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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C06D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C06D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C06D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C06D
管理番号 1242239
審判番号 不服2007-31925  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-26 
確定日 2011-08-16 
事件の表示 平成 9年特許願第529337号「非アジドガス発生組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月21日国際公開、WO97/29927、平成12年 5月23日国内公表、特表2000-506111〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、1997年1月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1996年2月14日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成16年10月1日付けで手続補正書が提出され、平成18年5月12日付けの拒絶理由通知に対して、同年11月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成19年8月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月26日に審判請求がなされるとともに、同年12月26日付けで手続補正がなされ、平成20年3月27日に審判請求書の手続補正書が提出され、平成22年3月19日付けで審尋がなされ、同年9月30日に回答書が提出されたものである。

第2 平成19年12月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年12月26日付けの手続補正を、却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成19年12月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である、
「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物であって、5-アミノテトラゾール、硝酸ストロンチウム、ならびにグアニジン硝酸塩、アミノグアニジン硝酸塩、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、ジアミノグアニジンン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩およびグアニジンピクリン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの高窒素非アジド成分を燃料として含み、該高窒素非アジド成分が全燃料組成物の10?80重量%である、前記ガス発生組成物」
を、
「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物であって、5-アミノテトラゾール、硝酸ストロンチウム、ならびにグアニジン硝酸塩、アミノグアニジン硝酸塩、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、ジアミノグアニジン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩およびグアニジンピクリン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの高窒素非アジド成分、ならびにシアノグアニジン;シアノグアニジンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、グアニジン塩若しくはトリアミノグアニジン塩;またはそれらの混合物を含有する改変剤を含み、高窒素非アジド燃料が全燃料組成物の10?80重量%の濃度であり、該改変剤が全ガス発生剤の0.1?25重量%の濃度である、前記ガス発生組成物」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ガス発生組成物」の成分として、さらに「シアノグアニジン;シアノグアニジンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、グアニジン塩若しくはトリアミノグアニジン塩;またはそれらの混合物を含有する改変剤」を「全ガス発生剤の0.1?25重量%の濃度」含むようにこれを限定するものを含むものであって、該補正は、願書に最初に添付した明細書の記載からみて新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件
本件補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討するに、以下の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものとはいえない。

(理由1) この出願の発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物及び周知例に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(理由2) この出願は、明細書の特許請求の範囲の記載が、下記のとおり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同項に規定する要件を満たしていない。



4 (理由1)について
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1には、上記1に指摘したとおり、
「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物であって、5-アミノテトラゾール、硝酸ストロンチウム、ならびにグアニジン硝酸塩、アミノグアニジン硝酸塩、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、ジアミノグアニジン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩およびグアニジンピクリン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの高窒素非アジド成分、ならびにシアノグアニジン;シアノグアニジンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、グアニジン塩若しくはトリアミノグアニジン塩;またはそれらの混合物を含有する改変剤を含み、高窒素非アジド燃料が全燃料組成物の10?80重量%の濃度であり、該改変剤が全ガス発生剤の0.1?25重量%の濃度である、前記ガス発生組成物」
が記載されている。
(以下、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明を「本願補正発明」といい、本件補正後の明細書を「本願補正明細書」という。)

(2)刊行物
a 特開平7-257986号公報(原査定における引用例3に同じ。以下、「刊行物1」という。)
b 特開平8-12481号公報(以下、「周知例2」という。)
c 特開平8-12482号公報(以下、「周知例3」という。)
d 特開平6-92769号公報(以下、「周知例4」という。)
e 米国特許第4386979号(以下、「周知例5」という。)

(3)刊行物の記載事項
ア 刊行物1には、以下の事項が記載されている。
1a(特許請求の範囲)
「【請求項1】 約20?約40重量%の燃料、約20?約80重量%の酸化剤、及び残余のガス発生剤相溶性成分を含み、前記燃料がテトラゾール及び/又はトリアゾール化合物を約50?約85重量%そして水溶性燃料を約15?約50重量%含み、前記酸化剤の少なくとも約20?100 重量%が遷移金属酸化物もしくは遷移金属酸化物の混合物であり、そして前記酸化剤の残余がアルカリ及び/又はアルカリ土類金属硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩又はこれらの混合物であるガス発生剤組成物。
【請求項2】 約0.2?約5重量%のバインダー材料をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】 前記バインダー材料が硫化モリブデンである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】 前記酸化剤が、前記ガス発生剤組成物の燃焼の際に前記硫化モリブデンの硫黄成分の実質的すべてをアルカリ金属硫酸塩に転化させるに十分なアルカリ金属硝酸塩を含む、請求項3記載の組成物。
【請求項5】 前記遷移金属酸化物がCuOである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】 前記遷移金属酸化物に加え、前記酸化剤がアルカリ及び/又はアルカリ土類金属硝酸塩を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】 前記水溶性燃料が、硝酸グアニジン、硝酸アミノグアニジン、硝酸ジアミノグアニジン、硝酸セミカルバジド、硝酸トリアミノグアニジン、二硝酸エチレンジアミン、二硝酸ヘキサメチレンテトラアミン、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1記載の組成物。
【請求項8】 前記水溶性燃料が硝酸グアニジンである、請求項7記載の組成物。
【請求項9】 車両の衝突の間に自動車エアバッグに多量のガスを形成しかつ車両の火災条件の間に多量のガスを発生させる方法であって、ハウジングを含む膨張ユニット、前記ハウジング内に含まれるガス発生剤、車両の衝突の間に前記ガス発生剤を発火させる手段、及びガス発生剤の燃焼によって発生したガスをエアバッグに排出する手段を提供することを含み、前記ガス発生剤が約20?約40重量%の燃料、約20?約80重量%の酸化剤、及び残余のガス発生剤相溶性成分を含み、前記燃料がテトラゾール及び/又はトリアゾール化合物を約50?約85重量%そして水溶性燃料を約15?約50重量%含み、前記酸化剤の少なくとも約20?100 重量%が遷移金属酸化物もしくは遷移金属酸化物の混合物であり、そして前記酸化剤の残余がアルカリ及び/又はアルカリ土類金属硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩又はこれらの混合物であり、前記ガス発生剤が約 155?約180 ℃の温度において自己発火され、それにより他の自己発火材料が存在せずに自己発火がおこる方法。
・・・」

1b(段落【0001】)
「本発明は、自動車エアバッグ及び急速な多量のガスの形成が必要な他の装置を膨張させるためのガス発生剤組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、テトラゾール及びトリアゾールが燃料成分であり、燃焼の間に毒性酸化物の形成を最小にするよう低い燃焼温度を達成するように酸化剤が選択されるガス発生剤組成物に関する。」

1c(段落【0004】)
「ガス発生剤システムは、燃料成分に加え、酸化剤を含む。アゾール燃料と共に使用することが提案された酸化剤は、硝酸、塩素酸及び過塩素酸のアルカリ及びアルカリ土類金属塩を含む。従来提案されたアゾール化合物をベースとするガス発生剤システムの問題は、その燃焼温度が高いことである。毒性酸化物、特にCO及びNO_(x) の発生レベルはガス発生反応の燃焼温度によりきまり、温度が高いほど形成されるこの毒性ガスのレベルが高い。従って、より低い温度で燃焼するガス発生剤混合物を製造することが望ましい。」

