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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1242060
審判番号 不服2009-21173  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-02 
確定日 2011-08-18 
事件の表示 特願2004-131036「画面ズーム方法及び携帯端末」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月10日出願公開,特開2005-316558〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

この出願は,平成16年4月27日に出願されたものであって,平成2
0年8月1日付けで本件審判請求人が特許を受ける権利を承継し,平成2
1年4月24日付け拒絶理由通知に応答して同年6月26日付けで手続補
正がなされたが,同年7月28日付けで拒絶すべき旨の査定がなされ,こ
れに対し,同年11月2日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に,
同日付けで手続補正がなされたものである。
その後,当審において平成23年3月18日付けで前置報告書を用いた
審尋がなされ,これに対し同年5月20日付けで回答書が提出されてい
る。

第2 平成21年11月2日付け手続補正の却下の決定

《補正の却下の決定の結論》

平成21年11月2日付け手続補正 (以下,「本件補正」という。) を
却下する。

《補正の却下の決定の理由》

1 補正の概要
本件補正は,特許請求の範囲の全文について補正をしようとするもので
あるが,本件補正による特許請求の範囲と,本件補正前の特許請求の範囲
(平成21年6月26日付け手続補正書参照。) の記載によると,本件補
正による請求項1は,本件補正前の請求項1に対応するものであり,その
請求項1について,本件補正前
「ディスプレイとテンキーを備える装置に用いられる画面ズーム方法で
あって,前記テンキーにおける各キーの配列に対応させて前記ディスプ
レイの全領域又はディスプレイ上の映像表示領域を区分し,前記キーが
操作されたときに当該キーに対応する区分領域の画像を前記ディスプレ
イに拡大して表示すると共に,前記キーの操作による前記画像の拡大処
理中は当該キーを点灯又は明滅させることを特徴とする画面ズーム方
法。」
であったものを,本件補正により
「ディスプレイとテンキーを備える装置に用いられる画面ズーム方法で
あって,前記テンキーにおける各キーの配列に対応させて前記ディスプ
レイの全領域又はディスプレイ上の映像表示領域を区分し,前記テン
キーにおけるキーが操作されたときに当該キーに対応する区分領域の画
像を前記ディスプレイに拡大して表示すると共に,前記テンキーにおけ
るキーの操作による前記画像の拡大処理中は当該操作されたキーを点灯
又は明滅させることを特徴とする画面ズーム方法。」
としようとするものである。

2 補正の目的について

(1) 本件補正は,本件補正前の「前記キーが操作されたとき」を「前記テ
ンキーにおけるキーが操作されたとき」とし,本件補正前の「前記キー
の操作による」を「前記テンキーにおけるキーの操作による」とし,本
件補正前の「当該キーを」を「当該操作されたキーを」としようとする
ものであるから,発明を特定するために必要な事項を限定するものであ
り,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を
目的とするものである。
(2) そこで,本件補正により特許請求の範囲の請求項1に記載しようとす
る発明 (以下,「本件補正発明」という。) が,出願の際独立して特許
を受けることができるものであるかについて,以下に検討する。

3 刊行物の記載について
(1) 文献1
ア この出願の出願日前に頒布された刊行物であり,原査定の理由で引
用された特開2003-273971号公報 (以下,「文献1」とい
う。) には,図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア) 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,携帯電話機の小さ
な表示部に画像を表示させるために画像サイズを縮小した場合,縮
小したために見難くなってしまうことがある。また,画像の一部に
興味がある場合には,サーバは画像全体を拡大した拡大表示用の画
像を作成し,携帯電話に送信しなければならず,携帯電話は拡大表
示用の全体画像を新たに受信してその一部だけを表示する必要があ
る。これは,ユーザは画像の一部を拡大したいだけなのに,不必要
な部分もサーバから受信しなければならず,受信時間,通信料金,
通信資源,メモリ資源などさまざまな面で問題がある。
【0007】また,上記問題を解決するために,拡大したい一部だ
けを指定し,その部分だけをサーバが拡大して携帯電話に送信する
ようにすることが考えられるが,拡大する部分を指定する方法がな
かったり,実際に表示された拡大画像は元画像の全体のどの部分で
あるかがわかりずらいという問題がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は,画像の一部を拡大表示す
る場合の操作を直感的にわかりやすくし,操作性を向上させること
を目的とする。」

