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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A24D
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A24D
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A24D
管理番号 1241635
審判番号 無効2007-800098  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-05-23 
確定日 2011-04-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3917590号「高圧縮フィルタートウベール、およびその製造プロセス」の特許無効審判事件についてされた平成20年9月30日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成21年(行ケ)第10004号、平成21年9月3日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3917590号の請求項1?26に係る発明についての出願は、平成15年4月22日(パリ条約による優先権主張2002年4月22日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成19年2月16日にその発明について特許権の設定登録(特許第3917590号 請求項数26)がなされた。

以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
1.平成19年5月23日 請求人 ダイセル化学工業株式会社は、本件特許無効審判を請求した。
2.平成19年9月25日 被請求人 ローディア アセトウ ゲーエムベーハーは、答弁書を提出するとともに訂正請求をした。
3.平成19年11月19日 請求人は、弁駁書を提出した。
4.平成20年1月16日 当審より、訂正拒絶の理由を通知した。
5.平成20年2月14日 請求人は、意見書を提出した。
6.平成20年3月10日 被請求人は、第1意見書を提出するとともに訂正請求についての第一次手続補正をした。
7.平成20年6月17日 第1回口頭審理を行い、請求人及び被請求人は、それぞれ口頭審理陳述要領書の内容を陳述し、当審より訂正拒絶の理由を通知した。
8.平成20年7月17日 請求人は上申書を提出した。
9.平成20年7月17日 被請求人は第2意見書を提出するとともに訂正請求について第二次手続補正をした。
10.平成20年9月30日 第一次審決。

11.第一次審決に対する訴えの提起(平成21年(行ケ)第10004号)がなされた。
12.平成21年9月3日 第一次審決を取り消す旨の判決が言い渡され、確定した。

13.平成21年12月4日 請求人は、上申書を提出した。
14.平成21年12月9日 当審より審尋及び職権審理の結果を通知した。
15.平成22年1月29日 被請求人は、回答書、第3意見書を提出するとともに訂正請求をした。
16.平成22年2月1日 請求人は、回答書を提出した。
17.平成22年3月15日 請求人は、弁駁書を提出した。

第2 訂正請求
特許法第134条の2第4項の規定により、平成19年9月25日付けの訂正の請求は取り下げられたものとみなす。

1.訂正の内容
被請求人により平成22年1月29日付けで請求された訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許発明の明細書(以下「特許明細書」という。)を平成22年1月29日付けで提出した訂正した明細書(以下「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、以下のとおりである。

(訂正事項1)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1について、「ベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い、梱包され、ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールであって、
(a)前記ベールが、少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度を有し;
(b)前記ベールが、機械的に自己支持する弾性梱包材料内に完全に包装され、かつこの材料は、対流に対して気密性を有する1つまたはそれ以上の接続部分を備えており;
(c)非開封状態のベールを水平面上に配置した状態で、平坦な板をベールの頂部に圧接させ、ベールの中心に対して垂直方向に100Nの力を作用させたとき、圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から約40mm以下離間する程度に、前記ベールの頂面および底面が平坦であり;
(d)前記ベールが、少なくとも約900mmの高さを有しており;
(e)少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている、
ことを特徴とするフィルタートウのベール。」とある記載を、
「ベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い、梱包され、ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールであって、
(a)前記ベールが、少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度を有し;
(b)前記ベールが、機械的に自己支持する弾性梱包材料内に完全に包装され、かつこの材料は、対流に対して気密性を有する1つまたはそれ以上の接続部分を備えており、かつこの材料は、温度23℃、相対湿度75%で、DIN53,380-Vに従って測定される空気に関するガス透過率が10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満であるフィルムであって;
(c)非開封状態のベールを水平面上に配置した状態で、平坦な板をベールの頂部に圧接させ、ベールの中心に対して垂直方向に100Nの力を作用させたとき、圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から40mm以下離間する程度に、前記ベールの頂面および底面が平坦であり;
(d)前記ベールが、少なくとも900mmの高さを有しており;
(e)少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている、
ことを特徴とするフィルタートウのベール。」と訂正する。
(訂正事項2)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項2について、「前記ベールが、少なくとも約10N/15mmの裂破強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)を有する、こと特徴とする請求項1記載のベール。」とある記載を、
「前記ベールが、少なくとも10N/15mmの引裂き強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)のフィルムを有する、こと特徴とする請求項1記載のベール。」と訂正する。
(訂正事項3)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項3について、「0.9m^(3)よりも高い梱包容量、および/または350kg/m^(3)、特に800kg/m^(3)未満の梱包密度を有することを特徴とする請求項1または2記載のベール。」とある記載を、
「0.9m^(3)よりも高い梱包容量、および/または350kg/m^(3)よりも高く、特に800kg/m^(3)未満の梱包密度を有することを特徴とする請求項1または2記載のベール。」と訂正する。
(訂正事項4)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項5について、「前記パッケージ包装材がフィルム、特にプラスチック・フィルムであることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載のベール。」とある記載を、
「前記梱包材料がプラスチック・フィルムであることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載のベール。」と訂正する。
(訂正事項5)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項9について、「ポリエチレン、特にLDPE、または改良ポリエチレン(LLDPE)から成ることを特徴とする請求項5?8のいずれか1項に記載のベール。」とある記載を、
「ポリエチレン、特にLDPE、または改良ポリエチレン(LLDPE)から成る梱包材料を有することを特徴とする請求項5?8のいずれか1項に記載のベール。」と訂正する。
(訂正事項6)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項10について、「前記パッケージ包装材が、ポリアミド層とポリエチレン層を積層した積層フィルムであることを特徴とする請求項5?8の少なくとも1項に記載のベール。」とある記載を、
「前記梱包材料が、ポリアミド層とポリエチレン層を積層した積層フィルムであることを特徴とする請求項5?8の少なくとも1項に記載のベール。」と訂正する。
(訂正事項7)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項11について、「前記パッケージ包装材が、約100?400μmの厚さを有することを特徴とする請求項1?10のいずれか1項に記載のベール。」とある記載を、
「前記梱包材料が、100?400μmの厚さを有することを特徴とする請求項1?10のいずれか1項に記載のベール。」と訂正する。
(訂正事項8)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項12について、「前記ベールが厚紙または合成布地から成る追加の移動梱包を備え、および/または、さらにストラップで包装されている、ことを特徴とする請求項1?11のいずれか1項に記載のベール。」とある記載を、
「前記ベールが厚紙または合成布地から成る追加の移動用梱包を備え、さらにストラップで包装されている、ことを特徴とする請求項1?11のいずれか1項に記載のベール。」と訂正する。
(訂正事項9)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項13を削除し、
請求項14?17の項番をそれぞれ1づつ繰り上げ、
請求項14(訂正後の請求項13)の引用する請求項を「請求項1?13」から「請求項1?12」とするとともに、請求項15?17(訂正後の請求項14?16)の引用する請求項の項番をそれぞれ1づつ繰り上げる。
(訂正事項10)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項18(訂正後の請求項17)について、項番を1つ繰り上げて17とするとともに、
「周囲圧力よりも約0.15?0.7bar低い負圧が生成されることを特徴とする請求項14?17のいずれか1項に記載のプロセス。」とある記載を、
「周囲圧力よりも0.15?0.7bar低い負圧が生成されることを特徴とする請求項13?16のいずれか1項に記載のプロセス。」と訂正する。
(訂正事項11)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項19(訂正後の請求項18)について、項番を1つ繰り上げて18とするとともに、
「周囲圧力よりも約0.2?0.40bar低い負圧が生成されることを特徴とする請求項18に記載のプロセス。」とある記載を、
「周囲圧力よりも0.2?0.40bar低い負圧が生成されることを特徴とする請求項17項に記載のプロセス。」と訂正する。
(訂正事項12)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項20(訂正後の請求項19)について、項番を1つ繰り上げて19とするとともに、引用する請求項を「請求項14?19」から「請求項13?18」とする。
(訂正事項13)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項21(訂正後の請求項20)について、項番を1つ繰り上げて20とするとともに、
「温度23℃、相対湿度85%で、DIN53,122に従って測定される水蒸気透過率が、5g/(m^(2)・d)以下、好ましくは2g/(m^(2)・d)以下であるフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項14?20のいずれか1項に記載のプロセス。」とある記載を、
「温度23℃、相対湿度85%で、DIN53,122に従って測定される水蒸気透過率が、5g/(m^(2)・d)未満、好ましくは2g/(m^(2)・d)未満であるフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13?19のいずれか1項に記載のプロセス。」と訂正する。
(訂正事項14)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項22を削除する。
(訂正事項15)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項23(訂正後の請求項21)について、項番を2つ繰り上げて21とするとともに、
「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)以下のガス透過率を有するフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項22に記載のプロセス。」とある記載を、
「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満のガス透過率を有するフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13?20のいずれか1項に記載のプロセス。」と訂正する。
(訂正事項16)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項24(訂正後の請求項22)について、項番を2つ繰り上げて22とするとともに、
「少なくとも10N/15mm、特に少なくとも100N/15mmの裂破強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定される)を有するフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項14?23のいずれか1項に記載のプロセス。」とある記載を、
「少なくとも10N/15mm、特に少なくとも100N/15mmの引裂き強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定される)を有するフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13?21のいずれか1項に記載のプロセス。」と訂正する。
(訂正事項17)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項25(訂正後の請求項23)について、項番を2つ繰り上げて23とするとともに、
「前記裂破強度が、少なくとも200N/15mm(DIN EN ISO 527-3に従って測定される)であることを特徴とする請求項24に記載のプロセス。」とある記載を、
「前記引裂き強度が、少なくとも200N/15mm(DIN EN ISO 527-3に従って測定される)であることを特徴とする請求項22に記載のプロセス。」と訂正する。
(訂正事項18)
特許明細書の特許請求の範囲の請求項26(訂正後の請求項24)について、項番を2つ繰り上げて24とするとともに、引用する請求項を「請求項14?25」から「請求項13?23」とする。
(訂正事項19)
特許明細書の段落【0011】中の「予め気密性を有する材料」との記載を、「以前は気密性を有していた材料」と訂正する。
(訂正事項20)
特許明細書の段落【0013】中の「ベールの容量を0.9m^(3)以上にする」との記載を、「ベールの容量を0.9m^(3)よりも高くする」と訂正する。
(訂正事項21)
特許明細書の段落【0025】中の「約0.2?0.4bar」との記載を、「約0.2?0.40bar」と訂正する。
(訂正事項22)
特許明細書の段落【0029】中の「20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)」との記載を、「20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満」と訂正する。
(訂正事項23)
特許明細書の段落【0031】中の「機械強度に関連して、DIN EN ISO 527-3に従って測定した場合に、パッケージ包装材またはフィルムが、少なくとも約10N/15mm、好ましくは約100N/15mm以上、さらに好ましくは200N/15mm以上の裂破強度を有することが推奨される。引用した値の各々は、フィルムの縦方向および横方向における最少裂破強度値に関係する。フィルムで包装したベールが移動のために再度梱包されるか否かの関数として、裂破強度に関連した特定の選択が行われる。これに関連して、使用可能な材料には、100μmの厚さで、15から30N/15mmの裂破強度を有するPE、100μmの厚さで、150?300N/15mmの裂破強度を有するPA6が含まれる。」との記載を、「機械強度に関連して、DIN EN ISO 527-3に従って測定した場合に、パッケージ包装材またはフィルムが、少なくとも約10N/15mm、好ましくは約100N/15mm以上、さらに好ましくは200N/15mm以上の引裂き強度を有することが推奨される。引用した値の各々は、フィルムの縦方向および横方向における最少引裂き強度値に関係する。フィルムで包装したベールが移動のために再度梱包されるか否かの関数として、引裂き強度に関連した特定の選択が行われる。これに関連して、使用可能な材料には、100μmの厚さで、15から30N/15mmの引裂き強度を有するPE、100μmの厚さで、150?300N/15mmの引裂き強度を有するPA6が含まれる。」と訂正する。

2.訂正の適否について
(1)(訂正事項1)請求項1について
訂正事項1の内、「約40mm」及び「約900mm」との記載を「40mm」及び「900mm」とする訂正は、「約」を削除するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえる。そして訂正後の「40mm」及び「900mm」は願書に添付された明細書又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載されていたものといえるから、上記訂正事項は、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
また、訂正事項1の内、「かつこの材料は、温度23℃、相対湿度75%で、DIN53,380-Vに従って測定される空気に関するガス透過率が10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満であるフィルムであって」との記載を追加する訂正は、弾性梱包材料について限定を付すものであり、当該記載事項については、特許明細書の請求項22及び段落【0029】に記載されているから、上記訂正事項は、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
そうすると、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当する。
さらに、訂正事項1は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)(訂正事項2)請求項2について
訂正事項2の内、「約10N/15mm」との記載を「10N/15mm」とする訂正は、「約」を削除するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
また、訂正事項2の内、「前記ベールが、・・・の裂破強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)有する、」との記載を「前記ベールが、・・・の引裂き強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)のフィルムを有する、」と訂正することについて、特許明細書等の段落【0031】には「機械強度に関連して、DIN EN ISO 527-3に従って測定した場合に、パッケージ包装材またはフィルムが、少なくとも約10N/15mm・・・(中略)・・・以上の裂破強度を有することが推奨される。引用した値の各々は、フィルムの縦方向および横方向における最少裂破強度値に関係する。フィルムで包装したベールが移動のために再度梱包されるか否かの関数として、裂破強度に関連した特定の選択が行われる。これに関連して、使用可能な材料には、100μmの厚さで、15から30N/15mmの裂破強度を有するPE、100μmの厚さで、150?300N/15mmの裂破強度を有するPA6が含まれる。」と記載されている。
一方、DIN EN ISO 527-3にはフィルムやシートの張力の特性を決定するための条件が指定され、上記規格の図1?3には試料の形状が図示されている(甲第9号証参照)。上記記載は、パッケージ包装材またはフィルムの機械強度に関連して「DIN EN ISO 527-3」に従って測定した場合の「裂破強度」「フィルムの縦方向および横方向における最少裂破強度値」を、「N/15mm」の単位で得るというものであるから、フィルムの機械強度を測定するにあたり、「DIN EN ISO 527-3」に規定されたフィルムやシートの張力の特性を決定するための条件を用い、縦方向および横方向におけるフィルムの破裂するつまり引き裂かれるときの強度を「N/15mm」の単位で得るものと解される。
そうすると、「裂破強度」とある記載を「引裂き強度」と訂正し、かつその対象としてフィルムとの記載を追加することは明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえるとともに、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものでもある。特許明細書等の段落【0014】等にもプラスチック・フィルムであることが記載されている。
また、請求項2は請求項1を引用するものであるから、実質的に請求項1と同じ訂正がされているが、当該訂正については上記(1)で述べたとおりである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)(訂正事項3)請求項3及び4について
ア 請求項3において、350kg/m^(3)について「よりも高く」と訂正することは、国際出願日における国際出願の特許請求の範囲の請求項2に「mehr als 350 kg/m^(3)」と記載されているから、国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内でするものであり、誤訳の訂正、又は350kg/m^(3)という数値の意味を明りょうにする、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえる。そして、梱包密度について800kg/m^(3)未満という範囲は350kg/m^(3)を含むものであり、350kg/m^(3)という梱包密度のみに限定していたものともいえないから、350kg/m^(3)よりも高くとすることは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、引用する請求項1又は2についても上記(1)及び(2)で述べたとおりである。

イ さらに、請求項4は請求項1?3のいずれか1項を引用するものであるが、請求項1?3についての訂正は、上記(1)?(3)アで述べたとおりであるから、請求項4についても同様である。

(4)(訂正事項4)請求項5?8について
ア 訂正事項4の内、請求項5の「前記パッケージ包装材」との記載を「前記梱包材料」と訂正することは、引用する請求項1の「弾性梱包材料」との記載に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえる。また、パッケージ包装材と梱包材料は実質的に同等のものを指すことが明らかであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものでもある。
また、訂正事項4の内、請求項5の「フィルム、特にプラスチック・フィルム」との記載を「プラスチック・フィルム」と訂正することは、フィルムについてプラスチック・フィルムに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものでもある
また、引用する請求項1?3についても上記(1)?(3)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 請求項6は請求項1?5のいずれか1項を、請求項7は請求項6を、また、請求項8は請求項1?7のいずれか1項を引用するものである。
そして、引用する請求項1?5についての訂正は、上記(1)?(4)アで述べたとおりであるから、これらを引用する請求項6?8についての訂正についても、同様である。

(5)(訂正事項5)請求項9について
訂正事項5は、「ポリエチレン、特にLDPE、または改良ポリエチレン(LLDPE)から成る」ものが梱包材料であることを明確にするものであって、当該事項は特許明細書等の発明の詳細な説明の段落【0015】,【0027】,【0033】等に記載されていることから、特許明細書等に記載した事項の範囲内でする、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえる。また、引用する請求項5?8についても上記(4)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項5は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)(訂正事項6)請求項10について
訂正事項4により、引用する請求項5の「前記パッケージ包装材」との記載が「前記梱包材料」と訂正されることに整合させて、請求項10においても「前記梱包材料」と訂正するものといえるので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。また、引用する請求項5?8についても上記(4)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項6は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)(訂正事項7)請求項11について
訂正事項7の内、「前記パッケージ包装材」とある記載を「前記梱包材料」と訂正することは、上記(4)及び(6)で述べたように、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。
また、訂正事項7の内、「約100?400μm」とある記載を「100?400μm」と訂正することは、上記(1)及び(2)でも述べたように、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。
さらに、引用する請求項1?10についての訂正も、上記(1)?(6)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項7は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(8)(訂正事項8)請求項12について
訂正事項8の内、「追加の移動梱包」とある記載を「追加の移動用梱包」と訂正することは、移動用の梱包であることを明確にするものといえるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
また、訂正事項8の内、「および/または、さらにストラップで包装され」とある記載の「および/または、」削除することは、さらにストラップで包装するのみにするものであるから、明りょうでない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、さらに当該事項は特許明細書等の発明の詳細な説明の段落【0015】等にも記載されていて、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。
さらに、引用する請求項1?11についての訂正も、上記(1)?(7)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項8は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(9)(訂正事項9)請求項13?17について
ア 訂正事項9の内、特許明細書の特許請求の範囲の請求項13を削除することは請求項の削除を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項9の内、請求項14?17の項番をそれぞれ1づつ繰り上げることは、上記請求項13を削除したことに対応して請求項の項番を整理するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。
また、訂正事項9の内、請求項14(訂正後の請求項13)の引用する請求項を「請求項1?13」から「請求項1?12」とするとともに、請求項15?17(訂正後の請求項14?16)の引用する請求項の項番をそれぞれ1づつ繰り上げることは、請求項14?16の項番をそれぞれ1づつ繰り上げたことに対応して記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。
さらに請求項14?17(訂正後の請求項13?16)が引用する各請求項についての訂正も、上記(1)?(8)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(10)(訂正事項10)請求項18について
訂正事項10の内、項番を1つ繰り上げることは、上記請求項13を削除したことに対応して請求項の項番を整理するものであり、及び引用する請求項を「請求項14?17」から「請求項13?16」とすることは、請求項14?17の項番をそれぞれ1づつ繰り上げたことに対応して記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
また、訂正事項10の内、「約0.15」との記載を「0.15」とする訂正は、「約」を削除するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
さらに、引用する請求項14?17についての訂正も、上記(9)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項10は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(11)(訂正事項11)請求項19について
訂正事項11の内、項番を1つ繰り上げることは、上記請求項13を削除したことに対応して請求項の項番を整理するものであり、引用する請求項を「請求項18」から「請求項17項」とすることは、請求項18の項番を1つ繰り上げたことに対応して記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
また、訂正事項11の内、「約0.2」との記載を「0.2」とする訂正は、「約」を削除するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
さらに、引用する請求項18についての訂正も、上記(10)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項11は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(12)(訂正事項12)請求項20について
項番を1つ繰り上げることは、上記請求項13を削除したことに対応して請求項の項番を整理するものであり、引用する請求項を「請求項14?19」から「請求項13?18」とすることは、請求項14?19の項番を1つ繰り上げたことに対応して記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
さらに、引用する請求項14?19についての訂正も、上記(9)?(11)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項12は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(13)(訂正事項13)請求項21について
訂正事項13の内、項番を1つ繰り上げることは、上記請求項13を削除したことに対応して請求項の項番を整理するものであり、及び引用する請求項を「請求項14?20」から「請求項13?19」とすることは、請求項14?20の項番を1つ繰り上げたことに対応して記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
また、訂正事項13の内、「5g/(m^(2)・d)以下、好ましくは2g/(m^(2)・d)以下」との記載を、「5g/(m^(2)・d)未満、好ましくは2g/(m^(2)・d)未満」と訂正することは、特許明細書等の段落【0030】の記載と整合させるものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内でする、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえる。
さらに、引用する請求項14?20についての訂正も、上記(9)?(12)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項13は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(14)(訂正事項14)請求項22について
請求項22を削除するから、請求項の削除を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(15)(訂正事項15)請求項23について
訂正事項15の内、項番を2つ繰り上げることは、上記請求項13及び22を削除したことに対応して請求項の項番を整理するものである。また、引用する請求項を「請求項22」から「請求項13?20のいずれか1項」とすることは、訂正前に引用していた削除前の請求項22がさらに引用していた「請求項14?21のいずれか1項」について訂正後の項番に符合させて引用するものであって、訂正後に引用する「請求項13?20のいずれか1項」がさらに引用する請求項1には、「かつこの材料は、温度23℃、相対湿度75%で、DIN53,380-Vに従って測定される空気に関するガス透過率が10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満であるフィルムであって;」と実質的に削除前の請求項22に記載されていた事項が記載されている。したがって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえる。そして特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
また、訂正事項15の内、「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)以下」とある記載を「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満」と訂正することは、特許明細書等の段落【0029】に「パッケージ包装材またはフィルムにおける空気のガス透過率は、・・・(中略)・・・好ましくは200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、さらに好ましくは、20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)である。」と記載されているのであるから、実質的に特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものといえ(平成21年(行ケ)第10004号(平成21年9月3日言渡)の判決書(以下「判決書」という。)第21頁末行?第22頁第18行参照。)、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。
さらに、実質的に引用する請求項14?22についての訂正も、上記(9)?(14)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項15は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(16)(訂正事項16)請求項24について
訂正事項16の内、項番を2つ繰り上げることは、上記請求項13及び22を削除したことに対応して請求項の項番を整理するものであり、引用する請求項を「請求項14?23」から「請求項13?21」とすることは、請求項14?23の項番を繰り上げたことに対応して記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
また、訂正事項16の内、「裂破強度」とある記載を「引裂き強度」と訂正することは、上記(2)で述べたとおり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえるとともに、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものでもある。
さらに、引用する請求項14?23についての訂正も、上記(9)?(15)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項16は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(17)(訂正事項17)請求項25について
訂正事項17の内、項番を2つ繰り上げることは、上記請求項13及び22を削除したことに対応して請求項の項番を整理するものであり、引用する請求項を「請求項24」から「請求項22」とすることは、請求項24の項番を繰り上げたことに対応して記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
また、訂正事項17の内、「裂破強度」とある記載を「引裂き強度」と訂正することは、上記(2)で述べたとおり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえるとともに、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものでもある。
さらに、引用する請求項24についての訂正も、上記(16)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項17は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(18)(訂正事項18)請求項26について
項番を2つ繰り上げることは、上記請求項13及び22を削除したことに対応して請求項の項番を整理するものであり、引用する請求項を「請求項14?25」から「請求項13?23」とすることは、請求項14?25の項番を繰り上げたことに対応して記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。
また、引用する請求項14?25についての訂正も、上記(9)?(17)で述べたとおりである。
そして、上記訂正事項18は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(19)(訂正事項19)について
国際出願日における国際出願の明細書(WO 03/089309 A2の第4頁第13行参照)には「zuvor luftdichte Material」と記載されているから、国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内でするものであり、より正確に翻訳するものであって誤訳の訂正を目的とするものといえる。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(20)(訂正事項20)について
国際出願日における国際出願の明細書(WO 03/089309 A2の第4頁第28行参照)には「mehr als 0.9 kg/m^(3)」と記載されているから、国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内でするものであり、より正確に翻訳するものであって誤訳の訂正を目的とするものといえる。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(21)(訂正事項21)について
請求項19(訂正後の請求項18)の記載に合わせて、「約0.2?0.40bar」と訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものといえる。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(22)(訂正事項22)について
国際出願日における国際出願の明細書(WO 03/089309 A2の第9頁第23行参照)には「weniger als 20 cm^(3)/(m^(2)*d*bar)」と記載されているから、国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内でするものであり、より正確に翻訳するものであって誤訳の訂正を目的とするものといえる。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(23)(訂正事項23)について
「裂破強度」とある記載を「引裂き強度」とすることは、上記(2)で述べたとおり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえるとともに、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものでもある。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