1d(段落【0014】?【0015】)
「水との加工を促進するため、燃料の一部、すなわち燃料の約15?約50重量%は水溶性である。水溶性酸化剤、例えば硝酸ストロンチウムも水加工を促進するが、そのような水溶性酸化剤をあてにしすぎると望ましくない高い燃焼温度になる傾向がある。水溶性燃料の特定の望ましい特性を以下に示す。この化合物は水に容易に溶解すべきである。すなわち25℃において少なくとも約30g/100ml H_(2)O である。この化合物はH、C、O及びNより選ばれる唯一の元素を含むべきである。二酸化炭素、窒素、及び水を形成するよう酸化剤と理論比で混合された場合に、このガス収率は混合物の100gあたり約1.8 モル以上のガスを形成すべきである。二酸化炭素、窒素、及び水を形成するよう酸化剤と理論比で混合された場合に、1000psi(70.3kg/cm^(2))における理想的チャンバー温度は低いべきであり、好ましくは約1800°K 未満である。
上記条件を最も理想的にみたす化合物はアミンもしくは置換アミンの硝酸塩である。好適な化合物は、限定するものではないが、硝酸グアニジン、硝酸アミノグアニジン、硝酸ジアミノグアニジン、硝酸セミカルバジド、硝酸トリアミノグアニジン、二硝酸エチレンジアミン、二硝酸ヘキサメチレンテトラアミン、及びこれらの混合物からなる群を含む。硝酸グアニジンが現在最も好ましい水溶性燃料である。」

1e(段落【0017】)
「遷移金属酸化物は唯一の酸化剤であってもよく、又はアルカリもしくはアルカリ土類金属硝酸塩、塩素酸塩及び過塩素酸塩並びにこれらの混合物を含む他の酸化剤と共に用いてもよい。これらのうち、硝酸塩(アルカリ及び/又はアルカリ土類金属塩)が好ましい。硝酸塩酸化剤はガス発生をわずかに高める。アルカリ金属硝酸塩は発火促進添加剤として特に有効である。」

1f(段落【0027】?【0029】)
「例1?3
以下の表に従ってガス発生剤組成物を配合する(量は硫化モリブデンを除く重量部である)。この組成物は水性スラリー(約70%固体)内で成分を混合し、乾燥し、この乾燥した混合物をふるい分けすることにより製造した。スラッグをプレスし、1000psi(70.3kg/cm^(2))において燃焼速度を測定した。

以下にこの組成物の特性を示す。



イ 周知例2には、以下の事項が記載されている。
2a(段落【0008】)
「本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、非アジド系ガス発生剤において、基剤であるアゾジカルボンアミド又は該基剤以外の成分であって該基剤の分解を誘起する成分を表面処理することにより、ガス発生剤としての好ましい性質を維持したまま該基剤の分解を防止し、該基剤を長期間に亙って安定に保持し得ることを見い出し、ここに本発明を完成するに至った。」

2b(段落【0011】)
「含窒素有機化合物としては、分子中に少なくとも1個の窒素原子を含む有機化合物を用いる。具体的には、例えば、アミノ基含有有機化合物、ニトラミン基含有有機化合物、ニトロソアミン基含有有機化合物等が挙げられる。アミノ基含有有機化合物の具体例としては、例えば、・・・、シアノグアニジン、ニトログアニジン、ジシアンジアミド、ヒドラジド類等を挙げることができる。・・・含窒素有機化合物は1種を単独で使用してもよく又は2種以上を併用してもよい。含窒素有機化合物は市販品をそのまま使用してもよい。含窒素有機化合物の形状、粒度等は制限されず、適宜選択して使用すればよい。」

ウ 周知例3には、以下の事項が記載されている。
3a(段落【0008】?【0009】)
「本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特願平6-18209号に具体的な開示のない特定の金属化合物をCO低減触媒として添加することにより、非アジド系ガス発生剤の好ましい性質を維持したまま、発生するガス中の一酸化炭素濃度を一層低濃度化し得ることを見い出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、含窒素有機化合物と酸化剤を有効成分とするガス発生剤であって、更に下記(i)乃至(iii)から選ばれる少なくとも1種のCO低減触媒を含有することを特徴とするエアバッグ用ガス発生剤に係る。」

3b(段落【0011】)
「本発明においては、含窒素有機化合物としては公知のものが使用でき、例えばアミノ基含有有機化合物、ニトラミン基含有有機化合物、ニトロソアミン基含有有機化合物、テトラゾール誘導体等を挙げることができる。より具体的にはアミノ基含有有機化合物としては、例えば、・・・、シアノグアニジン、ニトログアニジン、ジシアンジアミド、ヒドラジド類等を挙げることができる。・・・含窒素有機化合物は1種を単独で使用してもよく或いは2種以上を併用してもよい。含窒素有機化合物は市販品をそのまま使用してもよい。含窒素有機化合物の形状、粒度等は制限されず、適宜選択して使用すればよい。」

エ 周知例4には、以下の事項が記載されている。
4a(段落【0040】)
「このガス発生用薬剤の燃焼により窒素、二酸化炭素ならびに水蒸気(H_(2)O)といったガスが生成される。これらのガスの構成比はセルロース、酸化剤ならびにガラス化剤の構成比を変更することにより調整することができる。さらにガス発生用薬剤の燃焼により生成されるガスの構成比ならびにガスの収率はガス発生用薬剤に別の原料を含ませることにより調整が可能である。例えば窒素ガスの収率は1-ナイトログアニジン、シアノグアニジンまたはアジ化ナトリウムをガス発生用燃料へ添加することにより増加することが可能である。」

オ 周知例5には、以下の事項が記載されている。
5a(第2欄第7行?第10行 当審訳)
「本発明は、ガス発生組成物に関するものであり、そのガス発生組成物は燃料を第1成分、酸化剤を第2成分、そして冷却剤を第3成分とするものである。」

5b(第2欄第18行?第24行 当審訳)
「本発明のガス発生組成物は、無毒性のガスを、比較的低温で得るものである。加えて、該ガス発生組成物の成分は無毒性であり、該成分の反応物も無毒性であって化学的に中性であるものが得られるものである。」

5c(第2欄第39行?第51行 当審訳)
「本発明の第1成分として使用に適する化合物は、例えば、シアナミド化合物であり、例えば、具体的には、シアナミド、ジシアノジアミド、メラミン、シアナミド塩例えばシアナミドカルシウム塩(CaNCN)、シアナミド亜鉛塩(ZnNCN)及びこれに類する物、ハイトロジェンシアナミド塩例えばハイドロジェンシアナミドカルシウム塩(Ca(HNCN)_(2))、ハイドロジェンシアナミドナトリウム塩(NaHCN_(2))及びこれに類するもの、ニトロシアナミド塩例えばBa(NNO_(2)CN)_(2)やNH_(4)NNO_(2)CN、及び前記化合物の混合物である。好ましい化合物として含まれるのは、ハイドロジェンシアナミドナトリウム塩、ジシアノジアミド、シアナミドカルシウム塩及びその混合物である。」

5d(第5欄第64行?第6欄第54行 当審訳)
「類似の二成分系システムであるジシアノジアミド/硝酸ナトリウムは、19.8?29.2重量%のC2H4N4に対して、本質的に以下の反応式にしたがい、反応する。より少ないNa_(2)O及びより多いCO[審決注:CO_(2)の誤記と認める]が次のように得られる。

該式におけるa及びbは、モル量を示す。
上記した二成分系システムの結果を以下に示す。

第三成分としてAl_(2)O_(3).3H_(2)O及びSiO_(2)を上記実施例6に加えた場合には、次の反応式にしたがう。

該三成分システムにおける実施例は以下のとおりである。

[審決注:表中の「CH_(4)N_(4)」は「C_(2)H_(4)N_(4)」の誤記と認める]」

(4)引用発明
刊行物1の「例1?3」には、「可溶性燃料」として「硝酸グアニジン」、「酸化剤」として「酸化第二銅」、「燃料」として「5-アミノテトラゾール」、「酸化剤(低発火温度)」として「硝酸ナトリウム」、及び「二硫化モリブデン」を配合した、「ガス発生組成物」が示されている(摘記1f)。
また、そのガス発生組成物は、「自動車エアバッグに多量のガスを発生させる」ためのものであることが示されている(摘記1a)。
してみると、刊行物1には、
「自動車エアバッグに多量のガスを発生させるためのガス発生組成物であって、燃料として5-アミノテトラゾール、酸化剤として酸化第二銅及び硝酸ナトリウム、可溶性燃料として硝酸グアニジン、及び二硫化モリブデンを配合した、前記ガス発生組成物」
に係る発明が記載されている(以下、「引用発明1」という。)

