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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1241867
審判番号 不服2010-4631  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-03 
確定日 2011-08-10 
事件の表示 特願2004-514403「臨床試験装置におけるプローブ洗浄方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月11日国際公開、WO03/102597、平成17年 9月15日国内公表、特表2005-527839〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本願発明
本願は、平成15年5月29日(パリ条約による優先権主張 平成14年(2002年)5月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年1月26日付けで拒絶理由通知書が出され、これに対して、同年7月31日付けで手続補正書を提出したが、同年10月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年3月3日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願請求項1ないし11に係る発明は、平成21年7月31日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載事項からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された技術的事項により特定されるものと認められ、請求項1に係る発明は次の技術的事項により特定される発明である。(以下、「本願発明」という。)
「 【請求項1】
自動臨床分析器での使用に適したサンプルプローブを洗浄するシステムであって、
内部領域および外部表面を有しており、所定の量の流体を内部領域内へ選択的に吸引するのに使用される、サンプルプローブと、
第一所定期間、プローブの内部領域を通って洗浄流体を分配することができる、第一洗浄メカニズムと、
第一所定期間を過ぎて継続する第二所定期間、プローブの外部表面上に洗浄流体を分配することができる、第二洗浄メカニズムと、を備えており、
第一所定期間が終了時点を有しており、第二所定期間も終了時点を有しており、これらの終了時点が、少なくとも一つのポンプ制御器によって制御される、前記システム。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平6-222065号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて付記したものである。
(1-1)特許請求の範囲
「【請求項1】 先端および外面を有する中空のプローブと、前記プローブを垂直に移動するための移動手段と、洗浄カラーであって前記プローブを受け入れるように適合された前記洗浄カラーを貫通する穴を有し、前記穴が前記プローブの外部の寸法と前記穴の内部の寸法との間の間隙を規定するように寸法を定められている洗浄カラーと、前記プローブに関して前記洗浄カラーを横および縦に固定するための手段であって前記穴を経る前記プローブの縦方向移動のために前記穴が前記プローブと同軸に整列されている固定手段と、前記穴から液体を引き出すべく前記穴に真空を適用するための真空手段と、前記洗浄カラーの穴を通る洗浄液を送り出すための穴ポンプ手段と、前記プローブを通りかつ前記プローブの先端から出る洗浄液を送り出すためのプローブポンプ手段とを含む、プローブ洗浄装置。
・・・(略)
【請求項6】 請求項1に記載の装置を使用する方法であって、前記穴に真空を適用すべく前記真空手段を作動させ、前記プローブを通りかつ前記プローブの先端から出る洗浄液を送り出すべく前記プローブポンプ手段を作動させ、前記プローブポンプ手段の作動を停止し、前記洗浄カラーの穴および前記プローブの先端の外面の周りに洗浄液を送り出すための前記穴ポンプ手段を作動させ、前記穴ポンプ手段の作動を停止し、前記真空手段の作動を停止することを含む、プローブ洗浄装置の使用方法。
【請求項7】 前記プローブの先端を前記洗浄カラーの穴に配置する最初の工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】 前記プローブポンプ手段の作動を停止する工程は、前記穴ポンプ手段を作動させる工程の前に行なう、請求項6に記載の方法。
【請求項9】 前記プローブポンプ手段の作動を停止する工程は、前記穴ポンプ手段を作動させる工程の後に行なう、請求項6に記載の方法。」