上記(1)?(23)で述べたとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項第1、2又は3号に該当し、同条第5項で準用する、同法第184条の19により読み替える同法第126条第3項、及び同法第126条第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件特許発明
前述のとおり、訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1?24に係る発明(以下「本件特許発明1?24」という。)は、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?24に記載された次のとおりのものである。
請求項1(本件特許発明1)
「ベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い、梱包され、ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールであって、
(a)前記ベールが、少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度を有し;
(b)前記ベールが、機械的に自己支持する弾性梱包材料内に完全に包装され、かつこの材料は、対流に対して気密性を有する1つまたはそれ以上の接続部分を備えており、かつこの材料は、温度23℃、相対湿度75%で、DIN53,380-Vに従って測定される空気に関するガス透過率が10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満であるフィルムであって;
(c)非開封状態のベールを水平面上に配置した状態で、平坦な板をベールの頂部に圧接させ、ベールの中心に対して垂直方向に100Nの力を作用させたとき、圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から40mm以下離間する程度に、前記ベールの頂面および底面が平坦であり;
(d)前記ベールが、少なくとも900mmの高さを有しており;
(e)少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている、
ことを特徴とするフィルタートウのベール。」
請求項2(本件特許発明2)
「前記ベールが、少なくとも10N/15mmの引裂き強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)のフィルムを有する、こと特徴とする請求項1記載のベール。」
請求項3(本件特許発明3)
「0.9m^(3)よりも高い梱包容量、および/または350kg/m^(3)よりも高く、特に800kg/m^(3)未満の梱包密度を有することを特徴とする請求項1または2記載のベール。」
請求項4(本件特許発明4)
「少なくとも970mm、特に970?1200mmの高さを有することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のベール。」
請求項5(本件特許発明5)
「前記梱包材料がプラスチック・フィルムであることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載のベール。」
請求項6(本件特許発明6)
「対流に対して気密性を有する接続部が、対流空気が透過不可能なシームであることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に請求項のいずれか1項に記載のベール。」
請求項7(本件特許発明7)
「空気が透過不可能なシームが、重ね合わせヒートシールシーム、またはヒレ状シームであることを特徴とする請求項6に記載のベール。」
請求項8(本件特許発明8)
「前記内接矩形内に位置する前記ベールの頂部側表面の90%が、25mm以下、好ましくは、10mm以下の距離で前記平坦板から離間することを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載のベール。」
請求項9(本件特許発明9)
「ポリエチレン、特にLDPE、または改良ポリエチレン(LLDPE)から成る梱包材料を有することを特徴とする請求項5?8のいずれか1項に記載のベール。」
請求項10(本件特許発明10)
「前記梱包材料が、ポリアミド層とポリエチレン層を積層した積層フィルムであることを特徴とする請求項5?8の少なくとも1項に記載のベール。」
請求項11(本件特許発明11)
「前記梱包材料が、100?400μmの厚さを有することを特徴とする請求項1?10のいずれか1項に記載のベール。」と
請求項12(本件特許発明12)
「前記ベールが厚紙または合成布地から成る追加の移動用梱包を備え、さらにストラップで包装されている、ことを特徴とする請求項1?11のいずれか1項に記載のベール。」
請求項13(本件特許発明13)
「(a)前記フィルタートウを圧縮形態で準備するステップと;
(b)前記圧縮されたフィルタートウをパッケージ包装材で包装するステップと;
(c)前記パッケージ包装材を気密状態にシールするステップと;
(d)前記包装されたベールにかかる負荷を解放するステップと;
(e)外圧に対して少なくとも0.01barの負圧を、前記負荷が解放されたパッケージ包装材内に発生させるステップとを備えた、
特に請求項1?12のいずれか1項に記載のフィルタートウのベールを梱包するプロセス。」
請求項14(本件特許発明14)
「前記負圧が前記圧縮されたフィルタートウの自然の膨張によって発生されることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。」
請求項15(本件特許発明15)
「前記負圧が空気の排出によって発生されることを特徴とする請求項13または14記載のプロセス。」
請求項16(本件特許発明16)
「前記空気が、真空ポンプの補助によって排出されることを特徴とする請求項15記載のプロセス。」
請求項17(本件特許発明17)
「周囲圧力よりも0.15?0.7bar低い負圧が生成されることを特徴とする請求項13?16のいずれか1項に記載のプロセス。」
請求項18(本件特許発明18)
「周囲圧力よりも0.2?0.40bar低い負圧が生成されることを特徴とする請求項17項に記載のプロセス。」
請求項19(本件特許発明19)
「前記パッケージ包装材が、溶着またはヒートシールによって、特に重ね合わせシームまたはヒレ状シームを形成するような方法でシールされることを特徴とする請求項13?18のいずれか1項に記載のプロセス。」
請求項20(本件特許発明20)
「温度23℃、相対湿度85%で、DIN53,122に従って測定される水蒸気透過率が、5g/(m^(2)・d)未満、好ましくは2g/(m^(2)・d)未満であるフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13?19のいずれか1項に記載のプロセス。」
請求項21(本件特許発明21)
「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満のガス透過率を有するフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13?20のいずれか1項に記載のプロセス。」
請求項22(本件特許発明22)
「少なくとも10N/15mm、特に少なくとも100N/15mmの引裂き強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定される)を有するフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13?21のいずれか1項に記載のプロセス。」
請求項23(本件特許発明23)
「前記引裂き強度が、少なくとも200N/15mm(DIN EN ISO 527-3に従って測定される)であることを特徴とする請求項22に記載のプロセス。」
請求項24(本件特許発明24)
「前記プロセスが、少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度が得られるように制御されることを特徴とする請求項13?23のいずれか1項に記載のプロセス。」

第4 請求人の主張
審判請求人は、請求項2,3,23?25(訂正後の請求項2,3,21?23)及び段落【0031】についての訂正は認められない、仮に訂正が容認されても、訂正後の請求項1?24に係る発明(本件特許発明1?24)は無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証?甲第16号証を提示している。そして、具体的理由として、概略、以下の事由を挙げている。

甲第1号証:特表平9-508880号公報
甲第2号証:英国特許1280932号明細書(1972)
甲第3号証:英国特許第1310029号明細書(1973)
甲第4号証:米国特許第4157754号明細書
甲第5号証:DAICEL CHEMICAL INDUSTRIES,LTD、「cigatow」パンフレット、1987年6月、第5頁
甲第6号証:特開平6-238839号公報
甲第7号証:特開平6-155682号公報
甲第8号証:知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10042号特許取消決定取消請求事件判決
甲第9号証:ISO 527-3
また、次の甲第10号証の1?3を、平成19年11月19日付けの弁駁書において提示している。
甲第10号証の1:国際公開第02/32238号パンフレット
甲第10号証の2:甲第10号証の1の英訳文
甲第10号証の3:甲第10号証の1の部分和訳文
また、平成20年7月17日付けの上申書において、次の甲第11?16号証及び参考資料1,2を提示している。
甲第11号証:米国特許第5775058号明細書
甲第12号証:特許第2659861号公報
甲第13号証:村上正紀立命館大学教授による鑑定書(写し)
甲第14号証:菱沼一夫技術士による鑑定書(写し)
甲第15号証:昭和52年第16647号審決
甲第16号証:特許第2857400号公報
参考資料1:甲第2号証の全文和訳
参考資料2:甲第11号証の全文和訳
さらに、平成22年3月15日付けの弁駁書において、次の参考資料1?3を提示している。
参考資料1:甲第3号証の全文和訳
参考資料2:日本ポリエチレン株式会社研究開発センター、「L-LDPE及びLDPEフィルムのバリアー性」
参考資料3:MEDIPACK AG

1.訂正についての主な主張
(1)請求項2について、「裂破強度」とある記載を「引裂き強度」とする訂正は特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものではなく、かつ実質上特許請求の範囲を変更するものである。(平成22年3月15日付け弁駁書6.第4(2))
訂正前の「裂破強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)」について、DIN EN ISO 527-3は、引張り強度の試験片を規定した標準測定法であり、フィルム及びシートの伸度の測定方法に関するものであって「引裂き強度」に関するものでないから、「裂破強度」を「引裂き強度」とする訂正は、特許明細書等に記載した範囲内においてするものではない。また、裂破強度とは高分子の測定法で一般的な測定項目ではない。(審判請求書(5-8)、平成19年11月19日付け弁駁書7第1(1)、平成21年12月4日付け上申書II(6))
(2)請求項3について、「350kg/m^(3)、特に800kg/m^(3)未満の梱包密度」とある記載を、「350kg/m^(3)よりも高く、特に800kg/m^(3)未満の梱包密度」とする訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである。(平成22年3月15日付け弁駁書6.第4(1))
(3)請求項23(訂正後の請求項21)について、「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)以下」とある記載を「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満」とする訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである。(平成22年3月15日付け弁駁書6.第4(3))
(4)請求項24及び25(訂正後の請求項22及び23)並びに段落【0031】について、「裂破強度」とある記載を「引裂き強度」とする訂正は、上記(1)と同様に、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものではなく、かつ実質上特許請求の範囲を変更するものである。(平成22年3月15日付け弁駁書6.第4(4))

2.無効理由1
本件特許は特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第4号該当し、訂正後の請求項1?24に係る特許は無効とされるべきものである。

公知技術と比較して、各数値の特定に技術的意義を有しているか不明確であり、発明の範囲が不明確である。(請求書III(1)第26頁第12?15行)
本件特許発明1及び14(訂正後の1及び13)は、公知文献である甲第1号証に記載の発明と対比すると数値限定のみが相違するものであり、これと区別でき、課題が解決できるための数値限定の根拠が充分に裏付けられておらず、技術的意義が不明である。
したがって、技術的意義が明確でないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない
また、公知技術である甲第1号証に記載の発明との関係も理解できないから発明の範囲が不明確であり、同条第6項第2号に規定する要件を満たさない。
これらを引用する請求項2?13(訂正後の2?12)、15?26(訂正後の14?24)も同様である。(請求書IV(3-1)第32頁第14行?第36頁第20行)
同じく本件特許発明1及び14(訂正後の1及び13)は、公知文献である甲第2号証に記載の発明と数値限定のみが相違するものであり、上記と同様である。(請求書IV(3-2)第36頁第21行?第40頁第19行)
本件特許発明は特殊パラメータによる物の特定を含む場合であって、「100Nの力を作用させたとき、」「少なくとも90%が、平坦な板から約40mm以下離間する程度」について、特許法第36条第4項第1号における委任省令要件を満たさない。(平成20年7月17日付け上申書IV)

3.無効理由2
本件特許は特許法第36条第6項第1号に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第4号該当し、請求項1?26(訂正後の請求項1?24)に係る特許は無効とされるべきものであるとして、以下の理由を主張している。(請求書IV(4)、第40頁第20行?第49頁第13行)

(請求項1について)
(1)「ベールの頂側部と底側部」について発明の詳細な説明に記載がない。
(2)(3) 取下げ(第1回口頭審理調書、以下同様)
(4)「少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている」について発明の詳細な説明に記載がない。
段落【0016】の記載は請求項1より広い範囲を含み、かつ外圧に対してとの記載もない。
(請求項2について)
(5)「前記ベールが、少なくとも約10N/15mmの裂破強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)を有する」について発明の詳細な説明に記載がない。
段落【0031】の記載はベールではなくパッケージ包装材またはフィルムである。
(請求項3について)
(6)「0.9m^(3)よりも高い梱包容量、および/または350kg/m^(3)、特に800kg/m^(3)未満の梱包密度を有する」について発明の詳細な説明に記載がない。
段落【0013】の記載は0.9m^(3)以上、350kg/m^(3)よりも高くであって一致しない。
(請求項8について)
(7)「頂部側表面」について発明の詳細な説明に記載がない。
(請求項9について)
(8)「ポリエチレン、特にLDPE、または改良ポリエチレン(LLDPE)から成るベール」について発明の詳細な説明に記載がない。
(請求項11について)
(9)「前記パッケージ包装材が、約100?400μmの厚さを有する」について発明の詳細な説明に記載がない。
段落【0041】の記載はフィルムの厚さであって、フィルム以外を含むパッケージ包装材ではない。
(請求項12について)
(10)「前記ベールが厚紙または合成布地から成る追加の移動梱包を備え、および/または、さらにストラップで包装されている」について発明の詳細な説明に記載がない。
段落【0039】及び【0041】の記載は厚紙、合成布地で、ストラップはない。
(請求項13(訂正により削除された)について)
(11)「梱包後に存在する、外圧に対して少なくとも約0.01barの負圧が、解放されている」について発明の詳細な説明に記載がない。
(請求項14(訂正後の13)について)
(12)「外圧に対して」について発明の詳細な説明に記載がない。
(請求項19(訂正後の18)について)
(13)「約0.2?0.40bar」について発明の詳細な説明に記載がない。
段落【0025】の記載は約0.2?0.4barであって0.40ではない。
(請求項21(訂正後の20)について)
(14)「5g/(m^(2)・d)以下、好ましくは2g/(m^(2)・d)以下」について発明の詳細な説明に記載がない。
段落【0030】の記載は5g/(m^(2)・d)未満、好ましくは2g/(m^(2)・d)未満である。
(請求項22(訂正により削除された)について)
(15)「10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)以下」について発明の詳細な説明に記載がない。
段落【0029】の記載は未満である。
(請求項23(訂正後の21)について)
(16)「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)以下」について発明の詳細な説明に記載がない。
段落【0029】の記載は200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)である。
(請求項26(訂正後の24)について)
(17) 取下げ
(請求項2?26(訂正後の2?24)について)
(18)上記(1)?(16)の無効理由を有する請求項1?3,9,11?14,19,21?23を引用する請求項2?26も同様の無効理由を有する。
(請求項1?26(訂正後の1?24)について)
(19)発明の詳細な説明に、発明の具体例が一切記載されていない。
本件特許発明はパラメータ発明に関するものであるから、当該数値内であれば所望の効果を得られると認識できる程度に具体例を開示して記載することを要するものである。

4.無効理由3
本件特許は特許法第36条第6項第2号に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第4号該当し、請求項1?26(訂正後の請求項1?24)に係る特許は無効とされるべきものであるとして、以下の理由を主張している。(請求書IV(5)、第49頁第14行?第62頁第4行)

(請求項1について)
(1)「ベールの頂側部と底側部」について詳細な説明に記載がなく、どこを指すのか不明瞭なため、発明が不明確である。
(2)「妨害となるような膨張部分またはくびれ部分」は何に対してどの程度妨害となるのか明らかでないため、発明が不明確である。
(3) 取下げ
(4)「機械的に自己支持する弾性梱包材料」について説明が不十分でどのようなものか明らかでないため、発明が不明確である。
(5) 取下げ
(6)ベールの頂面及び底面の平坦度を数値限定しているが、ベールの大きさに影響を受けるから、あらゆるベールの頂面の面積とベールの高さの場合に当該数値限定が成立するとは考えられず、当該限定がないことから発明の範囲が不明確である。
また、9%の部分が平坦な板から100mm離れるものも包含し、平坦とはいえないから発明の範囲が不明確である。
(7)「少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている」について詳細な説明に充分な記載がなく、技術的意味が理解できないから発明が不明確である。
また、「少なくともベールが梱包された後に」さえ、「負圧がベールにかかって」いれば良いというのでは、積み上げるときも規定されないから、平坦性をいつまで維持すればよいのか不明であり、発明が不明確である。
(請求項2について)
(8)「前記ベールが、少なくとも約10N/15mmの裂破強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)を有する」について詳細な説明に記載がなく、技術的意味を理解できないから、発明が不明確である。
また、「約」があるから範囲が不明確である。
DIN EN ISO 527-3は引張り強度の試験片の標準測定法であり、破裂強度の測定法でない。破裂強度とは高分子の測定法で一般的な測定項目でもない。したがって、破裂強度の数値が当業者であっても確定できない。
(請求項3について)
(9)「0.9m^(3)よりも高い梱包容量、および/または350kg/m^(3)、特に800kg/m^(3)未満の梱包密度を有する」について詳細な説明に記載がなく、技術的意味を理解できないから発明が不明確である。
段落【0013】の記載は0.9m^(3)以上、350kg/m^(3)よりも高くであって一致しない。
当該数値限定を外れた場合との差異についても根拠が示されていない。
(請求項5について)
(10)「前記パッケージ包装材」は、引用する請求項1?4に「パッケージ包装材」なる用語がなく不明りょうである。
(請求項8について)
(11)「頂部側表面」について、詳細な説明に記載がなく、どの部分を指すのか不明であり、発明が不明確である。
(請求項9について)
(12)「ポリエチレン、特にLDPE、または改良ポリエチレン(LLDPE)から成るベール」について、詳細な説明に記載がなく、どのようなものか明らかでなく、発明が不明確である。
(請求項10について)
(13)「前記パッケージ包装材」は、引用する請求項5?8に「パッケージ包装材」なる用語がなく不明りょうである。
(請求項11について)
(14)「前記パッケージ包装材」は、引用する請求項1?10に「パッケージ包装材」なる用語がなく不明りょうである。
(15)「前記パッケージ包装材が、約100?400μmの厚さを有する」について、詳細な説明に記載がなく、段落【0041】の記載はフィルムの厚さであって、フィルム以外のパッケージ包装材を約100?400μmの厚さとすることの技術的意味を理解できないから発明が不明確である。
また、「約」があるから発明の範囲が不明りょうである。
(請求項12について)
(16)「前記ベールが厚紙または合成布地から成る追加の移動梱包を備え、および/または、さらにストラップで包装されている」について発明の詳細な説明に記載がなく、発明が不明確である。
(請求項13(訂正により削除された)について)
(17)「梱包後に存在する、外圧に対して少なくとも約0.01barの負圧が、解放されている」について発明の詳細な説明に記載がなく、技術的意味を理解できず、また、上記(7)で述べたように「0.01bar」と特定することの技術的意味が理解できないから、発明が不明確である。
また、「約」があるから発明の範囲が不明りょうである。
さらに、請求項1の「少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている」とも矛盾し理解不能であり、発明が不明確である。
(18)「請求項1?12の少なくとも1項」は、不明確である。
(請求項14(訂正後の13)について)
(19)「外圧に対して少なくとも0.01barの負圧」について発明の詳細な説明に記載がなく、技術的意味を理解できず、発明が不明確である。
(請求項18(訂正後の17)について)
(20) 取下げ
(請求項19(訂正後の18)について)
(21) 取下げ
(請求項21(訂正後の20)について)
(22) 取下げ
(請求項22(訂正により削除された)について)
(23) 取下げ
(請求項23(訂正後の21)について)
(24)「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)以下」について発明の詳細な説明に記載がなく、技術的意味が理解できず、発明が不明瞭である。
段落【0029】の記載は、200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)である。
当該数値限定がどのような技術的意義を有するのか不明であり、数値限定が外れた場合との差異の根拠もなく、発明が不明確である。
(請求項24(訂正後の22)について)
(25)「少なくとも10N/15mm、特に少なくとも100N/15mm」とする技術的意義が不明であり、発明が不明確である。
段落【0031】の記載は、「機械強度に関連して、DIN EN ISO 527-3に従って測定した場合に、パッケージ包装材またはフィルムが、少なくとも約10N/15mm、好ましくは約100N/15mm以上、さらに好ましくは200N/15mm以上の裂破強度を有することが推奨される。」であり、当該数値限定がどのような技術的意義を有するのか不明であり、数値限定が外れた場合との差異の根拠もなく、発明が不明確である。
また、DIN EN ISO 527-3は引張り強度の試験片の標準測定法であり、破裂強度の測定法でない。破裂強度とは高分子の測定法で一般的な測定項目でもない。したがって、破裂強度の数値が当業者であっても確定できない。
(請求項25(訂正後の23)について)
(26)「少なくとも200N/15mm」とする技術的意義が段落【0031】の記載をみても不明である。したがって、当該数値限定がどのような技術的意義を有するのか不明であり、数値限定が外れた場合との差異の根拠もなく、発明が不明確である。
また、DIN EN ISO 527-3は引張り強度の試験片の標準測定法であり、破裂強度の測定法でない。破裂強度とは高分子の測定法で一般的な測定項目でもない。したがって、破裂強度の数値が当業者であっても確定できない。
(請求項26(訂正後の24)について)
(27) 取下げ
(請求項1?4,8,13?14,21?26(訂正後の1?4,8,14,21?24)及びこれらの請求項を引用する請求項について)
(28)これら請求項における数値限定は、いずれも上限又は下限を示すのみで、下限又は上限が不明であり、発明が不明確である。
(請求項2?26(訂正後の2?24)について)
(29)上記(1)?(28)の無効理由を有する請求項を引用する請求項2?26は、同様の無効理由を有する。

