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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1241846
審判番号 不服2008-31764  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-15 
確定日 2011-08-10 
事件の表示 特願2004- 81618「平板表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月16日出願公開、特開2005-158672〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願 :平成16年 3月19日
(優先権主張2003年11月26日 大韓民国)
拒絶理由 :平成19年 6月28日(起案日)
意見及び手続補正:平成19年11月 9日
拒絶査定 :平成20年 9月10日(起案日)
審判請求 :平成20年12月15日
手続補正 :平成20年12月15日
審尋 :平成22年 6月 1日(起案日)
回答 :平成22年 9月 7日
拒絶理由 :平成22年11月 1日(起案日)
意見及び手続補正:平成23年 2月 2日

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年2月2日付けの手続補正(以下[本件補正]という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を補正することを含むものであるところ,当該補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下,単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)について,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か,すなわち,本件補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを以下で検討する。

2 本件補正後発明
本件補正後発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。



少なくともソース/ドレーン電極を備える薄膜トランジスターを含む絶縁基板と,
前記絶縁基板上に形成され,前記ソース/ドレーン電極のうち,一つを露出させるビアホールを備える絶縁膜と,
前記絶縁膜上に形成されて前記ビアホールを通じて前記露出されている一つの電極に連結される下部電極,有機薄膜層及び上部電極を備える有機EL素子と,
前記下部電極上部に形成されているテーパー緩和膜とを含み,
前記ビアホールでの前記テーパー緩和膜のテーパー角は前記ビアホールのテーパー角よりも小さい第1テーパー角を有し,
前記下部電極のエッジ部分での前記テーパー緩和膜は前記下部電極のエッジ部分のテーパー角よりも小さい第2テーパー角を有し,
前記テーパー緩和膜が電荷輸送能力を有する導電性有機膜であることを特徴とする平板表示装置。

3 引用例
本願の優先日よりも前に頒布された特開2001-312223号公報(以下,「引用例」という。)には,各図とともに以下の事項が記載されている。

記載事項ア
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,自発光装置(EL表示装置ともいう)に関する。特に陽極,陰極及びそれらの間にEL(ElectroLuminescence)が得られる発光性有機材料(以下,有機EL材料という)を挟んだ構造からなるEL素子を絶縁体上に形成した自発光装置及びその自発光装置を表示部(表示ディスプレイまたは表示モニター)として有する電気器具の作製方法に関する。」

記載事項イ
「【0002】【従来の技術】近年,発光性有機材料のEL現象を利用した自発光素子としてEL素子を用いた表示装置(EL表示装置)の開発が進んでいる。EL表示装置は自発光型であるため,液晶表示装置のようなバックライトが不要であり,さらに視野角が広いことから電気器具の表示部として有望視されている。
【0003】EL表示装置にはパッシブ型(単純マトリクス型)とアクティブ型(アクティブマトリクス型)の二種類があり,どちらも盛んに開発が行われている。特に現在はアクティブマトリクス型EL表示装置が注目されている。また,EL素子の中心とも言えるEL層となる有機EL材料は,低分子系有機EL材料と高分子系(ポリマー系)有機EL材料とが研究されており,低分子系有機EL材料は蒸着法等で形成され,高分子系有機EL材料は,スピナーを用いた塗布方式により形成されている。
【0004】低分子系有機EL材料と高分子系(ポリマー系)有機EL材料のいずれの場合に於いても成膜する面が平坦化されていないとEL材料を均一な膜厚に成膜することができないという問題が生じる。
【0005】さらに,EL層の膜厚が均一でなく,段差部分でEL層が一部成膜されていない場合には,陰極,EL層,陽極からなるEL素子を形成した際に,陰極と陽極間が電気的に短絡してしまう。
【0006】陰極と陽極の間で短絡が生じた場合には,陰極と陽極の間で電流が集中して流れてしまい,EL層を介する電流がほとんど流れなくなる。これにより,EL層が発光しなくなる。
【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり,EL素子における構造を改良しEL表示装置を作製する方法を提供することを課題とする。さらに,このようなEL表示装置を表示部として有する電気器具を提供することを課題とする。」