(5)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「自動車エアバッグに多量のガスを発生させるためのガス発生組成物」とは、多量のガスを発生させてエアバッグ作動時にこれを膨らませるためのものであることは当業者に明らかであるから、本願補正発明の「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物」に相当する。
本願補正発明の「硝酸ストロンチウム」が「酸化剤」であることは当業者に明らかであるから、本願補正発明も引用発明1も、少なくとも「酸化剤」を含有するという点において一致している。
引用発明1の「硝酸グアニジン」は、本願補正発明の「グアニジン硝酸塩」で「高窒素非アジド成分」であることは、当業者に明らかである。
そして、本願補正発明も、引用発明1も、所定の燃焼剤及び酸化剤に加え、他の成分を含む点でも一致している。
してみると、本願補正発明と引用発明1とは、
「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物であって、5-アミノテトラゾール、酸化剤、高窒素非アジド成分であるグアニジン硝酸塩、ならびに残余の成分を含む、前記ガス発生組成物」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1) 酸化剤として、本願補正発明は「硝酸ストロンチウム」を含有させるのに対し、引用発明1は「酸化第二銅及び硝酸ナトリウム」を含有させる点
(相違点2) 燃焼剤として、本願補正発明は「高窒素非アジド成分」として、「グアニジン硝酸塩」だけでなく、「アミノグアニジン硝酸塩、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、ジアミノグアニジン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩およびグアニジンピクリン酸塩」からなる群から選ばれるものが規定されるのに対し、引用発明1は「硝酸グアニジン」が規定されるのみである点
(相違点3) 「高窒素非アジド成分」の含有量として、本願補正発明は「全燃料組成物の10?80重量%の濃度」であるとする規定があるのに対し、引用発明1はそのような規定がない点
(相違点4) 本願補正発明は、「シアノグアニジン;シアノグアニジンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、グアニジン塩若しくはトリアミノグアニジン塩;またはそれらの混合物を含有する改変剤を、全ガス発生剤の0.1?25重量%の濃度」含ませるとする規定があるのに対し、引用発明1はそのような規定がない点

(6)判断
相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明1を具体例として記載する刊行物1には、酸化剤として「酸化剤の残余が」「アルカリ土類金属硝酸塩」(摘記1a)であってよく、また、「水溶性酸化剤、例えば硝酸ストロンチウムも水加工を促進する」(摘記1d)ことが示されていることから、酸化剤として、アルカリ土類金属硝酸塩の1種である該硝酸ストロンチウムの使用も考慮できるという示唆がある。よって、引用発明1の酸化剤として、硝酸ストロンチウムを含むものとすることは、当業者であれば適宜なし得る事項である。

イ 相違点2について
刊行物1には「可溶性燃料」として、引用発明1に規定される硝酸グアニジンのほか、「水溶性燃料が、硝酸グアニジン、硝酸アミノグアニジン、硝酸ジアミノグアニジン・・・及びこれらの混合物からなる群より選ばれる」点が示されている(摘記1a)。該記載を参照し、引用発明1の可溶性燃料として、硝酸グアニジンに限ることなく、硝酸アミノグアニジン(本願補正発明のアミノグアニジン硝酸塩に相当)、硝酸ジアミノグアニジン(本願補正発明のジアミノグアニジン硝酸塩に相当)を含む群から選択可能なものとすることに、格別の創意を要するものではない。

ウ 相違点3について
刊行物1には、「水溶性燃料」の含有量が、「燃料の約15?50重量%」であることが示されている(摘記1a)。本願補正発明における「高窒素非アジド成分」に相当する「グアニジン硝酸塩」は、この「水溶性燃料」の具体例の1つであるから(摘記1a)、刊行物1には、「高窒素非アジド成分」である「グアニジン硝酸塩」の含有量を「燃料の15?50重量%」とすることが示されているといえる。そしてこの範囲は、本願補正発明で、「高窒素非アジド燃料」が「全燃料組成物の10?80重量%の濃度」である規定に完全に含まれるものである。よって、相違点3は、実質的な相違点ではない。

エ 相違点4について
ガス発生剤組成物において、燃料成分を複数種含有させ得ることは、例えば刊行物1の請求項1に「テトラゾール及び/又はトリアゾール化合物」及び「水溶性燃料」を含むことが記載され、また、刊行物1の請求項7に燃料の「混合物」とできることが記載されていることから、明らかである。
これに対して、エアバッグ用ガス発生剤のための非アジド系燃料として、シアノグアニジン(別名ジシアノジアミン)、は周知である。このことは、例えば周知例2の摘記2a及び2b、周知例3の摘記3a及び3b、周知例4の摘記4a、周知例5の摘記5aないし5cに示されている。そして、シアノグアニジンが水溶性であることは当業者に明らかである。
してみると、引用発明1の水溶性燃料として、周知の水溶性の非アジド燃料成分であるシアノグアニジンをさらに含有するものとすることは、当業者であれば容易になし得たものである。そしてその際の含有量を定めることは当業者が通常なす事項の範囲内にある。

(7)効果
本願補正発明は、「従来技術の非アジドガス発生組成物で可能であったよりも対応する低い濃度の固体分解物を有するより大きな容量の無毒性ガスを提供し、かつ低い毒性ガス形成とろ過可能なスラグ形成は維持できる」ものであることが記載される(「発明の技術背景」の欄第5段落)。
以下、この効果について検討する。

ア 「低い濃度の固体分解物を有する」効果について
該効果について、本願補正明細書に文言上の記載はあるが、「低い濃度の固体分解物」とは何であるか、その「濃度」とはいかにして計測されるか、どのようにして「低い」ものと評価できるか、いずれも記載がない。また、実施例を参照しても、「固体分解物」に含まれる可能性のある「塊」または「クリンカー」が形成された点までは記載があるが、その「濃度」及びその「濃度」を含む可能性のある「分量」に関して記載された例はない。よって、「低い濃度の固体分解物を有する」効果は、本願補正明細書に実質的に記載された効果ではない。

イ 「より大きな容量」のガスを提供する効果について
該効果について、本願補正明細書には、「化学量論的な基準非アジド組成物の5-アミノテトラゾール燃料を一部分だけグアニジン硝酸塩・・・で置き換えただけで、ガス質量分率およびガスモル数の有意な増加が同等のフレーム温度でおこる」ことが示されている(実施例の欄)。
これに対して、引用発明1のガス発生組成物は、5-アミノテトラゾール及びグアニジン硝酸塩をともに含有するものであるので、同様の、「ガス質量分率およびガスモル数の有意な増加が同等のフレーム温度でおこる」という効果は既に奏されたものであるといえる。

ウ 「無毒性ガス」「低い毒性ガス形成」のものである効果について
刊行物1には、「従来提案されたアゾ-ル化合物をベースとするガス発生剤システムの問題は、その燃焼温度が高いことである。毒性酸化物、特にCO及びNO_(x)の発生レベルはガス発生反応の燃焼温度によりきまり、温度が高いほど形成されるこの毒性ガスのレベルが高い。従って、より低い温度で燃焼するガス発生剤混合物を製造することが望ましい」(摘記1c)ことを前提に、「燃焼の間に毒性酸化物の形成を最小にするよう低い燃焼温度を達成」できた混合物であることが示される(摘記1b)。よって、引用発明1のガス発生組成物は、無毒性ガスを提供し、低い毒性ガス形成性のものであるといえ、本願補正発明の効果と同じである。