5.無効理由4
本件特許は特許法第36条第4項第1号に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第4号該当し、請求項1?26(訂正後の請求項1?24)に係る特許は無効とされるべきものであるとして、以下の理由を主張している。(請求書IV(6)、第62頁第5行?第70頁第17行)

(1)請求項1の「ベールの頂側部と底側部」について、詳細な説明に記載がなく、どこを指すのか不明瞭で、実施することができない。
(2) 取下げ
(3)請求項1の「少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度」について当該数値限定の技術的意義が不明で、当該数値限定を外れたときに目的を達成できないことについても根拠がなく、発明の技術的意義が理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(4)請求項1の「機械的に自己支持する弾性梱包材料」について、説明が不十分でどのようなものか明らかでないため 実施することができない。
(5)請求項1の「少なくとも90%」及び「約40mm以下」とすることの技術的意義が不明であり、当該数値限定を外れたときに目的を達成できないことについても根拠がなく、発明の技術的意義を理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(6)請求項1の「ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から約40mm以下離間する程度に」するための具体的な条件が記載されておらず、出願時の技術常識を参酌しても、この発明を実施することができない。
(7)請求項1の「少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている」について、詳細な説明に記載がなく、技術的意味が理解できないから発明を実施することができない。
また、「少なくとも0.01bar」なる数値限定の技術的意義が不明であり、当該数値限定を外れたときに目的を達成できないことについても根拠がなく、発明の技術的意義を理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(8)請求項1の「少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている」ベールを製造するための具体的な条件が記載されておらず、出願時の技術常識を参酌しても、この発明を実施することができない。
(9)請求項2の「前記ベールが、少なくとも約10N/15mmの裂破強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)を有する」について、詳細な説明に記載がなく、技術的意味が理解できないから、発明を実施することができない。
(10)請求項3の「0.9m^(3)よりも高い梱包容量、および/または350kg/m^(3)、特に800kg/m^(3)未満の梱包密度を有する」について、詳細な説明に記載がなく、技術的意味を理解できないから、発明を実施することができない。
また、「0.9m^(3)よりも高い」「350kg/m^(3)」、及び「800kg/m^(3)未満」の数値限定の技術的意義が不明であり、当該数値限定から外れたときとの差異について根拠が示されておらず、発明の技術的意義が理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(11)請求項8の「頂部側表面」について、詳細な説明に記載がなく、どの部分を指すのか不明であるため、発明を実施することができない。
(12)請求項9の「ポリエチレン、特にLDPE、または改良ポリエチレン(LLDPE)から成るベール」について、詳細な説明に記載がなく、どのようなものか明らかでないため、発明を実施することができない。
(13)請求項11の「前記パッケージ包装材が、約100?400μmの厚さを有する」について、詳細な説明に記載がなく、フィルム以外のパッケージ包装材を約100?400μmの厚さとすることの技術的意味を理解できないから、発明を実施することができない。
(14)請求項12の「前記ベールが厚紙または合成布地から成る追加の移動梱包を備え、および/または、さらにストラップで包装されている」について発明の詳細な説明に記載がなく、発明を実施することができない。
「および/または、さらにストラップで包装」した場合に、請求項1の「ベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い」を満たすよう製造する条件が不明で実施をすることができない。
(15)請求項13(訂正により削除された)の「梱包後に存在する、外圧に対して少なくとも約0.01barの負圧が、解放されている」について、発明の詳細な説明に記載がなく、技術的意味を理解できず、実施をすることができない。
さらに上記(7)と同様の無効理由を有する。
(16)請求項14(訂正後の13)の「外圧に対して少なくとも0.01barの負圧」について、発明の詳細な説明に記載がなく、技術的意味を理解できず、発明が不明確である。
さらに(7)と同様の無効理由を有する。
(17)請求項18(訂正後の17)の「約0.15?0.7bar」について、当該数値限定の技術的意義が不明であり、当該数値限定から外れたときとの差異について根拠が示されておらず、発明の技術的意義が理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(18)請求項19(訂正後の18)の「約0.2?0.40bar」の「0.40bar」について発明の詳細な説明に記載がなく、技術的意味が理解できず、当該数値限定がどのような技術的意義を有するのか不明であり、当該数値限定から外れたときとの差異について根拠が示されておらず、発明の技術的意義が理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(19)請求項21(訂正後の20)の「5g/(m^(2)・d)以下、好ましくは2g/(m^(2)・d)以下」について発明の詳細な説明に記載がなく、技術的意味が理解できず、当該数値限定がどのような技術的意義を有するのか不明であり、当該数値限定から外れたときとの差異について根拠が示されておらず、発明の技術的意義が理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(20)請求項22(訂正により削除された)の「10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)以下」について発明の詳細な説明に記載がなく、技術的意味が理解できず、当該数値限定がどのような技術的意義を有するのか不明であり、当該数値限定から外れたときとの差異について根拠が示されておらず、発明の技術的意義が理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(21)請求項23(訂正後の21)の「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)以下」について発明の詳細な説明に記載がなく、技術的意味が理解できず、当該数値限定がどのような技術的意義を有するのか不明であり、当該数値限定から外れたときとの差異について根拠が示されておらず、発明の技術的意義が理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(22)請求項24(訂正後の22)の「少なくとも10N/15mm、特に少なくとも100N/15mm」について当該数値限定の技術的意義が不明であり、当該数値限定から外れたときとの差異について根拠が示されておらず、発明の技術的意義が理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(23)請求項24(訂正後の22)の「少なくとも200N/15mm」について当該数値限定の技術的意義が不明であり、当該数値限定から外れたときとの差異について根拠が示されておらず、発明の技術的意義が理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(24)請求項26(訂正後の24)の「少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度が得られるように制御される」について当該数値限定の技術的意義が不明であり、当該数値限定から外れたときとの差異について根拠が示されておらず、発明の技術的意義が理解できず、委任省令要件を満たしていない。
(25) 前記(1)?(24)の無効理由を有する請求項を引用する請求項2?26(訂正後の2?24)も同様の無効理由を有する。
(26)請求項1?26(訂正後の1?24)に係る発明のフィルタートウのベールを得るための具体的製造例の記載が不十分であり、上記3「無効理由2」の(19)のとおり、サポート要件に適合しない。明細書の記載のみから如何なる条件で製造を行えば、本件特許発明のフィルタートウのべールが得られるのか、当業者が期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要がある。

6.無効理由5
本件特許は特許法第29条第2項に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号該当し、請求項1?26(訂正後の請求項1?24)に係る特許は無効とされるべきものであるとして、以下の理由を主張している。

(1)無効理由5(1)(請求書IV(7)、第70頁第18行?第103頁第19行)
本件特許発明1?15(訂正後の1?14)及び20?26(訂正後の19?24)は、甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができた、又は、甲第1号証に記載された発明及び技術常識(少なくとも公知技術)(甲第4及び5号証)又は周知技術(少なくとも公知技術)(甲第6及び7号証)に基づいて容易に発明をすることができた。
また、本件特許発明16?19(訂正後の15?18)は、甲第1及び3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができた、又は、甲第1及び3号証に記載された発明並びに技術常識又は周知技術(少なくとも公知技術)(甲第4?7号証)に基づいて容易に発明をすることができた。(請求書IV(7-15))
ア 本件特許発明1が甲第1号証記載の発明に基づいて容易であることについて
(ア)本件特許発明1は甲第1号証記載の発明と「ベールの中心に対して垂直方向に100Nの力を作用させたとき、圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から40mm以下離間する程度」との数値限定においてのみ実質的に相違するものの、甲第1号証記載の発明とは異質な又は際立った効果を有するものではなく、当業者が予測できる範囲であって進歩性を欠如する。
他の数値限定も甲第1号証記載に記載されているに等しいか、たとえ相違するとしても設計事項の程度にすぎない、又は技術常識の付加にすぎないので、甲第1号証記載の発明から当業者が容易に想到することができたものである。(請求書IV(7-3)(7-4))
また、本件特許発明1の数値限定は技術的意義が不明なので、甲第1号証記載の発明との相違点となり得ず、新規性が欠如ともいえるものである。(請求書IV(7-5))
(イ)従来技術でも負圧は発生していることは技術常識であること
甲第1号証の米国ファミリー公報である甲第11号証を参酌すると、甲第1号証記載の発明も、甲第13及び14号証の鑑定書でわかるように、負圧は発生している。そうすると、0.01barという値は周知事項であり技術的意義を有していない。また、本件特許発明1は甲第1号証記載の発明を包含しているものでもある。
甲第16号証にも示される様に、プレスべールを圧縮状態で全周をシールすることは周知であり、甲第12や16号証において負圧が発生してることは明らかである。(平成20年7月17日付け上申書)
(ウ)本件特許明細書等の段落【0004】に記載されるように、ベールの頂部と底部に望ましくない膨張が生じることを抑え積み上げを可能とすることは、本件特許出願当時技術常識であり、甲第5号証記載の写真のストラップを用いたべールもそのまま積み上げて二段積みとすることが可能とするものであって、平成22年2月1日付け回答書(請求人)に添付の請求人の社員宮下知治の宣誓書に記載されているようにそのような多段積みによる保管は常用されていた。
また、平坦度については、本件特許明細書の段落【0051】の方法で得られた結果であって、所定の負圧にするとその結果としてそのような平坦さを満たすという程度のものである。
そして、上記のように多段積みによる保管は常用されていたから、そのまま積み上げられる程度の平坦度とすることが求められ、そのように設計されることは技術常識であり、それを数値で表す程度のことは設計的事項にすぎない。
本件特許明細書段落【0016】に記載の製造工程や負圧の制御方法についても甲第1号証記載の発明と差異はない。
甲第3号証には0.5barの負圧を用いてべールの膨張を制御する方法が記載されており、べールが膨張しなければべールは平坦であって積み上げ保管できるものであることは明らかである。(平成22年2月1日付け回答書5.(2))
イ 本件特許発明2?13(訂正後の2?12)が甲第1号証記載の発明に基づいて容易であることについて
(ア)本件特許発明3,5?7,9,12,13(訂正後の3,5?7,9,12)は甲第1号証記載の発明と平坦さに関する数値限定のみで相違するので、上記アと同様に進歩性欠如する。
なお、本件特許発明3の「0.9m^(3)より高い梱包容量」について甲第1号証に明示はないが、甲第5号証に「約1.1m^(3)の梱包容量」が開示されており、甲第1号証記載の発明に適用することにより容易に想到できる。(請求書IV(7-7))
(イ)本件特許発明2,4,8,10,11について
本件特許発明2,4,8,11は甲第1号証記載の発明と各構成要件の数値限定のみで相違するが、刊行物に記載された発明と異質の又は際だった効果を有するものではなく、当業者が予測できる範囲内のものであるので、そして本件特許発明1は進歩性を欠如するから、本件特許発明2,4,8,11も進歩性を欠如する。
また、本件特許発明10は甲第1号証記載の発明と材料の明示がない点で相違するが、周知技術を適用することで、容易に想到できる。(請求書IV(7-8))
(ウ)本件特許発明2?4,8,10,11,13(訂正後の2?4,8,10,11)の数値限定は技術的意義が不明で甲第1号証記載の発明と区別を付けることができず、相違点とならない。甲第1号証記載の発明と同一であるとして新規性欠如ともいえる。(請求書IV(7-9))
ウ 本件特許発明14?26(訂正後の13?24)が甲第1号証記載の発明に基づいて容易であることについて
(ア)本件特許発明14,15,20,22,23,26(訂正後の13,14,19,21,24)は甲第1号証記載の発明と平坦さに関する数値限定のみで相違するので、上記アと同様に進歩性欠如する。(請求書IV(7-10)(7-11))
(イ)本件特許発明21,24,25(訂正後の20,22,23)は甲第1号証記載の発明と各構成要件の数値限定のみで相違するが、刊行物に記載された発明と異質の又は際だった効果を有するものではなく、当業者が予測できる範囲内のものであるので、そして本件特許発明1は進歩性を欠如するから、本件特許発明21,24,25も進歩性を欠如する。(請求書IV(7-10)(7-12))
(ウ)本件特許発明14及び21?26(訂正後の13及び20?24)について
本件特許発明14の「(e)外圧に対して少なくとも0.01barの負圧を、前記負荷が解放されたパッケージ包装材内に発生させるステップとを備えた」との構成要件及び本件特許発明21?26の各構成要件の数値限定は技術的意義が不明で甲第1号証記載の発明と区別を付けることができず、相違点とならない。甲第1号証記載の発明と同一であるとして新規性欠如ともいえる。(請求書IV(7-13))
(エ)本件特許発明16?19(訂正後の15?18)について、甲第3号証には、請求項16?18の構成要件が記載されており、請求項19の「約0.2?0.40bar」もその効果が異質の又は際だった効果を有するものではなく、当業者が予測できる範囲内のものであるので、設計的事項である。
そして、格別の効果もなく、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の発明を適用して当業者が容易に発明をすることができたものである。(請求書IV(7-14))

(2)無効理由5(2)(請求書IV(8)、第103頁第20行?第129頁第18行)
本件特許発明1?15(訂正後の1?14)及び20?26(訂正後の19?24)は、甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができた、又は、甲第2号証に記載された発明及び技術常識(少なくとも公知技術)(甲第4及び5号証)又は周知技術(少なくとも公知技術)(甲第6及び7号証)に基づいて容易に発明をすることができた。
また、本件特許発明16?19(訂正後の15?18)は、甲第2及び3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができた、又は、甲第2及び3号証に記載された発明並びに技術常識又は周知技術(少なくとも公知技術)(甲第4?7号証)に基づいて容易に発明をすることができた。(請求書IV(8-14))
ア 本件特許発明1が甲第2号証記載の発明に基づいて容易であることについて
(ア)本件特許発明1は甲第2号証記載の発明と「ベールの中心に対して垂直方向に100Nの力を作用させたとき、圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から40mm以下離間する程度」との数値限定においてのみ実質的に相違するものの、甲第2号証記載の発明とは異質な又は際立った効果を有するものではなく、当業者が予測できる範囲であって進歩性を欠如する。
他の数値限定も甲第2号証記載に記載されているに等しいか、たとえ相違するとしても設計事項の程度にすぎない、又は技術常識の付加にすぎないので、甲第2号証記載の発明から当業者が容易に想到することができたものである。(請求書IV(8-2)(8-3))
また、本件特許発明1の数値限定は技術的意義が不明なので、甲第2号証記載の発明と区別をつけることができないので、相違点となり得ず、新規性が欠如するともいえるものである。(請求書IV(8-4))
(イ)従来技術でも負圧は発生していることは技術常識であること
甲第2号証記載の発明も、甲第13及び14号証の鑑定書を参酌すると、負圧が発生している。そうすると、本件特許発明1は甲第2号証記載の発明と差別化するものではなく、包含しているものである。(平成20年7月17日付け上申書)
(ウ)本件特許発明の課題、平坦度、製造工程や負圧の制御方法については、上記(1)ア(ウ)と同様である。(平成22年2月1日付け回答書5.(2))
イ 本件特許発明2?13(訂正後の2?12)が甲第2号証記載の発明に基づいて容易であることについて
(ア)本件特許発明3,5?7,9,12,13(訂正後の3,5?7,9,12)は甲第2号証記載の発明と平坦さに関する数値限定のみで相違するので、上記アと同様に進歩性欠如する。
なお、本件特許発明3の「0.9m^(3)より高い梱包容量」について甲第2号証に明示はないが、甲第5号証に「約1.1m^(3)の梱包容量」が開示されており、甲第2号証記載の発明に適用することにより容易に想到できる。(請求書IV(8-6))
(イ)本件特許発明2,4,8,10,11について
本件特許発明2,4,8,11は甲第2号証記載の発明と各構成要件の数値限定で相違するが、刊行物に記載された発明と異質の又は際だった効果を有するものではなく、当業者が予測できる範囲内のものであるので、そして本件特許発明1は進歩性を欠如するから、本件特許発明2,4,8,11も進歩性を欠如する。
また、本件特許発明10は甲第2号証記載の発明と材料の明示がない点で相違するが、周知技術を適用することで、容易に想到できる。(請求書IV(8-7))
(ウ)本件特許発明2?4,8,11,13(訂正後の2?4,8,11)の各数値限定は技術的意義が不明で甲第2号証記載の発明と区別を付けることができず、相違点とならない。甲第1号証記載の発明と同一であるとして新規性欠如ともいえる。(請求書IV(8-8))
ウ 本件特許発明14?26(訂正後の13?24)が甲第2号証記載の発明に基づいて容易であることについて
(ア)本件特許発明14,15,20,22,23,26(訂正後の13,14,19,21,24)は甲第2号証記載の発明と平坦さに関する数値限定のみで相違するので、上記アと同様に進歩性欠如する。(請求書IV(8-9)(8-10))
(イ)本件特許発明21,24,25(訂正後の20,22,23)は甲第2号証記載の発明と各構成要件の数値限定で相違するが、刊行物に記載された発明と異質の又は際だった効果を有するものではなく、当業者が予測できる範囲内のものであるので、そして本件特許発明1は進歩性を欠如するから、本件特許発明21,24,25も進歩性を欠如する。(請求書IV(8-11))
(ウ)本件特許発明14及び21?26(訂正後の13及び20?24)について
本件特許発明14の「(e)外圧に対して少なくとも0.01barの負圧を、前記負荷が解放されたパッケージ包装材内に発生させるステップとを備えた」との構成要件及び本件特許発明21?26の各構成要件の数値限定は技術的意義が不明で甲第2号証記載の発明と区別を付けることができず、相違点とならない。甲第2号証記載の発明と同一であるとして新規性欠如ともいえる。(請求書IV(8-12))
(エ)本件特許発明16?19(訂正後の15?18)について、甲第3号証には、請求項16?18の構成要件が記載されている。
そして、格別の効果もなく、甲第2号証記載の発明に甲第3号証記載の発明を適用して当業者が容易に発明をすることができたものである。(請求書IV(8-13))

第5 被請求人の主張
審判被請求人は、概ね、特許法第36条第4項及び第6項に関する無効理由1?4はない旨主張するとともに、同法第29条第2項に関する無効理由5についても、甲第1?3号証には気密性と負圧の発生が開示も示唆もされていないため、本件特許発明と甲第1?3号証記載の発明とは本質的に異なり、甲第1?3号証記載の発明をいかに組み合わせようとも本件特許発明に想到することができず、理由はない旨主張し、平成22年1月29日付けの回答書において、次の参考資料1?7を提示している。
参考資料1:欧州特許庁に提出したSTATEMENT OF GROUNDS
参考資料2:欧州特許庁に提出したSTATEMENT OF GROUNDSに添付した資料1(MBP04)
参考資料3:欧州特許庁に提出したSTATEMENT OF GROUNDSに添付した資料2(MBP05)
参考資料4:欧州特許庁に提出したSTATEMENT OF GROUNDSに添付した資料3(MBP08)
参考資料5:欧州特許庁に提出したSTATEMENT OF GROUNDSに添付した資料4(MBP09)
参考資料6:欧州特許庁に提出したSTATEMENT OF GROUNDSに添付した資料5(MBP10)
参考資料7:欧州特許庁に提出したSTATEMENT OF GROUNDSに添付した資料6(MBP11)

