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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1242143
審判番号 不服2009-11076  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-15 
確定日 2011-08-17 
事件の表示 特願2003-508881「環境に対する生き物の位置及び/又は向きを決定する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 9日国際公開、WO03/02942、平成16年11月 4日国内公表、特表2004-533616〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・原査定の拒絶の理由
(1)本願は、平成14年5月21日を出願日(パリ条約による優先権主張、2001年5月18日、スウエーデン)とする国際出願であって、特許請求の範囲について、平成16年1月16日付け特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書により補正がなされ(以下、「補正1」という。)、明細書及び特許請求の範囲について、平成20年8月19日付け誤訳訂正書により補正がなされ(以下、「補正2」という。)、平成21年3月11日付け(送達:同年同月17日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年6月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年7月14日付けで特許請求の範囲についての補正(以下、「補正3」という。)がなされたものである。
その後、当審より、補正3によってもなお、本願は拒絶されるべきものである旨、平成22年7月23日付け審尋書により審尋をしたが、請求人からは何らの応答もなかった。
(2)そして、原査定の拒絶の理由は、本願の各請求項に係る発明は、いずれも、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第99/53838号(発明の名称:MOTION TRACKING SYSTEM(動き追跡システム)、1999年10月28日国際公開、以下、「引用例1」という。)や特開平7-191797号公報(発明の名称:ポインティング装置及びその方法、平成7年7月28日公開、以下、「引用例2」という。)に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許を受けることができない、というものである。

2.補正の適否・本願発明
(1)補正の内容
審判請求時の補正である補正3のうち請求項1についてした補正内容は、概略、次のとおりである。
(ア)補正前の「前記変換器、および少なくとも四つの空間自由度が限られた範囲内にあるように相互に機械的に接続された生き物及び位置決め部材の、少なくとも四つの空間自由度」との記載を、「前記生き物及び前記位置決め部材が少なくとも四つの空間自由度に関して限られた範囲内において相互に機械的に接続されたことにより、前記変換器の少なくとも四つの空間自由度」とする。(イ)補正前の請求項1の従属請求項である請求項5及び請求項9を、共に、請求項1に組み入れ、新たな請求項1とする。
よって、補正3のうち請求項1についてした補正は、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、また、請求項の削除を目的としたものである。
このことは、他の請求項についてした補正についても同様であり、しかも、補正3が、国内書面に記載した事項の範囲内においてしたものであることも明らかである。
したがって、補正3は、平成18年改正前の特許法第17条の2第3項及び同条第4項の規定に適合する。

(2)本願発明
以上のとおり補正3は認められるので、補正3によって補正された特許請求の範囲に記載の発明について検討することとする。
ア まず、独立請求項である請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「環境に対する生き物(3)の少なくとも四つの空間自由度を決定する方法であって、
変換器(5)を含む位置決め部材(4)に生き物を接続して、
生き物と変換器との環境に対する相対的な少なくとも四つの空間自由度を決定するように、変換器を下記i)?iii)のように操作し、
i)前記変換器が、環境中の少なくとも3つの信号源(9)から入射光信号を受信し、受信した信号の変換器表面上の相対的な入射位置を記録し、
ii)前記記録された受信信号の相対的入射位置に基づいて、前記少なくとも3個の信号源のうちの少なくとも3つについて、各信号源と変換器との間に延在する照準線の方向(φ1,θ1;φ2,θ2;φ3,θ3)を演算し、
iii) 前記照準線の方向を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を演算し、
さらに、前記生き物及び前記位置決め部材が少なくとも四つの空間自由度に関して限られた範囲内において相互に機械的に接続されたことにより、前記変換器の少なくとも四つの空間自由度から前記生き物の少なくとも四つの空間自由度を決定し、
前記環境内の前記信号源(9)からの入射光信号を受信することにより前記変換器(5)の少なくとも四つの空間自由度を繰り返し決定する当該変換器を用いて、前記生き物が動いたときに前記生き物の少なくとも四つの空間自由度を決定し、
前記生き物(3)が前記環境に対して動いたときに前記環境の属性を記録又はマッピングの少なくともいずれか一方を実行することを特徴とする方法。」(以下、「本願発明1」という。)

イ 次に、独立請求項である請求項9の記載は、以下のとおりのものとなっている。
「環境中の事象(22)を位置決めする方法であって、
環境中の事象を指示するための部品(23)に機械的に接続された変換器(5)を含む位置決め部材(4)に生き物(3)を接続し、
少なくとも一つの指示位置から事象に向けて指示部品を生き物によって指示し、
環境に対する変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定するように、変換器を下記i)?iii)のように操作し、
i)前記変換器が、環境中の少なくとも3つの信号源(9)から入射光信号を受信し、
ii)前記少なくとも3個の信号源のうちの少なくとも3つについて、各信号源と変換器との間に延在する照準線の方向(φ1,θ1;φ2,θ2;φ3,θ3)を演算し、
iii) 前記照準線の方向を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を演算し、
さらに、前記指示部品及び前記位置決め部材が少なくとも四つの空間自由度に関して限られた範囲内において相互に機械的に接続されたことにより、前記変換器の少なくとも四つの空間自由度から前記指示部品の少なくとも四つの空間自由度を決定し、 前記指示部品の少なくとも四つの空間自由度により、環境に対する指示された事象の少なくとも四つの空間自由度を決定し、
前記環境内の前記信号源(9)からの入射光信号を受信することにより前記変換器(5)の少なくとも一つの空間自由度を決定することを含むことを特徴とする方法。」
ここで、上記記載のうち、
(ア)「前記指示部品及び前記位置決め部材が少なくとも四つの空間自由度に関して限られた範囲内において相互に機械的に接続されたことにより、」
(イ)「前記指示部品の少なくとも四つの空間自由度により、環境に対する指示された事象の少なくとも四つの空間自由度を決定し、前記環境内の前記信号源(9)からの入射光信号を受信することにより前記変換器(5)の少なくとも一つの空間自由度を決定する」
について検討する。
まず、(ア)に関し、位置決め部材は、指示部品と指示部品に機械的に接続された変換器とを含むものをいうから、相互に機械的に接続されているのは、指示部品と変換器である。してみると、上記アにおいて、「前記指示部品及び前記位置決め部材が」とあるのは、不明であり、ここは、「前記指示部品及び前記変換器が」と解するのが自然である。
次に、(イ)に関し、指示された事象について環境に対する空間自由度が決定できるのは、環境に対する空間位置であって、その場合、空間自由度の数はせいぜい並進自由度の3であるから、「少なくとも四つの空間自由度を決定し」とあるのは、不明である。
また、(イ)の後段に「前記変換器(5)の少なくとも一つの空間自由度を決定する」とあるのも、不明である。すなわち、少なくとも一つの空間自由度が決定されるべきは、環境中の指示された事象であろう。
してみると、(イ)の前段と後段とで、「環境に対する指示された事象」の空間自由度に係る記載が対応していない点においても記載(イ)は不明であるといえる。
さらに、(イ)の後段の記載は、先行する記載である「i)前記変換器が、環境中の少なくとも3つの信号源(9)から入射光信号を受信し、」とも重複する。
そこで、補正1ないし3によって、補正された本願明細書及び図面の記載を参酌し、請求項9に係る発明を、改めて、以下のように認定することとする。
「環境中の事象(22)を位置決めする方法であって、
環境中の事象を指示するための部品(23)に機械的に接続された変換器(5)を含む位置決め部材(4)に生き物(3)を接続し、
少なくとも一つの指示位置から事象に向けて指示部品を生き物によって指示し、
環境に対する変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定するように、変換器を下記i)?iii)のように操作し、
i)前記変換器が、環境中の少なくとも3つの信号源(9)から入射光信号を受信し、
ii)前記少なくとも3個の信号源のうちの少なくとも3つについて、各信号源と変換器との間に延在する照準線の方向(φ1,θ1;φ2,θ2;φ3,θ3)を演算し、
iii) 前記照準線の方向を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を演算し、
さらに、前記指示部品及び前記変換器が少なくとも四つの空間自由度に関して限られた範囲内において相互に機械的に接続されたことにより、前記変換器の少なくとも四つの空間自由度から前記指示部品の少なくとも四つの空間自由度を決定し、 前記指示部品の少なくとも四つの空間自由度により、環境に対する指示された事象の少なくとも一つの空間自由度を決定することを含むことを特徴とする方法。」(下線は、変更箇所。以下、「本願発明2」という。)

ウ 次に、独立請求項である請求項16に係る発明は、次のとおりである。
「環境に対するオブジェクト(30)の少なくとも二つの空間自由度を生き物(3)によって決定する方法であって、
変換器(5)を含む位置決め部材(4)に生き物を接続し、
位置決め部材を、生き物により、オブジェクトと機械的に接触させ、
環境に対する変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定するように、変換器を下記i)?iii)のように操作し、
i)前記変換器が、環境中の少なくとも3つの信号源(9)から入射光信号を受信し、
ii)前記少なくとも3個の信号源のうちの少なくとも3つについて、各信号源と変換器との間に延在する照準線の方向(φ1,θ1;φ2,θ2;φ3,θ3)を演算し、
iii) 前記照準線の方向を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を演算し、
さらに、変換器の少なくとも四つの空間自由度により位置決め部材の少なくとも四つの空間自由度を決定し、
位置決め部材の少なくとも四つの空間自由度からオブジェクトの少なくとも二つの空間自由度を決定し、
前記環境内の前記信号源(9)からの入射光信号を受信することにより前記変換器(5)の少なくとも四つの空間自由度を決定することを含むことを特徴とする方法。」(以下、「本願発明3」という。)
また、本願発明1ないし3を総称して本願発明ということもある。