エ 「ろ過可能なスラグ形成」ができる効果について
刊行物1には、その具体例である引用発明1の燃焼速度を測定した結果において、「スラッグ」は「良好に形成」されたことが示されている(摘記1f)。スラッグすなわちスラグが「良好に形成」されたとはどのようなことであるか刊行物1には定義されていないので、通常求められる「良好」さであると考えられるところ、ガス発生組成物燃焼後に発生する「スラグ」に求められるものとは、フィルターでの捕集可能性すなわち「ろ過可能性」であることは当業者に明らかである。よって、刊行物1には、引用発明1の組成物が「ろ過可能なスラグ形成」をできる効果が既に記載されているといえる。

オ 効果についてのまとめ
よって、本願補正発明の効果は、刊行物1の記載及び技術常識より予測可能な範囲内にあるものである。

(8)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとはいえない。

5 (理由2)について
(1)はじめに
特許法第36条第6項は「第2項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号は「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号に規定する要件(いわゆる「サポート要件」)への適否については、「特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」[知財高裁特別部平成17年(行ケ)第10042号判決参照]であるとされている。以下、この観点に立って検討する。

(2)特許請求の範囲の記載について
本件補正後の請求項1には、上記1に指摘したとおり、
「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物であって、5-アミノテトラゾール、硝酸ストロンチウム、ならびにグアニジン硝酸塩、アミノグアニジン硝酸塩、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、ジアミノグアニジン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩およびグアニジンピクリン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの高窒素非アジド成分、ならびにシアノグアニジン;シアノグアニジンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、グアニジン塩若しくはトリアミノグアニジン塩;またはそれらの混合物を含有する改変剤を含み、高窒素非アジド燃料が全燃料組成物の10?80重量%の濃度であり、該改変剤が全ガス発生剤の0.1?25重量%の濃度である、前記ガス発生組成物」
が記載されている。
(以下、上記1に指摘したのと同様に、本件補正後の請求項1に記載された事項で特定される発明を「本願補正発明」といい、本件補正後の明細書を「本願補正明細書」という。)

(3)発明の詳細な説明の記載について
ア 本願補正明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
6a(発明の技術背景の欄 第1段落)
「本発明は、通常自動エアバッグと称される自動車における乗車人の安全制止装置を膨らませるために有用なガスを燃焼によってすばやく発生する比較的毒性のないガス発生組成物、より詳しくは、毒性の許容レベルにあるのみならず、これまで市販で入手可能な非アジド組成物で得られるよりも、同等の火炎温度での固体微粒子に対するより高いガス容積を有する燃焼物を生成する非アジドガス発生剤に関する。」

6b(発明の技術背景の欄 第2段落)
「非アジドガス発生組成物の欠点の一つは、燃焼中につくられる固体残渣の量と物理的性質である。燃焼の結果として生成される固体はろ過しなければならないか、さもなければ車の乗車人との接触を避けなければならない。従って、最小限の固体微粒子を生成し、なおかつ高速で安全装置を膨らませる適当な量の無毒性ガスを提供する組成物の開発が強く望まれている。」

6c(発明の技術背景の欄 第3段落)
「燃料成分に加えて、乗車人の安全制止装置を膨らませることに用いられる火工技術的組成物は、すばやい燃焼に必要な酸素を供給し、また発生する有毒ガスの量を減少する酸化剤、炭素や窒素の有毒酸化物を無毒なガスへの変換を促進する触媒、および燃焼中および燃焼直後に形成される固体および液体生成物を粒状物のようなろ過可能なクリンカーに塊状化するようなスラグ形成成分等を含有する。ガス発生組成物の点火性および燃焼性をコントロールするために使用される燃焼速度促進剤又は衝撃改変剤及び点火助剤等の他の任意の添加剤も開発されてきた。」

6d(発明の技術背景の欄 第5段落)
「本発明の目的は、従来技術の非アジドガス発生組成物で可能であったよりも、対応する低い濃度の固体分解物を有するより大きな容量の無毒性ガスを提供し、かつ低い毒性ガス形成とろ過可能なスラグ形成は維持できる自動エアバッグ安全制止装置を膨らませるための非アジドガス発生組成物を提供することである。」

6e(発明の要旨の欄)
「本発明の目的は、ガス発生組成物の燃料としてある種のグアニジン化合物及び誘導体、および他の窒素含量の高い化合物単独で、または他の窒素含量の高い非アジドと組み合わせて用いることによって達成される。
より具体的には、本発明は、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、グアニジン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩、グアニジンピクリン酸塩、シアヌル酸ヒドラジドおよびジアンモニウムビテトラゾール等からなる群から選ばれる一つまたはそれ以上の高窒素非アジド単独で、またはテトラゾール、ビテトラゾール、トリアジンおよびトリアゾール等の他の高窒素非アジドと組み合わせて使用することからなる。実用的観点から、本発明の組成物は、酸化剤、ガス変換触媒、衝撃改変剤、スラグ形成剤、点火助剤および配合助剤等の、非アジドガス発生組成物と一緒にこれまで使用されたいくつかの添加剤も含む。
本発明のガス発生組成物は、先行技術の組成物にこれまで用いられた方法により製造されるが、一般的に、しかし必ずということではないが、組み合わせのため選ばれる微粒成分の乾燥混合や圧縮固化を含む。しかし、本発明のある種のガス発生組成物は、所望により調製および生産段階でぬれた水溶性または非水溶性高窒素非アジド成分の取り込みを含む新方法を使用して製造される。このことは、製造におけるより危険な加工段階で、米国運輸省により爆発物というよりもむしろ可燃性固体として分類される材料の使用を可能にする。」

6f(発明の好ましい態様の詳細な説明の欄 第3段落)
「本発明の、好ましい複数種燃料組成物は、自動エアバッグ安全制止装置システムのガス発生剤に有用な燃料の設計により、より大きな多様性を可能にする。従って、低い燃焼固体に対する高いガス容積比のグアニジン化合物を、より低い点火しきい温度、より容易な点火性および改良された燃焼速度調製能等の有利な性質を有する他の燃料と個々の成分の望ましい性質を損なうことなく組み合わせることができ、相乗的に改良されたより優れた燃料を提供できることが発見された。実用的なガス発生組成物は、燃料に加えて、特に非アジド燃料の性能の向上を達成するために種々の他の成分を含む。他の材料と組み合わせて使用されるとき、本発明の好ましい主たるアジドまたは主たるアジド/第二アジドの単一または複数燃料は、全体として、全ガス発生組成物の少なくとも15重量%濃度で使用される。」

6g(発明の好ましい態様の詳細な説明の欄 第4段落)
「前記グアニジンを、単独でまたは他の公知の高窒素非アジドと組み合わせて、一般的に、燃焼に必要な全てでなくてもほとんどの酸素を供給するように設計された酸化剤と組み合わせて用いる。適当な酸化剤は当該技術で公知であり、一般的には、無機亜硝酸塩、硝酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、オキシド、パーオキシド、過硫酸塩、クロム酸塩および過クロム酸塩を含む。好ましい酸化剤は、硝酸ストロンチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸バリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウムおよびそれらの混合物等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の硝酸塩、塩素酸塩および過塩素酸塩である。酸化剤は、一般的にそれらの濃度で用いられる。酸化剤は、一般的には全ガス発生組成物の約10-85重量%の濃度、好ましくは全ガス発生組成物の25-75重量%の濃度で用いられる。」

