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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1241794
審判番号 不服2010-3475  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-17 
確定日 2011-08-11 
事件の表示 特願2008-150490「画像処理装置、画像処理装置の制御方法、および記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月25日出願公開、特開2008-312204〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年3月27日に出願した特願平10-80090号の一部を平成17年10月11日に新たな特許出願(特願2005-295815号)とし、その一部を平成20年6月9日にさらに新たな特許出願としたものであって、平成21年8月12日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成21年10月19日付けで手続補正がなされたが、平成21年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年2月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年2月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
少なくとも印刷部を含む機能を有し、符号化された命令列を解釈プログラムに解釈させることで処理を実行する画像処理装置において、
オペレーティングシステムの上位の層にある前記解釈プログラムにより解釈される命令列を含む制御プログラムであって尚且つ前記オペレーティングシステムに依存せず他の画像形成装置においても動作可能な制御プログラムと、前記画像処理装置内の前記オペレーティングシステムのもとで動作する所定のライブラリと、前記画像処理装置が有する機能を動作させるデバイスドライバプログラムとを記憶する記憶手段と、
前記制御プログラムに含まれる前記命令列が、前記解釈プログラムにより解釈されることにより、前記制御プログラムと、前記印刷部を有する画像処理装置内のオペレーティングシステムに対して組み込まれる、デバイスドライバプログラムであって尚且つ前記画像形成装置の制御回路を制御することにより前記画像処理装置が有する印刷に関わる機能を動作させるデバイスドライバプログラム、との間にプログラミングインタフェースとして定義される前記所定のライブラリを用いて、前記画像処理装置が有する機能を動作させるデバイスドライバプログラムをハードウェアのプロセッサにより実行する実行手段とを備え、
前記実行手段は、前記オペレーティングシステムを前記ハードウェアのプロセッサにより実行し、
前記符号化された命令列の解釈処理は、画像処理装置内に存在する前記オペレーティングシステムの上位の層に設けられている前記解釈プログラムにおいてなされることを特徴とする画像処理装置。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか。)について以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶理由に引用された特開平8-289068号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付した。