3.引用例記載の事項・引用発明
(1)引用例1
これに対して、引用例1である国際公開第99/053838号には、MOTION TRACKING SYSTEM[動き追跡システム](発明の名称)に関し、次の事項(a)?(k)が図面とともに記載されている。ここで、訳文は、対応する日本国特許庁発行の公表特許公報である特表2002-512069号公報によった。
(a)「 BACKGROUND
The invention relates to motion tracking. Motion tracking can use a variety of measurement modes, including inertial and acoustic measurement modes, to determine the location and orientation of a body.」(1頁4?8行)
訳文[ 背景
本発明は、動きの追跡(モーショントラッキング)に関する。 動きの追跡では、身体(ボディー)の位置および方向を決定するために、慣性的および音響的な測定モードを含む様々な測定モードを用いることができる。]
(b)「Another approach to motion tracking uses acoustic waves to measure distance between one or more points on a body and fixed reference points in the environment. In one arrangement, termed an "outside-in" arrangement, a set of acoustic emitters at the fixed points on the body emit pulses that are received by a set of microphones at the fixed reference points in the environment. The time of flight from an emitter to a microphone is proportional to an estimate of the distance between the emitter and the microphone (i.e., the range). The range estimates from the emitters to the respective microphones are used to triangulate the location of the emitters. The locations of multiple emitters on the body are combined to estimate the orientation of the body.」(2頁14?30行)
訳文[動作追跡の他の方法は、音波を使用して、身体上の一または複数の点と周辺環境における一定の基準点との間の距離を測定することである。「アウトサイド-イン」と呼ばれる一つの構成では、身体上の点に固定された複数の音波放射体のセットが、周辺環境での一定の基準点にある複数のマイクロホンによって受信されるパルスを発する。一つの放射体から一つのマイクロホンへ至るフライト時間(time of flight)は、その放射体とそのマイクロホンとの間の距離(すなわち、「レンジ」)の推定値に比例する。複数の放射体からそれぞれのマイクロホンにまでの複数のレンジ推定値は、放射体の位置を三角測量によって算出するために用いられる。身体上にある複数の放射体の位置は、身体の方向を推定するために結合される。
身体上の光源の光学的な追跡といった他の測定モードも、身体の動きの追跡に用いることができる。]
(c)「SUMMARY
In one aspect, in general, the invention is a method for tracking a motion of a body which includes obtaining two types of measurements associated with the motion of the body, one of the types comprising acoustic measurement, updating an estimate of either an orientation or a position of the body based on one of the two types of measurement, for example based on inertial measurement, and updating the estimate based on the other of the two types of measurements, for example based on acoustic ranging.
In another aspect, in general, the invention is a method for tracking the motion of a body including selecting one of a set of reference devices, transmitting a control signal to the selected reference device, for example by transmitting a wireless control signal, receiving a range measurement signal from the reference device, accepting a range measurement related to a distance to the selected reference device, and updating a location estimate or an orientation estimate of the body using the accepted range measurement. The method can further include determining a range measurement based on a time of flight of the range measurement signal.
Advantages of the invention include providing a 6-degree-of-freedom tracking capability that can function over an essentially unlimited space in which an expandable constellation of ultrasonic beacons is installed. Inertial measurements provide smooth and responsive sensing of motion while the ultrasonic measurements provide ongoing correction of errors, such as those caused by drift of the inertial tracking component of the system. Small and inexpensive inertial sensors, which often exhibit relatively large drift, can be used while still providing an overall system without unbounded drift. Small, lightweight inertial sensors are well suited for head mounted tracking for virtual or augmented reality display systems. By correcting drift using ultrasonic measurements, drift correction measurements which may be sensitive to external factors such as magnetic field variations, are not needed. The constellation of ultrasonic beacons can be easily expanded as each beacon functions independently and there is no need for wiring among the beacons. The tracking device only relies on use of a small number of ultrasonic beacons at any time, thereby allowing the space in which the tracking device operates to have irregular regions, such as multiple rooms in a building.」(3頁1行?4頁17行)
訳文[ 要約
一つの形態によれば、本発明は、身体の動きに関係づけられた音響測定値を一方に含む二種類の測定値を取得すること、前記二種類の測定の一方に基づいて、例えば慣性的な測定に基づいて、身体の方向と位置のいずれか一方の推定値を更新すること、および、前記二種類の測定値の他方に基づいて、例えば、音響的なレンジング(標定)に基づいて、前記推定値を更新すること、を含む身体の動きを追跡する方法である。
他の態様によれば、本発明は、複数の基準(レファレンス)装置のセットのうちの一つを選択すること、前記選択された基準装置に対して、例えば、無線制御信号を送信することによって、選択された基準装置に制御信号を送信すること、前記基準装置からのレンジ測定信号を受信すること、前記選択された基準装置までの距離に関するレンジ測定値を受け取ること、および、前記受け取ったレンジ測定値を用いて、身体の位置推定値または方向推定値を更新すること、を含む身体の動きを追跡する方法である。本方法は、さらに、レンジ測定信号のフライト時間に基づいて、レンジ測定値を決定することをさらに有することができる。
本発明の効果は、増加可能な複数の超音波ビーコンの集合が設けられる無制限な空間にわたって機能する6-自由度の追跡能力を提供することを含む。慣性測定値は、円滑かつ敏感に動きを検出することを提供する一方、超音波測定値は、本システムの慣性的な追跡要素におけるドリフトによって生じるような誤差の修正を推進することを提供する。小型で軽量な慣性センサは、バーチャルリアリティ-ディスプレイシステムのために頭部に装着される追跡装置に適している。超音波測定を用いてドリフトを修正することによって、例えば磁界の変化などの外的要因に敏感なドリフト修正用の測定は不要となる。各ビーコンは独立して機能し、各ビーコン間での配線が不要であるため、複数のビーコンの集合を簡単に拡張することができる。追跡装置は、常に少数の超音波ビーコンの使用のみに依存し、その結果、追跡装置が作動する空間は、建物内の複数の部屋のように不揃いな複数の領域であることが許容される。]
(d)「 DESCRIPTION
Referring to FIG. 1, a tracking device 100 which maintains an estimate of its location and orientation is free to move within a large room. For example, tracking device 100 can be fixed to a head-up display (HUD) on an operator's head, and tracking device 100 moves through the room, and changes orientation, as the operator moves and orients his head. Tracking device 100 includes a processor 130 coupled to an inertial measurement unit (IMU) 140 which provides inertial measurements related to linear acceleration and to rates of rotation. Processor 130 uses the inertial measurements to determine motion of tracking device 100 as it moves through the room.
Processor 130 is also coupled to an array of three ultrasonic range measurement units (URM) 110 which are used to receive acoustic signals sent from an ultrasonic beacon array 120, a "constellation" of beacons. Ultrasonic beacon array 120 includes independent ultrasonic beacons 122 in fixed locations in the environment, for example, arranged on the ceiling of the large room in a regular pattern such as on a grid with 2 foot spacing. Processor 130 uses the signals from particular ultrasonic beacons 122, as well as known three-dimensional locations of those beacons, to estimate the range to those beacons and thereby sense motion for tracking device 100. Each ultrasonic beacon 122 sends an ultrasonic pulse 114 in response to infra-red command signal 112 sent from tracking device 100. In particular, each URM 110 on tracking device 100 broadcasts infra-red (IR) signals to all of the ultrasonic beacons 122. These IR signals include address information so that only one beacon, or a small number of beacons, recognize each IR signal as intended for it, and responds to the signal. In response to an IR signal, an addressed beacon immediately broadcasts an ultrasonic pulse that is then received by one or more URM 110. As processor 130 knows that the addressed beacon responded immediately to the IR command, it determines the time of flight by measuring the delay from issuing the IR command to detecting the ultrasonic pulse. The time of flight of the ultrasonic pulse is used to estimate the range to the beacon, which is then used to update the position and orientation of tracking device 100.
Both the inertial measurements and the ultrasonic signal based measurements have limitations. Relying on either mode of measurement individually is not as accurate as combining the measurements. Tracking device 100 combines measurements from both measurement modes and adjusts its estimate of position and orientation (i.e., 6 degrees of freedom, "6-DOF") to reflect measurements from both modes as they are available, or after some delay. To do this, processor 130 hosts an implementation of an extended Kalman filter (EKF) that is used to combine the measurements and maintain ongoing estimates of location and orientation of tracking device 100, as well as to maintain an estimate of the uncertainty in those estimates.
Referring to FIG. 2, processor 130 includes a central processing unit (CPU) 200, such as an Intel 80486 microprocessor, program storage 220, such as read-only memory (ROM), and working storage 230, such as dynamic random-access memory (RAM). CPU 200 is also coupled to an input/output interface 210 which provide an interface to IMU 140 and the URM 110. Input/output interface 210 includes digital logic that provides digital interfaces to IMU 140 and the URM 110.
IMU 140 provides a serial data stream 201 encoding inertial measurements. Input/output interface 210 converts this serial data to a parallel form 212 for transfer to CPU 200. Each URM 110 accepts a serial signal 211 that is used to drive an IR light emitting diode 510 to broadcast the IR control signals to ultrasonic beacons 122 (FIG. 1). Input/output interface 210 accepts address information from CPU 200 identifying one or more ultrasonic beacons and provides the serial signal to each of the URM 110 which then impose the serial signal on an IR transmission (e.g., by amplitude modulation). The same serial signal is provided to all the URMs 110, which concurrently broadcast the same IR signal. Each URM 110 provides in return a logical signal 202 to input/output interface 210 indicating arrivals of ultrasonic pulses. Input/output interface 210 includes timers that determine the time of flight of ultrasonic pulses from the beacons, and thereby determines range estimates to the beacons. These range estimates are provided to CPU 200.
An implementation of a tracking algorithm is stored in program storage 220 and executed by CPU 200 to convert the measurements obtained from input/output interface 210 into position and orientation estimates. CPU 200 is also coupled to fixed data storage 240, which includes information such as a predetermined map of the locations of the ultrasonic beacons, and the locations of the microphones of the URM 110. Processor 130 also includes a communication interface 260 for coupling CPU 200 with other devices, such as a display device 280 that modifies its display based on the position and orientation of tracking device 100.」(6頁12行?9頁19行)
