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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1242193
審判番号 不服2008-32292  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-22 
確定日 2011-08-15 
事件の表示 特願2003-303779号「排ガス処理触媒および排ガス処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年3月17日出願公開、特開2005- 66559号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年8月28日の出願であって、平成20年3月17日付けの拒絶理由の通知に対して、同年5月16日付けで意見書および手続補正書が提出され、これに対して、同年11月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年5月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「下記一般式(1)
AM_(X)O_(Y) ・・・ (1)
(式中、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<x≦4、0<y≦8である。)
で表される複合酸化物を含み、
前記一般式(1)の複合酸化物に加えて、下記一般式(2)
Ln_(1-α)A_(α)MO_(3) ・・・ (2)
(式中、Lnはランタノイド族元素、Aはアルカリ金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<α≦0.5である。)
で表されるペロブスカイト複合酸化物をさらに含むことを特徴とする排ガス処理触媒。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された特開2003-239722号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
(a)「【請求項4】 複合酸化物触媒が、K、Ni、Sr、Co、La、Cu、V、Mn、Fe、Cs、Ba、Ce、Li、Pdのうちの少なくとも1種を含むペロブスカイト型(一般式:ABO_(3))構造の酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のディーゼルパティキュレートフィルター。
【請求項5】 複合酸化物触媒が、K、Ni、Cr、Mg、Co、Cu、V、Mn、Fe、Cs、Na、Li、Pd、Ba、Ce、Laのうちの少なくとも1種を含むスピネル型(一般式:AB_(2)O_(4))構造の酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のディーゼルパティキュレートフィルター。
【請求項6】 複合酸化物触媒が、K_(2)Mn_(4)O_(8)を主成分とすることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のディーゼルパティキュレートフィルター。
【請求項7】 複合酸化物触媒が一種以上の複合酸化物で2層以上の積層構造であることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載のディーゼルパティキュレートフィルター。」

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる微粒子を捕集し、且つNO_(X)も同時に除去できるディーゼルパティキュレートフィルターに関するものである。」

(c)「【0007】また、複合酸化物触媒は、K、Ni、Sr、Co、La、Cu、V、Mn、Fe、Cs、Ba、Ce、Li、Pdのうちの少なくとも1種を含むペロブスカイト型(一般式:ABO_(3))構造の酸化物、又は、K、Ni、Cr、Mg、Co、Cu、V、Mn、Fe、Cs、Na、Li、Pd、Ba、Ce、Laのうちの少なくとも1種を含むスピネル型(一般式:AB_(2)O_(4))構造の酸化物、又は、K_(2)Mn_(4)O_(8)を主成分とすることが好ましい。特にペロブスカイト型(一般式:ABO_(3))構造ではLa_(1-X)K_(X)CoO_(3)でXは0?0.4、より好ましくは0.05?0.2、La_(1-X)5K_(X)MnO_(3)でXは0?0.6、より好ましくは0.1?0.4、、また、スピネル型(一般式:AB_(2)O_(4))構造では特にCu_(1-X)K_(X)FeO_(4)でXは0?0.4、より好ましくは0.05?0.2、が好ましい。なお、上記いずれの式においても、AとBとが同一元素であることはない。」

(d)「【0029】担持させる方法としては、所定の組成になるように調整した硝酸塩や酢酸塩の混合水溶液に不織布、あるいは不織布と織布を組み合わせたものを浸漬させ、ゆっくり水を蒸発させる単純担持法、該水溶液に不織布、あるいは不織布と織布を組み合わせたものを浸漬させた後、引き上げ、乾燥、焼成する工程を繰り返す繰り返し担持法、繊維表面を水酸化処理し、所定の組成になるようにアルコキシドを溶かした有機溶媒に浸漬後焼成するアルコキシド法、アルコキシド法における焼成をオゾンによる低温酸化により行うアルコキシドオゾン分解法、有機溶媒中でミセル形成させ、低温で気相オゾン酸化させる逆相ミセル法、所定の組成になるように調整したアルコキシドを部分加水分解させて粘性ゾルを作製し、これに浸漬後焼成するゾルゲル法等がある。また、組成を変えて担持を繰り返すことで複合酸化物触媒が一種以上の複合酸化物で2層以上の積層構造とすることもできる。複合酸化物触媒は組成により触媒性能は異なるため、このような積層構造とすることにより、一種の単層構造に比べ触媒性能を向上させることが可能になる。」