(イ) 「【0020】図2は携帯電話1の概略を示している。
【0021】携帯電話1にはブラウザの情報を表示することが可能
な表示画面10と,電話番号やメールアドレス,メール本文等の入
力に使用される数字やアルファベットを有するテンキー部11が装
備されている。これらの装備は通常の携帯電話には必ず搭載されて
いるといってもよい。テンキー部11には,電話をかけるために必
要最低限の数字キー1から0と,シャープ,アスタリスクが用意さ
れている。」

(ウ) 「【0028】本実施形態で実際にアクセスキーをどのように利
用していくかを図4以降を用いて説明する。
【0029】図4は,携帯電話1の表示画面10にオリジナル画像
をテンキー11のキー番号「1」?「9」の配置と同じ配置で9分
割し,かつ画面内に全て収まるようにサイズ変更された部分画像群
15をテンキーと同じ配置に整列して表示したものである。部分画
像はTABLEタグにより整列されて表示される。
【0030】図5は,部分画像15の任意の1画像20(本実施形
態ではテンキー11の「7」の位置の画像)を拡大表示したもので
ある。この画像20を表示するにはテンキー番号7(26)を押下
することにより表示される。
【0031】つまり図6のように,部分画像群15の部分画像61
はテンキー11の「1」が,部分画像62はテンキー11の「2」
が,部分画像63はテンキー11の「3」が,部分画像64はテン
キー11の「4」が,部分画像65はテンキー11の「5」が,部
分画像66はテンキー11の「6」が,部分画像67はテンキー1
1の「7」が,部分画像68はテンキー11の「8」が,部分画像
69はテンキー11の「9」が,アクセスキーとして関連付けされ
ていて,各キーが押下されると,対応する部分画像が携帯電話1の
表示画面に拡大表示される(図5参照)。」

(エ) 「【0047】また,携帯電話機1にて拡大画像を表示した後に
再度同じ番号のキーが押下されたことにより,ステップ91で確認
したリンク情報のリンク先が縮小画像群である場合(例えば,キー
番号「1」を押下して対応する拡大画像を表示させた後に再度キー
番号「1」が押下された場合),一時的にメモリに記憶しておいた
部分縮小画像群を読み出し(ステップ91,96),部分縮小画像
群を表示するためのHTMLを作成し(ステップ93),携帯電話
1に出力する(ステップ94)。」

(オ) 「【0049】以上のように,本実施形態によれば,携帯電話に
表示させる画像のオリジナル画像が携帯電話の表示画面より大きい
場合,テンキーの位置関係に対応させて画像を複数に分割し,各部
分画像から部分縮小画像を作成し,携帯電話の表示画面に,各部分
縮小画像に拡大表示を指示する際のアクセスキーとして各テンキー
を割りあてた部分縮小画像群を表示させる。これにより,各部分縮
小画像の拡大画像を指示する場合のキー操作を直感的にわかりやす
くし,操作性を向上させることができる。また,拡大画像の表示に
使用したキーを再度押下すれば,部分縮小画像群の表示に戻れるの
で,部分縮小画像群の表示に戻る際の操作が簡単に行える。」

ウ 以上の記載及び図面の記載から,文献1には以下の発明 (以下,
「引用発明」という。) が記載されている。

「表示画面10と,テンキー11が装備されている携帯電話1にお
いて,オリジナル画像を前記テンキー11のキー番号「1」?
「9」の配置と同じ配置で9分割した部分画像群15を,表示画面
10にテンキーと同じ配置で整列して表示し,前記テンキー11の
各キーが押下されると,対応する部分画像が携帯電話1の表示画面
10に拡大表示される,携帯電話1。」

なお,段落0021(摘記箇所ア(イ)参照。)における「テンキー部
11」は段落0029から段落0031(摘記箇所ア(ウ)参照。)の
「テンキー11」と同一のものを示し,段落0031における「携帯
電話1の表示画面」は段落0029の「携帯電話1の表示画面10」
と同一のものを示すものと認められるから,このように認定した。

(2) 文献2

同じくこの出願の出願前に頒布された刊行物であり,原査定で引用さ
れた特開平3-173541号公報 (以下,「文献2」という。) に
は,図面と共に以下の事項が記載されている。