記載事項ウ
「【0008】【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために,本発明ではEL層を形成する有機EL材料を成膜する際に成膜面の凹凸部を平坦化するように絶縁体を埋め込みEL素子における陰極と陽極間の短絡を防ぐ構造にする。ここで本発明におけるEL表示装置の画素部の断面構造を図1に示す。
【0009】図1(A)に示されるのは,画素電極40に電気的に接続されたスイッチング素子(具体的には,薄膜トランジスタ(TFT:thinfilmtransistor))であり,本明細書中では,電流制御用TFTと呼ぶ。電流制御用TFTは,基板11上に下地膜12が形成された後,ソース領域31,ドレイン領域32及びチャネル形成領域34を含む活性層,ゲート絶縁膜18,ゲート電極35,第1層間絶縁膜20,ソース配線36並びにドレイン配線37を有して形成される。なお,ゲート電極35はシングルゲート構造となっているが,マルチゲート構造であっても良い。
【0010】次に,38は第1パッシベーション膜であり,膜厚は10nm?1μm(好ましくは200?500nm)とすれば良い。材料としては,珪素を含む絶縁膜(特に窒化酸化珪素膜又は窒化珪素膜が好ましい)を用いることができる。
【0011】第1パッシベーション膜38の上には,各TFTを覆うような形で第2層間絶縁膜(平坦化膜と言っても良い)39を形成し,TFTによってできる段差の平坦化を行う。第2層間絶縁膜39としては,有機樹脂膜が好ましく,ポリイミド,ポリアミド,アクリル樹脂及びシロキサンの高分子化合物を含む樹脂といった材料を用いると良い。勿論,十分な平坦化が可能であれば,無機膜を用いても良い。
【0012】第2層間絶縁膜39によってTFTによる段差を平坦化することは非常に重要である。後に形成されるEL層は非常に薄いため,段差が存在することによって発光不良を起こす場合がある。従って,EL層をできるだけ平坦面に形成しうるように画素電極を形成する前に平坦化しておくことが望ましい。
【0013】また,40は透明導電膜からなる画素電極(EL素子の陽極に相当する)であり,第2層間絶縁膜39及び第1パッシベーション膜38にコンタクトホール(開孔)を開けた後,形成された開孔部において電流制御用TFTのドレイン配線37に接続されるように形成される。
【0014】本願発明では,画素電極として酸化インジウムと酸化スズの化合物からなる導電膜を用いる。また,これに少量のガリウムを添加しても良い。さらに酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物や酸化亜鉛と酸化ガリウムの化合物を用いることもできる。
【0015】なお,コンタクトホール上に画素電極を形成した後に生じる凹部を本明細書中では,電極ホールと呼ぶことにする。画素電極を形成したら,EL層を形成するためにEL材料が成膜されるが,このとき電極ホール46において図1(B)に示すように薄膜領域47のEL層の膜厚が薄くなる。膜厚が薄くなる程度は,電極ホールのテーパー角にもよるが,成膜面のうち成膜方向に対して垂直でない部分は,成膜されにくく膜厚が薄くなる傾向がある。
【0016】しかし,ここで成膜されるEL層が薄くなり,なおかつ断絶された部分が生じた際には,EL素子中の陰極と陽極が短絡して,この短絡部分に電流が集中して流れてしまう。これによりEL層に電流が流れなくなってしまうのでEL素子が発光しなくなる。
【0017】そこでEL素子中の陰極と陽極の短絡を防ぐために,画素電極上に電極ホール46を充分に埋めこむように有機樹脂膜を成膜し,これをパターニングすることで保護部41bを形成させる。つまり,保護部41bは電極ホールを埋め込むように形成される。なお,画素電極間の隙間にも有機樹脂膜を用いてこれを埋め込むように保護部(図示せず)を形成させても良い。
【0018】有機樹脂膜は,スピンコート法により成膜し,レジストマスクを用いて露光した後,エッチングを行うことにより図1(C)に示すような保護部41bを形成させる。
【0019】なお,保護部41bは,断面から見て画素電極よりも盛り上がっている部分(図1(C)のDaに示す部分)の厚さが0.1?1μm,好ましくは0.1?0.5μm,さらに好ましくは0.1?0.3μmとなるのがよい。
【0020】また,保護部41bには,有機樹脂が好ましく,ポリイミド,ポリアミド,アクリル樹脂およびシロキサンの高分子化合物を含む樹脂といった材料を用いると良い。さらに,これらの有機樹脂を用いる際には,粘度を10^(-3)Pa・s?10^(-1)Pa・sとするとよい。
【0021】保護部41bが形成された後,図1(C)に示すようにEL層42が形成され,さらに陰極43が形成される。なお,EL層42を形成するEL材料としては,低分子系有機EL材料であっても高分子系有機EL材料であっても良い。
【0022】以上のようにして図1(C)に示す様な構造とすることで,電極ホール46の段差部分で,EL層42が切断された際に生じる画素電極40と陰極43間での短絡の問題を解決することができる。」

