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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B28D |
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管理番号 | 1241898 |
審判番号 | 不服2009-19277 |
総通号数 | 142 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-10-08 |
確定日 | 2011-08-09 |
事件の表示 | 特願2005-178854「基板の切断装置及びこれを用いた基板の切断方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月13日出願公開、特開2006-182009〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は、平成17年6月20日(優先権主張、平成16年12月27日大韓民国)の特許出願であって、同20年2月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月26日に手続補正がなされ、同年9月8日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年12月10日に手続補正がなされ、同21年6月2日付けで同20年12月10日の手続補正を却下するとともに拒絶をすべき旨の査定がされた。 これに対し、同21年10月8日に本件審判の請求とともに手続補正がなされ、当審において同22年6月24日付けで審尋がなされ、同年9月28日に回答書が提出され、同年11月16日付けで拒絶理由が通知され、同23年2月17日に意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年2月17日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。 「基板を載置して移動させる第1、第2ベルトコンベヤーと、 前記第1、第2ベルトコンベヤーの間に一定の間隔を有して構成され、前記基板の切断予定線に沿ってスクライビングを実施するスクライブ手段と、 前記第1、第2ベルトコンベヤーの間に前記基板のスクライビング方向と同一の方向に構成され、前記基板を支持する基板支持手段とを含み、 前記基板支持手段は、上下するように構成され、前記基板が切断位置に到達する時に上昇して、前記スクライビング時に前記基板を支持し、該スクライビングが完了すると再び下降し、 前記基板支持手段は、昇降軸とステージとからなり、 前記基板支持手段は、前記ステージによって前記スクライビング時に前記基板を支持し、前記昇降軸を制御して上昇および下降するように構成され、 前記ステージは棒で構成され、前記棒は、ローラー形態で回転するように構成され、 前記スクライブ手段、又は第1、第2ベルトコンベヤーの所定の部分に備えられる感知センサーを含んで構成されることを特徴とする基板の切断装置。」 3.刊行物記載の発明 これに対し、本願優先日前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開2004-26569号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。 ア.段落0001 「【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、単板又は2枚合せのガラス板のスクライブ、ブレーク、面取加工などを行う装置に関するもので、特に加工前後のガラス板の搬送に特徴がある上記装置に関するものである。」 イ.段落0007?0015 「【0007】 【課題を解決するための手段】 この出願の請求項1の発明に係るガラス板の加工装置は、ガラス板を所定の送り方向に送って加工位置で停止させる移送動作と、加工位置でガラス板を固定して前記送り方向と直交する方向の加工を行なう加工動作とを繰り返すガラス板の加工装置において、装置の機台45に固定ないし微小移動機構を介して搭載されて前記加工位置でガラス板を吸着固定する前記直交する方向に細長い固定台23と、搬送面をこの固定台の上面と同一面にして当該固定台の前記送り方向上流側と下流側とに配置したコンベア24、25とを備えている。 【0008】 ・・・。 【0009】 上記構造の加工装置は、同一機台上でガラス板を加工位置に送る移送動作と、隣接する加工装置間でのガラス板の搬送とをベルトコンベアやローラコンベアなどのコンベア24、25、14で行う。