・公報第2ページ右上欄第7行から同左下欄第12行
「このような従来の超音波診断装置の操作パネル14の操作キーは,一
般に瞬時復帰型のものが用いられており,そのままでは,装置の動作
状態を外部から知ることができない。
そこで,第6図に示すように,操作パネル14の各操作キー20の表面
部には,現在の操作状態を示す表示部22が設けられている。すなわ
ち,操作キー20の表面には,そのキーの操作内容を示すモード表示24
と,表示部22が形成されている。
この表示部22による操作状態表示は,第7図に示すように,各操作
キー20毎に設けられた発光部23によって行われている。この発光部23
は,操作キー20の押し動作が行われることによってオンされるスイッ
チS1のオン動作によって,このスイッチS1に接続された論理処理回路
16に信号が送られる。そして,この論理処理回路16によって発光ダイ
オードD1が発光される。この発光ダイオードD1の光を表示部22から出
光させることによって,外部にこの操作キー20が現在操作状態である
ことを表示するようにしている。
なお,第7図においては,図の簡略化のため,発光部23を1個のみ示
したが,この発光部23は操作キー20のそれぞれに別個に設けられるも
のであり,操作キーの数と同数となっている。」

(3) 文献3

同じくこの出願の出願前に頒布された刊行物である,特開平8-13
0661号公報 (以下,「文献3」という。) には,図面と共に以下の
事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,チャンネルの分からないテレビ画
面のチャンネルを,手元のリモートコントロールのチャンネルボタン
に点灯させることに関する。
【0002】
【従来の技術】従来,テレビを手元で操作できる付属品としてリモー
トコントロールがあり,離れたところで,居ながら,自由に操作でき
ていた。しかし,いま映っている画面のチャンネルはそのリモートコ
ントロールでは,ボタンを幾つか押してみないと,分からないことが
あった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これは,リモートコントロール本体
に,いま映っている画面のチャンネルが分かる装置を備えていなかっ
たためである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本案はこれを解決するために発明した
もので,以下図1によって説明すれば,
(イ)本体(3)内の適所に,送信してあるチャンネルを記憶する装
置(2)を装備する。
(ロ)そして,そのチャンネルをチャンネルボタン(1)のランプ
(7)に点灯させる。
【0005】
【作用】
(イ)本体(3)のチャンネルボタン(1)のランプ(7)点灯を一
見すれば,テレビ(5)の画面のチャンネルが分かる。」

(4) 文献4

同じくこの出願の出願前に頒布された刊行物である,特開昭62-0
42220号公報 (以下,「文献4」という。) には,図面と共に以下
の事項が記載されている。

・公報第1ページ右下欄第1行から第15行
「従来,この種の入力装置はキーボード等のキーデータ入力手段と,
上記キーデータ入力手段により入力された入力信号をキーデータとし
て取り込むキーデータ取り込み手段と,上記キーデータ取り込み手段
により取り込まれたキーデータがモード自体を表わすキーデータか,
その他のキーデータかを区別するキーデータ判別手段と,上記キー
データ判別手段により判別されたモードキーデータをCRTディスプレ
イに表示する入力信号にかえるモード表示手段とを備えており,CRT
ディスプレイの表示によってモードが確認できるようになっている。
あるいは,キーボード上のモードキーごとにランプを備え,そのモー
ドが設定されるとランプが点灯することにより,モードが確認できる
ようになっている入力装置もある。」