記載事項エ
「【0023】【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について,図2,図3を用いて説明する。図2に示したのは本発明であるEL表示装置の画素部の断面図であり,図3(A)はその上面図,図3(B)はその回路構成である。実際には画素がマトリクス状に複数配列されて画素部(画像表示部)が形成される。なお,図3(A)をA-A’で切断した断面図が図2に相当する。従って図2及び図3で共通の符号を用いているので,適宜両図面を参照すると良い。また,図3の上面図では二つの画素を図示しているが,どちらも同じ構造である。
【0024】図2において,11は基板,12は下地となる絶縁膜(以下,下地膜という)である。基板11としてはガラス,ガラスセラミックス,石英,シリコン,セラミックス,金属若しくはプラスチックからなる基板を用いることができる。
【0025】また,下地膜12は特に可動イオンを含む基板や導電性を有する基板を用いる場合に有効であるが,石英基板には設けなくても構わない。下地膜12としては,珪素(シリコン)を含む絶縁膜を用いれば良い。なお,本明細書において「珪素を含む絶縁膜」とは,具体的には酸化珪素膜,窒化珪素膜若しくは窒化酸化珪素膜(SiOxNyで示される)など珪素,酸素若しくは窒素を所定の割合で含む絶縁膜を指す。
【0026】また,下地膜12に放熱効果を持たせることによりTFTの発熱を発散させることはTFTの劣化又はEL素子の劣化を防ぐためにも有効である。放熱効果を持たせるには公知のあらゆる材料を用いることができる。
【0027】ここでは画素内に二つのTFTを形成している。201はスイッチング用TFTであり,nチャネル型TFTで形成され,202は電流制御用TFTであり,pチャネル型TFTで形成されている。
【0028】ただし,本発明において,スイッチング用TFTをnチャネル型TFT,電流制御用TFTをpチャネル型TFTに限定する必要はなく,スイッチング用TFTをpチャネル型TFT,電流制御用TFTをnチャネル型TFTにしたり,両方ともnチャネル型又pチャネル型TFTを用いることも可能である。
【0029】スイッチング用TFT201は,ソース領域13,ドレイン領域14,LDD領域15a?15d,高濃度不純物領域16及びチャネル形成領域17a,17bを含む活性層,ゲート絶縁膜18,ゲート電極19a,19b,第1層間絶縁膜20,ソース配線21並びにドレイン配線22を有して形成される。
【0030】また,図3に示すように,ゲート電極19a,19bは別の材料(ゲート電極19a,19bよりも低抵抗な材料)で形成されたゲート配線211によって電気的に接続されたダブルゲート構造となっている。勿論,ダブルゲート構造だけでなく,シングルゲートもしくはトリプルゲート構造といったいわゆるマルチゲート構造(直列に接続された二つ以上のチャネル形成領域を有する活性層を含む構造)であっても良い。マルチゲート構造はオフ電流値を低減する上で極めて有効であり,本発明では画素のスイッチング素子201をマルチゲート構造とすることによりオフ電流値の低いスイッチング素子を実現している。
【0031】また,活性層は結晶構造を含む半導体膜で形成される。即ち,単結晶半導体膜でも良いし,多結晶半導体膜や微結晶半導体膜でも良い。また,ゲート絶縁膜18は珪素を含む絶縁膜で形成すれば良い。また,ゲート電極,ソース配線若しくはドレイン配線としてはあらゆる導電膜を用いることができる。
【0032】さらに,スイッチング用TFT201においては,LDD領域15a?15dは,ゲート絶縁膜18を挟んでゲート電極19a,19bと重ならないように設ける。このような構造はオフ電流値を低減する上で非常に効果的である。
【0033】なお,チャネル形成領域とLDD領域との間にオフセット領域(チャネル形成領域と同一組成の半導体層からなり,ゲート電圧が印加されない領域)を設けることはオフ電流値を下げる上でさらに好ましい。また,二つ以上のゲート電極を有するマルチゲート構造の場合,チャネル形成領域の間に設けられた高濃度不純物領域がオフ電流値の低減に効果的である。
【0034】次に,電流制御用TFT202は,ソース領域31,ドレイン領域32及びチャネル形成領域34を含む活性層,ゲート絶縁膜18,ゲート電極35,第1層間絶縁膜20,ソース配線36並びにドレイン配線37を有して形成される。なお,ゲート電極35はシングルゲート構造となっているが,マルチゲート構造であっても良い。
【0035】図2に示すように,スイッチング用TFTのドレインは電流制御用TFT202のゲートに接続されている。具体的には電流制御用TFT202のゲート電極35はスイッチング用TFT201のドレイン領域14とドレイン配線(接続配線とも言える)22を介して電気的に接続されている。また,ソース配線36は電源供給線212に接続される。
【0036】電流制御用TFT202はEL素子203に注入される電流量を制御するための素子であるが,EL素子の劣化を考慮するとあまり多くの電流を流すことは好ましくない。そのため,電流制御用TFT202に過剰な電流が流れないように,チャネル長(L)は長めに設計することが好ましい。望ましくは一画素あたり0.5?2μA(好ましくは1?1.5μA)となるようにする。