訳文[説明
図1において、位置および方向の推定を継続して行う追跡装置10は、広い部屋内を自由に移動することができる。例えば、追跡装置100は、オペレータの頭部のヘッドアップディスプレイ(HUD)に固定することができ、オペレータが動いたり、頭部の向きを変えたりするのに応じて、追跡装置100も、部屋内を移動し、方向を変える。追跡装置100は、直線加速度および回転速度に関係づけられた慣性測定を行う慣性測定ユニット140に接続されたプロセッサ130を有している。プロセッサ130は、室内での移動に伴う追跡装置の動きを決定するために慣性測定を用いる。
プロセッサ130は、超音波ビーコンアレイ120、すなわち複数のビーコンの「集合(constellation)」から送られてきた音響信号を受信する3つの超音波レンジ測定ユニット(URM)110にも、接続されている。超音波ビーコンアレイ120は、独立した複数の超音波ビーコン122を有しており、これらのビーコンは、周辺環境に固定されており、例えば、2フィート間隔の格子状となるように大きな部屋の天井に矩形型に配置されている。プロセッサ130は、これらビーコンの既知の三次元配置とともに、それら複数の超音波ビーコン122からの複数の信号を利用して、それらビーコンまでのレンジを推定し、その結果、追跡装置100の動きを検出する。超音波ビーコン122の各々は、追跡装置100から送られる赤外線コマンド信号112に応答して超音波パルス114を送信する。特に、追跡装置100上の各URM110は、複数の超音波ビーコン122の総てに対して、複数の赤外線(IR)信号を通信する。これらの赤外線信号は、アドレス情報を含むので、その情報によって意図された一又は小数のビーコンが、各赤外線信号を認識し、その信号に応答する。赤外線信号に応答して、宛先とされたビーコンは、一つ以上のURM110によって受信される超音波パルスを直ちに送信する。プロセッサ130は、宛先とされたビーコンが赤外線コマンドに対して直ちに応答したことを知り、赤外線コマンドを発してから超音波パルスを受信するまでの遅延を測定することによってフライト時間を決定する。超音波パルスのフライト時間は、ビーコンまでのレンジを推定するために用いられ、このレンジ推定値は、追跡装置100の位置および方向を更新するために使用される
慣性測定および超音波信号測定は、共に限界を有する。それぞれの測定モードのいずれかを独立して用いる場合は、これら複数の測定を組み合わせた場合と同程度の正確さを達成しない。追跡装置100は、双方の測定モードによる各測定値を組み合わせて、その位置および方向(すなわち、6-自由度、「6-DOF」)の推定値を調整し、双方のモードによる各測定値を、それらが利用可能な時、または、いくらかの遅延の後に、反映する。このために、プロセッサ130は、双方の測定値を結合し、追跡装置100の位置と方向との推定値を順次に変化させ、これらの推定値に含まれる不確実性の推定を維持する拡張カルマンフィルタカルマンフィルタ(EKF)の実行役を務める。
図2において、プロセッサ130は、インテル(登録商標)社の80486マイクロプロセッサ等の中央演算装置(CPU)200と、リードオンリーメモリ(ROM)等のプログラム記憶部220と、ダイナミックランダムアクセスメモリ(RAM)等のワーキング記憶部230とを備えている。CPU200は、IMU140およびURM110との接続を行う入出力インタフェース210にも接続されている。入出力インタフェース210は、IMU140およびURM110とデジタル的に接続するデジタル論理回路を備える。
IMU140は、慣性測定値を符号化したシリアルデータ列201を提供する。入出力インタフェース210は、このシリアルデータをCPU200に伝送するためのパラレル形式212に変換する。各URM110は、IR制御信号を複数の超音波ビーコン122(図1)に通信する赤外線発光ダイオード510を駆動するためのシリアル信号211を受け取る。入出力インタフェース210は、一または複数の超音波ビーコンを識別するアドレス情報210をCPU200から受け、(例えば、振幅変調によって)赤外線搬送波にシリアル信号を挿入する各URM110に対して、シリアル信号を提供する。同様なシリアル信号は、同様な赤外線信号を同時に通信するURM110の総てに供給される。各URM110は、この返信として、超音波パルスの到着を示す入出力インタフェース210への論理信号202を提供する。入出力インタフェース210は、ビーコンからの超音波パルスのフライト時間を決定するためのタイマを備えており、この結果、そのビーコンまでのレンジ推定値を決定する。これらのレンジ推定値は、CPU200に対して提供される。
追跡のアルゴリズムの実現物(インプリメンテーション)は、プログラム記憶部220に記憶されており、CPU200によって実行されて、入出力インタフェース210によって得られた測定値を位置と方向との推定値に変換する。CPU200は、複数の超音波ビーコンの位置が予め定められたマップや、URM110にある複数のマイクロホン位置などの情報を備える固定データ記憶部240にも接続されている。プロセッサ130は、CPU200と追跡装置100の位置および方向に基づいて表示を変えるディスプレイ装置などの他の装置とを接続するための通信インタフェース260を備えている。]
(e)「Referring to FIG. 5, each ultrasonic measurement unit 110 includes an infra-red (IR) light-emitting diode (LED) 510 that is driven by IR signal generator 512. Signal generator 512 accepts serial signal 211 from input/output interface 210 (FIG. 2) and drives IR LED 510 to transmit that signal to one or more ultrasonic beacon 122. The address of an ultrasonic beacon to which a range is desired is encoded in serial signal 211. Each ultrasonic beacon 122 includes an IR sensor 540 which, if there is a sufficiently short unobstructed path between ultrasonic range measurement unit 110 and that ultrasonic beacon, receives the IR signal which is then decoded by IR signal decoder 542. This decoded signal includes the address information transmitted by the ultrasonic range measurement unit. Control circuitry 560 receives the decoded IR signal, and determines whether that ultrasonic beacon is indeed being addressed, and if so, signals a pulse generator 552 to provide a signal to an ultrasonic transducer 550 which generates an ultrasonic pulse. The pulse passes through the air to ultrasonic range measurement unit 110 where a microphone 520 receives the ultrasonic pulse and passes a corresponding electrical signal to a pulse detector 522 which produces a logical signal indicating arrival of the pulse. This pulse detection signal is passed to input/output interface 210 (FIG. 2). As discussed below, the time of flight is not a perfectly accurate measurement of range. Error sources include timing errors in detection of the pulse, acoustic propagation rate variations, for example due to air temperature or air flow, and non-uniform in different directions propagation of the ultrasonic wave from the ultrasonic beacon.
Input/output interface 210 includes circuitry (i.e., a programmable logic array) which implements logical components shown in FIG. 6. An IMU data buffer 630 accepts serially encoded acceleration and angular rate data 413 from IMU 140, and provides the six acceleration and rotation measurements 631 as output to CPU 200. Input/output interface 210 also includes a beacon address buffer 610. CPU 200 (FIG. 2) provides an address of the ultrasonic beacon to which a range should be measured. Beacon address buffer 610 stores the address and provides that address in serial form to each of the URMs 110. At the same time that the address is transmitted by each of the URM 110 (and received by the ultrasonic beacons 122), three counters 620a-c are reset and begin incrementing from zero at a fixed clocking rate (e.g., 2 MHz). When each URM 110 detects the ultrasonic pulse from the beacon, the corresponding pulse detection signal is passed to the corresponding counter which stops counting. The counts are then available to CPU 200 as the measurements of the time of flight of the ultrasonic pulse from the ultrasonic beacon to each URM 110.」(11頁25行?13行7行)
訳文[ 図5において、各超音波測定ユニット110は、赤外線信号発生器512によって駆動される赤外線(IR)発光ダイオード(LED)510を含んでいる。信号発生器512は、入出力インタフェース(図2)からのシリアル信号211を受け取り、赤外線LED510を駆動してその信号を一つ以上の超音波ビーコン122に送信する。レンジが所望される超音波ビーコンのアドレスは、シリアル信号211において符号化されている。各超音波ビーコン122は、超音波レンジ測定ユニット110とその超音波ビーコンの間に十分に距離が短い非遮断の経路が存在する場合に赤外線信号を受信する赤外線センサ540を含んでいる。赤外線信号は、その後、赤外線信号デコーダ542によって復号化される。この復号化された信号は、超音波レンジ測定ユニットによって送信されたアドレス情報を含んでいる。制御回路560は、復号化された赤外線信号を受信し、その超音波ビーコンが実際に宛先とされているどうかを判断し、もしそうであれば、パルス発生器552に合図して、超音波パルスを発生する超音波トランスジューサ550に信号を提供させる。超音波パルスは、空気を通過して超音波レンジ測定ユニット110に至り、ここで、マイクロホン520は、超音波パルスを受信して、超音波パルスの到着を示す論理信号を生成するパルス検出器522に対し、対応する電気信号を渡す。このパルス検出信号は、入出力インタフェース210(図2)に渡される。後述するように、フライト時間は、完全に正確なレンジ測定値ではない。誤差の原因は、パルス検出時のタイミング誤差、例えば空気の温度または空気の流れに起因する音波の伝搬速度の変動、および超音波ビーコンからの超音波の異なる複数の方向への不均一な伝搬である。
入出力インタフェース210は、図6に示す論理要素を実現する回路(つまり、プログラマブルロジックアレイ)を含んでいる。IMUデータバッファ630は、シリアルに符号化された加速度と角速度データ413をIMU140から受け取り、CPU200への出力として加速度と回転との六つの測定値631を提供する。また、入出力インタフェース210は、ビーコンアドレスバッファ610を含んでいる。CPU200(図2)は、レンジを測定すべき対象とされる超音波ビーコンのアドレスを提供する。ビーコンアドレスバッファ610は、そのアドレスを記憶するとともに、そのアドレスをシリアル形式で各URM110に提供する。アドレスが各URM110によって送信される(そして、超音波ビーコン122によって受信される)と同時に、三つのカウンタ620a?cはリセットされ、一定のクロッキング速度(例えば、2MHz)で、ゼロからインクリメントを開始する。各URM110がビーコンからの超音波パルスを検出すると、対応するパルス検出信号が対応するカウンタに渡され、このカウンタはカウントするのをやめる。その後、カウント値は、超音波ビーコンから各URM110までの超音波パルスのフライト時間の測定値としてCPU200によって利用可能である。]
(f)「Referring to FIGS. 7a-b, tracking device 100 (FIG. 1) determines its location in the navigation reference frame of the room, shown as axes 710, labeled N (north), E (east), and D (down). Location r.sup.(n) 730 is a vector with components (r.sub.N.sup.(n), r.sub.E.sup.(n), r.sub.D.sup.(n)).sup.T of the displacement from axes 710 in the N, E, and D directions respectively. Tracking device 100 also determines its attitude (orientation).
Referring to FIG. 7b, attitude is represented in terms of the roll, pitch, and yaw (Euler) angles, .theta.=(.psi., .theta., .phi.).sup.T, needed to align the body attitude, represented by coordinate axes 720, with the navigation attitude represented by coordinate axes 710. The three Euler angles are represented as a 3.times.3 direction cosine matrix, C.sub.b.sup.n (.theta.), which transforms a vector of coordinates in the body frame of reference by essentially applying in sequence yaw, pitch, and then roll motions around the z, y, and then x axes. 」(13頁7?21行)
訳文[ 図7a?bにおいて、追跡装置100(図1)は、N(北)、E(東)、D(下)と表示された座標軸710として示される部屋のナビゲーション基準フレーム内での自己の位置を決定する。位置r(n)730は、軸710からのそれぞれN方向、E方向、D方向への変位の成分(rN(n),rE(n),rD(n))Tを有するベクトルである。また、追跡装置100は、自己の姿勢(方向)を決定する。
図7bにおいて、姿勢は、ロール、ピッチ、およびヨーの(オイラー)角、θ=(Ψ,θ,Φ)T、によって表される。このオイラー角は、身体の姿勢を調整するために必要とされ、座標軸720によって表現される。一方、ナビゲーション姿勢は、座標軸710によって表現される。三つのオイラー角は、3×3の方向余弦行列、Cbn(θ)、として表され、この行例は、本質的にz軸、y軸、x軸を中心として回るヨー動作、ピッチ動作、ロール動作を順番に加えることによって、身体の基準フレーム内の座標ベクトルを変換する。]
(g)「As is discussed fully below, inertial tracker 810 receives error update signals .delta.x derived from ultrasonic range measurements that it uses to correct the attitude, velocity, and position values, and to update the parameters of the gyroscope and accelerometer bias correction elements.
Referring to FIG. 9, a beacon sequencer 910 receives location estimates r.sup.(n) from inertial tracker 810. Using a beacon map 915 of the locations (and addresses) of the ultrasonic beacons 122 (shown in FIG. 1), beacon sequencer 910 determines which beacon to trigger at each time step in order to generate ultrasonic range measurements. For instance, beacon sequencer 910 determines the closest beacons to the current location, and cycles among these beacons on each time step. As the location estimate changes, the set of closest beacons also, in general, changes. After beacon sequencer 910 triggers each of the beacons in turn, the corresponding ultrasonic pulses arrive and are detected by the tracking device. Each pulse generates one range measurement for each microphone used to detect the pulse. In this embodiment, each pulse generates a set of three range measurements, one from each of the microphones in the three URM 110.
Referring still to FIG. 9, range measurement 920 corresponds to the process of receiving an ultrasonic range estimate. The relevant parameters for a range measurement are the location of the addressed beacon, b.sup.(n), the location of the microphone used to detect the pulse, m.sup.(b), the range estimate itself, d.sub.r, and the time the pulse was detected, t.sub.r, which is used to correct for latency in the measurements. Note that if the location estimate had no error, and the range estimate was perfectly accurate, then the range estimate would satisfy」(13頁7?22行)
訳文[後述するように、慣性追跡部810は、誤差更新信号δxを超音波レンジ測定部から受信する。超音波レンジ測定部は、姿勢、速度、および位置の値を修正し、ジャイロスコープおよび加速度計のバイアス修正要素のパラメータを更新するために用いられる。