(1)
「【0012】
【実施例】本発明の好適な実施例を図1および図2を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例に係る複合型デジタル複写機の要部の概念的構成を表したものである。この複合型デジタル複写機は、第1の中央処理装置モジュールとしてのCPUモジュール1と、第2の中央処理装置モジュールとしてのCPUモジュール2と、CPUモジュール1とCPUモジュール2とを接続する双方向バス3と、図示しない複写機エンジンとを備えている。
【0013】CPUモジュール1は、液晶表示装置、タッチパネル、フロッピーディスク装置およびハードディスク装置等の基本的な入出力装置をサポートする基本プログラムであるオペレーティングシステム(OS)11と、このOS11の下で動作する各種のアプリケーションプログラム群12と、後述する各論理ユニットを制御するためのプログラムである論理ユニット制御ライブラリ13とを具備している。アプリケーションプログラム群12は、複写機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能、プリンタ機能等の各種機能に対する操作に関する制御を行うためのもので、各機能に対応して複写アプリケーション、ファクシミリ(FAX)アプリケーション、スキャナアプリケーション、プリンタアプリケーション等のプログラムから構成されている。そして、このCPUモジュール1の側には、図示しないが、従来の通常のパーソナルコンピュータが有するものと同程度のハードウェアとOSとが備えられている。
【0014】一方、CPUモジュール2は、この複合型デジタル複写機が有する各機能を実際に提供するリソースとしての複写機エンジン(例えば、スキャナ、プリンタ、ADF等)を制御する基本プログラムであるオペレーティングシステム(OS)21と、このOS21の下に複写機エンジンの各機能ごとに独立して設けられ、各機能をそれぞれエミュレートする論理ユニットからなる論理ユニットエミュレータ群22とを具備している。さらに、このCPUモジュール2は、CPUモジュール1の論理ユニット制御ライブラリ13が発行するコマンドを解読して論理ユニットエミュレータ群22内の各論理ユニットに内部コマンドを発行するコマンド制御部23と、複写機エンジンの実際の制御を司るエンジン制御モジュール24とを具備している。【0015】論理ユニットエミュレータ群22の各論理ユニットは、それぞれ対応するアプリケーションプログラムから個別に利用可能なインターフェースとして機能するようになっており、以下の論理ユニットから構成される。システム論理ユニット31は、複写機エンジンの各種状態(例えば、ドアオープン、用紙ジャム等)をCPUモジュール1に通知する。また、複写機論理ユニット32は、CPUモジュール1からの複写コマンドを実行し、各種状態(排紙カウント等)をCPUモジュール1に通知する。
【0016】ファクシミリ論理ユニット33は、CPUモジュール1からのファクシミリコマンドを実行し、各種状態(残紙量等)をCPUモジュール1に通知する。スキャナ論理ユニット34は、CPUモジュール1からのスキャナコマンドを実行し、各種状態をCPUモジュール1に通知する。プリンタ論理ユニット35は、CPUモジュール1からのプリントコマンドを実行し、各種状態をCPUモジュール1に通知する。画像編集論理ユニット36は、CPUモジュール1からの要求に応じ、変倍、回転、圧縮、伸長等の画像編集処理を実行する。双方向バス3は、例えばSCSI-2(Small-Computer-System-Interface-2)や双方向セントロニクス等の双方向のデータ通信が可能なデータバスである。
【0017】次に、以上のような構成の複合型デジタル複写機の動作を説明する。CPUモジュール2における論理ユニットエミュレータ群22の各論理ユニットは、動作モードとして、CPUモジュール1のアプリケーションプログラム群12から受け取った画像データを所定の形式で保持する画像保持モードを有している。この画像保持モードに設定されているときは、各論理ユニットはアプリケーションプログラム群12からの指示に応じて、その保持している画像データを他の論理ユニットに転送するようになっている。これにより各論理ユニット間での様々な融合処理が可能である。例えば、プリンタ論理ユニット35は、画像保持モードにおいてCPUモジュール1からプリントコマンドとプリントデータを受け取ると、印刷を行わずに、その画像データをビットマップデータとして保持し、そのコマンドを終了する。」

(2)そうすると、引用刊行物には、次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「液晶表示装置、タッチパネル、フロッピーディスク装置およびハードディスク装置等の基本的な入出力装置をサポートする基本プログラムであるオペレーティングシステム(OS)11と、このOS11の下で動作する各種のアプリケーションプログラム群12と、後述する各論理ユニットを制御するためのプログラムである論理ユニット制御ライブラリ13とを具備しているCPUモジュール1と、
複写機エンジン(例えば、スキャナ、プリンタ、ADF等)を制御する基本プログラムであるオペレーティングシステム(OS)21と、このOS21の下に複写機エンジンの各機能ごとに独立して設けられ、各機能をそれぞれエミュレートする論理ユニットからなる論理ユニットエミュレータ群22と、CPUモジュール1の論理ユニット制御ライブラリ13が発行するコマンドを解読して論理ユニットエミュレータ群22内のプリンタ論理ユニット35などの各論理ユニットに内部コマンドを発行するコマンド制御部23と、複写機エンジンの実際の制御を司るエンジン制御モジュール24とを具備しているCPUモジュール2とを備え、
例えば、プリンタ論理ユニット35は、画像保持モードにおいてCPUモジュール1からプリントコマンドとプリントデータを受け取ると、印刷を行わずに、その画像データをビットマップデータとして保持し、そのコマンドを終了するものである複合型デジタル複写機。」