6h(発明の好ましい態様の詳細な説明の欄 第5段落)
「本発明の燃料の燃焼は、推進薬が燃焼するときの温度感受性や速度に影響する衝撃改変剤の添加によってコントロールすることができる。そのような衝撃改変剤は先ず固体ロケット推進薬のために開発されたが、膨張装置のガス発生剤に有用であることが見い出された。本発明の組成物において有用な衝撃改変剤は、シアノグアニジンおよびアルカリ、アルカリ土類および遷移金属、アンモニウム、グアニジン、およびトリアミノグアニジンの塩を含むシアノグアニジンの無機および有機塩、およびそれらの混合物を含む。シアノグアニジンとシアノグアニジン塩の混合物は、本発明のガス発生組成物の衝撃改変剤としても非常に有用であることが発見された。適宜に使用される無機衝撃改変剤は、元素周期律表(IUPACで開発され、CRCプレスから出版、1989年)のグループ4-12のオキシドおよびハライド;硫黄および金属スルフィド;遷移金属クロム塩;アルカリ金属およびアルカリ土類金属ボロヒドリドを含む。グアニジンボロヒドリドおよびトリアミノグアニジンボロヒドリドも衝撃改変剤として使用されてきた。有機金属衝撃改変剤は、メタロセン、フェロセンおよび金属アセチルアセトナトを含む。他の好ましい衝撃改変剤は、ニトログアニジン、グアニジンクロム酸塩、グアニジン重クロム酸塩、グアニジン三クロム酸塩、グアニジン過クロム酸塩を含む。衝撃改変剤を全ガス発生組成物の約0.1-25重量%の濃度範囲で用いられる。」

6i(発明の好ましい態様の詳細な説明の欄 第11段落)
「本発明の新規燃料と一緒の使用される先に記載された種々の成分はこれまで他の非アジド燃料組成物において用いられてきた。本発明に有用な種々の添加剤を記載する非アジド燃料組成物を含む参照文献には、米国特許No.5,035,757、5,084,118、5,139,588、4,948,439、4,909,549および4,370,181があり、ここにそれらの教示するところを参照して示す。その技術教示からおよび当業者に明らかなように、二つまたはそれ以上の添加剤の機能を単一の組成物に組み合わせることは可能である。従って、テトラゾール、ビテトラゾールおよびトリアゾールのアルカリ土類金属塩が燃料成分として作用するのみならず、スラグ形成剤として使用される。硝酸ストロンチウムは酸化剤およびスラグ形成剤として作用するのみならず、衝撃改変剤、点火助剤、濃縮剤および工程助剤として有効である。」

6j(発明の好ましい態様の詳細な説明の欄 実施例40)
「実施例40 (LTS-32)
重量%で以下の組成を有する硝酸バリウム、ニトログアニジン、シアノグアニジンのナトリウム塩およびシアノグアニジンの混合物を製造した:硝酸バリウム51.00%、ニトログアニジン34.00%シアノグアニジンのナトリウム塩10.00%およびシアノグアニジン5.00%。これらの粉末を別々に粉砕し、乾燥して混合した。ヒューズおよび無煙火薬Dupont 4227を用いて常圧で点火すると、組成物は非常に早く一定して完全に燃焼し、硬い塊を残した。」

6k(発明の好ましい態様の詳細な説明の欄 表5に続く段落?最終段落)
「前記の実施例は、非毒性ガスの有意な増加が5-アミノテトラゾールおよび硝酸ストロンチウムを含む先行技術の基準組成物の非常に高いガス産出状態と比べて許容できかつ同等のフレーム温度で実現されることを示している。基準5-アミノテトラゾール燃料成分(実施例11-13)をグアニジン硝酸塩で置き換えると、ずっと高いガス質量分率になる。このことは、容積制限のある適用において要求される推進薬のより低い重量と容積を可能にする。加えて、分解中に形成される微粒子の濃度が減少するのでより少ない固体をガスの流れからろ過すればよい。また、問題にならないレベルで、窒素酸化物および一酸化炭素のような有毒ガスが、前記の実施例で示された触媒を使用することなく好ましい組成物によって燃焼中に生成されることは当業者に明らかであろう。
化学量論的な基準非アジド組成物の5-アミノテトラゾール燃料を一部分だけグアニジン硝酸塩(表1の実施例2、3、4および5)で置き換えただけで、ガス質量分率およびガスモル数の有意な増加が同等のフレーム温度でおこる。また、同じ結果が基準アミノテトラゾール成分に対してニトログアニジンのみ(表3の実施例1-5)またはグアニジン硝酸塩と組み合わせて置き換えること(実施例17および18)によって達成される。さらに、ガス収率の有意な改善がすこし高いが許容されるフレーム温度でおこる。またフレーム温度を実質的にガス分率またはガス収率に変化なしにニトログアニジンに対してより多くのグアニジン硝酸塩の置き換えによって下げられる。ニトログアニジンおよび/またはニトロアミノグアニジンの使用は、容積制限のある適用における使用のためのガス発生組成物の全体の密度を高めることにとって魅力的である。加えて、ニトログアニジンを燃料成分として使用すると、ガス発生組成物のフレーム温度が、先行技術の5-アミノテトラゾールがベースの組成物の状態と比較して同等のモル数のガス産出において有意に低い。基準組成物の5-アミノテトラゾール燃料を部分的にニトログアニジンまたはニトログアニジンとグアニジン硝酸の組み合わたもので置き換えると、同等のフレーム温度で100gの推進薬に対するガスモル数の有意な増加がおこる(実施例6および7)。
またニトログアニジンを本発明の実施例として使用された全ての実験ガス発生組成物に入れると、組成物の点火性が燃焼速度同様大いに改善されることが発見された。ガス収率および生成ガスのモル数の有意な増加に加えて、先行技術のアジドまたは非アジドのガス発生組成物と比較して、ガス発生剤に対する複数種成分燃料として5-アミノテトラゾールとグアニジン硝酸塩およびニトログアニジン、またはニトロアミノグアニジンとの組み合わせの使用が、燃焼速度、燃焼速度圧力指数、点火性および燃焼の際生成されるスラグおよびクリンカーの量および物理的かたちを仕立てることに対してより大きな精度をあたえる。さらに、本発明の実施例に記載されたようにグアニジン硝酸塩および/またはニトログアニジンおよび/または5-アミノテトラゾール等の異なる密度をもつ成分を含む複数種成分燃料の使用が、先行技術の単一燃料について示されたように要求される反応物の化学量論を維持しながら、生じるガス発生組成物密度を仕立てたり、調整したりすることに対してより大きな可能性をあたえる。
本発明において明らかにされたガス発生組成物のための複数種または単一の燃料の使用に対して上述したニトログアニジンおよびグアニジン硝酸塩の前記の望ましいかつ特異な性質の発見を非常に重要な知見であると考える。従って、ニトログアニジンを本発明の目的に対する燃料成分としてまたは複数種目的燃料、衝撃改変剤、点火助剤、触媒および濃縮剤として分類できる。
実施例19は、酸化剤としての硝酸ストロンチウムとともに評価するとジアンモニウムビテトラゾールが5-アミノテトラゾールに対すると同等の温度でガス質量分率をあたえる燃料を提供することを示す。」

(4)判断
ア 本願補正発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であるか
本願補正発明は、その成分として「5-アミノテトラゾール、硝酸ストロンチウム、ならびにグアニジン硝酸塩、アミノグアニジン硝酸塩、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、ジアミノグアニジン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩およびグアニジンピクリン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの高窒素非アジド成分、ならびにシアノグアニジン;シアノグアニジンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、グアニジン塩若しくはトリアミノグアニジン塩;またはそれらの混合物を含有する改変剤」を含むものである。
その成分を機能で分類すると、
燃料が「5-アミノテトラゾール」及び「グアニジン硝酸塩、アミノグアニジン硝酸塩、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、ジアミノグアニジン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩およびグアニジンピクリン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの高窒素非アジド成分」であり、
酸化剤が「硝酸ストロンチウム」であり、
改変剤(衝撃改変剤)が「シアノグアニジン;シアノグアニジンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、グアニジン塩若しくはトリアミノグアニジン塩;またはそれらの混合物」であるといえる。

