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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B |
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管理番号 | 1241891 |
審判番号 | 不服2009-3438 |
総通号数 | 142 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-02-16 |
確定日 | 2011-08-08 |
事件の表示 | 特願2002-553254号「ホウ素化合物及びアルミニウム化合物を電子部品の中に使用する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月 4日国際公開、WO02/52661、平成17年 1月13日国内公表、特表2005-501372号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年12月20日(パリ条約による優先権主張平成12年12月22日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成20年7月15日付けで手続補正がなされた後、平成20年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年3月18日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成21年3月18日付け手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成21年3月18日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正後の請求項1に係る発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「化学式(I) 【化1】 [式中、記号及び指標は次の意義を持つ: Arylは、炭素原子を2?60個有する、炭素環式の芳香環若しくは芳香環系又は複素環式の芳香環若しくは芳香環系、又は、複数の芳香環であって、それぞれ炭素原子を6?14個を有し、且つ、共有結合若しくは非共有結合によるか又は1個以上の金属原子によって互いに接合されている該複数の芳香環(サンドイッチ錯体)、であり、 Ar_(1)、Ar_(2)は、その都度同一であるか又は相違しており、それぞれフェニル、1-若しくは2-ナフチル、1-、2-若しくは9-アントラセニル、2-、3-若しくは4-ビリジニル、2-、4-若しくは5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-若しくは4-ピリダジニル、2-、3-、4-、5-、6-、7-若しくは8-キノリニル、2-若しくは3-ピロリル、2-若しくは3-フラニル、又は2-(1,3,4-オキサジアゾール)イルであり、 Q1、Q2、Q3は、その都度同一であるか又は相違しており、それぞれCN、F、Cl、又は、炭素原子を1?20個有する、直鎖状若しくは枝分かれ若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基であって、その中の1個以上の非隣接CH_(2)基が-O-、-S-、-CO-、-COO-、-O-CO-、-NR^(1)-、-(NR^(2)R^(3))^(+)A^(-)若しくは-CONR^(4)-によって置換されていることがあり、且つ、1個以上のH原子が、F、又は炭素原子を4?14個有するアリール基若しくはヘテロアリール基によって置換されていることがあり、且つ、1個以上の非芳香族基R´によって置換されていることがある該アルキル基若しくは該アルコキシ基であり、 A^(-)は、単独で荷電しているアニオン又はそれの同等物であり、 R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)は、同一であるか又は相違しており、それぞれH、又は、炭素原子を1?20個有する、脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基であり、 mは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 xは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 yは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 nは、2、3、4、5、6であり、 Zは、ホウ素である] の置換ホウ素化合物を、りん光性OLED素子の中で電子伝達物質、発光層のホスト物質、又は正孔障壁のいずれかとして使用する方法。」 と補正された。 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「置換ホウ素化合物を、りん光性OLED素子の中に使用する方法」について「置換ホウ素化合物を、りん光性OLED素子の中で電子伝達物質、発光層のホスト物質、又は正孔障壁のいずれかとして使用する方法」と限定するものであり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶理由に引用された国際公開第00/40586号(以下「引用例」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 記載事項ア.明細書第3頁4行?第4頁2行 「発明の開示 本発明者等は、新規なボラン誘導体、ボラン誘導体を用いた各種材料および有機EL素子を提供するという課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、特定構造を有するボラン誘導体および特定構造を有するボラン誘導体を材料に用いること、特に有機EL素子に用いることにより、上記課題を解決し得ることを知り本発明を完成した。 