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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1241890
審判番号 不服2008-23548  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-12 
確定日 2011-08-08 
事件の表示 特願2004-519552「プリンタ出力用コンテンツのリモートレンダリングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月15日国際公開、WO2004/006085、平成17年10月27日国内公表、特表2005-532630〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2003年5月15日(パリ条約優先権主張、2002年7月9日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年6月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年9月12日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年9月12日付け手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月12日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。
「コンテンツ記述によって記述されたコンテンツをレンダリングするためのコンピュータで実施される方法において、
ウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンと出力機器記述とを備えるレンダリング・サーバに、コンテンツプロバイダ・サーバがコンテンツ記述を出力するステップと、
前記ウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンが前記コンテンツ記述と前記出力機器記述とから、プリンタ出力に適したレンダリングされたコンテンツを生成するステップと、
レンダリング・サーバが前記レンダリングされたコンテンツをプリンタに転送するステップと
を含み、
前記コンテンツ記述はハイパーテキスト・マークアップ言語(HTML)によって記述され、前記出力機器記述はウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンの少なくとも1つの入力パラメータに従ってプリンタを記述し、前記レンダリングされたコンテンツはラスタ画像よりなる、方法。」

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項に関し、コンテンツについて、「ウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンと出力機器記述とを備えるレンダリング・サーバに、コンテンツプロバイダ・サーバがコンテンツ記述を出力するステップ」を追加し、コンテンツ記述を、「前記コンテンツ記述はハイパーテキスト・マークアップ言語(HTML)によって記述され」と限定し、
「(A)該コンテンツ記述と出力機器記述とをウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンに供給して、プリンタ出力に適したレンダリングされたコンテンツを生成し、」とあるのを「前記ウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンが前記コンテンツ記述と前記出力機器記述とから、プリンタ出力に適したレンダリングされたコンテンツを生成するステップ」と訂正し、「該レンダリングされたコンテンツがラスタ画像よりなるステップで、該出力機器記述がウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンの少なくとも1つの入力パラメータに従ってプリンタを記述するステップ;」とあるのを、「前記出力機器記述はウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンの少なくとも1つの入力パラメータに従ってプリンタを記述し、前記レンダリングされたコンテンツはラスタ画像よりなる」と訂正し、「コンテンツ記述によって記述されたコンテンツをレンダリングするためのコンピュータで実施される方法において:・・・を具有することを特徴とするコンピュータで実施される方法。」とあるのを、「コンテンツ記述によって記述されたコンテンツをレンダリングするためのコンピュータで実施される方法において、・・・よりなる、方法。」と訂正するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開平6-28434号公報」(以下「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、以上の点に鑑みて発明されたものであり、表示用と印刷用の様々な回路、特に多値2値回路を兼用することによって画像の表示、印刷の高速化、また記憶容量の節約を計るものである。」(第3頁左欄)