(5) 文献5

同じくこの出願の出願前に頒布された刊行物である,特開2003-
271507号公報 (以下,「文献5」という。) には,図面と共に以
下の事項が記載されている。

「【0026】本実施形態で実際にアクセスキーをどのように利用し
ていくかを図4以降を用いて説明する。
【0027】図4は携帯電話1の表示画面10に,オリジナル画像が
画面に収まるように縮小して表示させた画像15の表示例と,縮小画
像15が細かかったりつぶれてしまって見にくい場合に一部分を拡大
させた画像16の表示例を示したものである。
【0028】画像を選択し表示させるサービスにおいて,さまざまな
会社から販売された機器に対応させる場合に画面の表示能力の制限や
画面表示サイズの制限からそのまま縮小や減色して表示させた時に,
つぶれてしまったりしてまったく使い物にならない画像になってしま
う場合がある。各携帯電話向けに画像を準備するのは非現実的である
ので,本実施の形態では,ユーザの希望にあわせて画像の一部を拡大
して表示させることによりどのような画像であるかを小さな画面で確
認することを可能にする。
【0029】しかし,限られた画面に部分画像を拡大表示させた場合
には,どの部分を表示しているのか,次に表示させたい部分の指定を
どのように実現するかがわかりづらい。そこで,本実施の形態では,
表示している拡大画像がオリジナル画像のどの部分であるのかを示す
レーダー画面17を部分画像と共に表示するようにする。
【0030】レーダ画面について,図4,図5,図6を用いて説明す
る。
【0031】携帯電話1の表示画面10に,図4,5で示すように部
分画像16と同じ頁(同一HTML文書)に,ちいさなレーダー画像
17を表示させる。本実施の形態での説明では,オリジナルの画像全
体15のどこの部分を表示しているかを,表示されている部分を升目
状のレーダー画像17の対応する枡目をマーキング24(例では塗り
つぶし)し,表示されていない部分を白抜きにすることによって,表
示されている部分25と,表示されていない部分とを判別可能にす
る。
【0032】図6では,レーダー画像と,該当するレーダ画面が表示
されている際に現在表示している場所と異なる次に表示する画像を選
択できるキー番号を示す。
【0033】たとえば表26のレーダー画像26-1を例にとると,
前の段階でテンキー11のキー番号1のキーが押下された場合(また
はデフォルト設定が左上の部分画像を拡大表示する場合)には,キー
番号1に対応する部分画像と共に,レーダー画面26-1が表示され
る。同様に,レーダー画面26-2はキー番号2が押下された場合に
表示され,レーダー画面26-3はキー番号3が押下された場合に表
示され,レーダー画面26-4はキー番号4が押下された場合に表示
され,レーダー画面26-5はキー番号5が押下された場合に表示さ
れ,レーダー画面26-6はキー番号6が押下された場合に表示さ
れ,レーダー画面26-7はキー番号7が押下された場合に表示さ
れ,レーダー画面26-8はキー番号8が押下された場合に表示さ
れ,レーダー画面26-9はキー番号9が押下された場合に表示され
る。
【0034】つまり,ある部分の部分画像と,対応するレーダー画面
が表示されている際に,表示している拡大画像の位置と異なる位置の
キーが押下されると(たとえば,レーダー画面26-1が表示されて
いる場合に,キー番号1以外のキー番号2からキー番号9が押下され
ると),押下されたキーの位置関係と同じ位置の画像の部分が選択さ
れ,その部分画像と対応するレーダー画面が表示される。また,表示
中の部分画像と同じ位置関係にあるキーが押下されると(たとえば,
レーダー画面26-1が表示されている場合に,キー番号1が押下さ
れると),画像全体が表示される。もちろん,画像全体が表示されて
いる際には,キー番号1からキー番号9のいずれかが押下されると,
押下されたキーに対応する位置の画像が部分拡大表示される。」

なお,段落0033の「表26」は「図6」の誤記と認められる。

(6) 文献6

同じくこの出願の出願前に頒布された刊行物である,特開平11-2
66437号公報 (以下,「文献6」という。) には,図面と共に以下
の事項が記載されている。

「【0036】上記ステップS4において,該合成ビデオデータは,
図3分図(b)に示す如く,通常画面の中央部画像5は,上下,左右
の長さが約2倍(面積では約4倍)となり表示される。そして,図示
する如く,透明なカーソルC1が下端部に表示され,中央部半分が影
部分となり,透明なカーソルC2が右端部に表示され,中央部半分が
影部分となり,ズーム画像の位置と倍率を示している。
【0037】ステップS5において,再度,ズームキーを押すことに
より,ステップS6において,再度押すことにより図3分図(d)に
示す通常画面の中央部画像15が,図3分図(e)に示す如く,上
下,左右の長さを約3倍(面積では約9倍)となり表示される。
【0038】そして,図示する如く,透明なカーソルC1が下端部に
表示され,中央部の1/3が影部分となり,透明なカーソルC2が右
端部に表示され,中央部の1/3が影部分となり,ズーム画像の位置
と倍率を示している。」

4 対比

(1) 引用発明の「表示画面10」は本件補正発明の「ディスプレイ」に,
引用発明の「テンキー11」は本件補正発明の「テンキー」にそれぞれ
相当し,引用発明の「携帯電話1」は本件補正発明の「装置」に相当す
る。