3. 対比・判断
(1)本願補正発明と刊行物発明との対比
刊行物発明は、「CPUモジュール1の論理ユニット制御ライブラリ13が発行するコマンド」を「CPUモジュール2」が受け取るものであって、例えば、「CPUモジュール1からプリントコマンドとプリントデータを受け取る」ものであるから、前記「論理ユニット制御ライブラリ13が発行するコマンド」には、「コマンド」と「データ」とを含むものである。ここで、刊行物発明の「コマンド」は、本願補正発明の「命令列」に対応する。
それゆえ、刊行物発明の「論理ユニット制御ライブラリ13が発行するコマンド」は、命令列を含むものであって、本願補正発明の「制御プログラム」に対応する。
なお、本願の明細書には、「モバイルエージェント」が記載されているが、本願の請求項1に記載された発明は、「制御プログラム」が「モバイルエージェント」に限定されているものではない。

刊行物発明は、「プリンタ」などを含む「複合型デジタル複写機」であるから、「少なくとも印刷部を含む機能を有した画像処理装置」であるといえる。

刊行物発明の「エンジン制御モジュール24」は、「例えば、スキャナ、プリンタ、ADF等」の「複写機エンジン」を制御するものであるから、本願補正発明の「画像処理装置が有する機能を動作させるデバイスドライブプログラム」に相当するものであって、かつ、「印刷部を有する画像処理装置内のオペレーティングシステムに対して組み込まれるデバイスドライバプログラムであって尚且つ前記画像形成装置の制御回路を制御することにより前記画像処理装置が有する印刷に関わる機能を動作させるデバイスドライバプログラム」に相当する。

刊行物発明の「論理ユニットエミュレータ群22」は、「オペレーティングシステム(OS)21と、このOS21の下に複写機エンジンの各機能ごとに独立して設けられ」、「例えば、スキャナ、プリンタ、ADF等」の「複写機エンジン」の「各機能をそれぞれエミュレートする」ものであって、「コマンド制御部23」が解読した「CPUモジュール1の論理ユニット制御ライブラリ13が発行するコマンド」である「内部コマンド」を受けて、「複写機エンジンの実際の制御を司るエンジン制御モジュール24」を制御するもの、すなわち、「内部コマンド」と「エンジン制御モジュール24」とのインタフェースとなるものである。
それゆえ、刊行物発明の「論理ユニットエミュレータ群22」は、本願補正発明の「前記画像処理装置内の前記オペレーティングシステムのもので動作する所定のライブラリ」に相当するものであって、かつ、(本願補正発明の「制御プログラム」に対応する)「CPUモジュール1の論理ユニット制御ライブラリ13が発行するコマンド」と(本願補正発明の「デバイスドライバプログラム」に相当する)「エンジン制御モジュール23」との間に「プログラミングインタフェースとして定義される前記所定のライブラリ」に相当する。

刊行物発明の「コマンド制御部23」は、「CPUモジュール1の論理ユニット制御ライブラリ13が発行するコマンドを解読して論理ユニットエミュレータ群22内のプリンタ論理ユニット35などの各論理ユニットに内部コマンドを発行する」ものである。
ここで、刊行物発明の「コマンド制御部23」によるコマンドの「解読」は、本願補正発明の「解釈」と実質的に同一である。
つまり、刊行物発明は、「CPUモジュール1の論理ユニット制御ライブラリ13が発行するコマンド」が、「コマンド制御部23」により「解読」されて「論理ユニットエミュレータ群22内のプリンタ論理ユニット35などの各論理ユニットに内部コマンドを発行する」ものであり、最終的には、上記したように、本願補正発明の「デバイスドライバプログラム」に相当する「エンジン制御モジュール24」によって、「例えば、スキャナ、プリンタ、ADF等」の「複写機エンジン」を制御するものであって、これは、本願補正発明の「制御プログラムに含まれる前記命令列」が、「前記解釈プログラムにより解釈されることにより」、「前記所定のライブラリを用いて、前記画像処理装置が有する機能を動作させるデバイスドライバプログラムをハードウェアのプロセッサにより実行する」ことと実質的に同一であるから、刊行物発明の「解読」と本願補正発明の「解釈」とに実質的な差異はない。
それゆえ、刊行物発明の「コマンド制御部23」は、本願補正発明の「解釈プログラム」に相当する。