図9において、ビーコンシーケンサ910は、位置推定値r(n)を慣性追跡部810から受信する。(図1に図示される)超音波ビーコン122の位置(およびアドレス)のビーコンマップ915を用いて、ビーコンシーケンサ910は、超音波レンジ測定値を生成するために、いずれのビーコンが起動(トリガー)されるかについて時間ステップ毎に決定する。例えば、ビーコンシーケンサ910は、現在の位置に近い複数のビーコンを決定し、これらのビーコンの間で時間ステップ毎に循環(cycle)する。位置推定値が変化するのにしたがって、最も近いビーコンのセットも、一般には変化する。ビーコンシーケンサ910が、複数のビーコンを順番に起動し、これに対応して、複数の超音波パルスが到着するとともに、追跡装置によって検出される。各パルスは、パルスを検出するのに用いられる各マイクロホン別に、一つのレンジ測定値を生じさせる。本実施形態では、各パルスは、三つのレンジ測定値を一セット生じさせる、すなわち、三つのURM110の各マイクロホン別に、一つずつのレンジ測定値を生じさせる。
また、図9において、レンジ測定部920は、超音波レンジ推定値を受信するプロセスに対応する。レンジ測定に関連するパラメータは、宛先とされたビーコンの位置b(n)、パルスの検出に用いられるマイクロホンの位置m(b)、レンジ推定値自体dr、および、測定における待ち時間を修正するために用いられる、パルスが検出された時間trである。位置推定値が誤差を含まないとすれば、レンジ推定値は、完全に正確であり、レンジ推定値は、次式を満たす。]
(h)「Referring back to FIG. 1, ultrasonic beacon array 120 includes individual ultrasonic beacons 122 arranged in a regular pattern. For example, the beacons may be arranged on a square grid with a spacing of approximately 2 feet, preferably with an accuracy of 3 mm or less. A limited number of addresses are available for the beacons, in this embodiment only eight different addresses are available due to hardware limitations. Therefore, when the tracking device sends an IR command to an address, in general, multiple ultrasonic beacons will receive the signal and respond. Only the closest beacon with any particular address is used for range measurement. However, as multiple beacons may be responding to each IR command, the pulse detection circuit may be triggered prematurely, for example, by a pulse from a beacon triggered in a previous iteration, but that is sufficiently far away that its pulse does not arrive until after a subsequent iteration. In order to avoid this pre-triggering problem, pulse detector 522 (FIG. 5) is only enabled during a time window about the expected time the desired pulse would arrive. This avoids false triggering by pulses from other beacons, or signals resulting from long time constant reverberation of previous pulses.
In the description the tracking and Kalman updating procedures, an initial location and orientation estimate is assumed to be known. This is not necessarily the case and an automatic acquisition algorithm is used by tracking device 100. The limited number of addresses of ultrasonic beacons is used as the basis for an initial acquisition algorithm. Initially, the tracking device triggers beacons with each of the allowable addresses and measures the range to the closest beacon of each address. Then, the addresses of the four closest beacons are determined from the range measurements. The tracking unit includes a beacon map that includes the locations and addresses of all the beacons. The beacons are arranged such that the addresses of the four closest beacons limit the possible locations to a small portion of the room. If there is ambiguity based on the closest beacons, the actual distances to the beacons are used in a triangulation procedure to resolve the ambiguity. The initial orientation is based on the relative range measurements to each of the microphones.」(22頁18行?23頁30行)
訳文[ 再び、図1において、超音波ビーコンアレイ120は、規則的なパターンで配列された単体の複数の超音波ビーコン122を含んでいる。例えば、これらの複数のビーコンは、2フィートほどの間隔を持った矩形のグリッド上に、より好ましくは、3mm以下の精度で配列されている。有限の数のアドレスがこれらのビーコンのために使用可能である。本実施形態によれば、8個の異なるアドレスのみが、ハードウエアの制限上、使用可能となっている。したがって、追跡装置が、赤外線コマンドを一つのアドレスに送信する場合、一般的には、複数の超音波ビーコンが、その信号を受信し、反応する。特定のアドレスを持った最も近いビーコンのみがレンジ測定のために用いられる。しかしながら、複数のビーコンが、各赤外線コマンドに対して反応するので、パルス検出回路は、例えば、前の反復的な処理において起動(トリガー)されたビーコンからのパルスによって本来よりも早くに起動されるかもしれない。しかしながら、その反復的な処理は、十分に離れているので、そのパルスは、次の反復処理の後に到着することはない。この早期のトリガー動作の問題を避けるために、パルス検出器522(図5)は、所望のパルスが到着すると期待される時間近傍の時間ウインドウの間のみ動作可能となる。これは、他のビーコンからのパルス、または以前のパルスの長期間の一定な残響によって誤ったトリガーがなされることを避ける。
追跡およびカルマン更新処理の説明において、初期の位置および方向推定値は、既知であると仮定されるが、これは、追跡装置100によって自動捕獲アルゴリズムが用いられる場合には、常に必要であるわけではない。限られた超音波ビーコンのアドレス数は、初期の捕獲アルゴリズムのための基準として用いられる。最初に、追跡装置は、許容可能な宛先の各ビーコンについてトリガーを与え、宛先とされるビーコンの中で最も近い一つのビーコンのレンジを測定する。そして、最も近い4つのビーコンのアドレスが、レンジ測定によって決定される。追跡ユニットは、総てのビーコンの位置およびアドレスを含むビーコンマップを有している。最も近い4つのビーコンのアドレスによって、可能な位置が部屋の小部分に限定されるように、ビーコンが配置される。最も近い複数のビーコンに基づいて不確定さがある場合には、その不確定さを解決すべく、複数のビーコン間の実際の距離が三角測量処理のために使用される。初期の方向は、各々のマイクロホンに関連づけられた複数のレンジ測定に基づく。
追跡処理の全体は、図13に示されるフローチャートによって要約することができる。最初に、既に概略を説明した方法を使用して、初期の位置および方向が取得される(ステップ1310)。この処理は、時間ステップ毎に一回実行されるループを挿入する。次の時間ステップのために待機した後(ステップ1320)、慣性測定値が受信されるとともに(ステップ1330)、追跡された変数x
、および誤差共分散Pが、慣性測定を用いることによって更新される(ステップ1340)。未処理の超音波レンジ測定が使用可能である場合(ステップ1350)、レンジ測定結果を使用して、誤差更新値δxと更新された誤差共分散P(+)を計算する(ステップ1360)。この誤差更新値および新たな誤差共分散を使用して、慣性追跡部やカルマン予測部を更新する(ステップ1370)。この処理は、さらに、レンジ測定を行うことが、当該時間ステップにおいて要求されるか否かを決定することを含む(ステップ1380)。三つのレンジ測定が各パルスについてなされるが、一回の時間ステップあたり一つのレンジ測定値のみが使用され、次回以降の時間ステップにおいて適用される複数のレンジ測定値の予備(バックログ)が存在することとなる。したがって、将来の何回かの時間ステップのためには、新たなレンジ測定は、必要がないものとできる。次の超音波パルスについて期待されるフライト時間(一般には、一つの時間ステップよりも長い)を考慮する場合、この処理によって、この時間ステップで1つの赤外線コマンドをビーコンに対して送信すべきか否かを決定し(ステップ1380)、次のビーコンのアドレスが選択され(ステップ1390)、その場合、そのビーコンへの赤外線コマンドが送信される(ステップ1395)。処理は、再び戻り、次の時間間隔まで待機して、ステップ1320において再度開始される。
いくつかの代わりの方法を用いることができる。説明された実施形態では、時間ステップあたり一つのレンジ測定値が使用される。もし、プロセッサ130が十分に計算能力を有していれば、これに代えて、総ての利用可能な複数のレンジ測定値を時間ステップ毎に使用することが可能である。この選択的な方法は、総ての複数のレンジ測定結果が考慮されるまで、ステップ1370からステップ1350へ繰り返して戻ることによって実行される。また、代替的に、各スケールレンジ測定別に、順番にカルマン更新部を適用するというよりも、各ベクトル観測器および修正された観測ノイズに対する類似の更新式を用いることによって、総てのレンジ測定に対して、一回のステップでカルマン更新部を適用することもできる。次の時間ステップまでに、レンジ測定の差分をとる処理をする代わりに、むしろ複数のレンジ測定値が到着する毎に複数のレンジ測定値を結合し、慣性追跡装置の更新と同時に行わないようにすることもできる。]
(i)「The overall tracking procedure can be summarized by the flowchart shown in FIG. 13. First, the initial location and orientation is acquired (step 1310) using the approach outlined above. The procedure then enters a loop that is executed once each time step. After waiting for the next time step (step 1320), inertial measurements are received (step 1330) and the tracked variables, x, and the error covariance, P, are updated using the inertial measurements (step 1340). If an ultrasonic range measurement that has not yet been processed is available (step 1350), that range measurement is used to compute an error update, .delta.x, and updated error covariance, P(+), (step 1360). The error update and new error covariance are then used to update the inertial tracker and the Kalman predictor (step 1370). The procedure then involves determining whether further range measurements must be commanded at this time step (step 1380). As three range measurements are made for each pulse but only one range measurement is used per time step, there may be a backlog of range measurements that will be applied in the upcoming time steps. Therefore, a new range measurement may not be necessarily for several future time steps. Taking into account the expected time of flight of the next ultrasonic pulse (which in general is more than a single time step), the procedure determines if an IR command should be sent to a beacon at this time step (step 1380), the next beacon address is selected (step 1390) and, if so, the IR command to that beacon is sent (step 1395). The procedure then loops again starting at step 1320, waiting for the start of the next time interval.
Several alternative approaches can also be used. In the described embodiment, only one range measurement is used per time step. Alternatively, all available range measurements can be used at each time step if the processor 130 has sufficient computation capacity. This alternative approach is implemented by looping from step 1370 back to step 1350 until all the range measurements are accounted for. Alternatively, rather than applying the Kalman updates for each of the scalar range measurements in turn, all can be applied in a single step using similar update equations for vector observations and correlated observation noise. Also, rather than deferring processing of a range measurement until the next time step, the range measurements can be incorporated as they arrive, and not synchronized with the inertial tracker updates.」(23頁31行?25頁7行)
訳文[追跡処理の全体は、図13に示されるフローチャートによって要約することができる。最初に、既に概略を説明した方法を使用して、初期の位置および方向が取得される(ステップ1310)。この処理は、時間ステップ毎に一回実行されるループを挿入する。次の時間ステップのために待機した後(ステップ1320)、慣性測定値が受信されるとともに(ステップ1330)、追跡された変数x
、および誤差共分散Pが、慣性測定を用いることによって更新される(ステップ1340)。未処理の超音波レンジ測定が使用可能である場合(ステップ1350)、レンジ測定結果を使用して、誤差更新値δxと更新された誤差共分散P(+)を計算する(ステップ1360)。この誤差更新値および新たな誤差共分散を使用して、慣性追跡部やカルマン予測部を更新する(ステップ1370)。この処理は、さらに、レンジ測定を行うことが、当該時間ステップにおいて要求されるか否かを決定することを含む(ステップ1380)。三つのレンジ測定が各パルスについてなされるが、一回の時間ステップあたり一つのレンジ測定値のみが使用され、次回以降の時間ステップにおいて適用される複数のレンジ測定値の予備(バックログ)が存在することとなる。したがって、将来の何回かの時間ステップのためには、新たなレンジ測定は、必要がないものとできる。次の超音波パルスについて期待されるフライト時間(一般には、一つの時間ステップよりも長い)を考慮する場合、この処理によって、この時間ステップで1つの赤外線コマンドをビーコンに対して送信すべきか否かを決定し(ステップ1380)、次のビーコンのアドレスが選択され(ステップ1390)、その場合、そのビーコンへの赤外線コマンドが送信される(ステップ1395)。処理は、再び戻り、次の時間間隔まで待機して、ステップ1320において再度開始される。
いくつかの代わりの方法を用いることができる。説明された実施形態では、時間ステップあたり一つのレンジ測定値が使用される。もし、プロセッサ130が十分に計算能力を有していれば、これに代えて、総ての利用可能な複数のレンジ測定値を時間ステップ毎に使用することが可能である。この選択的な方法は、総ての複数のレンジ測定結果が考慮されるまで、ステップ1370からステップ1350へ繰り返して戻ることによって実行される。また、代替的に、各スケールレンジ測定別に、順番にカルマン更新部を適用するというよりも、各ベクトル観測器および修正された観測ノイズに対する類似の更新式を用いることによって、総てのレンジ測定に対して、一回のステップでカルマン更新部を適用することもできる。次の時間ステップまでに、レンジ測定の差分をとる処理をする代わりに、むしろ複数のレンジ測定値が到着する毎に複数のレンジ測定値を結合し、慣性追跡装置の更新と同時に行わないようにすることもできる。]
(j)「Another application involves sensing of motion of elements in an automobile, for example, in an automotive crash test. Referring to FIG. 17, the motion of a dummy 1720 within a crashing automobile 1710 can be tracked using tracking device 100. In addition, a second object, such as a point on the firewall can be tracked using an addition beacon 1730 using the inside-outside-in approach described above. This allows both tracking of the dummy in the reference frame of the automobile, and tracking of a point within the vehicle relative to the dummy.」(28頁19?28行)
訳文[他の応用は、例えば、自動車の衝突テストの際における、自動車内の要素の動きを検出することを含む。図17において、衝突する自動車1710内におけるダミー1720の動きは、追跡装置100を使用して、追跡することが可能である。さらに、付加的なビーコン1730を用いて、上述したインサイド-アウトサイド-イン方法を利用し、防御壁(ファイアウォール)上のポイントのような第2の対象物が追跡される。これは、自動車の基準フレームに対するダミーの位置追跡と、このダミーに関係する自動車内の所定ポイントの追跡とを共に可能とする。]
(k)「Other methods of range measurement can also be used, including acoustic phase, RF or optical time of flight, RF or optical phase, and mechanical cable extension.」(29頁14?16行)
訳文[音響位相、RFまたは光学的なフライトタイム、RFまたは光学的な位相、および機械的なケーブルの伸張量を含むような、他のレンジ測定方法を用いることが可能である。]