ここで発明の詳細な説明を参照すると、「本発明は、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、グアニジン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩、グアニジンピクリン酸塩、シアヌル酸ヒドラジドおよびジアンモニウムビテトラゾール等からなる群から選ばれる一つまたはそれ以上の高窒素非アジド単独で、またはテトラゾール、ビテトラゾール、トリアジンおよびトリアゾール等の他の高窒素非アジドと組み合わせて使用することからなる。実用的観点から、本発明の組成物は、酸化剤、ガス変換触媒、衝撃改変剤、スラグ形成剤、点火助剤および配合助剤等の、非アジドガス発生組成物と一緒にこれまで使用されたいくつかの添加剤も含む。」(摘記6e)ことが示されているので、「燃料」に加えて、添加剤として「酸化剤」及び「衝撃改変剤」を含ませる点については、発明の詳細な説明に記載されているといえる。
また、発明の詳細な説明には、上記の「燃料」「酸化剤」及び「衝撃改変剤」に分類される、本願補正発明で規定される各成分は、それぞれ、燃料として、酸化剤として、また衝撃改変剤として、発明の詳細な説明に例示された成分に含まれる点が示される(摘記6e、摘記6g、摘記6h)。

しかしながら、発明の詳細な説明における改変剤の記載は、改変剤が、従前より使用される任意の添加剤の一つであることに関しての一般的な記載があるにとどまり、本願補正発明に係る特定の化合物(群)の組み合わせのものとする点は、発明の詳細な説明には、一般的な記載としても、具体的な例すなわち実施例としても、示されていない。

よって、本願補正発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。

イ 本願補正発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか
(ア)課題
発明の詳細な説明には、「これまで市販で入手可能な非アジド組成物」には「燃焼中につくられる固体残渣の量と物理的性質」に「欠点」があることから、「最小限の固体微粒子を生成し、なおかつ高速で安全装置を膨らませる適当な量の無毒性ガスを提供する組成物」を得ることを「目的」としたものであることが指摘されている(摘記6b)。
該目的のうち、「高速で安全装置を膨らませる」こととは、「これまで市販で入手可能な非アジド組成物で得られるよりも、同等の火炎温度での固体微粒子に対するより高いガス容積を有する燃焼物を生成する非アジドガス発生剤」とすること(摘記6a)とも言い換えられている。
また、該目的は、「従来技術の非アジドガス発生組成物で可能であったよりも、対応する低い濃度の固体分解物を有するより大きな容量の無毒性ガスを提供し、かつ低い毒性ガス形成とろ過可能なスラグ形成は維持できる自動エアバッグ安全制止装置を膨らませるための非アジドガス発生組成物を提供すること」(摘記6d)とも、言い換えられている。

(イ)検討
本願補正発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内であるものというには、たとえば、発明の詳細な説明において、本願補正発明の効果を示唆する記載があれば、その認識の一助になると考える。
よって、本願補正発明の効果の示唆があるかどうかについて、以下検討する。
実施例の結果に関する考察を示す箇所において、本願補正発明の構成成分である5-アミノテトラゾール、高窒素非アジド成分及び硝酸ストロンチウムを含有させた例に関連した記載として、「化学量論的な基準非アジド組成物の5-アミノテトラゾール燃料を一部分だけグアニジン硝酸塩(表1の実施例2、3、4および5)で置き換えただけで、ガス質量分率およびガスモル数の有意な増加が同等のフレーム温度でおこる」効果、「基準組成物の5-アミノテトラゾール燃料を部分的にニトログアニジンまたはニトログアニジンとグアニジン硝酸の組み合わたもので置き換えると、同等のフレーム温度で100gの推進薬に対するガスモル数の有意な増加がおこる(実施例6および7)」効果、「ニトログアニジンを本発明の実施例として使用された全ての実験ガス発生組成物に入れると、組成物の点火性が燃焼速度同様大いに改善される」効果、「先行技術のアジドまたは非アジドのガス発生組成物と比較して、ガス発生剤に対する複数種成分燃料として5-アミノテトラゾールとグアニジン硝酸塩およびニトログアニジン、またはニトロアミノグアニジンとの組み合わせの使用が、燃焼速度、燃焼速度圧力指数、点火性および燃焼の際生成されるスラグおよびクリンカーの量および物理的かたちを仕立てることに対してより大きな精度をあたえる。さらに、本発明の実施例に記載されたようにグアニジン硝酸塩および/またはニトログアニジンおよび/または5-アミノテトラゾール等の異なる密度をもつ成分を含む複数種成分燃料の使用が、先行技術の単一燃料について示されたように要求される反応物の化学量論を維持しながら、生じるガス発生組成物密度を仕立てたり、調整したりすることに対してより大きな可能性をあたえる。」効果が指摘される(摘記6k)。
しかしながら、本願補正発明に規定される、特定成分から選ばれる改変剤を含有させることに関する効果については記載されていない。
実施例40(摘示6j)には、発明の詳細な説明に開示される実施例のなかで唯一、本願補正発明で規定する特定の改変剤である「シアノグアニジンのナトリウム塩およびシアノグアニジンの混合物」を含有させた組成物の例が示される。この例においては「組成物は非常に早く一定して完全に燃焼し、硬い塊を残した」ことが示されるが、この例は「硝酸バリウム、ニトログアニジン」との組成物への添加であり、該効果がどの成分によりどのように奏されたものといえるか不明である。
しかも、上記した課題及び効果の摘記事項を比較してみると、発明の詳細な説明には、上記課題は、本願補正発明の構成成分である5-アミノテトラゾール、高窒素非アジド成分及び硝酸ストロンチウムを含有させた実施例において考察された上記効果において既に達成されているかのように記載されているものであり、改変剤をさらに添加したことによって達成されるべき課題及び効果を類推させる記載は見あたらない。

してみると、発明の詳細な説明において、本願補正発明の構成成分である特定成分から選ばれる改変剤に対応する課題及びその効果は、不明である。よって、本願補正発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。

ウ 本願補正発明が、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか
発明の詳細な説明には、「実用的観点から、本発明の組成物は、酸化剤、ガス変換触媒、衝撃改変剤、スラグ形成剤、点火助剤および配合助剤等の、非アジドガス発生組成物と一緒にこれまで使用されたいくつかの添加剤も含む」ことが示される(摘記6e)。そのため、本願補正発明における「衝撃改変剤」の添加は、一見、技術常識であるかのようにみえる。
確かに、「衝撃改変剤」自体は既知のものであるといえる。しかしながら、発明の詳細な説明に「本発明の組成物において有用な衝撃改変剤は、シアノグアニジンおよびアルカリ、アルカリ土類および遷移金属、アンモニウム、グアニジン、およびトリアミノグアニジンの塩を含むシアノグアニジンの無機および有機塩、およびそれらの混合物を含む。シアノグアニジンとシアノグアニジン塩の混合物は、本発明のガス発生組成物の衝撃改変剤としても非常に有用であることが発見された。」(摘記6h)とあるとおり、本願補正発明で規定する特定の化学物質群すなわち「シアノグアニジン;シアノグアニジンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、グアニジン塩若しくはトリアミノグアニジン塩;またはそれらの混合物」は、本願補正発明のような「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物」に対する衝撃改変剤として、「発見」されたものであり、技術常識に属するものであるとはいえない。
ゆえに、本願補正発明は、当業者が出願時の技術常識に照らしても、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。

(5)まとめ
したがって、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。
よって、この出願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではないので、この出願は同法同項に規定された要件を満たしていない。そうすると、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるとはいえない。

6 むすび
以上のとおり、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合しないから、その余を検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。


第3 本願発明について
平成19年12月26日付けの手続補正は、上記第2のとおり却下すべきものであるので、この出願の請求項に係る発明は、平成18年11月22日付け手続補正により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?62に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。

「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物であって、5-アミノテトラゾール、硝酸ストロンチウム、ならびにグアニジン硝酸塩、アミノグアニジン硝酸塩、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、ジアミノグアニジンン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩およびグアニジンピクリン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの高窒素非アジド成分を燃料として含み、該高窒素非アジド成分が全燃料組成物の10?80重量%である、前記ガス発生組成物」
(以下、「本願発明」という。)


第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、
「この出願については、平成18年5月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由2,3」「によって、拒絶をすべきものです。」
というものであり、その備考欄には
「(A)理由2
・・・
したがって、・・・補正後の請求項1-62に係る発明も、依然として、先の引用例(1)-(8)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたもの・・・。

