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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1242056
審判番号 不服2009-13092  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-21 
確定日 2011-08-18 
事件の表示 特願2003-183314「記録媒体、記録装置、記録方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月20日出願公開、特開2005- 18919〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成15年6月26日に出願したものであって、平成20年7月11日付けの拒絶理由通知に対して同年9月12日付けで手続補正がなされたが、平成21年4月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月21日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされた。
その後、平成22年11月30日付けで前置報告書(特許法第164条第3項)に基づく審尋がなされ、これに対して回答書が提出され、さらに、当審において、平成23年3月22日付けの拒絶理由通知に対して、同年5月30日付けで手続補正がなされたものである。

なお、当審において平成23年3月22日付けで通知した拒絶の理由は、概略、「本件出願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された、特開2003-16648号公報、特開2000-30370号公報、特開2003-6997号公報、特開2000-67511号公報に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。


第2 本願発明について

1 本願発明

本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成23年5月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「データ記録が可能な2層の記録層を有するとともに、記録トラックとなるグルーブのウォブリングによって予めアドレス及び物理フォーマット情報が記録されている記録媒体において、
当該記録媒体におけるユーザーデータが記録可能な先頭位置情報、ユーザーデータ記録可能な最大位置情報、及び、上記2層の記録層のうち最初に記録が行われる記録層におけるユーザーデータ記録可能な最大位置情報が、上記グルーブのウォブリングによる物理フォーマット情報として記録されていることにより、上記2層の記録層のユーザーデータ記録可能な最大位置情報が判別できることとなる
記録媒体。」


2 引用例及びその記載

当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2003-16648号公報(平成15年1月17日公開、以下、「引用例1」という)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、多層記録層を持つ情報媒体への情報記録方法およびこの方法を用いる装置に関する。とくに、片面2層以上の相変化記録層を持つ光ディスクを用いた情報記録方法およびこの方法を用いる装置に関する。」

(b)「【0017】図1の片面3層ディスク100では、第1記録層111?第3記録層113を合わせて1つのボリュームスペースを構成している。このボリュームスペースのうち、論理セクタ番号の小さい側(リードイン側)に管理情報エリアが設けられ、その後に複数ゾーン(例えばゾーン0?ゾーン34)に分割されたユーザエリアが設けられている。ユーザエリアは、ボリュームスペースを構成する複数の論理セクタに割り当てられている。なお、図示しないが、別の管理情報エリアを論理セクタ番号の大きい側(リードアウト側)にさらに設けてもよい。
【0018】管理情報エリアは、この発明で用いる管理情報としての未使用スペース記述子“Unallocated Space Descriptor(略してUSD)”、その他の管理情報を含んでいる。このUSDの記述内容により、ボリュームスペースの何処(どの記録層のどの物理セクタ)が記録済み状態であり、何処が未記録状態であり、あるいは何処が消去/削除状態であるかが分かるようになっている。」