・記載(a)ないし(j)、及びFig.1,2,5,6,7,9,13,17より、
ア「部屋内を自由に移動するオペレータの位置及び方向を決定する方法であって、3つの超音波レンジ測定ユニット110が固定されたヘッドアップデイスプレイをオペレータが装着して、オペレータと3つの超音波レンジ測定ユニット110との部屋内における位置及び方向を決定するように、3つの超音波レンジ測定ユニット110を下記i)?iii)のように操作し、i)前記3つの超音波レンジ測定ユニット110が、部屋の天井に配置された少なくとも1つの超音波ビーコンから超音波信号を受信し、受信した信号の伝播時間を測定し、ii)前記測定された受信信号の伝播時間に基づいて、前記3つの超音波レンジ測定ユニット110について、少なくとも1つの超音波ビーコンとの間に延在する超音波伝播路の距離を推定し、iii)前記3つの距離推定値を用いて三角測量により部屋内における前記3つの超音波レンジ測定ユニット110の位置及び方向を推定し、さらに、前記3つの超音波レンジ測定ユニット110が固定されたヘッドアップデイスプレイが前記オペレータに装着されたことにより、前記3つの超音波レンジ測定ユニット110の位置及び方向から前記オペレータの位置及び方向を決定し、前記部屋内の前記超音波ビーコンからの超音波信号を受信することにより前記3つの超音波レンジ測定ユニット110の位置及び方向を繰り返し決定する当該3つの超音波レンジ測定ユニット110を用いて、前記オペレータが自由に移動したときに前記オペレータの位置及び方向を決定し、前記オペレータが前記部屋内を自由に移動したときに前記オペレータの位置及び方向をプロセッサ130で記憶する方法。」との技術事項が読み取れる。