第6 甲各号証
1.甲第1号証
甲第1号証には、第1?5図とともに以下の記載がある。
(1)「1.繊維状の材料、特に切断された繊維又はストランド状の繊維から成るプレスベールを、該ベールの周囲にあてられかつ固定された単数又は複数の形弾性の包装材切片を用いてベールプレス内で包装するための方法において、包装材切片(5,6,7)を互いにオーバラップさせかつ接着及び又は溶融により互いに結合することを特徴とする、プレスベールを包装する方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
(2)「したがって本発明の課題はプレスベールを包装するためによりよい可能性を見い出すことである。
・・・(中略)・・・
本発明の方法ではプレスベールをたがで結合することが不要になる。この代りに包装材切片は互いにオーバラップさせられてベールの上にあてられ、接着及び又は溶着で互いに結合される。種々異なる包装材切片を相互に接着及び又は溶着で結合することで包装は固定される。
・・・(中略)・・・しかしながら袋又はホースの形をした唯一の包装材切片で作業し、開放端部を折畳み及び接着及び又は溶着で閉鎖することもできる。
本発明の方法は、プレスベールが圧縮過程の間に2つのプレスポンチの間に高い押圧力で保持されるベールプレスにおいてプレスベールを包装するために特に適している。プレスベールは有利には繊維状の材料、特に切断されているか又はストランド状の繊維から成っている。ストランド状の繊維はステプルファイバ又はトウとも呼ばれる。しかしながらプレスベールは他の材料から成っていることもできる。」(第4頁第20行?第5頁第9行)
(3)「包装材切片はプラスチック、特にポリエチレンから製造することが好ましい。」(第5頁第24行)
(4)「包装装置は包装材切片を供給し、当付けかつ折り畳むための装置構成部分に関しては公知の形式のものであることができる。接着及び又は溶着結合を行なうためには包装装置は接近可能なヒートシール装置を有している。このヒートシール装置は種々異なって構成でき、加熱装置及び又は圧着装置を有している。点状又はストライプ状の結合を行なうためにはヒートシール装置に適当に成形された複数の点状又はストライプ状の単個ポンチを設け、これらの単個ポンチで包装材切片を結合個所において点状又はストライプ状に互いに圧着し、ばあいによってはこの限られた接触面において加熱されることができる。」(第6頁第4?11行)
(5)「繊維はプレスボックス17に充填されかつプレスポンチ3,4で高い圧力下でベール1に圧縮される。プレスポンチ3,4は数100t、例えば500tの高い圧力を生ぜしめる。ベール1は約300-700kgの高い重畳を有している。プレスベール1は包装装置12によって複数の包装材切片5,6,7内に押込まれかつ包装される。
図示の実施例では3つの包装材切片5,6,7が使用されている。この場合、天井5と底6を形成する包装材切片はプレスボックス17を充たす前にそれぞれ所属のプレスポンチ3,4に配置され、プレスポンチ3,4によりプレスベール1に接近させられる。次いで天井5と底6は折畳み装置18によりプレスベール1の側面に向かって折られる。この後で第3の包装材切片7が腹帯の形でプレスベール1の周囲に巻付けられる。このために包装材切片7はシートコイル19から引き出される。」(第6頁第26行?第7頁第11行)
(6)「本発明では包装材切片5,6,7は溶着及び又は接着で互いに結合される。これによってプレスベール1のために全面的に閉じた包体又は包装が形成される。この包体又は包装は、プレスベールにかけられていたプレス圧を除いたあとでも、膨らむベールの力に耐える。本発明は包装をバンド又はたが又はそれに類似したもので付加的に補強することを不要にする。しかしながら別の実施例においてはこのような補強は同様にまだ存在していることもできる。
プレスベール1を包装する場合には、個々の包装材切片5,6,7は少なくとも対を成して互いにオーバラップ10が与えられてプレスベール1の周囲に当付けられる。オーバラップ10は結合個所を形成する。包装材切片5,6,7はヒートシール装置13により互いに接着されかつ又は溶着され、これによっていわゆる結合部11が形成される。」(第7頁第21行?第8頁第6行)
(7)「第5図においては包装材切片5,6,7が多層に、有利には2層に構成されていることが示されている。包装材切片は堅固な保持構造、有利には膨張したプレスベール1により生ぜしめられた力を受止め包装を安定化する織布の形をした保持構造を有している。保持構造は補強バンドを有しているか又は他の適当な形式で構成されていることもできる。
包装材切片は少なくとも結合個所10に、接着及び又は溶着結合を可能にする被覆層9を備えている。被覆層9は保持構造8の少なくとも片側に存在している。有利な実施例においては織布は全面的に被覆層で被覆されている。これによって被覆層はプレスベール1を包み、プレスベールを外からの環状影響、例えば汚れ、水等に対して保護する。堅固な保持構造8はプレスベール1を付加的に機械的な損傷に対して保護する。
有利な実施例においては包装材切片5,6,7はプラスチックから成っている。この包装材切片5,6,7は大きな引張り強度を有しているが折畳みかつ曲げることを許す。この包装材切片はプレスベール1の周囲に所望の形式で当付ける限りにおいては十分な形弾性を有するが、プレスポンチ3,4により負荷をプレスベールから除いたあとでプレスベールの形を維持するためには十分な内部引張り強度及び伸張強度を有している。必要な強度はベール材料に合わせられかつ変化させることができる。」(第8頁第16行?第9頁第5行)
(8)「第2図から第4図までに示されているように押圧ビームは横方向に互いに間隔をおいた複数の条片状の単個ポンチ16を有している。これらの単個ポンチ16は1部突出し、圧着した場合に結合個所10において溶融及び又は接着又ストライプ11を生ぜしめる。単個ポンチはオーバラップ10の長手方向に対して垂直方向にもしくは横方向に延びていると有利である。単個ポンチ16もしくは溶融ストライプ又は結合11は点状であることもできる。いずれにしてもオーバラップ10に沿って周期的に中断された結合が生じる。
点状又はストライプ状の結合11は普通のベール力に対し十分な強度をもたらす。この結合は高いせん断力で負荷可能である。しかしながらこの結合11は手で又は適当な機械で比較的に容易に、外側に位置する包装材切片がプレスベール1に対して横方向に引張られると、引剥して解消することができる。」(第9頁第23行?第10頁第6行)
(9)「押圧ビームは全面的にオーバラップもしくは結合個所10に作用し、ストライプ状又は点状の単個ポンチを有していないこともできる。・・・(中略)・・・
さらに包装材切片50607の材料の選択にも択一性がある。ポリエチレンの他にも他のプラスチック又は他の形弾性でかつ耐引張り強度もしくは伸張強度の大きい材料を用いることもできる。さらに材料の混合も可能であり、種々異なるプラスチックを使用することもできる。」(第11頁第10?末行)
上記(1)?(9)の記載事項及び第1?5図の図示内容を総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲第1号証発明」という。)が記載されていると認められる。
「繊維状の材料がプレスボックス17に充填され、かつプレスポンチ3,4で数100t、例えば500tの高い圧力下でベール1に圧縮され、ベール1は約300-700kgの高い重量を有し、
ポリエチレンから製造された包装材切片である、該ベールの周囲にあてられかつ固定された天井5と底6を形成する包装材切片及び腹帯の形でプレスベール1の周囲に巻付けられるの第3の包装材切片7の弾性の包装材切片を用いてベールプレス内で包装され、
天井5と底6を形成する包装材切片と第3の包装材切片7とは、結合個所10において横方向に互いに間隔をおいて点状又はストライプ状に互いに圧着して結合11を行ない、
プレスベール1のために全面的に閉じた包体又は包装が形成されることで、
上記結合11は普通のベール力に対し十分な強度をもたらし、
プレスポンチ3,4による負荷をプレスベールから除いたあとでプレスベールの形を維持するためには十分な内部引張り強度及び伸張強度を有していて、
たがで結合することを不要とした、
繊維状の材料のプレスベール。」

2.甲第2号証
甲第2号証には、第1?11図とともに以下の記載がある。
(1)「In the baling and packaging under compression of materials which expand when the pressure is released, for example many fibrous materials, it is desirable to save labour and save time by making as many as possible of the individual operations involved automatic.」(第1頁第9?15行、和訳(請求人が提出した全文訳[0002]参照、以下同様。):圧力を解放すると膨張する材料(例えば多くの繊維材料)の圧縮下での梱包及び包装では、個々の作業を可能な限り多く自動化させることによって労働及び時間を節約することが望ましい。)
(2)「The plastic skinned bale formed by the process of the present invention is insensitive to impacts because the skin is flexible. The package is unaffected by rain or moisture and the skin yields sufficiently to absorb the expansive pressure of the baled material. The wrapping material has a negligible weight compared with two or three layers of corrugated cardboard, and in the case of plastic bag parts, can be conveniently stored, stacked flat on top of each other. Each bag part can be easily opened out before use and the problem of supporting the walls of the second bag part as it is pushed into the first bag part is solved by inverting the bag and pushing it in base first. The walls of the bag-part are then supported by the sides of the end wall.As already mentioned the two bag parts are then welded together and on release of the baling pressure the second bag part is forced inside out to assume a normal cap shape by the expansive pressure of the baled material.」(第2頁第66?89行、和訳([0008]参照):本発明のプロセスによって成形されるプラスチックで覆われたベール(plastic skinned bale)は、外皮が可撓性であるために衝撃に影響を受け難い。包装物は、雨又は湿気に影響を受けず、外皮は梱包材料の膨張圧を十分に吸収するように対応する。包装材料(wrapping material) は、2つ又は3つの層の段ボールに比して重量がわずかであり、プラスチック袋部の場合では、便宜的に貯蔵され、互いの上に平らにスタックされることができる。各袋部は、使用前に容易に開けることができ、第2の袋部の壁が第1の袋部に押し込まれる際にその壁を支持することの問題は、袋を裏返して先にベースに押し込むことによって解決される。この場合、袋部の壁は、端壁の両側部によって支持される。既に述べたように、この場合、2つの袋部が一緒に溶接され、梱包圧の解放時に、第2の袋部が梱包材料の爆発圧によって通常のキャップ形状を帯びるように内側を外側に押される。)
(3)「The packaged bale may be tied loosely around with cord or ribbon before the packaged material is allowed to expand by relatively moving the end walls apart, so that on expansion the volume of the bale increases and pulls the tying cord or ribbon tight. However, the packaged bale need not necessarily be tied, depending on the nature of the material being baled and on the strength of the wrapping material used.」(第2頁第103?112行、和訳([0009]参照):包装されたベールは、コード又はリボンを用いて緩やかに結束されてから、包装された材料を端壁を離すように相対移動させることによって膨張させることができ、それにより、膨張時に、ベールの容積が増し、結束用コード又はリボンをきつく引っ張る。しかしながら、梱包されている材料の性質に応じて、また、用いる包装材料の長さに応じて、包装されたベールは必ずしも結束される必要はない。)
(4)「Each bagbase 8 and bag-cap 6 has a bottom, four side walls and an open mouth, and is made of a flexible, weldable synthetic plastics material. As explained earlier, the bag-caps 6 are shallow in comparison with the bag-bases 8 which are deep.」(第3頁第114?120行、和訳([0017]参照):袋ベース8及び袋キャップ6は、静止プレスボックス4の断面に対応する矩形断面を有する。袋ベース8及び袋キャップ6はそれぞれ、底面、4つの側壁及び開いた口を有し、可撓性の溶接可能な合成プラスチック材料から作製される。)
(5)「For the subsequent welding process, i.e.the welding of the bag-cap part to the bagbase part after the base has been filled with fibrous material, there are welding devices 31, as shown in figure 4, in the sidewalls of the stationary press box 4, with welding heads 32 which can be driven inwards for effecting the welding. The welding heads 32 are positioned above the level of the bagbase mouth, to give room below for the spreader fingers 21.
The process of forming, bagging and tying a bale of fibrous material is as follows.」(第4頁第78?90行、和訳([0020]?[0021]参照):次の溶接プロセス、すなわち、袋ベースが繊維材料で満たされた後での袋ベース部への袋キャップ部の溶接の場合、静止プレスボックス4の側壁には、溶接を行うために内方に駆動することができる溶接ヘッド32を有する溶接装置31(図4に示す)がある。溶接ヘッド32は、スプレッダ指21用に下側に余地を与えるように、袋ベースロの高さ位置よりも上に位置する。
繊維材料のベールを成形し、袋状にし(bagging)、且つ結束するプロセスは以下の通りである。)
(6)「In the next stage of the process, the retainer fingers 16 are swung outwards, releasing the partly compressed plug in the box 3b so that it expands rapidly upwards, propelling a blast of air which inflates the bag-base part 8 positioned above the box 3b in the stationary press box 4. ・・・(中略)・・・
In the next stage, the upwardly acting plunger 14 pushes the fibrous material up into the bag-base part 8, compressing the material and pushing the bag-cap part 6 up into the mouth of the bag-base part 8, as represented in figure 8. ・・・(中略)・・・
Also before this, the welding heads 32 are actuated, as represented in figure 9, squeezing the two overlapped layers of bag material against the sides of the tying plate 10, whereupon the weld is made. However, no weld is made at the locations of the tying grooves. These locations are subsequently covered over by the tying cords or ribbons 34 as represented in figure 10. The tying is done in the press in known way, but the tying cord or ribbon is not drawn tight. When the tie has been made, the plunger 14 travels downwards, taking the tying plate 10 down with it. As a result the fibrous material in the bag expands slightly and pushes the bag-cap part 6 inside out, as represented in figure l1. This brings the tying cord or ribbon up tight so that a tightly tied, bagged bale of fibrous material is formed.
However, it is not always necessary to tie the bagged bale. In some cases it is sufficient to leave the two bag parts merely welded together at their edges, in which case the weld is made continuous all the way round.To obtain a continuous weld, the tying plate 10 is advanced until the continuous edge of the tying plate, or the edge of the plunger 14 comes opposite the welding heads 32. As a further possibility, a continuous weld may be made, and the bagged bale then tied as well, the tying plate 10 being retracted after the welding until its tying grooves emerge, allowing the bagged bale to be tied.
・・・(中略)・・・
The preferred example of the process in accordance with the invention, which has been described above, is for forming bagged bales of the highest quality, i.e. in which the bale material is completely enclosed. ・・・(中略)・・・The product is a wrapped bale, for example, of rags, cleaning wads and the like, which is not protected at the sides.」(第5頁第8?102行、和訳([0024]?[0029]参照):プロセスの次の段階において、リテーナ指16は外方へ揺動させられ、ボックス3b内の部分的に圧縮されたプラグを解放すると、それが上方へ急速に膨張し、静止プレスボックス4のボックス3bの上方に位置する袋ベース部8を膨張させる突風を発生させる(propelling)。・・・(中略)・・・
図8に示されるように、次の段階において、上方へ動作するプランジャ14は袋ベース部8へ繊維材料を押し上げ、その材料を圧縮し、袋ベース部8の口へ袋キャップ部6を押し上げる。・・・(中略)・・・
図9に示されるように、また、この前に、溶接ヘッド32を作動し、結束用プレート10の側部に対して袋材料の2つの重ね合わせられた層を締め付けて溶接が行われる。しかしながら、結束用溝の位置では溶接は行われない。これらの位置は次に、図10に示されるように、結束用コード又はリボン34によってカバーされる。結束は知られた方法でプレスにおいて行われるが、結束用コード又はリボンはきつく引っ張られない。結束が行われると、プランジャ14は下方へ移勤し、それにより、結束用プレート10を下方へ行かせる。結果として、図11に示されるように、袋内の繊維材料がわずかに膨張して袋キャップ部6の内側を外側に押す。これによって、結束用コード又はリボンがきつくなり、繊維材料のきつく結束される袋状ベールが成形される。
しかしながら、袋状ベールを結束することは必ずしも必要ではない。或る場合では、2つの袋部が単にそれらの縁で一緒に溶接されるだけのままで十分であり、その場合には、溶接は全ての部分で連続的に行われる。連続溶接を得るには、結束用プレート10は、当該結束用プレートの連続縁又はプランジャ14の縁が溶接ヘッド32に対面するまで前進する。他の可能性として、連続溶接を行うことができ、次いで、袋状ベールが同様に結束され、結束用プレート10は溶接後、その結束用溝が現れるまで後退し、袋状ベールを結束させる。
・・・(中略)・・・
本発明によるプロセスの好適な実施例(上述)は、最高品質の袋状べール(すなわち、ベール材料が完全に包囲されている)を成形するためのものである。・・・(中略)・・・製造物は、例えばぼろくず、洗浄詰物(cleaning wads)等の包装されたベールであり、その側面は保護されていない。)
上記(1)?(6)の記載事項及び第1?11図の図示内容を総合すると、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲第2号証発明」という。)が記載されていると認められる。
「ぼろくず、洗浄詰物(cleaning wads)等の圧力を解放すると膨張する繊維材料を静止プレスボックスでの下方の結束用プレートによる圧縮下で可撓性のプラスチックにより梱包及び包装され、雨又は湿気に影響を受けず、外皮は梱包材料の膨張圧を十分に吸収するように対応したべールであって、
袋材料の2つの重ね合わせられた層を締め付けて溶接することで2つのプラスチック袋部が一緒に溶接されていて、
結束用溝の位置では溶接は行わず又は連続溶接を行い、これらの位置で結束用コード又はリボン34によってカバーされ、コード又はリボンを用いて緩やかに結束され、梱包圧の解放時に、第2の袋部が袋内の繊維材料の爆発圧によってわずかに膨張して通常のキャップ形状を帯びるように内側を外側に押されて膨張し、膨張時に、ベールの容積が増し、結束用コード又はリボンをきつく引っ張り結束されるもの、
或いは、梱包されている材料の性質に応じて、また、用いる包装材料の長さに応じて、包装されたベールは必ずしも結束される必要はないものでもあって、2つの袋部が単にそれらの縁で一緒に全ての部分で連続的に溶接されるものであり、
好適には、ベール材料が完全に包囲されている、最高品質の袋状べール。」

3.甲第3号証
甲第3号証には、第1?8図とともに以下の記載がある。
(1)「This invention relates to packaging filamentary tows into boxes or other suitable containers in such manner that after storage or transport the tow may be continuously and evenly withdrawn for further processing for example into spun yarn.」(第1頁第9?14行、和訳(請求人が提出した全文訳参照、以下同様。):本発明は、保管又は運送の後に、例えば紡績糸に更に加工するための、トウを連続的にかつ均一に引き出せる方法による箱又は他の適切なコンテナ内へのフィラメント状トウの梱包に関する。)
(2)「The open topped container may be closable so as to form a transportable carton. Alternatively the compacted tow may be removed from the container and then packed in a carton; and it is possible for the liner merely to be strapped for instance with steel bands for handling as a bale. The first two alternatives are preferred in order to prevent disturbance of the tow and promote evenness during with-drawal.」(第1頁第51?60行、和訳:頂部開口型コンテナは、輸送可能なカートンを形作るため、閉鎖可能であってもよい。また、圧縮されたトウは、コンテナから移動し、引き続きカートンに梱包されてもよく、また、ベール梱包として取り扱うよう、例えばスチールバンドでライナを単に縛ることもできる。最初の2つの代替案は、トウの乱れを防ぎ、引き出しの際の均一さを促進するにために好ましい。)
(3)「Referring to the drawings, Figure 1 shows an empty container (1) with an extension (2), clamped into position by wing nuts and bolts 2A and 2B and an air impermeable liner (3) folded into position. Figure 2 shows a sideways laying mechanism (4) for a filamentary tow (5). This is synchronised with slower back and forth movement mechanism indicated at (6) for the container (1) to ensure uniform laying of the tow in layers of over substantially the whole plan area of the container. When the liner (3) is filled with tow (5) feeding is interrupted, the tow is cut and a vacuum probe (7) is inserted into the liner, and laid on top of the two without disturbing the lay of the contents. Wings nuts and bolts (2A) and (2B) are unclamped so that extension (2) may telescope over the container (1), as shown in Figure 5. The liner is then made airtight around the probe and evacuation of the air from the liner is begun with the probe resting on the top layer of the tow, without burying it. The liner may be simply gathered up round the probe and tightened round the tube of the probe as shown in Figure 4. The liner with its content contracts, and as the liner bag wrinkles and shrinks it takes the extension (2) progressively down with it. On completion of evacuation to a pressure of 380 mm. of mercury, the extension (2) may be withdrawn. A hinged side door (9) is opened as shown in Figure 6 and the liner with its contents of filamentary tow pushed out from the container onto a roller table conveyor as shown in Figure 7, tipped on one side and inserted into an open cardboard packing case (11) after rolling down the incline of the roller table conveyor.In one form of the apparatus the packing case is steadied against a pivoted platform which can be tilted upright as shown in Figure 8. Lid side flaps (13) and (14) as well as back and front flaps (not shown) are closed and the packing box (11) is strapped, the probe withdrawn,the carton sealed, and made ready for dispatch.」(第2頁第1?44行、和訳:図面を参照すると、図1は、ウイングナットとボルト2A及び2Bによって所定の位置へクランプされた延長部(2)を有する空コンテナ(1)と、所定の位置へ折り畳まれた空気不透過性のライナ(3)を示す。図2は、フィラメント状のトウ(5)の横向き並置機構を示す。これはコンテナの実質的な全平面において各層にトウを均一に並置するため、コンテナ(1)の(6)で示されるよりゆっくりした前後の動作機構と同期が取られる。ライナ(3)がトウ(5)で充たされると、供給が中断され、トウは切断され、真空プローブ(7)がライナへ挿入され、内容物の配置を妨害せずに、トウの頂部に置かれる。図5に示されるように、ナットとボルト(2A)及び(2B)のクランプが外されると、延長部(2)がコンテナ(1)上に伸長される。次に、ライナはプローブの周囲で気密にされ、ライナからの空気の排出が、トウの上層面上にプローブを静止させながら、それを埋めることがないようにして、開始される。図4に示されるように、ライナはプローブの周囲で単に集められ、プローブの筒の周囲で締められる。内容物を有するライナが収縮し、ライナ袋がしわになって縮むと、延長部(2)が漸進的に下降する。380mmHgの圧力に排気が完了すると、延長部(2)は引き取られてもよい。図6に示されるように、ヒンジ状の側部ドア(9)が開かれ、図7に示されるように、フィラメント状のトウの内容物を有するライナはローラテーブルコンテナの傾斜へ転がり落ちた後、開放したボール紙の包装ケース(11)へ挿入される。図8に示されるように、装置の一形式において、包装ケースは上方に傾斜できるピボット状のプラットホームに対して安定している。前後のフラップ(図示せず)と同じように、蓋側のフラップ(13)及び(14)が閉じられ、包装ケース(11)がひもでくくられ、プローブが引き取られ、カートンがシールされ、搬送準備が行われる。)

