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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1242197
審判番号 不服2009-14617  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-12 
確定日 2011-08-15 
事件の表示 特願2003-169822「携帯端末」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月 6日出願公開、特開2005- 6205〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成15年6月13日の出願であって、平成21年4月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、審判請求と同日に提出された平成21年8月12日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

(本願発明)
「前面ケースと背面ケースとで形成され、配線基板及びスピーカが内蔵されるケースと、
前記背面ケースとの間に支持リングを介在させ、前記配線基板に固定されて前記スピーカを支持すると共に、前記スピーカの背面部に連通させ前記スピーカの背面出力に共鳴する共鳴空間部を有するスピーカ支持部材と、
前記背面ケースに形成され、前記スピーカの前面出力を前記支持リング内から前記背面ケース外に放音させる第1の放音部と、
前記ケース内に設置された前記配線基板及び前記スピーカ支持部材を含むケース内部材に形成され、前記スピーカ支持部材の前記共鳴空間部から前記背面出力を通過させて前記前面ケース側に導く導音孔と、
前記前面ケースに形成され、前記導音孔よりの前記背面出力を前記前面ケース外に放音させる第2の放音部と、
を備えることを特徴とする携帯端末。」

2.引用発明及び周知技術
(1)原審の拒絶理由に引用された特開2001-230841号公報(以下、「引用例」という。)には「携帯端末」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】音声を発生する音源と、前記音源の音声主発生面方向の筐体に構成された主音孔と、前記音源の音声主発生面以外の他の面から発生した音声を外部に放出するよう筐体に設けられた1以上の副音孔を有する音声導出構造とを備え、前記音源の音声主発生面及び前記他の面から発生した音声をそれぞれ主音孔及び副音孔から外部に放出するようにしたことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】前記1以上の副音孔は前記音源の音声主発生面の反対側の筐体に設けられることを特徴とする請求項1記載の携帯端末。」
(2頁1欄、請求項1?2)

ロ.「【0019】以上、本発明の実施の形態における携帯端末の音声発生及び伝達手段を、その一例として、ハンズフリースピーカーを掲げて説明したが、本発明に使用する音源は携帯端末が内蔵するハンズフリースピーカーに限定するものではなく、例えばブザーや着信メロディーなどの音源に適用しても構わないことは言うまでもない。
【0020】以下、図1乃至図17に基づき、本発明の第1乃至第9の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態における携帯端末の構成を説明する。図1において、本実施の形態における携帯端末は、音源2を収納し音孔51を有する収納部41から、音源2の振動板3を有する正面(音声主発生面)側とは反対側の背面(正面の他の面)5に生じた音声を音孔51を通して導出し通過させるための経路61を設ける。クッションシート4は主音孔7側の音声の音漏れ、あるいは外部からのごみ、ほこりの進入等を防ぐ役割を果たす。
【0021】また、主音孔7は音源2の振動板3の正面に生じた音声をケース8から外部へ導出するための穴である。副音孔91は音源2の振動板3の背面5に生じた音声を、経路61を経てカバー10から外部へ導出するための穴である。この例では、副音孔91は振動板3の背面側の筐体を形成するカバー10に設けられている。蓋11は音源2を収納部41に収めこむための蓋である。導音管121は経路61を形成する部分である。また、音孔51を有する収納部41と経路61を構成する導音管121と副音孔91とにより音声導出構造を構成し、音源2、主音孔7及び音声導出構造により音声発生装置を構成する。以下、この音声導出構造及び音声発生装置の構成は、全ての実施の形態において同様である。」
(4頁5欄、段落20?21)

ハ.「【0023】次に、本発明の第1の実施の形態における携帯端末としての携帯電話を、図3に示すように、ケース8を下側にカバー10を上側にして、主音孔7側を伏せた状態で例えば卓上に置いた場合について、その動作を説明する。この場合、主音孔7側の音声は減衰されるが副音孔91側の音声が使用者側に指向しているため、ハンズフリー音声は主音孔7の音声の減衰を副音孔91の音声により補うことができる。
【0024】また、図4に示すように、ケース8を上側にし、カバー10を下側にし、副音孔91側を伏せた状態で、携帯電話を例えば卓上に置いた場合は、ハンズフリー音声として副音孔91から放出される音声は減衰するものの、主音孔7側からの音声が使用者側に指向して放出されるので、音声の減衰はカバーされるということが分かる。」
(4頁6欄、段落23?24)