・記載(b)、(k)より、
イ「距離の測定に光を用いても良い。」との技術事項が読み取れる。

以上の技術事項(ア)、(イ)を総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。
「部屋内を自由に移動するオペレータの位置及び方向を決定する方法であって、
3つの光測定ユニット110が固定されたヘッドアップデイスプレイをオペレータが装着して、
オペレータと3つの光測定ユニット110との部屋内における位置及び方向を決定するように、3つの光測定ユニット110を下記i)?iii)のように操作し、
i)前記3つの光測定ユニット110が、部屋の天井に配置された少なくとも1つの光源から光信号を受信し、受信した信号の伝播時間を測定し、
ii)前記測定された受信信号の伝播時間に基づいて、前記3つの光測定ユニット110について、少なくとも1つの光源との間に延在する光路の距離を推定し、
iii)前記3つの距離推定値を用いて三角測量により部屋内における前記3つの光測定ユニット110の位置及び方向を推定し、
さらに、前記3つの光測定ユニット110が固定されたヘッドアップデイスプレイが前記オペレータに装着されたことにより、前記3つの光測定ユニット110の位置及び方向から前記オペレータの位置及び方向を決定し、
前記部屋内の前記光源からの光信号を受信することにより前記3つの光測定ユニット110の位置及び方向を繰り返し決定する当該3つの光測定ユニット110を用いて、前記オペレータが自由に移動したときに前記オペレータの位置及び方向を決定し、
前記オペレータが前記部屋内を自由に移動したときに前記オペレータの位置及び方向をプロセッサ130で記録する方法。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)引用例2
また、引用例2である特開平7-191797号公報には、ポインティング装置及びその方法(発明の名称)に関し、次の事項(l)ないし(o)が図面とともに記載されている。
(l)「【請求項2】 レーザ出力装置と3次元位置測定装置を有し、基準点からの3次元位置座標と方向を時間的に連続に検出し、ディスプレイ画面上の少なくとも規定の3点を前記レーザ出力装置で指し示した時の3次元位置と方向データから、3次元位置測定装置座標系でのディスプレイ画面位置を計算により求めておき、3次元位置座標、方向情報とディスプレイ画面位置情報から画面上の指示点を計算することを特徴とするポインティング方法。」(特許請求の範囲)
(m)「【産業上の利用分野】この発明は、大画面への直接指示操作におけるポインティング装置に関するものである。」(段落【0001】)
(n)「【作用】本発明では、ポインティング入力部の3次元位置検出は指示操作者の側に固定した3次元位置検出センサで行い、ポインティング方向を表す直線と画面平面式の交点を計算してポインティング点とする。このとき3次元位置座標系での画面平面を表す式は操作前に求めて記憶しておく。3次元位置検出センサの固定位置の調整により、画面注目者の視界を遮らない離れた位置からのポインティングが可能となる。3次元位置座標、方向を時間的に連続に測定し、それらの変分が一定の基準内であれば指示対象点の移動でなく手の揺らぎと判断し、ポインティング対象点は固定されているとみなす。これにより揺らぎ分が除かれた、安定したポインティングが可能となる。」(段落【0006】)
(o)「【実施例】図2は本発明の実施例におけるポインティング装置の構成図、図3はポインティング装置の概観図、図4はポインティング入力部の側面図、下面図および上面図、図5はポインティング位置決定部での指示点決定処理の流れを示すフローチャート、図6はポインティング位置決定部での指示点の決定方法を表す図である。以下図面を用いて実施例の詳細な説明をする。
図2において本ポインティング装置の構成を説明する。レーザ出力装置201と3次元位置測定装置202からなるポインティング検出部203は、基準点からの3次元位置座標と方向を時間的に連続に測定する。ポインティング位置決定部204は、ポインティング検出部203から受け取った3次元位置座標、方向データと前回のデータとの変移の大きさを予め設定した基準値と比較して、基準値を超えた場合は指示対象位置が移動したとみなして画面上の指示点座標を計算する。ディスプレイ表示制御部205ではポインティング位置決定部204から指示点座標を受け取り、画面上の指示点にカーソルを表示する。また、指示点座標からポインティング対象画像を求め、ポインティング入力部のボタン操作に応じた画面操作を行う。
図3のポインティング入力部301、3次元位置測定装置信号発生部302、3次元位置測定装置コントロール部303が図2に示したポインティング検出部203の部分に相当する。ポインティング入力部301には図4に示されるようにレーザ出力部403と3次元位置測定装置信号受信部402が備わっている。3次元位置測定装置としては、例えばロジテック社の3Dマウスを用いればよい。図3のポインティング装置計算処理部304で、図2に示したポインティング位置決定部204、ディスプレイ表示制御部205の処理を行う。
操作者の任意の近傍に信号発生部302を固定した状態で、操作者はポインティング入力部301を保持して操作する。信号発生部302からの信号はポインティング入力部301の信号受信部402で受信され、ポインティング入力部301の位置、方向が信号発生部302を基準点として連続的に測定される。」(段落【0007】?【0010】)
(p)「画面上の指示点を求めるには、センサの基準点と画面との位置関係、つまりセンサ座標系における画面平面式がわかればよい。よって、指示操作の前にセンサ座標系における画面平面式を以下の方法で求め記憶する。
画面上に標的を表示し、レーザで標的をポインティングした時の3次元位置、方向を測定する。さらに同じ標的に対し、一度目とは異なる方向からポインティングし同様に3次元位置、方向を測定する。この2回のポインティングを表す2つの直線式の交点が、標的座標となるはずである。しかし2度ポインティングする際の誤差により2直線が交差しないことが起こるため、2直線が最接近する点での中点を標的座標とみなす。例えば、2度のポインティング時のデータが座標(x1,y1,z1)、方向ベクトル(a1,b1,c1)と、座標(x2,y2,z2)、方向ベクトル(a2,b2,c2)であれば、各ポインティング動作は以下の直線式で表される。
(x-x1)/a1=(y-y1)/b1=(z-z1)/c1 …(1)
(x-x2)/a2=(y-y2)/b2=(z-z2)/c2 …(2)
この2直線が最接近する時の式1、2のそれぞれの値をk1、k2と置き、2直線の距離が最小となる条件をあてはめると、k1、k2は以下の式で表される。
k1=(p3×k2-p4)/p1 …(3)
k2=(p1×p5-p3×p4)/(p1×p2-p3×p3) …(4)
ただし、p1?p5は以下の式を意味する。
p1=a12+b12+c12
p2=a22+b22+c22
p3=a1×a2+b1×b2+c1×c2
p4=(x1-x2)×a1+(y1-y2)×b1+(z1-z2)×c1
p5=(x1-x2)×a2+(y1-y2)×b2+(z1-z2)×c2
標的座標はk1,k2を用いて以下のように表せる。
((a1×k1+x1+a2×k2+x2)/2,(b1×k1+y1+b2×
k2+y2)/2,(c1×k1+z1+c2×k2+z2)/2)…(5)
前記操作を画面上の3点に対し繰り返し、得られた3点の標的座標を通る平面式をセンサ座標系における画面平面式として設定する。」(段落【0011】?【0015】)
(q)「ポインティング操作時には、ポインティング入力部の3次元位置座標と方向を時間的に連続に検出し、ポインティング位置決定部204で3次元位置座標と方向データから図5に示される手順でポインティング点を決定する。送られた3次元位置座標、方向データに対し、1度目のデータの場合には無条件に505へ進み、ポインティング方向を示す直線式と記憶した画面平面式との交点を計算し指示点座標を得る。
2度目以降に得られるデータの場合には、503で前回の3次元位置座標、方向データとの変移分と基準値との比較を行う。図6の左図に示すように時刻T1におけるポインティング入力部601の3次元位置座標と方向データと時刻T2におけるポインティング入力部604のデータの変移が基準値未満の場合、指示点が固定されていると判断し、指示点は時刻T1と同じ点603とする。図6の右図に示すように、時刻T1におけるポインティング入力部601の3次元位置座標と方向データと時刻T2’におけるポインティング入力部607のデータの変移が基準値以上の場合、指示点は移動したと判断し、時刻T2’のデータから求められる指示点608の座標を計算する。基準値は、距離と角度に関してあらかじめ設定した値である。指示点座標が更新されたときや、図3に示されるポインティング入力部のボタン401が押されたときは、画面上の指示点座標とボタンの押下情報がディスプレイ表示制御部205に送られる。ディスプレイ表示制御部205では、認識した指示点座標でのカーソル表示や、指示対象画像のハイライト表示、指示対象点とボタンの押下情報に応じた規定の画像操作を行う。
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、大画面に対し画面注目者の視界を遮ることなく離れた場所から揺らぎの押さえられた安定したポインティングが可能となる。」(段落【0016】?【0018】)

