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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1241799
審判番号 不服2010-6250  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-23 
確定日 2011-08-11 
事件の表示 特願2005-118681「再生装置、再生方法、再生プログラム及びデータ再生システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 2日出願公開、特開2006-302345〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年4月15日の出願であって、平成20年12月5日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成21年2月9日付けで手続補正がなされ、同年4月22日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年6月29日付けで手続補正がなされたが、同年12月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年3月23日付けで拒絶査定不服審判請求及び手続補正がなされたものである。
なお、平成23年2月14日付けで審尋がなされたが、請求人からは回答がなされなかった。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年3月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
データとデータを通常再生するときの再生速度を示す速度情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
上記速度情報に基づいて、上記記憶部に記憶されているデータのなかから、ユーザ操作に応じて指定された任意の条件に合致するデータを検索する検索部と、
上記検索部により検索されたデータの再生順を規定する再生リストを生成する再生リスト生成部と、
ユーザ操作に応じて上記再生リストに含まれるデータを当該再生リストに規定された再生順に再生する再生部と、
ユーザ操作又は外部機器から供給される情報に応じて上記再生リストに対して指定された再生速度の条件に合致するように、当該再生リストに含まれるデータの再生速度を設定し、設定した再生速度で当該データを上記再生部に再生させる制御部と
を具える再生装置。」

3.引用列
(1)引用例1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-299980号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】 使用者の運動動作に同期する運動テンポを検出する運動センサと、
前記使用者の脈拍を検出して脈拍数を出力する脈拍センサと、
少なくとも運動の強度を含む使用条件を入力する使用条件入力手段と、
前記使用条件にもとづき、前記使用者の目標脈拍数の時間変化を作成する目標脈拍数時間関数発生手段と、
予め記憶した少なくとも1つの音楽データと、
前記目標脈拍数と前記使用者の現在の脈拍数とを比較し、その差にもとづく補正値を出力する脈拍比較手段と、
前記運動テンポを前記補正値で補正したテンポを演算するテンポ補正量演算手段と、
前記補正したテンポにもとづき、前記音楽データを補正する音楽データ補正手段と、
前記補正された音楽データにより前記音楽を再生する再生手段とを備えたことを特徴とする運動支援装置。」

イ.「【0020】
【発明の実施の形態】理解を助けるため、以下の説明で用いる「テンポ」、「運動のテンポ」について、下記のように定義する。
「テンポ」 =単位時間当たりの刺激の回数、慣習として速度とも言う。
「運動のテンポ」=運動動作の単位時間当たりの動作回数。
「音楽の本来のテンポ」=その音楽のもともとのテンポ(補正を行う以前のテンポ)。
【0021】実施の形態1.この発明の実施の形態1による運動支援装置の構成を説明するブロック図を図1に、また、その使用状態を図2に、その動作を信号の流れとして説明するための機能回路図を図3に、また、図3の動作を説明するための特性図を図4に示す。 図1に於いて、30はこの運動支援装置の中央処理装置(以下CPU)で以下に説明する全ての装置や手段が、バス45を介して接続されている。31は運動センサで、例えば使用者の腰や腕、脚などに取り付けた加速度センサにより、運動による上下動や振動に同期した運動テンポ信号(タイミング信号)をピックアップする。32は脈拍センサで人の耳たぶ、腕、指などに装着して公知の技術により脈拍に同期したタイミング信号をピックアップする。」

