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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16F
管理番号 1241901
審判番号 不服2010-4917  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-05 
確定日 2011-08-08 
事件の表示 特願2004-368299「スパイラルスプリング構造」拒絶査定不服審判事件〔平成18年7月6日出願公開、特開2006-177385〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成16年12月20日の出願であって、平成21年12月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

II.平成22年3月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年3月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の、
「【請求項1】
装置に設けた駆動主体となり得る渦巻き形状のスプリング本体と、この装置の内外に延設した前記駆動主体の動力を受入れる線条形状の従動主体となり得るスプリング自由端とで構成したスプリング構造であって、
前記スプリング本体の自由端に第一カム板を設け、この第一カム板のカム面をスライド移行する第二カム板を設け、このスプリング本体が左右に移動することで、前記第二カム板が上下方向に移動し、前記左右移動を上下運動の動力として伝達する構成としたスプリング構造。」
補正後の特許請求の範囲の請求項1の、
「【請求項1】
装置に設けた駆動主体となり得る渦巻き形状のスプリング本体と、この装置の内外に延設した前記駆動主体の動力を受入れる線条形状の従動主体となり得るスプリング自由端とで構成したスパイラルスプリングを利用した動力伝達構造であって、
前記スプリング本体の自由端に第一カム板を設け、この第一カム板のカム面をスライド移行する第二カム板を設け、
このスプリング本体の緊張、及び/又は、弛緩で、前記スプリング自由端を左右移動し、この左右移動で、前記第二カム板が上下方向に移動し、前記左右移動を上下運動の動力として伝達する構成としたスパイラルスプリングを利用した動力伝達構造。」と補正された。なお、下線は対比の便のため当審において付したものである。
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明特定事項である「スプリング構造」を「スパイラルスプリングを利用した動力伝達構造」とするとともに、同じく「このスプリング本体が左右に移動することで、前記第二カム板が上下方向に移動し、前記左右移動を上下運動の動力として伝達する構成とした」を「このスプリング本体の緊張、及び/又は、弛緩で、前記スプリング自由端を左右移動し、この左右移動で、前記第二カム板が上下方向に移動し、前記左右移動を上下運動の動力として伝達する構成とした」とすることにより、その構成を限定的に減縮するものである。
これに関して、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「請求項1の発明は、スパイラルスプリング(スプリングとする)の特徴をさらに発展し」(段落【0009】参照)、「以下、このスプリング1を利用した動力伝達機構を説明する。」(段落【0050】参照)、及び「この例では、スプリング自由端101に設けた第一カム板20と、この第一カム板20に係合する第二カム板21とで構成し、この第二カム板21が、第一カム板20のカム面をスライド移行することで、スプリング本体100を緊張及び/又は弛緩を、上下運動に変換する(上昇、下降運動に利用する)。」、及び「図17ではスプリング本体100が左回転し、このスプリング本体100が拡大の状態から縮小の状態に移行していく場合には、このスプリング自由端101が図面上において左に移動し、第一カム板20が左に移動し、第二カム板21を上方に移動する。これにより、スプリング1の縮小に基づく動力を第二カム板21の上昇及び/又は他の手段の上昇運動等して利用する。また図18ではスプリング本体100が右回転し、このスプリング本体100が縮小の状態から拡大の状態に移行していく場合には、このスプリング自由端101が図面上において右に移動し、第一カム板20が右に移動し、第二カム板21を下方に移動する。これにより、スプリング1の縮小に基づく動力を第二カム板21の下降及び/又は他の手段の降下運動等として利用する。」(いずれも、段落【0055】参照)と記載されている。
結局、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当し、特許法第17条の2第3項に規定された新規事項追加禁止に該当するものではない。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:特開2001-165217号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「密着巻バネ式伸縮アクチュエータ」に関して、図面(特に、図1?4、及び図8を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(a)「本発明は、例えば、直動システムの駆動,自動倉庫や加工システムにおける昇降および水平搬送,作業ロボット用アーム駆動,撮影・通信・検査・計測システムにおけるカメラ・アンテナ・ライト・測定機器の長ストロークの移動等に使用する簡単,軽量,コンパクトでストロークの大きな伸縮アクチュエータに関するものである。」(第3頁第3欄第9?15行、段落【0001】参照)
