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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1241810
審判番号 不服2010-16856  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-27 
確定日 2011-08-11 
事件の表示 特願2004- 93002「遊技媒体貸出機システム、及び遊技媒体の貸出数設定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月13日出願公開、特開2005-278674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年3月26日に特許出願されたものであって、
平成22年1月15日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して同年3月19日付けで手続補正書が提出されたが、
平成22年4月19日付けで拒絶査定がされたため、
これを不服として平成22年7月27日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。


2.平成22年7月27日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年7月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1) 本願補正発明
平成22年7月27日付け手続補正により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】
遊技機で遊技をする際に用いる遊技媒体を貸し出す複数の遊技媒体貸出機が遊技場内の第1通信ネットワークを介して相互に接続し、前記遊技場内の中継サーバが前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機と接続し、前記遊技場外の外部管理サーバが第2通信ネットワークを介して前記中継サーバと接続する遊技媒体貸出機システムであって、
前記外部管理サーバには、一定の金額に対して貸し出される前記遊技媒体の数に相当する貸出数の情報を前記第2通信ネットワークを介して前記中継サーバへ送信する貸出数管理手段が備えられ、
前記中継サーバには、前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報を含み、かつ、当該貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンドを前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機へ送信する転送手段が備えられ、
前記各遊技媒体貸出機には、前記中継サーバから受信した前記設定コマンドに基づいて前記貸出数を設定する設定手段が備えられることを特徴とする遊技媒体貸出機システム。
【請求項2】
遊技機で遊技をする際に用いる遊技媒体を貸し出す複数の遊技媒体貸出機が遊技場内の第1通信ネットワークを介して相互に接続し、前記遊技場内の中継サーバが前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機と接続し、前記遊技場外の外部管理サーバが第2通信ネットワークを介して前記中継サーバと接続する遊技媒体貸出機システムであって、
前記外部管理サーバには、前記中継サーバからの設定要求に応じて、一定の金額に対して貸し出される前記遊技媒体の数に相当する貸出数の情報を前記第2通信ネットワークを介して当該中継サーバへ送信する貸出数管理手段が備えられ、
前記中継サーバには、前記各遊技媒体貸出機に前記貸出数を設定する旨を要求する設定要求を前記第2ネットワークを介して前記外部管理サーバへ送信する設定要求手段と、
前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報を含み、かつ、当該貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンドを前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機へ送信する転送手段とが備えられ、
前記各遊技媒体貸出機には、前記中継サーバから受信した前記設定コマンドに基づいて前記貸出数を設定する設定手段が備えられることを特徴とする遊技媒体貸出機システム。
【請求項3】
遊技機で遊技をする際に用いる遊技媒体を貸し出す複数の遊技媒体貸出機が遊技場内の第1通信ネットワークを介して相互に接続し、前記遊技場内の中継サーバが前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機と接続し、前記遊技場外の外部管理サーバが第2通信ネットワークを介して前記中継サーバと接続する遊技媒体貸出機システムにおける貸出数設定方法であって、
前記外部管理サーバは、一定の金額に対して貸し出される前記遊技媒体の数に相当する貸出数の情報を前記第2通信ネットワークを介して前記中継サーバへ送信するステップと、
前記中継サーバは、前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報を含み、かつ、当該貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンドを前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機へ送信するステップと、
前記各遊技媒体貸出機は、前記中継サーバから受信した前記設定コマンドに基づいて前記貸出数を設定するステップとを備えることを特徴とする貸出数設定方法。
【請求項4】
遊技機で遊技をする際に用いる遊技媒体を貸し出す複数の遊技媒体貸出機が遊技場内の第1通信ネットワークを介して相互に接続し、前記遊技場内の中継サーバが前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機と接続し、前記遊技場外の外部管理サーバが第2通信ネットワークを介して前記中継サーバと接続する遊技媒体貸出機システムにおける貸出数設定方法であって、
前記中継サーバは、一定の金額に対して貸し出される前記遊技媒体の数に相当する貸出数を前記各遊技媒体貸出機に設定する旨の設定要求を前記第2ネットワークを介して前記外部管理サーバへ送信するステップと、
前記外部管理サーバは、前記設定要求の受信に応じて前記貸出数の情報を前記第2通信ネットワークを介して前記中継サーバへ送信するステップと、
前記中継サーバは、前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報を含み、かつ、当該貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンドを前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機へ送信するステップと、
前記各遊技媒体貸出機は、前記中継サーバから受信した前記設定コマンドに基づいて前記貸出数を設定するステップとを備えることを特徴とする貸出数設定方法。」
に補正された。(以下、この補正を「本件補正」という。)