「【0023】(実施例1)以下、図面を参照して本発明の第1実施例を詳細に説明する。
【0024】図1は本発明の第1の実施例を示す装置の全体構成を示すブロック図である。
【0025】同図において、1は、様々な表示データや印刷データを作成したり、画素密度変換回路4やRGB/YMCK変換回路5、多値2値変換回路7などの装置各部の制御を行なうCPUである。
【0026】2は、CPU1と様々な周辺回路を接続するバスである。
【0027】3は多値メモリであり、CPU1より自然画や多値で表されるベクタグラフィックス、テキストなどが書き込まれる。
【0028】4は画素密度変換回路であり、自然画など、データ化される時に既にある固定された解像度が決まるものは、この回路を使用して、多値のまま画素密度変換を行なう。この回路の具体的な処理内容は、アナログ補間と間引きである。
【0029】5はRGB/YMCK変換回路である。表示器13は、通常RGBデータでカラーを表現するが、プリンタ14はYMCKデータでカラーを表現するため、本回路を用いて変換する。従って本回路が使用されるのは、印刷データの作成時である。
【0030】6は描画プロセッサであり、CPU1より様々なコマンドを受け取って、ベクタグラフィックスコマンド、アウトラインフォントなどの描画を行なう。描画プロセッサ6は、切り換え回路9を介して2値メモリ10、11につながっているため、描画できるのは、表示ではR,G,Bで表すことのできる色であり、印刷ではY,M,C,Kで表せる色である。
【0031】7は多値2値変換回路であり、多値メモリ3のデータを本回路を使用して2値データに変換し、表示用または印刷用の2値メモリに記録する。本実施例では、多値2値変換の方法として誤差拡散法を用いるものとするが、これは公知の技術であるので、詳細な説明は省略する。
【0032】8、9は、多値2値変換回路7および描画プロセッサ6からのデータを、それぞれ表示用2値メモリ10、印刷用2値メモリ11に接続する切り換えスイッチである。ここで、切り換えスイッチ8と9は、アービトレーション回路12を通じて制御が行なわれるが、その制御は相補に行なわれる。従って切り換えスイッチ8が多値2値変換を選択しているときは、切り換えスイッチ9は描画プロセッサを選択する。
【0033】10は表示用2値メモリであり、本実施例ではビデオ用デュアルポートRAMである。また、11は印刷用2値メモリである。
【0034】12はアービトレーション回路であり、CPU1からの信号によって切り換えスイッチ8、9を制御する。
【0035】13は表示器であり、本実施例ではR,G,Bのそれぞれ2値の値を受け取って8色を表現できる高解像度のフラットパネルディスプレイである。
【0036】14はプリンタであり、ここでは、Y,M,C,Kのそれぞれ2値の値をうけとって7色を表現できるインクジェットプリンタとする。
【0037】ここで、本実施例を適用するのに好適なインクジェットプリンタの構成について図10及び図11を参照しながら説明する。
【0038】なお、本実施例を適用するプリンタは、インクジェットプリンタに限られるものではない。」(第3頁右欄?第4頁左欄)

「【0044】このように構成されたプリンタにおいて、インタフェース1700を介してホストコンピュータより記録信号が入力されると、ゲートアレイ1704とMPU1701との間で、記録信号がプリント用の記録データに変換される。そして、モータドライバ1706、1707が駆動されるとともに、ヘッドドライバ1705に送られた記録データに従って記録ヘッドが駆動され印字が実行される。」(第4頁右欄)