4.甲第4号証
甲第4号証には、「Packaging for compressed fibers, filaments or cabled tows」の発明が記載されており、第1図とともに以下の記載がある。
(1)「The following example and the drawing FIG.1 illustrate the packaging of the present invention, but are not intended to limit the scope of the invention. By reference to FIG.1, numerals 1, 2 and 3 designate the outer portions of the wrapping and numeral 4 designates the areas of overlapping .
EXAMPLE
A tow of endless cellulose acetate filaments of a total titer of 50,000 dtex whose individual filaments had a titer of 2.8 dtex and 19 to 20 crinkles per centimeter was compressed by means of a known machine into a bale of density 0.37 g/cm^(3).
The bale weighed 320 kg and had the following dimensions:
Length: 1287 mm
Width: 737 mm
Height: 843 mm.」(第2欄第11?28行、和訳(請求人が提出した部分訳参照。):以下の実施例及び図1は、本発明のパッケージを示すが、本発明の範囲を限定するものではない。図1によれば、符号1,2,3は包装の外側部分を示し、符号4は、オーバーラップしている領域を示す。
実施例
個々の繊維の力価が2.8dtexで1cmに19?20しわのある総力価50,000dtexの酢酸セルロース長繊維のトウは、公知の機械によって密度0.37g/cm^(3)のバーレに圧縮された。
バーレは重量320kgで、以下のサイズである。
長さ:1287mm
巾 : 737mm
高さ: 843mm)

5.甲第5号証
甲第5号証は、「cigatow」に関するパンフレットであって、「CIGATOW」と側面に記載されストラップが掛けられた直方体の写真とともに以下の記載がある。
(1)「Packaging Specifications
CIGATOW is packed in 1.0 to 1.2 cubic meter (approximate size) bales which contain approximately 360kg to 500kg of product. The standard packaging specifications are as follows:」
(2)「The weight and size of CIGATOW,when packaged in bales,are shown in the following table.
Net Weight (kg):Dimension(mm);length,width,height:Size(cubic meters)
360 : 1050 , 780 , 1100 : 0.9
420 : 1050 , 910 , 1100 : 1.1
500 : 1140 , 980 , 1100 : 1.3」

6.甲第6号証
甲第6号証には、「布団圧縮包装用複合フイルム」の発明が記載されており、以下の記載がある。
(1)「最内層として、エチレン-酢酸ビニル共重合体を主成分として凝集力が200?600gf/15mm幅の凝集破壊性を有するシール・ピール層を設けるとともに、最外層にポリアミド樹脂層を設けたことを特徴とする布団圧縮包装用複合フイルム。」(請求項1)
(2)「【実施例】複合フイルムの層構成を下記構成の5層品とした。
[ナイロン6/接着性樹脂/ナイロン6/EVA/シール・ピール層]」(段落【0008】)

7.甲第7号証
甲第7号証には、「包装体」の発明が記載されており、図1?6とともに以下の記載がある。
(1)「従来、例えば真空脱気包装においては、二軸延伸ナイロンと低密度ポリエチレンフィルムとをラミネートしたものが一般に使用されている。特に、米などは、品質の安定を図り、また、カビ類やこくぞう虫の発生を防止するなどの目的で、真空脱気が不可欠とされている。そこで、かかるラミネートフィルムからなる包装体中に、米などの穀類を充填し、酸化防止、品質保持、殺菌などの目的で、真空脱気を行い、当該真空脱気後に流通過程に載せるようにしている。」(段落【0002】)

8.甲第8号証
いわゆるパラメータ発明に関するものについて、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合しておらず、特許法旧36条5項1号に違反するとした特許異議の決定についての知的財産高等裁判所の判決である。

9.甲第9号証
フィルムやシートの張力の特性を決定するための条件が指定され、上記規格の図1?3には試料の形状が図示されている。

10.甲第10号証
甲第10号証は、本件特許発明に係る出願の優先日後に公開されたものではあるが、被請求人の出願に係る国際公開パンフレットであって、「HIGHLY COMPRESSED FILTER TOW BALES」の発明が記載されており、その第2頁第6?8行には「W(a)hrend vor 10 Jahren im Durchschnitt Werte von 350 kg/m^(3) (u)blich waren, liegt die Packungsdichte von Filter Tow Ballen gegenw(a)rtig zwischen 450 und 500 kg/m^(3).」(綴字記号「ウムラウト」を有する文字は「()」で囲んで代替した。和訳(請求人が提出した部分訳参照。):10年ほど前から350kg/m^(3)のトウベールの充填密度は通常であり、現在ではトウベールの充填密度は450?500kg/m^(3)の状態にある。)

11.甲第11号証
甲第11号証は、甲第1号証に対応する米国出願の特許公報である。

12.甲第12号証
甲第12号証には、「プレスべールを包装する方法及び装置」の発明が記載されており、第1?9図とともに以下の記載がある。
(1)「ベールプレス上でプレスベールを2つのカバーシート及び1つの胴帯によって包装する方法であって、プレスラムとプラスベールとの間に締め込まれたカバーシートを折り曲げてプレスベールの側面に当て着け、かつ胴帯を側方からプレスベールの回りに掛ける形式のものにおいて、カバーシート(6,7)の当て着けに際して、プレスベール(4)に沿って運動可能な折り曲げフレーム(10)によって角隅範囲でカバーシート(6,7)に側方へ突出する折り目ひだ(9)を形成し、次いで該折り目ひだ(9)を垂直方向及び側方へ運動可能な折り曲げフィンガー(13)によってプレスベール(4)上へ折り重ねて、当て着けかつ保持し、次いで胴帯をプレスベール(4)の回りに巻き掛け、この場合、該胴帯を前記折り目ひだ(9)及び前記折り曲げフィンガー(13)上に掛けて、次いで該折り曲げフィンガー(13)を行程運動若しくは下降運動によって前記胴帯の下側から引き抜くことを特徴とする、プレスベールを包装する方法。」(請求項1)
(2)「このような方法により、カバーシートが全体的に面で接する覆いとしてかぶせられる。次いて、胴帯がプレスベール、カバーシート及び折り目ひだの回りに掛けられる。角隅範囲における折り目ひだの規定された形成及び最終位置に基づき、折り目ひだと胴帯との最大可能なオーバーラップが生ぜしめられる。胴帯が折り目ひだ、ひいてはカバーシートを申し分なく保持する。従って、プレス力を取り除いた後のプレスベールの膨らみ、即ち膨張に際してシート梱包が確実にかつ密に閉じられる。1つの巻掛け縛り箇所で足りて、十字形の巻掛け縛りは不必要である。」(第4欄第7?18行)
(3)「さらに、異なるベール材料は荷重除去の際に異なって強く膨張する。このような差は150mmまで、及びそれ以上になる。このことは公知の梱包装置においてはしばしばプレス困難を生ぜしめる。このようなことは本発明に基づく実施例においては起こらない。さらに適合が自動的に行われる。」(第5欄第25?30行)
(4)「上部シート6及び底部シート7は、以下に述べる形式でプレスベール4の回りに被せられ、このプレスベールにフードのように密接に接触する。次いで胴帯をプレスベール4に掛け、この胴帯が被せられたカバーシート6,7とオーバラップする。これらのシートは最後に巻掛け縛り装置17によって固定され、この場合、プレスベール4の広幅側19の巻掛け縛りで十分である。」(第6欄第30?36行)
(5)「この水平方向運動及び連行によって、生じるベール大きさ、場合によってはベール膨張に対する完全な折り曲げ装置8の自動的な適合が行われる。・・・(中略)・・・プレスベール4の包装が終了すると、レーキ11が折り曲げフィンガー13と一緒に持ち上げられ、シート梱包から抜き取られる。相応に下側のロッド16が折り曲げフィンガー13と一緒に降下させられる。折り目ひだ9が少なくとも1つの巻掛けベルトによって所定の位置に確保され、プレスベール4の膨らみに際してももはや無制御に当て着け位置から離されない。
・・・(中略)・・・
完全に包装されたプレスベール4の押し出しの後に、再びプレス容器5が降下させられ、これによって扱きフレーム14が再び下側のプレスラム3における出発位置にもたらされる。」(第10欄第7?35行)

13.甲第13号証
甲第13号証は、甲第1号証に記載された発明について、該発明と同様のフィルタートウのヒートシールによる完全密封シールの包体(べール)を試作し、その圧力を測定するとともに計算値との一致を確認した請求人従業員の実験証明書(1)を添付するとともに、上記実験証明書(1)及び計算から、甲第1号証に記載された発明のものも少なくとも大気圧より0.01bar低い気圧であると結論付けた鑑定書である。

14.甲第14号証
甲第14号証は、甲第1号証に記載された発明について、甲第13号証に添付した実験証明書(1)を添付するとともに、プレス圧を解放した後のトウベールの膨張力に係る圧力の測定をした請求人従業員の実験証明書(2)並びに甲第1号証に対応する米国出願の甲第11号証、更にその甲第11号証及び甲第1号証が類似の技術の例として紹介したものの1つであるドイツ公報に対応する日本公報である甲第12号証を参照して、グリセリンを併用したドットシールによる、甲第1号証に記載された発明と同様のフィルタートウの包体(べール)を試作し、その圧力を測定した請求人従業員の実験証明書(3)を添付し、甲第1号証に記載された発明のものは、ドットシールであっても、ある程度の時間、少なくとも大気圧より0.01bar低い気圧であると結論付けた鑑定書である。

15.甲第15号証
甲第15号証は、数値範囲からなる4条件を特定したことで課題解決した発明について、各条件の数値限定が課題解決に役立っていることを充分に裏付けていなければならないと説示した昭和55年9月8日付けの審決である。

16.甲第16号証
甲第16号証には、「圧縮されたべールを梱包するための方法」の発明が記載されており、第1?21図とともに以下の記載がある。
(1)「梱包のため仕上げ圧縮以前にプレスラム6,7とベール14との間に底板18とカバー16が移動され、これらは仕上げ圧縮の際上方および下方においてベール14を押圧する。この状態でこの底板とカバーはベールと共に帯状ラッピング材料15により側方でくるまれ、帯をかけられ固定される。底板18とカバー16は異なる固い或いは可撓性の材料、例えばシート或いは織物から成る。以下にシートを代表として説明を行う。」(第6欄第47行?第7欄第4行)
(2)「超音波溶接装置33もまた帯状ラッピング材料15および底シート18を付着溶接するために付加的に適当な走行機構を有していてもよい。」(第12欄第41?43行)

第7 無効理由の検討
1.訂正について
上記第2の2.で述べたとおり、訂正は認められるものであって、請求人の主張は採用できない。
第4の1.(1)及び(4)については第2の2.(2)で述べたとおりであり、同じく、第4の1.(2)については第2の2.(3)で、第4の1.(3)については第2の2.(15)で述べたとおりである。

2.無効理由1について
請求人の主張する無効理由1について検討する。
請求人は、本件特許発明は、甲第1及び甲第2号証に記載の発明とは数値限定のみで相違するが、これと区別でき、課題が解決できるための数値限定の根拠が充分に裏付けられておらず、技術的意義が不明であり、特殊パラメータによる物の特定を含む場合であって、「100Nの力を作用させたとき、」「少なくとも90%が、平坦な板から約40mm以下離間する程度」について、特許法第36条第4項第1号における委任省令要件を満たさないとしている。
本件特許発明1については、特許明細書等の段落【0004】,【0005】,【0006】,【0008】,【0010】,【0016】,【0017】,【0021】等の記載を参酌すると、べールの頂部と底部に膨張が生じ積み上げが阻害されたり移動が妨害され、ストラップを用いるとくびれが生じ繰り出しが妨害されるという課題を解決するための手段として、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から約40mm以下離間する程度に、ベールの頂面及び底面が平面であるようにすること、フィルタートウのパッケージ包装材を気密にシールするとともに、少なくともベールが梱包された後に外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている状態にすること、負圧の制御方法の記載があることが認められるのであって、その課題との関係での数値限定を付した技術的意義を理解できるものと解され(判決書第24頁第22行?第27頁第22行参照。)る。
つまり、ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのべールにおいて、くびれを生じるストラップによらなくても、向きを変えたり特別なパレットを用いる等の作業を行うことなく積み上げられるように、膨張の量を抑えて、膨らもうとするベールを積み上げても不安定にならない程度に、少なくとも0.01barの負圧を制御して平担にするものと理解できる。
そして、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明が、ポリエチレンから製造された弾性の包装材切片を用いて包装された繊維状の材料のプレスベール、又は繊維材料を圧縮下で可撓性のプラスチックにより梱包及び包装されてベール材料が完全に包囲されている袋状べールであっても、そこには平坦さに関する構成も示唆もなく、上記のような本件特許発明1とは異なるものであり、また、本件特許発明1は、上記のように数値限定を付した技術的意義を理解でき、かつそのような平坦さとするための負圧の制御方法の記載があることが認められ、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明と区別ができないというものでもないから、特許法第36条第4項第1号における委任省令要件を満たさないとはいえない。
さらに、請求項1を引用する請求項2?24についても同様の程度にその数値限定の技術的意義が理解できるといえるのであって、特許法第36条第4項第1号における委任省令要件を満たさないとはいえない。
また、技術的意義が明確でないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないとも、公知技術である甲第1又は2号証に記載の発明との関係が理解できないから発明の範囲が不明確であり、同条第6項第2号に規定する要件を満たさないともいえない。
そうすると、無効理由1についての請求人の主張には理由がない。

3.無効理由2について
請求人の主張する無効理由2について検討する。
(請求項1について)
(1)について
「頂側部」及び「底側部」の用語そのものは発明の詳細な説明に記載がないものの、「ベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い」と使われているものであって、本願の明細書の段落【0001】には「本発明は、ベールの頂部または底部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い、梱包され、ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベール」との記載があり、同様の記載が段落【0004】,【0006】及び【0009】等にもあり、同じ請求項1にも「ベールの頂面および底面」との記載がある。そして、上記用語は頂側の部分、底側の部分と解されるものでもある。
そうすると、「ベールの頂側部と底側部」は「ベールの頂面および底面」であることは明らかであって、全く同じ用語でないとしても、請求項1に記載された発明が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
(4)について
そもそも0.01barの負圧はベールが梱包された後に発生させるものであり、べールに加わる外圧に対する圧力であることは当業者にとって自明である。そして段落【0016】には「この負圧は少なくとも0.01barであることが好ましく」と記載されているのであるから、請求項1に記載された発明が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
(請求項2について)
(5)について
訂正後の請求項2は、べールが少なくとも約10N/15mmの引裂き強度を有する「フィルム」を有すると記載されているので、請求人の主張には理由がない。
(請求項3について)
(6)について
訂正後の請求項3は「0.9m^(3)よりも高い梱包容量、および/または350kg/m^(3)よりも高く、特に800kg/m^(3)未満の梱包密度」であり、訂正後の段落【0013】には「ベールの容量を0.9m^(3)よりも高くする、および/または梱包密度を350kg/m^(3)よりも高く、特に800kg/m^(3)未満とすることが有利である」と記載されていて、請求人の主張には理由がない。
(請求項8について)
(7)について
請求項8には、「前記内接矩形内に位置する前記ベールの頂部側表面の90%が、25mm以下、好ましくは、10mm以下の距離で前記平坦板から離間することを特徴とする」と記載され、引用する請求項1に「ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から約40mm以下離間する程度に、前記ベールの頂面および底面が平坦であり;」、段落【0012】に「本発明の原理の範囲内では、前述の内接矩形内に位置するベールの頂面の範囲の90%が、約25mmを超えない、好ましくは約10mmを超えない距離で平坦板から離間するのが特に好ましい。」との記載があり、上記用語は頂部側の表面と解されるものであるから、請求項8に記載された発明が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
(請求項9について)
(8)について
訂正後の請求項9には「ポリエチレン、特にLDPE、または改良ポリエチレン(LLDPE)から成る梱包材料」と記載されているから、請求人の主張には理由がない。
(請求項11について)
(9)について
訂正後の請求項11には「前記梱包材料が」と記載され、引用する訂正後の請求項1や5には梱包材料がフィルムであることが記載されているから、梱包材料はフィルムであるので、段落【0041】の記載と矛盾せず、請求人の主張には理由がない。
(請求項12について)
(10)について
訂正後の請求項12には「前記ベールが厚紙または合成布地から成る追加の移動用梱包を備え、さらにストラップで包装されている」と記載され、特許明細書等の段落【0015】に「所望により、パッケージの包装後、あるいはフィルム自体をシールする、つまりブロック形態のベールが完了した後に、厚紙、合成布地等の輸送用梱包をフィルムの周囲に配置することが可能である。その後、この輸送用梱包にストラップを施すことができる。」と記載されており、請求人の主張には理由がない。
(請求項13(訂正により削除された)について)
(11)について
訂正により削除されており、請求人の主張には理由がない。
(請求項14(訂正後の13)について)
(12)について
上記(4)で述べたように、そもそも0.01barの負圧はベールが梱包された後に発生させるものであり、べールに加わる外圧に対する圧力であることは当業者にとって自明である。そうすると、請求人の主張には理由がない。
(請求項19(訂正後の18)について)
(13)について
訂正後の段落【0025】には「約0.2?0.40bar」と記載されており、請求人の主張には理由がない。
(請求項21(訂正後の20)について)
(14)について
訂正後の請求項20には「5g/(m^(2)・d)未満、好ましくは2g/(m^(2)・d)未満」と記載されているから、請求人の主張には理由がない。
(請求項22(訂正により削除された)について)
(15)について
訂正により、請求項22は削除されている。
また、請求項22に記載されていた事項は、実質的に訂正後の請求項1に記載されているが、「10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満」と訂正されているので、その点からも請求人の主張には理由がない。
(請求項23(訂正後の21)について)
(16)について
訂正後の請求項21には「200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満」と記載され、訂正後の段落【0029】には「好ましくは10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、また、好ましくは200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、さらに好ましくは、20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満である。」と記載されているから、請求人の主張には理由がない。
(請求項2?26(訂正後の2?24)について)
(18)について
上記「(1)について」?「(16)について」で述べたように、上記請求人の主張はいずれも理由がないから引用する請求項2?24が同様の無効理由を有するとはいえない。
(請求項1?26(訂正後の1?24)について)
(19)について
本件特許発明1については、上記2.で述べたように、特許明細書等に、べールの頂部と底部に膨張が生じ積み上げが阻害されたり移動が妨害され、ストラップを用いるとくびれが生じ繰り出しが妨害されるという課題を解決するための手段として、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から約40mm以下離間する程度に、ベールの頂面及び底面が平面であるようにすること、フィルタートウのパッケージ包装材を気密にシールするとともに、少なくともベールが梱包された後に外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている状態にすること、負圧の制御方法の記載があることが認められる(判決書第24頁第22行?第27頁第22行参照。)のであるから、課題と解決手段が特許明細書等に記載されているといえ、そうすると、特許請求の範囲に記載された発明は特許明細書に記載されているといえる。

以上(1)?(19)についての請求人の主張はいずれも理由がないから、本件特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとはいえない。
なお、請求人は平成22年3月15日付け弁駁書において、本件特許明細書等の段落【0011】の記載と本件特許発明1とは矛盾すると主張するが、本件特許発明1は上記2.でも記載したように特許明細書等の全体から理解できるものであって、本件特許発明1について明細書に記載された発明でないとも、発明が不明確であるともいえない。かえって、訂正により削除された訂正前の請求項13にその記載が対応していたことも勘案すると、上記請求人の主張は失当といわざるを得ない。

