行し、その信号をIPローカル・エリア・ネットワーク上で送信できるようにする。(この図から分かるように、無線イントラネット・オフィス・アーキテクチャは、インターワーキング・ユニットの内部でのシグナリングおよびデータ接続に対してH.323プロトコルを使用する。)
【0050】
セルラー・ネットワークに対する基本のアクセス・インターフェースは、エア・インターフェース、Aインターフェース、MAPプロトコル、ISUP/TUPインターフェースおよびDSS.1インターフェースである。Aインターフェースは移動サービス交換センターに対するインターフェースであり、MAPインターフェースはHLR/VLRに対するインターフェースである。ISUP/TUPインターフェースは交換センターを接続し、一方、DSS.1インターフェースはBSXと交換センターとの間に存在する。移動端末をネットワークに接続するエア・インターフェースは任意のRFインターフェースまたは赤外線リンクであってよい。RFインターフェースの候補としては、たとえば、ローパワーRF(LPRF)、802.11、無線LAN(WLAN)WATMおよびHIPERLANなどがある。また、エア・インターフェースは物理的接続(たとえば、RS‐232シリアル・ケーブルまたは汎用シリアル・バス(USB)など)で置き換えることもできる。GSMネットワークはこの新しいアクセス・ネットワークを1つのBSSエンティティとして見る。セルラーのシグナリングを変更/逆変更するためにアクセス・ネットワークに対して新しいネットワーク・エンティティが追加される。システム設計の原理はITU‐Tの勧告H.323を満足すること、およびそれを移動性の拡張で高度化することである。
【0051】
WIOのAゲートウエい604はMSC 611に対する基地局コントローラのように見える。
一般的なWIOネットワーク・アーキテクチャの一例が図13に示されている。ローカル・エリア・ネットワーク71がインターネット移動クラスタIMC 72、LPRFセル74および地上回線接続75によって提供されている。IMCは複数の移動局、1つのBTS(プライベートGSMのBTS)およびIMC GSM/IPゲートウェイの形式でのサーバを含む。。BTSとIMC GSM/IPゲートウェイとの間のBTSインターフェースはGSM A‐bisインターフェースである。IMC GSM/IPゲートウェイはGSMとH.323プロトコルとの間のシグナリングの変換を担当する。ローパワーRFセル74は1つのパーソナル・ベース・ユニットを含み、そのパーソナル・ベース・ユニットは仮想BTSおよびローパワー・トランシーバ、および対応しているローパワーRFトランシーバに関連付けられた移動局を備えている。PBUはWIOネットワークに対して直接に接続されている。移動局にGSMネットワークに対するアクセスを提供するために、PBUはGSMとH.323プロトコルとの間の変換を提供する。これらの変換はセルラー電話とH.323フィーチャとの間のブリッジとして見ることができ、それはWIOのロケーション管理および移動性フィーチャをサポートする。地上回線の接続はパーソナル・ベース・ユニット752に対して配線で接続されている地上回線端末751を含み、パーソナル・ベース・ユニット752はさらにローカル・エリア・ネットワークに対して配線で接続されている。
【0052】
また、ローカル・エリア・ネットワークにはWIOのゲートキーパ76も接続されており、それはネットワークの内部および外部に対する移動局の接続を担当する。たとえば、それはサーバからPSTNなどの外部システムに対して呼出しを回送することができ、あるいはIPネットワーク87に対する接続を提供することができる。そのローカル・エリア・ネットワークにはさらにAイントラネット・ゲートウェイ791およびイントラネット・ロケーション・レジスタ792が備えられている。
【0053】
この実施形態においては、イントラネット・ロケーション・レジスタの主な機能は無線イントラネット・オフィス・システムの中に構成された加入者の移動管理情報および呼出し統計情報を格納することである。ビジタのローミングは移動サービス交換センターによって制御される。ビジタに対しては一時的な情報だけがイントラネット・ロケーション・レジスタの中に格納される。ILRはセルラー・システムのネットワーク・ホーム・ロケーション・ネットワーク(ここには示されていない)に対するMAPインターフェースを備えている。」(第31頁第23行目-第34頁第18行目)