ウ.「【0025】次に動作について、図3の動作説明用の機能回路図にもとづき説明する。図3の44a?44nはメモリ44に収納されている複数の音楽データである。52は音楽データのなかから特定の一つを選択する音楽データ選択手段、53は選択された音楽データを示す。最初に使用条件入力手段35から(入力装置33を用いて)、たとえば以下の項目を入力するか、またはあらかじめ登録してある項目のなかから選択する。
a)ここで始める運動の強度、例えば「ウォーキング」、「ジョギング」、「スカイウオーカ」その他の種類、速い、遅い、普通など運動の程度。
b)この運動の継続予定時間、例えば1時間とか3時間など。
c)使用する音楽の曲名、または、種類。
d)安静時の自分の脈拍数。
【0026】目標脈拍数時間関数発生手段36aは、上記の入力項目をもとに、この使用者の目標脈拍数の運動開始時点から終了時点に至るまでの脈拍数の時間変化パターンを作成し、使用者が入力するスタート信号後の、経過時間に応じて変化する出力HBd(t)(図4a)を発生する。図示しないスタートボタンをオンすると、まず、選択された音楽がその音楽の本来の再生テンポ(Tx)で再生されるので、使用者はその音楽に合わせて(音楽の選択が適切でなく音楽に合わせて運動することが難しい場合は、自分なりのペースで)運動を開始する。図4bは再生される音楽のテンポの変化を示している。
【0027】運動センサ31が使用者の運動テンポをパルス信号として検出し、これをもとに運動テンポ算出回路31aが運動のテンポWh(t)を算出する(図4c)。 次に、脈拍センサ32と脈拍数算出回路32aにより求められた脈拍数HB(t)(図4d)と、目標脈拍数HBd(t)との差 HBd(t)-HB(t)=ΔH(t)…(1) (図4e)
が脈拍比較回路36bにより演算される。
【0028】次に、音楽のテンポ補正量演算手段38aにより、この脈拍数の差ΔH(t)がゼロとなる方向に使用者の運動テンポを補正するに要する補正値が、音楽のもとのテンポTxにΔH(t)と所定の定数(A)とを乗じて算出され、この補正値が使用者の運動のテンポの所定倍数D・Wh(t)に加算されて、補正された音楽のテンポWm(t)が算出される。(図4f)
Wm(t)=D・Wh(t)+A・ΔH(t)・Tx
=D・Wh(t)+A・〔HBd(t)-HB(t)〕・Tx
…(2)
ここで、 0.5≦D≦2 で、任意に設定可能である。例えば、Dが2であれば、運動の2倍のテンポの音楽となるが、音楽の種類によってはこの方が合わせやすいということもある(必ずしも運動テンポを2倍にするという意味ではない)。こうして決定された出力テンポWm(t)により選択された音楽のデータ52が音楽データの補正回路38bにより補正され、補正されたテンポで音楽が再生される。このとき、曲の途中で急にテンポが大きく変わると違和感を覚えるので、時間をかけてゆっくり変化するように徐々に補正が行われる。即ち、早くとも1分間に20%程度以下の変化ペースでテンポが変更されることが好ましい。」

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「予め複数の音楽データが収納されているメモリと、
使用者の運動動作に同期する運動テンポを検出する運動センサと、
前記使用者の脈拍を検出して脈拍数を出力する脈拍センサと、
目標脈拍数と前記使用者の現在の脈拍数とを比較し、その差にもとづく補正値を出力する脈拍比較手段と、
前記運動テンポを前記補正値で補正したテンポを演算するテンポ補正量演算手段と、
前記補正したテンポにもとづき、前記音楽データの本来のテンポ(もともとのテンポ)を補正する音楽データ補正手段と、
スタートボタンをオンとすると、前記メモリに収納されている前記音楽データのなかから選択された音楽データであって、前記テンポ補正量演算手段及び前記音楽データ補正手段により補正された音楽データを再生する再生手段と、
全ての装置や手段とバスを介して接続された中央処理装置(CPU)と、
を備えたことを特徴とする運動支援装置」

