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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1241768
審判番号 不服2008-17856  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-11 
確定日 2011-08-11 
事件の表示 特願2002- 92037「電解コンデンサ用電解液とその製造方法、およびそれを用いた電解コンデンサ。」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月10日出願公開、特開2003-289017〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年3月28日の出願であって、平成20年1月11日付けの拒絶理由通知に対して、同年3月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月4日付けで拒絶査定がされ、それに対して、同年7月11日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成20年3月14日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、請求項1?6に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】リン酸イオンを生成する化合物と、リン酸金属化合物とから生成された、リン酸を含有する水溶性金属錯体を添加した電解コンデンサ用電解液。」


3.引用刊行物に記載された発明
(1)本願の出願前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開2001-319832号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある(なお、下線は当合議体にて付加したものである。以下同じ。)。

a.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はアルミ電解コンデンサ及びそれに用いるアルミ電解コンデンサ用電解液とその製造方法に関する。」

b.「【0032】以下、本発明について説明する。本発明のアルミ電解コンデンサは、アミノポリカルボン酸とアルミニウムとからなる水溶性の錯体にリン酸イオンが結合した結合体(以下、水溶性結合体)を、水を含む電解液とともに、コンデンサ素子内に含有しているが、この水溶性結合体は、アミノポリカルボン酸とリン酸生成性化合物を添加した水を含む電解液をコンデンサ素子に含浸して生成される。このアルミ電解コンデンサにおいては、コンデンサ素子中で、アミノポリカルボン酸と、リン酸生成性化合物から生成されたリン酸イオンと、アルミニウム電極箔表面のアルミニウムの水和物や水酸化部から溶出したアルミニウムイオンとが反応して、水溶性結合体が生成される。そして、このように生成された水溶性結合体の一部は電極箔に付着し、一部は電解液に溶解した状態で、コンデンサ素子中に含有されることになる。なお、この水溶性結合体はアルミニウムにアミノポリカルボン酸とリン酸イオンが配位したキレート錯体であると考えられる。
【0033】また、このように、本発明のアルミ電解コンデンサ用電解液には、水を含む電解液に、アミノポリカルボン酸と、リン酸生成性化合物と、水溶液中でアルミニウムイオンを生成する化合物、すなわちアルミ電極箔表面に形成されたアルミニウムの水和物や水酸化物等とが添加された状態となって、水溶性結合体が形成され、含有される。したがって、本発明のアルミ電解コンデンサ用電解液は、電解液作成中にアミノポリカルボン酸と、リン酸生成性化合物と、水溶液中でアルミニウムイオンを生成する化合物とを添加しても得ることができる。さらには、別途生成したこの水溶性結合体を、電解液に添加しても得ることができる。
【0034】そしてこの水溶性結合体によって、電解液中のリン酸イオンを長時間にわたって適正量に保つことができる。すなわち、電解液中のリン酸イオンは電極箔から溶出するアルミニウムと反応して減少していくが、そうなると、水溶性結合体がリン酸イオンを放出して、電解液中のリン酸イオンを適正量に保つ作用をする。そして、この適正量のリン酸イオンはアルミニウムの溶解、またアルミニウムの水酸化物等の生成を抑制して、電極箔の劣化を抑制するので、アルミ電解コンデンサの放置特性が向上する。そして、電解液中のリン酸イオンと電解液中のアミノポリカルボン酸とアルミニウムからなる水溶性の錯体に結合したリン酸イオンは、電解液中のリン酸根として検出されるが、このリン酸根濃度は10?40000ppmに保持されている(電解液を2mmol/lの希硝酸で1000倍に希釈して、pH=2?3にして、リン酸イオンをイオンクロマト分析で定量した。)。
【0035】すなわち、電解液にリン酸イオンを添加したのみでは、リン酸イオンはアルミニウムと反応して電解液中から消失してしまうので、放置特性が劣化する。また、多量に添加した場合はさらに漏れ電流特性が劣化する。しかしながら、本発明のアルミ電解コンデンサにおいては、電解液中に適正量のリン酸イオンが長期間経過しても消失することなく存在して、良好な放置特性を維持することができ、漏れ電流特性も劣化することなく良好である。」

(2)0033段落の記載によれば、引用例における電解液は、「電解液作成中にアミノポリカルボン酸と、リン酸生成性化合物と、水溶液中でアルミニウムイオンを生成する化合物とを添加しても得ることができる」ものであり、また、「別途生成したこの水溶性結合体を、電解液に添加しても得ることができる」ものであるから、別途生成した水溶性結合体を電解液に添加する場合においても、該水溶性結合体は、アミノポリカルボン酸、リン酸生成性化合物、及び水溶液中でアルミニウムイオンを生成する化合物から生成されるものであることは明らかである。

(3)以上によれば、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「アミノポリカルボン酸、リン酸生成性化合物、及び、水溶液中でアルミニウムイオンを生成する化合物から生成された、アルミニウムにアミノポリカルボン酸とリン酸イオンが配位したキレート錯体からなる水溶性結合体を添加した電解コンデンサ用電解液。」


4.本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明の「リン酸生成性化合物」は、本願発明の「リン酸イオンを生成する化合物」に相当する。また、引用発明の「水溶性結合体」は、「アルミニウムにアミノポリカルボン酸とリン酸イオンが配位したキレート錯体からなる」ものであり、リン酸を含有する錯体であることは明らかであるから、本願発明の「リン酸を含有する水溶性金属錯体」に相当する。

(2)引用発明の「水溶液中でアルミニウムイオンを生成する化合物」は、通常、アルミニウム化合物であると解されるから、金属化合物である点で本願の「リン酸金属化合物」と共通するものである。したがって、引用発明の「アミノポリカルボン酸、リン酸生成性化合物、及び、水溶液中でアルミニウムイオンを生成する化合物から生成された」という構成は、リン酸イオンを生成する化合物と、金属化合物とから生成されたという点で、本願発明と共通する。

(3)以上によれば、本願発明と引用発明とは、
「リン酸イオンを生成する化合物と、金属化合物とから生成された、リン酸を含有する水溶性金属錯体を添加した電解コンデンサ用電解液。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)本願発明は、金属化合物が「リン酸金属化合物」であるのに対し、引用発明は、そのような特定をしていない点。


5.相違点についての当審の判断
(1)引用発明における「水溶性結合体」は「アルミニウムにアミノポリカルボン酸とリン酸イオンが配位したキレート錯体からなる」ものであるから、該「水溶性結合体」の生成時に、アミノポリカルボン酸及びリン酸イオン以外のアルミニウムと配位する可能性のある配位子を極力排除しようとすることは、当業者であれば直ちに察知し得る事項である。
したがって、引用発明の「アルミニウムイオンを生成する化合物」について、アルミニウムイオン及びリン酸イオンのみからなる化合物であり、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、化学大辞典編集委員会編「化学大辞典9縮刷版」共立出版株式会社発行の第794頁に記載されるように周知のリン酸アルミニウムを採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、該リン酸アルミニウムは、本願の0044段落に記載の実施例に示された化合物であり、本願発明の「リン酸金属化合物」に相当するものにほかならない。

(2)以上より、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-09 
結審通知日 2011-06-15 
審決日 2011-06-28 
出願番号 特願2002-92037(P2002-92037)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐久 聖子  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 酒井 英夫
小野田 誠
発明の名称 電解コンデンサ用電解液とその製造方法、およびそれを用いた電解コンデンサ。  

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