(b)「本発明は、伸縮アクチュエータに、伸長時断面円弧状の密着巻バネを利用するところに最大の特長がある。この密着巻バネの材料は加工硬化の特性があれば鉄鋼に限らない、例えば、銅-亜鉛系合金,チタニウム・アルミニウム-コバルト系合金などでもよいが、以後の説明は鉄鋼を例として行なう。周知のように、円弧状断面の鋼帯は平断面の鋼帯に較べて断面二次モーメントが桁違いに大きいので軸圧縮に対する座屈荷重が格段に大きく、これはアクチュエータとして非常に好ましい特性である。しかしながら、断面円弧状の鋼帯は、これを巻き取るのに非常に大きなトルクを必要とし、小さな直径に巻き取ることが困難であるという難点がある。
そこで本発明では、この難点を克服するために伸長時には幅方向の断面が円弧状をなすが、自力で巻き納まるので、巻取りに外力を必要としない密着巻バネを伸縮アクチュエータに利用する発想を得て完成をみたものである。
即ち、この密着巻バネは、伸長状態においては断面円弧状の剛性の大きな真直の板であるが、一端が弯曲すると平断面となり自力で回転しながら円筒状に巻き納まる特性がある。また、完全に伸長した状態から巻き始めるときと、完全に巻き納まった状態から伸長させ始めるときに、比較的大きな変形トルクを必要とするが、一端を伸長状態に保ちながら他端を円筒状に保っておくと、この中間を伸長させたり巻き戻したりする場合は巻き戻しが自力で行なわれ、引き伸しも比較的小さなトルクで行なうことができ、しかも、この動作は連続的にスムースに行なわれるという特長がある。
本発明は、伸長時断面円弧状の密着巻バネの一端を送り機構によって伸長状態におき、他端を巻き納め機構に巻かれた状態において、送り機構により送り出しと引き戻しを行なうことにより、この密着巻バネの前記の特性を活かした、伸縮アクチュエータとしてのスムースな作動を実現することができた。」(第3頁第3欄第41行?第4欄第23行、段落【0005】?【0008】参照)
(c)「図1は本発明アクチュエータに使用する『CV密着巻バネ』(符号1)の一例の伸長状態を示した斜視図、図2は図1のCV密着巻バネ1が自身のバネ力で内径Dに自然に巻き納まった状態を示した斜視図、図3は図1の伸長状態のCV密着巻バネ1の背面に矢印方向の力F加えた時に反転湾曲した瞬間の状態を示したもので、この直後、図2のように巻き納まるのである。
図4は本発明アクチュエータの基本構成による実施の一例を示した斜視図(中略)である。
本発明の伸縮アクチュエータは、伸長時断面円弧状のCV密着巻バネ1を利用したことを特徴としているが、この巻バネの伸長時の断面形状を図1の板厚t,円弧半径rおよび円弧の開き角ψで規定し、この密着巻バネが自力で巻き納まったときの直径を図2に示したDとする。
CV密着巻バネ1の特性として、板幅が等しい場合、座屈荷重は板厚tが大きいほど,円弧半径rが小さいほど、従ってt/rが大きなほど大きく、また開き角ψが大きいほど大きいが、それに比例して製作の難度が増し、直径Dも増す。従って、これら形状因子には請求項2に示した実用的な範囲があり、使用目的に応じてこの範囲で適値を選定する。(中略)
図4は請求項1の本発明アクチュエータの基本構成から成る実施の一例である。図4において1は等間隔に小孔1hを等ピッチであけたCV密着巻バネ、2はこの巻バネ1の送り機構で、密着巻バネ1の孔1hと同一ピッチのスプロケット2sとこれを回転するためのハンドルで2hから成る。このハンドル2hの代わりにモータを使用してもよい。3はこの巻バネ1を巻き納めるドラム、4は駆動部のケーシングで、前記バネ1の巻き納め機構の一例を形成する。5はアクチュエータのヘッドブロックで、使用目的に応じて撮影機器,検査プローブ,センサー,ワーク等を取付けたり、あるいは引戸の開閉に使用する場合であれば、引戸に取付ける。」(第5頁第7欄第22行?第8欄第24行、段落【0026】?【0031】参照)
(d)「図8は請求項5および請求項6の発明の実施の一例である。チャンネル8に取付けられた2本のレール7aおよび7bに跨ってベアリング付のブロック6a,6b,6cが直動する。このブロック6a?6cには円弧状のスリットを切った板5a?5cが取付けられている。同様のスリットを切った板5dが、駆動部ケーシング4にも固定されている。
図8におけるCV密着巻バネ1の先端はブロック6aに固定され、板5b,5c,5dの各スリットを貫通し、スプロケット2を経て末端はドラム3に巻き納められている。この巻きバネ1には等間隔の孔1hがあり、同一ピッチのピンを周上に有するスプロケット2の正逆転により、送り出しと引き戻しが行なわれる。2′はスプロケット駆動用のモータである。ブロック6a?6cには目的に応じて加工用のワークや工作機械のツールユニット、自動倉庫の出納物品等を載せることができる。この実施例のアクチュエータは従来のボールネジ,ラック/ピニオン,ベルト,リニヤーモーター等に比較して、安価で長大ストロークを実現できる大きな特長がある。」(第6頁第9欄第3?21行、段落【0033】及び【0034】参照)