(c)「【0025】まず、記録を開始する記録層(例えば図1の第2記録層112)が指定される(ステップST10)。この指定は、図1の管理情報エリアにある管理情報USDにより光ディスク100の未記録エリアの先頭セクタ位置を求めてから、このセクタ位置を含む記録層を制御部210のMPUが指定する。
【0026】次に、指定された記録層(第2記録層112)に空きがあるか否かがチェックされる(ステップST12)。このチェックは、管理情報USDから求めた未記録エリアの先頭セクタ位置と、指定された記録層(第2記録層112)の末尾の論理セクタ番号との差を見ることで、行うことができる。指定された記録層(第2記録層112)に空きがあるときは(ステップST12イエス)、記録処理(ステップST20)に移行する。
【0027】指定された記録層(第2記録層112)に空きがない場合は(ステップST12ノー)、他の記録層(第1記録層111および/または第3記録層113)に空きがあるかチェックされる(ステップST14)。他の記録層に空きがないときは(ステップST14ノー)、記録は行われず、図3の処理は終了する(ステップST16)。他の記録層(例えば第3記録層113)に空きがあるときは(ステップST14イエス)、指定記録層が他の記録層に切り替えられ(ここでは第2記録層112から第3記録層113に切り替えられる)(ステップST18)、記録処理(ステップST20)に移行する。
【0028】指定された記録層(ここでは第2記録層112とする)を用いた記録が終了すれば(ステップST22イエス)、管理情報USDが記録終了位置を示す内容に書き換えられて(ステップST30)、図3の処理は終了する。
【0029】指定された記録層(ここでは第2記録層112)を用いた記録を継続中は(ステップST22ノー)、指定された記録層(第2記録層112)の全面書き込みが終了するまで、ステップST20?ST24の処理が反復される。指定された記録層(第2記録層112)の全面書き込みが終了すると(ステップST24イエス)、他の記録層(ここでは第3記録層113)に記録を続けるかとうかチェックされる(ステップST26)。管理情報USDの内容から未記録状態(あるいは消去/削除状態)のセクタが他の記録層(第3記録層113)に残っているときは、他の記録層へ記録を続けることができる(ステップST26イエス)。この場合、まず指定記録層が切り替えられ(ここでは第2記録層112から第3記録層113へ切り替えられる)(ステップST28)、ステップST12の処理にリターンする。【0030】以上の処理(ステップST12?ST28)により、記録しようとする情報が全て光ディスク100の記録領域(ここでは第2記録領域112および第3記録領域113)に記録し切れた場合、あるいは記録し切れず光ディスク100の空き領域を使い切ってしまった場合は、記録処理は終了し(ステップST22イエス)、管理情報USDが記録終了位置を示す内容に書き換えられて(ステップST30)、図3の処理は終了する。
【0031】図3の記録処理においては、特定の記録層(例えば第2記録領域112)を全て記録済み状態にしてから(ステップST24イエス)、他の記録層(例えば第3記録領域113)に対する記録を行う(ステップST26イエス、ST28、ST20)ように構成したことに大きな特徴がある。」


上記引用例に記載された事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

「片面2層以上の相変化記録層を持つ光ディスクにおいて、リードイン側に管理情報エリアが設けられ、管理情報エリアは、管理情報としての未使用スペース記述子“Unallocated Space Descriptor(略してUSD)”、その他の管理情報を含み、このUSDの記述内容により、ボリュームスペースの何処(どの記録層のどの物理セクタ)が記録済み状態であり、何処が未記録状態であるかが分かるようになっており、
指定された記録層に空きがあるか否かのチェックは、管理情報USDから求めた未記録エリアの先頭セクタ位置と、指定された記録層の末尾の論理セクタ番号との差を見ることで、行い、
指定された記録層に空きがない場合は、他の記録層に空きがあるかチェックする、
光ディスクを用いた情報記録方法およびこの方法を用いる装置。」


当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2000-30370号公報(平成12年1月28日公開、以下、「引用例2」という)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(d)「【0046】先に述べたように、残容量検出回路15は、記録回路8から出力される記録信号Scr及び再生回路9から出力される再生量信号Scpに基づいて、光ディスク1における記録可能残容量を検出する。これは、例えば、記録を行おうとする光ディスク1がデータが全く記録されていない未記録光ディスクである場合には、当該未記録光ディスクに予めプリピット等によりデータの記録可能な領域の容量、つまり未記録光ディスクの記録可能残容量に関する情報が記録されているため、この情報を用いて当該未記録光ディスクの記録可能残容量を検出することができる。
【0047】より具体的には、例えば、記録可能な最大アドレスとしてAx が記録されており、更にデータを書き始めることのできる領域の開始アドレスがAy 、1セクタ当たりのデータ量をCとすれば、残容量検出回路15はこれらのデータを用いて記録可能残容量Pを、P=(Ax -Ay +1)×Cとして算出することで検出できる。」

3 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「片面2層以上の相変化記録層を持つ光ディスク」は、2層の記録層を含むものであり、また、情報を記録するものであるから、本願発明の「データ記録が可能な2層の記録層を有する、記録媒体」に相当する。

