• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1242086
審判番号 不服2010-14980  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-06 
確定日 2011-08-18 
事件の表示 特願2010- 32009「バラの接ぎ木方法」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成22年2月17日にされた出願であって,平成22年6月8日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして,本願の請求項1ないし3に係る発明は,平成22年4月7日受付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
根首のところで水平に切り取ったノバラの台木上の切断面に品種の異なる複数のバラの穂木を接ぎ木することを特徴とするバラの接ぎ木方法。」(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2 引用刊行物記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由で引用され,本願出願前に頒布された,特開2005-13198号公報(以下,「刊行物1」という。)には,次の事項が記載されている。
(1a)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のバラの苗木を造る方法は、野バラに切り接ぎ、あるいは芽接ぎにより一本の台木に一種類のバラの穂木を接ぐものであったが、この発明は、一株の野バラの根元から伸びた枝で、先端部分の幹の太さにして1センチメートル以上ある太さの枝ごとの台木の脇芽の部位と、その脇芽を利用することに着目し、四季咲き園芸用の多品種のバラを接ぎ木し、異なった色、香り、形、弁数の異なったバラの花をまとめて咲かせることが出来るようにしたもので、狭い場所でも一鉢で効率よく多種多様なバラの花を楽しむことを可能にしたことを特徴とするバラ苗の製造方法である。」
(1b)「【0011】
【実施例】
本発明の請求項1においては、図1に示すように、例えば、一株の野バラの根元から伸びた枝で、先端部分の幹の太さにして1センチメートル以上ある太さの枝ごとの幹に四季咲き大輪種(ハイブリットティー)の花色の異なった赤3a1、白3a2、黄色3a3、ピンク3a4などの組み合わせ、同一色の赤でも花形などの異なった組み合わせ3b、・・・色違いの組み合わせなどのように、各種穂木を色々に組み合わせて、接いでいくもので、これを確実に活着させるために台木の先端部から根元までの間にある脇芽を利用し、等間隔となる部位に位置する脇芽11を接ぎ木する個所に選び、その各個所には、前記したとおり品種を変えて接ぎ木を行う。・・・ そして、枝全体をビニール袋14で覆うことにより穂木を保護し接ぎ木を完成させ、一株の野バラの台木で多品種の花を咲かせられるようにしたことを特徴とする接ぎ木の方法と、それらによって接ぎ木したバラの苗木が得られるものである。」
これらの記載及び図面の記載によれば,刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「野バラの台木の根元から伸びた複数の枝ごとの幹に,品種の異なる複数のバラの穂木を接ぎ木するバラの接ぎ木方法。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)同じく原査定の拒絶の理由で引用され,本願出願前に頒布された,町田英夫編「接ぎ木のすべて」誠文堂新光社,昭和53年3月25日発行,第69-71頁(以下,「刊行物2」という。)には,次の事項が記載されている。
(2a)「割り接ぎ cleft grafting
割り接ぎは、台木切断面の中心付近を縦にまっすぐに切り下げる。この割れ目に、基部をくさび形にそいだ接ぎ穂を挿入する方法である。・・・台木の太いばあい、両側に接ぐ二本接ぎ、四つ割りにして四本接ぐこともある。活着したら生育のよいもの一本を残して、残りを切除する。」(69頁下欄15行?71頁上欄6行)

3 対比・判断
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,両者は,
「ノバラの台木に品種の異なる複数のバラの穂木を接ぎ木するバラの接ぎ木方法。」である点で一致し,下記の点で相違している。
[相違点]
穂木を接ぎ木する部分が,本願発明では,「根首のところで水平に切り取った台木上の切断面」であるのに対し,刊行物1記載の発明では,台木の根元から伸びた複数の枝ごとの幹である点。

そこで,上記相違点について検討する。
刊行物1記載の発明は,一つの台木に多品種の穂木を接ぎ木することによって,一鉢で,他品種のバラを楽しもうとするものである。
一方,刊行物2に記載されているように,接ぎ木方法として,水平に切り取った台木上の切断面に複数の穂木を接ぎ木することは周知である。
そうすると,刊行物1記載の発明において,一つの台木に多品種の穂木を接ぎ木する手段として,刊行物2記載の発明を適用し,根首のところで水平に切り取った台木上の切断面に多品種の穂木を接ぎ木することは当業者が容易に想到しうることである。

なお,刊行物2には,一つの台木に複数の穂木を接ぎ木した後,一本を残して、残りを切除することが記載されているが,これは,一つの台木に同じ品種の穂木を複数接ぎ木し,その後活着のよいものを選択することを述べたものであって,一本を残し残りを切除しなければ,複数の穂木が活着できないことを述べたものではなく,十分な太さを有する台木に複数の異なる品種の穂木を接ぎ木し,そのまま生育させることが困難であるとはいえない。

そして,本願発明の「1本の台木に多くの品種のバラを咲かせ」るとの作用効果は刊行物1記載の発明から当業者が予測できることであり,また,「狭い場所や1つの鉢で多種多様のバラを繁殖させ観賞」できるとの作用効果,及び台木の枝が交差して通風が悪くなることを防止できるとの作用効果は,刊行物2記載の発明から予測できることである。
したがって,本願発明は,刊行物1,2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1,2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-20 
結審通知日 2011-06-23 
審決日 2011-07-06 
出願番号 特願2010-32009(P2010-32009)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 鈴野 幹夫
土屋 真理子
発明の名称 バラの接ぎ木方法  
代理人 山本 健男  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