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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02C
管理番号 1241783
審判番号 不服2009-22782  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-20 
確定日 2011-08-11 
事件の表示 特願2006-535621「環状音響パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月29日国際公開、WO2005/090156、平成19年 4月12日国内公表、特表2007-509270〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年10月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年10月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年4月13日に国内書面とともに明細書、請求の範囲及び要約の翻訳文が提出され、平成20年11月26日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し平成21年1月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月16日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し同年11月20日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし25に係る発明は、平成21年1月21日付けで提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「騒音を減衰するようにされた航空機エンジンアセンブリであって、前記エンジンアセンブリは、
エンジンおよびファンアセンブリを中で支持するようにされた主部に結合された入口部を含むナセルと、
前記ナセルの内壁の一部を形成する一体型の環状音響パネルとを含み、前記環状音響パネルは、前記入口部の前方部分から前記主部の前方部分に延在し、
前記環状音響パネルは、エンジンおよびファンアセンブリのうち少なくとも一方の騒音信号と整合するようにチューニングされた、航空機エンジンアセンブリ。」

3.原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-280614号公報(以下、「引用例」という。)
(1)引用例の記載事項
引用例には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、アンダーラインは、発明の理解の一助として、当審おいて付したものである。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、ジェット航空機のターボ・ファン・エンジンによって発生される主な振動数を減衰させるように設計されたエンジン吸気口音響バレルに関する。」(段落【0001】)
(イ)「【0019】好ましい実施例によって例示される本発明の目的は、音波が侵す側の孔を有する及び/或いは微細多孔性の表面シートの音響及び構造の態様に於て、如何なる不均一性或いは不連続性をもできる限り小さくすることと、更に加えて周囲の方向で多孔性の相関体(correlator)及び多孔性でない/孔を有さない裏張りシートの連続性を維持することである。この構造は、1)一定の幾何学的形状及び孔を有する表面シート、コアの奥行、等に本来備わっている基本的に調整された音響インピーダンスによってより良い騒音減衰を可能にするエンジンによって生成される音響モードの純粋度の保持、2)全有効音響領域の増加、及び3)吸気口バレルの構造的特徴の改良に役立つ。」(段落【0019】)
(ウ)「【0020】
【実施例】本発明の好ましい実施例によると、バレルの長手方向に向いた断面から見て、音響ライナ吸気口バレルは、図1(a)、1(b)、及び1(c)に示されるような結合部を持つ3つの部品よりも、むしろ連続する1つの部品として形成される。この一片の音響ライナ吸気口バレルの設計は図2(a)及び図2(b)に略図で示される。基本的に、図2(a)及び図2(b)に示されるライナ吸気口バレルは、図2(a)に示されるように、連続する一片のライナを作り、ライナの両方の結合端部を結合部21で一緒にするか、或いは色々な技術を使って、図2(b)で示されるような結合部が全く無い完成品にすることによって形成される。」(段落【0020】)
(エ)「【0023】実際には、別々の微細多孔性の層の具備を要求しない実施例の構造は、内側から外側に向って、多孔性の層状組織23(審決注:「25」の誤記と認める。)、接着層(図示されていない)、ハニカム・コア24、接着層(図示されていない)、孔を有さない、連続した、裏張り表面シート25(審決注:「23」の誤記と認める。)から構成されるであろう。…(後略)…」(段落【0023】)
(オ)「【0026】…(中略)…これらは、エンジン・フレーム30がバレルの後方端部に取付けられる一体型エンジン装着フランジ20と、防火壁リング・フレーム取付けフランジ21と、前方端部へのL.E.リング・フレーム取付けフランジ22とを具備する。図3及び5(b)は、孔を有する表面シート25、ハニカム・コア24、及び孔のない表面シート23も示す。図3及び5(b)のバレル構造は、一つの結合部を有するか或いは全く結合部を有さないかの何れかであり得る。構造の一部は切取られてコア24を見せている。」(段落【0026】)
(カ)「【0027】別の好ましい実施例に於て、図4及び5(c)に示されるように、取付けフランジを組立てることによって防火壁リング・フレームとL.E.リング・フレームとを加えて、図5(a)及び5(b)(審決注:「図5(c)」の誤記と認める。)で示される防火壁リング29′及びL.E.リング28′で従来の構造28及び29を置き換えることが可能である。…(後略)…」(段落【0027】)
(キ)「【図面の簡単な説明】
…(中略)…
【図5】(a)は、最新の技術の音響ライナを持つ従来のジェット・エンジン・ナセル構造の側断面図であり、(b)は図3のバレル組立ての側断面図であり、(c)は図4のバレル組立ての側断面図である。」(【図面の簡単な説明】)
(ク)【図5】b及びcには、「エンジン吸気口音響バレル(ライナ吸気口バレル)は、ジェット・エンジン・ナセル構造の内壁の一部を形成する」ように描かれている。