(1-2)第3頁右欄
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、流体プローブ操作装置およびシステムの分野、より詳細には、流体操作プローブを洗浄するための装置および方法に関する。この特定用途に限定されないが、本発明は自動化された臨床化学アナライザの分野において有用である。
【0002】
【従来の技術】自動臨床化学アナライザは周知であり、また、一般に、患者の試料の自動化または半自動化された分析のために利用される。典型的には、血液、尿、脊髄液等の準備された患者の試料が、試験管ような試料容器に入れてアナライザに載せられる。アナライザは患者の試料と1またはそれ以上の試薬を、通常は関心のある特定のアナライトについて前記試料の化学分析が行なわれる反応セルまたはキュベットにピペットで移し、分析の結果は報告される。
【0003】このようなアナライザでは、特別な分析が求められるときに前記患者の試料と試薬とを移動するため、自動化されたピペットが用いられている。このようなピペットは開放端または先端を有する中空のプローブを含み得る。前記プローブは、例えば、試料を収容する試料容器内へ下降され、予め定められた量の試料が前記試料容器から取り出され、前記プローブは例えば反応セルの上方の場所へ移動され、再び下降され、前記プローブ内に保持された前記試料は前記反応セルに排出される。」

(1-3)第4頁左欄
「【0005】しかし、プローブ洗浄に共通の問題は、持ち越し、すなわち、残りの流体、または、洗浄に拘らず前記プローブ上もしくは前記プローブ内に残るまたは前記プローブにより吸入された流体からの汚染である。この残りは、前記プローブに取り込まれるその後の試料または試薬と混合し、また、その後の分析を妨害する。」

(1-4)第5頁左欄
「【0020】したがって、本発明の装置および方法は、前記プローブの外部および内部を完全に洗浄することにより持ち越しを減らし、前記プローブが操作ステーションから操作ステーションへ移動するときの「空中で」のプローブ洗浄を提供することにより洗浄時間を減少し、また、液体レベル感知または関連の制御装置が機能しない場合、前記プローブの外面の偶然の汚染を除去するために前記プローブ外部の全有効長さを洗浄する。」

(1-5)第5頁左欄?右欄
「【0021】
【実施例】図1を参照すると、本発明に係るまた本発明の方法を実施すべく適用されたプローブ洗浄装置10がベースプレート11と、揺動可能のアーム12とを含み、前記揺動可能のアームはプローブ組立体14と洗浄カラー16とを支持する。ベースプレート11は、適当な複数の据え付け穴18と、プーリ22により回転される回転可能のシャフト20とを有する。また、プーリ22は駆動ベルト(図示せず)を介してモータ(図示せず)により駆動される。
【0022】アーム12は該アームの第1の端部すなわち揺動端部においてシャフト20に取り外し可能に固定され、また、アーム12の第2の端部すなわち外側の端部においてプローブ組立体14を支持する。アーム12は底部水平部材24および頂部水平部材26と、第1および第2の垂直部材28,30とを含む。
【0023】プローブ組立体14はアーム12の外側の端部に配置されている。プローブ組立体14は中空の流体移送プローブ36であってその上端部で可動ブロック38に固定されたプローブ36を含む。前記ブロックはねじ山が設けられた垂直なシャフト40と、プローブ36からシャフト40の反対側のガイドバー42とに貫通されている。ねじ山が設けられたシャフト40は回転のためにその上下両端部において支持され、また、頂部水平部材26の上方のプーリ44に固定されている。ねじ山が設けられたシャフト40は、アーム12の揺動端部に配置されたモータ46により回転され、前記モータはプーリ48および可撓性のベルト50によりプーリ44に作動的に接続されている。」