以上の記載事項(l)ないし(q)、及び図2ないし図6の記載によれば、引用例2から、次の発明を認定することができる。
「ディスプレイ画面305の標的に指示点608をレーザ光によりポインティングする方法であって、
ディスプレイ画面305の標的をポインティングするポインティング入力部301であって、3次元位置測定装置信号受信部402が固定して設けられたポインティング入力部301を操作者が保持し、
ディスプレイ画面305から離れた位置からディスプレイ画面305に向けてポインティング入力部301を操作者によってレーザ光によりポインティングし、
ディスプレイ画面305に対する3次元位置測定装置信号受信部402の3次元位置及び方向を決定するように、3次元位置測定装置信号受信部402を下記i)?iii)のように操作し、
i)前記3次元位置測定装置信号受信部402が、操作者の近傍に固定された3次元位置測定装置信号発生部302に設けられた3つの信号発生部から信号を受信し、
ii)前記受信された信号に基づいて前記ポインティング入力部301のポインティング方向を示す直線式を演算し、
iii)前記直線式と予め求めたセンサ座標系における画面平面式との交点から指示点座標を演算し、
さらに、前記3次元位置測定装置信号受信部402が前記ポインティング入力部301に固定して設けられていることにより、前記3次元位置測定装置信号受信部402の3次元位置及び方向から前記ポインティング入力部301の3次元位置及び方向を決定し、
前記ポインティング入力部301の3次元位置及び方向により、ディスプレイ画面305においてポインティングされた標的の指示点座標を決定し、指示点608としてレーザ光によりポインティングする方法。」(以下、「引用発明2」という。)

4.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア まず、本願発明における、「生き物」、「環境」、「事象」及び「オブジェクト」が意味するところについて、発明の詳細な説明には、それぞれ以下のように定義されている。
・「生き物」は、人及び動物を含む。ほ乳類の群に属する動物が第一に意味するところであるが、他の動物、たとえば鳥、魚、両生類及び爬虫類ならびに昆虫もまた含まれる。(段落【0004】)
・「環境」は、1個以上の物理的な物もしくはその部分及び/又は生き物ならびに物理的限界面を有する又は有しない随意のボリュームによって構成されることができる。ボリューム又は空間は、1個以上の固体オブジェクトを含むこともできるし、気体状態及び/又は液体状態にある種々の媒体を含むこともできる。また、ボリューム中が真空であることも可能であり、環境中には、静止状態及び可動性の両方のオブジェクト/事象が存在することができる。当該環境は、屋外及び屋内のいずれに位置してもよく、生き物に比較して大きい又は小さい広がりを有してもよい。(段落【0007】)
・「事象」は、生き物及び物に加えて、蒸気、液体、陰影、光、音源、波、振動、動き、広がる亀裂、通風、流れ、渦、乱流、変色及び色合いならびに他の同等の事象をも含む。(段落【0006】)
・「オブジェクト」とは、物理的な物及び生き物又はそれらの部分をいう。(段落【0005】)

イ 上記アを踏まえると、引用発明1の「部屋内」、「オペレータ」は、本願発明1の「環境」、「生き物」にそれぞれ相当する。

ウ また、引用発明1の「位置及び方向」、「3つの光測定ユニット110」、「ヘッドアップディスプレイ」、「光源」、「光信号」及び「光路」は、本願発明1の「少なくとも四つの空間自由度」、「変換器」、「位置決め部材」、「信号源」、「入射光信号」及び「照準線」にそれぞれ相当する。

エ また、以上イ、ウの相当関係を踏まえると、引用発明1の、「i)前記3つの光測定ユニット110が、部屋の天井に配置された少なくとも1つの光源から光信号を受信し、受信した信号の伝播時間を測定し、ii)前記測定された受信信号の伝播時間に基づいて、前記3つの光測定ユニット110について、少なくとも1つの光源との距離を推定し、iii)前記3つの距離推定値を用いて三角測量により部屋内における前記3つの光測定ユニット110の位置及び方向を推定し、」も、本願発明1の「i)前記変換器が、環境中の少なくとも3つの信号源から入射光信号を受信し、受信した信号の変換器表面上の相対的な入射位置を記録し、ii)前記記録された受信信号の相対的入射位置に基づいて、前記少なくとも3個の信号源のうちの少なくとも3つについて、各信号源と変換器との間に延在する照準線の方向を演算し、iii) 前記照準線の方向を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を演算し、」も、共に、「i)前記変換器が、環境中の信号源から入射光信号を受信し、ii)前記受信された3つの受信信号に基づいて、信号源と変換器の間に延在する照準線についての幾何的な量を演算し、iii)前記照準線の幾何的な量を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定」する点で共通する。

オ また、引用発明1における「前記オペレータが前記部屋内を自由に移動したときに前記オペレータの位置及び方向をプロセッサ130で記録する」も、本願発明1における「前記生き物が前記環境に対して動いたときに前記環境の属性を記録又はマッピングの少なくともいずれか一方を実行する」も、共に、「前記生き物が前記環境に対して動いたときに前記環境に関連したものを記録(又はマッピングの少なくともいずれか一方)を実行する」点で共通する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「環境に対する生き物の少なくとも四つの空間自由度を決定する方法であって、
変換器を含む位置決め部材に生き物を接続して、
生き物と変換器との環境に対する相対的な少なくとも四つの空間自由度を決定するように、変換器を下記i)?iii)のように操作し、
i)前記変換器が、環境中の信号源から入射光信号を受信し、
ii)前記受信された3つの受信信号に基づいて、信号源と変換器の間に延在する照準線についての幾何的な量を演算し、
iii)前記照準線の幾何的な量を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定し、
さらに、前記生き物及び前記位置決め部材が少なくとも四つの空間自由度に関して限られた範囲内において相互に機械的に接続されたことにより、前記変換器の少なくとも四つの空間自由度から前記生き物の少なくとも四つの空間自由度を決定し、
前記環境内の前記信号源からの入射光信号を受信することにより前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を繰り返し決定する当該変換器を用いて、前記生き物が動いたときに前記生き物の少なくとも四つの空間自由度を決定し、
前記生き物が前記環境に対して動いたときに前記環境に関連したものを記録(又はマッピングの少なくともいずれか一方)を実行することを特徴とする方法。」

(相違点)
・相違点1:変換器の環境に対する少なくとも四つの空間自由度を決定する手法について、
本願発明1は、受信した入射光信号の変換器表面上の記録された入射位置に基づいて、環境中の3つの信号源と変換器との間の3つの照準線の方向を演算することにより決定しているのに対し、引用発明1では、部屋の天井に配置された(本願発明1の「環境中の」に相当する。以下、同様。)少なくとも一つの光源(信号源)と3つの光測定ユニット110(変換器)との間の3つの光路(照準線)の距離を演算することにより決定している点。
・相違点2:生き物が環境に対して動いたときに記録する対象が、
本願発明1では、環境の属性であるとしているのに対し、引用発明1では、オペレータ(生き物)の位置及び方向である点。

(2)判断
前記相違点について検討する。
ア 相違点1について
一般に、変換器の環境に対する少なくとも四つの空間自由度を決定するために、信号として光を用い、受信した入射光信号の変換器表面上の記録された入射位置に基づいて、環境中の3つの信号源と変換器との間の3つの照準線の方向を演算することにより行うことは、下記に示すように周知な技術事項である(以下、「周知技術1」という。)
例えば原審で引用された請求人の特許出願に係る公表特許公報である特表平10-506331号公報(平成10年6月23日公表)には、制御部材1の環境に対する少なくとも四つの空間自由度を決定するために、3個の発光ダイオードM1?M3からの入射光を変換器10の画像面PSの画像Mibとして捕らえ、画像Mibの位置(xib、yib)に基づいて、変換器10から発光ダイオードM1?M3までの方向ベクトルV1、V2、V3を演算することにより行うことが示されており(図1,2及びこれに関する発明の詳細な説明の箇所参照のこと)、また、特表平11-513495号公報(平成11年11月16日公表)にも、少なくとも3個の光源21-25からの入射光をレンズユニット33を通して2次元アレイ32の像として捕らえ、それらの像に基づいてタッチツール18の空間位置及び方向を決定することが示されている(特許請求の範囲の請求項1、図3及びこれに関する発明の詳細な説明の箇所参照のこと、ここで、光源と変換器とを結ぶ照準線の方向を用いることの明示的な記載はないけれども、2次元アレイ上の光源の像がレンズユニット33を通して結像されていることから、この例においても、光源と変換器とを結ぶ照準線の方向を用いていることに外ならない。)。
そして、引用発明1も、周知技術1も、共に、生き物に接続された位置決め部材の少なくとも四つの空間自由度を決定するためのものであり、その手法として、受信された3つの受信信号に基づいて、信号源と変換器の間に延在する照準線についての幾何的な量を演算することにより行う点において共通するから、引用発明1に周知技術1を適用して、本願発明1のような構成とすることは、当業者であれば容易に相当し得たことである。

イ 相違点2について
一般に、例えばオペレータ等の「生き物」が、環境に対して動いたときに、例えば放射線量や温度等の「環境の属性」を記録又はマッピングを行うことは、いわゆるモニタリング測定として周知な技術である(以下、「周知技術2」という。)。
そして引用発明1も、周知技術2も、共に、生き物が前記環境に対して動いたときに前記環境に関連したものを記録する点で共通するから、生き物が環境に対して動いたときに記録する対象として、引用発明1の「オペレータの位置及び方向」に代えて、本願発明1のような、環境の属性とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

そして、本願発明1の作用効果も、引用発明1及び周知技術1,2から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1は引用発明1及び周知技術1,2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明2とを対比する。
ア まず、前記「4.(1)ア」を踏まえると、引用発明2の「ディスプレイ画面305の標的」、「操作者」は、本願発明2の「環境中の事象」、「生き物」にそれぞれ相当する。