4.無効理由3について
請求人の主張する無効理由3について検討する。
(請求項1について)
(1)について
3.の「(1)について」で述べたように、同じ用語は発明の詳細な説明にないものの、その用語の指す意味は明りょうであり、発明の詳細な説明の記載とも対応している。
そうすると、発明が明確でないとはいえない。
(2)について
本件特許発明1については、上記2.で述べたように、べールの頂部と底部に膨張が生じ積み上げが阻害されたり移動が妨害され、ストラップを用いるとくびれが生じ繰り出しが妨害されるという課題を解決するための手段として、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から約40mm以下離間する程度に、ベールの頂面及び底面が平面であるようにすること、フィルタートウのパッケージ包装材を気密にシールするとともに、少なくともベールが梱包された後に外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている状態にすること、負圧の制御方法の記載があることが認められるのであって、その課題との関係での数値限定を付した技術的意義を理解できるものと解され(判決書第24頁第22行?第27頁第22行参照。)る。
そうすると、「妨害となるような膨張部分またはくびれ部分」については、積み上げが阻害されたり移動が妨害され、繰り出しが妨害されるという課題を解決する程度にまでこれを小さくするものといえ、発明が不明確であるとはいえない。
(4)について
訂正後の請求項1には、弾性梱包材料についてはフィルムであると記載されており、べールの高さが900mmであること等も合わせみると、フィルムのみで機械的に自己支持するものではなく、当該記載は弾性梱包材料で包装されたべールが機械的に自己支持すると理解できるものであるから、発明が不明確であるとはいえない。
(6)及び(7)について
数値限定自身、その範囲は明確である。
また、数値限定の意義について、上記2.で述べたように、特許明細書等の段落【0004】,【0005】,【0006】,【0008】,【0010】,【0016】,【0017】,【0021】等の記載を参酌すると、べールの頂部と底部に膨張が生じ積み上げが阻害されたり移動が妨害され、ストラップを用いるとくびれが生じ繰り出しが妨害されるという課題を解決するための手段として、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から約40mm以下離間する程度に、ベールの頂面及び底面が平面であるようにすること、フィルタートウのパッケージ包装材を気密にシールするとともに、少なくともベールが梱包された後に外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている状態にすること、負圧の制御方法の記載があることが認められるのであって、その課題との関係での数値限定を付した技術的意義を理解できるものと解されるものであるから、発明が不明確であるとはいえない。
その平坦さがべールの頂面の面積により影響するとしても、そのことのみで請求項1に記載された発明が不明瞭であるとはいえない。
また、数値範囲のみから9%の部分が平坦な板から100mm離れるものも包含するといっても、前提となる、ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのべールを弾性梱包材料で完全に包装したものにおいて、かつ妨害となるような膨張部分またはくびれ部分がないものであることから、発明が不明確であるとはいえない。
また、「少なくともベールが梱包された後に」についても、上記課題との関係でその意義が理解できるものであり、積み上げるときと規定されていなくても、その課題との関係で少なくとも0.01barの負圧を維持すべき時期は理解でき、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項2について)
(8)について
訂正後の請求項2は「前記ベールが、少なくとも10N/15mmの引裂き強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)のフィルムを有する」と記載されており、上記第2の2.の(2)で述べたとおり、上記事項は特許明細書等に記載されていて、技術的意味を理解できるとともに、発明が不明確であるともいえない。
また、「約」は訂正により削除された。
(請求項3について)
(9)について
上記3.の「(6)について」で述べたとおり、訂正後の請求項3と訂正後の段落【0013】は整合しており、その数値範囲も明確である。
また、梱包密度について、特許明細書等の段落【0009】に「梱包密度を300kg/m^(3)を超えた途端に問題が発生する。」と記載されており、本件特許発明の課題が顕著になり、その効果が明確となる範囲を限定したものと解される。梱包容量についても、段落【0013】に梱包密度と並び記載されていること、そして請求人が主張するように甲第5号証にも示される様なシーガートウにおいて通常採用され得るサイズといえることからみて、梱包密度と同様、本件特許発明の意図するサイズであって、その効果が明確となる範囲を限定するものといえる。
そうすると、請求項3について、その発明が不明確であるとはいえない。
(請求項5について)
(10)について
訂正後の請求項5には「前記梱包材料がプラスチック・フィルムである」と記載されており、引用する請求項1に「弾性梱包材料」と記載されているから、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項8について)
(11)について
上記3.の「(7)について」で述べたとおり、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項9について)
(12)について
上記3.の「(8)について」で述べたとおり、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項10について)
(13)について
訂正後の請求項10には「前記梱包材料」と記載され、引用する訂正後の請求項1や5には梱包材料が記載されているから、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項11について)
(14)について
訂正後の請求項11には「前記梱包材料」と記載され、引用する訂正後の請求項1や5には梱包材料が記載されているから、発明が不明確であるとはいえない。
(15)について
訂正後の請求項11には「100?400μmの厚さ」と記載され、発明の範囲は明確である。
また、上記3.の「(9)について」で述べたとおり段落【0041】の記載と矛盾せず、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項12について)
(16)について
上記3.の「(10)について」で述べたとおり、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項13(訂正により削除された)について)
(17)及び(18)について
訂正により削除されており、請求人の主張には理由がない。
(請求項14(訂正後の13)について)
(19)について
上記2.で述べたとおり、「外圧に対して少なくとも0.01barの負圧」について、技術的意味を理解でき、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項23(訂正後の21)について)
(24)について
上記3.の「(16)について」で述べたとおり、段落【0029】の記載と矛盾せず、発明が不明確であるとはいえない。
また、特許明細書等の段落【0029】には「この場合、真空が十分な時間継続し、パッケージが緩まずに、可能な限り小型に維持されることが保証される。」と記載されていて、その技術的意義が理解でき、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項24(訂正後の22)について)
(25)について
訂正後の段落【0031】には「機械強度に関連して、DIN EN ISO 527-3に従って測定した場合に、パッケージ包装材またはフィルムが、少なくとも約10N/15mm、好ましくは約100N/15mm以上、さらに好ましくは200N/15mm以上の引裂き強度を有することが推奨される。引用した値の各々は、フィルムの縦方向および横方向における最少引裂き強度値に関係する。フィルムで包装したベールが移動のために再度梱包されるか否かの関数として、引裂き強度に関連した特定の選択が行われる。これに関連して、使用可能な材料には、100μmの厚さで、15から30N/15mmの引裂き強度を有するPE、100μmの厚さで、150?300N/15mmの引裂き強度を有するPA6が含まれる。」と記載される。
特許明細書等の段落【0004】,【0005】,【0006】,【0008】,【0010】,【0016】,【0017】,【0021】等の記載を参酌すると、従来のべールでは、べールに付加した圧力が解放されると、これまで圧縮されていたフィルタートウの弾性復元力によって、べールの頂部と底部に膨張が生じることとなり、べールを安全に積み上げておくことができなくなるという課題、及び、フィルタートウの膨張によってストラップを施したべールのパッケージさえも破裂開封してしまうという課題あり、これに対し上記課題を解決するための手段(判決書第24頁第22行?第27頁第22行参照。)が開示されているといえる。
そうすると、上記段落【0031】におけるパッケージ包装材またはフィルムの引裂き強度は、上記課題である、べールの頂部と底部に膨張が生じることやフィルタートウの膨張によって破裂開封してしまうという課題に関した、適切な引裂き強度を開示するものと解され、その意味においてその技術的意義を理解でき、発明が不明確であるとはいえない。
また、「DIN EN ISO 527-3」に従って測定することについても、上記第2の2.(2)で述べたとおり理解でき、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項25(訂正後の23)について)
(26)について
上記「(25)について」で述べたとおりであって、発明が不明確であるとはいえない。
(請求項1?4,8,13?14,21?26(訂正後の1?4,8,14,21?24)及びこれらの請求項を引用する請求項について)
(28)について
上限又は下限の一方が限定されるのみであって他方が限定されないとしても、発明のその他の構成や、課題・作用・効果、その前提なども参酌すると、各請求項に記載された発明は明確である。

(請求項2?26(訂正後の2?24)について)
(29)について
上記「(1)について」?「(28)について」で述べたように、請求人の主張する上記理由から発明が不明確であるとはいえないので、これら引用する請求項について、同様の無効理由を有するとはいえない。

以上「(1)について」?「(29)について」で検討したとおり、請求人の主張はいずれも理由がないから、本件特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとはいえない。

5.無効理由4
請求人の主張する無効理由4について検討する。
(1)について
上記3.の「(1)について」で述べたように、「ベールの頂側部と底側部」は「ベールの頂面および底面」であることは明らかであるから、当業者が実施することができないとはいえない。
(3)について
上記4.の「(9)について」で述べたように、特許明細書等の段落【0009】に「梱包密度を300kg/m^(3)を超えた途端に問題が発生する。」と記載されており、本件特許発明の課題が顕著になり、その効果が明確となる範囲を限定したものと解され、発明の技術的意義が理解できないとはいえず、委任省令要件を満たしていないともいえない。
(4)について
上記4.の「(4)について」で述べたように、弾性梱包材料で包装されたべールが機械的に自己支持すると理解できるものであるから、当業者が実施することができないとはいえない。
(5)について
上記2.で述べたとおり発明の技術的意義を理解でき、当業者が発明を実施することができないとはいえない。また、委任省令要件を満たしていないともいえない。
(6)について
上記2.及び「(5)について」で述べたとおりである。特に、特許明細書等の段落【0008】,【0010】,【0016】,【0017】,【0021】等の記載や第1図及び段落【0044】,【0045】の第1図の説明を参酌すると、上下よりプレス装置3によりフィルタートウベール1は圧縮され、フィルム2で梱包・密封された後、プレス装置3の負荷が解放されると、フィルタートウベール1は上方へ膨張し高くなるものの、当該膨張に対して、頂面及びその周囲のフィルムの張力ではなく、負圧を制御することで膨張を制御して本件特許発明1の平坦さを得ることが記載されていると理解できる(被請求人が提出した平成22年1月29日付け回答書の第4頁第1?15行及び図1も参照。)。
さらに、特許明細書等の段落【0025】には「負圧の固定範囲の選択は、様々なパラメータ、特に梱包された材料のタイプと量、所望の梱包密度、使用するパッケージ包装材等に依存する。原則的に、真空または負圧が強力であるほど、より小型のパッケージが得られることに留意するべきである。負圧の増加も膨張低減の効果を有する。」、段落【0026】には「本発明にかかる工程で使用されるパッケージ包装材を考慮する限り、これは、発生された負圧の、経時的な所望の安定性と、梱包の所望の機械的安定性とが保証されるように選択されなければならない。経時的な所望の安定性は、梱包された材料のタイプと、これに使用される方法とによって、通常、数日?数ヶ月、さらには数年の間で異なる。」と様々なパラメータ、所望の条件によって変更されるべきものであることも記載されているのであるから、これらのパラメータや所望の条件に合わせて、負圧やその他の条件を変えるべきものであり、上記2.で述べた課題を解決するための手段により、「ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から約40mm以下離間する程度に」することを達成できることが示唆されているといえるのであって、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
(7)について
上記4.の「(6)及び(7)について」で述べたとおり、発明の技術的意義を理解でき、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
また、委任省令要件を満たしていないともいえない。
(8)について
上記「(5)について」?「(7)について」で述べたとおり、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
(9)について
上記3.の「(5)について」、4.の「(8)について」及び「(25)について」で述べたとおり、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
(10)について
上記3.の「(6)について」及び4.の「(9)について」で述べたとおり、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
また、委任省令要件を満たしていないともいえない。
(11)について
上記3.の「(7)について」で述べたとおり、その指す部分が不明とはいえず、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
(12)について
上記3.の「(8)について」で述べたとおり、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
(13)について
上記3.の「(9)について」で述べたとおり、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
(14)について
上記3.の「(10)について」で述べたとおり、発明の詳細な説明に記載がないとはいえない。
そして、上記2.や上記「(6)について」で述べたとおり、課題を解決するための手段が記載されているのであるから、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
(15)について
請求項13は訂正により削除されたので、請求人の主張は理由がない。
(16)について
上記「(7)について」及び上記4.の「(6)及び(7)について」で述べたとおりであって、発明の技術的意義を理解できず、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
また、委任省令要件を満たしていないともいえない。
(17)及び(18)について
特許明細書等の段落【0025】に「本発明にかかる工程では、周囲の圧力に対して約0.15bar?0.7bar低い負圧が発生されることが好ましい。」、「約0.2?0.40barの負圧が特に適切」と当該数値限定が記載されている。
そして、上記2.及び「(6)について」で述べたとおり、負圧に関してより好ましい範囲として記載されたものと理解でき、その数値限定の技術的意義が理解できる。
よって、当業者が発明を実施することができないとはいえず、委任省令要件を満たしていないともいえない。
(19)について
上記3.「(14)について」で述べたように、訂正後の請求項20には「5g/(m^(2)・d)未満、好ましくは2g/(m^(2)・d)未満」と記載されている。
そして、特許明細書等の段落【0030】に「水蒸気の透過性は、梱包の形態によって生じる機能には関連しないが、しかし、空気だけでなく水蒸気に対しても非透過性の梱包により、フィルタートウの製品含水量がこのような梱包によって維持され続けるという利点が得られる。これは、フィルタートウの場合において非常に重要である。これにより、ベール全体に渡って均一な含水量が得られ、また、周囲環境との湿度交換が生じることがない。」と記載されているのであるから、その技術的意義は理解でき、当業者が発明を実施することができないとはいえず、委任省令要件を満たしていないともいえない。
(20)について
請求項22は訂正により削除された。
なお、訂正後の請求項1に「10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満」と記載されているが、特許明細書等段落【0029】には当該事項が記載されている。
さらに上記4.の「(24)について」で述べたように、特許明細書等の段落【0029】には「この場合、真空が十分な時間継続し、パッケージが緩まずに、可能な限り小型に維持されることが保証される。」と記載されていて、その技術的意義が理解でき、当業者が発明を実施することができないとはいえず、また委任省令要件を満たしていないともいえない。
(21)について
上記4.の「(24)について」で述べたとおり、当業者が発明を実施することができないとはいえず、委任省令要件を満たしていないともいえない。
(22)及び(23)について
上記4.の「(25)について」で述べたとおり、当業者が発明を実施することができないとはいえず、委任省令要件を満たしていないともいえない。
(24)について
上記4.の「(9)について」で述べたとおり、当業者が発明を実施することができないとはいえず、委任省令要件を満たしていないともいえない。
(25) について
上記「(1)について」?「上記(24)について」で述べたとおり、上記理由に関する請求項を引用する請求項が同様の無効理由を有するとはいえない。
(26)について
上記3.「(19)について」で述べたとおり、課題と解決手段が特許明細書等に記載されているといえるのであるから、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
負圧の制御方法等も含めて記載されているのであるから、これらの示唆に基づいて、試行錯誤や実験等を行うことが当業者になし得ないとはいえない。

以上「(1)について」?「(26)について」で検討したとおり、請求人の主張はいずれも理由がないから、本件特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとはいえない。

6.無効理由5
(1)無効理由5(1)
請求人の主張する無効理由5(1)について検討する。
まず本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると、後者の「繊維状の材料のプレスベール」は「トウのベール」に相当する。
また、後者のプレスべールは、「繊維状の材料がプレスボックス17に充填され、かつプレスポンチ3,4で数100t、例えば500tの高い圧力下でベール1に圧縮され」るから前者と同様に「高圧縮した」ものであり、また「プレスポンチ3,4による負荷をプレスベールから除いたあとでプレスベールの形を維持する」から前者と同様に「ブロック形態」であって「ベールが、機械的に自己支持する」ものである。
さらに、後者は「ポリエチレンから製造された包装材切片である、該ベールの周囲にあてられかつ固定された天井5と底6を形成する包装材切片及び腹帯の形でプレスベール1の周囲に巻付けられるの第3の包装材切片7の弾性の包装材切片を用いてベールプレス内で包装され」るものであるから、前者の「弾性梱包材料内に」「包装され」ると同様の態様であり、かつ弾性梱包材料は「フィルム」であるといえ、かつ梱包されたものである。
そして、後者は「弾性の包装材切片を用いてベールプレス内で包装され」た後、「天井5と底6を形成する包装材切片と第3の包装材切片7とは、結合個所10において横方向に互いに間隔をおいて点状又はストライプ状に互いに圧着して結合11を行ない、プレスベール1のために全面的に閉じた包体又は包装が形成されることで、上記結合11は普通のベール力に対し十分な強度をもたらし、プレスポンチ3,4による負荷をプレスベールから除いたあとでプレスベールの形を維持する」ものであるから、前者と同様に「ベールの頂側部と底側部」及び「ベールの頂面および底面」を有するものであって、そのことからベールは高さを有しているといえ、また、1つまたはそれ以上の接続部分を備えている。
そうすると、本件特許発明1と甲第1号証発明とは
「梱包され、ブロック形態に高圧縮したトウのベールであって、
(b)前記ベールが、機械的に自己支持する弾性梱包材料内に包装され、かつこの材料は、1つまたはそれ以上の接続部分を備えているフィルムであって;
(d)前記ベールが、高さを有している
トウのベール。」の点で一致し、次の点で相違する。
相違点A:本件特許発明1は「フィルタートウのベール」であるのに対して、甲第1号証発明は「繊維状の材料のプレスベール」である点。
相違点B:本件特許発明1は「ベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い」ものであって、「(c)非開封状態のベールを水平面上に配置した状態で、平坦な板をベールの頂部に圧接させ、ベールの中心に対して垂直方向に100Nの力を作用させたとき、圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から40mm以下離間する程度に、前記ベールの頂面および底面が平坦であ」るのに対し、甲第1号証発明は「プレスポンチ3,4による負荷をプレスベールから除いたあとでプレスベールの形を維持するためには十分な内部引張り強度及び伸張強度を有していて、たがで結合することを不要とした」ものであるものの、上記のようなものかどうか不明である点。
相違点C:本件特許発明1は「(a)前記ベールが、少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度を有し」ているのに対して、甲第1号証発明は「プレスポンチ3,4で数100t、例えば500tの高い圧力下でベール1に圧縮され、ベール1は約300-700kgの高い重量を有し」ているものの、「プレスポンチ3,4による負荷をプレスベールから除いたあと」の「プレスベールの形を維持」している「たがで結合することを不要とした、繊維状の材料のプレスベール」の密度までは不明である点。
相違点D:本件特許発明1が「(d)前記ベールが、少なくとも900mmの高さを有して」いるのに対して、甲第1号証発明における高さは不明である点。
相違点E:本件特許発明1が「(b)前記ベールが、」「弾性梱包材料内に完全に包装され、かつこの材料は、対流に対して気密性を有する1つまたはそれ以上の接続部分を備えており、かつこの材料は、温度23℃、相対湿度75%で、DIN53,380-Vに従って測定される空気に関するガス透過率が10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満であるフィルムであって;(e)少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている」のに対して、甲第1号証発明は「天井5と底6を形成する包装材切片と第3の包装材切片7とは、結合個所10において横方向に互いに間隔をおいて点状又はストライプ状に互いに圧着して結合11を行ない、プレスベール1のために全面的に閉じた包体又は包装が形成されることで、上記結合11は普通のベール力に対し十分な強度をもたらし、プレスポンチ3,4による負荷をプレスベールから除いたあとでプレスベールの形を維持するためには十分な内部引張り強度及び伸張強度を有していて、たがで結合することを不要とした」ものである点。

そこで、上記相違点について検討する。
まず相違点B及びEについて検討する。
甲第1号証発明は、たがで結合することを不要とするものの、ベールの頂面および底面について、妨害となるような膨張部分またはくびれ部分を無くそうとするものではなく、どの程度に平坦とするかについても特定されていない。
また、甲第1号証発明は、「プレスベール1のために全面的に閉じた包体又は包装が形成される」ものであるものの、「結合個所10において横方向に互いに間隔をおいて点状又はストライプ状に互いに圧着して結合11を行な」うものであって、積極的に密封し負圧を制御しようとするものではなく、また、「プレスポンチ3,4による負荷をプレスベールから除いたあとでプレスベールの形を維持するためには十分な内部引張り強度及び伸張強度を有していて、たがで結合することを不要とした」ものであり、たがで結合することを不要とすることについては、包装材切片が十分な内部引張り強度及び伸張強度を有すること、つまり引っ張り強度によるものと解される。
そして、上記2.,4.の「(25)について」及び5.の「(6)について」で述べたように、本件特許発明1は、従来のべールでは、べールに付加した圧力が解放されると、これまで圧縮されていたフィルタートウの弾性復元力によって、べールの頂部と底部に膨張が生じることとなり、べールの頂部と底部に膨張が生じ積み上げが阻害されたり移動が妨害され、ストラップを用いるとくびれが生じ繰り出しが妨害されるという課題、及びフィルタートウの膨張によってストラップを施したべールのパッケージさえも破裂開封してしまうという課題を解決するものであって、相違点Bはこのような課題を解決する程度の平坦さに関しての構成であり、相違点Eはそのための負圧の制御手段についての構成であるといえる。しかしながら、甲第1号証発明は上記の平坦さを実現しようという課題を有するものでも、このような相違点B及びEに係る構成を具備するものでもない。
甲第3号証には真空プローブ(7)により380mmHgの圧力に排気することが記載されているものの、本件特許発明1のようなベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分を無くすために負圧を制御してそのような課題を解決する程度の平坦さにしようとすることは記載されておらず、さらには、本件特許発明1が不要にしようとしている、ボール紙の包装ケースに挿入されひもでくくられるものでもある。
請求人は平成22年3月15日付け弁駁書で甲第3号証に記載の発明を実施すると本件特許発明1の平坦さとなる旨主張するが、甲第3号証や被請求人が提出した参考資料3には、本件特許発明1の課題を達成する程度の平坦さとすることまでは記載されていない。
甲第4?7,10?12及び16号証にも上記のような課題及びそれを解決のための手段としての相違点B及びEに係る構成は示されておらず、また、当業者にとって自明の事項でもない。
甲第13及び14号証は、甲第1号証発明を実施すると0.01barの負圧が生じると結論づけた鑑定書であって、本件特許発明1の平坦さに関するものではなく、負圧の制御により上記の平坦さを得ることについては全く述べられておらず、かつその他の構成を含めて、甲第1号証発明を実施すると本件特許発明1となるとはいえない。
たとえ、従来よりストラップを用いたべールを積み上げて二段積みすることが行われており、甲第1号証発明はたがで結合することが不要であるとしても、本件特許発明1は当該ストラップを用いずに、べールを安全に積み上げるとともに移動を阻害しないようにするべく、べールの負圧を制御して上記課題に対応した平坦さとするものであって、上記課題に着目することや頂面と底面を負圧の制御により対応した平坦さとすることまで、当業者が直ちに想到するものとはいえない。
なお、本件特許明細書等の段落【0004】にはストラップを用いないタイプの梱包ではべールの頂部と底部に膨張が生じ安全な積み上げが阻害されること及び積み上げのためにべールの側部上に積み上げるか特別なパレットを用いることが記載されているのであって、ストラップを用いないべールをそのまま積み上げるために頂面と底面の平坦さを負圧の制御により得ることを示唆していない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1について、甲第1号証発明、甲第3号証に記載の事項及び技術常識又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

また請求項2?24は請求項1を引用するものであって、本件特許発明1は上記のようであるから、本件特許発明2?24についても同様に、甲第1号証発明、甲第3号証に記載の事項及び技術常識又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