上記摘記事項ハ.を参照すると、引用例には、「移動局」と「ローカル・エリア・ネットワーク」との間の通信の方法が記載されていると認められる。
上記摘記事項ハ.を参照すると、引用例の方法は、「移動クラスタ」を介して、「情報がローカル・エリア・ネットワークに対して送信される」ものであるが、その際に、該情報は、直接ローカル・エリア・ネットワークに送信されるのではなく、「IMC GSM/IPゲートウェイ」に送信されている。そして、「IMC GMS/IPゲートウェイ」で「GSMからH.323へのプロトコル変換」を行い、変換された情報が、ローカル・エリア・ネットワークに送信されるものであると認められる。
上記摘記事項ハ.を参照すると、移動クラスタに接続されるIMC GSM/IPゲートウェイにおいて、GSMからH.323へのプロトコルへの変換を行っており、また、移動クラスタは、GSMシステムの基地局であるGSM BTS(上記摘記事項イ.を参照。)を有するから、「移動クラスタ」は「GSMプロトコル」を使用していると認められる。
上記摘記事項ハ.段落【0049】には、「GSMからH.323へのプロトコル変換を実行し、その信号をIPローカル・エリア・ネットワーク上で送信できるようにする。」と記載されているから、「ローカル・エリア・ネットワーク」は「H.323プロトコル」を使用していると認められる。
上記摘記事項ロ.段落【0026】、ハ.段落【0047】、及び図12を参照すると、引用例の「IMC GSM/IPゲートウェイ」は、「インターワーキング・ユニット」(IWU)を構成するネットワーク要素の一つであるから、引用例の方法は、移動局から送信された情報が、インターワーキング・ユニットを経由して、ローカル・エリア・ネットワークに送出されるものであり、その際、インターワーキング・ユニットにおいて、GSMプロトコルからH.323プロトコルへのプロトコル変換が実行されているということができる。

したがって、上記の摘記事項、及びこの分野の技術常識より、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「移動局とローカル・エリア・ネットワークとの間の通信の方法であって、
移動クラスタを介してGSMプロトコルを使用して情報をローカル・エリア・ネットワークに送信するステップで、該移動クラスタは情報をインターワーキング・ユニットに送信する該ステップと、
前記インターワーキング・ユニットを使用して、前記情報をH.323プロトコルに変換するステップと、
H.323プロトコルにおいて前記情報を前記ローカル・エリア・ネットワークに送信するステップと、
を含む該方法。」


第3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「移動局」は、移動しての通信が可能な装置であるから、本願発明の「モバイル・ディバイス」に相当する。
また、上記摘記事項ハ.段落【0048】に、「データおよび/または音声などの情報」と記載されていることから、引用例の「情報」は、「データ」と呼べるものである。
また、引用発明におけるデータの「送信」と、本願発明におけるデータの「通信」とは、ともに、モバイル・ディバイスからデータが送出されることを意味しているから、表現上の差異はあるものの、両者は技術的に同義であると認められる。
また、引用発明の「移動クラスタ」は、BTSや移動局を含み、無線を用いてデータを通信するものであるから、ネットワークの一種であるということができ、これを「第1のネットワーク」と称することは任意である。また、第1のネットワークで使用される「GSMプロトコル」を、「第1のプロトコル」と称することは任意である。
また、引用発明の「ローカル・エリア・ネットワーク」は、第1のネットワークとは異なるネットワークであるから、これを「第2のネットワーク」と称することは任意であり、また、引用発明の「H.323プロトコル」は、第1のプロトコルとは異なるプロトコルであるから、これを「第2のプロトコル」と称することは任意である。
また、引用発明の「インターワーキング・ユニット」は、データを「第2のプロトコルに変換」する機能を有するネットワーク要素であるから、その機能において、本願発明の「ネットワーク・オペレーション・センター」に相当する。また、仮に、本願発明の「ネットワーク・オペレーション・センター」が、複数のサーバから構成されるものであるとしても、上記摘記事項ハ.段落【0051】-【0053】、第13図を参照すると、引用発明の「インターワーキング・ユニット」も、IMC GSM/IPゲートウェイ形式のサーバ、WIOゲートキーパなど、複数のサーバから構成されるものであるから、やはり、引用発明の「インターワーキング・ユニット」は、本願発明の「ネットワーク・オペレーション・センター」に相当する構成であるといえる。