「【0045】図1に戻り、15は表示タイミング生成器であり、表示器13が要求するタイミングに応じて、表示用2値メモリ10から表示器13にデータを転送する。
【0046】16はアービトレーションタイミング生成器であり、表示用のタイミングから、表示データと印字データ作成の切り換えのタイミングを作成する。
【0047】17はインバータであり、16のタイミングを反転する。
【0048】また18は、制御メモリであり、各種の制御データ、図5、6のフローチャートにつき後述する処理手順を含むCPU1による制御手順となるプログラムなどを記憶する。
【0049】図2は、上述した表示用2値メモリ10として使用されるビデオ用デュアルポートメモリである。
【0050】同図より分かる通り、ランダムポートとシリアルポートがあり、適切なコントロール信号を加えることによってDRAMの中の一部のメモリをシリアルメモリへ転送可能である。一度シリアルポートメモリに転送されると、DRAMとは別個に、シリアルクロックによってシリアルデータが出力可能である。本実施例の場合、ランダムポートが切り換えスイッチ8、9につながり、シリアルポートが表示器13に接続している。
【0051】図3は、本実施例によって得られる画像の例である。このような画像は、表示器からもプリンタ出力からも得られるものである。
【0052】同図において、I1はカラーテキストであり、大きく『フルカラープリンタ時代』とある。これは多値で表されるため、CPU1によって多値メモリ3に書かれた後、多値2値変換回路7によって2値メモリに記憶される。I2はテキストであり、本出力の本文である。この文章は黒で書かれているので、描画プロセッサが使用可能である。実際のアプリケーションとしては、この形態がもっとも多いと思われるので、この描画に専用のプロセッサが使用できるのは効率的である。I3は自然画であり、山の絵である。この絵はスキャナを利用して読み取ったので、プリンタと等しい解像度である。従って、表示器13に表示を行なうときは、画素密度変換回路4で密度変換を行なってから表示を行なう。
【0053】図4は、多値2値変換回路7、描画プロセッサ6の使用権を表すタイミング図である。図2において説明した通り、本実施例では表示データの転送にシリアルメモリを採用しているので、図4に示すように、表示タイミング発生器15から出力されるVRAM制御信号に従って、RAMアクセスサイクルが規定されている。RAMアクセスサイクル中は、表示用メモリ10を使用できるわけであるので、アービトレーションタイミング発生器によって、図のように多値2値変換回路7の使用権を表すタイミングが生成される。
【0054】図でl1は多値2値変換回路の表示データ作成のための使用区間かつ描画プロセッサのプリントデータの作成区間であり、l2は多値2値変換回路のプリントデータの作成区間であり、l3は描画プロセッサの表示データ作成の期間である。
【0055】次に、表示データもしくは印刷データ作成時のCPUの制御方法をフローチャートを用いて説明する。
【0056】図5は表示データ作成のフローチャートである。
【0057】ステップS502では、多値画像の表示かどうかチェックする。もしそうであれば、ステップS503において多値2値変換回路の次の使用期間が来るまで待つ。これはl1の長さしか使用期間が認められていないので、同期をとって描画時間を管理するためである。
【0058】ステップS504ではその期間が来たので、多値2値変換回路7を使用して表示用2値メモリ10へ描画する。このl1で描画時間が足りない場合、次の使用期間が来るまで待ち、再び描画する。多値画像でなければ、ステップS505では単色描画データかどうか調べる。もしそうであれば、ステップS506において、描画プロセッサ6の次の使用期間が来るまで待つ。これはステップS503と同様にl3しか時間がないからである。
【0059】ステップS507では、描画用プロセッサ6を使用して、表示用2値メモリ10に描画データを記憶する。
【0060】図6は印刷データ作成のフローチャートである。
【0061】ステップS602では多値画像の印刷かどうかチェックする。もしそうであれば、ステップS603において多値2値変換回路7の次の使用期間が来るまで待つ。これはl2の長さしか使用期間が認めていないため、同期をとって描画時間を管理するためである。
【0062】ステップS604ではその期間が来たので、多値2値変換回路7を使用して印刷用2値メモリ11へ描画する。このl2で描画時間が足りない場合、次の使用期間が来るまで待ち、ふたたび描画する。多値画像でなければ、ステップS605では単色描画データかどうか調べる。もしそうであれば、ステップS606において描画プロセッサの次の使用期間が来るまで待つ。これはステップS603と同様にl3しか時間がないからである。そして、ステップS607で、描画用プロセッサ6を使用して、印刷用2値メモリ11に描画データを記憶する。」(第4頁右欄?第5頁右欄)

「【0063】(実施例2)図7は、本発明の第2の実施例を示す装置の全体構成を示すブロック図である。
【0064】図7において、第1の実施例における図1と同一構成の部分については、説明を省略する。
【0065】101は様々な表示データや印刷データを作成したり、画素密度変換回路104やRGB/YMCK変換回路105、多値2値変換回路107などの制御を行なうCPUである。本実施例の場合、アービトレーションは外部回路のタイミングで行なうのではなく、CPU101のプログラムによる制御で行なう。従って、プリント時間優先や表示速度優先など、アービトレーションの方法を変えることが容易である。
【0066】102は、バスであり、図1のバス2と同一である。103は多値メモリであり、図1と異なるのは、描画プロセッサ106からの出力を記憶可能である点である。
【0067】104は画素密度変換回路であり、105はRGB/YMCK変換回路であるが、いずれも図1と同様であるので説明は省略する。
【0068】106は描画プロセッサであり、CPU10より様々なコマンドを受け取って、ベクタグラフィックスコマンド、アウトラインフォントなどの描画を行なう。図1との違いは、多値メモリ103に接続されていることである。
【0069】107は多値2値変換回路であり、108は多値2値変換回路107からのデータを表示用2値メモリ110、印刷用2値メモリ111に接続する切り換えスイッチである。また、110は表示用2値メモリであり、ビデオ用デュアルポートRAMである。更に、111は印刷用2値メモリである。
【0070】113は表示器であり、114はプリンタである。また、115は表示タイミング生成器である。」(第5頁右欄?第6頁左欄)

