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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1241849 |
審判番号 | 不服2009-9861 |
総通号数 | 142 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-05-11 |
確定日 | 2011-08-10 |
事件の表示 | 特願2004-176066「ディスクの倍速制御方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月 6日出願公開、特開2005- 4956〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件の審判請求に係る特許出願(以下「本願」という。)は、平成16年6月14日(パリ条約による優先権主張2003年6月14日、大韓民国)に出願したものであって、平成20年9月1日付けの拒絶理由通知に対する応答期間内の同年12月9日付けで手続補正がなされたが、平成21年2月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月11日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされた。 その後、平成22年10月19日付けで前置報告書を利用した審尋がなされたが、回答書は提出されなかったものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成21年5月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 所定通信規約を利用して、コンピュータでディスクドライブのディスク倍速を制御する方法において、 コンピュータで倍速を設定して前記通信規約によって倍速情報としてディスクドライブに伝送する段階と、 ディスクドライブで前記倍速情報を受信して保存し、保存された倍速に相応してディスクを読取る段階を含み、 前記保存された倍速情報は、ディスク交替及びディスクトレー状態に関係なしに新しい倍速情報に代替されるまでディスク読取り時に適用されることを特徴とするディスク倍速制御方法。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平11-144367号公報(平成11年5月28日公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、光ディスクを再生または記録・再生する光ディスク装置に関する。」 (2)「【0003】光ディスク装置では、光ディスクからデータ(信号)を読み出す際の光ディスクの回転数(回転速度)を複数段階の回転数、例えば、1倍速、2倍速、4倍速、6倍速、8倍速、10倍速、12倍速に設定し得るようになっている。」 (3)「【0017】図1は、本発明の光ディスク装置をコンピュータに接続した状態を示すブロック図、図2は、本発明の光ディスク装置の実施例を示すブロック図である。 【0018】これらの図に示す光ディスク装置1は、光ディスク(CD-R)2を記録・再生するCD-Rドライブ装置である。」 (4)「【0030】この光ディスク装置1には、インターフェース制御部31を介して外部装置(本実施例では、コンピュータ41)が着脱自在に接続され、光ディスク装置1とコンピュータ41との間で通信を行うことができる。 【0031】インターフェース制御部31としては、例えば、ATAPI(IDE)(アタピー規格)や、SCSI(スカジー規格)等が用いられる。 【0032】前記コンピュータ41には、キーボード42、マウス43およびモニター44がそれぞれ接続されている。 【0033】なお、インターフェース制御部31により、データを他所へ転送する転送手段が構成される。」 (5)「【0172】コンピュータ41よりデータの転送のコマンドを受けると、このプログラム(データの転送ルーチン)が実行される。この場合、光ディスク2の回転数は、コンピュータ41からの指令により、1倍速、2倍速、4倍速、6倍速、8倍速、10倍速および12倍速のうちのいずれかに設定される。」 (6)「【0184】この場合、前述したように、光ディスク2の回転数が現在設定されている回転数になるよう回転数制御を行うとともに、フォーカス制御、トラッキング制御およびスレッド制御を行いつつ、目的トラックからHF信号を得る。そして、得られたHF信号をEFM復調し、C1エラー訂正およびC2エラー訂正を行った後、オーディオ形式のDATA信号にデコードする。」 。」 上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「インターフェース制御部を介して接続されたコンピュータとの間で通信を行う光ディスク装置の光ディスク倍速を制御する方法において、 コンピュータからの指令により、倍速を設定し、 設定された光ディスク倍速で光ディスクを読み出し、 倍速は光ディスクを読み出す際に設定し得る光ディスク倍速を制御する方法。