(2) 補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1?4における「前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンド」を、
「前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報を含み、かつ、当該貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンド」に補正するものである。
本件補正は、「貸出数の情報」に基づいて生成される「設定コマンド」を、「貸出数の情報を含」むものに限定したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。


(3) 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開2002-292101号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が開示されている。

(ア)「【請求項1】 所定の有価価値を有する遊技媒体を払い出す払出制御手段を有した1又は複数の遊技機と、その遊技機と接続され、前記遊技媒体の情報が記録された遊技媒体記録手段を投入した状態で前記遊技媒体の貸出要求があった場合に、前記遊技機に遊技媒体の貸し出しを指示する1又は複数の遊技媒体記録読取装置と、その遊技媒体記録読取装置と接続されて前記遊技媒体記録手段および遊技媒体の払い出しを管理する遊技媒体管理装置と、その遊技媒体管理装置と接続される外部管理装置とを備えた遊技機管理システムにおいて、
前記外部管理装置は、前記払出制御手段による遊技媒体の1単位の払出個数を2種以上の個数に設定可能な貸出個数設定手段を備え、その貸出個数設定手段で設定された前記遊技媒体の払出個数のデータを前記遊技媒体管理装置へ出力し、前記遊技媒体管理装置は、前記外部管理装置から受信した前記遊技媒体の払出個数のデータを前記遊技媒体記録読取装置へ出力し、
前記遊技媒体記録読取装置は、前記遊技媒体管理装置から受信した前記遊技媒体の払出個数のデータを保持すると共に、前記遊技媒体の貸出要求に応じて、前記遊技機の払出制御手段へ貸球の払出個数のデータを出力し、
前記遊技機は、受信した前記貸球の払出個数のデータに基づいて前記遊技媒体の払い出しを行うものであることを特徴とする遊技機管理システム。」

(イ)「【0006】
【発明の実施の形態】 以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。本実施例では、遊技機管理システムとして、インターネットのシステムを利用しており、インターネットに接続されて使用されるカード会社コンピュータ50と、そのカード会社コンピュータ50からインターネット60を介して情報の送受信を行うコンピュータであると共に遊技場(ホール)内でのカードの売上げ等を管理するターミナルボックス(以下、「Tボックス」と略す)40と、そのTボックス40に接続されるカード読取ユニット20と、そのカード読取ユニット20に付設されるパチンコ機1とを用いて説明する。また、本実施例では、遊技機の一例として弾球遊技機の一種であるパチンコ機、特に、第1種パチンコ遊技機を用いて説明する。なお、第1種パチンコ遊技機に代えて、第3種パチンコ遊技機やスロットマシン等の他の遊技機を用いて本実施例の遊技機管理システムを構成しても良い。」

(ウ)「【0012】パチンコ機1は、カード読取ユニット20と共に、遊技場(ホール)内に複数台設置されており、遊技者により貸出ボタン29が押下されると、カード読取ユニット20からパチンコ機1へ貸出要求信号(図7参照)が出力される。その貸出要求信号をパチンコ機1の払出制御基板H(図2参照)が受信して、適正と判断された場合に、貸球が払い出され、その払い出された貸球によって遊技が行われる。なお、貸出要求信号は、後述するカードユニット貸球数メモリ24aの値に応じてカード読取ユニット20からパチンコ機1の払出制御基板Hへ出力される信号であり、貸球の払出個数を示すと共に払出制御基板Hに貸球の払い出しを実行させる信号である。
【0013】Tボックス40は、1の遊技場(ホール)に1つずつ配置され、その遊技場内でのカードの売上げ等を管理する装置である。このTボックス40は、ハードディスク44を内蔵して各種処理を行うコンピュータ本体40aと、Tボックス40で行われる各種処理をモニターするCRTディスプレイ47と、データ等の入力を行うキーボード48とを備えている。このTボックス40は、電話回線(図示せず)によってインターネット60に接続されており、このインターネット60を介してカード会社コンピュータ50と接続されている。また、このTボックスは、(複数の)カード読取ユニット20とローカル・エリア・ネットワーク(Local Area Network、以下「LAN」と略す)で接続されている。Tボックス40は、カード会社コンピュータ50から送信されるデータ(貸球の払出個数のデータ)を受信して、その受信したデータをLANを介して複数のカード読取ユニット20へ送信する。」