(B)理由3
・・・
したがって、・・・補正後の請求項1-62に係る発明も、依然として、先の引用出願(9)の出願当初明細書に記載された発明と同一である。」
ことが記載されている。

そしてその平成18年5月12日付け拒絶理由通知書に記載した「理由2、3」とは、その理由2が、
「2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり、
その理由3が、
「3.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。」
というものである。
そして「先の引用例」「(3)」及び「先の引用出願(9)」とは、同拒絶理由通知の「引用文献等一覧」に示される、
「(3)特開平7-257986号公報」及び
「(9)特願平8-525361号(特表平11-500098号公報参照)」
である。


第5 当審の判断
当審は、本願発明は、原査定の理由2のとおり、下記刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する(以下、「(理由3)」という。)。
また、当審は、本願発明は、原査定の理由3のとおり、下記先願に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者が先願の発明者と同一ではなく、また本件出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない、と判断する(以下、「(理由4)」という。)。
その理由は以下のとおりである。

1 (理由3)について
(1)刊行物
特開平7-257986号公報(原査定における引用例(3)に同じ。また、上記第2の4(1)に示した「刊行物1」に同じ。以下、同様に「刊行物1」という。)

(2)刊行物の記載事項
刊行物1には、上記第2の4(2)アに指摘したとおりの事項が記載されている。

(3)引用発明
刊行物1には、上記第2の4(4)に指摘したとおりの事項が示されており、してみると、刊行物1には、
「自動車エアバッグに多量のガスを発生させるためのガス発生組成物であって、燃料として5-アミノテトラゾール、酸化剤として酸化第二銅及び硝酸ナトリウム、可溶性燃料として硝酸グアニジン、及び二硫化モリブデンを配合した、前記ガス発生組成物」
に係る発明が記載されている(上記第2の4(4)の「引用発明1」に同じ。以下、同様に「引用発明1」という。)

(4)対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
本願発明は、本件補正発明において、改変剤に係る規定がないものである。
よって、本願発明と引用発明1とを対比すると、上記第2の4(5)における検討内容において該改変剤に関する検討を除いた部分は同様に対比でき、してみると、本願発明と引用発明1とは、
「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物であって、5-アミノテトラゾール、酸化剤、高窒素非アジド成分であるグアニジン硝酸塩、ならびに残余の成分を含む、前記ガス発生組成物」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1’) 酸化剤として、本願発明は「硝酸ストロンチウム」を含有させるのに対し、引用発明1は「酸化第二銅及び硝酸ナトリウム」を含有させる点
(相違点2’) 燃焼剤として、本願発明は「高窒素非アジド成分」として、「グアニジン硝酸塩」だけでなく、「アミノグアニジン硝酸塩、ニトログアニジン、ニトロアミノグアニジン、ジアミノグアニジン硝酸塩、グアニジン過塩素酸塩およびグアニジンピクリン酸塩」からなる群から選ばれるものが規定されるのに対し、引用発明1は「グアニジン硝酸塩」が規定されるのみである点
(相違点3’) 「高窒素非アジド成分」の含有量として、本願発明は「全燃料組成物の10?80重量%の濃度」であるとする規定があるのに対し、引用発明1はそのような規定がない点

(5)判断
相違点について判断する。
上記相違点1’ないし3’は、それぞれ上記第2の4(5)における相違点1ないし3に同じであり、相違点に係る判断の内容も、上記第2の4(6)において相違点1ないし3に関して検討したのと同じである。
すなわち、相違点1に関して、引用発明1の酸化剤として、刊行物1に記載されている硝酸ストロンチウムを含むものとすることは当業者であれば適宜なし得る事項であり、相違点2に関して、刊行物1において硝酸グアニジンと並記される硝酸アミノグアニジン、硝酸ジアミノグアニジンを含む群から選択可能なものとすることに格別の創意は要されるものでなく、相違点3に関して、刊行物1に示される水溶性燃料の含量は本願発明の規定に完全に含まれるものであるから実質的な相違点ではないといえる。

(6)効果
効果について検討するに、上記第2の4(7)で指摘したとおりであり、本願発明の効果は刊行物1の記載及び技術常識より予測可能な範囲内のものである。

(7)まとめ
以上のとおりであるので、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


2 (理由4)について
(1)刊行物等
特願平8-525361号(原査定における引用出願(9)に同じ。以下、「先願」という。)

(2)刊行物等の記載事項
先願の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。

7a(特許請求の範囲)
「 1.窒素含有化合物からなるガス発生用のガス生成剤において、
a)窒素含有化合物(燃料)として、テトラゾール、トリアゾール、トリアジン、シアン酸、尿素、それらの誘導体又はそれらの塩の群からの少なくとも1種の化合物、
b)酸化剤として、過酸化物、硝酸塩、塩素酸塩又は過塩素酸塩の群からの少なくとも3種の化合物、
c)不均一又は均一触媒によって燃焼及びその速度に影響を与えることができる燃焼調節剤、かつ場合によっては、
d)毒性ガスの割合を減少させることができる添加剤を含有していることを特徴とする、窒素含有化合物からなるガス発生器用のガス生成剤。
・・・
4.窒素含有化合物がテトラゾール誘導体の群から選択され、好ましくは化合物、5-アミノテトラゾール、・・・から選択されている、請求項1から3までの何れか1項に記載のガス生成剤。
5.トリアジン誘導体として1,3,5-トリアジン、トリアゾール誘導体として1,2,4-トリアゾール-5-オン、3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール-5-オン、シアン酸誘導体としてシアン酸ナトリウム、シアヌル酸、シアヌル酸エステル、シアヌル酸アミド(メラミン)、1-シアノグアニジン、ナトリウム ジシアナミド、二ナトリウム シアナミド、硝酸ジシアノジアミジン、硫酸ジシアノジアミジン、及び尿素誘導体としてビウレット、グアニジン、ニトログアニジン、硝酸グアニジン、アミノグアニジン、硝酸アミノグアニジン、チオ尿素、硝酸トリアミノグアニジン、炭酸水素アミノグアニジン、アゾジカルボンアミド、テトラセン、硝酸セミカルバジド、並びにウレタン、バルビツル酸のようなウレイド並びにこれらの誘導体を含有している、請求項1から4までの何れか1項に記載のガス生成剤。
6.酸化剤として、
-アルカリ金属及びアルカリ土類金属の過酸化物、過酸化亜鉛並びに該元素のペルオキソ二硫酸塩及び二硫酸アンモニウム又はこれらの化合物の混合物;
-硝酸アンモニウム、アルカリ金属及びアルカリ土類
金属の硝酸塩、特に硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム及び硝酸ストロンチウム、又はこれらの化合物の混合物;
-アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムのハロゲンオキシ化合物、好ましくは、過塩素酸カリウム又は過塩素酸アンモニウム、又はこれらの化合物の混合物を含有している、請求項1から5までの何れか1項に記載のガス生成剤。
・・・」

7b(第10頁第27行?第11頁第4行)
「本発明は、燃焼によるガスの生成のための無毒性でアジドを含有しない混合物を提供する。これらのガス生成混合物は、なかんずく、安全装置、例えば自動車及び飛行機のエアーバッグを膨張させるためのエアーバッグシステムに使用することができる。しかしながら、これらはまた、その下に置かれたバッグの膨張によって重い荷重を持ち上げるため、又は例えば消火粉末の放出のため、又は作業を実施するためにガスの急速な生成を必要とするその他の措置のために適している。」

7c(第22頁の表?同頁最終行)


^(1))ミリ秒での、最大圧力の40%?60%間での反応の期間
^(2))室温に冷却した後で測定した。
^(3))実権発生器内で30gのガス充填物を燃焼した後の、60Lの試験キャニスター内の固体の質量