したがって、請求人の主張する無効理由5(1)は、理由がない。

(2)無効理由5(2)
次に、請求人の主張する無効理由5(2)について検討する。
まず本件特許発明1と甲第2号証発明とを対比すると、
後者の「ぼろくず、洗浄詰物(cleaning wads)等の圧力を解放すると膨張する繊維材料を静止プレスボックスでの下方の結束用プレートによる圧縮下で」「梱包及び包装され、」「外皮は梱包材料の膨張圧を十分に吸収するように対応したべール」及び「ベール材料が完全に包囲されている、最高品質の袋状べール」は前者の「梱包され、ブロック形態に高圧縮した」「トウのベール」に相当する。
後者のべールは、「梱包圧の解放時に、第2の袋部が袋内の繊維材料の爆発圧によってわずかに膨張して通常のキャップ形状を帯びるように内側を外側に押されて膨張し、膨張時に、ベールの容積が増し、結束用コード又はリボンをきつく引っ張り結束されるもの、或いは、梱包されている材料の性質に応じて、また、用いる包装材料の長さに応じて、包装されたベールは必ずしも結束される必要はないものでもあって、2つの袋部が単にそれらの縁で一緒に全ての部分で連続的に溶接されるものであ」るから、静止プレスボックスでの下方の結束用プレートによる圧縮である、梱包圧の解放した後は、べールは梱包及び包装されたものといえるので、前者のべールと同様に「機械的に自己支持する」といえるとともに、2つの袋部が全ての部分で連続的に溶接するされ、梱包圧の解放した後にベールの容積が増すものである。
また、後者は「静止プレスボックスでの下方の結束用プレートによる圧縮下で」「梱包及び包装され」るのであるから、後者のべールも前者と同様に「ベールの頂側部と底側部」及び「ベールの頂面および底面」を有するといえ、かつそのことから高さを有するといえる。
後者は「可撓性のプラスチックにより梱包及び包装され、雨又は湿気に影響を受けず、外皮は梱包材料の膨張圧を十分に吸収するように対応したべールであって、袋材料の2つの重ね合わせられた層を締め付けて溶接することで2つのプラスチック袋部が一緒に溶接されてい」るのであるから、前者と同様にそのべールは「弾性梱包材料内に」「包装され、かつこの材料は、」「1つまたはそれ以上の接続部分を備えて」いる「フィルム」であるといえる。
そうすると、本件特許発明1と甲第2号証発明とは
「梱包され、ブロック形態に高圧縮したトウのベールであって、
(b)前記ベールが、機械的に自己支持する弾性梱包材料内に包装され、かつこの材料は、1つまたはそれ以上の接続部分を備えているフィルムであって;
(d)前記ベールが、高さを有している;
トウのベール。」の点で一致し、次の点で相違する。
相違点A:本件特許発明1は「フィルタートウのベール」であるのに対して、甲第2号証発明は「ぼろくず、洗浄詰物(cleaning wads)等の」「繊維材料」の「ベール」である点。
相違点B:本件特許発明1は「ベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い」ものであって、「(c)非開封状態のベールを水平面上に配置した状態で、平坦な板をベールの頂部に圧接させ、ベールの中心に対して垂直方向に100Nの力を作用させたとき、圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から40mm以下離間する程度に、前記ベールの頂面および底面が平坦であ」るのに対し、甲第2号証発明は、上記のようなものかどうか不明である点。
相違点C:本件特許発明1は「(a)前記ベールが、少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度を有し」ているのに対して、甲第2号証発明は不明である点。
相違点D:本件特許発明1が「(d)前記ベールが、少なくとも900mmの高さを有して」いるのに対して、甲第2号証発明における高さは不明である点。
相違点E:本件特許発明1が「(b)前記ベールが、」「弾性梱包材料内に完全に包装され、かつこの材料は、対流に対して気密性を有する1つまたはそれ以上の接続部分を備えており、かつこの材料は、温度23℃、相対湿度75%で、DIN53,380-Vに従って測定される空気に関するガス透過率が10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満であるフィルムであって;(e)少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている」のに対して、甲第2号証発明は、圧縮下で可撓性のプラスチックにより梱包及び包装され、雨又は湿気に影響を受けず、外皮は梱包材料の膨張圧を十分に吸収するように対応したべールであって、袋材料の2つの重ね合わせられた層を締め付けて溶接することで2つのプラスチック袋部が一緒に溶接されていて、包装されたベールは結束されていないないものであって、2つの袋部が単にそれらの縁で一緒に全ての部分で連続的に溶接されるものであり、梱包圧の解放時に、第2の袋部が袋内の繊維材料の爆発圧によってわずかに膨張して通常のキャップ形状を帯びるように内側を外側に押されて膨張し、膨張時に、ベールの容積が増し、ベール材料が完全に包囲されている点。

そこで、上記相違点について検討する。
まず相違点B及びEについて検討する。
甲第2号証発明は、圧縮下で可撓性のプラスチックにより梱包及び包装され、雨又は湿気に影響を受けず、外皮は梱包材料の膨張圧を十分に吸収するように対応したべールであって、袋材料の2つの重ね合わせられた層を締め付けて溶接することで2つのプラスチック袋部が一緒に溶接されていて、包装されたベールは結束されていないものであって、2つの袋部が単にそれらの縁で一緒に全ての部分で連続的に溶接されるものであり、梱包圧の解放時に、第2の袋部が袋内の繊維材料の爆発圧によってわずかに膨張して通常のキャップ形状を帯びるように内側を外側に押されて膨張し、膨張時に、ベールの容積が増し、ベール材料が完全に包囲されているものである。そうすると、圧縮下で可撓性のプラスチックで密封され、梱包圧の解放時に、第2の袋部が外側に押されて膨張しベールの容積が増すことに対応した分の圧力が低下するものであるといえる。
しかしながら、上記の事項は負圧を制御するものでも、ベールの頂面および底面について、妨害となるような膨張部分またはくびれ部分を無くそうとするものではなく、甲第2号証にはどの程度に平坦とするかについても記載されていない。
さらに、甲第2号証発明は、「梱包されている材料の性質に応じて、また、用いる包装材料の長さに応じて、必ずしも結束される必要がない」というものであるから、負圧の制御ではなく、可撓性のプラスチックは梱包材料の膨張圧を十分に吸収できる強度を有し、その張力で維持されるものであるとも解される。
上記(1)と同様に、上記2.,4.の「(25)について」及び5.の「(6)について」で述べたように、本件特許発明1は、従来のべールでは、べールに付加した圧力が解放されると、これまで圧縮されていたフィルタートウの弾性復元力によって、べールの頂部と底部に膨張が生じることとなり、べールの頂部と底部に膨張が生じ積み上げが阻害されたり移動が妨害され、ストラップを用いるとくびれが生じ繰り出しが妨害されるという課題、及びフィルタートウの膨張によってストラップを施したべールのパッケージさえも破裂開封してしまうという課題を解決するものであって、相違点Bはこのような課題を解決する程度の平坦さに関しての構成であり、相違点Eはそのための負圧の制御手段についての構成であるといえる。しかしながら、甲第2号証発明は上記の平坦さを実現しようという課題を有するものでも、このような相違点B及びEに係る構成を具備するものでもない。
また、甲第2号証発明を実施すると、必然的に相違点B及びEに係る構成を有する本件特許発明1になるともいえない。
甲第3号証には真空プローブ(7)により380mmHgの圧力に排気することが記載されているものの、本件特許発明1のようなベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分を無くすために負圧を制御してそのような課題を解決する程度の平坦さにしようとすることは記載されておらず、さらには、本件特許発明1が不要にしようとしている、ボール紙の包装ケースに挿入されひもでくくられるものでもある。
請求人は平成22年3月15日付け弁駁書で甲第3号証に記載の発明を実施すると本件特許発明1の平坦となる旨主張するが、甲第3号証や被請求人が提出した参考資料3には、本件特許発明1の課題を達成する程度の平坦さとすることまでは記載されていない。
甲第4?7,10?12及び16号証にも上記のような課題及びそれを解決のための手段としての相違点B及びEに係る構成は示されておらず、また、当業者にとって自明の事項でもない。
そして、上記(1)と同様に、たとえ、従来よりストラップを用いたべールを積み上げて二段積みすることが行われており、甲第2号証発明は結束用コード又はリボンが必要でないとしても、本件特許発明1はストラップを用いずに、べールを安全に積み上げるとともに移動を阻害しないようにするべく、べールの負圧を制御して上記課題に対応した平坦さとするものであって、上記課題に着目することや頂面と底面を負圧の制御により対応した平坦さとすることまで、当業者が直ちに想到するものとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1について、甲第2号証発明、甲第3号証に記載の事項及び技術常識又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

また請求項2?24は請求項1を引用するものであって、本件特許発明1は上記のようであるから、本件特許発明2?24についても同様に、甲第2号証発明、甲第3号証に記載の事項及び技術常識又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

