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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1242064
審判番号 不服2009-23309  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-27 
確定日 2011-08-18 
事件の表示 特願2007-114893「ゲーム装置、ゲーム制御方法、及びゲーム制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月 6日出願公開、特開2008-264408〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年(2007年)4月24日の出願(特願2007-114893号)であって、平成21年6月15日付けで手続補正がなされ、平成21年8月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成23年1月4日付けで平成21年11月27日付けの手続補正を却下するとともに同日付けで拒絶理由を通知し、これに対して平成23年2月21日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされた。

第2 特許法第36条第6項第1号(請求項の記載要件)違反について
1 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成23年2月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
複数のプレイヤーによるゴルフゲームの対戦を制御するゲーム制御方法であって、
前記ゴルフゲームの対戦を行う複数のゲーム装置を管理する管理サーバの参加受付部が、複数のゲーム装置から前記ゴルフゲームの対戦への参加を受け付けるステップと、
前記管理サーバの管理部が、各ゲーム装置からホールアウトしたプレイヤーのスコアをホールごとに取得し、前記対戦の順位を管理するステップと、
前記ゲーム装置の制御部が、プレイヤーからの指示入力を受け付けて前記ゴルフゲームのキャラクタ又はオブジェクトを制御するステップと、
前記ゲーム装置の送信部が、前記制御部により制御される前記キャラクタ又はオブジェクトの位置を示す情報を前記管理サーバに送信するステップと、
前記管理サーバのデータ受信部が、前記対戦に参加しているゲーム装置から、前記ゲーム装置において実行中のゴルフゲームにおけるキャラクタ又はオブジェクトの位置を示す情報を受信するステップと、
前記管理サーバのデータ送信部が、前記ゲーム装置から受信した情報を、前記対戦に参加している複数のゲーム装置のうち、所定の条件に合致するゲーム装置へ送信するステップと、
前記ゲーム装置の受信部が、前記管理サーバから、他のゲーム装置において他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトの位置を示す情報を取得するステップと、
前記ゲーム装置の画面生成部が、前記キャラクタ又はオブジェクトを含むゲーム画面を生成して表示装置に表示させるステップと、
前記ゲーム装置の対戦相手表示部が、前記表示装置に表示される前記ゲーム画面に、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示させるステップと、を備え、
前記対戦相手表示部は、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトが前記ゲーム画面に表示されることでプレイヤーによるゲームの進行が妨げられるような所定の条件を前記ゲーム装置に備えられた記憶媒体から読み出して、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトの位置が前記条件に合致するか否かを判定し、前記条件に合致する場合に、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示しない、又は、透明度を上げて表示させ、
前記制御部は、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトとは無関係に前記キャラクタ又はオブジェクトの動作又は移動を制御し、
前記データ送信部は、大会に参加しているプレイヤーのうち、上位から所定数のプレイヤー、又は、データの送信先のゲーム装置と順位の近い所定数のプレイヤーを抽出し、抽出されたプレイヤーのゲーム装置から受信した情報を送信先のゲーム装置へ送信する
ことを特徴とするゲーム制御方法。
【請求項2】
複数のプレイヤーによるゴルフゲームの対戦を制御するゲーム制御プログラムであって、
コンピュータのCPUにより実現される制御部が、プレイヤーからの指示入力を受け付けて前記ゴルフゲームのキャラクタ又はオブジェクトを制御する機能と、
コンピュータのCPUにより実現される画面生成部が、前記キャラクタ又はオブジェクトを含むゲーム画面を生成して表示装置に表示させる機能と、
コンピュータのCPUにより実現される受信部が、対戦中の他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報を取得する機能と、
コンピュータのCPUにより実現される対戦相手表示部が、前記表示装置に表示される前記ゲーム画面に、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示させる機能と、
コンピュータのCPUにより実現される送信部が、前記制御部により制御される前記キャラクタ又はオブジェクトに関する情報を、前記ゴルフゲームの対戦を行う複数のゲーム装置を管理する管理サーバに送信する機能と、
をコンピュータに実現させ、
前記対戦相手表示部は、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトが前記ゲーム画面に表示されることでプレイヤーによるゲームの進行が妨げられるような所定の条件を記憶媒体から読み出して、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトの位置が前記条件に合致するか否かを判定し、前記条件に合致する場合に、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示しない、又は、透明度を上げて表示させ、
前記制御部は、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトとは無関係に前記キャラクタ又はオブジェクトの動作又は移動を制御し、
前記受信部は、対戦中の各ゲーム装置からホールアウトしたプレイヤーのスコアをホールごとに取得して前記対戦の順位を管理する前記管理サーバから、上位から所定数のプレイヤー、又は、当該プレイヤーと順位の近い所定数のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報を取得する