「【0079】
【発明の効果】以上説明したとおり、表示器も印刷も2値のカラーを前提とすることによって、多値2値変換回路や描画プロセッサの共用することが可能となり、1600万色以上の表現を使用しても、ビデオ用メモリサイズは小さいままで高速な処理が可能となる。
【0080】また、本発明は通常の多値データの表示/印刷システムに比べて追加回路も少なく、安価で様々なアプリケーションに柔軟に対応可能な処理装置を実現できる。」(第6頁左欄?右欄)

図3には、段落【0051】、【0052】の記載を参照すると、表示器、あるいは、プリンタ出力から得られる画像の例として、大きく「フルカラープリンタ時代」と記されたカラーテキストと、その下に配置されたテキストの本文と、当該テキスト本文の右上部に配置された自然画(山の絵)とが記載されている。

図10には、プリンタの例としてインクジェットプリンタの外観図が示されている。

これら引用刊行物の記載から、引用刊行物には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「表示器(フラットパネルディスプレイ)と、プリンタが接続された情報処理装置であって、情報処理装置は、多値メモリと、印刷データの作成時に使用されるRGB/YMCK変換回路と、描画プロセッサと、多値2値変換回路と、表示用2値メモリと、印刷用2値メモリとを有し、描画プロセッサと、多値2値変換回路により表示用2値メモリに書き込みがなされ、該表示用2値メモリの内容が表示器に表示され、また、RGB/YMCK変換回路と、描画プロセッサと、多値2値変換回路とにより、印刷用2値メモリに書き込みがなされ、該印刷用2値メモリの内容がプリンタに出力されて印刷される、情報処理装置。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「情報処理装置」は、本願補正発明の「コンピュータ」に相当し、引用発明の「情報処理装置」は、更に、本願補正発明の「サーバ」と、「コンピュータ」である点で一致する。
引用発明の印刷用2値メモリに書き込みがなされた内容は、本願補正発明の「ラスタ画像」に相当する。
引用発明の印刷用2値メモリ、及び表示用2値メモリに書き込むために使用される「描画プロセッサ」及び、「多値2値変換回路」は、本願補正発明の「レンダリングエンジン」に相当する。
引用発明の、表示器、及びプリンタに出力するために、描画プロセッサ及び多値2値変換回路に入力されるデータは、本願補正発明の「コンテンツ」に相当し、該コンテンツはレンダリングされて、表示用2値メモリに入力されて表示器に出力され、また、印刷用2値メモリに入力されてプリンタに出力されるから、引用発明は、レンダリング・コンピュータが、「レンダリングされたコンテンツを生成するステップ」と、「前記レンダリングされたコンテンツをプリンタに転送するステップ」とを有しているということができる。
また、印刷用のレンダリングが「プリンタ出力に適したレンダリング」であるのは当然のことである。

したがって、両者は
「コンテンツをレンダリングするためのコンピュータで実施される方法において、
レンダリングエンジンがコンテンツ記述と出力機器記述とから、プリンタ出力に適したレンダリングされたコンテンツを生成するステップと、
レンダリング・コンピュータが前記レンダリングされたコンテンツをプリンタに転送するステップと
を含み、
前記レンダリングされたコンテンツはラスタ画像よりなる、方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1
本願補正発明のコンピュータによりレンダリングされるコンテンツはハイパーテキスト・マークアップ言語(HTML)によって記述されたコンテンツ記述によって記述されているのに対して、引用発明のコンピュータによりレンダリングされるコンテンツはどのように記述されているのか明らかではなく、また、本願補正発明は、ウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンと出力機器記述とを備えるレンダリング・サーバに、コンテンツプロバイダ・サーバがコンテンツ記述を出力するステップを有しているの対して、引用発明は当該ステップについて記載がなく、また、引用発明のコンピュータはサーバではない点。