また、刊行物発明の「コマンド制御部23」が“プログラム”に該当するものか否かは明確ではない。しかし、「論理ユニットエミュレータ群22」は「CPUモジュール2」の「オペレーティングシステム(OS)21」の下に設けられているもの、すなわち、「論理ユニットエミュレータ群22」は“プログラム”であり、該「論理ユニットエミュレータ群22」に対して「内部コマンドを発行するコマンド制御部23」は、「コマンド」の授受の観点からみれば、該「論理ユニットエミュレータ群22」と対等なものであって、“プログラム”である、あるいは少なくとも“プログラム”を含むものと解釈するのが相当である。
そして、一般に、画像処理装置を含めた情報処理装置において、“プログラム”は、オペレーティングシステムの上位の層に設けられて動作するものであるから、本願補正発明の「解釈プログラム」に相当する刊行物発明における「コマンド制御部23」も、「オペレーティングシステムの上位の層に設けられている」ものと解される。
なお、刊行物発明と本願補正発明とにおいて、オペレーティングシステムの「上」か「下」かは表現上の差異にすぎず、刊行物発明において「オペレーティングシステム」の「下」に設けられているとすることと、本願補正発明において「オペレーティングシステム」の「上位の層」に設けられているとすることとに実質的な差異はない。

引用刊行物には明示はないものの、刊行物発明の「エンジン制御モジュール23」がハードウェアのプロセッサにより実行されることは明らかであるから、刊行物発明は、本願補正発明と同様に「デバイスドライバプログラムをハードウェアのプロセッサにより実行する実行手段」を備え、「前記実行手段は、前記オペレーティングシステムを前記ハードウェアのプロセッサによって実行」しているといえる。

引用刊行物には、本願補正発明の「記憶手段」に対応する手段が明示的には記載されていないが、CPUを備え、オペレーティングシステムの制御の下に動作するCPUモジュールが、本願補正発明の「制御プログラム」に対応する「論理ユニット制御ライブラリ13が発行するコマンド」や、本願補正発明の「所定のライブラリ」に相当する「エンジン制御モジュール23」や、本願補正発明の「デバイスドライバプログラム」に相当する「エンジン制御モジュール24」が記憶された記憶手段を備えていることは明らかである。

したがって、本願補正発明と刊行物発明とは、以下の点で一致し、相違する。
[一致点]
「少なくとも印刷部を含む機能を有し、命令列を解釈プログラムに解釈させることで処理を実行する画像処理装置において、
オペレーティングシステムの上位の層にある前記解釈プログラムにより解釈される命令列を含む制御プログラムと、前記画像処理装置内の前記オペレーティングシステムのもとで動作する所定のライブラリと、前記画像処理装置が有する機能を動作させるデバイスドライバプログラムとを記憶する記憶手段と、
前記制御プログラムに含まれる前記命令列が、前記解釈プログラムにより解釈されることにより、前記制御プログラムと、前記印刷部を有する画像処理装置内のオペレーティングシステムに対して組み込まれる、デバイスドライバプログラムであって尚且つ前記画像形成装置の制御回路を制御することにより前記画像処理装置が有する印刷に関わる機能を動作させるデバイスドライバプログラム、との間にプログラミングインタフェースとして定義される前記所定のライブラリを用いて、前記画像処理装置が有する機能を動作させるデバイスドライバプログラムをハードウェアのプロセッサにより実行する実行手段とを備え、
前記実行手段は、前記オペレーティングシステムを前記ハードウェアのプロセッサにより実行し、
前記符号化された命令列の解釈処理は、画像処理装置内に存在する前記オペレーティングシステムの上位の層に設けられている前記解釈プログラムにおいてなされることを特徴とする画像処理装置。」

[相違点]
本願補正発明は、符号化された命令列を含む制御プログラムであって、オペレーティングシステムに依存せず他の画像処理装置においても動作可能な制御プログラムを用いるのに対して、刊行物発明は、制御プログラムに含まれる命令列が符号化されているか否か不明であり、また、オペレーティングシステムに依存せず他の画像処理装置においても動作可能な制御プログラムとなっているか否か不明である点。