(2)引用例2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-55993号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用した一実施形態の音楽再生装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の音楽再生装置の構成を示す図である。同図に示す音楽再生装置は、音楽情報格納部1、再生リスト格納部2、制御部3、時計4、操作部5、表示部6、デジタル-アナログ(D/A)変換部7、アンプ8、スピーカ9を含んで構成されている。
【0014】音楽情報格納部1は、複数の楽曲のそれぞれを再生するために必要な音楽情報を所定の分類情報に関連付けて格納する。なお、以下の説明では、音楽情報と分類情報をまとめて「楽曲データ」と称することとする。また、本実施形態では、音楽情報格納部1に格納する楽曲データとして、近年広く普及しているMP3方式に基づいて作成される楽曲データを想定している。
【0015】図2は、本実施形態における楽曲データのデータ構造を示す図である。図2(A)に示すように、本実施形態の楽曲データは、楽曲毎に、音楽情報をMP3方式により圧縮して作成した「圧縮音楽情報」と、この楽曲に関する各種の分類情報を示す「ID3タグ情報」を含んで構成されている。
・・・・・ (中 略) ・・・・・
【0017】これらのID3タグ情報のうちで、上記a?dに示したタイトル、アーティスト、アルバム、イヤーのそれぞれが楽曲毎に予め設定された「固定分類情報」に対応しており、上記eおよびfに示したコメント、ジャンルのそれぞれが利用者による操作に応じて内容が編集可能な「追加分類情報」に対応している。なお、MP3方式では、上述した「ジャンル」については、あらかじめ多数のジャンル指定候補が用意され、これらの中の1つを利用者が任意に選択して設定できるようになっている。また、「コメント」については、利用者が任意に各種の情報を入力することができるようになっており、本実施形態では、例えば、楽曲の雰囲気を示す“アップテンポ”や“柔らか”等の文字列が入力されている。
【0018】図3は、音楽情報格納部1に格納される楽曲データについて概略的に説明する図である。同図に示すように、音楽情報格納部1は、楽曲毎に所定の通し番号1、2、……が付加された楽曲データを格納しており、通し番号を指定することによって対応する楽曲の楽曲データを読み出すことができる。例えば、通し番号として1番を指定することにより、タイトルが“A”、アーティストが“U.H”、……、ジャンルが“ポップス”、コメントが“アップテンポ”である楽曲を読み出すことができる。」

イ.「【0021】制御部3は、音楽再生装置の全体動作を制御するものであり、再生リスト作成部30、音楽検索部32、音楽再生部34を含んで構成されている。再生リスト作成部30は、利用者から与えられる指示に応じて、複数の時間帯のそれぞれにおいて再生対象とする楽曲の種類を示す再生リスト情報(図4参照)を作成して再生リスト格納部2に格納する。」

ウ.「【0027】本実施形態の音楽再生装置はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。図5は、所定の再生リスト情報に基づいて音楽再生を行う際の音楽再生装置の動作手順を示す図である。なお、上述した図4に示した再生リスト情報が予め作成されて再生リスト格納部2に格納されており、この再生リスト情報に基づいて音楽再生が行われるものとして説明を行う。
【0028】利用者によって操作部5が操作されて所定の再生指示が入力されると(ステップ100)、音楽検索部32は、時計4から現在時刻を取得する(ステップ101)。次に、音楽検索部32は、現在時刻に応じた時間帯に対応する再生リスト情報を再生リスト格納部2から読み出し(ステップ102)、読み出した再生リスト情報に指定された種類(ジャンルおよびコメント)に該当する楽曲を抽出して再生候補曲リスト情報を作成する(ステップ103)。
【0029】図6は、音楽検索部32によって作成される再生候補曲リスト情報の具体例を示す図であり、一例として、上述したステップ101において取得した現在時刻が「8時?12時」の時間帯に属している場合の再生候補曲リスト情報が示されている。上述したように、8時?12時の時間帯においては「ジャンルが“ポップス”、コメントが“アップテンポ”である楽曲」、あるいは「ジャンルが“ダンス”、コメントが“柔らか”である楽曲」が指定されているので、これらの指定された種類に該当する楽曲を上述した図3に示した音楽情報の中から検索すると、図6に示すように、再生候補曲として、「タイトル“A”、アーティスト“U.H”」の楽曲、「タイトル“D”、アーティスト“H.A”」の楽曲、「タイトル“E”、アーティスト“H.A”」の楽曲、……、という各楽曲が抽出される。
【0030】再生候補曲リスト情報が作成されると、音楽再生部34は、必要な楽曲データを音楽情報格納部1から読み出し、再生候補曲リスト情報にしたがって楽曲を順次再生する(ステップ104)。なお、音楽再生部34による楽曲の再生は、例えば、再生候補曲リスト情報の先頭から順に行われるものとする。」