(2)引用発明の「光ディスク」は、リードイン側に管理情報エリアが設けられ、管理情報としての未使用スペース記述子“Unallocated Space Descriptor(略してUSD)”、その他の管理情報が含まれることから、本願発明の「記録媒体」と「(管理情報が)記録されている」点で共通する。

(3)引用発明の「未記録エリアの先頭セクタ位置」は、本願発明の「当該記録媒体におけるユーザーデータが記録可能な先頭位置情報」に相当し、また、引用発明における「管理情報USDから求めた未記録エリアの先頭セクタ位置」は光ディスクの管理情報から求めたものであるから、引用発明の光ディスクは、本願発明の「当該記録媒体におけるユーザーデータが記録可能な先頭位置情報」が「(光ディスクに記録された管理情報から求められている)」点で共通する。

(4)引用発明は、指定された記録層に空きがあるか否かのチェックは、管理情報USDから求めた未記録エリアの先頭セクタ位置と、指定された記録層の末尾の論理セクタ番号との差を見ることで行うものであって、引用発明の「指定された記録層の末尾の論理セクタ番号」は、未記録の光ディスクの場合において、最初に記録が行われる記録層の末尾の論理セクタ番号になるから、本願発明の「当該記録媒体における最初に記録が行われる記録層におけるユーザーデータ記録可能な最大位置情報」に相当する。

(5)引用発明の「USD」は、未使用スペース記述子“Unallocated Space Descriptor”であって、何処が未記録状態であるかがわかるようになっているものであるから(引用例の段落【0018】参照)、引用発明の「記録層の末尾の論理セクタ番号」についても、光ディスクの管理情報から求めたものであると解される。よって、引用発明の「光ディスク」は、本願発明の「記録媒体」と「上記2層の記録層のうち最初に記録が行われる記録層におけるユーザーデータ記録可能な最大位置情報が、(光ディスクに記録された管理情報から求められている)」点で共通する。

すると、本願発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「データ記録が可能な2層の記録層を有するとともに、(管理情報)が記録されている記録媒体において、
当該記録媒体におけるユーザーデータが記録可能な先頭位置情報、及び、上記2層の記録層のうち最初に記録が行われる記録層におけるユーザーデータ記録可能な最大位置情報が、(光ディスクに記録された管理情報から求められている)
記録媒体。」


<相違点>

(1)本願発明は「記録トラックとなるグルーブのウォブリングによって予めアドレス及び物理フォーマット情報が記録されている」のに対し、引用発明は、アドレス及び物理フォーマット情報について特定されておらず、また、両者がどのように記録されているか特定がない点。

(2)本願発明は、「ユーザーデータが記録可能な先頭位置情報、ユーザーデータ記録可能な最大位置情報、及び、上記2層の記録層のうち最初に記録が行われる記録層におけるユーザーデータ記録可能な最大位置情報」が「記録されていることにより、上記2層の記録層のユーザーデータ記録可能な最大位置情報が判別できることとなる」としているのに対し、引用発明は、「ユーザーデータが記録可能な先頭位置情報」、及び、「上記2層の記録層のうち最初に記録が行われる記録層におけるユーザーデータ記録可能な最大位置情報」が、「(光ディスクに記録された管理情報から求められている)」ものであって記録されているか否か不明な点、及び、「記録されていることにより、上記2層の記録層のユーザーデータ記録可能な最大位置情報が判別できることとなる」ことについて特定されていない点。

(3)「ユーザーデータ記録可能な先頭位置情報」、「ユーザーデータ記録可能な最大位置情報」、及び「最初に記録が行われる記録層におけるユーザーデータ記録可能な最大位置情報」について、本願発明は、「上記グルーブのウォブリングによる物理フォーマット情報として記録されている」のに対し、引用発明は、このような特定がない点。