(2) 引用発明の「テンキー11のキー番号「1」?「9」の配置と同じ配
置」とすることは本件補正発明の「テンキーにおける各キーの配列に対
応させ」ることに相当する。
引用発明の「画像」と本件補正発明の「映像」は「映像」である点で
共通するから,引用発明の「オリジナル画像を」「9分割」することは
本件補正発明の「映像」「を区分」することと「映像」「を区分」する
ことで共通する。
引用発明の「表示画面10」は「部分画像群15」を「整列して表
示」するものであるところ,「整列して表示」することにより「部分画
像群15」を「表示」する領域が形成されることが明らかであるから,
引用発明の「表示画面10」は本件補正発明の「ディスプレイ」と同様
に「映像表示領域」を有しているといえ,引用発明と本件補正発明は
「ディスプレイ上の映像表示領域」を有している点で共通する。
以上より,引用発明と本件補正発明は「テンキーにおける各キーの配
列に対応させて」「ディスプレイ上の映像表示領域を区分」するもので
ある点で共通する。

(3) 引用発明の「テンキー11の各キーが押下されること」は「テンキー
11の各キー」を「押下」する操作をいうものであるから,引用発明の
「テンキー11の各キーが押下され」は本件補正発明の「テンキーにお
けるキーが操作され」に相当する。
引用発明の「テンキー11の各キー」に「対応する部分画像」は本件
補正発明の「テンキーにおける各キーの配列」に「対応する区分領域の
画像」と,「テンキーにおける各キーの配列」に「対応する」「画像」
である点で共通するところ,(2)で検討したように引用発明と本件補正
発明は「テンキーにおける各キーの配列に対応させて」「ディスプレイ
上の映像表示領域を区分」する点で共通しているから,引用発明の「テ
ンキー11の各キー」に「対応する部分画像」は本件補正発明の「テン
キーにおける各キーの配列」に「対応する区分領域の画像」と共通する
ものである。
引用発明の「表示画面10に拡大表示」することは本件補正発明の
「ディスプレイに拡大して表示」することに相当する。
以上より,引用発明と本件補正発明は「テンキーにおけるキーが操作
されたときに当該キーに対応する区分領域の画像を前記ディスプレイに
拡大して表示する」点で共通する。

(4) 引用発明には「携帯電話1」の「表示画面10」における画像の拡大
表示のしかたが記載されているところ,画面に表示されている画像又は
映像を拡大して参照することを「ズーム」ともいうことから,引用発明
と本件補正発明は「画面ズーム方法」で共通するものである。

(5) よって,本件補正発明と引用発明は以下の点で一致する。
「ディスプレイとテンキーを備える装置に用いられる画面ズーム方法で
あって,前記テンキーにおける各キーの配列に対応させて前記ディスプ
レイ上の映像表示領域を区分し,前記テンキーにおけるキーが操作され
たときに当該キーに対応する区分領域の画像を前記ディスプレイに拡大
して表示することを特徴とする画面ズーム方法。」

そして,以下の点で相違する。
相違点1 本件補正発明は「ディスプレイの全領域」を「区分」するの
に対し,引用発明は「表示画面10」について全体を分割する
ものであるか否かは不明である点。
相違点2 本件補正発明は「前記テンキーにおけるキーの操作による前
記画像の拡大処理中は当該操作されたキーを点灯又は明滅させ
る」のに対し,引用発明はこのようなものを有していない点。

5 判断
(1) 相違点1について
ア 引用発明の「画像」が画面の全体に及ぶものも考慮されていること
は,引用発明が記載された文献1の段落0029の「かつ画面内に全
て収まるようにサイズ変更」という記載からも明らかなことであり,
相違点1については文献1に記載されているに等しい事項といえる。
イ また,画面上の画像を区分し拡大表示するものにおいて,その区分
を画面全体とすることは,例えば文献6 (摘記箇所及び図3参照。)
に記載されているように普通になされていることにすぎず,引用発明
の画面の分割対象を「画面全体」とすることは,格別な技術的事項で
はない。
ウ よって,引用発明において表示画面の全領域を区分し,本願発明の
ようにすることは,当業者には自明なことである。

(2) 相違点2について
ア 操作により特定の動作機能が開始されるキーについて,操作後にそ
のキーを点灯しておくことにより,当該動作機能が作動していること
を明示することは,原査定で引用された文献2のほか,文献3,文献
4 (いずれも摘記箇所参照。) などにも記載されているように,この
出願前周知の技術にすぎず,このような周知技術を引用発明の「テン
キー」において採用し,当該「テンキー」の操作による拡大がなされ
ていることを明示させるようにすることは何ら格別なことではない。
イ よって,引用発明において,キーが操作されていることを明示する
ためにキーを点灯をすることにより,本願発明のようにすることは,
当業者には自明なことである。