ニ.「【0041】(第8の実施の形態)次に、図16を参照して、本発明の第8の実施の形態における携帯端末について説明する。図16において、本実施の形態における携帯電話は副音孔98に音声を導く構造としてホルダー19を設けるようにしたものである。ホルダー19は音源を収納する収納部の裏蓋と導音管128とを一体にしたものである。この実施の形態では、導音管128を有するホルダー19と副音孔98とにより音声導出構造を構成する。」
(6頁10欄、段落41)

ホ.「【0042】(第9の実施の形態)次に、図17を参照して、本発明の第9の実施の形態における携帯端末について説明する。図17において、本実施の形態における携帯電話は、基板20に実装する形で音源2が据え付けられ、その音源2の下の基板20に基板穴21が開けられ副音孔99に対し音声を導出するようにしたものである。また、その他の構成は図1に記載のものと同様であり、基板穴21を有する基板20と導音管129と副音孔99とにより音声導出構造を構成する。」
(6頁10欄、段落42)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
引用例の「携帯端末」の「筐体」は、「ケース」と「カバー」から形成されている。筐体に内蔵される「音源」は、例えば「携帯端末が内蔵するハンズフリースピーカー」であり(段落【0019】参照)、該スピーカーは「ホルダー」により支持され(【図16】及び段落【0041】参照)、ホルダーは、スピーカーの背面部に連通され該スピーカーの背面出力が導音される「空間部」を有している。
スピーカーとケースの間には「クッションシート」が介在されている。
スピーカーからの「前面出力」は、ケースに形成されたクッションシート内の「主音孔」から放音されている。
導音管はホルダーと一体形成されており、スピーカからの「背面出力」は、ホルダーの空間部から前記導音管を通過してカバーの「副音孔」から放音されている。

したがって、上記引用例には、特に上記摘記事項ニ.に記載されている『第8の実施の形態』に関し、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「ケースとカバーとで形成され、スピーカーが内蔵される筐体と、
前記ケースとの間にクッションシートを介在させ、前記ケースに固定されて前記スピーカーを支持すると共に、前記スピーカの背面部に連通させた空間部を有するホルダーと、
前記ケースに形成され、前記スピーカーの前面出力を前記クッションシート内から前記ケース外に放音させる主音孔と、
前記筐体内に設置されたホルダーと一体形成され、前記ホルダーの前記空間部から前記背面出力を通過させて前記カバー側に導く導音管と、
前記カバーに形成され、前記導音管よりの前記背面出力を前記カバー外に放音させる副音孔と、
を備える携帯端末。」

(2)本願出願の10年以上も前に公開された特開昭61-198852号公報(以下、「周知例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「通話音とサウンダとが同一の発音板より発生されてなり、該発音板の前気室が吸音抵抗体を介して受話口に連通し、該発音板の後気室がサウンダの共鳴室となるよう構成されてなることを特徴とする携帯用電話機の受話器構造。」
(1頁左下欄、特許請求の範囲)

ロ.「第1図は本発明の1実施例の断面図であって、受話器20の受話口4の後方には、並列した音孔26を有する隔壁25が設けられ、隔壁25とは制御空洞室27を介して対向して、並列した音孔24を有する隔壁23が設けられている。
隔壁23の後方には、通話音及びサウンダを発生する、共通した発音板7(例えばスピーカ)が、受話口4側に対して音圧レベルが低くなるよう後ろ向きに配設されている。したがって、前気室22は音孔24,制御空洞室27,音孔26を介して受話口4に連通している。
この発音板7の音圧レベルを低く抑えて受話口4に伝播させるため、制御空洞室27には吸音抵抗28(例えば吸音フェルト)が充填されている。
後気室21はサウンダの共鳴室を兼ねており、前気室22に比較して大きく形成されている。また、後気室21の上部にサウンダ音孔15を設けてある。」
(2頁右上欄20行目?左下欄16行目)