固定台23、15は、機台45、13に完全固定とするか、あるいは加工位置におけるガラス板の移送誤差を修正して正確な位置にガラス板を位置決めできる微小移動装置を介して機台に搭載する。ここで言う微小移動とは、コンベア24、25、14の位置制御によりガラス板1を停止させたときに生ずるガラス板の停止位置誤差を修正するのに必要な移動であり、コンベアの停止位置精度を高くすることにより小さくできる。 【0010】 この発明の加工装置では、ガラス板の加工方向に沿った細長い固定台23、15でガラス板1を固定しているので、固定台を小面積にできる。ガラス板1の固定台23、15からはみ出している部分は、当該部分に配置されているコンベア24、25、14で保持される。一枚のガラス板1をその上に設定された複数の加工位置に間欠移送する場合や、加工装置間でガラス板を搬送するときは、コンベア24、25、14が用いられる。摩擦係数の大きいベルトやローラを用いることにより、コンベア24、25、14上でガラス板1を滑らせないで正確に移送することができる。もし、この移送中にガラス板1と固定台23、15とが接触するのを避けたければ、コンベア24、25、14を僅かに上昇させるか、固定台23、15を僅かに下降させるか、固定台23、15の表面に設けた空気孔から空気を噴出してガラス板1を浮上させる。 【0011】 【発明の実施の形態】 以下、図面に示す実施例を参照して、この発明の加工装置を更に説明する。図1は、スクライブ装置21とブレーク装置22とを備えたガラス板の割断ラインである。両装置21、22は共にガラス板1の送り方向(図のY方向)と直交するX方向に細長い固定台23と、その送り方向前後に配置したコンベア群24、25とを備えている。・・・。 【0012】 スクライブ装置21の固定台の上方には、X方向の走行桁40が設けられ、この走行桁に沿って走行する走行台41が設けられている。走行台41には、Y方向に微小移動可能に取付板42が装着され、この取付板に付勢装置43を介して回転カッタ44が搭載されている。・・・、回転カッタ44を所望の切断線に沿って走行させる。 【0013】 ・・・。 【0014】 なお、固定台23には多数の空気孔が設けられており、送り込まれたガラス板の位置誤差の修正及び加工は、この空気孔に供給した負圧でガラス板を固定台23上に吸着した状態で行われる。 【0015】 上記の割断ラインにおいて、加工位置へのガラス板の移送は、コンベア群24、25を同期駆動することによって行う。このとき、固定台23の上面の空気孔に加圧空気を供給して、固定台23部分でガラス板を浮上させ、ガラス板1と固定台23とが摺擦するのを回避する。加圧空気によるガラス板の浮上量は僅かであり、ガラス板は撓んでその両端がコンベア群24、25で支えられるので、コンベア群24、25の駆動によりガラス板を移送することが可能である。ガラス板の加工位置が固定台23上にきたら、コンベア群24、25を停止し、固定台23の空気孔に負圧を作用してガラス板を吸着し、図示しない検出器でガラス板に付されている位置決めマークを読取り、それによって検出された停止位置誤差を前述した微小移動装置により補正する。そして、スクライブ装置21では走行台41を走行させることにより、またブレーク装置22ではブレーク刃47を下降させることにより、ガラス板に所望の加工(スクライブ線の刻設とブレーク)を行う。・・・。」 ウ.図1 ガラス板のスクライビング方向と同一の方向に固定台23が配置されることが看取できる。 ここで、上記イ.段落0010より、固定台23は、移送中にガラス板1と固定台23、15とが接触するのを避けるため、固定台23、15を僅かに下降させるものであり、原位置への復帰が必要であるから、上下動しうることは明らかである。 上記を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ガラス板を載置して移動させるコンベア群24、25と、 前記コンベア群24、25の間に一定の間隔を有して構成され、前記ガラス板の所望の切断線に沿ってスクライブ線を刻設するスクライブ手段21と、 前記コンベア群24、25の間に前記ガラス板のスクライビング方向と同一の方向に構成され、前記ガラス板を吸着固定する固定台23とを含み、 前記固定台23は、上下するように構成され、前記ガラス板が移送中に僅かに下降させ、 前記固定台23は、前記スクライビング時に前記ガラス板を支持し、上昇および下降するように構成され、 位置決めマークを読み取る検出器を含んで構成されるガラス板の切断装置。」 4.対比・判断 刊行物1発明の「ガラス板」は本願発明の「基板」に相当し、同様に「コンベア群24、25」は「第1、第2ベルトコンベヤー」に、「所望の切断線」は「切断予定線」に、「スクライブ線を刻設」は「スクライビングを実施」に、「固定台23」は「基板支持手段」に、「位置決めマークを読み取る検出器」は「感知センサー」に、相当する。 