以下本発明につき詳細に説明する。 本発明のボラン誘導体は、下記の式(1)で表される新規な化合物である。本発明のボラン誘導体は、発光材料および電荷輸送材料ばかりでなく、ボラン原子に由来する電子的性質を利用して、電子機能性材料および光機能性材料などへの広範な応用が期待できるものである。 (式中、R_(1)?R_(8)およびZ_(2)は、それぞれ独立に、水素原子、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、芳香族基、ヘテロ環基、置換アミノ基、置換ボリル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を示し、X、YおよびZ_(1)は、それぞれ独立に、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、芳香族基、ヘテロ環基、置換アミノ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を示し、Z_(1)とZ_(2)の置換基は相互に結合して縮合環を形成してもよく、nは1?3の整数を示し、nが2以上の場合、Z_(1)は異なってもよい。但し、nが1、X、YおよびR_(2)がメチル基であって、R_(8)が水素原子または置換ボリル基の場合、およびnが3でZ_(1)がメチル基の場合を含まない。)」 記載事項イ.明細書第4頁6行?第6頁4行 「本発明のボラン誘導体の具体的例として、下記の式(3)?(9)で表される化合物を挙げることができる。 ……(略)…… 式(4)の化合物は、上記の式(1)において、nが3、R_(4)?R_(7)が水素原子、R_(8)の1つがジアンスリルボリル基、R_(8)の残り2つが水素原子、Z_(1)とZ_(2)とがベンゾ縮合したボラン誘導体である。 ……(略)…… 式(7)の化合物は、上記の式(1)において、nが2、R_(1)およびR_(3)?R_(7)が水素原子、R_(2)、XおよびYがメチル基、R_(8)の1つがアンスリルメシチルボリル基、R_(8)の残り1つが水素原子、Z_(1)とZ_(2)とがベンゾ縮合したボラン誘導体である。」 記載事項ウ.明細書第6頁15行?第7頁9行 「本発明の各種材料、すなわち発光材料、電荷輸送材料および有機EL素子関連材料(発光層、電荷輸送層)に用いられるボラン誘導体は、下記の式(2)で表される。 (式中、R_(1)?R_(8)およびZ_(2)は、それぞれ独立に、水素原子、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、芳香族基、ヘテロ環基、置換アミノ基、置換ボリル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を示し、X、YおよびZ_(1)は、それぞれ独立に、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、芳香族基、ヘテロ環基、置換アミノ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を示し、Z_(1)とZ_(2)の置換基は相互に結合して縮合環を形成してもよく、nは1?3の整数を示し、nが2以上の場合、Z_(1)は異なってもよい。)」 記載事項エ.明細書第7頁16行?第8頁 「このようなボラン誘導体の具体例として、前記の式(3)?(9)で表される化合物および下記の式(10)?(14)で表される化合物などを挙げることができる。 」 記載事項オ.明細書第12頁4行?7行 「該ボラン誘導体は、発光材料としても電荷輸送材料としても使用可能であるため、発光層および電荷輸送層(正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層)の材料に好適であり、得られた該ボラン誘導体層は、発光層および電荷輸送層として有効に働く。」 記載事項ア.?オ.の記載内容からして、引用例には、 「下記の式(4)、式(7)又は式(10)で表されるボラン誘導体を、有機EL素子の中の電子注入層および電子輸送層の材料として使用する方法。 」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 (3)対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (a)引用発明の「式(4)」「で表されるボラン誘導体」 は、本願補正発明の「化学式(I)の置換ホウ素化合物」のうち、Arylが複数の芳香環で、Ar_(1),Ar_(2)が9-アントラセニルで、m、x、yがそれぞれ0で、nが2で、Zがホウ素であるものに相当する。 (b)引用発明の「式(7)」「で表されるボラン誘導体」 は、本願補正発明の「化学式(I)の置換ホウ素化合物」のうち、Arylが複数の芳香環で、Ar_(1)が9-アントラセニルで、Ar_(2)が炭素原子を6個有する炭素環式の芳香環で、Q2が炭素原子を1個有するアルキル基で、m、xがそれぞれ0で、yが3で、nが2で、Zがホウ素であるものに相当する。 (c)引用発明の「式(10)」「で表されるボラン誘導体」 は、本願補正発明の「化学式(I)の置換ホウ素化合物」のうち、Arylが複数の芳香環で、Ar_(1)、Ar_(2)が炭素原子を6個有する炭素環式の芳香環で、Q1,Q2が炭素原子を1個有するアルキル基で、mが0で、x、yがそれぞれ3で、nが2で、Zがホウ素であるものに相当する。 (d)上記(a)?