(1-6)第5頁右欄?第6頁左欄
「【0024】洗浄カラー16はアーム12の外側の端部において底部水平部材24に固定されかつプローブ36と整列され、プローブ36を受け入れる。プローブ36は洗浄カラー16を拘束なく貫通している。前記プローブの下方の解放端56は(本発明の装置10の操作および本発明の方法について以下に説明するように)、例えば試験される試料59を収容する試験管58と、試薬61が取り出される試薬容器60と、反応および測定のために試料59と試薬61とが吐き出される反応キュベット62との上方に整列される。試験管58、試薬容器60および反応キュベット62は、本発明の装置10が利用されるアナライザの特定のデザインに応じて、全てが従来のデザインであり、また、例えばホイールやベルトの上に置かれ、あるいは、静止される。
【0025】図2を参照すると、洗浄カラー16が引込みまたは「上方」位置のプローブ36と共に示されている。洗浄カラー16は例えばPEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン )で形成された本体70を含む。洗浄カラー16を垂直に貫通する穴72が形成され、また、前記穴は、図2に見られるように、頂部から底部にかけて、上部74と、洗浄または中央のチャンバ部76と、限定または減少部78と、テーパ部80と、下部82とを含む。上部74は円筒状の側壁を有し、また、プローブ36の外形よりわずかに大きい内径を有する。中央のチャンバ部76は上部74に関して大きくされている。中央チャンバ部76は上部テーパ壁77Aおよび下部テーパ壁77Bとを含む。ポート84が上下両テーパ壁77A,77B間のチャンバ部76の側壁に形成され、また、適当な管継手86により、図3に関連して以下に説明する制御可能の真空源に接続された管88に接続されている。
【0026】チャンバ部76の直下に、上部74と同じ直径を有する減少部78がある。テーパ部80は、前記直径の減少部78から下部82へ外方に傾斜しており、前記下部はチャンバ部76の直径とほぼ同じかまたはこれよりわずかに小さい直径を有する。洗浄カラー16の壁を貫通する洗浄液のポート90が形成され、テーパ部80と下部82との交差点の直上(図2に関連して見られるように)で穴72と相交わっている。ポート90は、管継手92により、図3に関連して以下に説明する洗浄液源に接続されている管94に接続されている。
【0027】上部74、中央チャンバ部76、減少部78、テーパ部80および下部82は、全て、同軸であり、また、テーパ部80を除く全てが円筒状の側壁を有する。穴72はその長さ全体にわたってプローブ36を自由に受け入れるように寸法を定められ、穴72の各部分と穴72内に受け入れられるプローブ36の外面との間に環状のスペースまたは隙間を提供する。穴72およびポート84,90は例えばきりもみにより形成される。インサート96が本体70の内部に固定され、上部74と中央チャンバ部76の上方のテーパ壁77Aとを規定する。」

(1-7)第6頁左欄
「【0029】本発明の装置は図3の流体および制御システムに統合されかつこれにより制御される。プローブ36の内部液体移送導管102は、シェルすなわち管110を経て、自動化されたシリンジ112およびソレノイド制御の弁114に接続されている。好ましくは、管110がプローブ36の頂部の近傍でコイル115に形成され、前記コイルは液体がプローブ36を経て流れ、これによりこの液体の流れにおける混合作用を発生する乱れを提供する。自動シリンジ112は従来の構造であり、また、チャンバ118内で操作可能のピストン116を含み、ピストン116はモータ120に接続されかつモータ120により操作される。弁114は、加圧洗浄液の貯蔵器124からの洗浄液の流れを制御する。洗浄カラー16の洗浄液ポート90からの管94は、貯蔵器124からの洗浄液の流れを制御するソレノイドで制御される弁122に接続されている。前記貯蔵器は、調整された空気ポンプ125により加圧される。洗浄カラー16内の真空ポート84に接続された管88はソレノイドで制御される弁126を経て、真空ポンプ130からの調整された真空が適用される廃液貯蔵器128に接続されている。」

(1-8)第6頁左欄?右欄
「【0030】図1に関連して前述したように、モータ46はプローブ36を垂直上方または下方のいずれか一方へ移動すべく作動され、また、モータ132はシャフト20によりアーム12を旋回させる。弁114、モータ120、弁122、弁126、モータ46およびモータ132は、全て、従来の構造のものでありまた本発明の方法に従うシステムの操作を制御するためにプログラムを組まれているコントローラ134により制御される。外部シェル100および内部流体移送導管102は、前述したようなレベル感知回路を含む前記コントローラに電気的に接続されている。」