ことを特徴とするゲーム制御プログラム。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトの位置が、前記ゲーム画面を生成するための視点位置から所定の範囲内にあること、前記プレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトから所定の範囲内にあること、前記視点位置と前記キャラクタ又はオブジェクトの間にあること、前記プレイヤーが前記キャラクタ又はオブジェクトを移動させようとしている目標位置から所定の範囲内にあること、前記目標位置と前記キャラクタ又はオブジェクトの間にあること、前記キャラクタ又はオブジェクトの移動方向にあること、のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項2に記載のゲーム制御プログラム。
【請求項4】
前記受信部は、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又は前記オブジェクトの位置を示す情報を取得し、
前記対戦相手表示部は、前記ゲーム画面の所定のフレーム数分の前記位置を示す情報を取得するまで待機してから、前記位置を示す情報に基づいて、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又は前記オブジェクトを前記ゲーム画面に表示させることを特徴とする請求項2又は3に記載のゲーム制御プログラム。
【請求項5】
前記制御部は、前記プレイヤーが操作するキャラクタがゴルフをプレーするゲームを制御し、ホールのプレーが開始されてから前記キャラクタがホールアウトするまでの制限時間を設け、制限時間以内にホールアウトできなかった場合は、ゲームオーバーとすることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のゲーム制御プログラム。
【請求項6】
前記制御部は、プレイヤーが他のプレイヤーよりも早くホールアウトした場合に、プレイヤーに利益を与えることを特徴とする請求項5に記載のゲーム制御プログラム。
【請求項7】
複数のプレイヤーによるゴルフゲームの対戦を制御するゲーム装置であって、
プレイヤーからの指示入力を受け付けて前記ゴルフゲームのキャラクタ又はオブジェクトを制御する、コンピュータのCPUにより実現される制御部と、
対戦中の他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報を取得する、コンピュータのCPUにより実現される受信部と、
前記キャラクタ又はオブジェクトを含むゲーム画面を生成して表示装置に表示させる、コンピュータのCPUにより実現される画面生成部と、
前記表示装置に表示される前記ゲーム画面に、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示させる、コンピュータのCPUにより実現される対戦相手表示部と、
前記制御部により制御される前記キャラクタ又はオブジェクトに関する情報を、前記ゴルフゲームの対戦を行う複数のゲーム装置を管理する管理サーバに送信する、コンピュータのCPUにより実現される送信部と、
を備え、
前記対戦相手表示部は、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトが前記ゲーム画面に表示されることでプレイヤーによるゲームの進行が妨げられるような所定の条件を記憶媒体から読み出して、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトの位置が前記条件に合致するか否かを判定し、前記条件に合致する場合に、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示しない、又は、透明度を上げて表示させ、
前記制御部は、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトとは無関係に前記キャラクタ又はオブジェクトの動作又は移動を制御し、
前記受信部は、対戦中の各ゲーム装置からホールアウトしたプレイヤーのスコアをホールごとに取得して前記対戦の順位を管理する前記管理サーバから、上位から所定数のプレイヤー、又は、当該プレイヤーと順位の近い所定数のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報を取得する
ことを特徴とするゲーム装置。
【請求項8】
複数のプレイヤーによるゴルフゲームの対戦を制御するゲーム制御方法であって、
コンピュータのCPUにより実現される制御部が、プレイヤーからの指示入力を受け付けて前記ゴルフゲームのキャラクタ又はオブジェクトを制御するステップと、
コンピュータのCPUにより実現される画面生成部が、前記キャラクタ又はオブジェクトを含むゲーム画面を生成して表示装置に表示させるステップと、
コンピュータのCPUにより実現される受信部が、対戦中の他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報を取得するステップと、
コンピュータのCPUにより実現される対戦相手表示部が、前記表示装置に表示される前記ゲーム画面に、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示させるステップと、
コンピュータのCPUにより実現される送信部が、前記制御部により制御される前記キャラクタ又はオブジェクトに関する情報を、前記ゴルフゲームの対戦を行う複数のゲーム装置を管理する管理サーバに送信するステップと、
を備え、
前記対戦相手表示部は、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトが前記ゲーム画面に表示されることでプレイヤーによるゲームの進行が妨げられるような所定の条件を記憶媒体から読み出して、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトの位置が前記条件に合致するか否かを判定し、前記条件に合致する場合に、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示しない、又は、透明度を上げて表示させ、
前記制御部は、前記他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトとは無関係に前記キャラクタ又はオブジェクトの動作又は移動を制御し、
前記受信部は、対戦中の各ゲーム装置からホールアウトしたプレイヤーのスコアをホールごとに取得して前記対戦の順位を管理する前記管理サーバから、上位から所定数のプレイヤー、又は、当該プレイヤーと順位の近い所定数のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報を取得する
ことを特徴とするゲーム制御方法。
【請求項9】
請求項2から6のいずれかに記載のゲーム制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」