【0037】また,スイッチング用TFT201に形成されるLDD領域の長さ(幅)は0.5?3.5μm,代表的には2.0?2.5μmとすれば良い。
【0038】また,図3に示すように電流制御用TFT202のゲート電極35となる配線36は50で示される領域でゲート絶縁膜を介して活性層と同時に形成された半導体膜51と重なる。このとき50で示される領域ではコンデンサが形成され,電流制御用TFT202のゲート電極35にかかる電圧を保持するための保持容量50として機能する。さらに保持容量50はゲート電極となる配線36,第一層間絶縁膜(図示せず)及び電源供給線212で形成される容量も形成している。なお,電流制御用TFTのドレインは,電源供給線212に接続され,常に一定の電圧が加えられている。
【0039】また,流しうる電流量を多くするという観点から見れば,電流制御用TFT202の活性層(特にチャネル形成領域)の膜厚を厚くする(好ましくは50?100nm,さらに好ましくは60?80nm)ことも有効である。逆に,スイッチング用TFT201の場合はオフ電流値を小さくするという観点から見れば,活性層(特にチャネル形成領域)の膜厚を薄くする(好ましくは20?50nm,さらに好ましくは25?40nm)ことも有効である。
【0040】次に,38は第1パッシベーション膜であり,膜厚は10nm?1μm(好ましくは200?500nm)とすれば良い。材料としては,珪素を含む絶縁膜(特に窒化酸化珪素膜又は窒化珪素膜が好ましい)を用いることができる。
【0041】第1パッシベーション膜38の上には,各TFTを覆うような形で第2層間絶縁膜(平坦化膜と言っても良い)39を形成し,TFTによってできる段差の平坦化を行う。第2層間絶縁膜39としては,有機樹脂を材料とする有機樹脂膜が好ましく,アクリル樹脂,ポリイミド,ポリアミドおよびシロキサンの高分子化合物を含む樹脂といった材料を用いると良い。勿論,十分な平坦化が可能であれば,無機材料からなる膜を用いても良い。
【0042】第2層間絶縁膜39によってTFTによる段差を平坦化することは非常に重要である。後に形成されるEL層は非常に薄いため,段差が存在することによって発光不良を起こす場合がある。従って,EL層をできるだけ平坦面に形成しうるように画素電極を形成する前に平坦化しておくことが望ましい。
【0043】また,40は透明導電膜からなる画素電極(EL素子の陽極に相当する)であり,第2層間絶縁膜39及び第1パッシベーション膜38にコンタクトホール(開孔)を開けた後,形成された開孔部において電流制御用TFT202のドレイン配線37に接続されるように形成される。
【0044】本実施形態では,画素電極として酸化インジウムと酸化スズの化合物からなる導電膜を用いる。また,これに少量のガリウムを添加しても良い。さらに酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物を用いることもできる。
【0045】次に,画素電極上の電極ホール46を埋め込むように画素電極上に有機樹脂を材料とする有機樹脂膜をスピンコート法で成膜する。なお,ここでは,有機樹脂膜としては,アクリル樹脂を用いている。
【0046】また,画素電極上に有機樹脂を材料とする有機樹脂膜を形成させているが,絶縁膜となりうる絶縁体を用いても良い。なお,絶縁体としては,酸化珪素や窒化酸化珪素及び窒化珪素といった珪素を含む無機材料を用いても良い。
【0047】アクリル樹脂を全面に成膜した後,レジストマスクを用いて露光し,エッチングを行うことにより図2に示す保護部41a,41bを形成する。
【0048】保護部41bは,画素電極における電極ホールがアクリル樹脂で埋め込まれている部分をさす。また,保護部41aは,画素電極の隙間に設けられている。画素電極の隙間とは,複数の画素電極が形成されている画素部において,画素電極が形成されていない部分,例えば,画素電極と画素電極の間の部分等をさす。これは,保護部を形成するためにエッチングを行う際に,画素電極間において,第二層間絶縁膜を形成する材料が保護部を形成する材料であると第二層間絶縁膜も同時にエッチングされてしまう可能性があるためである。
【0049】なお,保護部41aおよび41bは,断面から見て画素電極よりも盛り上がっている部分の厚さが0.1?1μm,好ましくは0.1?0.5μm,さらに好ましくは0.1?0.3μmとなるのがよい。
【0050】また,保護部41a及び41bには,有機樹脂としてアクリル樹脂を用いた場合を示したが,ポリイミド,ポリアミド,およびシクロテンのようにシロキサンの高分子化合物を含む樹脂を材料として用いても良い。さらに,これらの有機樹脂を用いる際には,粘度を10-3Pa・s?10-1Pa・sとするとよい。
【0051】以上のようにして保護部41bを設けて,電極ホールを有機樹脂で埋め込むことで,EL層42が切断された際に生じる画素電極40(陽極)と陰極43間での短絡の問題を解決することができる。」