(エ)「【0016】カード会社コンピュータ50は、遊技場(ホール)外に設置されており、遊技場の関係者以外の管理者が各遊技場内で行われているカードの売上げや遊技場で不正が行われていないかを監視する装置である。このカード会社コンピュータ50は、インターネット60を介して各遊技場内に設置されたTボックス40と接続されている。」

(オ)「【0027】カードユニット貸球数メモリ24aは、貸球の100円単位の払出個数を記憶するためのメモリであり、その値はカード会社コンピュータ50で設定された貸球の払出個数のデータをTボックス40を介して受信することによりセットされる。カードユニット貸球数メモリ24aに記憶された値は、貸出ボタン29が押下されると貸出要求信号として払出制御基板Hへ出力される。出力された貸出要求信号は払出制御基板Hで受信されると、貸球払出カウンタ5aに書き込まれて記憶され、図9に示す貸球モータ駆動処理により貸球の払い出しが行われる。このカードユニット貸球数メモリ24aの値は、不揮発性のメモリであるEEPROM24に記憶されるので、カード読取ユニット20の電源断後もカードユニット貸球数メモリ24aの値を保持しておくことができる。」

以上、(ア)?(オ)の記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明が開示されていると認めることができる。

「パチンコ機1で遊技をする際に用いる貸球を貸し出す複数のカード読取ユニット20及び複数のパチンコ機1を有し、遊技場内のTボックス40がLANを介して前記カード読取ユニット20と接続し、前記遊技場外のカード会社コンピュータ50がインターネット60を介して前記Tボックス40と接続する遊技機管理システムであって、
前記カード会社コンピュータ50は、貸球の払出個数のデータを前記インターネットを介して前記Tボックス40へ送信し、
前記Tボックス40には、前記カード会社コンピュータ50から受信した前記貸球の払出個数のデータを前記LANを介して前記各カード読取ユニット20へ送信し、
前記各カード読取ユニット20は、前記Tボックス40から前記貸球の払出個数のデータを受信することにより貸球の100円単位の払出個数の値をセットする、遊技機管理システム。」
(以下、この発明を「引用発明1」という。)


(4) 対比
引用発明1における「パチンコ機1」及び「貸球」は、本願補正発明における「遊技機」及び「遊技媒体」に相当する。

引用発明1における「パチンコ機1」は、「カード読取ユニット20」に付設しており、「カード読取ユニット20」からの貸出要求信号に応じて「貸球」を払い出すので、
引用発明1における「カード読取ユニット20」及び「パチンコ機1」からなるものは、本願補正発明における「遊技媒体貸出機」に相当する。
なお、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、本願補正発明における「遊技媒体貸出機」が「遊技機」とは別体であると解する場合、
遊技機とは別体に構成された、遊技機の遊技媒体排出装置を用いない遊技媒体貸出機は、例を挙げるまでもなく周知であるから、
引用発明1に、当該周知な遊技媒体貸出機を適用することは、当業者が適宜なしうるものである。

引用発明1における「LAN」は、遊技場内の「Tボックス40」及び遊技場内の「カード読取ユニット20」と接続しているので、当該「LAN」も遊技場内のものであることは、自明である。
よって、引用発明1における「LAN」は、本願補正発明における「遊技場内の第1通信ネットワーク」に相当する。

引用発明1における「Tボックス40」、「カード会社コンピュータ50」及び「インターネット60」は、本願補正発明における「中継サーバ」、「外部管理サーバ」及び「第2通信ネットワーク」に相当する。

引用文献1(オ)に「カードユニット貸球数メモリ24aは、貸球の100円単位の払出個数を記憶するためのメモリであり、その値はカード会社コンピュータ50で設定された貸球の払出個数のデータをTボックス40を介して受信することによりセットされる。」と開示されていることから、
引用発明1における「貸球の払出個数のデータ」は、本願補正発明における「一定の金額に対して貸し出される前記遊技媒体の数に相当する貸出数の情報」に相当する。

引用発明1における「カード会社コンピュータ50」は「貸球の払出個数のデータ」を「インターネット60」を介して「Tボックス40」に送信しているので、そのための手段を有することは自明である。
そして当該手段は、本願補正発明における「貸出数管理手段」に相当する。