4 判断

相違点(1)について
「記録トラックとなるグルーブのウォブリングによって予めアドレス」を記録すること、および、管理情報をウォブリングによって記録することは、周知慣用技術であり(例えば、当審の拒絶理由通知で示した特開2003-6997号公報(段落【0021】「データを記録するトラックがプリグループとして予め形成され、このプリグループの側壁がアドレス情報に対応してウォブリングされている」点、段落【0023】又は段落【0027】「グルーブのウォブリングによって各種の管理情報が記録される。」点)、特開2001-312861号公報(段落【0222】「ウォブリンググルーブとして記録される情報(ADIP情報)を記録する」点、段落【0227】ないし段落【0228】「ADIPの補助データに物理フォーマット情報を記録する」点)参照)、また、管理情報として「物理フォーマット情報」を記録することは、周知技術である(例えば、当審の拒絶理由通知で示した特開2000-67511号公報(図6、図8、図11)、上記特開2001-312861号公報(段落【0227】ないし段落【0228】「ADIPの補助データに物理フォーマット情報を記録する」点)参照)。したがって、本願発明のように、記録媒体に、「記録トラックとなるグルーブのウォブリングによって予めアドレス及び物理フォーマット情報」を記録することに格別の困難性はなく、当業者が適宜なし得る事項である。

相違点(2)について
(イ)引用発明において、未記録ディスクの場合に、1層目から2層目にかけて記録する場合(上記2(c)段落【0026】、段落【0029】、引用例1図3(フローチャートのST26ないしST28)参照)、2層目の記録層の末尾の論理セクタ番号が、本願発明の「ユーザーデータ記録可能な最大位置情報」に対応するものであり、この点において本願発明と実質的に相違しない。
また、相違するとしても、引用例2には、記録可能な最大アドレスを、未記録ディスクの記録可能残容量に関する情報として、未記録ディスクに記録する技術が記載されており(上記2(d)段落【0046】ないし段落【0047】参照)、一方、一般に、単層の光ディスクか、多層の光ディスクであるか否かに関わらず、データが1枚のディスクに記録し得るか否かがユーザにとって重要となることは明らかであるから、引用例2に記載された、単層の光ディスクにおいて記録可能な最大アドレスを未記録ディスクに記録する技術を、引用発明に適用して「ユーザーデータ記録可能な最大位置情報」を、光ディスクに記録することに格別の困難性を有しない。

(ロ)また、引用発明において、未記録エリアの先頭セクタ位置と、末尾の論理セクタ番号は、管理情報USDから求めるものと解されるが、上記(イ)に記載したとおり、引用例2には、記録可能な最大アドレスを、未記録ディスクに記録する技術が記載されおり(上記2(d)段落【0046】ないし段落【0047】参照)、このことに鑑みれば、未記録エリアの先頭セクタ位置、末尾の論理セクタ番号も、光ディスクに管理情報として記録することに格別の困難性はなく、当業者が適宜なし得る事項である。

(ハ)上記(イ)、上記(ロ)に記載したように、「当該記録媒体におけるユーザーデータが記録可能な先頭位置情報」、「ユーザーデータ記録可能な最大位置情報」、及び「2層の記録層のうち最初に記録が行われる記録層におけるユーザーデータ記録可能な最大位置情報」を、管理情報として光ディスクに記録することに困難性を有しないものである。そして、このような位置情報を光ディスクに記録し、光ディスクの空き容量のチェック等に用いる以上、本願発明のように「2層の記録層のユーザーデータ記録可能な最大位置情報が判別できることとなる」ものであるから、この点においても格別の困難性を有しない。

相違点(3)について
上記相違点(1)について、において記載したように、管理情報を、グルーブのウォブリングによる物理フォーマット情報として記録することに格別の困難性はなく、管理情報である、「ユーザーデータ記録可能な先頭位置情報」、「ユーザーデータ記録可能な最大位置情報」、及び「最初に記録が行われる記録層におけるユーザーデータ記録可能な最大位置情報」を、「上記グルーブのウォブリングによる物理フォーマット情報として記録」することは、当業者が適宜なし得る事項である。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、引用例1、2記載の発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用例1、2記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。


5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-17 
結審通知日 2011-06-21 
審決日 2011-07-06 
出願番号 特願2003-183314(P2003-183314)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 勇太小山 和俊  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 山田 洋一
早川 学
発明の名称 記録媒体、記録装置、記録方法  
代理人 脇 篤夫  
代理人 鈴木 伸夫  

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