記載事項オ
「【0052】保護部41bの作製方法について,図4を用いて説明する。図4(A)は,画素電極40上に有機樹脂膜を成膜した後パターニングにより保護部41bを形成させたものである。Daは,有機樹脂膜の膜厚であるが,この膜厚が薄くなると図4(A)の保護部41bのように上部に窪みが生じる。
【0053】この窪みの度合いは,電極ホールのテーパー角及び有機樹脂膜の膜厚に依存するが,有機樹脂膜の膜厚が極端に薄くなると電極ホールを完全に埋め込むことができなくなり,保護部としての役割が果たせなくなることも考えられる。
【0054】一方,有機樹脂膜の膜厚が厚くなると再び段差が生じてしまう。そこで,これを解決する方法として,図4(B)に示すように有機樹脂膜をDbの膜厚で成膜した後,パターニングによって保護部41bを形成させ,さらに全面をエッチングして膜厚をDaとする。これにより,図4(C)に示すように上部が平坦化され,かつ適度な膜厚の保護部41bを形成させることができる。」

記載事項カ
「【0154】ここで本発明におけるEL表示装置の画素部の断面構造を図13に示す。
【0155】図13(A)に示されるのは,画素電極1040及び画素電極1040に電気的に接続される電流制御用TFTである。電流制御用TFTは,基板1011上に下地膜1012が形成された後,ソース領域1031,ドレイン領域1032及びチャネル形成領域1034を含む活性層,ゲート絶縁膜1018,ゲート電極1035,第1層間絶縁膜1020,ソース配線1036並びにドレイン配線1037を有して形成される。なお,ゲート電極1035はシングルゲート構造となっているが,マルチゲート構造であっても良い。
【0156】次に,1038は第1パッシベーション膜であり,膜厚は10nm?1μm(好ましくは200?500nm)とすれば良い。材料としては,珪素を含む絶縁膜(特に窒化酸化珪素膜又は窒化珪素膜が好ましい)を用いることができる。
【0157】第1パッシベーション膜1038の上には,各TFTを覆うような形で第2層間絶縁膜(平坦化膜と言っても良い)1039を形成し,TFTによってできる段差の平坦化を行う。第2層間絶縁膜1039としては,有機樹脂膜が好ましく,ポリイミド,ポリアミド,アクリル樹脂,シロキサンの高分子化合物を含む樹脂を材料として用いると良い。勿論,十分な平坦化が可能であれば,無機膜を用いても良い。
【0158】第2層間絶縁膜1039によってTFTによる段差を平坦化することは非常に重要である。後に形成されるEL層は非常に薄いため,段差が存在することによって発光不良を起こす場合がある。従って,EL層をできるだけ平坦面に形成しうるように画素電極を形成する前に平坦化しておくことが望ましい。
【0159】また,1040は透明導電膜からなる画素電極(EL素子の陽極に相当する)であり,第2層間絶縁膜1039及び第1パッシベーション膜1038にコンタクトホール(開孔)を開けた後,形成された開孔部において電流制御用TFTのドレイン配線1037に接続されるように形成される。
【0160】本実施形態では,画素電極として酸化インジウムと酸化スズの化合物からなる導電膜を用いる。また,これに少量のガリウムを添加しても良い。さらに酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物を用いることもできる。
【0161】次に,画素電極上に有機樹脂を材料とする有機樹脂膜1041を形成する。有機樹脂としては,ポリアミド,ポリイミド,アクリル樹脂およびシロキサンの高分子化合物を含む樹脂といった材料があり,これらを使っても良いが,ここでは,アクリル樹脂であるアクリル酸エステル樹脂,アクリル酸樹脂,メタクリル酸エステル樹脂,メタクリル酸樹脂といった樹脂を用いている。なお,シロキサンの高分子化合物を含む樹脂としては,シクロテンがある。