(e)「本発明は以上の通りであって、伸縮アクチュエータを、伸長時の幅方向の断面が円弧状の密着巻バネとこの密着巻バネの送り機構およびこの密着巻バネの巻き納め機構とにより構成したので、構造がきわめて簡潔で動作が円滑であり、また、適宜のスパンで支持すれば大きな坐屈強度を発揮する前記密着巻バネを、目的に応じて単独または複数をセットで使用したり、あるいは剛性の大きなガイドに沿って直動させたり、更にはテレスコピック状に伸縮する筒体やチャンネル体に組込むなどして、伸縮アクチュエータとして合理的に利用できる構造としたから、上下に伸縮するポールや昇降装置、水平に伸縮するアームや直動機構、あるいは吊下機構等のアクチュエータとしてきわめて有用である。」(第6頁第10欄第11?23行、段落【0040】参照)
(f) 図4から、巻き納め機構(駆動部のケーシング4)に設けた駆動主体となり得る渦巻き形状のCV密着巻バネ1と、この巻き納め機構(駆動部のケーシング4)の内外に延設した駆動主体の動力を受入れる線条形状の従動主体となり得るヘッドブロック5の構成が看取できる。
また、刊行物1には、「伸長時には幅方向の断面が円弧状をなすが、自力で巻き納まるので、巻取りに外力を必要としない密着巻バネ」、「この密着巻バネは、伸長状態においては断面円弧状の剛性の大きな真直の板であるが、一端が弯曲すると平断面となり自力で回転しながら円筒状に巻き納まる特性がある。」、及び「一端を伸長状態に保ちながら他端を円筒状に保っておくと、この中間を伸長させたり巻き戻したりする場合は巻き戻しが自力で行なわれ、引き伸しも比較的小さなトルクで行なうことができ」(いずれも、上記摘記事項(b)参照)と記載されていることからみて、刊行物1に記載されたCV密着巻バネ1は、「駆動主体となり得る」ものであり、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
【引用発明】
巻き納め機構に設けた駆動主体となり得る渦巻き形状のCV密着巻バネ1と、この巻き納め機構の内外に延設した前記駆動主体の動力を受入れる線条形状の従動主体となり得るヘッドブロック5とで構成したスパイラルスプリングを利用した密着巻バネ式伸縮アクチュエータであって、
このCV密着巻バネ1の緊張、及び/又は、弛緩で、前記ヘッドブロック5を左右移動し、前記左右移動を動力として伝達する構成としたスパイラルスプリングを利用した密着巻バネ式伸縮アクチュエータ。

2.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「巻き納め機構」は本願補正発明の「装置」に相当し、以下同様に、「CV密着巻バネ1」は「スプリング本体」に、「ヘッドブロック5」は「スプリング自由端」に、「密着巻バネ式伸縮アクチュエータ」は「動力伝達構造」に、それぞれ相当するので、両者は、下記の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
装置に設けた駆動主体となり得る渦巻き形状のスプリング本体と、この装置の内外に延設した前記駆動主体の動力を受入れる線条形状の従動主体となり得るスプリング自由端とで構成したスパイラルスプリングを利用した動力伝達構造であって、
このスプリング本体の緊張、及び/又は、弛緩で、前記スプリング自由端を左右移動し、前記左右移動を動力として伝達する構成としたスパイラルスプリングを利用した動力伝達構造。
(相違点)
本願補正発明は、「前記スプリング本体の自由端に第一カム板を設け、この第一カム板のカム面をスライド移行する第二カム板を設け、」前記スプリング自由端を左右移動し、「この左右移動で、前記第二カム板が上下方向に移動し、前記左右移動を上下運動の動力として伝達する構成」としたのに対し、引用発明は、そのような構成を具備していない点。
以下、上記相違点について検討する。
(相違点について)
動力伝達構造において、左右運動を上下運動に変換するカム機構は、従来周知の技術手段(例えば、特開平6-79596号公報には、図3とともに、「テーパカム22のボールねじ23を用いた左右方向へ移動にともなうカムフォロア24の上下によりその間隔を粗調整する。」[第2頁第2欄第50行?第3頁第3欄第2行、段落【0012】参照]と記載されている。実願昭58-198042号(実開昭60-106287号)のマイクロフィルムには、第1図とともに、「カム9が駆動手段(図示せず)によって矢符10に向かって移動されると、ローラ8がカム面11上を走行して移動棒5を上昇変位する。」[第3頁第3?6行]と記載されている。なお、大文字を小文字で表記した個所がある。)にすぎない。
してみれば、引用発明の左右運動をするヘッドブロック5(本願補正発明の「スプリング自由端」に相当する。)に、上記従来周知の技術手段を適用して、ヘッドブロック5に第一カム板を設け、この第一カム板のカム面をスライド移行する第二カム板を設け、ヘッドブロック5を左右移動し、この左右移動で、第二カム板が上下方向に移動し、左右移動を上下運動の動力として伝達する構成とすることにより、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が技術的に格別の困難性を有することなく容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