イ また、引用発明2の「ポインティング入力部301」は、本願発明2の「指示(するための)部品」又は「位置決め部材」に相当し、引用発明2の「3次元位置測定装置信号受信部402」、「3次元位置及び方向」及び「操作者の近傍に固定された」は、本願発明2の、「変換器」、「少なくとも四つの空間自由度」及び「環境中」にそれぞれ相当する。

ウ また、引用発明2における「信号」も、本願発明2における「入射光信号」も、共に、「信号」である点で共通する。

エ 以上を踏まえると、引用発明2の、「i)前記3次元位置測定装置信号受信部402が、操作者の近傍に固定された3次元位置測定装置信号発生部302に設けられた3つの信号発生部から信号を受信し、ii)前記受信された信号に基づいて前記ポインティング入力部301のポインティング方向を示す直線式を演算し、iii)前記直線式と予め求めたセンサ座標系における画面平面式との交点から指示点座標を演算し、」も、本願発明2の「i)前記変換器が、環境中の少なくとも3つの信号源から入射光信号を受信し、ii)前記記録された受信信号の相対的入射位置に基づいて、前記少なくとも3個の信号源のうちの少なくとも3つについて、各信号源と変換器との間に延在する照準線の方向を演算し、iii) 前記照準線の方向を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を演算し、」も、共に、「i)前記変換器が、環境中の3つの信号源から入射信号を受信し、ii)前記受信された3つの受信信号に基づいて、信号源と変換器の間の幾何的な関係を演算し、iii)前記幾何的な関係を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定」する点で共通する。

オ さらに、引用発明2における「指示点座表」は2次元である。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「環境中の事象を位置決めする方法であって、
環境中の事象を指示するための部品に機械的に接続された変換器を含む位置決め部材に生き物を接続し、
少なくとも一つの指示位置から事象に向けて指示部品を生き物によって指示し、
環境に対する変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定するように、変換器を下記i)?iii)のように操作し、
i)前記変換器が、環境中の3つの信号源から入射信号を受信し、
ii)前記受信された3つの受信信号に基づいて、信号源と変換器の間の幾何的な関係を演算し、
iii)前記幾何的な関係を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定し、
さらに、前記指示部品及び前記変換器が少なくとも四つの空間自由度に関して限られた範囲内において相互に機械的に接続されたことにより、前記変換器の少なくとも四つの空間自由度から前記指示部品の少なくとも四つの空間自由度を決定し、 前記指示部品の少なくとも四つの空間自由度により、環境に対する指示された事象の少なくとも一つの空間自由度を決定することを含むことを特徴とする方法。」

(相違点)
・相違点1:変換器の環境に対する少なくとも四つの空間自由度を決定する手法について、
本願発明2は、環境中の3つの信号源と変換器との間の3つの照準線の方向を演算することにより決定しているのに対し、引用発明2では、ポインティング入力部301(指示部品)のポインティング方向を示す直線式を演算し、演算することにより決定している点。
・相違点2:空間自由度を決定するために用いている信号が、
本願発明2では、光信号であるのに対し、引用発明2では、信号であるとするにとどまる点。

(2)判断
前記相違点について検討する。
相違点1と相違点2とを併せて検討する。
まず、変換器の環境に対する少なくとも四つの空間自由度を決定するために、信号として光を用い、環境中の3つの信号源と変換器との間の3つの照準線の方向を演算することにより行うことは、周知技術1として周知である(前記「4.(2)ア」を参照のこと。)。
そして、引用発明2も、周知技術1も、共に、生き物に接続された位置決め部材の少なくとも四つの空間自由度を決定するためのものであり、その手法として、受信された3つの受信信号に基づいて、信号源と変換器の間に延在する照準線についての幾何的な量を演算することにより行う点において共通することも前記「4.(2)ア」と同様であり、よって、引用発明2に周知技術1を適用して、本願発明2のような構成とすることも、当業者であれば容易に相当し得たことである。
そして、本願発明2の作用効果も、引用発明2及び周知技術1から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明2は引用発明2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.本願発明3について
(1)対比
本願発明3と引用発明2とを対比する。
ア まず、前記「4.(1)ア」を踏まえると、引用発明2の「ディスプレイ画面305の標的」、「操作者」は、本願発明3の「環境に対するオブジェクト」、「生き物」にそれぞれ相当する。

イ また、引用発明2の「ポインティング入力部301」、「3次元位置測定装置信号受信部402」、「3次元位置及び方向」及び「操作者の近傍に固定された」は、本願発明3の「位置決め部材」、「変換器」、「少なくとも四つの空間自由度」及び「環境中」にそれぞれ相当する。

ウ また、引用発明2における「信号」も、本願発明3における「入射光信号」も、共に、「信号」である点で共通する。

エ また、上記ア、イの相当関係を踏まえると、引用発明2における「ディスプレイ画面305から離れた位置からディスプレイ画面305に向けてポインティング入力部301を操作者によってポインティングし、」も、本願発明3における「位置決め部材を、生き物により、オブジェクトと機械的に接触させ、」も、共に、「位置決め部材を、生き物により、オブジェクトとその位置関係を関連付け」る点で共通する。

オ 以上を踏まえると、引用発明2の、「i)前記3次元位置測定装置信号受信部402が、操作者の近傍に固定された3次元位置測定装置信号発生部302に設けられた3つの信号発生部から信号を受信し、ii)前記受信された信号に基づいて前記ポインティング入力部301のポインティング方向を示す直線式を演算し、iii)前記直線式と予め求めたセンサ座標系における画面平面式との交点から指示点座標を演算し、」も、本願発明3の「i)前記変換器が、環境中の少なくとも3つの信号源から入射光信号を受信し、ii)前記記録された受信信号の相対的入射位置に基づいて、前記少なくとも3個の信号源のうちの少なくとも3つについて、各信号源と変換器との間に延在する照準線の方向を演算し、iii) 前記照準線の方向を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を演算し、」も、共に、「i)前記変換器が、環境中の3つの信号源から入射信号を受信し、ii)前記受信された3つの受信信号に基づいて、信号源と変換器の間の幾何的な関係を演算し、iii)前記幾何的な関係を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定」する点で共通する。

カ さらに、引用発明2における「指示点座表」は2次元である。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「環境に対するオブジェクトの少なくとも二つの空間自由度を生き物によって決定する方法であって、
変換器を含む位置決め部材に生き物を接続し、
位置決め部材を、生き物により、オブジェクトとその位置関係を関連付け、
環境に対する変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定するように、変換器を下記i)?iii)のように操作し、
i)前記変換器が、環境中の3つの信号源から入射信号を受信し、
ii)前記受信された3つの受信信号に基づいて、信号源と変換器の間の幾何的な関係を演算し、
iii)前記幾何的な関係を用いて前記環境に対する前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定し、
さらに、変換器の少なくとも四つの空間自由度により位置決め部材の少なくとも四つの空間自由度を決定し、
位置決め部材の少なくとも四つの空間自由度からオブジェクトの少なくとも二つの空間自由度を決定し、
前記環境内の前記信号源からの入射光信号を受信することにより前記変換器の少なくとも四つの空間自由度を決定することを含むことを特徴とする方法。」

(相違点)
・相違点1:変換器の環境に対する少なくとも四つの空間自由度を決定する手法について、
本願発明3は、環境中の3つの信号源と変換器との間の3つの照準線の方向を演算することにより決定しているのに対し、引用発明2では、ポインティング入力部301(指示部品)のポインティング方向を示す直線式を演算し、演算することにより決定している点。
・相違点2:空間自由度を決定するために用いている信号が、
本願発明3では、光信号であるのに対し、引用発明2では、信号であるとするにとどまる点。
・相違点3:位置決め部材のオブジェクトに対する関連づけについて、本願発明3は、両者を機械的に接触することにより行っているのに対し、引用発明2では、レーザ光によりポインティングすることで非接触に行っている点。

(2)判断
前記相違点について検討する。

ア 相違点1と相違点2を併せて検討する。
まず、変換器の環境に対する少なくとも四つの空間自由度を決定するために、信号として光を用い、環境中の3つの信号源と変換器との間の3つの照準線の方向を演算することにより行うことは、周知技術1として周知である(前記「4.(2)ア」を参照のこと。)。
そして、引用発明2も、周知技術1も、共に、生き物に接続された位置決め部材の少なくとも四つの空間自由度を決定するためのものであり、その手法として、受信された3つの受信信号に基づいて、信号源と変換器の間に延在する照準線についての幾何的な量を演算することにより行う点において共通することも前記「4.(2)ア」と同様であり、よって、引用発明2に周知技術1を適用して、本願発明3のような構成とすることも、当業者であれば容易に相当し得たことである。

イ 相違点3について
一般に、ポインター等の「位置決め部材」をディスプレイ画面の標的等の「オブジェクト」に直接、機械的に接触して指し示す、いわば、機械的接触方式とすることは、レーザーポインターのような非接触方式とともに、周知な技術である(例えば、引用例2に記載の従来技術も、機械的接触方式のポインターである、以下、「周知技術3」という。)。
そして引用発明2も、周知技術3も、共に、位置決め部材を、生き物により、オブジェクトとその位置関係を関連付ける点で共通するから、引用発明2の非接触方式に代えて、本願発明3のような、機械的接触方式とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

そして、本願発明3の作用効果も、引用発明2及び周知技術1,3から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明3は、引用発明2及び周知技術1,3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び周知技術1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明2は、引用発明2及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
さらに、本願発明3も、引用発明2及び周知技術1,3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-18 
結審通知日 2011-03-22 
審決日 2011-04-05 
出願番号 特願2003-508881(P2003-508881)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 哲有家 秀郎  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 古屋野 浩志
森 雅之
発明の名称 環境に対する生き物の位置及び/又は向きを決定する方法  
代理人 木戸 一彦  
代理人 木戸 良彦  
代理人 木戸 一彦  
代理人 木戸 一彦  
代理人 木戸 良彦  
代理人 木戸 良彦  

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