(1-9)第6頁右欄
「【0031】操作の際、前記装置の最初の状態は、プローブ36に関して、図2に示すような引込まれた、または上方の位置にある。この位置において、プローブの先端の長さ104は中央チャンバ部76内にある。また、前記装置の最初の状態は、好ましくは、前記プローブが、例えば多量の液体試料を含む試験管58の上に垂直に整列されるように配置されたアーム12を含む。モータ46は試料59に向けてプローブ36を下げるように操作される。プローブ36の先端56が試料59の表面に接しかつコントローラ134内のレベル感知回路が試料59の表面を感知すると、モータ46は止められ、先端56を経てプローブ36に試料59を引き入れるべくモータ120に電圧が加えられる。プローブ36は、プローブ36がその引込みまたは上方位置にあるときの中央チャンバ部76内のプローブ36の長さ104より短い距離をもって試料59に挿入される。これは、例えば、プローブ36に引込まれた試料の体積が試験管58内の試料レベルをこの距離より少なく低下させるときに達成される。選択的に、より多量の試料が必要なとき、モータ46は、前記試料がプローブ36に吸引され、下がった試料59のレベルに本質的に追随するように、わずかにプローブ36を下げるように制御される。
【0032】予め定められた量の試料が吸い出されると、モータ120は止められ、先端56が洗浄カラー16内で図2に示すように位置決められるように前記上方または引込み位置にプローブ36を上昇させるべくモータ46が作動される。プローブ36が例えばキュベット62の上方に整列されるようにアーム12およびプローブ36の位置を変えるべくモータ132が作動される。モータ132が止められ、先端56がキュベット62の上方にあるような位置にプローブ36を下降させるべくモータ46が制御され、また、プローブ36内の試料をキュベット62に排出すべく制御される。前記試料が排出されると、モータ120は止められ、プローブ36をその引込み位置に上昇させるべくモータ46が制御される。モータ132は再び制御され、アーム12を例えば試薬容器60へ向けて回す。」

(1-10)第6頁右欄?第7頁左欄
「【0033】アーム12が前記試薬容器に向けて移動されると、前記プローブは前記洗浄カラー内で洗浄される。より詳細には、下部82を通して洗浄カラー16内に、また、プローブ36と上部74との間の小さい環状空間を通して実質的により小さい範囲に空気を引込むべく真空弁126が作動される。プローブ36を通して加圧洗浄液を流し、プローブの先端56を通して前記洗浄液を排出すべく弁114が作動され、プローブ36の内側を洗浄しかつプローブの先端56の外側と中央チャンバ部76内のプローブ36の長さ104の部分との周りに前記排出洗浄液を渦巻かせる。前記洗浄液は、真空ポート84に適用された真空によって作り出された前記空気流により、前記中央チャンバ部から引き出される。
【0034】約1ないし2秒間後、ここに開示された実施例において好ましくは約1.4秒後、弁114が閉じられ、テーパ部80に洗浄液を流すべく外部洗浄流体弁122が開かれる。この洗浄液はテーパ部80を経て上方へ引かれ、減少部78を過ぎて前記中央チャンバ部に入り込み、前記洗浄液を中央チャンバ部76内のプローブ36の先端およびプローブ36の長さ104の部分の周りに引込み、内部洗浄が完了した後に残る汚染物質を前記プローブの外部から洗い流す。」

(1-11)第7頁左欄
「【0035】弁122は、約1秒間、ここに開示の実施例において好ましくは約0.6秒間、洗浄液ポート90を通して洗浄液を供給するために開いた状態を維持される。真空弁126は、最後の洗浄液が中央チャンバ部76に流入された後1ないし2秒間、この実施例において好ましくは約1.5秒間閉じられる。
【0036】弁114,122の開閉によって完了される内部プローブ洗浄および外部プローブ洗浄は、また、洗浄液の流動時間の重複が生じるように行なうことができる。したがって、弁122が開かれる前に弁114を閉じることに代えて、弁122が先ず開かれ、外部洗浄液の流れを起こし、次いで、内部洗浄液弁114が閉じられる。どちらの場合も、すなわち、弁114から次いで弁122からの内部洗浄流れの時間上の重複がない場合、または、時間上のこのような重複がある場合、外部洗浄弁122は好ましくは最後に閉じられ、中央チャンバ部76内のプローブ36の外部長さ104の部分の周りに外部洗浄液が流れ、これによりプローブ36の外部洗浄を終了することを許す。」