(2)引用例に記載された発明
上記(1)及び図面の記載を総合すると、引用例には、
「騒音を減衰するようにされたジェット航空機のターボ・ファン・エンジンであって、前記ジェット航空機のターボ・ファン・エンジンは、
ジェット・エンジン・ナセル構造と、
前記ジェット・エンジン・ナセル構造の内壁の一部を形成する結合部が全く無いエンジン吸気口音響バレルとを含み、
前記エンジン吸気口音響バレルは、ジェット航空機のターボ・ファン・エンジンによって発生される主な振動数を減衰させるように設計された、ジェット航空機のターボ・ファン・エンジン。」
なる発明(以下、「引用例に記載された発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、引用例に記載された発明における「ジェット航空機のターボ・ファン・エンジン」は、その技術的意義からみて、本願発明における「航空機エンジン」に相当し、以下同様に、「ジェット・エンジン・ナセル構造」は「ナセル」に、「結合部が全く無いエンジン吸気口音響バレル」は「一体型の環状音響パネル」に、それぞれ相当する。
そうすると、本願発明と引用例に記載された発明は、
「騒音を減衰するようにされた航空機エンジンアセンブリであって、前記エンジンアセンブリは、
ナセルと、
前記ナセルの内壁の一部を形成する一体型の環状音響パネルとを含む、
航空機エンジンアセンブリ。」
の点で一致し、以下の(1)及び(2)の点で相違している。
(1)本願発明においては、「ナセル」は、「エンジンおよびファンアセンブリを中で支持するようにされた主部に結合された入口部を含」み、「環状音響パネル」は、「前記入口部の前方部分から前記主部の前方部分に延在」するのに対し、
引用例に記載された発明においては、「ジェット・エンジン・ナセル構造」は、エンジンおよびファンを中で支持するようにされた主部に結合された入口部を含むのか否か明らかでなく、したがって、「エンジン吸気口音響バレル」は、前記入口部の前方部分から前記主部の前方部分に延在するのか否か明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。
(2)本願発明においては、「環状音響パネル」は、「エンジンおよびファンアセンブリのうち少なくとも一方の騒音信号と整合するようにチューニングされ」ているのに対し、
引用例に記載された発明においては、「エンジン吸気口音響バレル」は、ジェット航空機のターボ・ファン・エンジンによって発生される主な振動数を減衰させるように設計されているにすぎない点(以下、「相違点2」という。)。

4.当審の判断
上記相違点1及び2について、以下に検討する。
(1)相違点1について
騒音を減衰するようにされた航空機エンジンアセンブリにおいて、「ナセルが、エンジンおよびファンアセンブリを中で支持するようにされた主部に結合された入口部を含み、環状音響パネルが、前記入口部の前方部分から前記主部の前方部分に延在する」構成は、周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5,259,724号明細書及び特表平6-508935号公報並びに新たに提示する米国特許第4,534,167号明細書、参照。)である。
そうすると、上記周知技術を引用例に記載された発明における「結合部が全く無いエンジン吸気口音響バレル」に適用することにより、エンジンおよびファンアセンブリを中で支持するようにされた主部に結合された入口部を含むナセルとし、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到することができたことである。
(2)相違点2について
引用例に記載された発明における「エンジン吸気口音響バレル」は、ジェット航空機のターボ・ファン・エンジンによって発生される主な振動数を減衰させるように設計されている。そうすると、引用例に記載された発明において、「エンジン吸気口音響バレル」をエンジンおよびファンアセンブリのうち少なくとも一方の騒音信号と整合するように設計することは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
そして、製造誤差等を排除すべく、「エンジン吸気口音響バレル」をエンジンおよびファンアセンブリのうち少なくとも一方の騒音信号と整合するようにエンジンアセンブリの組立後等に最終的に調整すること、すなわち、「チューニング」することは、普通に行われていることと推定される。なお、本願の明細書の段落【0002】の発明の背景に関する「音響処理を「チューニング」してソース騒音に最も良く整合させる」の記載及び段落【0018】の「環状音響パネル46のチューニングは、音響減衰技術では公知の適切なやり方で行なうことができる。」の記載は、音響パネルの「チューニング」が普通に行われていることを示唆している。

しかも、本願発明を全体としてみても、その作用効果は、引用例に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-28 
結審通知日 2011-02-22 
審決日 2011-03-07 
出願番号 特願2006-535621(P2006-535621)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 弘  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 西山 真二
中川 隆司
発明の名称 環状音響パネル  
代理人 小林 義教  
代理人 園田 吉隆  

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