よって、両者は以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「モバイル・ディバイスとローカル・エリア・ネットワークとの間の通信の方法であって、
第1のネットワークを介して第1のプロトコルを使用してデータを前記ローカル・エリア・ネットワークに通信するステップで、該第1のネットワークは該データをネットワーク・オペレーション・センターに送信する該ステップと、
前記ネットワーク・オペレーション・センターを使用して、前記データを第2のプロトコルに変換するステップと、
第2のプロトコルにおいて前記データをローカル・エリア・ネットワークに送信するステップと、
を含む該方法。」

(相違点1)
本願発明は、モバイル・ディバイスと「行き先ディバイス」とが通信するものであるのに対して、引用発明は、モバイル・ディバイスと「ローカル・エリア・ネットワーク」とが通信するものである点。

(相違点2)
本願発明では、ネットワーク・オペレーション・センターで第2のプロトコルに変換されたデータは、「第2のプロトコル下で動作している第2のネットワークを使用して、行き先ディバイスに送信」されるのに対して、引用発明では、変換されたデータは、第2のプロトコル下で動作している第2のネットワークに送信されているものの、「行き先ディバイスに送信」されるものではない点。

(相違点3)
本願発明は「第1のプロトコルの下で動作する第1のネットワークとの接続を維持するステップ」を有するのに対して、引用発明はそのようなステップを有するか明らかではない点。

(相違点4)
本願発明は、データをネットワーク・オペレーション・センターに「ルーティングする」のに対して、引用発明は「送信する」ものである点。


第4.当審の判断
まず、相違点1、2について、まとめて検討する。
ローカル・エリア・ネットワーク自体は単なる通信媒体にすぎないから、引用発明においても、ローカル・エリア・ネットワークに送信されたデータは、最終的には、データを処理する機能を備える、何らかのディバイスが受信しているものと考えられ、その際、通信の相手先である何らかのディバイスを「行き先ディバイス」と称することは当業者が適宜行うことにすぎない。したがって、相違点1、2は、格別の事項ではない。

次に、相違点3について検討する。
モバイル・ディバイスからデータを送信するに先駆けて、予めモバイル・ディバイスとネットワークとの接続を確立しておき、その接続が維持された状態でデータの送信を行うことは、通信技術分野における周知事項である。したがって、引用発明において、データを送信するステップの前に、第1のネットワークとの接続を維持するステップを設けることは、当業者が容易になし得たものである。

次に、相違点4について検討する。
引用発明において、モバイル・ディバイスから送信されたデータが、ネットワーク・オペレーション・センターに送信されるに際しては、当然、何らかの経路(ルート)を通って、ネットワーク・オペレーション・センターに向けて送信されるわけであるから、引用発明の「送信」と、本願発明の「ルーティング」とは、両者に呼称の上での相違はあるものの、実質的な相違があるとはいえない。

そして、補正後の発明が奏する効果も引用発明1、及び周知事項から容易に予測出来る範囲内のものである。


第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-04 
結審通知日 2011-03-07 
審決日 2011-03-28 
出願番号 特願2004-502171(P2004-502171)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中元 淳二石田 紀之  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 宮田 繁仁
新川 圭二
発明の名称 複数の物理ネットワーク接続と、複数の帯域、モード、およびネットワークの間の接続ハンドオフとを用いることにより、装置に永続的に接続する方法および装置  
代理人 上田 忠  
代理人 小林 泰  
代理人 富田 博行  
代理人 小野 新次郎  
代理人 社本 一夫  
代理人 千葉 昭男  

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