【0162】また,ここでは画素電極上に有機樹脂を材料とする有機樹脂膜を形成させているが,絶縁膜となりうる絶縁体を用いても良い。
【0163】絶縁体としては,酸化珪素や窒化酸化珪素及び窒化珪素といった珪素を含む絶縁膜を用いると良い。
【0164】有機樹脂膜1041の膜厚(Dc)は,0.1?2μmが好ましいが,さらに好ましくは0.2?0.6μmとするのがよい。
【0165】有機樹脂膜1041を成膜した後,有機樹脂膜1041を全面エッチングしてDc=0となるところでエッチングを終了させると,電極ホールに埋め込まれたアクリル樹脂が残り,保護部1041bが形成される。
【0166】なお,エッチング方法としてはドライエッチングが好ましい。まず,真空チャンバー内にエッチングすべき有機樹脂材料に合わせたエッチングガスを導入した後,電極に高周波電圧を印加してプラズマを発生させ,プラズマ雰囲気でエッチングガスを分解させる。
【0167】プラズマ雰囲気で分解されたエッチングガス中には,正イオン,負イオン,電子などの荷電粒子と中性活性種がバラバラの状態で存在している。なお,これらのエッチング種が,被エッチング材料に吸着されると表面化学反応が生じてエッチング生成物が生成し,このエッチング生成物が除去されると,エッチングがなされる。
【0168】また,保護膜の材料としてアクリル樹脂を用いる場合,エッチングにおけるエッチングガスとして酸素を主成分とするガスを用いることが望ましい。
【0169】なお,本実施例では酸素を主成分とするエッチングガスとして,酸素,ヘリウム及び四フッ化炭素(CF_(4))からなるエッチングガスを用いている。また,その他の材料として,六フッ化二炭素(C_(2)F_(6))といったフッ化炭素系のガスを用いても良い。
【0170】なお,これらのエッチングガスにおいては,酸素が,エッチングガス全体の60%以上になることが望ましい。
【0171】本実施例に示すように画素電極上に有機樹脂膜をスピンコート法を用いて成膜した後,これを全面エッチングして,図13(B)に示すように電極ホール1046に保護部1041bが形成されるように矢印の方向にエッチングさせる。なお,ここで形成された保護部1041bの露呈面及び画素電極1040の露呈面は,図13(B)に示すように同一面内にある。
【0172】なお,このときのエッチング時間は予めエッチングレートを調べておき,保護部1041bを除く画素電極1040上の有機樹脂膜がちょうど除去されたところでエッチングが終了するようにする。これにより,画素電極1040の上面と保護部1041bの上面が同一の平坦面になる。
【0173】また,これらの有機樹脂を用いる際には,粘度を10^(-3)Pa・s?10^(-1)Pa・sとするとよい。
【0174】保護部1041bを形成したら,図13(C)に示すようにEL層1042を形成するためにEL材料を溶媒に溶解させたものがスピンコート法により成膜される。
【0175】EL層1042が形成されると,さらに陰極1043及び保護電極1044が形成される。
【0176】以上のようにして図13(C)に示す様な構造とすることで,電極ホールの段差部分で,EL層1042が切断された際に生じる画素電極1040と陰極1043間での短絡の問題を解決することができる。
【0177】なお,本実施例で示したように画素電極1040上の保護部1041bが電極ホール1046と同一の形状である場合の上面図を図13(D)に示す。」