2 当審の拒絶理由
当審から平成23年1月4日付けで通知した拒絶理由の「B.本願発明について」の「第3 特許法第36条第6項第1,2号(特許請求の範囲の記載要件)の規定の違反について」は次のとおりである。

「1 本願発明11の「前記データ送信部は、前記ゲーム装置から受信した情報を、上位又は送信先のゲーム装置と順位の近いプレイヤーの前記ゲーム装置へ送信する」の記載について
(1)「順位の近いプレイヤー」は、何位離れたプレーヤまで含まれるのか、その範囲が発明の詳細な説明を参酌しても不明であり、本願発明11は明確でない。
したがって、本願は特許法第36条第2号の規定に違反する。
(2)「上位・・・の前記ゲーム装置へ送信する」は、送信されたゲーム装置にとっては自分より下位のプレーヤのゲーム装置からの情報を受信することになるが、これは明細書の発明の詳細な説明の【0023】段落(審判請求書において上記特定による効果が記載されていると主張されている段落)において「データ送信部93は、大会に参加しているプレイヤーのうち、上位から所定数のプレイヤーのゲーム装置16から受信した情報を各ゲーム装置16へ送信してもよい。これにより、各プレイヤーは、上位のプレイヤーのプレーを参考にしながらゲームを進行させることができる。」(下線は、当審が付した)と記載されていることと整合しておらず、また、明細書の発明の詳細な説明の他の箇所(段落)においても、自分より下位のプレーヤのゲーム装置からの情報を受信することは記載されていない。したがって、「上位・・・の前記ゲーム装置へ送信する」は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本願発明11は発明の詳細な説明に記載されているものであるということはできない。
したがって、本願は特許法第36条第1号の規定に違反する。」

3 当審の判断
(1)平成23年2月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2、7、8における「前記受信部は、対戦中の各ゲーム装置からホールアウトしたプレイヤーのスコアをホールごとに取得して前記対戦の順位を管理する前記管理サーバから、上位から所定数のプレイヤー、又は、当該プレイヤーと順位の近い所定数のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報を取得する」(以下「補正事項」という。)は、管理サーバからゲーム装置への順位に関連したデータの送受信に関する事項であり、補正前の請求項11における「前記データ送信部は、前記ゲーム装置から受信した情報を、上位又は送信先のゲーム装置と順位の近いプレイヤーの前記ゲーム装置へ送信する」を補正して特定した事項である。