(e)「【0038】
【発明の効果】本発明によれば、フィルターを構成するセラミックス繊維は、耐アルカリ性、耐酸化性に優れ、高い強度と触媒担持機能を有しているジルコニア含有無機繊維であり、この不織布、あるいは不織布と織布を組み合わせたものをフィルターの主構成構造とすることにより、通常のセラミックスにように脆く壊れることがなく耐久性に優れたフィルターが提供できる。また、この繊維に担持する複合酸化物触媒は、微粒子の完全酸化能とNO_(X)の分解能を有するため、微粒子とNO_(X)の同時除去が可能である。したがって、本発明により、1パスで微粒子とNO_(X)の同時除去ができ、コンパクトで長寿命のディーゼルパティキュレートフィルターを提供できる。」

上記(a)ないし(e)の記載事項より、引用例には、
「K、Ni、Cr、Mg、Co、Cu、V、Mn、Fe、Cs、Na、Li、Pd、Ba、Ce、Laのうちの少なくとも1種を含むスピネル型(一般式:AB_(2)O_(4))構造の酸化物を主成分とする複合酸化物、又は
K_(2)Mn_(4)O_(8)を主成分とする複合酸化物、又は
La_(1-X)K_(X)CoO_(3)(Xは0?0.4)を主成分とするペロブスカイト複合酸化物の一種以上の複合酸化物を2層以上の積層構造とすることで、一種の単層構造に比べ触媒性能(微粒子の完全酸化能とNO_(X)の分解能)を向上させることが可能である『ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる微粒子の完全酸化能とNO_(X)の分解能を有する複合酸化物触媒』。」の発明(以下、「引用例記載の発明)という。」が開示されている。

3.対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。
○本願発明の「下記一般式(1)
AM_(X)O_(Y) ・・・ (1)
(式中、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<x≦4、0<y≦8である。)
で表される複合酸化物」は、本願明細書の「【0023】
上記一般式(1)の複合酸化物において、遷移金属MはCr, Mn, Fe, Co又はNiである。遷移金属Mについては、アルカリ金属の炭酸塩とCr, Mn, Fe, Co又はNiの酸化物を混合することによって、任意に調製することができる。炭酸塩としてK_(2)CO_(3)を用いる場合には、得られる複合酸化物としては、例えばK_(2)CrO_(4)、K_(2)Mn_(4)O_(8)、KFeO_(2)、KCo_(2)O_(4)、KNiO_(2)が挙げられる。・・・」との記載からして、例えば「K_(2)Mn_(4)O_(8)(複合酸化物)」であり、これは、引用例記載の発明の「K_(2)Mn_(4)O_(8)を主成分とする複合酸化物」と同じになるので、
引用例記載の発明の「K_(2)Mn_(4)O_(8)を主成分とする複合酸化物」は、本願発明の「下記一般式(1)
AM_(X)O_(Y) ・・・ (1)
(式中、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<x≦4、0<y≦8である。)
で表される複合酸化物」の範疇に含まれる。

○本願発明の「下記一般式(2)
Ln_(1-α)A_(α)MO_(3) ・・・ (2)
(式中、Lnはランタノイド族元素、Aはアルカリ金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<α≦0.5である。)
で表されるペロブスカイト複合酸化物」は、例えば、La_(1-α)K_(α)CoO_(3)であって、0<α≦0.4とし、αをXに置き換えたとき、引用例記載の発明の「La_(1-X)K_(X)CoO_(3)(Xは0?0.4)を主成分とするペロブスカイト複合酸化物」と同じになるので、
引用例記載の発明の「La_(1-X)K_(X)CoO_(3)(Xは0?0.4)を主成分とするペロブスカイト複合酸化物」は、本願発明の「下記一般式(2)
Ln_(1-α)A_(α)MO_(3) ・・・ (2)
(式中、Lnはランタノイド族元素、Aはアルカリ金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<α≦0.5である。)
で表されるペロブスカイト複合酸化物」の範疇に含まれる。

○引用例記載の発明の「『ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる微粒子の完全酸化能とNO_(X)の分解能を有する複合酸化物触媒』」は、本願発明の「排ガス処理触媒」に相当する。