(c)で述べたことからして、引用発明の「式(4)、式(7)又は式(10)で表されるボラン誘導体」は、本願補正発明の「化学式(I) 【化1】 [式中、記号及び指標は次の意義を持つ: Arylは、炭素原子を2?60個有する、炭素環式の芳香環若しくは芳香環系又は複素環式の芳香環若しくは芳香環系、又は、複数の芳香環であって、それぞれ炭素原子を6?14個を有し、且つ、共有結合若しくは非共有結合によるか又は1個以上の金属原子によって互いに接合されている該複数の芳香環(サンドイッチ錯体)、であり、 Ar_(1)、Ar_(2)は、その都度同一であるか又は相違しており、それぞれフェニル、1-若しくは2-ナフチル、1-、2-若しくは9-アントラセニル、2-、3-若しくは4-ビリジニル、2-、4-若しくは5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-若しくは4-ピリダジニル、2-、3-、4-、5-、6-、7-若しくは8-キノリニル、2-若しくは3-ピロリル、2-若しくは3-フラニル、又は2-(1,3,4-オキサジアゾール)イルであり、 Q1、Q2、Q3は、その都度同一であるか又は相違しており、それぞれCN、F、Cl、又は、炭素原子を1?20個有する、直鎖状若しくは枝分かれ若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基であって、その中の1個以上の非隣接CH_(2)基が-O-、-S-、-CO-、-COO-、-O-CO-、-NR^(1)-、-(NR^(2)R^(3))^(+)A^(-)若しくは-CONR^(4)-によって置換されていることがあり、且つ、1個以上のH原子が、F、又は炭素原子を4?14個有するアリール基若しくはヘテロアリール基によって置換されていることがあり、且つ、1個以上の非芳香族基R´によって置換されていることがある該アルキル基若しくは該アルコキシ基であり、 A^(-)は、単独で荷電しているアニオン又はそれの同等物であり、 R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)は、同一であるか又は相違しており、それぞれH、又は、炭素原子を1?20個有する、脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基であり、 mは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 xは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 yは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 nは、2、3、4、5、6であり、 Zは、ホウ素である] の置換ホウ素化合物」に包含されているといえる。 (e)引用発明の「有機EL素子」は、本願補正発明の「OLED素子」に相当する。 引用発明の「電子注入層および電子輸送層の材料」は、本願補正発明の「電子伝達物質」に相当する。 したがって、引用発明の「式(4)、式(7)又は式(10)で表されるボラン誘導体を、有機EL素子の中の電子注入層および電子輸送層の材料として使用する方法」と本願補正発明の「化学式(I)の置換ホウ素化合物を、りん光性OLED素子の中で電子伝達物質、発光層のホスト物質、又は正孔障壁のいずれかとして使用する方法」は、「化学式(I)の置換ホウ素化合物を、OLED素子の中で電子伝達物質、発光層のホスト物質、又は正孔障壁のいずれかとして使用する方法」である点で共通している。 上記(a)?(e)に記載したことからして、本願補正発明と引用発明は、 「化学式(I) 【化1】 [式中、記号及び指標は次の意義を持つ: Arylは、炭素原子を2?60個有する、炭素環式の芳香環若しくは芳香環系又は複素環式の芳香環若しくは芳香環系、又は、複数の芳香環であって、それぞれ炭素原子を6?14個を有し、且つ、共有結合若しくは非共有結合によるか又は1個以上の金属原子によって互いに接合されている該複数の芳香環(サンドイッチ錯体)、であり、 Ar_(1)、Ar_(2)は、その都度同一であるか又は相違しており、それぞれフェニル、1-若しくは2-ナフチル、1-、2-若しくは9-アントラセニル、2-、3-若しくは4-ビリジニル、2-、4-若しくは5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-若しくは4-ピリダジニル、2-、3-、4-、5-、6-、7-若しくは8-キノリニル、2-若しくは3-ピロリル、2-若しくは3-フラニル、又は2-(1,3,4-オキサジアゾール)イルであり、 Q1、Q2、Q3は、その都度同一であるか又は相違しており、それぞれCN、F、Cl、又は、炭素原子を1?20個有する、直鎖状若しくは枝分かれ若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基であって、その中の1個以上の非隣接CH_(2)基が-O-、-S-、-CO-、-COO-、-O-CO-、-NR^(1)-、-(NR^(2)R^(3))^(+)A^(-)若しくは-CONR^(4)-によって置換されていることがあり、且つ、1個以上のH原子が、F、又は炭素原子を4?14個有するアリール基若しくはヘテロアリール基によって置換されていることがあり、且つ、1個以上の非芳香族基R´によって置換されていることがある該アルキル基若しくは該アルコキシ基であり、 A^(-)は、単独で荷電しているアニオン又はそれの同等物であり、 R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)は、同一であるか又は相違しており、それぞれH、又は、炭素原子を1?20個有する、脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基であり、 mは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 xは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 yは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 nは、2、3、4、5、6であり、 Zは、ホウ素である] の置換ホウ素化合物を、OLED素子の中で電子伝達物質、発光層のホスト物質、又は正孔障壁のいずれかとして使用する方法。」 である点で一致し、次の点で相違している。 相違点:OLED素子が、本願補正発明は、りん光性OLED素子であるのに対して、引用発明は、りん光性OLED素子ではない点。 (4)当審の判断 上記相違点について検討する。 りん光性OLED素子で電子輸送層を有するものは、例えば、Applied Physics Letters,Vol.75,No1,第4?6頁(1999)、Nature、Vol.395,第151頁?154頁(1998)、国際公開第00/70655号(第7頁、図1参照)にも記載されているように、周知技術であり、引用発明の電子輸送層の材料として使用するボラン誘導体を、りん光性OLED素子の電子輸送層の材料として使用するようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 なお、請求人は請求の理由において、実験例Aおよび実験例Bの記載された参考資料1、2に基いて、本願明細書の実施例1?4および6に記載された化合物を用いたりん光性OLED素子が従来技術の化合物と対比して優れた効果を奏する旨の主張をしているが、実験例Aおよび実験例Bに用いられている置換ホウ素化合物は、実施例1?4および6に記載された化合物だけであって、本件補正後の請求項1に記載されるAryl,Ar_(1)、Ar_(2)、Q1,Q2,Q3の各種の基、およびm、x、y、nの各数を組み合わせた全ての化合物が優れた効果を奏することを示すものではないし、そもそも、本願の明細書には、化学式(I)の置換ホウ素化合物を、りん光性OLED素子の中で電子伝達物質、発光層のホスト物質、又は正孔障壁として使用する具体例は、何等記載されていないのであるから、本願の明細書の記載から本願補正発明が従来技術に比して格別優れた効果を奏すると認めることはできない。 よって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成21年3月18日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成20年7月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「化学式(I) 【化1】 [式中、記号及び指標は次の意義を持つ: Arylは、炭素原子を2?60個有する、炭素環式の芳香環若しくは芳香環系又は複素環式の芳香環若しくは芳香環系、又は、複数の芳香環であって、それぞれ炭素原子を6?14個を有し、且つ、共有結合若しくは非共有結合によるか又は1個以上の金属原子によって互いに接合されている該複数の芳香環(サンドイッチ錯体)、であり、 Ar_(1)、Ar_(2)は、その都度同一であるか又は相違しており、それぞれフェニル、1-若しくは2-ナフチル、1-、2-若しくは9-アントラセニル、2-、3-若しくは4-ビリジニル、2-、4-若しくは5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-若しくは4-ピリダジニル、2-、3-、4-、5-、6-、7-若しくは8-キノリニル、2-若しくは3-ピロリル、2-若しくは3-フラニル、又は2-(1,3,4-オキサジアゾール)イルであり、 Q1、Q2、Q3は、その都度同一であるか又は相違しており、それぞれCN、F、Cl、又は、炭素原子を1?20個有する、直鎖状若しくは枝分かれ若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基であって、その中の1個以上の非隣接CH_(2)基が-O-、-S-、-CO-、-COO-、-O-CO-、-NR^(1)-、-(NR^(2)R^(3))^(+)A^(-)若しくは-CONR^(4)-によって置換されていることがあり、且つ、1個以上のH原子が、F、又は炭素原子を4?14個有するアリール基若しくはヘテロアリール基によって置換されていることがあり、且つ、1個以上の非芳香族基R´によって置換されていることがある該アルキル基若しくは該アルコキシ基であり、 A^(-)は、単独で荷電しているアニオン又はそれの同等物であり、 R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)は、同一であるか又は相違しており、それぞれH、又は、炭素原子を1?20個有する、脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基であり、 mは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 xは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 yは、同一であるか又は相違しており、それぞれ0、1、2、3、4、5であり、 nは、2、3、4、5、6であり、 Zは、ホウ素である] の置換ホウ素化合物又は置換アルミニウム化合物を、りん光性OLED素子の中に使用する方法。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明の「置換ホウ素化合物を、りん光性OLED素子の中で電子伝達物質、発光層のホスト物質、又は正孔障壁のいずれかとして使用する方法」から「電子伝達物質、発光層のホスト物質、又は正孔障壁のいずれかとして」との限定を省いて「置換ホウ素化合物を、りん光性OLED素子の中に使用する方法」とするものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-14 |
結審通知日 | 2011-03-15 |
審決日 | 2011-03-28 |
出願番号 | 特願2002-553254(P2002-553254) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福島 浩司、笹野 秀生 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 今関 雅子 |
発明の名称 | ホウ素化合物及びアルミニウム化合物を電子部品の中に使用する方法 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 奥山 尚一 |