(2)相違点に対する判断
「オペレーティングシステムの上位の層にある解釈プログラムにより解釈される命令列を含む」プログラムは、Java言語等にみられるように周知であり、そのようなJava言語が、(例えば、本願補正発明のような画像処理装置がそこに含まれるものである)組み込みシステムや情報家電などの分野で用いられることも周知である(例えば、原査定に提示された“三好昭彦、喜多山卓郎、徳田英幸著 「JavaのReal-Time拡張」,情報処理学会研究報告[システムソフトウェアとオペレーティングシステム],日本,情報処理学会,1997年 6月 5日,第97巻第56号,p.67?72,97-OS-75-12”の第68頁左欄第7行?第9行参照。)。
そうすると、刊行物発明において、コマンド制御部23に伝えられ、CPUモジュール2を制御する制御プログラムとして、Java言語等にみられるような、オペレーティングシステムに依存せず他の情報処理装置においても動作可能な制御プログラムを用いることに格別の創意工夫が必要とされるものとはいえない。

また、命令列の符号化に関して、本願の明細書には、「画像処理装置1および図1のクライアント3,8内のインタプリタはモバイルエージェントオブジェクトの命令列の解釈実行中にgoオペレーションを発見すると、オブジェクトエンコーダによってその時点の該オブジェクトに含まれるすべての実行に係るデータと命令列とをそれらのデータ構造を復元可能な符号化方法によって符号化し、符号化したパッケージをネットワークパケットとしてgoオペレーションの引数に指定されたノード(たとえば画像処理装置1)のインタプリタに宛てて転送する。」(段落【0050】)との記載がある。
しかし、本願の請求項1に記載された事項は、そのような「その時点の該オブジェクトに含まれるすべての実行に係るデータと命令列とをそれらのデータ構造を復元可能な符号化方法によって符号化」した命令列に限定されているものではなく、単に、命令列が何らかに符号化されているだけである。
一般に、制御プログラムを含む情報データを送るときに、これを符号化することは、ごく普通に行われていることにすぎないから、仮に、Java言語におけるスレッドが符号化されたものでないとしても、そのようなスレッドを符号化することは当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。

したがって、本願補正発明は、刊行物発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成22年2月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年10月19日付けで手続補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも印刷部を含む機能を有し、符号化された命令列を解釈させることで処理を実行する画像処理装置において、
オペレーティングシステムの上位の層にある解釈プログラムにより解釈される命令列を含む制御プログラムであって尚且つオペレーティングシステムに依存せず他の画像形成装置においても動作可能な制御プログラムと、画像処理装置内のオペレーティングシステムのもとで動作する所定のライブラリと、前記画像処理装置が有する機能を動作させるデバイスドライバプログラムとを記憶する記憶手段と、
前記制御プログラムに含まれる前記命令列が、前記解釈プログラムにより解釈されることにより、前記制御プログラムと、前記印刷部を有する画像処理装置内のオペレーティングシステムに対して組み込まれる、デバイスドライバプログラムであって尚且つ前記画像形成装置の制御回路を制御することにより前記画像処理装置が有する印刷に関わる機能を動作させるデバイスドライバプログラム、との間にプログラミングインタフェースとして定義される前記所定のライブラリを用いて、前記画像処理装置が有する機能を動作させるデバイスドライバプログラムを実行する実行手段とを備え、
前記命令列は、画像処理装置内に存在する前記オペレーティングシステムの上位の層に設けられている、前記解釈プログラムにおいて解釈処理がなされることを特徴とする画像処理装置。」

1.引用刊行物
原審拒絶理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記第2 2.に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明の限定事項である構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2 3.に記載したとおり、刊行物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.まとめ
したがって、本願発明は、刊行物発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-08 
結審通知日 2011-06-14 
審決日 2011-06-28 
出願番号 特願2008-150490(P2008-150490)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松尾 淳一  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 板橋 通孝
古川 哲也
発明の名称 画像処理装置、画像処理装置の制御方法、および記憶媒体  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  

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