相違点2
本願補正発明のレンダリングエンジンは、ウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンであるのに対して、引用発明のレンダリングエンジンは、ウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンではない点。

相違点3
本願補正発明のレンダリング・サーバは、出力機器記述を備えており、出力機器記述はウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンの少なくとも1つの入力パラメータに従ってプリンタを記述しており、本願補正発明は、コンテンツ記述と出力機器記述とから、プリンタ出力に適したレンダリングされたコンテンツを生成するステップを有しているのに対して、引用発明には出力機器記述について記載がなく、引用発明は、コンテンツ記述により、プリンタ出力に適したレンダリングされたコンテンツを生成するステップを有しているが、当該ステップで、出力機器記述を利用しているのかどうか明らかではない点。

(3)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
相違点1について
コンピュータ、あるいはサーバ等によりレンダリングを行うこと、コンテンツプロバイダ・サーバから供給されるハイパーテキスト・マークアップ言語(HTML)によって記述されたコンテンツをコンピュータ、あるいはサーバでレンダリングして表示、印刷することはは周知であって格別のことではないから、引用発明のコンピュータをサーバとし、サーバによりレンダリングされてプリンタにより印刷されるデータを、コンテンツプロバイダ・サーバから供給されるコンテンツをハイパーテキスト・マークアップ言語(HTML)によって記述されたコンテンツ記述により記述されたコンテンツとして、引用発明において、レンダリング・サーバに、コンテンツプロバイダ・サーバがコンテンツ記述を出力するステップを有するようにして、本願補正発明のように構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

相違点2について
引用発明のレンダリングエンジンは表示用及びプリント用に共用されており、引用発明のレンダリングエンジンは、ディスプレイ・レンダリングエンジンにも相当するものである
また、通常のウェブブラウザが表示用及びプリント用のレンダリングエンジンを有することは本願明細書中(段落【0014】)にもウェブブラウザの商品名を例示して説明され、また原査定において周知文献として引用された、特開2002-158979号公報(段落【0106】、【0120】)、特開平10-149410号公報(段落【0061】)に記載されているように周知であって格別のことではない。
そして、レンダリングエンジンを構成する場合にユーザの意図に合わせた出力ができるように構成することは当然のことである。
そうすると、引用発明のレンダリングエンジンを周知技術に基づいてウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンとして、本願補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

相違点3について
印刷用データの作成、レンダリング等に際して、出力機器(プリンタ)の情報を使用することは周知であって格別のことではないから、引用発明において、レンダリングを行うに際して、出力機器に関する情報(出力機器記述)を利用すべく、引用発明のレンダリング・サーバに、ウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンの少なくとも1つの入力パラメータに従ってプリンタを記述する出力機器記述を備えるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。

したがって、本願補正発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成20年9月12日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本願出願当初(平成17年2月23日付け国際出願翻訳文提出書)の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「コンテンツ記述によって記述されたコンテンツをレンダリングするためのコンピュータで実施される方法において:
(A)該コンテンツ記述と出力機器記述とをウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンに供給して、プリンタ出力に適したレンダリングされたコンテンツを生成し、
該レンダリングされたコンテンツがラスタ画像よりなるステップで、該出力機器記述がウェブブラウザ・ディスプレイ・レンダリングエンジンの少なくとも1つの入力パラメータに従ってプリンタを記述するステップ;
を具有することを特徴とするコンピュータで実施される方法。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した、補正前の請求項1を限定した本願補正発明から、補正前の請求項1を限定する事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含みさらに限定を付したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-11 
結審通知日 2011-03-15 
審決日 2011-03-28 
出願番号 特願2004-519552(P2004-519552)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 匡明内田 正和  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 安久 司郎
佐藤 匡
発明の名称 プリンタ出力用コンテンツのリモートレンダリングシステム  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  

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