エ.「【0037】また、上述した実施形態では、音楽情報に関連付ける追加分類情報としての「コメント」に対して、楽曲の雰囲気を表す文字列を格納していたが、コメントとして格納する情報はこれに限定されるものではなく、楽曲の雰囲気以外の情報、例えば、曲のテンポやアーティストの国籍など種々の情報を格納することができる。また、コメントに対して、複数の情報(例えば、雰囲気とテンポ等)を格納するようにしてもよい。」

オ.「【0040】また、上述した再生リスト情報では、各時間帯において、ジャンルおよびコメントはそれぞれ2種類ずつ指定されていたが、これに限定されるものではなく、少なくは、ジャンルまたはコメントのいずれかについて1種類が指定されていればよく、より多くの種類を指定するようにしてもよい。」

特に追加分類情報としての「コメント」として曲のテンポを指定した場合(上記「エ.」「オ.」を参照)に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には「音楽再生装置」において、次の技術事項(以下、「引用例2に記載の技術事項」という。)が記載されている。
「圧縮音楽情報と、該音楽情報に関する追加分類情報である曲のテンポとを関連付けた楽曲データを格納する音楽情報格納部と、
利用者から与えられる指示に応じて、再生対象とする楽曲の種類として曲のテンポを示す再生リスト情報を作成し、該再生リスト情報に指定された曲のテンポに該当する楽曲を上記音楽情報格納部に格納されている楽曲データから検索して抽出し、再生候補曲リスト情報を作成する音楽検索部と、
上記再生候補曲リスト情報にしたがって先頭から楽曲を順次再生する音楽再生部と」を設けたこと。

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「音楽データ」、「メモリ」は、本願発明における「データ」、「記憶部」に相当し、
引用発明における「予め複数の音楽データが収納されているメモリと」によれば、本願発明と引用発明とは「データを記憶する記憶部と」を具える点で共通する。

(2)引用発明における「再生手段」は、本願発明における「再生部」に相当し、
引用発明における「スタートボタンをオンとすると、前記メモリに収納されている前記音楽データのなかから選択された音楽データであって、前記テンポ補正量演算手段及び前記音楽データ補正手段により補正された音楽データを再生する再生手段と」によれば、「スタートボタンをオンとする」ことは、ユーザ操作に他ならないから、本願発明と引用発明とは「ユーザ操作に応じて上記データを再生する再生部と」を具える点で共通する。

(3)引用発明における「運動センサ」及び「脈拍センサ」は、本願発明における「外部機器」に相当し、
また、引用発明における「テンポ」、「中央処理装置(CPU)」は、本願発明における「再生速度」、「制御部」に相当し、
引用発明における「使用者の運動動作に同期する運動テンポを検出する運動センサと、前記使用者の脈拍を検出して脈拍数を出力する脈拍センサと、目標脈拍数と前記使用者の現在の脈拍数とを比較し、その差にもとづく補正値を出力する脈拍比較手段と、前記運動テンポを前記補正値で補正したテンポを演算するテンポ補正量演算手段と、前記補正したテンポにもとづき、前記音楽データの本来のテンポ(もともとのテンポ)を補正する音楽データ補正手段と、スタートボタンをオンとすると、前記メモリに収納されている前記音楽データのなかから選択された音楽データであって、前記テンポ補正量演算手段及び前記音楽データ補正手段により補正された音楽データを再生する再生手段と、全ての装置や手段とバスを介して接続された中央処理装置(CPU)と」によれば、運動センサや脈拍センサから供給される情報に基づいて、テンポ補正量演算手段及び音楽データ補正手段によって所定の演算条件にしたがって補正されたテンポを設定するものであることからして、結局、本願発明と引用発明とは「外部機器から供給される情報に応じて指定された再生速度の条件に合致するように、上記データの再生速度を設定し、設定した再生速度で当該データを上記再生部に再生させる制御部と」を具える点で共通するといえる。