刊行物1発明の「吸着固定」は本願発明の「支持」に含まれる。 なお、請求人は、回答書で、刊行物1発明の「位置決めマークを読み取る検出器」は本願発明の「感知センサー」とは機能が異なる旨を主張していた。そこで、平成22年11月16日付けで通知した拒絶理由において、請求項1の記載上、請求人の主張は根拠が明確でなく、仮にそうであるとしても周知である旨、指摘したところ、この点についての補正、新たな主張はなかった。よって、上記のとおり、両者は「相当」するものとした。 そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。 「基板を載置して移動させる第1、第2ベルトコンベヤーと、 前記第1、第2ベルトコンベヤーの間に一定の間隔を有して構成され、前記基板の切断予定線に沿ってスクライビングを実施するスクライブ手段と、 前記第1、第2ベルトコンベヤーの間に前記基板のスクライビング方向と同一の方向に構成され、前記基板を支持する基板支持手段とを含み、 前記基板支持手段は、上下するように構成され、 前記基板支持手段は、上昇および下降するように構成され、 感知センサーを含んで構成される基板の切断装置。」 そして、以下の点で相違する。 相違点1:基板支持手段の構造について、本願発明では「昇降軸とステージとからなり」、「ステージは棒で構成され、前記棒は、ローラー形態で回転するように構成され」、「ステージによって」基板を支持し、「昇降軸を制御」するものであるが、刊行物1発明では「吸着固定する固定台23」である点。 相違点2:基板支持手段の動作について、本願発明では「基板が切断位置に到達する時に上昇して」、「該スクライビングが完了すると再び下降」するが、刊行物1発明では「ガラス板が移送中に僅かに下降」する点。 相違点3:感知センサーについて、本願発明では「スクライブ手段、又は第1、第2ベルトコンベヤーの所定の部分に備えられる」ものであるが、刊行物1発明では明らかでない点。 相違点1について検討する。 刊行物1発明の上下動する「吸着固定する固定台23」は、吸着により確実な保持が可能である反面、吸着のための機構が必要である。 ところで、基板の支持手段として、棒状の回転可能なローラーは、拒絶理由で引用した特開平9-286628号公報の段落0003、図3のローラ2、6、同じく特開平4-246618号公報の段落0011、図1のローラ1、2にみられるごとく周知であり、「吸着」に比べ単純な機構である。 よって、機構の単純化の観点から、刊行物1発明の「吸着固定する固定台23」に代え、周知の「棒状の回転可能なローラー」すなわち「ステージ」による支持とすることに、困難性は認められない。 その際、上下動のために「昇降軸」を設け、これを制御することは、適宜なしうる事項にすぎない。 相違点2について検討する。 スクライブにおいて、精度向上は当然の課題であるところ、振動が生じる場合、対象物を振動源から離すことは、周知の解決手段の一つである。 相違点1を踏まえた刊行物1発明においては、基板支持手段である「棒状の回転可能なローラー」は上下動機構を有している。 よって、ベルトコンベヤーにより振動が生じる場合に、かかる上下動機構を利用して、基板をベルトコンベヤーから離すこと、すなわち「基板が切断位置に到達する時に上昇して」、「該スクライビングが完了すると再び下降」するものとなすことは、必要に応じて適宜なしうる事項にすぎない。 請求人は、意見書で、本願発明は刊行物1に「開示も示唆も無い課題を解決するため」のものである旨、主張するが、「スクライビング工程のエラー防止」は、当然の課題にすぎない。 相違点3について検討する。 感知センサーの設置位置については、適宜選択すべき設計的事項にすぎない。 また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。 5.むすび 本願発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-10 |
結審通知日 | 2011-03-14 |
審決日 | 2011-03-28 |
出願番号 | 特願2005-178854(P2005-178854) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B28D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 太田 良隆、塩澤 正和 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
遠藤 秀明 菅澤 洋二 |
発明の名称 | 基板の切断装置及びこれを用いた基板の切断方法 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 加藤 伸晃 |