上記周知例の記載のように「携帯用電話機の受話器構造において、サウンダ音孔に連通する発音板(例えばスピーカ)の後気室をサウンダの共鳴室となるように構成する」ことは周知の技術である。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
まず、引用発明の「スピーカー」は、明らかに本願発明の「スピーカ」に相当している。
スピーカの前面出力及び背面出力を出力する部材に関し、引用発明の「主音孔」及び「副音孔」及び前記「主音孔」が設けられる「ケース」及び前記「副音孔」が設けられる「カバー」は、本願発明の「第1の放音部」及び「第2の放音部」及び前記「第1の放音部」が設けられる「背面ケース」及び前記「第2の放音部」が設けられる「前面ケース」に対応する構成であり、これらの部材間に実質的な差異はない。また、引用発明の「筐体」と本願発明の「ケース」との間にもそれぞれ実質的な差異はない。
本願発明の「支持リング」は本願明細書の段落【0033】において弾性体であるとされているから、引用発明の「クッションシート」と本願発明の「支持リング」とはいずれも「弾性体」である点で一致している。
引用発明の「前記ケースに固定されて前記スピーカーを支持すると共に、前記スピーカの背面部に連通させた空間部を有するホルダー」と本願発明の「前記配線基板に固定されて前記スピーカを支持すると共に、前記スピーカの背面部に連通させ前記スピーカの背面出力に共鳴する共鳴空間部を有するスピーカ支持部材」に関し、引用発明の「ホルダー」はスピーカを支持する部材であるから、本願発明の「スピーカ支持部材」に相当しており、
引用発明のホルダーは「背面ケース」に、本願発明のスピーカ支持部材は「配線基板」に固定されている点で相違するものの、両者は「ケースの内部で固定されて」いる点で共通しており、また、引用発明の「前記スピーカの背面部に連通させた空間部」と、本願発明の「前記スピーカの背面出力に共鳴する共鳴空間部」とは両者とも「前記スピーカの背面出力を導音する空間部」である点で一致しているから、引用発明と本願発明のかかる構成は「前記ケースの内部に固定されて前記スピーカを支持すると共に、前記スピーカの背面部に連通させ前記スピーカの背面出力を導音する空間部を有するスピーカ支持部材」である点で共通する。
引用発明の「前記筐体内に設置されたホルダーと一体形成され、前記ホルダーの前記空間部から前記背面出力を通過させて前記カバー側に導く導音管」と本願発明の「前記ケース内に設置された前記配線基板及び前記スピーカ支持部材を含むケース内部材に形成され、前記スピーカ支持部材の前記共鳴空間部から前記背面出力を通過させて前記前面ケース側に導く導音孔」に関し、引用発明の導音管はスピーカーの背面出力をカバー側に導く孔状のものであるから本願発明の「導音孔」に相当し、引用発明の導音管がホルダーと一体成形されており、本願発明の導音孔がケース内に設置された前記配線基板及び前記スピーカ支持部材を含むケース内部材に形成されている点で相違するものの、両者は「ケース内部材に形成」されている点で共通しているから、引用発明と本願発明のかかる構成は「前記ケース内に設置されたケース内部材に形成され、前記スピーカ支持部材の前記空間部から前記背面出力を通過させて前記前面ケース側に導く導音孔」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「前面ケースと背面ケースとで形成され、スピーカが内蔵されるケースと、
前記背面ケースとの間に弾性体を介在させ、前記ケースの内部に固定されて前記スピーカを支持すると共に、前記スピーカの背面部に連通させ前記スピーカの背面出力を導音する空間部を有するスピーカ保持部と、
前記背面ケースに形成され、前記スピーカの前面出力を前記弾性体内から前記背面ケース外に放音させる第1の放音部と、
前記ケース内に設置されたケース内部材に形成され、前記スピーカ支持部材の前記空間部から前記背面出力を通過させて前記前面ケース側に導く導音孔と、
前記前面ケースに形成され、前記導音孔よりの前記背面出力を前記前面ケース外に放音させる第2の放音部と、
を備える携帯端末。」