本願補正発明が奏する効果についてみても、引用発明、及び従来周知の技術手段が奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な作用効果を奏するものとは認められない。
以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、審判請求人は、当審における審尋に対する平成22年8月23日付けの回答書(以下、「回答書」という。)において、「本願発明(注:本審決の「本願補正発明」に対応する。以下、同様。)は、(中略)『スプリング本体100の緊張、又は弛緩と、カム機構を介して、上下運動に変換する。』構造であり、かつ“このスプリング本体の緊張、又は弛緩を、このスプリング本体の長手方向に設けた対の突条間に横設した螺子部と、この螺子部に噛合するピニオンで行なう構造である。”」[2.(2-1)の項参照]、及び「本願発明の如く、“スプリング本体100の緊張、又は弛緩を、第二の動力源とする構造”とは、明らかに相違します。」[2.(2-10)の項参照]と本願補正発明の構成、及び本願補正発明が奏する作用効果について主張している。
しかしながら、本願の特許請求の範囲の請求項1には、「螺子部」及び「ピニオン」に係る上記の構成は記載されていないことから、審判請求人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるし、本願補正発明は、上記(相違点について)において述べたように、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願補正発明の構成を備えることによって、本願補正発明が、従前知られていた構成が奏する効果を併せたものとは異なる、相乗的で、当業者が予測できる範囲を超えた効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の主張は採用することができない。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
平成22年3月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成21年5月22日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「装置に設けた駆動主体となり得る渦巻き形状のスプリング本体と、この装置の内外に延設した前記駆動主体の動力を受入れる線条形状の従動主体となり得るスプリング自由端とで構成したスプリング構造であって、
前記スプリング本体の自由端に第一カム板を設け、この第一カム板のカム面をスライド移行する第二カム板を設け、このスプリング本体が左右に移動することで、前記第二カム板が上下方向に移動し、前記左右移動を上下運動の動力として伝達する構成としたスプリング構造。」

1.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物及びその記載事項は、上記「II.1.」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、上記「II.」で検討した本願補正発明の発明特定事項の一部である「スパイラルスプリングを利用した動力伝達構造」を「スプリング構造」とするとともに、同じく「このスプリング本体の緊張、及び/又は、弛緩で、前記スプリング自由端を左右移動し、この左右移動で、前記第二カム板が上下方向に移動し、前記左右移動を上下運動の動力として伝達する構成とした」を、「このスプリング本体が左右に移動することで、前記第二カム板が上下方向に移動し、前記左右移動を上下運動の動力として伝達する構成とした」とすることにより拡張するものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに構成を限定したものに相当する本願補正発明が、上記「II.2.」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、上記回答書、及び平成22年11月26日付けの上申書において、「螺子部」及び「ピニオン」等の構成を含む補正案を提示しているが、上記補正案に係る構成は、刊行物1に記載された「小孔1h」及び「スプロケット2」等の構成に対して、従来周知の技術事項を適用したにすぎない、ないしは当業者が適宜なし得る設計変更の範囲内の事項にすぎないものであることを付記する。

3.むすび
結局、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-15 
結審通知日 2011-03-16 
審決日 2011-06-27 
出願番号 特願2004-368299(P2004-368299)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16F)
P 1 8・ 121- Z (F16F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳楽 隆昌  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 常盤 務
大山 健
発明の名称 スパイラルスプリングを利用した動力伝達構造  
代理人 竹中 一宣  

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