(1-12)図3
図3からは、弁114はプローブ36の上端と洗浄液の貯液槽124の間に管110を介して設けられていることが図示されている。


ここで、摘記事項(1-10)に「プローブ36を通して加圧洗浄液を流し、プローブの先端56を通して前記洗浄液を排出すべく弁114が作動され、プローブ36の内側を洗浄しかつプローブの先端56の外側と中央チャンバ部76内のプローブ36の長さ104の部分との周りに前記排出洗浄液を渦巻かせる。」と記載されており、図3(摘記事項(1-12))からすると、弁114はプローブの上端と洗浄液の貯液槽124の間に設けられているから、弁114は、プローブ内側を洗浄する洗浄液を供給する弁であることがわかる。

これらの記載事項および図面を勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「自動臨床化学アナライザの患者試料を試料容器から取り出すためのプローブの洗浄装置であって、
先端および外面を有する中空のプローブは、前記試料が前記プローブ36に吸引され、予め定められた量の試料が前記試料容器から取り出されるものであり、
前記プローブが拘束なく貫通している洗浄カラー16において、前記プローブ36を通して加圧洗浄液を流し、前記プローブの先端56を通して前記洗浄液を排出すべく、前記洗浄液をプローブ内側に供給する弁114が作動され、前記プローブ36の内側を洗浄する機構と、
前記弁114が開いてから、約1ないし2秒間後、前記洗浄液をプローブ内側に供給する弁114が閉じられ、
前記洗浄カラー16のテーパ部80に洗浄液を流すべく外部洗浄流体弁122が開かれる機構を備えており、前記洗浄液をプローブ内側に供給する弁114の開閉によって完了されるプローブ内側の洗浄、及び,前記外部洗浄流体弁122の開閉によって完了される外部プローブ洗浄は、洗浄液の流動時間の重複が生じるように行なうことができ、外部洗浄流体弁122は最後に閉じられ、
前記外部洗浄流体弁122は、約1秒間洗浄液ポート90を通して洗浄液を供給するために開いた状態を維持され、前記弁114及び前記外部洗浄流体弁122は、プログラムを組み込まれているコントローラ134により制御されている洗浄装置。」

3.対比
本願発明と刊行物1発明を対比する。
(1)刊行物1発明の「自動臨床化学アナライザ」は、本願発明の「自動臨床分析器」に相当する。
また、刊行物1発明の「患者試料を試料容器から取り出すためのプローブ」は、患者試料を吸引するのにも使用されるから、本願発明の「サンプルプローブ」であるということができる。
そうすると、刊行物1発明の「自動臨床化学アナライザの患者試料を試料容器から取り出すためのプローブの洗浄装置」は、本願発明の「自動臨床分析器での使用に適したサンプルプローブを洗浄するシステム」に相当する。

(2)刊行物1発明の「先端および外面を有する中空のプローブ」は、中空であり、内部領域を有していることは明白であるから、本願発明の「内部領域および外部表面を有して」いる「サンプルプローブ」ということができる。
また、刊行物1発明の「先端および外面を有する中空のプローブ」は、試料を吸引するものであるから、試料が内部領域に吸引されるのに使用されることは自明である。
そうすると、刊行物1発明の「先端および外面を有する中空のプローブは、前記試料が前記プローブ36に吸引され、予め定められた量の試料が前記試料容器から取り出されるもの」は、本願発明の「内部領域および外部表面を有しており、所定の量の流体を内部領域内へ選択的に吸引するのに使用される、サンプルプローブ」に相当する。