記載事項キ
「【0228】【発明の効果】本発明を実施することで,有機EL材料を成膜する際に生じる電極ホールの成膜不良を改善することができる。また,本発明においては,様々な方法及び形状で電極ホールを保護部で埋め込む方法を示しているので,条件や用途に応じて成膜する事が可能であり,陰極と陽極の間の短絡によるEL層の発光不良を防ぐことができる。」

ここで,図1及び記載事項ウからは,引用例1に記載された自発光装置は,基板(11)上に,順に(下から上へ),下地膜(12),活性層,ゲート絶縁膜(18),ゲート電極(35),第1層間絶縁膜(20),ソース配線(36)及びドレイン配線(37),第1パッシベーション膜(38),第2層間絶縁膜(39),画素電極(40),保護部(41a,b),EL層(42),並びに,陰極(43)が形成されたものであることが理解できる。
また,図2及び図13に開示されたものは,図1に開示されたものの実施の形態である。

これら記載事項及び各図からみて,引用例1には,下記の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。



基板(11)上に下地膜(12)が形成された後,ソース領域(31),ドレイン領域(32)及びチャネル形成領域(34)を含む活性層,ゲート絶縁膜(18),ゲート電極(35),第1層間絶縁膜(20),ソース配線(36)並びにドレイン配線(37)を有して形成された電流制御用TFT,
第1パッシベーション膜(38),
平坦化膜と言っても良い第2層間絶縁膜(39),
第2層間絶縁膜(39)及び第1パッシベーション膜(38)にコンタクトホール(開孔)を開けた後,形成された開孔部において電流制御用TFTのドレイン配線(37)に接続されるように形成された,EL素子の陽極に相当する画素電極(40),
コンタクトホール上に画素電極(40)が形成された後に生じる電極ホール(46),
画素電極(40)上に有機樹脂膜を成膜しこれをパターニングすることで形成された,電極ホール(46)及び画素電極間の隙間を埋め込む保護部(41a,41b),
EL層(42),
陰極(43),
を含み,
基板(11)としてはガラス,ガラスセラミックス,石英,シリコン,セラミックス,金属若しくはプラスチックからなる基板を用いることができ,
下地膜(12)としては,珪素を含む絶縁膜を用いれば良く,
基板(11)上に,下から順に,下地膜(12),活性層,ゲート絶縁膜(18),ゲート電極(35),第1層間絶縁膜(20),ソース配線(36)及びドレイン配線(37),第1パッシベーション膜(38),第2層間絶縁膜(39),画素電極(40),保護部(41a,41b),EL層(42),並びに,陰極(43)が形成され,
保護部(41a,41b)は,EL層を形成する有機EL材料を成膜する際に成膜面の凹凸部を平坦化するように埋め込み,EL素子における陰極と陽極間の短絡を防ぐ構造にする,
陽極,陰極及びそれらの間にEL(ElectroLuminescence)が得られる発光性有機材料(以下,有機EL材料という)を挟んだ構造からなるEL素子を絶縁体上に形成した自発光装置。

4 対比及び判断
本件補正後発明と引用発明を対比すると以下のとおりとなる。
(1) 絶縁基板
引用発明の基板(11)及び下地膜(12)は,それぞれ,「ガラス,ガラスセラミックス,石英,シリコン,セラミックス,金属若しくはプラスチックからなる基板を用いることができ」,「珪素を含む絶縁膜を用いれば良く」,また,引用発明の電流制御用TFTは,「基板(11)上に下地膜(12)が形成された後,ソース領域(31),ドレイン領域(32)及びチャネル形成領域(34)を含む活性層,ゲート絶縁膜(18),ゲート電極(35),第1層間絶縁膜(20),ソース配線(36)並びにドレイン配線(37)を有して形成された」ものである。
したがって,引用発明の基板(11)ないし電流制御用TFTは,本件補正後発明の「少なくともソース/ドレーン電極を備える薄膜トランジスターを含む絶縁基板」に相当する。

(2) 絶縁膜
引用発明の自発光装置は,「基板(11)上に,下から順に,下地膜(12),活性層,ゲート絶縁膜(18),第1層間絶縁膜(20),ソース配線(36)及びドレイン配線(37),第1パッシベーション膜(38),第2層間絶縁膜(39),画素電極(40),保護部(41a,b),EL層(42),並びに,陰極(43)が形成され」,また,引用発明の画素電極(40)は,「第2層間絶縁膜(39)及び第1パッシベーション膜(38)にコンタクトホール(開孔)を開けた後,形成された開孔部において電流制御用TFTのドレイン配線(37)に接続されるように形成された,EL素子の陽極に相当する」ものである。
したがって,引用発明の第1パッシベーション膜(38)及び/又は第2層間絶縁膜(39)は,本件補正後発明の「前記絶縁基板上に形成され,前記ソース/ドレーン電極のうち,一つを露出させるビアホールを備える絶縁膜」に相当する。

(3) 有機EL素子
引用発明の画素電極(40)は,「第2層間絶縁膜(39)及び第1パッシベーション膜(38)にコンタクトホール(開孔)を開けた後,形成された開孔部において電流制御用TFTのドレイン配線(37)に接続されるように形成された,EL素子の陽極に相当する」ものであり,また,引用発明は,更にEL層(42)及び陰極(43)を含み,「陽極,陰極及びそれらの間にEL(ElectroLuminescence)が得られる発光性有機材料(以下,有機EL材料という)を挟んだ構造からなるEL素子を絶縁体上に形成した自発光装置」である。
したがって,引用発明の画素電極(40),EL層(42)及び陰極(43)からなるEL素子は,本件補正後発明の「前記絶縁膜上に形成されて前記ビアホールを通じて前記露出されている一つの電極に連結される下部電極,有機薄膜層及び上部電極を備える有機EL素子」に相当する。