<相違点>
(1)「弾性体」に関し、本願発明は「支持リング」であるのに対し、引用発明は「クッションシート」である点。
(2)「スピーカ支持部材」に関し、本願発明のスピーカ支持部材は「ケース内部」の「配線基板」に固定されており、「前記スピーカの背面出力に共鳴する共鳴空間部」を有しているのに対し、引用発明では「ケース内部」の「背面ケース」に固定されており、スピーカの背面出力を導音する「空間部」は有するものの、該「空間部」が「背面出力に共鳴する共鳴空間部」であるかは不明な点。
(3)「導音孔」に関し、本願発明の導音孔は「配線基板及び前記スピーカ支持部材を含むケース内部材に形成」されており、「共鳴空間部」から前記背面出力を通過させて前記前面ケース側に導くものであるのに対し、引用発明の導音孔は「ホルダーと一体形成」されており、「空間部」から前記背面出力を通過させて前記前面ケース側に導くものであるが、該空間部が「共鳴空間部」であるかは不明である点。

4.判断
(1)上記相違点(1)の「弾性体」について
上記引用例には引用発明にかかるスピーカが円形である旨の説明はないものの、携帯電話機に用いられるスピーカが通常円形であることは当業者には周知のことであり、当該周知の事項に基づいて、スピーカの主音孔側周辺部に当接する弾性体からなる引用発明の「クッションシート」を本願発明のような「支持リング」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

(2)上記相違点(2)の「スピーカ支持部材」について
引用発明の基となる引用例の『第8の実施の形態』には、携帯端末の配線基板についての記載はないが、上記引用例の段落【0042】及び【図17】(上記摘記事項ホ.参照)には別の実施の形態である『第9の実施の形態』として、携帯端末の筐体内の基板を記載した構成が記載されており、音源であるスピーカーを該基板に固定して支持するようにした構成が開示されている。なお、該「基板」は本願発明の「配線基板」に相当するものである。
ここで引用発明では、スピーカーを支持するホルダーを筐体の内部に固定する際、ケースに対して固定するようにしているが、当業者であれば、上記『第9の実施の形態』に開示されたように筐体内の基板がスピーカーの背面に位置される構成であれば、ホルダー自体を基板に固定することによりケースの内部に固定する構成も容易に想到するものである。
また、上述の周知例に記載されているように「携帯用電話機の受話器構造において、サウンダ音孔に連通する発音板(例えばスピーカ)の後気室をサウンダの共鳴室となるように構成する」ことは周知の技術である。ここで、スピーカーとホルダー間に形成され副音孔に連通する引用発明の「空間部」は、周知例におけるサウンダ音孔に連通するスピーカの後気室に相当するから、当業者であれば、周知の技術を適用して該「空間部」を「背面出力に共鳴する共鳴空間部」と為すことを適宜なし得るものである。

(3)相違点(3)の「導音孔」について
上記したように、引用例の段落【0042】及び【図17】(上記摘記事項ホ.参照)には別の実施の形態である『第9の実施の形態』として、携帯端末の筐体内の基板を記載した構成が記載されている。そして、該『第9の実施の形態』には、音源であるスピーカーの背面出力を副音孔に導音するにあたり、基板の基板穴と導音管を用いる構成が記載されている。
ここで引用発明では、導音管をホルダーと一体形成するようにしているが、当業者であれば、上記『第9の実施の形態』に開示されたように筐体内の基板がスピーカーの背面に位置される構成であれば、ホルダーと一体形成された該導音管を、基板のスピーカ側のホルダー部分、基板の基板穴および基板の副音孔側の導音管部分の3つのケース内部材から構成されるように為すこと、すなわち、本願発明の如く、導音孔を「配線基板及び前記スピーカ支持部材を含むケース内部材に形成」することを適宜為し得るものである。
なお、「空間部」を「共鳴空間部」と為すことの容易性については相違点(2)において記載したとおりである。

したがって、各相違点は格別なものでなく、そして、本願発明に関する作用効果も引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。
5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-03 
結審通知日 2011-06-14 
審決日 2011-06-28 
出願番号 特願2003-169822(P2003-169822)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志土谷 慎吾浦口 幸宏  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 萩原 義則
宮田 繁仁
発明の名称 携帯端末  
代理人 畝本 正一  
代理人 畝本 正一  
代理人 畝本 正一  

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