(2)そして、請求人は、平成23年2月21日付けの意見書において、上記の補正事項により次の効果を奏することを主張している。
「現実のゴルフ競技においては、一緒にラウンドするプレイヤーは全てのホールをホールアウトするまで変わりませんが、本願発明によれば、対戦中の各ゲーム装置からホールアウトしたプレイヤーのスコアをホールごとに取得して対戦の順位を管理する管理サーバにより対戦相手が決定されるので、画面に表示される対戦相手のプレイヤーがホールごとに変化する可能性があります。このような特徴は、現実のゴルフ競技や、従来のゴルフゲームとは全く異なるところであり、当業者が容易に想到することができたものではありません。」(意見書第5ページ第31?37行)

(3)上記の補正事項について、本願明細書の発明の詳細な説明には次の事項が記載されている。
「【0020】
データ送信部93は、ゲーム装置16から受信した情報を、同一の大会に参加している複数のゲーム装置16のうち、所定の条件に合致するゲーム装置16へ送信する。
【0021】
大会管理部94は、大会の進行を管理する。本実施の形態では、大会を迅速に進行させるために、各ホールに制限時間を設け、制限時間内にホールアウトできなかったプレイヤーは失格させる。管理サーバ14側で制限時間を管理してもよいが、本実施の形態では、各ゲーム装置16が制限時間を管理し、プレイヤーが制限時間内にホールアウトできなかった場合は、管理サーバ14へその旨を通知する。大会管理部94は、失格した旨の通知を受けると、管理テーブル82の該当するプレイヤーの順位欄210に失格したことを示す「-1」を格納する。データ送信部93は、失格したプレイヤーのゲーム装置16には他のゲーム装置16の情報を送信しない。大会管理部94は、早くホールアウトしたプレイヤーに、ボーナスポイントを与えたり、特殊な効果のあるショットを打つ能力を与えたりするなどの利益を与えてもよい。
【0022】
順位管理部95は、大会に参加しているプレイヤーの順位を管理する。順位管理部95は、各ゲーム装置16からホールアウトしたプレイヤーのスコアをホールごとに取得し、管理テーブル82のスコア欄208を更新するとともに、スコアに基づいて順位を算出して順位欄210を更新する。
【0023】
データ送信部93は、大会に参加しているプレイヤーのうち、上位から所定数のプレイヤーのゲーム装置16から受信した情報を各ゲーム装置16へ送信してもよい。これにより、各プレイヤーは、上位のプレイヤーのプレーを参考にしながらゲームを進行させることができる。データ送信部93は、データの送信先のゲーム装置16と順位の近い所定数のプレイヤーを抽出し、抽出されたプレイヤーのゲーム装置16から受信した情報を送信先のゲーム装置16へ送信してもよい。これにより、各プレイヤーは、自身と順位の近いプレイヤーのプレーを画面上で確認しながらプレーを進めることができる。データ送信部93は、データの送信先のゲーム装置16のプレイヤーがフレンドリストに登録している相手のゲーム装置16から受信した情報を送信してもよい。このように、大会に参加しているプレイヤーの数が多くても、適当な数のプレイヤーを抽出して、抽出したプレイヤーのゲームの状況を示す情報を送信するので、各ゲーム装置16の処理負荷を不適切に増大させることなく、他のゲーム装置16の状況を表示させることができる。
【0024】
データ送信部93は、ゲーム装置16から情報を受信したときに、その情報をすぐに他のゲーム装置16へ送信してもよいし、そのゲーム装置16へ情報を送信すべき全てのゲーム装置16の情報が揃ってからまとめて送信してもよい。」