○引用例記載の発明の「K、Ni、Cr、Mg、Co、Cu、V、Mn、Fe、Cs、Na、Li、Pd、Ba、Ce、Laのうちの少なくとも1種を含むスピネル型(一般式:AB_(2)O_(4))構造の酸化物を主成分とする複合酸化物、又は
K_(2)Mn_(4)O_(8)を主成分とする複合酸化物、又は
La_(1-X)K_(X)CoO_(3)(Xは0?0.4)を主成分とするペロブスカイト複合酸化物の一種以上の複合酸化物を2層以上の積層構造とすることで、一種の単層構造に比べ触媒性能(微粒子の完全酸化能とNO_(X)の分解能)を向上させることが可能である」ことと、
本願発明の「下記一般式(1)
AM_(X)O_(Y) ・・・ (1)
(式中、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<x≦4、0<y≦8である。)
で表される複合酸化物を含み、
前記一般式(1)の複合酸化物に加えて、下記一般式(2)
Ln_(1-α)A_(α)MO_(3) ・・・ (2)
(式中、Lnはランタノイド族元素、Aはアルカリ金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<α≦0.5である。)
で表されるペロブスカイト複合酸化物をさらに含む」こととは、
「複合酸化物が、
下記一般式(1)
AM_(X)O_(Y) ・・・ (1)
(式中、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<x≦4、0<y≦8である。)
で表される複合酸化物と、
下記一般式(2)
Ln_(1-α)A_(α)MO_(3) ・・・ (2)
(式中、Lnはランタノイド族元素、Aはアルカリ金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<α≦0.5である。)
で表されるペロブスカイト複合酸化物である」という点で共通する。

上記より、本願発明と引用例記載の発明とは、
「複合酸化物が、
下記一般式(1)
AM_(X)O_(Y) ・・・ (1)
(式中、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<x≦4、0<y≦8である。)
で表される複合酸化物と、
下記一般式(2)
Ln_(1-α)A_(α)MO_(3) ・・・ (2)
(式中、Lnはランタノイド族元素、Aはアルカリ金属、MはCr, Mn, Fe, Co又はNi、Oは酸素を示し、0<α≦0.5である。)
で表されるペロブスカイト複合酸化物である、排ガス処理触媒。」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
本願発明では、
「下記一般式(1)
・・・(中略)・・・
で表される複合酸化物を含み、
前記一般式(1)の複合酸化物に加えて、下記一般式(2)
・・・(中略)・・・
で表されるペロブスカイト複合酸化物をさらに含む」のに対して、
引用例記載の発明では、
「K、Ni、Cr、Mg、Co、Cu、V、Mn、Fe、Cs、Na、Li、Pd、Ba、Ce、Laのうちの少なくとも1種を含むスピネル型(一般式:AB_(2)O_(4))構造の酸化物を主成分とする複合酸化物、又は
下記一般式(1)
・・・(中略)・・・
で表される複合酸化物、又は
下記一般式(2)
・・・(中略)・・・
で表されるペロブスカイト複合酸化物の一種以上の複合酸化物を2層以上の積層構造とする」点。

<相違点>について検討する。
引用例記載の発明は、「K、Ni、Cr、Mg、Co、Cu、V、Mn、Fe、Cs、Na、Li、Pd、Ba、Ce、Laのうちの少なくとも1種を含むスピネル型(一般式:AB_(2)O_(4))構造の酸化物を主成分とする複合酸化物」(以下、「(i)」という。)又は「一般式(1)・・・(中略)・・・で表される複合酸化物」(以下、「(ii)」という。)又は「一般式(2)・・・(中略)・・・で表されるペロブスカイト複合酸化物」(以下、「(iii)」という。)の一種以上の複合酸化物を2層以上の積層構造とすることで、一種の単層構造に比べ触媒性能(微粒子の完全酸化能とNO_(X)の分解能)を向上させることが可能であるものであり、そうである以上、触媒性能(微粒子の完全酸化能とNO_(X)の分解能)を向上させる観点より、別種である(i)(ii)(iii)の内のすべて若しくは二種を選択して3層若しくは2層の積層構造とする、具体的には、(ii)(iii)の二種を選択して2層の積層構造とする、つまり、
「下記一般式(1)
・・・(中略)・・・
で表される複合酸化物を含み、
前記一般式(1)の複合酸化物に加えて、下記一般式(2)
・・・(中略)・・・
で表されるペロブスカイト複合酸化物をさらに含む」ようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、本願の図面の【図12】【図13】で示されているように、MがCoである場合、PM燃焼開始温度と脱硝率について、「KM_(X)O_(Y)」と「KM_(X)O_(Y)+La_(0.7)K_(0.3)MO_(3)」を比較したとき、顕著な向上が見られないことから、「KM_(X)O_(Y)」と「La_(0.7)K_(0.3)MO_(3)」を組み合わせることにより生じる作用効果が顕著であるとはいえない。

したがって、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者であれば容易になし得ることである。
そして、本願発明の「PM燃焼開始温度を比較的低温にして脱硝率を高める」等の作用効果は、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項より当業者であれば十分に予測し得るものである。
よって、本願発明は、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし10に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-17 
結審通知日 2011-06-21 
審決日 2011-07-04 
出願番号 特願2003-303779(P2003-303779)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 隆介  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 目代 博茂
斉藤 信人
発明の名称 排ガス処理触媒および排ガス処理方法  
代理人 奥山 尚一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 有原 幸一  

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