実施例10?13は、酸化剤として使用した硝酸ナトリウム/硝酸ストロンチウムの割合が異なっている。硝酸ストロンチウムの割合を増加させると、キャニスターの中に現れるスラグの質量が減少する。これは、硝酸ストロンチウムを添加することにより、スラグ(反応後に、発生器のフィルターへ)の濾過性が改良されることを意味する。同時に、反応ガス中のCOの割合が有利に影響を受ける可能性がある。」

(3)刊行物等に記載された発明
先願明細書は、「エアーバッグを膨張させるため」「に使用することができる」「ガスの生成のための」「無毒性でアジドを含有しない」「混合物」(摘示7b)について示されている。
そしてその混合物の具体例が示される実施例11及び実施例12には、「5-アミノテトラゾール」「硝酸グアニジン」「硝酸ナトリウム」「硝酸ストロンチウム」及び「グラファイト」が構成成分である例が、また、実施例13には、「5-アミノテトラゾール」「硝酸グアニジン」「硝酸ストロンチウム」及び「グラファイト」が構成成分である例が、それぞれ示される(摘示7c)。
してみると、先願明細書には、
「エアーバッグを膨張させるために使用することができるガスの生成のためのアジドを含有しない混合物であって、5-アミノテトラゾール、硝酸ストロンチウム及び硝酸グアニジンを含む、前記混合物」
に係る発明が記載されている(以下、「先願発明」という。)。

(4)対比
本願発明と先願発明を対比する。
先願発明の「エアーバッグを膨張させるために使用することができるガスの生成のための」「混合物」は、本願発明の「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物」に相当する。
先願発明の「5-アミノテトラゾール」及び「硝酸ストロンチウム」は、それぞれ、本願発明の「5-アミノテトラゾール」及び、「硝酸ストロンチウム」と同じ化合物である。
先願発明の「硝酸グアニジン」は、本願発明の「グアニジン硝酸塩」と同じ化合物であるから、本願発明の、「グアニジン硝酸塩」を例に含む「高窒素非アジド成分」であるといえる。
してみると、本願発明と先願発明とは、
「エアバッグを膨らませるために有用なガス発生組成物であって、5-アミノテトラゾール、硝酸ストロンチウム、ならびに硝酸グアニジンを高窒素非アジド成分として含む、前記ガス発生組成物」
である点で一致し
本願発明では、「高窒素非アジド成分」が「全燃料組成物の10?80重量%の濃度」であることが規定されるのに対し、先願発明ではそのような規定のない点で、一応相違する。

(5)判断
上記一応の相違点について以下検討する。
まず、本願発明の「全燃料組成物」について検討する。
本願発明の「全燃料組成物」とは、「ガス発生組成物」に含まれる成分のうち、「燃料」に分類される構成成分全てからなる「組成物」を意味するものであり、「高窒素非アジド成分が全燃料組成物の10?80重量%」であるとは、そのような「燃料」に分類される構成成分全てを「組成物」としたものの和に対する、特定の「高窒素非アジド成分」の重量比を意味すると解される。これは、たとえば本願明細書の「発明の好ましい態様の詳細な説明」の欄第2段落ないし第3段落に、「主たる高窒素非アザイ・・・燃料と組み合わされる第二の高窒素非アジド燃料は、・・・化合物を含む。本発明の第二の高窒素非アジド燃料を全体の複数種燃料組成物の少なくとも10重量%の濃度、好ましくは全体の複数種燃料組成物の25-75重量%の範囲で使用する。本発明の、好ましい複数種燃料組成物は、・・・他の燃料と個々の成分の望ましい性質を損なうことなく組み合わせることができ、相乗的に改良されたより優れた燃料を提供できることが発見された。実用的なガス発生組成物は、燃料に加えて、特に非アジド燃料の性能の向上を達成するために種々の他の成分を含む。他の材料と組み合わせて使用されるとき、本発明の好ましい主たるアジドまたは主たるアジド/第二アジドの単一または複数燃料は、全体として、全ガス発生組成物の少なくとも15重量%濃度で使用される」との指摘、すなわち複数燃料物中の特定の燃料成分の割合に着目した記載がなされているとともに、複数燃料物概念とガス発生物概念とは別個のものとした記載がなされていることからも理解される。
これに対して、先願発明の成分を見てみると、以下のとおりである。
先願発明の「5-アミノテトラゾール」は、先願明細書の請求項4において、「窒素含有化合物がテトラゾール誘導体の群から選択され」る「好まし」い成分の一つとして記載されており(摘示7a)、該請求項4が引用する先願明細書の請求項1には「窒素含有化合物(燃料)」と記載されることから(摘示7a)、先願発明の「5-アミノテトラゾール」は「燃料」として含有されているものである。
先願発明の「硝酸ストロンチウム」は、先願明細書の請求項6において、「酸化剤」として含有される成分の一つとして記載されていることから(摘示7a)、先願発明の「硝酸ストロンチウム」は「酸化剤」として含有されているものであり、本願発明の「燃料」ではない。
先願発明の「硝酸グアニジン」は、先願明細書の請求項5(摘示7a)の「尿素誘導体」に含まれるものであり、該請求項5の「尿素誘導体」とは先願明細書の請求項1の「窒素含有化合物(燃料)」として例示される「尿素」「の誘導体」である。よって、先願発明の「硝酸グアニジン」とは、先願明細書において、「窒素含有化合物(燃料)」として含有されているものであるといえる。そして該「硝酸グアニジン」が「非アジド」化合物であることは、化合物それ自体からも明らかであり、また、先願発明が「アジドを含有しない」混合物であることを明記していることから(摘示7b)、先願発明に記載されているに等しい。ゆえに、先願発明の「硝酸グアニジン」とは、各種化合物から選択可能とされた本願発明の「高窒素非アジド成分」の一つである「グアニジン硝酸塩」に相当し、且つ、本願発明同様に「燃料として含」まれたものであるといえる。
以上より、先願発明の成分において、「5-アミノテトラゾール」及び「硝酸ストロンチウム」が、「燃料」であり、その和が本願発明でいう「全燃料組成物」に相当する。そして、先願発明の「硝酸ストロンチウム」が本願発明の「高窒素非アジド成分」であることは上に対比したとおりである。ゆえに、本願発明でいう「高窒素非アジド成分」の「全燃料組成物」に対する「重量%」とは、先願発明の「硝酸ストロンチウム」の、「5-アミノテトラゾール及び硝酸ストロンチウム」に対する「重量%」であるといえる。
そして、先願発明の具体例である実施例における「5-アミノテトラゾール」及び「硝酸グアニジン」の含有量は、実施例11は5-アミノテトラゾールが31.6重量%で硝酸グアニジンが8.0重量%、実施例12は5-アミノテトラゾールが30.8重量%で硝酸グアニジンが7.8重量%、実施例13は5-アミノテトラゾールが28.9重量%で硝酸グアニジンが7.3重量%である(摘示7c)。
これら実施例11ないし13における、「硝酸ストロンチウム」の、「5-アミノテトラゾール及び硝酸ストロンチウム」に対する具体的な「重量%」を計算すると、それぞれ、「20.2重量%」、「20.2重量%」及び「20.2重量%」となる。これらは、本願発明の「10?80重量%である」と規定される範囲内にある。
してみると、上記一応の相違点は、実質的な相違ではない。

(6)まとめ
以上のとおりであるので、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも先願の発明をした者が本件特許出願に係る発明の発明者と同一の者ではなく、本件特許出願の時に本件の出願人と先願の出願人とが同一の者でもない。
よって、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項及び第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-15 
結審通知日 2011-03-22 
審決日 2011-03-29 
出願番号 特願平9-529337
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C06D)
P 1 8・ 161- Z (C06D)
P 1 8・ 121- Z (C06D)
P 1 8・ 537- Z (C06D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 昌広木村 敏康  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 東 裕子
橋本 栄和
発明の名称 非アジドガス発生組成物  
代理人 葛和 清司  
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