(4)そして、引用発明における「運動支援装置」は、「音楽データを再生する再生手段」を具えるものであり、音楽データを再生する装置とみることができるから、本願発明における「再生装置」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「データを記憶する記憶部と、
ユーザ操作に応じて上記データを再生する再生部と、
外部機器から供給される情報に応じて指定された再生速度の条件に合致するように、上記データの再生速度を設定し、設定した再生速度で当該データを上記再生部に再生させる制御部と
を具える再生装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本願発明では、記憶部にデータとともに「データを通常再生するときの再生速度を示す速度情報」とを対応付けて記憶し、「上記速度情報に基づいて、上記記憶部に記憶されているデータのなかから、ユーザ操作に応じて指定された任意の条件に合致するデータを検索する検索部と、上記検索部により検索されたデータの再生順を規定する再生リストを生成する再生リスト生成部と」を具え、再生部により「上記再生リストに含まれるデータを当該再生リストに規定された再生順に」設定した再生速度で再生するものであるのに対し、引用発明では、単にメモリに収納されている複数の音楽データのなかから選択された音楽データを補正したテンポで再生するものであり、本願発明のように「再生リスト」を生成していない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
楽曲を再生する再生装置において、ユーザの所望する楽曲を抽出して再生対象の順序を示す再生リスト(プレイリスト)を作成しておくことは周知の技術事項であるところ、例えば引用例2(前記「3.(2)」参照)や特開2003-15666号公報(特に段落【0040】参照)には利用者(ユーザ)が指定する曲のテンポすなわち曲本来の再生速度(本願発明でいう「通常再生するときの再生速度」)に基づいて楽曲を抽出して再生リストを作成することが記載されいる。特に引用例2には、圧縮音楽情報と曲のテンポとを関連付けて記憶しておくことや、利用者(ユーザ)から与えられる指示に応じて指定された条件である曲のテンポに該当する楽曲を検索する検索部及び検索された楽曲の再生順を規定する再生候補曲リスト情報を作成するリスト作成部(いずれも「音楽検索部」が該当)を具えることも記載されており、引用発明と引用例2に記載の技術事項とはともに、メモリに収納されている複数の音楽データのなかから再生する音楽データを選択して再生する装置に関するものである点において同一の技術分野に属するといえるから、引用発明においても、メモリに収納されている複数の音楽データのなかから音楽データを選択するにあたって、引用例2に記載の技術事項を適用し、ユーザが指定する曲のテンポに基づいて抽出された楽曲の再生順を示す再生リストを作成しておき、該再生リストに従って再生する音楽データを選択すること、すなわち音楽データと曲のテンポとを関連付けて記憶しておき、該曲のテンポに基づいて、記憶されている音楽データのなかからユーザ操作に応じて指定された条件に合致する音楽データを検索する検索部、及び検索された音楽データの再生順を規定する再生リストを作成する再生リスト作成部を設け、再生リストに含まれる音楽データを当該再生リストに規定された再生順に選択し、そして選択された音楽データを補正したテンポで再生するようにすることは当業者であれば容易になし得ることである。

なお、請求人は審判請求書において、「本願発明では、例えば、まず通常再生時の再生速度が所望の範囲内であるデータからなる再生リストを生成してから、この再生リストに含まれるデータの再生速度を所望の再生速度に調整して順に再生するようなことができる。このように、本願発明では、ユーザが指定した条件にもとづき、印象が似通ったデータを集めたうえで、これらのデータの再生速度を調整して再生することができ、結果として、ユーザが指定した再生速度の条件に合致するデータを、ユーザの好みの速度で、違和感なく再生することができるのである。」と主張しているが、本願請求項1には、再生リストを生成するに際してのデータ検索を「速度情報に基づいて」行うことは記載されているものの、単に「任意の条件」に合致するデータを検索すると記載されているにすぎず、必ずしも上記のように「再生速度が所望の範囲内である」あるいは「印象が似通った」データが検索され、再生リストの生成がなされるものとはいえず、請求人のかかる主張は請求項の記載に基づかない根拠のないものである。

そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び引用例2に記載の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-10 
結審通知日 2011-06-14 
審決日 2011-06-27 
出願番号 特願2005-118681(P2005-118681)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 洋介  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 井上 信一
石川 正二
発明の名称 再生装置、再生方法、再生プログラム及びデータ再生システム  
代理人 田辺 恵基  

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