引用発明1における「Tボックス40」は、「貸球の払出個数のデータ」を各「カード読取ユニット20」へ送信しているので、そのための手段を有することは自明である。

引用発明1において、前記「カード読取ユニット20」が「貸球の100円単位の払出個数の値をセットする」点は、本願補正発明における「貸出数を設定する」点に相当するので、
前記「カード読取ユニット20」が、前記「貸球の100円単位の払出個数の値をセットする」ための手段を備えることは自明である。
そして前述のとおり、引用発明1における「カード読取ユニット20」及び「パチンコ1」からなるものは、本願補正発明における「遊技媒体貸出機」に相当するので、
前記「カード読取ユニット20」が備える前記手段は、本願補正発明における、「遊技媒体貸出機」が備える「設定手段」に相当する。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「遊技機で遊技をする際に用いる遊技媒体を貸し出す複数の遊技媒体貸出機を有し、前記遊技場内の中継サーバが前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機と接続し、前記遊技場外の外部管理サーバが第2通信ネットワークを介して前記中継サーバと接続する遊技媒体貸出機システムであって、
前記外部管理サーバには、一定の金額に対して貸し出される前記遊技媒体の数に相当する貸出数の情報を前記第2通信ネットワークを介して前記中継サーバへ送信する貸出数管理手段が備えられ、
前記中継サーバには、前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報に関する情報を前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機へ送信する手段が備えられ、
前記各遊技媒体貸出機には、前記中継サーバから受信した情報に基づいて前記貸出数を設定する設定手段が備えられる遊技媒体貸出機システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明における各「遊技媒体貸出機」が「遊技場内の第1通信ネットワーク」を介して「相互に接続」しているのに対し、
引用発明1における各「カード読取ユニット20」は、「LAN」に接続しているものの、これらが相互に接続しているか否かは不明である点。

<相違点2>
本願補正発明における「中継サーバ」は、「外部サーバ」から受信した「貸出数の情報」を、「貸出数の情報を含み、かつ、当該貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンド」の様態で、各「遊技媒体貸出機」へ送信するのに対し、
引用発明1における「Tボックス40」は、「カード会社コンピュータ50」から受信した「貸球の払出個数のデータ」を、具体的に如何なる様態で各「カード読取ユニット20」へ送信しているのか不明である点。


(5) 判断
<相違点1>について
LANの一般的な構成を考慮すれば、引用発明1における「カード読取ユニット」については、「LAN」を介して相互に接続していることが自明であるか、又はそのように構成することは当業者が適宜なしうるものである。

<相違点2>について
引用文献1の【0030】には、「カード読取ユニット20」から「払出制御基板H」に「払出個数(貸球数データ)」の指示を行う際に、「尚、本実施例では、貸球の払出個数(貸球数データ)の指示を信号により知らせているが、これに代えて、制御用コマンド等で貸球の払出個数(貸球数データ)の指示を行うように構成しても良い。」と開示されている。
よって、引用発明1において「Tボックス40」から「カード読取ユニット20」へ「貸球の払出個数のデータ」を送信する場合についても、「貸球の払出個数のデータ」を含む何らかの「制御用コマンド」を生成してこれを送信するようにすることは、当業者が容易に想到しうるものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。


(6) 「転送手段」に関する審判請求書の主張について
(6-1) 出願人は審判請求書4.において、本願補正発明における「中継サーバ」は、「外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報」をそのメモリに記憶しない旨主張する。
しかしながら、下記の点を考慮すれば、当該主張は採用できない。
・本願の明細書、特許請求の範囲又は図面には、前記「転送」がメモリに記憶するものを除外する点は、何ら記載されていない。
・前記審判請求書4.で引用される広辞苑第6版には、「転送」とメモリとの関係は何ら記載されていない。
・前記「転送」が、メモリに記憶しないもののみを特定するための、遊技機等の技術分野における技術用語であるとは、認められない。
・本願明細書【0048】の記載から、本願補正発明における「前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報を含み、かつ、当該貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンド」を「生成」する主体は、前記「転送手段」又はこれを有する「中継サーバ」であると解される。
そして、当該「転送手段」又はこれを有する「中継サーバ」が、前記「貸出数の情報」をメモリに全く記憶しない場合、前記「生成」を具体的にどのようにして実現可能であるのか、発明の詳細な説明の記載を参酌しても不明である。