(4) 自発光装置
引用発明の「自発光装置」は,本件補正後発明の「平板表示装置」に相当する。

そうしてみると,本件補正後発明と引用発明とは,
「少なくともソース/ドレーン電極を備える薄膜トランジスターを含む絶縁基板と,
前記絶縁基板上に形成され,前記ソース/ドレーン電極のうち,一つを露出させるビアホールを備える絶縁膜と,
前記絶縁膜上に形成されて前記ビアホールを通じて前記露出されている一つの電極に連結される下部電極,有機薄膜層及び上部電極を備える有機EL素子と,
を有する平板表示装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)
本件補正後発明の平板表示装置は,「前記下部電極上部に形成されているテーパー緩和膜」を含み,また,「前記ビアホールでの前記テーパー緩和膜のテーパー角は前記ビアホールのテーパー角よりも小さい第1テーパー角を有し,前記下部電極のエッジ部分での前記テーパー緩和膜は前記下部電極のエッジ部分のテーパー角よりも小さい第2テーパー角を有し」,さらに,「前記テーパー緩和膜が電荷輸送能力を有する導電性有機膜である」のに対し,引用発明の自発光装置は,これが明らかではない点。

(相違点に対する判断)
引用例には,
「【0004】低分子系有機EL材料と高分子系(ポリマー系)有機EL材料のいずれの場合に於いても成膜する面が平坦化されていないとEL材料を均一な膜厚に成膜することができないという問題が生じる。
【0005】さらに,EL層の膜厚が均一でなく,段差部分でEL層が一部成膜されていない場合には,陰極,EL層,陽極からなるEL素子を形成した際に,陰極と陽極間が電気的に短絡してしまう。
【0006】陰極と陽極の間で短絡が生じた場合には,陰極と陽極の間で電流が集中して流れてしまい,EL層を介する電流がほとんど流れなくなる。これにより,EL層が発光しなくなる。」(記載事項イ)
という従来技術の問題点,及び,
「【0008】【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために,本発明ではEL層を形成する有機EL材料を成膜する際に成膜面の凹凸部を平坦化するように絶縁体を埋め込みEL素子における陰極と陽極間の短絡を防ぐ構造にする。」(記載事項ウ)
という課題解決手段が記載されているところ,「EL層を形成する有機EL材料を成膜する際に成膜面の凹凸部を平坦化する」ことができるものとして,ポリマーの陽極バッファ層(正孔輸送層)の膜は周知である(必要ならば,欧州特許公開第1331667号明細書の[0010],特開2003-313655号公報の【0157】(23欄37ないし41行)を参照。)。
そうしてみると,引用発明の保護部(41a,41b)の構成に替えて周知の陽極バッファ層の膜をテーパー緩和膜として採用し,あるいは,引用発明の保護部(41a,41b)の構成に加えてその上に周知の陽極バッファ層の膜をテーパー緩和膜として採用し,その結果として,引用発明の平板表示装置を「前記下部電極上部に形成されているテーパー緩和膜」を含み,また,「前記ビアホールでの前記テーパー緩和膜のテーパー角は前記ビアホールのテーパー角よりも小さい第1テーパー角を有し,前記下部電極のエッジ部分での前記テーパー緩和膜は前記下部電極のエッジ部分のテーパー角よりも小さい第2テーパー角を有し」,さらに,「前記テーパー緩和膜が電荷輸送能力を有する導電性有機膜である」ものとすることは,当業者が容易になし得たことである。

また,本件補正後発明の作用効果は,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって,格別なものということはできない。

5 小括
以上のとおり,本件補正後発明は,引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
平成23年2月2日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,下記のものである。



少なくともソース/ドレーン電極を備える薄膜トランジスターを含む絶縁基板と,
前記絶縁基板上に形成され,前記ソース/ドレーン電極のうち,一つを露出させるビアホールを備える絶縁膜と,
前記絶縁膜上に形成されて前記ビアホールを通じて前記露出されている一つの電極に連結される下部電極,有機薄膜層及び上部電極を備える有機EL素子と,
前記下部電極上部に形成されているテーパー緩和膜とを含み,
前記ビアホールでの前記テーパー緩和膜のテーパー角は前記ビアホールのテーパー角よりも小さい第1テーパー角を有し,
前記下部電極のエッジ部分での前記テーパー緩和膜は前記下部電極のエッジ部分のテーパー角よりも小さい第2テーパー角を有することを特徴とする平板表示装置。

2 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は「第2 補正の却下の決定」の「3 引用例」に記載したとおりである。

3 対比及び判断
本願発明は,本件補正後発明から「前記テーパー緩和膜が電荷輸送能力を有する導電性有機膜である」という発明特定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正後発明が「第2 補正の却下の決定」で述べた理由により引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 小括
以上のとおり,本願発明は引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 総括
したがって,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-11 
結審通知日 2011-03-15 
審決日 2011-03-28 
出願番号 特願2004-81618(P2004-81618)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H05B)
P 1 8・ 121- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井亀 諭  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 今関 雅子
樋口 信宏
発明の名称 平板表示装置  
代理人 村山 靖彦  
代理人 佐伯 義文  
代理人 渡邊 隆  

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