「【0045】
データ送信部46は、自装置のゲームの状況を他のゲーム装置16へ通知するための送信データを生成して管理サーバ14へ送信する。送信データは、前述したように、キャラクタの位置やボールの位置を示す情報などを含む。データ送信部46は、ゲーム画面8フレーム分のデータをまとめて、8フレームごとに管理サーバ14へ送信する。
【0046】
データ受信部47は、他のゲーム装置16の状況に関する情報を管理サーバ14から受信し、パラメータ保持部60に格納する。
【0047】
対戦相手表示部48は、データ受信部47が受信した情報に基づいて、対戦相手のゲーム装置16の状況を自装置のゲーム画面に表示させる。対戦相手表示部48は、ゲーム画面に、他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示させる。」

「【0056】
図11は、ホールアウト時に表示されるスコアの表示画面の例を示す。プレイヤーがホールアウトすると、スコア管理部51は、管理サーバ14にスコアを通知する。大会管理部94は、通知されたスコアをもとに管理テーブル82を更新し、順位管理部95は順位を更新する。データ送信部93は、各プレイヤーのスコアと順位をホールアウトしたプレイヤーのゲーム装置16へ送信する。ゲーム装置16のスコア管理部51は、取得した対戦相手のスコア及び順位をゲーム画面100に表示する。いったんホールアウトした後にも、表示画面をホールに戻して、まだホールアウトしていない対戦相手のプレーを見ることができるようにしてもよい。」

「【図11】



(4)上記の「補正事項」が、発明の詳細な説明に記載されている事項であるか否かについて検討する。
上記「補正事項」に記載されている「対戦」について、発明の詳細な説明には明確な定義はなされていないが、上記(2)に記載した意見書の内容を参酌すれば、「対戦相手」は管理サーバによって決定されるものであり、ホールごとに変化する可能性があるものであるのであるから、「対戦」は管理サーバによってホールごとに決定されるものであるといえる。
そうすると、上記補正事項の「対戦中の各ゲーム装置からホールアウトしたプレイヤーのスコアをホールごとに取得して」は、特定のホールにおいて管理サーバによって「対戦」するものとして決定された関係にあるプレイヤーから、上記特定のホールを「ホールアウトした」際に(ホール毎に)、そのプレイヤーのスコアを取得するという意味になる。また、上記補正事項の「対戦の順位を管理する」は、管理サーバによって「対戦」するものとして決定された関係にあるプレイヤーの順位を管理することを意味する。さらに、上記補正事項「上位から所定数のプレイヤー、又は、当該プレイヤーと順位の近い所定数のプレイヤー」は、「対戦」するものとして決定された関係にあるプレイヤーにおいて、ホールアウトしてスコアが取得されたプレイヤーのうちの「上位から所定数の(範囲内にある)プレイヤー又は当該プレイヤーと順位の近い所定数のプレイヤー」の意味である。そして、当該プレイヤーのゲーム装置の受信部が、上記の「上位から所定数の(範囲内にある)プレイヤー又は当該プレイヤーと順位の近い所定数のプレイヤー」が「操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報を取得する」ことになる。