(6-2) 補助的に、前記(6-1) で指摘した主張が採用できると仮定する場合について、判断する。

引用発明1における「Tボックス40」は、引用文献1(ア)に開示された「遊技媒体管理装置」の一実施例である。
前記「遊技媒体管理装置」は、「遊技媒体の払出個数のデータ」をメモリに記憶するものではなく、引用文献1(ア)の全体的な記載からみて、「遊技媒体の払出個数のデータ」をメモリに記憶する必然性のあるものでもない。
引用文献1には、【0042】?【0043】及び図4に、前記「遊技媒体管理装置」の一実施例である前記「Tボックス40」において、受信した「遊技媒体の払出個数のデータ」を「Tボックス貸球数メモリ44a」に記憶し、その直後に当該「遊技媒体の払出個数のデータ」を「カード読取ユニット20」に送信する点が開示されているものの、
受信し記憶した「遊技媒体の払出個数のデータ」を受信し記憶した直後以外の時点で送信する点や、「遊技媒体の払出個数のデータ」をその後の如何なる時点まで何のために記憶しておくのかという点は、何ら開示されていないので、
引用発明1においては、前記「遊技媒体の払出個数のデータ」を「Tボックス貸球数メモリ44a」に記憶する必然性及びこれを記憶し続ける必然性はない。
よって、引用文献1については、「遊技媒体の払出個数のデータ」を「Tボックス貸玉数メモリ44a」等のメモリに記憶しない場合も開示されていることは、自明である。

出願人が審判請求書において主張する、ホール内での不正行為に関する効果について検討する。
前記引用文献1の【0042】?【0043】及び図4に開示されているように、受信し記憶した「遊技媒体の払出個数のデータ」は受信し記憶した直後以外の時点では送信されないので、
仮に前記「貸球の払出個数のデータ」を記憶し続けてこれが書き換えられたとしても、書き換えられたものが「カード読取ユニット20」に送信されることはなく、払出個数の不正な設定はなされない。
よって、引用発明1において、「遊技媒体の払出個数のデータ」を「Tボックス貸玉数メモリ44a」等のメモリに記憶し続ける場合と、そうでない場合とにおける、ホール内での不正行為に関する効果の差異は、予測しうる程度のものである。

したがって、前記(6-1) で指摘した主張が採用できると仮定する場合の本願補正発明は、前記(3)?(5)と同様の理由により、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
この場合の本願補正発明も、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(7) むすび
以上のとおり、本件補正は、前記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
平成22年7月27日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本出願に係る発明は、平成22年3月19日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲により特定されるとおりのものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 【請求項1】
遊技機で遊技をする際に用いる遊技媒体を貸し出す複数の遊技媒体貸出機が遊技場内の第1通信ネットワークを介して相互に接続し、前記遊技場内の中継サーバが前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機と接続し、前記遊技場外の外部管理サーバが第2通信ネットワークを介して前記中継サーバと接続する遊技媒体貸出機システムであって、
前記外部管理サーバには、一定の金額に対して貸し出される前記遊技媒体の数に相当する貸出数の情報を前記第2通信ネットワークを介して前記中継サーバへ送信する貸出数管理手段が備えられ、
前記中継サーバには、前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンドを前記第1通信ネットワークを介して前記各遊技媒体貸出機へ送信する転送手段が備えられ、
前記各遊技媒体貸出機には、前記中継サーバから受信した前記設定コマンドに基づいて前記貸出数を設定する設定手段が備えられることを特徴とする遊技媒体貸出機システム。」

(1) 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開2002-292101号公報(引用文献1)に開示された発明(引用発明1)は、前記2.(3)で説示のとおりである。

(2) 対比・判断
本願発明(補正前の請求項1に係る発明)は、前記2.で検討した本願補正発明(補正後の請求項1に係る発明)における「前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報を含み、かつ、当該貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンド」を、「前記外部管理サーバから受信した前記貸出数の情報に基づいて生成された設定コマンド」とするものであるから、
本願発明は、本願補正発明から、「設定コマンド」が「貸出数の情報を含」む点を削除したものである。
そうすると、
前記2.に記載したとおり、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明は、引用発明1、又は引用発明1及び周知な遊技媒体貸出機に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
本願発明1も、本願補正発明についての理由と同様の理由により、引用発明1、又は引用発明1及び周知な遊技媒体貸出機に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、又は引用発明1及び周知な遊技媒体貸出機に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-08 
結審通知日 2011-06-14 
審決日 2011-06-28 
出願番号 特願2004-93002(P2004-93002)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿南 進一  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 秋山 斉昭
吉村 尚
発明の名称 遊技媒体貸出機システム、及び遊技媒体の貸出数設定方法  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 小谷 悦司  
代理人 玉串 幸久  

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