(3)刊行物1発明は「前記弁114が開いてから、約1ないし2秒間後、前記洗浄液をプローブ内側に供給する弁114が閉じられ」るものであるから、所定期間洗浄液が供給されるものであるということができる。
そして、刊行物1発明は、プローブの内側に洗浄液が供給されるから、本願発明の「プローブ内側領域を通って洗浄流体を分配する」機能を有しているといえる。
そうすると、刊行物1発明の「前記プローブが拘束なく貫通している洗浄カラー16において、前記プローブ36を通して加圧洗浄液を流し、前記プローブの先端56を通して前記洗浄液を排出すべく、前記洗浄液をプローブ内側に供給する弁114が作動され、前記プローブ36の内側を洗浄する機構と、前記弁114が開いてから、約1ないし2秒間後、前記洗浄液をプローブ内側に供給する弁114が閉じられ」るものは、本願発明の「第一所定期間、プローブの内部領域を通って洗浄流体を分配することができる、第一洗浄メカニズム」に相当するといえる。

(4)刊行物1発明の「洗浄カラー16のテーパ部80に洗浄液を流すべく外部洗浄流体弁122が開かれる機構」は、本願発明の「プローブの外部表面上に洗浄流体を分配することができる」という機能を備えていることは明白である。
ところで、本願発明の「第一所定期間を過ぎて継続する第二所定期間」とは、第一所定期間と第二所定期間は重複しており、第二所定期間は、第一所定期間を過ぎても継続すると解することができる。
これを裏付けるように、本願発明の詳細な説明の【0026】に、「内部洗浄は、外部洗浄を終了する前に終了される。この終了の重複はサンプルキャリーオーバーを顕著に減少し、臨床化学試験装置が免疫測定試験装置の制限的仕様を満たすのを可能にする。(15μL以下のような)所定の閾値以下の化学サンプリング量のための一つの例の洗浄は、内部サンプルプローブ洗浄の100ms後に終了する、一秒間の外部サンプルプローブ洗浄を含む。外部洗浄は、本発明から逸脱することなく、内部洗浄の前に開始することができる。」と記載されていることからして、プローブの内部洗浄と外部洗浄は重複した期間行われており、プローブの内部洗浄を行う第一所定期間の後も、プローブの外部洗浄をする第二所定期間が継続しているものが記載されている。
他方、刊行物1発明は、「前記洗浄液をプローブ内側に供給する弁114の開閉によって完了されるプローブ内側の洗浄、及び、前記外部洗浄流体弁122の開閉によって完了される外部プローブ洗浄は、洗浄液の流動時間の重複が生じるように行なうことができ、外部洗浄弁122は最後に閉じられ」るものであって、外部プローブ洗浄の期間を第二所定期間、プローブ内側の洗浄期間を第一所定期間とすれば、その時間関係からみて、最後に外部洗浄弁122が閉じられるべく機能しているから、本願発明の「第一所定期間を過ぎて継続する第二所定期間、プローブの外部表面上に洗浄流体を分配することができる」という機能を有することは明白である。
以上のことを総合すると、刊行物1発明の「前記洗浄カラー16のテーパ部80に洗浄液を流すべく外部洗浄流体弁122が開かれる機構を備えており、前記洗浄液をプローブ内側に供給する弁114の開閉によって完了されるプローブ内側の洗浄、及び,前記外部洗浄流体弁122の開閉によって完了される外部プローブ洗浄は、洗浄液の流動時間の重複が生じるように行なうことができ、外部洗浄流体弁122は最後に閉じられ」るものは、本願発明の「第一所定期間を過ぎて継続する第二所定期間、プローブの外部表面上に洗浄流体を分配することができる、第二洗浄メカニズム」に相当する。