(3) そして,引用発明に上記周知技術を適用し本件補正発明のようにする
ことで生じる作用も,当業者が予測できる範囲のものにすぎない。

(4) 本件審判請求人の主張についての検討
ア 本件審判請求人 (以下,「請求人」という。) は,平成21年6月
26日付け意見書,審判請求書の審判請求の理由,平成23年5月2
0日付け回答書において,「テンキーにおける各キーの配列と相まっ
て、画像のどの部分が拡大されているかをユーザに認識させることが
できるという優れた効果を奏することになるのであります。」 (平成
23年5月20日付け回答書の「回答の内容」の欄 (7) ) という旨
の主張をしている。
イ しかしながら,この出願において,テンキーを点灯又は明滅させる
ことについては,この出願の出願当初の特許請求の範囲の請求項8,
発明の詳細な説明の段落0009の第2文,同じく段落0030の第
2文から第3文に記載されているが,その技術的な意義は,前記段落
0030に次のように記載されていたにすぎないのであり,他に技術
的な意義を明示するような記載は見いだせない。
「また,テンキーにLED(発光ダイオード)などの発光素子を組
み込んでおき,キーが操作されたとき等に発光或いは明滅させる構
造が知られている。このような構造を利用し,前記キーの操作によ
る拡大処理中は当該キーを点灯或いは明滅させることとしてもよ
い。」
ウ すると,この出願の出願当初に開示されていたのは「拡大処理中」
を意味するテンキーの点灯なのであって,請求人の主張する「優れた
効果」の前提である拡大された部分を示す目的のものは開示も示唆も
されていなかったのだから,このような主張は,この出願の出願当初
の開示事項に基づくものではない。
エ なお,進んで検討するに,引用発明と同じく表示画面の一部を拡大
表示するものにおいて,その拡大表示した画面が全体画面のいずれの
場所のものであるかを明示することは,例えば文献5 (摘記箇所並び
に図4及び図6参照。) ,文献6 (摘記箇所及び図3参照。) に記載
されているようにこの出願の出願前周知の事項であるところ,引用発
明に相違点2で示した周知技術を採用すると,おのずと点灯したテン
キーが場所の明示もなすことが当業者には予測できるのだから,請求
人の主張する「優れた効果」は当業者が予測できる程度のものにすぎ
ず,格別のものではない。
オ よって,請求人の主張はこの出願の出願当初の開示事項に基づいた
ものではなく,また,引用発明に周知技術を適用することでおのずと
生じる程度の作用をいうにすぎないものである。

(5) したがって,本件補正発明は,引用発明及び上記周知技術に基づいて
当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規
定により特許を受けることができないものである。

6 補正の却下の決定のまとめ

以上検討したように,本件補正発明は,平成18年改正前特許法第17
条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たして
おらず,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条
第1項の規定により,却下すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

以上検討したように本件補正は却下されたから,この出願の特許請求の
範囲の請求項1に記載された発明 (以下,「本願発明」という。) は,
「第2《補正の却下の決定の理由》1」に本件補正前の請求項1として記
載したとおりのものである。

第4 刊行物の記載について

刊行物の記載事項は,前記「第2《補正の却下の決定の理由》3」に示
したとおりのものである。

第5 対比・判断

1 本願発明は,前記「第2《補正の却下の決定の理由》2(1)」で検討し
たよう,本件補正発明の「前記テンキーにおけるキーが操作されたとき」
及び「前記テンキーにおけるキーの操作による」における「テンキーにお
ける」という発明特定事項を省き,同じく本件補正発明の「当該操作され
たキーを」における「操作された」という発明特定事項を省いたものであ
るから,本件補正発明の発明を特定するために必要としていた事項の一部
を省いたものである。

2 すると,前記「第2《補正の却下の決定の理由》5」で検討したよう
に,本願発明の発明を特定するために必要な事項を全て含み,更にその発
明を特定するために必要な事項を限定したものである本件補正発明が,引
用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたも
のであるのだから,本願発明も同様に,引用発明及び周知技術に基づいて
当業者が容易に発明することができたものである。

3 したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容
易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許
を受けることができないものである。

第6 まとめ

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が
容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項
規定により特許を受けることができないものである。
したがって,この出願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒
絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-17 
結審通知日 2011-06-21 
審決日 2011-07-04 
出願番号 特願2004-131036(P2004-131036)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 秀樹西谷 明子  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 安久 司郎
齊藤 健一
発明の名称 画面ズーム方法及び携帯端末  
代理人 神保 泰三  

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