したがって、請求人の主張する無効理由5(2)は、理由がない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては本件特許の請求項1?24に係る発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高圧縮フィルタートウベール、およびその製造プロセス
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベールの頂部または底部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い、梱包され、ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールと、その製造工程に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコ産業における、フィルターロッド内で使用するフィルタートウの製造において、トウはいわゆる充填容器若しくは缶内に配置される。この工程中に、全長方向と交差方向へ交互に移動する配置ユニットの動作によって、フィルタートウが、容器の断面範囲にかけて均一な層に分配される。その結果、容器内でフィルタートウ・パッケージが所望の重量および高さに到達するまで、多数の層を互いに頂部上に積層することができる。この範囲では、数百キログラムの梱包重量は通常である。高圧縮されたベールと、結果発生する工程に関する問題を回避する目的で容器を最適化する工程とが、WO 02/32,238 A2に記載されている。
【0003】
次に、この方法で容器内に充填された内容物が、層を重ね合わせる方向に圧縮される。この圧縮後に、フィルタートウ・パッケージが、まだ圧縮装置内に配置されている、したがって圧縮応力下にある状態で、梱包材によって包装される。その後、プレス装置が完全に開かれ、現在「ベール」と呼ばれているフィルタートウ・パッケージが梱包材によってまとめられる。従来の梱包材には、ストラップまたは接着剤によって機械的にまとめられた厚紙、例えば面ファスナーによって閉じられた合成布地が含まれる。接着したパッケージの一例が、独実用特許第76-35,849.1に記載されている。合成布地で包装されたフィルタートウ・パッケージに関する情報は、エンゲッサーシュトラーセ 8、D-79108 フライブルクにあるRHODIA Acetow有限会社から出版されている企業の設立趣意書“Some Useful Information about the Reusable Packaging for Rhodia Filter Tow”(「Rhodiaフィルタートウの再利用可能な梱包に関する或る有用な情報」)に見ることができる。後者の2つのタイプの梱包では、追加のストラップは不要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した、ストラップを全く使用しないタイプの梱包には、ベールに付加した圧力がプレス動作の最後において解放された後に、圧縮されたフィルタートウの弾性復元力によって、ベールが圧縮された方向とは主に反対の方向に向かう圧力が梱包に加えられてしまう問題が伴う。これにより、パッケージの容量が増加することで、ベールの頂部と底部に望ましくない膨張が生じてしまう。WO 02/32,238 A2号に記載の測定を実施した場合、これらの膨張部分によって目的とするフィルタートウの使用が妨害されることはないが、フィルタートウ・パッケージの安全な積み上げが阻害されてしまう。この問題は、上述で引用したRhodia刊行物に記載されているもののように、ベールをその側部上に積み上げるか、または特別なパレットを使用する最新技術によって解決できる。さらに、連続した内圧によるパッケージの破裂開封に関連した問題も頻繁に発生する。
【0005】
ストラップに関連した問題の解決方法は、US-A4,577,752号に記載されている。ストラップで梱包したフィルタートウを目的どおりに使用した場合、膨張部分は、WO 02/32,238A2に記載の膨張抵抗に変化を生じさせてしまうくびれ部分よりも問題は小さかった。さらに、ストラップを施したベールでさえも破裂開封してしまう。また、フィルタートウの梱包において、フィルタートウと上述した機械的に支持する梱包材との間に内部ライナーを使用することが標準的である。内部ライナーによって、フィルタートウが汚染、特に臭気汚染から保護され、さらに、水蒸気のパッケージ内部および外部への四散が防止される。通常、内部ライナーは、外部梱包の内部に密接していない状態で配置された3つの部品によって構成されている。
【0006】
本発明の課題は、ベールの移動を妨害するような膨張部分、ならびにトウベールの頂部と底部におけるフィルタートウの繰り出しを妨害するくびれ部分の無い、理想的なブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールを提供することであり、この場合、梱包したフィルタートウにかかる負荷が低減されることで、特に、内圧の影響下におけるパッケージの破裂開封をほぼ完全に回避することができる。本発明のさらなる課題は、これに関連した梱包プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題は、本発明に従い、請求項1によるフィルタートウのブロック形態のベールと、請求項14によるプロセスによって達成される。
【0008】
すなわち、本発明は、
(a)ベールが、少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度を有し;
(b)ベールが、機械的に自己支持する弾性梱包材料で完全に包装され、かつこの材料は、対流に対して気密性を有する1つまたはそれ以上の結合部分を備えており;
(c)非開封状態のベールを水平面上に配置した状態で、平坦な板をベールの中心上で垂直方向に作用する100Nの力でベールの頂部上に圧接したとき、圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が平坦板から約40mm以下離間する程度に、前記ベールの頂面および底面が平坦であることを特徴とする、ベールの頂面または底面に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い、梱包され、ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールである。
【0009】
今日、通常使用されている梱包の移動に伴う欠点については、上述の最新技術の記述において既に述べている。2つの層における移動を妨害するのは、特にベールの頂部と底部における膨張部分である。この問題は、過去に、ベールを、いわゆる作業態勢ではなく、側方を向いた保管態勢で移動することにより解決されている。しかし、その実施には、さらに2つの作業ステップ、つまり、移動前にベールを90°回転させるステップと、次に、移動後に作業態勢へ戻すステップを追加する必要がある。さらに、ストラップによって形成されるくびれ部分も問題の源である。ベールを目的どおりに使用した場合でも、これらのくびれ部分によって、フィルタートウで製造したフィルターロッドの膨張抵抗に相当な変化が生じてしまう。これらの変化によって、ベールで製造したフィルターロッドの5%以上が影響を受ける。ベールの梱包密度が高い程、これら2つの問題の深刻さが増加する。梱包密度が300kg/m^(3)を超えた途端に問題が発生する。
【0010】
一連の失敗経験を経て、梱包工程中に梱包を気密シールすることより、移動を妨害する妨害部分も、目的としたフィルタートウの使用を妨害するくびれ部分も無いブロック形態のベールを製造できるという驚くべき発見が得られた。したがって、実用的な考慮に基づき、請求項1によるベールは、機械的に自己支持する弾性梱包材料で完全に包装され、この材料は、1つまたはそれ以上の対流に対して気密性を有する結合部を備えている。
【0011】
予備的かつ表面的な分析をすれば、本発明にかかるベールは真空パックされたベール、したがって、全ての消費者が毎日経験から知っている真空パッケージであると思われるかもしれない。しかし、これはそうではない。本発明にかかるブロック形態のベールで達成する目標は、明確な形態を作成することである。気密梱包の課題は、製造工程中にベールの頂部と底部に生じる圧力勾配を吸収および等化することである。梱包に、その機械強度、空気透過性、含水量等に関連した要求を課す必要がこれ以上ないことがわかった。その代わり、本発明にかかるベールは、梱包工程後に、以前は気密性を有していた材料の広範囲にかけて穿孔を施す場合においてさえも、その性質を維持できることがわかった。実用的な考慮に基づけば、このような追加の測定は実施されない。
【0012】
本発明にかかるベールの外形は請求項1の特徴(c)によって表される。例えば、板からベールの頂面上の各点までの距離は、透明板を使用し、反射を測定して各点と板の間の距離を求めることによって決定することができる。あるいは、これ以外の任意の連続的な距離測定方法を用いることも可能である。本発明の原理の範囲内では、前述の内接矩形内に位置するベールの頂面の範囲の90%が、約25mmを超えない、好ましくは約10mmを超えない距離で平坦板から離間するのが特に好ましい。
【0013】
ベールの梱包容量に関連して、ベールの容量を0.9m^(3)よりも高くする、および/または、梱包密度を350kg/m^(3)よりも高く、特に800kg/m^(3)未満とすることが有利であることが判明している。また、コンテナ内へのパッケージの搭載に関連して、ベールの形態を、高さが少なくとも約900mm、好ましくは約970mmのブロック状に形成することが特に適切であることが判明している。この場合、コンテナ内でベールを2層に積層することができる。このようなブロックは、コンテナ内で個々のスタック形態にて配置できるため、高さ970?1,200mmの梱包されたブロックが特に好ましい。さらに、梱包する繊維の量に対する梱包作業を縮小するために、これよりも遥かに高さのあるベールを製造することも可能である。梱包した材料がフィルタートウである場合、これらの大型パッケージは、フィルターロッド機械によるタバコフィルタ製造にフィルタを使用する際に、ベールの交換回数が非常に少ないため有利である。
【0014】
パッケージ包装材はプラスチック・フィルムから成ることが好ましい。対流に対して気密性を有する結合部は、対流空気が透過不可能なシームにより形成され、これは、ヒートシールされた重ね合わせシームまたはヒレ状シーム(uberlappende Siegel-oder Flossennaht)として設計されていると有利である。
【0015】
フィルムはポリエチレン、特にLDPE、改良ポリエチレン(LLDPE)、または、ポリアミド層とポリエチレン層を含む積層フィルムから成っていることが好ましい。広告および美観的な目的で、色付き、または印刷を施したフィルムを梱包フィルムとして使用することができる。これは、梱包するフィルタートウが感光性である場合に特に推奨される。さらに、例えばパッケージの内容に関する情報を提供する接着ラベルをフィルムに付着することもできる。パッケージに情報を伝達させるこれ以外の可能性には、負圧によってパッケージの表面に密着したフィルムを通して見ることができるレリーフを刻設するというものがある。このレリーフには、製品の名称の他にも、企業および/または顧客のロゴを含めることもできる。フィルムは、信頼性の高い輸送用梱包材料となる性質を有することが好ましい。特に100?400μmの厚みを有するフィルムを使用するのはこのためである。所望により、パッケージの包装後、あるいはフィルム自体をシールする、つまりブロック形態のベールが完了した後に、厚紙、合成布地等の輸送用梱包をフィルムの周囲に配置することが可能である。その後、この輸送用梱包にストラップを施すことができる。その結果、梱包の機械的安定性が増加するため、より薄型の、従ってより安価なフィルムの使用が可能となる。しかしながら、本発明の範囲内において、この種の輸送用梱包は必須ではない。
【0016】
本発明にかかるフィルタートウベールを梱包するプロセスは、
(a)フィルタートウを圧縮形態にするステップと;
(b)圧縮されたフィルタートウをパッケージ包装材で包装するステップと;
(c)パッケージ包装材を気密にシールするステップと;
(d)包装されたベールにかかる負荷を解放するステップとを備えている。
気密シールされたベールに対する負荷が解放されると、パッケージ包装材内に負圧が発生する。この負圧は少なくとも0.01barであることが好ましく、特に有利な方法では0.15?0.7barの範囲内である。
【0017】
したがって、包装材で取り囲まれた領域内で発生した負圧は、パッケージ包装材の気密シールによって維持することができる。この負圧により、可撓性材料の弾性復元力によって内部から梱包へ加わる圧力が減衰される。この理由のために、最新技術によれば通常はフィルタートウベールに発生する膨張を防止することができる。これにより、積層ベールの製造が遥かに容易になる。梱包内部から作用する機械圧が(負圧によって)減衰されるために、梱包が失敗する危険性または梱包が裂開する傾向が低減される。さらに、より高い梱包密度も得られ、これにより、より小型なパッケージの利点が得られ、保管容量および移動容量を縮小することが可能になる。特に、この方法によれば、このように梱包されたフィルタートウを収納するコンテナの収納容量を最適に使用できるようになる。
【0018】
圧縮形態のフィルタートウの提供は、通常、従来のプレス装置を使用して達成される。本発明にかかる工程では、まず、パッケージを目的とした量のフィルタートウをプレス装置内で機械的に圧縮し、その後、パッケージ包装材で包装する方法で実施する。この場合、パッケージ包装材が、まだプレス装置内にある間にシールされる。この実施形態は、工程全体を1つの場所で完了できるという利点を提供する。
【0019】
さらに、別の場所で、準備ステップとして、フィルタートウを圧縮することが可能である。この場合、予め圧縮されたフィルタートウに、例えば保持クランプを具備した「補助梱包」が設けられ、その後、フィルタートウが梱包場所へ送られ、ここで補助梱包が取り除かれ、圧縮されたフィルタートウがパッケージ包装材で包装され、負圧が発生され、パッケージ包装材が気密シールされる。この実施形態は、工程全体がその場所にて完了しないため、プレス装置がより高い機能を備えることができるという利点を提供する。さらに、押圧サイクルの遅延が低減され、また、梱包場所において全ての側から、圧縮されたベールに到達できるため、パッケージ包装材の付加に関連して得られる自由度が増加する。
【0020】
最新技術とは反対に、本発明にかかる工程を用いることで、梱包として使用する包装材が代替機能を果たすため、汚染および水蒸気からベールを保護するための内部ライナーが不要になる。
【0021】
主に本発明にかかる工程で必要な負圧は、様々な方法で発生させることができる。特に単純な実施形態によれば、負圧は、圧縮したフィルタートウ材料を膨張させることで発生される。圧縮状態にあるフィルタートウをパッケージ包装材で包装し、これを気密シールした後に、梱包した材料に付加されている外圧を解放する。その結果、パッケージ内部で、材料が、自己の弾性復元力の作用下で膨張する。パッケージの容量が増加することで、包装材で包囲された範囲内において負圧が発生する。パッケージのサイズは、圧縮されたフィルタートウが完全に膨張できないように、つまり、包装材内部のフィルタートウが、その部分的な膨張後にも、パッケージ内部で特定の度合いで圧縮状態に維持されるように選択することが好ましい。この実施形態には、負圧を発生するための手段を追加する必要がないという利点がある。したがって、特に低コスト化が可能となる。
【0022】
前述した応用形の代替または追加として用いることができる別の実施形態によれば、包装材で取り囲まれた内部領域からの排気によって負圧が発生される。この方法では、上述した「自然の」真空よりも高い真空を得ることが可能である。さらに、この方法により、所望の負圧を高い精密度で調整することもできる。
【0023】
排気は、例えば1つまたはそれ以上の真空ポンプの手段によって行うことができる。これらの真空ポンプは、まず、その吸気側にて、真空ポンプとの接続時を除いて気密である気密パッケージの内部と接続され、その後動作される。所望の負圧に到達した後、ポンプがパッケージから接続解除され、梱包材料に設けた排気接続部位が再び気密シールされる。
【0024】
前述した2つの実施形態の組み合わせでは、同時に実施可能な2つの異なる測定によって負圧が得られるため、真空時間を短縮できる利点が提供される。これに加えて、より高い梱包高さを選択できるため、必要な圧縮力がより低くなる。この場合の「梱包高さ」という用語は、フィルタートウを圧縮するために使用する装置内で気密シールされた後のフィルタートウベールの高さを意味する。最後に、この方法によれば、フィルタートウベールの高さを優れた精密度で調整することが可能である。その結果、特に季節、タイター、重量等に関連した外部影響を緩和することができる。
【0025】
本発明にかかる工程では、周囲の圧力に対して約0.15bar?0.7bar低い負圧が発生されることが好ましい。これは、フィルム包装された容量内における約0.85?0.3barの絶対圧力に相当する。そのため、問題としている真空は「低真空」の範囲内にあるものであり、これは、通常、本発明の工程にとって完全に十分なものである。約0.8?0.6barの絶対圧力に相当する約0.2?0.40barの負圧が特に適切であることが証明された。負圧の固定範囲の選択は、様々なパラメータ、特に梱包された材料のタイプと量、所望の梱包密度、使用するパッケージ包装材等に依存する。原則的に、真空または負圧が強力であるほど、より小型のパッケージが得られることに留意するべきである。負圧の増加も膨張低減の効果を有する。しかしながら、より高い真空を選択することにより、所望の負圧を達成するために必要な時間が不当に増加してしまうことも考慮されるべきである。
【0026】
本発明にかかる工程で使用されるパッケージ包装材を考慮する限り、これは、発生された負圧の、経時的な所望の安定性と、梱包の所望の機械的安定性とが保証されるように選択されなければならない。経時的な所望の安定性は、梱包された材料のタイプと、これに使用される方法とによって、通常、数日?数ヶ月、さらには数年の間で異なる。従って、空気透過性の異なるフィルムを使用することが可能である。
【0027】
ある実施形態によれば、ポリエチレン、またはLLDPEやLDPEのような改良ポリエチレンのフィルムをパッケージ包装材に使用できることが望ましい。LDPEは、高圧で精製される低密度ポリエチレンであり、LLDPEは、直線構造を備えた低密ポリエチレンの呼称である。このタイプのプラスチック・フィルムには、純粋材料であり、低コストで製造できるといった利点がある。しかし、1枚のポリエチレンでは強度が十分でないため、これは特に、比較的低い梱包密度で、低容量にて梱包した材料に適している。標準ポリエチレン・フィルムは、その比較的高い空気透過性のために、保管時間が数週間を越えない場合の使用により適している。
【0028】
あるいは、ポリアミドとポリエチレンから成る積層フィルムをパッケージ包装材として有利に使用することが可能である。この積層は、非常に低い空気透過性と、高い強度によって特徴付けられるが、これはつまり、長期間にわたって負圧を一定に維持できることを意味する。ポリアミド層が積層の約1/3を占め、ポリエチレン層が約2/3を占めることが好ましい。
【0029】
パッケージ包装材またはフィルムにおける空気のガス透過率は、好ましくは10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、また、好ましくは200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、さらに好ましくは、20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満である。これらの値は、DIN 53,380-Vに従って、23℃、相対湿度75%において測定されるものである。この場合、真空が十分な時間継続し、パッケージが緩まずに、可能な限り小型に維持されることが保証される。さらに、この範囲は、市販されている標準的なフィルム(例えばPA-PE積層)でカバーされる。フィルムを通した対流によって空気が移動されることはなく、フィルム全体にかけての拡散によってのみ物質移動が生じる点を強調すべきである。透過性を表すこれらの値は、周囲の空気(N_(2)が約78%、O_(2)が約21%、その他の気体が1%)に類似した組成に基づいている。重要な値は、酸素と窒素の透過性に関連した値のみである。さらに、フィルムに加えて、本発明の範囲内で、上述した条件を満たす別の気密材料を使用することも可能である。
【0030】
フィルムまたは別の包装材の水蒸気の透過率は、DIN 53,122、パート2に従って、23℃、相対湿度85%において測定した場合に、好ましくは5g/(m^(2)・d)未満、また好ましくは2g/(m^(2)・d)未満である。水蒸気の透過性は、梱包の形態によって生じる機能には関連しないが、しかし、空気だけでなく水蒸気に対しても非透過性の梱包により、フィルタートウの製品含水量がこのような梱包によって維持され続けるという利点が得られる。これは、フィルタートウの場合において非常に重要である。これにより、ベール全体に渡って均一な含水量が得られ、また、周囲環境との湿度交換が生じることがない。厚さ100μmのポリエチレン・フィルムは、約1g/(m^(2)・d)の水蒸気透過率を有する。
【0031】
機械強度に関連して、DIN EN ISO 527-3に従って測定した場合に、パッケージ包装材またはフィルムが、少なくとも約10N/15mm、好ましくは約100N/15mm以上、さらに好ましくは200N/15mm以上の引裂き強度を有することが推奨される。引用した値の各々は、フィルムの縦方向および横方向における最少引裂き強度値に関係する。フィルムで包装したベールが移動のために再度梱包されるか否かの関数として、引裂き強度に関連した特定の選択が行われる。これに関連して、使用可能な材料には、100μmの厚さで、15から30N/15mmの引裂き強度を有するPE、100μmの厚さで、150?300N/15mmの引裂き強度を有するPA6が含まれる。
【0032】
一般に、ポリアミド、ポリエステル、またはエチレン・ビニル・アルコール共重合体(EVOH)のような空気バリヤ層を備えた、あるいは、SiOx、アルミニウム酸化物等のコーティングのような金属酸化物被覆した材料プラスチック・フィルム、およびアルミニウムホイルが特に有利であることが判明している。しかし、このフィルムのリストは完全なものとは考慮されない。さらに、フィルムの空気非透過性、臭気保護、つまり外部からの臭気侵入に対する保護が得られるため、これらは、様々なタイプの梱包した材料にとって有利である。フィルムを機械的に安定させるために、特定の強度が重要である。この性質は特にポリアミドによって得られる。
【0033】
パッケージ包装材またはフィルムを気密シールする1つの利用可能な方法は、これを溶着またはヒートシールするというものである。したがって、溶着可能、あるいはヒートシール可能であることが好ましいフィルムを選択するべきである。これに関連して、好ましいフィルム材料は融点の低い材料である。例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン、または、EVA、LLDPE等のエチレンやプロピレンとの重合体といったポリオレフィンを挙げることができる。これ以降の説明において、溶着可能性またはヒートシール可能性の条件を満たす材料を「シール層」と呼ぶ。フィルムは、このタイプのシール層のみで構成するか、あるいは、1つまたはそれ以上のシール層、および例えば機械的強度を提供するように設計された追加の層から成る積層で構成することができる。
【0034】
梱包の開封を確実に容易に行えるようにするために、シール層を「剥離可能(peelbar)」にすることができる、つまり、不均質な形態でシールすることができる。このタイプの不均質シール層は、或る時点においてシール層にポリブチレンを追加したり、または、ポリプロピレンをLLDPEに対してシールするといった、様々な方法で製造可能である。開封工程を促進する別の方法は、梱包フィルムに裂開ストリップを設けるというものである。この方法は、特に、低強度のフィルム用のものである。最後に、突出角等を設けて、パッケージの開封時にこれを切り取るようにしてもよい。突出角を切り取ると、パッケージ内部に空気が流入でき、これによってパッケージが緩まる。その後、フィルム切りナイフを使用してフィルムを切れば、パッケージ内容物を損傷することなくパッケージを開封することができる。
【0035】
別の方法として、パッケージ包装材またはフィルムを接着剤でシールすることができる。この実施形態により、ヒートシール装置が不要になるという利点が得られる。当然ながら、漏れ防止に関連し、さらに、懸案の適用範囲に要求される機械引張強度に関連した望ましい性質を提供するものであれば、これ以外の、適切な梱包フィルムのシール方法の使用も可能である。
【0036】
ヒートシールまたは溶着は、例えば、重ね合わせシームを形成するような方法において達成できる。重ね合わせシームは、比較的高い引張力を吸収できるため、梱包したばかりの状態でも、梱包された材料をしっかりとまとめることが可能であり、また、パッケージに漏れがある場合でさえも、材料の完全な弾性復元力が内部から梱包上に作用することができる。したがって、このタイプの閉鎖は非常に安全であり、この場合には、フィルムの両面にヒートシール層を設ける(または、このようなヒートシール層のみでフィルムを構成する)ことが推奨される。
【0037】
別の実施形態によれば、溶着またはヒートシールを、フィルム処理分野の専門家に知られている、ヒレ状シームを形成する方法で達成することが可能である。これにより、外部からの製造が容易であるという利点が得られるが、しかし、このようなシームの、引張応力に耐え得る能力は、オーバラッピング・シームの能力よりも低い。
【0038】
パッケージ包装材またはフィルムは、例えばワンピースバッグの形態に設計することができる。この場合、準備したフィルタートウは、1個のキャンディを包装する方法と類似した方法で包装される。あるいは、フィルムを、底部、頂部、外周カラーによって構成することもできる。この場合には、各々の部分を結合する必要があるため、結合シームの全体長さを延長させる。別の好ましい実施形態によれば、頂部と底部から成るフィルム・梱包を使用前に製造する、つまり深絞り形成するか、またはバッグ形態に形成する等が可能である。さらに、フィルムを、テニスボールと同じようにインターロックする2つの部品にカットすることも可能である。さらに、本発明の範囲内で、フィルム・梱包を設計するこれ以外の適切な方法を用いることもできる。
【0039】
所望により、パッケージ包装材またはフィルムの最終シール、つまり、フィルム・梱包の完了の後に、ベールを、フィルム周囲に配置された厚紙、合成布地等で再度梱包することができる。これにより、梱包の機械強度が増加するため、より薄く、従ってより安価なフィルムを選択することができるようになる。しかしながら、このタイプの再梱包は、本発明の範囲内で必須でないことは強調しておく。
【0040】
外部再梱包を上述とおりに用いる場合、フィルム・梱包の気密性を低減するように故意に設計することで、負圧が、1?2日間のうちに、周囲圧力に関連して均等化できるようにすることが可能である。換言すれば、この期間中に、パッケージが吸引を「失う」。これにより、梱包したフィルタートウが外部梱包内へと膨張することができるが、最新技術の或る工程に従って梱包されたフィルタートウに比較して、パッケージの頂部と底部に形成される膨張はそれほど顕著なものではない。
【0041】
本発明にかかる工程で使用するフィルムの厚さは約100?400μmであり、200?300μmの範囲、特に250?300μmの範囲が最適である。使用するフィルムの正確な厚さは、梱包する繊維材料のサイズおよび重量、圧縮の度合い、つまり梱包密度、さらに、使用する材料のタイプの関数として選択される。既に上述したように、追加の外部梱包、特に、厚紙の外部梱包を使用する場合には、いくらか薄いフィルムを選択することが可能である。
【0042】
したがって、梱包する圧縮可能なフィルタートウは、特に最適なブロック形態に製造される。その結果、積み重ねおよび取り扱いが特に容易で、さらに保管が容易なパッケージが得られる。最新技術による工程に関連して既に説明したとおり、ケーブル状のフィルタートウを相互に頂部に重ねて層状に配置することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に、添付の図面を参照しながら、好ましい実施形態に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【0044】
圧縮可能で、可撓性を有し、繊維性の材料1から成るベール、この場合はフィルタートウが、図1aに示すように、フィルム2で包装され、プレス装置3内に導入されている。例えば約300?400トンの圧力をかけることができるプレス装置3内において、ベールが所望の梱包高さに圧縮される。その後、フィルム2が、滑動羽根回転ポンプ等の真空ポンプ4の吸引穴との接続ポイントとして機能する小さい範囲を残して気密シールされる。次に、フィルム2で包装されたこの範囲の内部が、真空ポンプ4によって所望の負圧になるまで真空状態にされる。この所望の負圧に達すると、真空ポンプのホースがフィルムから外され、接続ポイントが気密シールされる。前述したように、所望の負圧の度合いが、例えばベールの膨張によって得られる程に小さい場合には、真空ポンプの使用を省略することが可能である。
【0045】
図1bに示す次のステップでは、処理装置3が開けられる。これにより、ベールが、フィルム・梱包のサイズによって許容される程度にまで再び膨張する。梱包が終了した状態のフィルタートウベールはプレス装置から取り除かれ、図1cに示すように、移動および保管できる状態にある。梱包されたベールの高さは、発生された真空の強度を含む様々な要素によって異なる。
【0046】
図2a、図2bは、本発明にかかる工程の別の段階、つまり、梱包されたフィルタートウベールに任意で外部梱包5を提供する段階を示す。これは、特に移動の目的で提供でき、また、例えば、軽量厚紙で構成することができる。これらのタイプの外部梱包材料は当業者には既知であるため、ここでは詳細な説明を省く。
【0047】
図3a、図3bは、ポリエチレンのフィルム、ポリエチレンとポリアミドを積層したフィルムの使用に基づく本発明にかかる工程により作成される、パッケージの性質の時間ごとの変化を表すグラフを示す。図3aのポリエチレン・フィルムは、約600ml/(m^(2)・d・bar)のガス透過率を有し、一方、図3bの積層フィルムのガス透過率は約10ml/(m^(2)・d・bar)だけである。この2つのグラフの比較から導出されるように、積層フィルムの場合に発生された負圧、さらにベールの高さは、数百日間にかけて本質的に均一に保たれる。反対に、ポリエチレン・フィルムで巻いたベールの場合の負圧は、百数日間後には既に半分に減少している一方で、ベールの高さは同じ期間で10cm以上増加している。ベールを2年間またはそれ以上保管する場合には、コストはよりかかるが、積層フィルムの方が好ましい。
【0048】
図4aに見られるように、真空の強度を増加することで、ベールの高さを低減することが可能である。同図では、異なる3本の曲線を示している。一番上の曲線は、真空ポンプを使用せずに達成可能なベールの高さを梱包高さの関数として示している。真中の曲線は、0.1barの真空をさらに追加した結果を示し、一番下の曲線は、0.1barの真空をまたさらに追加した結果を示している。ベール重量580kgのタイプ3Y35のフィルタートウを370トンの圧力で処理した。これらの条件下にて、0.1barの追加の真空を、約60秒間で容易に発生することが可能である。
【0049】
図4bは、変更された環境条件下にあるベールの高さを追加の真空の強度の関数として示しており、この場合、空気温度は約40℃であり、周囲の空気圧力は、図4aの例よりも約0.05bar高い。ベールの高さは、より低い空気圧とより高い温度において増加することがわかる。
【0050】
上述の例証的実施形態では、厚さ約200μmのポリエチレンとポリアミドの積層フィルムを使用した。このフィルムを、シール装置を用いて手作業でヒートシールしたが、その際、押圧中に事前調整した頂部および底部要素に、カラー部分を結合している。全ての場合において、処理力は370トンであった。本発明にかかる処理手段により、梱包・コストを大幅に低減することができる。
【0051】
別の例によれば、同重量で、梱包高さが900mmのベールを、ポリアミドとポリエチレンの積層フィルムで巻き、その後これを溶接閉鎖した。プレス装置を開いた後では、トウベールの高さは970mmであった。梱包したベールのどの箇所にも膨張は見られなかった。ベール内の空気容量が増加したことで、0.88barの絶対圧力に相当する0.12barの負圧が得られる。この負圧は、真空ポンプを使用せずに得られた。
【0052】
別の実施形態では、同重量で、梱包高さ900mmのベールを、ポリアミドとポリエチレンの積層フィルムで巻き、その後これを溶接閉鎖した。パッケージ内部を、真空ポンプの手段によって、450barの絶対圧力に相当する550barの負圧にまで真空化した。プレス装置を開くトウベールの高さは約930mmに増加していた。パッケージ内部の圧力は、0.58barの負圧に相当する0.42barと計算された。この場合も、梱包したベールのどの箇所にも膨張はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1a】本発明にかかる工程の実施形態の各々のステップを示す。
【図1b】本発明にかかる工程の実施形態の各々のステップを示す。
【図1c】本発明にかかる工程の実施形態の各々のステップを示す。
【図2a】本発明の工程により得られる複雑な形態のパッケージを示す。
【図2b】本発明の工程により得られる複雑な形態のパッケージを示す。
【図3a】ポリエチレン・フィルムを使用する本発明の工程によって得られたパッケージの特性における経時的な変化を表すグラフを示す。
【図3b】図3aに類似する、ポリエチレンおよびポリアミドの積層フィルムのグラフを示す。
【図4a】様々な負圧についての、梱包高さとトウベールの高さとの間の関係を例証する様々な曲線を示す。
【図4b】より高い温度と、低減した空気圧における、追加の真空とトウベールの高さとの間の関係を例証する様々な曲線を示す。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部分が無い、梱包され、ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールであって、
(a)前記ベールが、少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度を有し;
(b)前記ベールが、機械的に自己支持する弾性梱包材料内に完全に包装され、かつこの材料は、対流に対して気密性を有する1つまたはそれ以上の接続部分を備えており、かつこの材料は、温度23℃、相対湿度75%で、DIN53,380-Vに従って測定される空気に関するガス透過率が10,000cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満であるフィルムであって;
(c)非開封状態のベールを水平面上に配置した状態で、平坦な板をベールの頂部に圧接させ、ベールの中心に対して垂直方向に100Nの力を作用させたとき、圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で、ベールの頂面における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が、平坦な板から40mm以下離間する程度に、前記ベールの頂面および底面が平坦であり;
(d)前記ベールが、少なくとも900mmの高さを有しており;
(e)少なくともベールが梱包された後に、外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている、
ことを特徴とするフィルタートウのベール。
【請求項2】
前記ベールが、少なくとも10N/15mmの引裂き強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)のフィルムを有する、こと特徴とする請求項1記載のベール。
【請求項3】
0.9m^(3)よりも高い梱包容量、および/または350kg/m^(3)よりも高く、特に800kg/m^(3)未満の梱包密度を有することを特徴とする請求項1または2記載のベール。
【請求項4】
少なくとも970mm、特に970?1200mmの高さを有することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のベール。
【請求項5】
前記梱包材料がプラスチック・フィルムであることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載のベール。
【請求項6】
対流に対して気密性を有する接続部が、対流空気が透過不可能なシームであることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に請求項のいずれか1項に記載のベール。
【請求項7】
空気が透過不可能なシームが、重ね合わせヒートシールシーム、またはヒレ状シームであることを特徴とする請求項6に記載のベール。
【請求項8】
前記内接矩形内に位置する前記ベールの頂部側表面の90%が、25mm以下、好ましくは、10mm以下の距離で前記平坦板から離間することを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載のベール。
【請求項9】
ポリエチレン、特にLDPE、または改良ポリエチレン(LLDPE)から成る梱包材料を有することを特徴とする請求項5?8のいずれか1項に記載のベール。
【請求項10】
前記梱包材料が、ポリアミド層とポリエチレン層を積層した積層フィルムであることを特徴とする請求項5?8の少なくとも1項に記載のベール。
【請求項11】
前記梱包材料が、100?400μmの厚さを有することを特徴とする請求項1?10のいずれか1項に記載のベール。
【請求項12】
前記ベールが厚紙または合成布地から成る追加の移動用梱包を備え、さらにストラップで包装されている、ことを特徴とする請求項1?11のいずれか1項に記載のベール。
【請求項13】
(a)前記フィルタートウを圧縮形態で準備するステップと;
(b)前記圧縮されたフィルタートウをパッケージ包装材で包装するステップと;
(c)前記パッケージ包装材を気密状態にシールするステップと;
(d)前記包装されたベールにかかる負荷を解放するステップと;
(e)外圧に対して少なくとも0.01barの負圧を、前記負荷が解放されたパッケージ包装材内に発生させるステップとを備えた、
特に請求項1?12のいずれか1項に記載のフィルタートウのベールを梱包するプロセス。
【請求項14】
前記負圧が前記圧縮されたフィルタートウの自然の膨張によって発生されることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記負圧が空気の排出によって発生されることを特徴とする請求項13または14記載のプロセス。
【請求項16】
前記空気が、真空ポンプの補助によって排出されることを特徴とする請求項15記載のプロセス。
【請求項17】
周囲圧力よりも0.15?0.7bar低い負圧が生成されることを特徴とする請求項13?16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
周囲圧力よりも0.2?0.40bar低い負圧が生成されることを特徴とする請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記パッケージ包装材が、溶着またはヒートシールによって、特に重ね合わせシームまたはヒレ状シームを形成するような方法でシールされることを特徴とする請求項13?18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
温度23℃、相対湿度85%で、DIN53,122に従って測定される水蒸気透過率が、5g/(m^(2)・d)未満、好ましくは2g/(m^(2)・d)未満であるフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13?19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
200cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満、好ましくは20cm^(3)/(m^(2)・d・bar)未満のガス透過率を有するフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13?20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
少なくとも10N/15mm、特に少なくとも100N/15mmの引裂き強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定される)を有するフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13?21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記引裂き強度が、少なくとも200N/15mm(DIN EN ISO 527-3に従って測定される)であることを特徴とする請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記プロセスが、少なくとも300kg/m^(3)の梱包密度が得られるように制御されることを特徴とする請求項13?23のいずれか1項に記載のプロセス。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-09-09 
結審通知日 2010-05-18 
審決日 2008-09-30 
出願番号 特願2003-586035(P2003-586035)
審決分類 P 1 113・ 536- YA (A24D)
P 1 113・ 121- YA (A24D)
P 1 113・ 537- YA (A24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川端 修  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 森川 元嗣
長浜 義憲
登録日 2007-02-16 
登録番号 特許第3917590号(P3917590)
発明の名称 高圧縮フィルタートウベール、およびその製造プロセス  
代理人 大西 啓介  
代理人 大西 啓介  
代理人 青木 武司  
代理人 永井 義久  
代理人 森下 賢樹  
代理人 青木 武司  
代理人 永井 義久  
代理人 横井 康真  
代理人 横井 康真  
代理人 岩永 勇二  
代理人 森下 賢樹  
代理人 平田 忠雄  

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