(5)刊行物1発明は「前記弁114が開いてから、約1ないし2秒間後、前記洗浄液をプローブ内側に供給する弁114が閉じられ」と記載されているから、刊行物1発明の「第一所定期間」に相当するものが終了時点を有しており、弁114の閉鎖が終了時点を制御していることは明白である。また、刊行物1発明は「外部洗浄流体弁122は、約1秒間洗浄液ポート90を通して洗浄液を供給するために開いた状態を維持され」、「外部洗浄流体弁122は最後に閉じられ」という特定事項を具備するものであるから、刊行物1発明の「第二所定期間」に相当するものが終了時点を有しており、外部洗浄流体弁122の閉鎖が終了時点を制御していること明白である。
刊行物1発明のコントローラ134の制御対象は弁であり、本願発明の制御対象は、ポンプである。
そうすると、刊行物1発明の「外部洗浄流体弁122は、約1秒間洗浄液ポート90を通して洗浄液を供給するために開いた状態を維持され、前記弁114及び前記外部洗浄流体弁122は、プログラムを組み込まれているコントローラ134により制御されている洗浄装置」と、本願発明の「第一所定期間が終了時点を有しており、第二所定期間も終了時点を有しており、これらの終了時点が、少なくとも一つのポンプ制御器によって制御される、前記システム」とは、「第一所定期間が終了時点を有しており、第二所定期間も終了時点を有しており、これらの終了時点が、少なくとも一つの制御器によって制御される、前記システム」という点で共通する。

以上のことから、両者は、次の(一致点)及び(相違点)を有する。
(一致点)
「自動臨床分析器での使用に適したサンプルプローブを洗浄するシステムであって、
内部領域および外部表面を有しており、所定の量の流体を内部領域内へ選択的に吸引するのに使用される、サンプルプローブと、
第一所定期間、プローブの内部領域を通って洗浄流体を分配することができる、第一洗浄メカニズムと、
第一所定期間を過ぎて継続する第二所定期間、プローブの外部表面上に洗浄流体を分配することができる、第二洗浄メカニズムと、を備えており、
第一所定期間が終了時点を有しており、第二所定期間も終了時点を有しており、これらの終了時点が少なくとも一つの制御器によって制御される、前記システム。」

(相違点)
第一所定期間の終了時点と第二所定期間の終了時点の制御対象が、本願発明では、「ポンプ」であるのに対し、刊行物1発明では、その制御対象が洗浄液をプローブ内側に供給する弁114及び外部洗浄弁122の開閉である点。

4 相違点についての検討・判断
液体の供給をポンプで制御することは、例示するまでもなく本願優先権主張日前から周知の技術的事項である。刊行物1発明において、弁による液体の供給制御に代えて、前記周知のポンプによる制御を採用して、本願発明の如く構成することは、当業者であれば適宜なし得たことということができる。

そして、本願発明の作用効果は、刊行物1及び上記周知の技術的事項に基づき当業者が予測し得るものであって、格別顕著な効果とはいえない。

なお、請求人は、刊行物1等に記載された発明が本願発明とはそもそも前提となる構成が異なる大掛かりなものであって、本願発明の既存の洗浄ステーションでのピペットの外側の洗浄とピペットの内側の洗浄との間の時間差を意図した変更は刊行物1等には教示されていない旨主張している。しかしながら、本願発明の特定事項には、既存の洗浄ステーションという請求人の主張に対応する特定事項が存在せず、請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではない。
仮に、何らかの既存の洗浄ステーションに関する特定事項を本願発明に付加したとしても、既存、すなわち、公知の洗浄ステーションに、刊行物1に記載のピペットの外側の洗浄とピペットの内側の洗浄との間の時間差を与える技術を組み合わせることは当業者が容易になし得たことといえる。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-10 
結審通知日 2011-03-15 
審決日 2011-03-28 
出願番号 特願2004-514403(P2004-514403)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷 潮  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 石川 太郎
岡田 孝博
発明の名称 臨床試験装置におけるプローブ洗浄方法  
代理人 坪倉 道明  
代理人 川口 義雄  
代理人 大崎 勝真  
代理人 渡邉 千尋  

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