これに対して、発明の詳細な説明においては、【0022】に「各ゲーム装置16からホールアウトしたプレイヤーのスコアをホールごとに取得し、管理テーブル82のスコア欄208を更新するとともに、スコアに基づいて順位を算出して順位欄210を更新する。」と記載され、【0023】において「データ送信部93は、大会に参加しているプレイヤーのうち、上位から所定数のプレイヤーのゲーム装置16から受信した情報を各ゲーム装置16へ送信してもよい。」及び「データ送信部93は、データの送信先のゲーム装置16と順位の近い所定数のプレイヤーを抽出し、抽出されたプレイヤーのゲーム装置16から受信した情報を送信先のゲーム装置16へ送信してもよい。」と記載され、【0047】には「対戦相手表示部48は、ゲーム画面に、他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示させる。」ことも記載され、また、【0056】には「図11は、ホールアウト時に表示されるスコアの表示画面の例を示す。プレイヤーがホールアウトすると、スコア管理部51は、管理サーバ14にスコアを通知する。大会管理部94は、通知されたスコアをもとに管理テーブル82を更新し、順位管理部95は順位を更新する。データ送信部93は、各プレイヤーのスコアと順位をホールアウトしたプレイヤーのゲーム装置16へ送信する。ゲーム装置16のスコア管理部51は、取得した対戦相手のスコア及び順位をゲーム画面100に表示する。」と記載されるとともに、【図11】に順位を表示している表示画面(ゲーム画面100)の図が記載されているが、上記の「補正事項」によって特定された内容は記載されていないといえる。
すなわち、上記の「補正事項」には、上述のように、サーバによってホール毎に決定された「対戦」のホールからホールアウトしたプレイヤーの「対戦の順位」を管理することが特定されているが、そのようなことは、上記【0022】【0023】【0056】【図11】には、記載されていし、発明の詳細な説明の他の箇所にも記載されていない。(すなわち、上記【0022】に記載されている「順位」は「対戦の順位」ではない。また、【図11】からプレイヤーのメンバーが全てのホールで固定されている(同じである)ことが読み取れることから、【0056】の「順位」も「対戦の順位」ではないことは明らかである。)
また、上記の「対戦」の順位に係る「上位」から所定数のプレイヤー、又は、当該プレイヤーと「順位の近い」所定数のプレイヤーの情報を取得することも記載されていない。
ましてや、上記の「プレイヤーの情報」が「プレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクト」に関する情報であることは、発明の詳細な説明の【0047】及び【0056】を参酌しても記載されていないといえる。何故なら、【0047】には「ゲーム画面に、他のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトを表示させる」と記載されているが、上記の「補正事項」において特定された「プレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報」は、対戦のホールからホールアウトしたプレイヤーの「プレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報」であるから、上記の対戦のホールの中にはなく、対戦のホールの中において表示することができない情報であるからである。また、【0056】には「いったんホールアウトした後にも、表示画面をホールに戻して、まだホールアウトしていない対戦相手のプレーを見ることができるようにしてもよい。」と記載されているが、これは「ホールアウトしていない対戦相手」の「プレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報」、すなわち、表示の対象となるプレイヤーがホールアウトする前に送られた情報を用いて表示することについて記載したものであるから、上記の「補正事項」の「ホールアウトしたプレイヤー」の「プレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報」について記載しているものではないことは明らかである。
(なお、【0056】の上記記載は、「ホールアウトしていないプレイヤー」全員の情報を「ホールアウトしたプレイヤー」全員に送るものといえるから、「順位」に関係なく情報を送る(取得する)ことを意味するものであり、「上位から所定数のプレイヤー、又は、当該プレイヤーと順位の近い所定数のプレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報」を取得する(送る)とする上記「補正事項」と矛盾するものである。)
そうすると、上記の「補正事項」によって特定された事項からは、取得した「プレイヤーが操作中のキャラクタ又はオブジェクトに関する情報」がどのように用いられるのか、すなわち、何のためにその情報が取得されるのかについて想定することができず、その意味においても、上記の「補正事項」は発明の詳細な説明の記載によってサポートされているものではなく、発明の詳細な説明に記載した事項であるということはできない。

(5)したがって、上記の「補正事項」は、どのような情報をいつ、どこ(誰)からどこ(誰)に、何のために送るのかということについて、発明の詳細な説明に記載されていないことを発明特定事項として含むものであるといえるから、上記の平成23年1月4日付けで通知した拒絶理由を解消していないものであり、特許法第36条第6項第1号の規定に違反している。

第4 まとめ
以上のとおり、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないから拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-17 
結審通知日 2011-06-21 
審決日 2011-07-05 
出願番号 特願2007-114893(P2007-114893)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植田 泰輝  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 森林 克郎
伊藤 幸仙
発明の名称 ゲーム装置、ゲーム制御方法、及びゲーム制御プログラム  
代理人 三木 友由  
代理人 村田 雄祐  
代理人 森下 賢樹  
代理人 青木 武司  

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