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「コンピュータ」「倍速」及び「光ディスク」は、本願発明の「コンピュータ」「ディスク倍速」及び「ディスク」にそれぞれ相当し、引用発明の「光ディスク装置」は、光ディスク(CD-R)を記録・再生するCD-Rドライブ装置であるから(摘示事項(3))、本願発明の「ディスクドライブ」に相当する。そして、引用発明の「インタフェース制御部」は、例えば、ATAPI(IDE)(アタピー規格)であり、コンピュータとの間で通信を行うものであるから(摘示事項(4))、引用発明は、「所定通信規約を利用して」いることは明らかである。 (2)引用発明の「光ディスク装置」は、「コンピュータからの指令により、倍速を設定」されるものであるから、引用発明は、本願発明の「コンピュータで倍速を設定して前記通信規約によって倍速情報としてディスクドライブに伝送する」段階を備えている。 (3)引用発明の「光ディスク装置」は、「設定された光ディスク倍速で光ディスクを読み出し」、「倍速は光ディスクを読み出す際に設定し得る」ものであるから、引用発明は、本願発明の「ディスクドライブで前記倍速情報を受信し」「倍速に相応してディスクを読取る」段階を含み、「倍速情報は、ディスク読取り時に適用される」点で共通している。 (4)引用発明の「光ディスク倍速を設定する方法」は、本願発明の「ディスク倍速制御方法」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「所定通信規約を利用して、コンピュータでディスクドライブのディスク倍速を制御する方法において、 コンピュータで倍速を設定して前記通信規約によって倍速情報としてディスクドライブに伝送する段階と、 ディスクドライブで前記倍速情報を受信し、倍速に相応してディスクを読取る段階を含み、 前記倍速情報は、ディスク読取り時に適用されるディスク倍速制御方法。」 そして、次の各点で相違する。 <相違点> (a)本願発明は、受信した倍速情報を「保存」するのに対し、引用発明には、保存することの特段の開示がない点。 (b)「倍速情報」について、本願発明は、「前記保存された倍速情報は、ディスク交替及びディスクトレー状態に関係なしに新しい倍速情報に代替されるまでディスク読取り時に適用される」ものであるのに対し、引用発明は、そのような特段の開示がない点。 5.判断 そこで、上記各相違点について検討する。 相違点(a)について ディスクドライブに関して引用発明及び本願発明と同一の技術分野に属する、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2001-250319号公報(以下「引用例2」という。)の段落【0050】には、「任意の速度を初期状態として設定しても良い。この初期状態で、ユーザは、何ら意識することなく初期状態のまま、SINGLETRACK DUBBINGを実行することができる。」と記載され、ディスクの回転速度を初期状態として設定し、ディスクの再生を実行するのであるから、設定されたディスクの回転速度が保存されているといえる。 そうすると、光ディスク倍速を制御する引用発明において、倍速を設定するときに、ディスクの回転速度を初期状態として設定する引用例2の上記技術を適用して、相違点(a)倍速情報を「保存」する構成とすることは当業者が容易に想到できたものである。 相違点(b)について 光ディスク装置において、ディスク交替やディスクトレイの開閉操作は、ディスクの操作態様の一つである。 一方、情報記録再生装置一般において、初期状態を設定した場合、初期状態を変更しない限り、該初期状態が保持されることは技術常識である。 そうすると、引用発明において、相違点(a)について検討したように光ディスクの倍速を初期状態に設定した場合に、ディスク交替やディスクトレイの開閉操作に関わりなく、倍速情報が変更されない限り、初期状態が保存されるのであるから、相違点(b)の、「前記保存された倍速情報は、ディスク交替及びディスクトレー状態に関係なしに新しい倍速情報に代替されるまでディスク読取り時に適用される」ことは自明又は当業者が適宜なし得る程度のことである。 そして、上記各相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用例1および2から当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-07 |
結審通知日 | 2011-03-08 |
審決日 | 2011-03-28 |
出願番号 | 特願2004-176066(P2004-176066) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 豊、津幡 貴生、渡邊 聡 |
特許庁審判長 |
小松 正 |
特許庁審判官 |
石川 正二 早川 学 |
発明の名称 | ディスクの倍速制御方法及び装置 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 志賀 正武 |